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Title 紅茶抽出物及び含有ポリフェノール成分におけるOATP2B1を介した食物-薬物間相互作用に関する検討 [論文
内容及び審査の要旨]
Author(s) 近藤, 安佑子
Citation 北海道大学. 博士(臨床薬学) 甲第13968号
Issue Date 2020-03-25
Doc URL http://hdl.handle.net/2115/77831
Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
Type theses (doctoral - abstract and summary of review)
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File Information Ayuko̲KONDO̲abstract.pdf (論文内容の要旨)
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
博士の専攻分野の名称 博士臨床薬学 氏名 近藤 安佑子
学 位 論 文 題 名
紅茶抽出物及び含有ポリフェノール成分における
OATP2B1を介した食物-薬物間相互作用に関する検討
近年、医療の目覚ましい発展により平均寿命が大きく延長し、世界的な高齢化社会を迎えてい る。特に我が国は世界に類を見ない水準で高齢化が進んでおり、2019 年現在、その高齢化率は
28.1%と、世界最高の値を示している。慢性の加齢性疾患は患者のQOL低下が著しく、これら疾
患の予防が重視されているが、その発症には酸化ストレスの関与が知られており、予防には適正 な抗酸化療法が重要である。その様な背景の中、病気の予防・改善、体調の維持、健康の増進な どを目的とし、健康食品やサプリメントを利用する国民が増加しており、2012年に行われた調査 では全体の75%の人が健康食品を利用したことがあるという結果が報告されている。市販されて いるサプリメントの中には抗酸化物質としてポリフェノールを主成分としている製品が多く存在 しているが、その体内動態やトランスポーターとの相互作用は明らかになっていない化合物も多 いのが現状である。したがって、その吸収過程における相互作用を明らかにすることは、サプリ メントの適正使用を図る上で重要であると考えられる。
OATP2B1は小腸、肝臓、肺、胎盤などに発現するトランスポーターであり、生体内における有
機アニオン系物質の輸送を担っている。小腸においては刷子縁膜側に発現し、消化管からのアニ オン性化合物の吸収に大きく寄与している事が知られている。その基質薬物としては、atorvastatin, fluvastatin, rosuvastatinなどのスタチン系薬物をはじめとし、glyburide, fexofenadine, mesalazineなど が挙げられ、OATP2B1が様々な構造を有した有機アニオン系薬物の吸収に関与していることが窺 える。中でも、rosuvastatinは現在、臨床現場において頻繁に用いられているHMG-CoA還元酵素 阻害剤であり、LDL-コレステロール値およびクレアチニンクリアランスを参照しながら投与設計 を行う薬物である。薬物が適切な血中濃度から外れると、低濃度領域においては治療効果の減弱、
高濃度領域においては横紋筋融解症を引き起こす原因となるため、他薬物及び食物との相互作用 も加味しつつ、適切な血中濃度を維持できるよう努める必要がある。
これまでに、そばなどの食品に含まれ、抗酸化作用を有するポリフェノールの一種であるrutin
により、OATP2B1の輸送活性が急激に増大することが報告されている。また、OATP2B1はアッ
プルジュース、オレンジジュース摂取時にその基質輸送が阻害されることが知られており、薬物 の体内動態の中でも特に吸収過程において、OATP2B1 を介した食物-薬物間相互作用を考慮する ことは薬物の適正使用を図る上で重要であるという事が言える。多くの食品やサプリメントに含 まれるポリフェノールは、その構造上、生体内ではアニオンとして存在している事が多く、
OATP2B1を介した相互作用を引き起こす原因となる可能性がある。
そこで、本研究では、OATP2B1の基質輸送能に影響を及ぼすポリフェノール類を明らかにする 事を目的とした。
第一章では、OATP2B1強制発現細胞を用い、日常生活において摂取する機会の多いまたは高濃 度で摂取する可能性のあるポリフェノール類をピックアップし、OATP2B1 の典型的基質である E3Sの輸送に与える影響の検討を行った。その結果、10 µMにおいて、紅茶葉に含まれるポリフ ェノール類であるTF-1が特に強いOATP2B1阻害効果を示した。この事から、他のtheaflavin類 にも注目し、その阻害様式に関する検討を行った所、TF-1はOATP2B1の基質となり競合的に他 の基質輸送を阻害する事、およびTF-2A, TF-2B, TF-3はOATP2B1の基質とはならずにその基質 輸送を阻害する事が明らかとなった。また、紅茶抽出物に関しても、その基質輸送への影響を検 討した結果、10%の紅茶抽出物はOATP2B1によるE3Sの輸送を強く阻害する作用がある事が明 らかとなった。以上の事より、紅茶抽出物とそれに含まれるポリフェノール類は食物-薬物間相互 作用を引き起こす可能性が示唆された。
第二章では、実際に臨床現場で用いられているOATP2B1基質薬物であるrosuvastatinを用い、
theaflavin類及び紅茶抽出物がその輸送に与える影響の検討を行った。その結果、いずれの化合物 においても、E3S同様にOATP2B1によるrosuvastatinの輸送を阻害する効果を有することが明ら かとなった。さらに、紅茶抽出物に注目し、その OATP2B1 に対する阻害効果の持続性を検討し た結果、紅茶抽出物による阻害効果は添加後1分からすでに発現しており、少なくとも500分間 は持続する事が明らかとなった。この事より、紅茶抽出物によるOATP2B1 の阻害効果は持続的 であり、食物-薬物間相互作用を考える際には、同時摂取のみではなく薬物服用前の摂取も避ける べきであるという可能性が示唆された。また、in vivoにおける検討の前段階として、ヒト小腸モ デル細胞である Caco-2 細胞を用いた透過実験を行った結果、紅茶抽出物の併用は低用量 rosuvastatinの透過を阻害し、高用量rosuvastatinの透過を促進する事が明らかとなった。以上の結 果より、紅茶抽出物はin vitroにおいてrosuvastatinの輸送に影響を与える事が明らかとなった。
第三章では、Wistar雄性ラットを用い、in vivoにおいて紅茶抽出物の併用がrosuvastatinの体内 動態に与える影響の検討を行った。その結果、低用量rosuvastatin投与時、紅茶抽出物はrosuvastatin のAUC0-8及びCmaxを有意に減少させた事から、その吸収を阻害する作用がある事が示唆された。
また、高用量rosuvastatin投与時、紅茶抽出物はrosuvastatinのAUC0-8及びCmaxを有意に増加させ た事からその吸収を促進する作用がある事が示唆された。以上により、in vivoにおいても、紅茶 抽出物の併用はrosuvastatinの体内動態に影響を与える事が明らかとなった。
本研究により、日常生活において摂取する機会の多い飲食物である紅茶抽出物とrosuvastatinの 間で相互作用が起こる可能性が存在することが示唆された。本知見は食物-薬物間相互作用の観点 から、適正かつ安全な薬物療法を行うための一助となる事が期待される。