地域 と融合 した 「大学開放
」 システム構築の未来像 1 7 5 3 0 5 4 6
平成17年度〜平成19年度科学研究費補助金( 基盤研究( C ) )
研 究 成 果
報 告 書
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「大学 開放」は 、 地 域 生 涯 学 習 を推 進 してい く上 で 、 これ まで 「高度 な 学習機 会」と して住 民 の学習 をサ ポー トす る重要 な役割 をはた して きた。
自治 体 の財 政 が逼 迫 す る 中で社 会 教 育 ・生涯 学習行 政 の予 算 が削減 され る傾 向 は 、今 後 一 段 と深 刻 化 す る もの と予想 され るO そ の意 味 で 、 「大 学 開放 」 は今 後 い っそ う重要 な役割 を果 たす もの と考 える。
ところで、 「大 学 開放 」 は、社会 教育 ・生涯学習 の部面 では、従来 「公 開講 座 」 に特 化 して捉 え られ る傾 向 にあ ったo Lか し、今 後 は 「研 究 ・ 教 育 ・地域 (社 会 ) 貢 献」の様 々 な領 域 で推進 され る こ とが期待 され て
い る。
地域 住 民 に とって 、地 方 にお い て は未 だ に 「大学 は敷 居 が 高い」 とい う声 を き くこ とが あ る。 しか し、次第 に多 くの住 民 が 「公 開講座 」や 「授 業公 開」 を 自己 の 学 習 に活 用す る よ うに な って きてお り、生活課題 ・也 域課題 の克服 を 目指 して取 り組 む 実践 にいか され てい る面 も確認 で きるD 住 民 と行 政や 企 業 ・協 同組 合 ・ボ ランテ ィア ・N POな どが協働 して取
り組 み 、ネ ッ トワー クが組 織 され る条件 も次 第 に形 成 され て きてい る0
そ う した組 織 化 に お い て も、住 民一 人一 人 の学 習 が基 本 にす え られ る必 要 が あ り、それ を可 能 とす る シス テ ム と して 「大学 開放」に 「住 民参加
・参画 」す る こ とが ポイ ン トにな る、 と考 え る。
この 間、平成 17年 度 か ら3年 間 にわた って科 学研 究費 の補 助 を受 け、
北東 北 にお い て実 践 的 に 「大 学 開放 」 に 関わ りを もち なが ら、研 究 を進 めて きた。 この成 果 が 、 大 学 関係 者 、社 会教 育 ・生涯 学 習 関係 者 、ボ ラ ンテ ィア ・N PO関係 者 等 々、多 くの人 々 に地域 生涯 学 習 の推 進 とい う 意 味 で参 考 に して い ただ けれ ば幸 いで あ る。
平成 20年6月
岩 手 大学 地域連 携 推 進 セ ン ター 藤 田 公仁 子
研究組織
研 究代 表者 :藤 田 公仁 子 岩 手大学地域 連携推進 セ ンター 准教授 研 究分担者 :藤 田 昇給 弘 前 大 学 生涯 学習教 育研 究セ ン ター 准 教授
交 付 決 定 額 (配 分 額 )
直 接 経 費 間接 経 費 合 計 平成 17年 度 1,200,000 0 1,200,000 平成 18年度 1,000.000 0 1,000.000 平 成 19年度 1,200,000 360.000 1,560,000
合 計 3,400,000 360,000 3,760,000 成果発表
(1)雑 誌論 文
・藤 田 公仁 子
「
『住 民 参 画型 大 学 開放 』 を展 望す る」 (『岩 手 大学 生涯 学習 論集』、第2号 、p.45‑ 54、2006年 )・藤 田 公仁 子 「地域住 民支援 型 学 習 プ ロ グラム と大 学 開放 の 可能性
」(
『岩手大 学 生涯学習論集』、第3号、p.23‑ 32、2007年 )
・藤 田 公仁 子 「ネ ッ トワ‑ ク型 地域 生涯 学 習 と大 学 開放」 (『岩 手 大学 生涯 学習論集』、第4号 、p,3i〜 47、2008年 )
・藤 田 昇治 「キ ャ リア教 育志 向 の 『大学 開放』事 業 の展 望」
(
『弘前 大学 生涯 学 習教育研 究セ ンター年報』、第 9号 、 p.1‑ 10、2006年 )
・藤 田 昇治 「日本 にお け る大 学 開放 と リカ レン ト教 育」
(
『弘 前 大学 生涯 学 習教 育研 究セ ンター年 報』、第 10号 、p.25‑ 33、2007年 )・藤 田 昇 給 「住 民 の学 習活 動 と地域 生涯 学 習 ネ ッ トワー ク
」(
『弘前 大学 生涯 学習 教育研 究セ ンター年報』、第 10号 、p.1‑ 23、2007年 )
・藤 田 昇 給 「家 庭 や 地 域 社 会 と連 携 ・協 働 した教 育活 動 を展 望 す る」『弘 前 大学 生涯学 習教育研 究セ ン ター年 報』、 第 11号 、p.1‑ 13、2008年 ) (2) 学会発表
・藤 田 公仁 子 「地域 住 民 の学 習 要 求 と生 涯 学 習 プ ログ ラム‑ スイ ス にお け る民 間教育産業 と公 的教 育機 関の事 例‑」 (日本社 会教 育 学 会 第 53回研 究 大会、2006. 9. 9、福 島大学 )
・藤 田 公仁 子 ・藤 田 昇 給 「大 学 開放 事 業 と民間教 育 産 業 の 学 習 プ ログ ラ ムの 可能性 ‑ スイ ス にお け る Migrosの学 習プ ログラム を事 例 と して‑」
(日本 社会教育学会 第 54回研 究 大会、2007、9、9 東京農 業 工業 大学)
・藤 田 昇治 地域 生涯 学 習 ネ ッ トワー クづ く りの課題 ‑ 「あお も り県 民 カ レ ッジ」の事例 か ら‑」 (日本社 会 教 育学会 第 53回研 究大会、2006. 9. 9、 福 島大 学)
<目 次 >
第 1章 「住 民参画型」の 「大学開放」 第1軒 「住民参画型大学開放」の志向
第2節 r大学開放」 をめ ぐる謙論 と新たな実践の展開 第3節 地域生涯学習の展開 と 「大学開放」
第4節 「大学 ミュー ジアムボラ ンテ ィア」における住民の学習 第5節 大学開放 と住民参加型学習
第6節 小括
第2章 住民の学習要求 と 「大学開放」
第1節 住 民の学習活動 と地域生涯学習ネ ッ トワー ク 第2節 家庭や地域社会 と連携 ・協働 した教育活動
第3章 キャ リア教育の 「展開」と「大学開放」
第1節 日本 における大学開放 と リカ レン ト教育 第2節 キャ リア教育志向の 「大草開放」事業
第4章 今後の 「大学開放」 を展望す る
第1節 ネ ッ トワーク型地域生涯学習 と大学開放
第2節 地域住民支援型学習 プログラム と大学開放の可能性
・・・ 1
・・I1
・ I・4
・・・6
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・・ ・9
・i・11
・・・35
・・・48
・ t・58
・・・69
・ ・・79
第 1章 「住 民参 画 型」の 「大学 開 放」
第 1軒 「住民参画型大学開放」の志向
これ まで生涯学習 との関わ りで 「大学 開放」が捉 え られ るとき、多 くは 「公 開講座」
に焦点があて られ てきた、 とい うことがで きよ うO 確かに、大学が蓄積 した 「研 究」と
「教育」 の成果が、地域住民に広 く開放 され る とい う場合、授業料 を支払 う正規の学生 以外の人 に対 して 「学習機 会」を提供す ることは、積極的な意義 を持つ ものであるO従 来、成人の学習 は社会教 育の領域で取 り扱 われ てきたが、その中心が公 民館や図書館 ・ 博物館等の社会教育施設 で担われて きた こと、あ るいはカルチ ャー教室等の民間教育産 業 によって担 われ て きた こ とを考 えれ ば、大学が実施す る 「公 開講座」は、一部 はオー バー ラ ップ しなが らもこれ らと異 なる重要 な役割 をはた してきた、 とい うことがで きよ
う。
勿論 、図書館 な どの大学の施設の 「開放」 も広範 に行 われ てきたのではあるが、大学 の教育機能 の中核 を構成す る ものが 「講義」である とすれ ば、す なわち大学教具 による 教育活動が基軸 である と捉 えるな らば、 「公開講座」が重要な ものであるとい うこ とであ
る11。
ところで、社会教 育 ・生涯学習 をめ ぐる議論 では、この間 「参加型」の学習 とい うこ とが重視 され るよ うになってきている。 それ は、学習活動のプ ロセスに 「参加」す るこ と、あるい は教育学習プ ログラムの企画や学習活動 の事業運営 に 「参画」す る、 といっ た内容で捉 え られて きた2)0
そ うした議論の萌芽的な もの としては、「住民 (学習者)主体の講座運営」な どがあ り、
また、かつて青年団 を中心 と した 「共同学習運動」等 の実践 の積み重ね等 もあるのだが、
ここでは主 と して大学 で実施 され てきた 「公開講座」 との関わ りを念頭 において論点 を 整理 したい、 と考 えるO
ところで、 「公 開講座」へ の参加者 を地域住民 として設定 した場合、今 日の地域 生涯学 習 との関わ りも視野 に入れ る必要がある、と考 える。大学が地域 との関わ りをもって 「公 開講座」 とい う事業 を行わ ざるを得 ない、 と考えるか らであ る。
そ うした コンテ クス トで地域生涯学習 の展開条件 を考 えた場合 、 自治体においては財 政逼迫 の下で、行 政 の予算措置 はきび しくな り、専門職員 の配置は少な くな り、 さらに
「指 定管理者」 に施設 の運営 を委託す る傾 向が強 まってい る、 とい うこ とに注 目せ ざる を得 ない。 こ うした事態が進行す るか らこそ、 自治体 と大学 とで連携 す ることの意義が 一段 と高 まって きてい る、 とい うことができよ う。
ここで は、以上 の よ うな問題意識か ら、地域住民 の 「学び」 をサ ポー トす るもの とし て、主 と して 「公 開講座」に住民が 「参画」す るこ との意義 ・可能性 について論点整理 を図 る とともに、実践的にその可能性 を探究 したい、 と考 える。
第2節 「大学 開放」 をめ ぐる議論 と新 たな実践の展開
ー1‑
(1)社会教育 ・生涯学習 と 「大学開放」
「大学開放」について議論す る上で、 ここでは地域生涯学習の推進、 とい うこととの 関わ りで とらえなお してみたい3)0
周知 のよ うに、多 くの 自治体ではかつて社会教育行政 を担 当 していた部署が生涯学習 を担 当す るよ うになって きた。す なわ ち、社会教 育課が生涯学習課 と名称 を変更 し、多 少の事務分掌の変化があった として も、大枠 では変更がな く生涯学習課 が社会教育行政 をになってきた、 とい うことである。
勿論 、 自治体に よっては名称の変更 とともに内実が変化 した ところ、あるいは教育行 政 に社会教育課 を存続 させ 同時に首長部局に生涯学習課 を新設 した ところ もあるD そ う
した動 向について詳 しく検討す る余裕 がないので、ここでは地域生涯学習 とい うこ とが おおむね従来の社会教育行政 の延長線上 にある、 とい うことを確認す るに とどめたいO
社会教育行政がその事業展開を行 う上で拠点 としているのは、言 うまで もな く公民館 である、 とい うこ とがで きよ う。他 の社会教育施設 、す なわ ち図書館や博物館 と比較 し た場合 、社会教育施設 の中では施設 の設置数や職員の配置状況、予算 の処置状況 か らい って公民館が中心 となっている。
しか し、そ こで展開 され ている事 業や住民の学習活動 を概観 した とき、生涯学習社会 と言 われ る今 日の時代状況 にふ さわ しい実態 を示 してい る、 とい うことはで きない。従 来の社会教育の枠 を脱 した事業展 開 ・住民の学習活動 は、少 な くとも岩 手県や東北の状 況か らは十分確認す ることができない。
では、社会教育 と生涯学習について どのよ うに とらえるべ きかO
紙幅の関係 で この点 について詳 しく論 じる余裕 はないのだが、 この小論 に関わ って以 下の点 を指摘す るに とどめたい。
第‑ に、住民の学習 を、生活 を基盤 と した 「学び」にまで掘 り下げて捉 え直す必要が ある、 とい うこ とである。 日常的 に行 われてい るイ ンフォーマル な学び を視野 に入れ て こそ、様 々な学習要求や 学習活動 が、生涯学習 との関わ りで位置づ けるこ とが可能 とな る、 とい うことである。
第二に、それ とも関連す るが、 「学び」を 「生活規範 の変容」 とい う視点か ら捉 えてい くこ とが重要である、 と考 えるO フォ‑マル ない しノンフォーマル な教育活動 の場 で、
一定の与 え られ た 「教育 内容」を習得す る、 と捉 えるのでは充分住 民の 「学び」 を捉 え きれ ない、 とい うことである41。
第三 に、改めて労働 ・生産 ・生活過程 に立脚 した学習の捉 え直 しが必要であ る、 とい うこ とである。 これまで、社会教育行政が担 って きた教育学習活 動 は、主 として 「縦割 り行政」の枠 の中で行 われ てきた ものである。 労働者教育 は厚生労働省 が管轄 で、農民 教育 は農林水産省 が管轄 で、医療 ・健康 に関す る教育活動 は厚 生労働省 が管轄す る、等 々 とい うこ とである。勿 論、 これ までそ うした領域 に全 くこれ まで社会教育行政 が関与 して こなか った、 とい うことではない。 しか し、地域課題や 生活課題 を探 究す る場合 、 従来 の 「縦割 り行政」の枠 を積極 的 に踏み 出 してい くこ とは決 して充分追求 されて こな かった、 とい うことは否定できない と考 える0
第 四に、そ うした問題意識 に関連 す るのであ るが、労働 ・生産 ・生活 の営み に関わ る 学習 は、住民一人一人 に とって も基本 となる と同時に、家庭 ・職 場 ・企業 ・地域 といっ
た様 々な場面で、集団的 に課題解決 に取 り組む必要性が客観的に存在 している、とい う ことであるQ例 えば、地域 の活性化 といった課題 を設定 した場合、住民一人一人が 自己 の置かれている生活条件 に即 して 「学ぶ」 ことが追求 し得 ると同時に、実際に地域活性 化 を実現す る担い手の育成 も必要で あ り、 さらに地域活性化 を探究す る上で必要な条件 作 りを可能 とす るためには様 々な個人 ・団体 ・企業 ・行政 ・大学な どが 「協働」す る必 要があ り、そ うした コンテ クス トの中に生涯学習が位置づけ られ る、とい うことである57。
この ように考えた場合、地域生涯学習の推進 とい う課題 において、大学が 「大学開放」
とい う立場か ら積極的に コミッ トメン トできる領域は多様 に存在 している、とい うこと が確認で きるであろ う。
(2)「大学開放」の捉 えなお し
「独法化」後の今 日、 「大学開放」をめ ぐる議論の中で、 「研究、教育、地域 (社会) 貢献」 とい う課題 が多 くの大学で掲 げ られていることについて触れてきたい。
多 くの地方の国立大学 では、戦前 か ら尾 を引いている大学間格差 (いわゆる旧 7帝大 と地方の国立大学 との格差な ど)が存在す る実態 をふまえ、独立行政法人化後、積極的 に地域志向を強めてきている。その場合、 「研究」に重点がおかれ、地域の企業や行政か ら研究費を獲得す ることに重点が置かれ る傾 向を生み出 している。文部科学省か らの運 営交付金が削減 され る中で、外部資金の獲得が切実な問題 になっているか らである。
勿論 、地域の企業や行政 と連携 して研究課題 を設定 し、技術開発や地域課層の克服 に 科学的な展望 を与 えるこ とは、本来 の大学の役割 として位置づけることができよ う。 し か し、問題 なのは外部資金の獲得 に傾斜す るあま り本来の大学が果たすべ き役割 を喪失 す る、 とい うことである。学内研究費の配分や職員の配置、学生に対す る教育、「大学開 放」の内実に様 々な形で 「切 り捨て」傾 向がみ られ るよ うになってきている、 とい うこ
とが一部で指摘 されてい るO
こ うした状況 をふまえ、改めて 「大学開放」 を捉 えなおそ うとす るな らば、 「研究、教 育、地域貢献」 とい うものの内実 を どのよ うに捉 え、その内実 を実現す るために どの よ
うな条件作 りを行 う必要があるのか、 とい うことが問題 になる。
少 な くとも、大学が持つ機能 (研 究 と教育)お よび施設 (研究施設 ・機器、図書館 な ど)、 さらに予算 、そ して教職員の総体が どの よ うに 「大学開放」に積極的に関わ りを持 ってい くのか、 とい うことが充分吟味 され る必要がある、 と考 える。
(3)新たな 「大学開放」の指向
大学のあ り方 を考 える場合 、改めて地域社会 に とって どの よ うな存在意義があ り、 ど の よ うな役割 を果たすべ きか、 とい う点を考 えてみたい。勿論 、全面的な展開を行 う余 裕 はないのだが、以下の点に絞 って考 えてみたい。
研究課鰭の設 定において、積極的に地域課題 を位置づ ける、とい うことの意義である。
領域や方準論の違 い もあるので一概 には言 えないに して も、地方の大学 として グローカ ル に研究 を位置づ ける必要がある、 と考 える。 具体的に地域課題 を設定 し、アプ ローチ す ることの中か らグローバル に一般化で きる研 究成果 が生まれ て くる、少 な くともその 基礎的 な研究の積 み重ねが可能である、 とい うことが指摘 できるのではないだろ うか。
.3‑
教育については後ほ ど改 めて考察す るのだが、高等教育機 関 としての特質 とい うもの の捉 え直 しが必要 とされ ている、 と考えるO従来の 「公開講座」が、主 として大学にお ける研 究内容 ・成果 を地域住民に対 して分か りやす く紹介す る、 とい う性格が強かった とすれば、「高等教育」の特質その ものを 「開放」 してい くことが求 め られている、 とい うことである。 中等教育段階では実現で きない 「高等教育」の特質 とい うものを、積極 的に評価 し直 しそれ を 「開放」 してい くこ とが地域住民の 「学び」や地域生涯学習の推 進 に重要 な役割 を果たす 、 とい うこ とであ る。それ は、教育内容 と同時に教育方法 ・形 態 をも含 めて捉 え られ るべ きことである、 と考える。
第3節 地域生涯学習の展開 と 「大学開放J (1)地域生涯学習の展開条件
先 に も自治体 にお ける社会教育 ・生涯学習行政 の特徴 について触れ たが、 ここで改め て この間の行政の展開について考 えてみたい。
自治体が生涯学習 を推進 しよ うとす るに当たって、多 くの場合、生涯学習課 (‑部で は社会教育課)が担 当部署 と して位置づ け ちれ てい る。
教育行政が 中心にな り、首長部局 と連携 しなが ら地域生涯学習 を推進す るとい う体制 が とられ てい るものの、実質的には生涯学習課の事業 として位置づ け られ ている。
さらに、生涯学習課が行 う事業 は、所 管す る公 民館 ・図書館 ・博物館 といった社会教 育施設での事業展 開 も含 め、教育事業 と しての基本 的な性格 は、地域住民の学習 ニーズ に応 える とい う目標 を掲 げなが らも、実質的には これ までの事業の継続 に終始す る傾 向 が強い O
それ は、様 々な条件 に規定 されての こ とであるのだが、主要 な ものの一つ と して 自治 体 にお ける社会教育専門職員 の絶対 的不足お よび職員 の専 門性 の低 下 (力量不足) とい うことがあるもの と考 える。周知 の よ うに、財政 問題が深刻化す る中で社会教育専門職 員が削減 され る傾 向は強 まって きてい る。 また、 自治体職員の採用 ・人事異動 において は社会教育専 門職員 と して独立 させ るこ とが、非 常に困難 になって きてい る、 とい うこ とである。 一般 首長行政部 門 との人事異動 が一般化 し、社会教 育主事 の発令 は 「社会教 育主事講習」 を受講 した人 (教員 または公 民館 な どに配置 され た行政職員) に対 して行 われ 、 しか も3年程度で別 の職場 に異動す る、 とい うことも希 ではない。 また、弘前市 の例では、地 区公 民館 の運営 は社会教育主事 の資格 を有 しない非常勤職員 が中心 になっ ている、 とい う実態がある。
その ことは、一般教養重視 ・生活拡充型 の学習 内容 に集約 され る傾 向を強め ることと なる。比較的多い参加者 が見込 まれ る事業の実施 とい うこ とで、 「実績」重視、関係 国‑
の動員依頼 、過去 の受講者 ‑のダイ レク トメール 、 といった手段 で受講者 を確保 す るこ ととなる。
勿論 、 こ うした事業展 開を全面的に否 定 してい るのはないのだが、 また個人 に即 して みれ ば立派 な学習成果 を上げている事例 もあるのは言 うまで もないが、真 に地域課題 ・ 地域住 民が求 める学習活動 に積極 的 に応 えてい こ うとす る取 り組み は、結果 と して後退 せ ざるを得 な くな る、 とい うこ とで ある。 住民の学習 を育む といった姿勢 はやや もす る
と後退 しがちになる。
(2)住民の 自主的な学習活動 と地域生涯学習
行政が主催す る事業へ の参加者 と相対的に区別 され るところで、地域住民が 自主的に 学習活動 を展開 してい る事例は多い。学習活動 を主体 とす るサー クル ・グループ活動や 文化創造活動そ してボ ランテ ィア活動が、様 々なテーマ ・内容で住民の中で追求 され、
公民館な どを拠点 としてお こなわれているのである。
ここで簡 単に個人の学習活動 について整理 してお きたいのだが、今 日の社会状況に即 して、次の2点に しぼって触れておきたいo
第‑にインターネ ッ トの普及 と学習 との関わ りであるo 「情報社会」 と言われ るように なって久 しいが、今 日、イ ンターネ ッ トの普及がめ ざま しい状況にあって、住民一人一 人が 自己の必要 とす る情報の入手にあたってはイ ンターネ ッ トの利用 に依存す る傾向が 急激に強まってきてい る、 とい うことができよう。
勿論、その傾 向は地域 差 ・年代差 ・経済的差な どがあるのだが、全般的な傾 向である ことは間違いない。
ここで簡単に 「学習」 と 「情報の入手」とい うことについて触れておきたい。
とりわけイ ンターネ ッ トで様 々なサイ トか ら 「情報の入手」を行 うとい うことと 「学 習」とい うこととは、相対的に異なることとして捉 えたい。 また、 「情報の入手」とい う
ことで、自己の 「学習要求」を充足 させ ることができていると錯覚 している場合が多い、
と考える。
第二に、地域課題や生活課題 に取 り組む ことと地域生涯学習 との関連 について若干検 討 してお きたいD地域生涯学習の課題 に住民が主体的に取 り組む過程 を想定 した場合、
その取 り組 みの一環 として住民の主体的な学習活動の積み重ねがあ り、その学習活動の 一環 として (主要なもの として、基軸 となるもの として)
r
大学開放」の諸事業 を位置づ けることがで きるのではないだろ うか。つ ま り、地域住民の学習活動の基礎 となるものに、地域課嶺 についての調査研究活動 が設定 し得 るのであ り、その役割 は大学 において こそ積極的に果た し得 る、 とい うこと である。。社会教育主事の専門性 を構成す る要件 として、学習プ ログラムの策定があるが、
そのプログラム作成 におて不可欠 な もの として調査研究が位置づけ られ る。 しか し、そ の調査研究 についてみ る と、実際には社会教育職員 には充分 に実施す る条件はな く、外 部 に依存せ ざるを得ない とい うのが実情であろ う。 その意味では、大学が積極的に協力 できる範囲が広範 に存在す る、 と考える。
また、 自治体 の間で、社会教育 ・生涯学習を担 当す る職員 に大 きな力量の差が存在す ることも事実であろ う。
(3)個人学習か ら共同学習へ
地域生硬学習 について考 える場合 、まず は個人の 「学び」が措定 され ることになる。
しか し、個人学習 と比較す ると、共 同学習の場合 、個人の興味関心が強化 ・増進 させ ら れ る可能性が存在す る、 と考える。
その意味では、地域課題 ・生活課題 に取 り組む学習の組織化 が有意義であ り、実際に
‑57
地域課題 ・生活課題を克服す る条件づ くりを 目指す うえで、「共同学習」ない し問題状況 の共通の認識 ・理解は不可欠である。
換言すれ ば、個人的な学習活動が基本 となるとはいっても、個人が直面 している問題 には多様 なものがあ り、個人的な努力の範囲では解決が困難な地域課題 ・生活課題 につ いては 「共同学習」 を組織す る必要がある、 とい うことであるoo
また、個人が十分 自己認識 していない場合 も決 して少な くはない。た とえば、 日常生 活 を営む場面では、食事 の取 り方 についてある程度食や栄養 に関す る知識 を有 していて も、実際の生活の中では栄養のバ ランスが欠如 した食事 を取っていた り、特定の栄養素 を不足 させた り、逆に必要以上に摂取す る、 といった状況にある人が多い。結果 として 生活習慣病 を発症 させ る とい う事態 にいたって、 自己の食生活に問題があ り、早急 に改 善を必要 とす る、 とい うことになる。
こ うした個人における生活実践 と学習活動 との関連について考察 した場合、そ こには い くつかの基本的な論点が存在す るよ うに思 う。
第‑に、生活実践 と学習 との関連 をどの よ うに とらえるのか、 とい う問題であるo学 習 した ことが実践 にいか され る場合 も多いのではあるが、学習 と実践 とは相対的に別 の
ことして区別 され る側面を位置づける必要がある5)0
この よ うな学習 と実践 とを相対的に区別す る条件 と して、個人に蓄積 されたそれ まで の知識 ・経験、そ してそれ らに規定 された実践 を規定す る行動規範、 とい うものの役割 に注 目したいoつま り、一定の行動規範が確立 しているために、様 々な情報が提供 され て も、 さらに学習情報 を提供 されて も、基本的に行動規範が変容 しなけれ ば学習 した成 果が実践にいか されない、 とう構造になっている、 と考える。
第二に学習の質的条件 とい う面 を考 えてみたいo 同 じ講師の講義 ・講演 を聞いて も、
個人によって大 きくその学習効果は異なる、 とい うことがある。
講師の側 に即 してみた場合、参加者の問題意識や生活体験、予備知識の有無な どを ど の よ うに捉 え、それに対応 した講義内容になっているのか、 とい う問題である。 い か に す ぐれた、高度 な講義内容であって も、専門的な用語や難解 な言 い回 しな どであれ ば、
受講者が理解 で きない、 とい うことが生 じやすい。
第三に、学習方法にお いても、参加者の参加 のあ り方が大 きな要因 として作用す るこ とも否定できないOテーマ ・内容だけでな く、受講者 の参加 の度合い (「うけたま り学習」 か 「ワー クシ ョップ」か、等々)が重要な要因 となる、 とい うことである。その意味で は、今 日 「参加 体験型」の学習が追求 されていることは当然の ことである。
第 4節 r大学 ミュー ジアムボランテ ィア」における住民の学習 (1)「大学 ミュージアムボランテ ィア」の成立
大学 ミュー ジアムは、国立大学に限ってみた場合、かつて北海道大学農学部の附属施設 として、あるいは秋 田大学鉱 山学部 の付属施設 と して建設 された例 もあったのだが、東 京大学の総合研 究博物館 に示 され るよ うに、近年 「大学開放」が指向 され る中で新 たに 設立 され るよ うになってきた。
こ うした中で、周知 の ように岩手大学で も 「ミュー ジアム」が設立 され ることとな り、
その運営において展示解説 を住民のボランテ ィアにゆだねる、 とい うことになった。
日本の場合、平成7年が 「ボランテ ィア元年」 と呼称 されて近年急速 に理解が深化 ・ 拡大 してきているが、必ず しもボランテ ィア活動やNPO活動が広 く市民権を得ている
とは言 い掛 、状況にある。やや もす ると福祉の領域や災害の際に活躍す る、 といった固 定的なイメ‑ ジが未だに強い、 とい うことができよ う。
そ うした意味では、大学 ミュー ジアムの運営において展示解説 をボランテ ィアにゆだ ね る とい うことは、他大学の状況 と比較す ると画期的なことである、 と考 える。
(2)ボランテ ィア活動 と 「参加体験型学習」
地域住民が大学の開放に参加す る形態は、今 日では多様なものが存在 している。
こ うした中で、岩手大学の場合 、大学 ミュージアムの事業展開において地域住民がボ ランテ ィア として参加 しているのだが、 ここではボ ランテ ィア活動がす ぐれて 「参加体 験型学習」 とい う側面 を もってい ることに注 目したいOつま り、大学 ミュ‑ジアムの展 示解説 を機軸 としてい るのであるが、決 してそれ に とどまっているのではな く、活動の
中で 「参加体験型学習」を追求 してい る、 とい うことなのである。
第‑ に、展示解説 のため、展示 を担 当 した教員 によって研修がな され るのだが、それ は単 に 「うけたまわ り学習」に終 わってい るわけではない。実際に展示解説を行 うため に、 自分な りに最大限知識 ・情報 を収集 し、理解 を深 めよ うとして、極 めて実践的に行 われ ているものである。
第二に、ボランテ ィア集 団 として も個人的な努力の もの として も、積極的な学習活動 がお こなわれていることである。展示解説 とい う実践 と展示資料 に関す る学習 とが、「学 習一実践一学習」とい う展開過程 を成立 させ、学習効果 を全体 として高めてい るのであ
る6)Oその中では、ボ ランテ ィア内部での 自主的な研修活動 もお こなわれているQ
第三 に、展示解説以外 に も自主的な事業への取 り組みがある、 とい うことが注 目され る。 「宮津賢治 ツアー」 といったイベ ン トを 自主的 ・自立的に企画 し、実際に成功 させて い る。 当然 、その取 り組みの中で宮揮賢治 についての 「共同学習」が追求 されている。
この よ うに、ボ ランテ ィア活動 を遂行す る中で、展示資料や 関連す る事柄について、
多様 な実践的学習がお こなわれてい ることに注 目したい。
(3)展示解説 とボ ランテ ィア活動
ところで、博物館 において展示解説 をボ ランテ ィアが行 う、 とい うこ とが急速 に進展 して きてい る。今や ボ ランテ ィア活動の領域 の中で、博物館 の展示解説が絶大な人気 を 持 っている、 といわれているのである。
一般 的に考 えれ ば、博物館 にお けるボランテ ィア活動 は、展示解説 の他 にも調査研究 や資料 の収集 ・保 存 ・管理、 さらに展示や情報提供 な ども展開 し得 るものである。 ここ で簡 単に展示解説 をボランテ ィアが担 う意義について触れてお きたい0
お よそ博物館 を訪れ る人 は、その出身地 ・年齢層 ・職業 ・生活経験 の蓄積 ・学習歴の 蓄積 な どにおいて多様 である。 したがって、同 じ展示 を観 て も、興味関心の所在 は千差 万別 であるO
また、展示 を構成 してい る資料 は、個 々それぞれ において多様 な資料的価値 ・情報 を
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もつ ものであ り、それ は様 々な角度 (方 法論)か ら引き出 し得 るものである。 同 じ資料 で も、 自然 ・歴史 ・社会 ・文化等 々の様 々なな角度か ら価値 ・情報 を引き出す こ とが可 能である、 とい うことである。 したが って、専門的な知識 をもった、あるいは特定の研 究領域で特定の研 究方法で明 らかに され た資料の価値 は、それ はそれ として重要 なので はあるがそれ は同時に相対化 し得 る、 とい うことになるのである。逆 に言 えば、展示は 観 る人の興味関心の中で資料的価値 の内実が多様 な もの として存在 し得 る、 とい うこと である。
実際に展示場で解説 を行 う場合 、来館者 か らは様 々な質問が寄せ られ ることが多い。
あるいは同 じ解説 を行 って も、聞いてい る来館者 の反応 に違いがある、 とい うこ ともあ る。 それは、先に触れ た来館者 の、出身地 ・年齢層 ・職業 ・生活経験の蓄積 ・学習歴 の 蓄積 な どに規定 された興味関心の所在 の違 い、か らくるのである。
したがって、展示解説 は 「来館者 と解説者 の コ ミュニケ‑ シ ョン」 とい う性格 を もつ もの とな り、決 して 「専門的知識 を持つ人」が 「専門的知識 を持たない人」に対 して 「教 育す る」 とい うものではないのであ る。 だか らこそ、社会人 としての経験 を蓄積 した人 々がボランテ ィア として展示解説 を行 う積極的意義が存在す る、 と考 える。
第5節 夫学開放 と住民参加型学習 (1)大学にお ける教育 と 「学び」
先 に 「高等教育機 関」 としての特徴 である、 「高等教育」その ものの 「開放」 の必要性 について簡単に触れた。
ここで、大学 にお ける学習方法 ・形態 について今少 し考 えてみ たい。大学が高等教育 機 関 と して位 置づ け られ てい るゆえんは、基本 的 には大学が社会的 に最高水準 の研 究 を 行いその成果が学生の教育 に還元 され てい る、 とい うことであろ う。 と同時に、 「自立的 な学習」が行 われ る とい うこ とも重要 な要素であ る、 と考 える。 つ ま り、 自らの問題意 識 ・興味関心 に基づ いて 自立的に学習 を積 み重ね、研 究成果 を学び取 ってい く、 とい う
ことが 「高等教育機 関」であるか らこそ実現 してい る、 とい うことである。
関連 して、大学 において学生が学習す る方法 ・形態 として、ゼ ミナール と卒業論文執 筆があることについて触れ てお きたい。
ゼ ミナール は、参加す る人 の 「主体的 な参加」 が前提 となった学習形態 であ る。共通 のテーマ ・内容 に も とづ き、個 々の参加者 が 自立的に学習 した成果 を もって 「討議」す る学習方法 である。 その場 にいて 「うけたま り学習」 に終始す ることは、基本 的 に許 さ れ ないのである。
また、卒業論文 の執筆 とい うことを考 えてみ たい。 卒業論文 を執筆す るに当た って、
先行研 究の論文 ・研 究成果 を批判的 に読み こなす ことが求 め られ る。 それ は、単 に レポ ー トを作成 す る場合 と異 な り、イ ンターネ ッ トのサイ トか ら 「情報 を入手」す るだけで す ま され る ものではない し、本文のま る写 しや要約 です ま され るもので もない。研 究論 文 を内在 的 に捉 え直 し、課題設 定 と研 究方法論 に対 して内在的 に批判す るこ とが求 め ら れ るので あ る。 さらに、先行研究の批判 とともに 自分 な りの仮説 の構築や方法論 の追求
・確 立が求 め られ るのであ る。 オ リジナル な 「自分の考 え」が求 め られ る、 とい うこ と
の意味 は大 きい、 と考え るOそ して 、文章 を書 きつづ る段階では、関連す る学問領域の
「ルール 」 をふまえるこ とを求め られ る。 用語や文章表現等 々において、社会的に通用 す るよ うな 「ルール」の習得が図 られ るのである。
勿論 、こ うしたゼ ミナールや 卒業論文執筆が、真に r高等教育」 を意味す るほ どに機 能 してい る とは言い難い、 とい う実態 もある。学生の 「学力低下」傾 向が指摘 され、ま た、学 生の主体的 な学習意欲 の低下傾 向が存在す る中で、様 々な問題 が存在 してい る。
しか し、 こ うしたゼ ミナールや論文執筆の過程 で教員 の 「指導」や一定の経験 を蓄積 し た先輩 ・院生な どに よる 「ア ドバイ ス」 が、高度 な教育機能 を発揮 してい る、 とい うこ とは再評価 され るべ きではないだ ろ うか。個人学習だけでは実現 しがたい、いわば学習 過程 の高度化 とい うものが、ある意 味では 「共同学習」とい う性格 を内在 させたゼ ミナ ール において実現 してい る、 と捉 えるこ とがで きるもの と考 える。 また、論文の執筆過 程 において、 「学問」や 「研究」 を担 う上で必要 とされ る学習 ・研究能力の、基礎的な部 分が形成 されてい く、 と考 えるO
(2)「大学開放」‑の住民参加 ・参画
「大学開放」に地域住民が参加 ・参画す る とい うことについては、 これ まで述べてき た よ うなボランテ ィア活動 を含 め、今後次第 に本格化 してい くもの と考 える。
それ は、 当面は大別すれ ば 「公 開講座」 のプ ログラムの作成段階 において住 民が参画 す る とい うことと、学習方 法において 「参加 体験型」の ものを実施す る、 とい うこ とに なる。
先 に触れ た 「高等教育」の 「開放」 とい うことも視野 に入れ た場合 、今後 「科 目等履 修 生」 としての受 け入れや 「授業」 の 「公 開」だけでな く、ゼ ミナールや卒業論文の執 筆 とい った場面 に も地域住 民が参加 し得 る と考 えるが、機械 的にそれ を行 うべ きだ、 と い うのではない。地域住 民 を対象 と して、正規 の学生 とは条件 が異な るものの、住民の 学習 を 「高等教育」 レベル まで高 め るこ と、 あるいは 「高等教育」の特質 を活か した も の と して追求 してい くこ とが必要 とされ てい るのであ り、また、可能 である、と考 える。
そ うした コンテ クス トで 「公開講座 」のプ ログラムの作成段 階での住民参画、 あるい は、学習方法にお ける 「参加体験型」の ものの導入、とい うことが実践的 に追求 し得 る、
とい うこ とで ある。
第6節 小括
ここでは、 これ まで大学が行 って きた 「公 開講座」等 の事業 を中心に、その教育活動 としての到達点 を批判 的 に捉 える中か ら、今後 の 「大学 開放」 の在 り方 を探究 しよ うと 試みた。
これ までの 「大学開放」をめ ぐる議論 が、主 として 「研究」や 「教育」そ して 「施設」
の 「開放」といった領域 に即 して とらえが ちだった り、あるいは もっぱ ら 「教育」で も
「公 開講座」 に特化 した形で議論 され る候 向が強かった。
しか し、 あ らた めて 「高等教育機 関」 とい う特質 を充分ふま えた 「大学 開放」とい う こ とが追求 され るべ き時期 に来 てい る、 と考 える。 その意味では、岩手大学では各種 の
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公 開講座や授業公開な どの事業の他 に も、 「ミュー ジアムボ ランテ ィア」の活動 もあ り、
全国的にみて も注 目され る実演 を上げている、 と考 える。
今後、こ うした 「大学開放 」の活動が一段 と地域生涯学習の推進や住民の 「学び」 を 支 えるもの として発展 してい く条件づ くりが必要 である、 と考えるO
(藤 田 公仁子)
<注 >
1)「大学開放」については様 々な議論があるが、 ここでは小池源吾の整理 を紹介す るの に とどめたい。小池源 吾 「生涯学習社会 における大学」 (鈴木真理 ・佐 々木英和編著 『社 会教育 と学校』、第9章、学支社、2003年)a
2)「参加体験型学習」については様 々な研究成果が出 され てきている。例 えば新藤浩伸
「ワー クシ ョップの学習論」 (日本社会教育学会編 『成人の学習』、東洋館 出版、2004年 な どがある。
3)「大学開放」と地域生涯学習の今後の展望については、た とえば藤 田昇治 「大学開放 の将来展望」 (『弘前大学生涯 学習年報』、第7 ・8合併号、2005年)や木村純 「継続 高 等教育 と住民の生涯学習」 (日本社会教育学会編 『現代教育改革 と社会教育』、東洋館 出 版、2004年)な どがある。
4)この点については拙稿 「生活規範の変容」 (『岩手大学生涯学習教育研究セ ンター年 報』、第3号、2004年) を参照 されたい。
5)この点 に関 して、筆者 は 「知的 クラスター」 との関連 で言及 してい るので参照 され たい。拙稿 「生涯学習 と地域 にお ける知的 クラス ターの創成 」 (『岩手大学生涯学習教育 研究セ ンター年報』、第 1号、2002年」)0
6)学習活動の評価 については、近年急速 に関心 が高まって きてい る、 とい うことがで きよ う。その ことは、一面で様 々な場面で、 と りわけ職場 において 「成果」を どれだ け 上げたのか、 とい うこ とが厳 しく問われ るよ うになって きた ことと無縁 ではあるまいO とはいえ、 「教育一学習」の論理 として も、重要 な研 究課題 として設定 し得 るもの と考 え る。例 えば、木全力夫 「社会教育実践 にお ける分析 と評価」(『月刊社会教育』、国土社 、 2006年 2月号) とい った論文 もある。 いずれ に して も、教育論や その前操 となる人間 ・ 社会 の捉 え方 に深 く関わ った問題 である、 と考 える。 この点つ いては、別 の機 会 に検討
してみたい。
第2章 住 民の学 習要 求 と 「大学 開放」
第 1節 住民の学習活動 と地域生涯学晋ネ ッ トワーク I.住民の学習活動 とは
社会教育 ・生涯学習研究において地域住民の学習活動に焦点 を当てた場合、様 々な課 題設定 と方法論の追求が考 え られ るのではあるが、 日常的な生活の営みの中で どのよ う なテーマ ・内容 に関心せ いだき、どのよ うな活動 を行ってい るのか、 とい う点を明 らかに す ることが基本的な もの として考えられ よ う。
お よそ住民が学習活動 を展 開す る上で、(1)個人的な努力 ・生活習慣 の一環 としての 学習機会 に関す る情報の入手、(2)共同で学習す る 「場」の設定、(3)生活課題 ・地域課 題 等 に関す る一定の 「体系的 な」学習 を可能 とす る機 関 ・施設、(4)社会教育 ・生涯学 習 に関す る専門職員 の存在、(5)学習 した成果 をもとに実践す る 「場」の創造 、 といっ た ことが考 えられ る。 こ うした要素をシステム化す るもの として、「地域生涯学習ネ ッ ト
ワー ク」が構築 され る必要がある、 と考 える。
ところで、 これ まで 「県民カ レッジ」や 「市民カ レッジ」 といった名称で、地域的な 生涯学習ネ ッ トワー クづ くりが図 られて きた。社会教育施設 を含 め公的な教育行政が提 供す る学習機会は もとよ り、 「カ レッジ」 に協賛す る団体 ・機 関が提供す る学習機会に参 加 した場合 、それ を学習活動 として認 定 し一定の学習時間の積み重ねで 「卒業」 とし、
その 「卒業」 を学習 目標 として設定す ることで個人の学習 を促進 しよ うとした ものであ る。 「あお も り県民カ レッジ」は、平成 9年 10月にスター トして以来、全国的な先駆 と して これ まで注 目されてきた。様 々な課題 を抱 えなが らも、地域生涯学習ネ ッ トワー ク として重要な役割 を果た してきた、 と考 える。
ここでは、 こうした 「カ レッジ」 に 「学生」 として登録 してい る人 に焦点を当て、実 際に どの よ うなテーマ ・内容 に興味関心 をいだ き、 日常的に どの よ うな学習活動 を展開 し、「カ レッジ」に何 を期待 してい るのか、とい う点を検討 してみたい。「県民カ レッジ」 の現状分析 を中心に、「地域生涯学習ネ ッ トワー ク」の在 り方について検討 してみたい。
Ⅱ.「あお も り県民カ レッジ」の登録者 に対す るアンケー ト調査の結果 (1) 「あお も り県民カ レッジ」の概要
「あお もり県民カ レッジ」は、平成 9年 10月 にスター トして 10年 の年月が経過 し、
その中で確実に地域生涯学習ネ ッ トワー ク として発展 してきた、とい うことができよ う。
勿論 、それ は平坦 な道 の りではな く、様 々な試行錯誤 を重ね る中で進 め られてきた歩み であるO
現在 、 「あお もり県民カ レッジ」に登録 してい る 「学生」は、10,313人 と 1万人 を超 え、延べ卒業生は1,489人を数 え、協賛団体 (連携機関) も389と400近 くになってい
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