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国語科と他教科等との関連を図る複合的な学習指導 ―

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Academic year: 2021

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(1)

はじめに

 本研究では,国語科の授業と算数科の授業を相互の 関連を図って連続して行い,国語科の授業で習得した 学習内容を算数科の授業で効果的に活用する学習活動 の有効性について述べる.

 OECD による PISA 調査(OECD 生徒の学習到達度 調査)の結果やそれが我が国に与えた影響については,

国立教育政策研究所の報告書1)2)3),文部科学省の指導 資料4)等により広く理解されている.そこでは,我が 国の児童生徒は思考力 ・ 判断力 ・ 表現力等を問う読解 力や記述式問題,知識 ・ 技能を活用する問題に課題が 見られることが述べられている.

 従来,基礎的 ・ 基本的な知識 ・ 技能を習得する学習 活動と,これらの活用を図る学習活動とが,対立的 ・ 二者択一的にとらえられる傾向が見られた.しかし,

PISA 調査の結果からは,「基礎的 ・ 基本的な知識 ・ 技 能の育成(いわゆる習得型の教育)と,自ら学び自ら 考える力の育成(いわゆる探究型の教育)とは,対立 的あるいは二者択一的にとらえるべきものではなく,

この両者を総合的に育成する5)」必要性が求められて いる.

 また,文部科学省が,「PISA 調査の「読解力」と は,「Reading Literacy」の訳であるが,わが国の国語 教育等で従来用いられてきた「読解」ないしは「読解 力」という語の意味するところとは大きく異なるので,

本プログラムでは単に「読解力」とはせずに,あえて PISA 型「読解力」と表記することとした6)」ように,

読解力を「情報の取り出し」に偏ることなく,それを 活用して「解釈」や「熟考 ・ 評価」する取組が求めら れている.

 このように,[習得],[活用]を相互の関連を図って 複合的に学習し,PISA 型読解力の育成を図り,これ からの時代を生きる確かな学力の育成を図ることが重 要である.

1  実践授業の基本構想

⑴ [習得]の学習と[活用]の学習

 『小学校学習指導要領7)』では,教育課程実施上の配 慮事項として,「各教科等の指導に当たっては,児童の 思考力,判断力,表現力等をはぐくむ観点から,基礎 的 ・ 基本的な知識及び技能の活用を図る学習活動を重 視する8)」としている.そこで,学習活動を組み立て るにあたっては,[習得]と[活用]とを「総合的に育 成する9)」ことが重要となる.

 本研究では,[習得]と[活用]を次のように定義す る.「「習得」とは,身に付けておかなければ後の学年 等の学習内容に影響を及ぼす内容や,実生活において 不可欠であり常に活用できるようになっていることが 望ましい知識 ・ 技能.「活用」とは,知識 ・ 技能等を実 生活の様々な場面に活用する力や,様々な課題解決の ための構想を立てて実践し評価 ・ 改善する力などにか かわる内容10)」.

 全国学力 ・ 学習状況調査11)では,知識 ・ 技能の習得 を「主として「知識」に関する問題」,活用する力や評 価 ・ 改善する力を「主として「活用」に関する問題」

立正大学社会福祉学部

* * 川口市立原町小学校

キーワード:PISA 型読解力,[習得]の学習,[活用]の学習,(仮称)複合的な学習

国語科と他教科等との関連を図る複合的な学習指導

―[習得]の学習と[活用]の学習の連続的な学習活動を通して―

柴 田 房 雄

荒 井 友 実

**

(2)

として,出題範囲や内容 ・ 形式を異にして調査を実施 している.このように,[習得]と[活用]とは,その ねらいとする学力が異なっている.

 小学校においては,低学年では[習得]の学習が中 心となり,中 ・ 高学年と学年が進むに従い,相互の関 連を図った[活用]の学習の比重が増していく.いず れの場合も,授業を構想するに当たっては,[習得]・

[活用]それぞれのねらいを明確にして指導計画を作成 することが重要となる.

⑵ 「(仮称)複合的な学習」の構想

 本研究では,国語科と算数科の学習を連携させ,国 語科で習得した知識 ・ 技能を効果的に活用して算数の 思考力,判断力,表現力の育成を図ることをねらいと する.

 『小学校学習指導要領解説 総則編』では,各教科等 の間の連携を図った学習活動について次のように示し ている12)

 児童に確かな学力を育成するため,知識と生活 との結び付きや教科を超えた知の総合化の視点を 重視した教育を展開することを考慮したとき,教 科の目標や内容の一部についてこれらを合わせて 指導を行ったり,関連させて指導を進めたりした 方が効果が上がる場合も考えられる.

 国語科と他教科等との連携を図った学習活動を構想 する場合,ねらいとする言語能力を明確にするととも に,相互の関連を図った学習内容の連続性を明らかに することが大切となる.

 小学校(特に低学年)では,各教科等の学習指導を 学級担任が行っており,また,児童の教科意識が未分 化で明瞭ではないことなどから,それぞれの学習内容 を複合的に取り扱うことが好ましい場合がある.そこ で,国語科と他教科等を連続した一連の学習活動とし て計画し,国語科で習得した知識 ・ 技能を他教科で活 用する学習活動が可能となる.こうした連続した学習 活動をここでは「(仮称)複合的な学習」とした.

 [習得]の学習から[活用]の学習へを構想すると き,これまでは,国語で,算数で,と同一の教科で実 践されることが多かった.そのため,例えば,国語の 学習計画(「学習指導案」の指導計画)において,前時 の学習とは国語の学習内容を指し,次時の学習とは国 語の学習内容を指すことが暗黙の了解事項となってい る.

 しかし,一日の教育課程(いわゆる「時間割」)を考 えるとき,国語の次が算数であったり,体育であった り,ときには道徳であったりする.そうであるならば,

例えば,国語と算数を,国語と理科を,と異なる教科 を連携させ,連続した一連の学習として捉えていくこ とは無理のないことであり,児童の思考過程を考慮す れば,むしろ好ましいことと考えられる.

 ところで,『小学校学習指導要領』では,「合科的な 指導は,単元又は1コマの時間の中で,複数の教科の 目標や内容を組み合わせて,学習活動を展開するもの.

関連的な指導は,教科当別に指導するに当たって,各 教科等の指導内容の関連を検討し,指導の時期や指導 の方法などについて相互の関連を考慮して指導するも の13)」とし,「合科的」,「関連的」の用語は用いられて いるが,「複合的」の用語は使用されていない.

 本研究で構想する「(仮称)複合的な学習」の「複合 的」は,『小学校学習指導要領』で言う「関連的」に近 い概念であるが,「各教科等の指導内容に関連はないも のの,相互の関連を図って学習することが効果的と考 えられる学習活動」とした.この違いを明確に示す意 図から,「関連的」を避け「複合的」の用語を使用し た.

2  実践研究の基本構想

⑴ 「(仮称)複合的な学習」の授業構想

 本研究では,国語科と算数科の学習を連携させ,国 語科で習得した知識 ・ 技能を複合的に活用して算数の 思考力,判断力,表現力の育成を図ることをねらいと している.

 初めに,授業実践の全体像を図2-1に示す.

 この授業実践では,国語の1時間目の学習活動と算 数の2時間目にあたる学習活動を連続した一連の学習 活動として授業を行う.本時の算数の学習が本研究で いう「(仮称)複合的な学習」となる.授業では国語の 学習内容を算数で活用し,国語で習得した知識や技能 の確実な定着を図るとともに,算数で活用することに より新たな算数の知識や技能とする.

 本時の授業に先立ち,児童は算数科において次のよ うな学習をしている.

 動物園の場面絵14)を読み取り,①異種の数量に ついても加減計算ができることを知り,それを用 いる.②加法や減法を適用して問題を解決するこ とを通して,演算を決定する.

(3)

〔 授 業 の 構 想 〕 1 単元(題材)名

〔国語:教科書(光村図書 一下) P46~P53〕

ことばって おもしろいな 「ものの 名まえ」「おみせやさんごっこを しよう」

〔算数:教科書(東京書籍1年) P80~P81〕

どんな けいさんに なるのかな

2 単元(題材)の系統(国語:6時間 算数:2時間 (仮称)複合的な学習:2時間(国語1+算数1))

〔国 語〕 〔算 数〕

○上位語、下位語について知る([習得]) ○不足している言葉や数を考えて問題を作る([習得]) [りんご][みかん][バナナ]→(くだもの) ・おやの らいおんと こどもの らいおんは、 みん [あじ][さば][たい][まぐろ]→(さかな) なで なんとう いますか。

[一つ一つの名まえ]→(まとめてつけた名まえ) ・おやのらいおんが4とう・こどものらいおんが7とう

↓ ↓

〔(仮称)複合的な学習 国語[習得]→算数[活用]〕

○上位語、下位語の関係を活用し、加法を適用して問題を解決することを通して、演算を決定する。

りんご が 8こ あります。

くだもの は みんなで なんこ ありますか。

みかん が 7こ あります。

国語の学習内容(上位語、下位語の関係を活用する)

算数の学習内容(加法を適用して問題を解決することを通して、演算を決定する)

↓ ↓

〔国 語〕 〔算 数〕

○「おみせやさんごっこ」をする。 ○絵を見てたし算やひき算の問題を作る。

↓ ↓

〔(仮称)複合的な学習 算数[習得]→国語[活用]〕

○加法を適用して演算を決定する能力を活用して、「おみせやさんごっこ」をする。

[客] りんご 6こ と みかん 9こ を ください。

[店] まいど ありがとうございます。 くだもの は みんなで 15こ ですね。

国語の学習内容(「おみせやさんごっこ」をする)

算数の学習内容(加法を適用して問題を解決することを通して、演算を決定する)

図2-1:実践授業の構想図 図 2 - 1 :実践授業の構想図

(4)

 授業では,場面絵を見て不足している言葉や数を考 え,異種の数量についても加減計算が適用できること を理解し,それを用いた新たな問題作りに挑戦した.

「親のライオンと子どものライオンは,みんなで何頭い ますか」では,問題の文に不足している数(親が4頭,

子どもが7頭)を場面絵から読み取り,問題の文と場 面絵の両者を総合して考え合わせ,加法や減法を適用 して問題を解決することを通して演算を決定できるよ うにした.

 国語科の「ことばっておもしろいな「ものの名ま え」「おみせやさんごっこをしよう」」は,本時から学 習する新たな単元である.

⑵ 授業実践の概要

①実施時期

 平成23年3月3日㈭

  10時40分~11時25分(第3校時) 国語   11時30分~12時15分(第4校時) 算数

②対象者

 埼玉県内公立A小学校1年生(21人)

③授業者

 A ・ B(2人)

④被験者である児童の属性

 男児:9人 女児:12人 合計:21人

 授業にあたり,学級担任から児童の学習 ・ 生活状況 について説明を受けた.被験者である児童の国語科,

算数科の学習状況を「学習指導案」から転載する.

[国語]

 児童はこれまで,挿絵と対応させながらそのものの 名称を言ったり,「もの」と「言葉」を関係づけて捉え たりすることを学んでいる.また,「あつまれ,ふゆの ことば15)」では,一つの言葉から連想して関係する言 葉を集める学習に取り組んでいる.書くことにおいて は,身の回りの出来事を書いたり,「じどう車くらべ16)」 では自動車の説明を書いたりする活動を行っている.

[算数]

 児童はこれまで,具体物や半具体物を操作して数や 量,図形の概念を捉えたり,計算や測定の技能,数量 関係の考え方を学んでいる.「数と計算」領域において は,「 数 の 意 味 と 表 し 方 」,「 数 範 囲 の 拡 張

(10→20→100)」,「数についての見方 ・ 考え方」,「加 法 ・ 減法の意味」,「式」,「加法 ・ 減法の計算」につい て学んでいる.また,「算数の学び方(問題の把握→課

題の設定→各自の予想→自分の考え→学習のまとめ)

([も][か][よ][じ][ま]と表記)」の学習過程17)を 意識化し,見通しを持った学習活動や既習事項を活か した学習活動に取り組んでいる.

⑤単元(題材)名 ・ 教材名 ・ 教科書名

国語: ことばっておもしろいな 「ものの名まえ」

「おみせやさんごっこをしよう」

教科書(『こくご一下ともだち』光村図書 P46-53)

算数: どんなけいさんになるのかな

教科書(『あたらしいさんすう1』東京書籍  P80-81)

⑶ 授業実践

 本授業実践では,小学校1年生における上位語 ・ 下 位語の習得 ・ 理解とその活用について指導する.国語 科では,言葉の働きや意味による語句のまとまり,上 位語 ・ 下位語の関係について学習する.算数科では,

国語科で学習した上位語 ・ 下位語の関係を活用し,加 法を適用して問題を解決することを通して,演算を決 定する学習を行う.

 授業実践の概略を児童の学習活動をもとに図2-2 に示す.

3  授業実践の結果と考察

⑴ 上位語・下位語の習得・理解  国語科の授業について述べる.

 初めにゲーム「やおやのおみせ」を行い,絵カード を分類させた.「やおやのおみせ」は,教師が歌いな がら示す言葉(野菜の名前とそれ以外の品物名)を,

絵カードを参考に分類するゲームである.

だいこん,にんじん,ごぼう,ごりら.

かぶ,たけのこ,ほうれんそう,あんぱん.

もやし,きゃべつ,とまと,グローブ.

とうもろこし.れんこん,ねぎ,かぎ.

じゃがいも,はくさい,なす,しいたけ,ぼうし.

かぼちゃ,ピーマン,きゅうり,たまねぎ,くつ.

ゴーヤ,セロリ,アスパラ,ブロッコリー,こま.

 絵カードと対応させ,「八百屋に並んだ品物」とそれ 以外の品物名を分類した.分類の判断理由から,八百 屋に並んだ品物は野菜,それ以外は野菜ではないもの とまとめた.

 次に板書された言葉([りんご][みかん][バナナ])

(5)

を読み,教師が書こうとしている言葉を推測させた.

教師の板書が果物の名前であることを理解させ,果物 の名前を発表させた.

もも ・ ぶどう ・ メロン ・ すいか ・ パイナップル ・ マ スカット ・ キウイ ・ レモン ・ いちご ・ さくらんぼ ・ グレープフルーツ(板書順)

 発表は,①教科書挿絵の果物(メロン,レモン,い ちご,さくらんぼ),②生活経験にある果物(もも,ぶ どう,すいか,パイナップル,マスカット,キウイ,

グレープフルーツ)の11種類となった.

 [マスカット]は[ぶどう]の一品種([ぶどう]の 下位語)であるが,同列に意識されていることが理解

される.

 同様に,教師の書き出す魚類の名前([あじ][さば]

[いわし])から,教師の板書が魚の名前であることを 推測させ,魚の名前をノートに書かせ発表させた.

うつぼ ・ うに ・ うなぎ ・ まぐろ ・ えび ・ りゅうのつ かい(?)・ ブラックタイガー ・ ひらめ ・ シャコ貝 ・ かれい ・ くまのみ ・ いか ・ たこ ・ まぐろ ・ さんま ・ ほしざめ ・ さめ ・ りゅうのひめ(?)・ つぶ貝 ・ ホタ テ ・ かに ・ めじまぐろ ・ ぶり ・ ふぐ ・ ひらめ ・ さん ま ・ あまえび ・ かれい ・ くらげ ・ たい ・ けがに ・ た らばがに ・ シャケ ・ かじきまぐろ ・ くろまぐろ ・ 車 えび ・ くじら ・ いくら ・ シイラ ・ 足なががに ・ こぶ だい(板書順)

 発表は,①教科書挿絵の魚類(ふぐ,かに,いか),

②鮮魚店や寿司店でなじみのある魚類(うなぎ,まぐ ろ,ひらめ,かれい,さんま,ぶり,たい,シャケ,

たこ,うに,えび,つぶ貝,ほたて,めじまぐろ,か じきまぐろ,くろまぐろ,ブラックタイガー,あまえ び,車えび,けがに,たらばがに),③絵本や図鑑で 知っている魚類(うつぼ,シャコ貝,くまのみ,ほし ざめ,さめ,くらげ,くじら,足なががに,こぶだい,

シイラ),④不明(りゅうのつかい,りゅうのひめ),

[いくら]の37種類となった(板書は重複があり41種 類).ノートに書き出す時間を確保したことにより,果 物に比べ4倍近い発表となった.

 果物の名前と同様,ここでも[まぐろ(上位語)]と

[めじまぐろ ・ かじきまぐろ ・ くろまぐろ(下位語)]

とが同列に意識されていることが理解される.上位語 としての[えび],[かに]についても同様の意識があ る.[いくら]は魚卵であるが,鮮魚店や寿司店でなじ みがあることから魚類と意識している.

 また,クジラは魚類ではなく,同様に貝の仲間を「さ かな」と発表していることから,児童は「魚類=海に 棲む生き物」と意識していることが理解できる.教科 書もカニ,イカを魚としていることからも理解できる.

 発表にある[りゅうのつかい]は,次時算数の「問 題の文」に[りゅうぐうのつかい(筆者註:深海魚)]

があり,教師の聞き違いと考えられる.同様に[りゅ うのひめ]は,[りゅうぐうのおとひめのもとゆいのき りはずし(筆者註:植物名)]と考えられる.両者は同 一の児童が発言しており,限られた専門的な知識を持 つ児童が教室にいることが理解できる.

 授業のまとめとして「魚屋さんごっこ」を行った.

[国 語]

1 ゲーム「やおやの おみせ」をする。

2 一つ一つの果物の名前とそれをまとめて つけた名前(くだもの)があることを知る。

3 一つ一つの魚の名前とそれをまとめて つけた名前(さかな)があることを知る。

4 「魚屋さんごっこ」をする。

5 上位語、下位語について知る。

[算 数]

1 問題を把握する。

□が 8□ あります。

□が 7□ あります。

みんなで なん□ ありますか。

2 問題文を書き直す。

りんごが 8こ あります。

みかんが 7こ あります。

くだものは、みんなでなんこありますか。

3 課題を捉える。

なにかのことばをくわえないとできない もんだいをかんがえよう。

4 「問題の文」を作り、プリントに書く。

なにかのことばをくわえないとできない もんだいは、まとめていうことばを つかえばけいさんできる。

5 「問題の文」を発表し、話し合う。

6 本時の学習のまとめをする。

図2-2:授業実践の概略 図 2 - 2 :授業実践の概略

(6)

が客,Tが魚屋と役割分担を決め,客と魚屋の遣 り取りを聞かせた.

 T「魚をください.」

 T「えー(無回答)」

 T「このお店は,魚を売っていないのですか.」

 T「魚は売っていますけれども……」

 T(魚屋)が困惑している理由を考えさせたが,

(客)の問い掛け方の間違いを指摘した.上位語の

[さかな]ではなく下位語の具体的な魚の名前を使わな ければ買い物が出来ないことを理解していた.

⑵ 上位語・下位語の活用  算数科の授業について述べる.

 学習課題「なにかのことばをくわえないとできな いもんだいをかんがえよう」に対する児童の解答(作 成した「問題の文」)を表3-1に示した.なお,表中 の[01]~[21]は児童([B]=男児,[G]=女児)

を,①~⑤は児童が作成した「問題の文」を示してい る.また,[*]は該当する項目が書かれていないこと を表している.

 解答数は,一人2問(8人)から5問(2人)の計 63問(21人),一人平均3問となった.無答の児童はな く,15分の学習活動で全児童が「問題の文」を書くこ とができた.

 全63問のうち,「問題の文」が未完成で上位語,下位 語の使い分けが確認できない解答は5題(01G ② ・03B

② ・09B ③ ・10G ③ ・16G ④)ある.以下,「問題の文」

が完成されている58題について考察する.

 初めに,上位語,下位語が同じ(「スカート」「スカー ト」→「スカート」07G ②)表現,下位語を合わせて 上位語とする(「とんかち」「のこぎり」→「とんかち とのこぎり」02B ①,「えんどうまめ」「パパイヤ」→

「くだものとやさい」03B ①)表現がある.これは,下 位語を包括する上位語が生活語にない,または未発達 のためと考えられる.それぞれの児童とも他の「問題 の文」では,上位語,下位語の包括関係を活用をして いることからも,生活語の習得が十分でないためと考 えられる.

 次に,(「うわぎ」「ワンピース」→「うわぎ」06G

②),(「ようふく」「わんぴーす」→「ようふく」16G

③)は,いずれも女児である.この時期の女児は,上 着(洋服)は男の子の,ワンピースは女の子の衣服と いう意識があり,ワンピースに対応する男の子の衣服

を「ようふく(うわぎ)」と表現している.(「えんぴ つ」「いろえんぴつ」→「えんぴつ」14G ②)は,下位 語の「えんぴつ」は日常的に使う黒い鉛筆であり,上 位語としての「えんぴつ」は色鉛筆を含めた筆記具と しての鉛筆を表現している.

 同様に,(「赤いくつ」「青いくつ」→「くつ」08G

①),(「くろいランドセル」「あかいランドセル」→「ラ ンドセル」21G ①)は,上位語(靴 ・ ランドセル)を 複数の下位語に分類し,違いを言い表そうとするとき 色を表す形容詞を加えて表現している.(「くろえんぴ つ」「いろえんぴつ」→「えんぴつ」17B ②)は,成語

(黒鉛筆 ・ 色鉛筆)と表現している.

 また,(「ひよこ」「きりん」→「どうぶつ」07G ①),

(「ペンギン」「しまうま」→「どうぶつ」11B ②),(「ペ ンギン」「さる」→「どうぶつ」)は,「生き物(生物)」

の下位語としての鳥類と動物が並列関係に表現されて いる.

 この時期の児童は,下位語を包括する上位語がない,

上位語を分類する下位語がない等の理由から,上位語 と下位語の包括関係が曖昧になっている.包括関係の 曖昧さは,教科書教材においても(「あじ」「いか(か に)」→「さかな」)としていることからも理解される.

語彙の拡充を図るための学習活動が課題となる.

⑶ まとめ

 以上,国語科と算数科を連続して学習する授業実践 を通して,小学校1年生における上位語,下位語の習 得と活用の学習状況を見てきた.

 [習得]の学習では,上位語,下位語の分類意識はあ るものの,それが未分化で不明瞭であること,同列に 意識されている上位語,下位語があることが傾向とし て見られた.

 また,語彙量が十分でなく,言葉の概念が曖昧であ り,このことが上位語,下位語の分類意識を不明瞭に していることが傾向として見られた.同様に,身近な 存在である野菜や果物,魚類が実際以上に広がった概 念で捉えられていることも傾向として見られた.

 [活用]の学習では,国語の学習内容を意識して活用 させることにより,算数の新たな学習課題に取り組み,

解決できる傾向が見られた.

 しかしながら,上位語,下位語の分類意識が曖昧で あるため,下位語を包括する上位語が見つけられない,

下位語と上位語を同じ言葉で表現しようとする,下位

(7)

表 3 - 1 〔算数〕学習課題の解答(児童が作った[問題の文])

児童名 下位語(A) 下位語(B) 上位語 合 併

01G ① ブーツが4そく スニーカーが3そく くつは あわせて

01G ② ワンピースが7ちゃく * * *

02B ① とんかちが5本 のこぎりが3本 とんかちとのこぎりは *

02B ② たいこが5こ らっぱが11こ がっきは *

03B ① えんどうまめが8こ パパイヤが20こ くだものとやさいは みんなで 03B ② ベルファイヤーが1だい トヨタのくるまが7だい * みんなで

04B ① ネコザメが9ひき たいが7ひき さかなは あわせて

04B ② トカゲが3ひき へびが10ぴき はちゅうるいは あわせて

05G ① 犬が6ぴき ねこが7ひき どうぶつは あわせて

05G ② くつが6こ ながぐつが3こ はくものは みんなで

06G ① まつぼっくりが9こ どんぐりが9こ きのみは あわせて

06G ② うわぎが8まい ワンピースが4まい うわぎは あわせて

07G ① ひよこが6ぴき きりんが7ひき どうぶつは あわせて

07G ② スカートが7はい スカートが6はい スカートは あわせて

08G ① 赤いくつが5本 青いくつが8本 くつは みんなで

08G ② ピアノが1だい ベルが15こ がっきは あわせて

09B ① りゅうぐうのつかいが8ぴき ふうせんうなぎが7ひき さかなは *

09B ② しじみが9こ ほたてが10こ 貝は *

09B ③ いちぜんくらげが10ぴき * * *

10G ① ぶどうが8こ いちごが8こ くだものは あわせて

10G ② じどう車が3だい バスが6だい のりものは あわせて

10G ③ かぶと虫が3びき * * *

11B ① かぼちゃが9こ さつまいもが13こ やさいは あわせて

11B ② ペンギンが10ぴき しまうまが9ひき どうぶつは あわせて

11B ③ とんかちが9こ くぎが9こ どうぐは みんなで

12B ① えんぴつが7本 スティックのりが6本 文ぼうぐは あわせて

12B ② ひまわりが5本 チューリップが9本 花は あわせて

12B ③ かぶと虫が9ひき 青虫が6ぴっき 虫は あわせて

13B ① さばが5ひき タコが16ひき さかなは あわせて

13B ② 青虫が6ぴき クワガタを4ひき 虫は みんなで

13B ③ ホワイトタイガーが2ひき ライオンが8ぴき どうぶつは みんなで

14G ① さくらの木が5本 むくの木が11本 木は あわせて

14G ② えんぴつが11ほん いろえんぴつが3本 えんぴつは みんなで

14G ③ いちごが10こ りんごが10こ くだものは みんなで

15G ① じどう車が6だい ばすが7だい くるまは あわせて

15G ② だいこんが9こ はくさいが1こ やさいは あわせて

15G ③ のこぎりが3こ スコップが10こ どうぐは あわせて

16G ① だいこんが4こ にんじんが3こ やさいは あわせて

16G ② いちごが7こ さくらんぼが5こ くだものは あわせて

16G ③ わんぴーすが5こ ようふくが9こ ようふくは あわせて

16G ④ 本が9さつ * * *

17B ① じてん車が6だい トラックが7だい のりものは あわせて

17B ② くろえんぴつが4本 あかえんぴつが7本 えんぴつは あわせて

17B ③ うなぎが6ぴき バチマグロが9ひき さかなは あわせて

17B ④ かぶと虫が8ぴき くわがたが6ぴき こん虫は *

18B ① 犬が4ひき ねこが9ひき どうぶつは みんなで

18B ② キャベツが8個 にんじんが3こ やさいは あわせて

18B ③ ペンギンが5ひき サルが6ぴき どうぶつは みんなで

18B ④ のりが7こ はさみが2こ どうぐは あわせて

19G ① じゃがいもが12こ だいこんが13こ やさいは あわせて

19G ② ハムスターが10ぴき 犬が6ぴき どうぶつは あわせて

19G ③ ワンピースが11ちゃく スパッツが7ちゃく ようふくは あわせて

19G ④ のこぎりが9こ トンカチが8こ どうぐは あわせて

20G ① いちごが8こ メロンが2こ くだものは あわせて

20G ② ワンピースが5まい ズボンが1まい ようふくは *

20G ③ ねこが3びき 犬が2ひき どうぶつは *

20G ④ ばらが10本 チューリップが2本 お花は *

20G ⑤ とまとが7こ にんじんが2ほん やさいは *

21G ① くろいランドセルが あかいランドセルが4こ ランドセルは あわせて

21G ② バッタが5ひき かまきりが4ひき 虫は あわせて

21G ③ はとが6わ からすが2わ とりは あわせて

21G ④ リホームが1けん しんちくが6けん いえは あわせて

21G ⑤ むくの木が3本 さくらが6本 木は あわせて

(8)

語同士を助詞「と」で結んで上位語を表現しようとす る傾向も見られた.

 上位語,下位語を学ぶ学習では,教師がそのいずれ か一方を示し考えさせる授業実践が多い.この授業実 践では,[活用]の学習において上位語,下位語の双方 を一緒に考えさせ,その習得を確かなものにした.

 以上,国語科の学習と算数科の学習を相互の関連を 図って連続して学習する学習活動を通して,言葉を意 識して学び,次の学習に活用することにより,言葉の 習得がより確かなものになることが明らかになった.

おわりに

 本研究では,複数の教科等を相互の関連を図って学 習する学習活動の有効性を授業実践を通して明らかに してきた.しかし,教科等の組み合わせは,その単元 や題材,教材等により限定されるものであり,全てが 有効というわけではない.今後は,教科等の組み合わ せ,とりわけ,国語科を中核とした言語力の育成とい う視点から検討を重ねていきたい.

1) 国立教育政策研究所(2002)『生きるための知識と技能

「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)2000年調査国際結 果報告書」』ぎょうせい

2) 国立教育政策研究所(2004)『生きるための知識と技能2

「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査国際結 果報告書」』ぎょうせい

3) 国立教育政策研究所(2007)『生きるための知識と技能3

「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査国際結 果報告書」』ぎょうせい

4) 文部科学省(2006)『読解力向上に関する指導資料~ PISA 調査(読解力)の結果分析と改善の方向~平成17年12月』

東洋館出版社

5) 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(2006)

『教育課程部会審議経過報告(抄)』

6) 文部科学省(2002)「読解力向上プログラム」

7) 平成20年3月28日公示,平成21年4月1日から移行措置,

平成23年4月1日から全面実施.この授業実践は,移行期 間中に内容を前倒しして実施している.

8) 文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 総則編』 

P52

9) 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(2006)

『教育課程部会審議経過報告(抄)』

10) 文部科学省(2006)「全国的な学力調査の具体的な実施方法 について(報告)」P7の問題作成の基本理念を基本的な枠 組みにしている.

11) 児童・生徒の学習到達度を把握するため全国規模で行う学 力テスト.対象は小学校6年生と中学校3年生.教科は国 語と算数(数学).文部科学省が2007年より実施.

12) 文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 総則編』 

P50

13) 文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 総則編』 

P50

14) 教科用図書(2008)『あたらしいさんすう1』東京書籍  P80-81

15) 教科用図書(2008)『こくご一下ともだち』光村図書 P40

-43

16) 教科用図書(2008)『こくご一上かざぐるま』光村図書  P92-98

17) 川口市立朝日西小学校(2006)『平成18年度研究紀要』・

(2008)『平成20年度研究紀要』

(2012年8月10日受理)

表 3 - 1 〔算数〕学習課題の解答(児童が作った[問題の文]) 児童名 下位語(A) 下位語(B) 上位語 合 併 01G ① ブーツが4そく スニーカーが3そく くつは あわせて 01G ② ワンピースが7ちゃく * * * 02B ① とんかちが5本 のこぎりが3本 とんかちとのこぎりは * 02B ② たいこが5こ らっぱが11こ がっきは * 03B ① えんどうまめが8こ パパイヤが20こ くだものとやさいは みんなで 03B ② ベルファイヤーが1だい トヨタのくるまが7だい * みんなで

参照

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