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学術著作物 の著作権保護能力 につ いて

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(1)

学術著作物 の著作権保護能力 につ いて

‑ 西独

BGH l)

判決 を中心 に して‑

久 々湊

1.は じめに

私 は,先 の拙 論 にお いて,著作 物概 念 を検討 した際 に,学 術 著 作 物 につ い て 触 れて お いた

2

'。 その際学術 著 作物 の特 徴 を示 す重要 な裁判 所 の判 断 が 示 され て い る もの と理解 した 3)

また近 時漸 次増 加 傾 向 にあ る著 作権 法 関係 の判例 の中 に学術 著 作物 に多少 と も関連 す る ものが意 外 に多 い ことを発 見 した

3)

。 また特 に コ ン ピュー タ ー ・プ ログ ラムの著 作物 性 が肯 定 され て以来 ,更 に これ を必要 か つ十 分 に保護 す るた め に著 作権 法 が どの程度 寄与 で き るか ,コ ン ビュ‑ クー ・プ ログ ラムを十 分 に 保 護 す るため に は著 作権 法 に は限界 が あ るので はな いか とい うよ うな問題 が提

出 され て い る

原稿提出日 :

1 9 90

7

2 8

1

)BGH ‑Bunde s ge r i c ht s hof

(連邦通常裁判所)

2 )

拙稿 「作品の哲学 と著作物概念」 『法 と法学の明日を求めて 』 (片山金章 先生 追悼 論文集)勤草書房1

9 89

年3

21

頁以下

,32 7

頁。

3 )学術著作物に関する事件であることを明示 した もの :東京高判 昭和46

2

2日

(地球儀用世界地図)判例時報6

43

号93頁,横浜地判昭和5

8

3

3 0

日 (スペース ・ インベーダー ・ゲーム)判例時報1

0 81

号1

25

頁,大阪地判 昭和5

9

1

2 6

( STR ATEGY X)無体集1 6

1

号2

6

頁,東京地判昭和5

9

5

1 4

日 (アメリカ語要語集) 無体集1

6

2

号31

5

頁;素材の選択,配列 に著作物性を認めたもの:前掲東京地判昭 和5

9

5

1 4

日 ;技術思想の表現 は選択の余地が少ないか ら利用が許容 され る旨の 判断 :大阪地判昭和5

4

2

2 3

日 (冷蔵倉庫)判例 タイムズ

3 8 7

号1

45

頁。 別冊 ジュ リス ト

91

号著作権判例百選1

9 87

年 に掲載 された事件 を分類 した結果 は,言語3

5

(内学術2

8

件),音楽2

3

件,美術1

5

件,図形1

0

件,映画1

0

件,写真

3

件,プログラム

3

件に区分 され,言語以外にも学術的色彩のある事件を見 ることができる。

〔1〕

(2)

2

41

2

この よ うに重要 な課題 の解 決 を稔 りあ る もの にす るため に も,学 術 著 作 物 の 著作権 法上 の保護 可 能性 お よびそ の特 殊 性 を調 査 す る ことが有 益 で あ り,不 可 欠 で あ る と も考 え るので あ る

この よ うな視点 は決 して一 人 よが りの考 え に よ る もので な く,フー プ マ ン教 授 も注 目され て い る

4)0

そ こで本 論 にお いて は,わが国著 作 権法上 の学 術 著作 物 の地位 を確 認 し,わ が国 の判例 に示 され た判 断 を更 に深 く洞 察 し批判分 析 す る足 がか りを作 るため, 西 ドイ ツ

BGH

(連 邦通 常 裁判所 ) の

6

つ の判例

5)

を紹 介 し,これに対す るフー

プマ ン教授 の検討 と批判 を理解 す る ことに努 め たい。

2.

わが国著作権法 における学術著作物の地位

著作 権 法 が保護 す る著 作 物 は,文芸 ,学 術 ,美術 又 は音 楽 の範 囲 に属 す る著 作物 とされて い る (著作 権 法

2

1

1

号)。一 方 著 作 権 法

1 0

条 は,著 作 権 法 に よ って保 護 され る著作 物 の種 類 を定 め 6),著 作権 の支 分 権 の一 部 は,特 定 の

4)He i nri c h Hubmann

,

" Be r i c htt i be r di e Re c ht s pr e c hung z um Ur he be r‑

undVe r l ags re c htde rl e t z t e nJahr e",JZ ( Jur i s t i s c heZe i t ung

法曹時報)

1 9 85 , S.1 2 0f f;de r s. " De r Sc hut z wi s se nsc haf t l i c he r We r ke und de r wi ss e nsc haf t l i c he n Le i s t ung durc h das Ur he be r r e c htnac h de r Re c ht ‑ s prec hung de s De ut s c he n Bunde s ge ri c ht s hof s" i n Ur he be r r e c ht und kul t ue l l e Ent wi c kl ung ( Fe s t sc hr i f t z um 6 0. Ge bur t s t ag Y on Ul r i c h Uc ht e nhage n 〔 UFI TA 7 5〕) 1 9 87,S.1 7 5 f f

. (以 下 「フー プマ ン

UFI TA」

と略す)0

5 )

前掲

UFI TA

においてフ‑プマンが取扱 っている判例 は

7

つ あって,割愛 した判 例 は

,1 9 85

5

9日のBGHの " I nkas so‑ Programm"(

現金取立 プログラム) 事件

( GRUR 〔 Ge we r bl i c he rRe c ht s sc hut zundUrhe be r re c ht

工業有権 法及

び著作権法〕1

9 8 4,65 9 )すなわちコンピューター ・プログラムに関する重要判例で

ある。 この判例 は,学術著作物に関 して も他の

6

つと同様あるいはこれ よ りも詳細 かっ長文に亘 る判例で重要であるが,これはコンピューター ・プログラムの解説 の・

機会あるいはコンビュ‑タ一 ・プログラムに関する著作権の権威者の研究 を待 ちた

。6

つの判例 はそれぞれ全文を訳 して単独で研究する価値あるものであ り,さ ら にこの

I nkas s oI Programm

事件 は,コンピューター ・プログラムを著作権法 に 導入 した最初の極めて重要な判例であることを指摘するに止める。

6)

建築著作物を美術著作物に包含せず,独立の著作物類型 としたところにわが国著作 権法の特徴がある

(3)

学術的著作物の著作権保護能力について

3

種類 の著 作 物 につ いて の み生 じ

7 )

,また著 作権 の制 限 に関 す る規 定 も,あ る も の は特定 の種類 の著 作物 に関 す る もの と して規 定 され て い る8)。 した が って著 作物 の内容 と種類 が

1 0

条 にお いて明確 に されて い るわ けで あ るか ら,

2

条 に お け る定 義 に示 され る 「文 芸 ,学 術 ,美 術又 は音楽 」 とい う文 言 は, 著 作 物 の概 念 の決定 ,あ るい は著作 権 法 の機 能 にお いて どの よ うな役 割 を持 っ ことに な る のだ ろ うか。

この

4

つ の概 念 のなかで ,音 楽 はわが国 のみが明確 に付 加 して い る もの で あ り9),それ以外 につ いて も,その 出発点 は

l i t e r at ur e

art

2

つ の概 念 で あ る

1 0 )

。 そ の際

1 i t e r at ure

の中 に

s c i e nc e

を読 め な い と考 え る主 張 が これ をli

t e r at ur e

か ら分離 せ しめ た もの と考 え る

近 時 そ の領 域 を大 別 す る際 に,芸 術 と学 術 の

2

つ に大 別 す る意 見 が有 力 で あ る11)0

わ が国 が近 代 的著 作 権 法 (旧著作 権 法) を制 定 した明治

3 2

年 ,そ の施 行 日 に ベル ヌ条 約 に加盟 した ので あ って ,諸規 定 は相 互 に対 応 して い るので あ る の ベル ヌ条約 は,文 学 的及 び美 術 的著 作 物 の保 護 に関 す る条 約

( oe uvre sl i t e ‑ r ai r e se tar t i s t i que

に関す る条約 ) とな って い る

そ の概 念 の 中 で 文 芸 学 術

の著作 物 とは,わが著作 権 法 の起 草者 の解説 に よ れ ば

,

「同 盟 条 約 二所 謂 文 学

7 )

口述権 は言語のみ

( 2 4

条),展示権 は美術,写真のみ

( 2 5

条),上映権 と頒布権 は映

画のみ

( 26

条) に認められる。

8 )45

乃至

4 7

条 は美術,写真のみ

,4 7

条の

2

はプログラムのみに関する規定である。

9 )

欧米では

,ar t ,Kuns t

(芸術)の中に美術 も音楽 も包含 されるが,わが国で は音楽 を美術の中に包含できないか らである。

1 0 )

著作権の保護の対象 は,まず

1 i t e r at ur e

であったのである。 米国の著作権法が久 しく著作物の概念を

wr i t i ng

という一語 によって表現 して いた ことも象徴的で あ る。

ll

)Andr z e iKop f f, " Thei nf l ue nc eoft e c hni c alpr ogr e s son de ve l opme ntof c r e at i v i t y and t hel aw ofi nt e l l e c t ualpr ope r t y"i n Re c ue i lde s Cour s 1 9 8 5 ‑ Ⅰ( Tome1 9 0del a c ol l e c t i on)p.9 0‑1 8 7

(

1 1 1‑1 2 7

)

,e s pe c i al l y p.

1 1 7; Pat r i c k Tr ol l e r , " Li t e r at ur eund Ur he be r r e s ht "i n 1 0 0Jahr eURG ( Fe s t s c hr i f t z um e i nhunde r t j ahr i ge n Be s t e he n e i ne s e i dge nos s c l l e n Ur he be r r e c ht s ge s e t z e s 〔i n Sc hr i f t e n z um Me di e nr e c ht〕)1 9 8 3 Be r n S 2 3 9 ‑2 4 9,2 4 2;

ドイツ連邦共和国憲法 (ボン基本法)

5

3

項 の次 の規定 も参考 と なろう。「芸術及び学問,研究及び教授 は自由である。教授の自由は,憲法にたいす

る忠誠を免除するものではない」,宮沢俊義編 『世界憲法集

』3

1 9 8 0

年岩波文庫

1

6 1

頁。

(4)

4

41

2

的著 作 物

( oe uv r e sl i t e r ai r e )

卜同 一 意 義 ニ シテ言 語 文 字 ヲ以 テ吾 人 ノ思 想 ヲ 言 顕 ‑ ス一 切 ノ製 作 物 ヲ云 フ

」1

2)の で あ る。

これ に対 し,万 国 著 作 権 条 約 に お い て は

,

「文 学 的 ,学 術 的及 び美 術 的著作 物 」

( l i t e r ar y,s c i e nt i f i canda r t i s t i cwo r ks )

とな って い る が (前 文 ,第

1

条 等 参照

)1

3), この文 言 は歴 史 的 発 展 の 中 で 理 解 す る こ とが で き る と して も,保 護 領 域 を決 定 す る た め の究 極 的 な表 現 とす る に は足 りな い。 そ の歴 史 的発 展 は,莱 米 独 仏 の著 作 権 法 上 の表 現 とそ の変 遷 を見 て ゆ くと さ らに理 解 が深 くな るが

1 4 ) ,

む しろ10条 に詳 細 な分 類 を行 って い る の で あ れ ば ,包 括 概 念 と して は学 術 と芸

( s c i e nc eanda r t;Wi s s e ns c haf tundKuns t )

と い う表 現 が す っ き りす

以 上 著 作 権 法 の構 成 に お け る学 術 著 作 物 は,そ の 内 容 につ い て 限 定 も制 約 も 受 けて い な い。 しか し文 化 とい わ れ るそ の外 延 を い さ さか 不 明 確 に して い る領 域 の 中 で ,学 術 は芸 術 と共 に重 要 な部 分 領 域 で あ り,両 者 は種 々 の 点 で そ の 性

1 2)水野練太郎 , 『著作権法要義全 』有斐閣明治3 2

1 0

頁。

1 3)

しか しこの

3

分法 はすでにベルヌ条約 に存在 す るのであ り,最初 の ベル ヌ条 約 の文 面 において,1条 に示 め され る 「文学的及 び美術 的著作物」 は,

4

条 にお いて,例 示 され,最後 に 「文芸学術 ノ範囲 二属 スルー切 ノ著作物」 と定 義 されて い る,文 部 省管理局 『著作権関係条約集 』著作権資料

CC

一第

4

号)昭和25

9片 1

頁 ,

2

参照。

1 4)

これ らの概念 を整理 して,学術著作物 の適切 な地位 を確認す るため に は,事 物 の本 性 を極 めよ うとす る態度 ,法思想 の発達等 と共 に,条約 や これ と相互 に影響 し合 う 各国の法律 の沿革 を認識す ることが必要 であろう。著作権法 の出発点 は印刷 術 の発 明 にあ った訳 であるか ら,歴史的に もまず 「文学的

( l i t e r a r y)

著作 物」 を保護 す る ものであ った。 この 「文学」 と訳 された ものは,日本語 に正確 に訳 し切 れ て はお らず

,

文字 に関す る」 とい う意味 に理解すべ きであ り,そ こには学術 の概念 が当然 に含 まれていたのである。 これ に対 し複製術 の更 なる発展 が,芸術

( ar t )

を取 り込 んで保護す ることを要求 したのであ り,そ こで

1 i t e r a r yandar t i s t i c

とな るので ある。 わが国で は

a r t

を美術 と訳 し,その中に音楽 を包含 しきれなか ったので, さ らに 「音楽」 の文言 が付加 されたのである

ドイ ツ語 で は

Tonkuns t

が音 楽 で あ り,日本 における美術 に相 当す るものは,かえ って

bi l de nde nKun s t

と言 わ な け ればな らな

い。

英国の著作権法 は,以上 に論 じた もの とはいささか異 な って

,

文学的,演 劇 的及

び美術 的」 とな ってお り,これ は立法上 の発展 を示す もので あ り,改正 によ りまず 演劇的著作物 の保護 が加 え られ,次 に美術や音楽 の保護 が さ らに規定 され たか らで

あ る。近代著作権法上 は英国が フランスよ りも古 いのであ る。

(5)

学術 的著作物 の著作権保護能力 について

6

質 や機能 を異 にす るものであ るか ら,著作権法上 の取扱 い も相違す ると ころが あ って も不思議 はない。性質 の異 な るものに普遍的な唯一 の原理 ,原則 を適用 す ることによって適切 な権利保護 を阻害 しないよ うに注意 しなければな らない。

それ にはそれぞれの事物 の本性をで きるだ け正確 に把握 し,適切 ,適量 の保 護 を与 える法的なメル クマールを確認す ることが必要 であ る

3.

西 ドイツの学術著作物 に関す る最近 の判例

1)空港設計図事件

1 5 )

〔事実 〕原告

X

は,民間空港 の設計 を請 け負 った被告

Y

に⑳ の表示 を付 した 空港全体 の構想 ,すなわち滑走路 ,交通路 ,街路 と軌 道 の位 置,必要 な建物 の 種類,位置及 び形状 を書 いた

2

枚 のスケ ッチを渡 した。 Ⅹ設計 の基 本思 想 は, 直線 の街路が滑走路 間の中間を走 っている空港 は,航空機にとって必要なブ リッ ジにつ いて欠陥を有す るとい う点 に着 目 して,通関棟 の中心 を走 る直線 の街 路 の代 わ りに通関棟 をU字形 に包囲す る開放街路 によって上記 ブ リッジの建物 を 回避 しよ うとす るものである。 そ して これを達成す るため,通関棟群 を滑走路 に沿 ってではな く,これ に対 し直交す る方向 に配置 した。 ⅩはYに対 し建築 美 術著作物 に対す る草案 (著作権法

2

1

4

号)及 び学術的及 び技術 的性質 を 有す る描 出

( Dars t e l l ung)

(同項

7

号) に関す る著作権 を侵害 し,またYに信 託 した図面 によるものであるとい う理 由か ら,不正競争防止法

1

条及 び

1 8

条 に 違反す ると主張 し,5万 ドイツマルクの損害賠償 を請求 した。Yは反訴 によ り

Ⅹの著作者人格権侵害不存在 の確認 を求 めた。地方裁判所 は訴 を棄却 し反訴 を 認 めた。控訴裁判所 は,損害賠償請求 をみ とめて請求額 につ き地方裁判 所 に差 戻 した。反訴が棄却 されたのでYは上告 し,反訴 が認 め られそれ以外 は控訴 裁

1 5)BGHZ ( Amt l i c heSamml ung Yon Ent s c he i dunge n de s Bunde s ge r i c ht s ‑ hof si nZi v i l s ac he n

連邦通常裁判所民事判決 集)

7 3,2 8 8,1 5.1 2.7 8Fl ughaf e n‑

pl ane;GRUR 7 9,4 6 4;UFI TA 8 5,2 5 4;Sc hu lz eBGHZ

(シュル ツェ編連邦 通常裁判所判例集)

2 5 7; MDR ( Monat s s c hr i f tf urDe ut s c he sRe c ht

月刊 ドイ ツ法雑誌)

7 7,7 3 1;N J W ( Ne ue J ur i s t i s c heWoc he ns c hr i f

t新法曹週報)

7 9

,

1 5 4 8.

(6)

6

4 1

2

判所 に差戻 された。

〔判 旨 〕

控訴裁判所 は,Ⅹがその図面 で通関棟‑の通行 が妨 げ られない (しか も滑 走路 に対す る妨害及 び これによる妨害がない) よ うにす るとい う問題 のために 提案 した解決手段 は新規 であるばか りでな く創作的給付

( s c h

a

pf e r i s c heLe i s ‑

tung)であ ることを決定 的な もの として認 めた。 その際控訴裁判所 は,原告 の 図面 の実質的な内容 とそ こに表現 された技術思想 を念頭 に置 いているこのよ うな観察方法 は,しか し著作権法

2

1

7

号 の規定 に合致 しない。 この規定 はな るほど学術的及 び技術的性質 の描出 (図面,平 面 図,地 図,スケ ッチ,図 表及 び立体的描 出のよ うな) を著作権法上保護 され る著作物 の範囲 に含 め,そ

してその場合著作権法

2

2

項 によ りこの著作物‑ す なわ ち係争括 出物‑

が個人的精神的創作物であることを前提 と してい る

しか し著作者 の個人的精 神的創作物 はその描 出 自体,すなわちその形式形成 になければな らない。 これ に対 し控訴裁判所が 目標 に したその描 出の学術的 または技術的内容 の創作的意 味内容 は問題 とな らない。著作権法

2

1

7

号 のかか る解釈 は,著作権 保護 の本質 とその技術的保護法 との限界 に反す る。 ある著作物 の学術的及 び技術的 思想財‑ 学術的及 び技術的理論 それ 自体‑ は著作権法保護 の対 象 で はな く,

したが って また技術的理論 を再現す るスケ ッチの保護能力の根拠 に祭 り上 げる ことはで きない。 かか るスケ ッチの著作権法上 の保護能力 は,その根拠 を もっ ぱ ら描 出の‑ 必然的 に創作的な‑ 形式 に見 出 し得 るにす ぎない。」

2)

モヌメ ンタ ・ゲルマニアエ ・ヒス トリカ (舌代ゲルマン史資料)事件

1 6 )

〔事実 〕原告 Ⅹは ドイツ中世史 の網羅 的な史料集大成であ る 「モヌメ ンタ ・ ゲルマニアエ ・ヒス トリカ」 の刊行者 である公法上 の企業体で,刊行物 の名 称

と同一 の名称を有す る。 この企業体 は

1 5 0

年以上 も前 に 「ドイ ツ古史学 協 会」

と して設立 され,この史料 は 「史家部 」

,

「法律部」,「文書部 」

,

「書 簡 部 」,

1 6 )GRUR 8 0,2 2 7,7 .1 2 .7 9Momume nt aGe r mani aeHi s t or i ka;UFI TA

8 7,2 7 7 ;Sc hul z eBGHZ2 6 3;MDR 8 0,6 8 2 .

(7)

学術 的著作物 の著作権保護能力 につ いて 7

古書部」 の

5

部門 に分 かれ,これ らの部門が巻 ,編 でい くつ に も分 か れて い

被告

Y

1 680

年以来存在す る出版企業で

1 964

年 ベル リンよ りチ ュ‑ リッヒ に移転 し現在 に至 っている

1 91

17月 3日の2つの契約書 によ り,YはⅩよ り 「最古史家篇」 の最 終 巻 (Ⅴ巻) の出版 と 「書簡部」及 び 「古書部」の四折版 の刊行 の継続 を許 され,

「ゲルマ ン期史家篇」 の

1

部 の出版権 を受 けた

。 1 922

年 に は 「史家部

及 び

文書部」 の中の 「ドイツ語史家編」 の将来 の著作物 に対 す る権利 を諸 め られ

た 。

1 972

8

1

1日の文書 によ り,ⅩはYとの契約関係 を,重大 な理 由 に基 づ き 直 ちに解除 し,補助的 に将来 の総 ての著作物 に対 し著作権法

40

条 に基づ いて解 約告知 した。

Ⅹは

Y

1 973

年及 び

1 97 4

年 に集大成である 「モヌメ ンタ ・ゲルマニアエ ・ヒ ス トリカの第

2

版 を無権限で度 々市場化 した と主張 し,差止 めを求 めた 止 めを求 めた範囲 は,出版地域 と して ドイ ツ連邦共和国,スイス及 びオ ー ス ト

リア,書籍 の内容 は, 「ドイツ語史家編」第Ⅳ巻第

2

部 「チ ュ リンゲ ンの フ ロ ンメ ン方伯 ルー トウィッヒの十字軍遠征」及 び 「書簡部 」 四折版 第 Ⅳ巻 の

61 7

亘及 び

639

頁の索引及 び同第 Ⅴ巻第

1

部及 びカールHに起 因 す る部分 か らそれ 以上 の個人 的に詳述 されたテキス ト章句 (注 と概説)及 び ドイツ語 カ ロ リンガ 期文書第

2

巻 「カーⅢ世文書」,さ らに出版地域 を ドイ ツ連邦 共和 国 に限 っ た書簡の内容 「ドイツ語史家篇」第

V巻第 1

部 「オ ッ トーカールのオース トリ ア韻文年代記」, 「ドイツ語史家篇」第 Ⅴ巻第

2

部 「オ ッ トーカ ールの オ ー ス

トリア韻文年代記」及 び 「ドイツ語史家篇」第Ⅵ巻

「 9 5

の領地 のオース トリア 年代記」 であ った

ミュ ンヘ ン Ⅰ地方裁判所 は

1 97 6

8

1

1日に一部 を中間判 決 し,他 を

1 976

1 2

1 5

日で最終判決 した。 また もう

1

つの訴訟 が係属 して い

たが,ミュンヘ ン Ⅰ地方裁判所 は実質的 にⅩの請求 を認 め一部 を棄却 した。 都

3

つの地方裁判所 の判決 に対 し

Y

は控訴 したが

,

Ⅹは控訴棄却 を求 め る と共

1 976

1 2

1 5

日の ミュ ンヘ ン Ⅰ地方裁判所の最終判決 に対 して付帯控訴 し,

Y

の損害賠償義務 の確認 を求 めた。控訴裁判所 は

Y

の控訴 を棄却 し,原告 の付

(8)

4 1

2

帯控訴 につ いて は

,1 9 7 9

1 2

1 5

日の ミュ ンヘ ン Ⅰ地方裁判所 の判決を変 更 し YはⅩに対 し認 め られた差止請求 の基礎 とな った侵害行為 によ り損害賠償義 務があることを確認 した。

〔判 旨 〕

控訴裁判所 は,法律 に違反す ることな く,争 われたテキス トの著作 権保護 能力を肯定 した。 その解決 によれば,個人的精神的創作物 とい う特 徴 は,言語 の表装か らはそれ ほど由来せず学術 的内容 か ら来ているしか しこれを控訴裁 判所 は正 当 に も学術的理論 それ 自体 に関係付 けなか った

( BGHZ7 3

2 8 8

頁,

2 9 0

頁空港設計図事件)。 む しろ以下 に詳述 す るよ うに,措 出 された学術 的資料 の創作 的収集 ,配列及 び提示 の中 に特徴 を見 た。 この控訴裁判所 の判 断 は,本 法廷 の先例 とも合致 してお り,これ によれば創作的給付が形式付 与 ,材料 の単 な る収集 ,分類 あるいは配列 の中に示 されていれば充分であるとしている (B

GH GRUR 1 9 6 1

8 5

,8 7

頁,だ ま し箱事件 )。 訴 の請 求 に延 べ られ た 概説 と注 は,著作権保護 を正当化す る創作的内容 を有す るとい う事実審 の判 断 は,法的な根拠 があるか ら異議 を差挟 む余地 はな く,その収集 ,配列 及 び提示 が事実審裁判官 によ り保護能力あ りとされた中世 の古文書‑の論及が問題 とさ れている

この ことはまた上告趣 旨書 にのべ られた 『書簡部』第Ⅵ巻第

2

2 8 8

貢 の注

7

につ いて も同様 である。」

控訴裁判所 に従 って 『書簡部 』第Ⅳ巻

6 1 7 ‑6 3 9

亘 の索 引の著作権保護能力 も肯定 しなければな らい。個 々の事実 を

1

つの索引に単 にまとめることは,そ れが労力 を費や し,時間のかか る場合 であ って も著作権保護能力 の根拠 と して 充分 ではない。 しか しかか る索引 は配列 と描 出が創作的精神的給付 とみ られ る 場合 には保護能力がある

‑‑・その巻を学術研究 のために手 に取 る者 は,その 索 引の中 には何ん とすべての氏名が出ていること,ラテ ン語 の古文書 テキ ス ト

に用 い られている語嚢 と概念 の一覧,書簡の書 き出 しによる索引,及 び最 後 に は人名索 引,す なわち書簡 の作成者及 び名宛人 の索引を見 ることがで きる えば中世 の古文書 テキス トの特定 の ラテ ン語 における熟語 の意味の変化 を語源 学 的 に研究す る場合 ,『書簡部 』第Ⅳ部全部 を個別的 に最後 まで見てゆ く必要

(9)

学術的著作物の著作権保護能力について

9

はな く,語桑 と概念 の索引 という付録部分がその発見 に役立

この ことは本 件 における索引の作成が個 々の事実 の単 な る集合で はな く,収集 され,注 釈 さ れた書簡 の学術的な翻訳をすでにさまざまな観点 か ら考慮 したある構想 に基づ いていることを示 してい る

しか しこれ は1つの著作権法上保護能力 ある個人 的精神 的給付 であ る。 (オース トリア最高裁判所

( OGH)

1 9 7 8

3

7

判決

GRUR I

nt.

1 97 8

,3 6 8

3 6 9

頁 ,見 出語 目録 ‑ オ ー ス トリア法 関

)。」

3)

国家試験課題作品事件17)

〔事実 〕原告 Ⅹは

,1 97 4

7

月 ミュ ンスターの ウエス トフ ァー レン,ウイル

‑ルム大学 の生物学 の進級試験 の受験者 で,審査教官 であ る

B

教授 に 「ル ール 地方 のナ ミュールCか ら発見 された古生 トクサ種芦木 目の構想 と組織」 と題す

る課題作品を提 出 した。B教授 は審査局 に対 して審査結果 を報告 す る前 に被告 Ylに予備鑑定 を求 めたが,鑑定内容 によればその作 品 はそ の水 準 を は るか に 超 え るもの とされた。

その作品 は

Y

の刊行す る学術雑誌 「古植物学論叢」 に公表 され ることにな っ た。Ylが予定 した被告Y2との共 同著作 とす るため

,1 9 7 5

2

月 Ⅹ とYlとの 間で意見 の交換 があ ったが,その過程 で はⅩ は原稿 の返還 を求 めた。

Y

は最 初 この要求 に応 じなか った

。1 9 7 5

6

1 2

日の書簡でYは最終的 に手 なお しを し たⅩの原稿 の一部 を返却 したが,残 りはYlによる手 な お しの た め切 断 したの で返却 で きなか った。

その作品 は上記雑誌 の

1 9 7 5

年 の第

4

分冊 に別冊 として 「関節木 ウエルデ ンシ ス,エヌ,エスペ一一 完全 な組織が保存 されてい るル ール地 方 ナ ミュール

C

か ら発見 された古生 トクサ種芦木 目」 と題す る論文 として発行 され,そ の著 作 者 と してY2の氏名 が表示 された。

1 7) GRUR 8 1

,

3 5 2

,

2

1

. l l. 8 0 St aat s e xame ns ar be i t ; UFI TA 8 0

,

1 4 3;

Sc hul z eBGHZ 2 8 0; MDR 8 1 ,6 4 1; JZ ( Jur i s t i s c heZe i t ung

法曹時報)

8 1

,

2 8

1.

(10)

1 0

41

2

Ⅹの著作権侵害の訴 えに対 し,地方裁判所 は,本訴請求

1

に対 す る鑑定結果 に基づ き公表 された論文がⅩの試験課題作品の偽作であると確認 し,公表 され た雑誌 に謝罪広告を出す ことを命 じた。 その余 のⅩの請求を棄却 した。両当事 者が控訴 したが,控訴裁判所 は,Ⅹの全面的敗訴 の判決 を した。 Ⅹの上告 は聞

き入れ られない。

〔判 旨 〕

文書 は個人的精神的創作物 を描 出す る場合 には,著作権法上 の保護 を受 け る (著作権法

2

2

項),その際事情 によってはかか る精神活動 の量 はわずか でよい,精神 的 な働 きは内容,形式形成 ,収集,分類及 び配列 に関係 し得 る (先例 として最近 の ものは

,BGH1 9 7 9

1 2

7

日判決 (

I ZR1 5 7/7 7)i n GR

U

R1 9 8 0,2 2 7,2 3 0

,モヌメ ンタ ・ゲルマニアエ ・ヒス トリカ事件)。学術 的文書著作物 において は,学術 的理論 は 自由で あ り何人 に もア クセス可能 で

( BGHZ3 9,3 0 9,31 1 1

,計算尺事件),したが って また著作権法上保護能力 が ないとい う原則 によって一定 の制限を受 ける

しか しその理論 を表現す る具体 的な形式 と描出は,以下 に示す よ うに学術的理論の自由か ら著作権法の制 限 が 描 出や形成 に対 して も生 じない限 りは,著作権法上保護 され る。」

控訴裁判所 は,法律 に違背す ることな く,

Y

lに よ る国家試験課題作 品 の 判断 によ り構成,形成及 び描 出一般 についてⅩの作品の著作権保護能力 を結論

した。 さ らに控訴裁判所 は,法的欠陥な しに,Ⅹの製作 した標本 も組織 が判 る よ うに保持 され,同時 に樹皮があ り,薄層 にされ,枝分かれのあ るルール地方 のナ ミュールCの泥炭 白雲岩中に出土 した トクサ種茎葉軸の標本の発見 も著作 権法上保護 されないとい う結果 (B

U2 0 )

に至 っている。

控訴裁判所 の解釈 によれば,Ⅹの作品の不正な利用 は,描 出の方法 が テー マ設定 によって条件付 け られ る限 りにおいてのみ考慮 される。学術的活動 は, 著作権法上 自由な利用 を認定す る際 に厳格す ぎる基準 を設 けて これを挟 めては な らない。 この出発点 は明確 にす る必要がある

学術的文書著作物 の著作者 の 保護 は,学術上 の成果及 び理論 と文書著作物 における理論 の描出 と形成 とを慎 重 に区別す る必要がある。」

(11)

学術的著作物の著作権保護能力について

1 1

控訴裁判所 は,Ⅹの作品 とY2の論文 はな るほどその構成 にお いて,両作 者 は一連の トクサの新種 の個々の特徴 を内側 (芯)か ら外側 (葉)へ記述 して いるが故 に,その構成 において相互 に一致 している,と認定 してい る。 しか し

Ⅹが選別 したその者 の作品の構成 には独創的な特徴がないか ら,海賊行為 にた いす る非難 は引 き出す ことがで きない。 これに対 して向け られた上告趣意書 の 攻撃 は,何等成果を見ない。上告趣意書 の主張す るように,外側 か ら内側 に記 載す る可能性 も充分 にある点 は重要で はない。 この可能性 自体 は,第

2

の著作 者 に対 し反対 あるいはその他の描 出を要求で きる程十分 な もので はない。」

4)

医学教科書問題集事件

1 8 )

〔事実 〕 被告Ylは医学教授で,被告Y2の出版す る医学教科書 「人体」 の 著者であるこの書物 は1

97 4

年 に

6

,1 97 6

年 には大幅 に改定 した

7

版 が発行 された。

7

版 は新 たな項 目として 「問題 による学課指導が加 わ り,ここに は

1 220

題 の問題が集 め られ,医学 の専門用語で書かれ,その回答 につ いて当該教 科書の該当箇所を指示す るものであ った。 このアイデアをYlは原告 Ⅹ よ り得 た ものであ り,Ⅹは

1 97 4

年1

0

1 0

日の書簡 と共 に彼の作成 した教科書 の問題 冒 録をその公表の許可 を求 める請願を付 してYlに送付 した。Ylはこの間題 目録

の示唆 に対す る感謝 を延べて返送 し,公表 の許可 を与えなか った。

Ⅹは教科書 「人体

」 7

版 の 「問題 による学課指導」 は,送付 した問題 目録 の 侵害であ り,この問題 はYlの書物 と区別 される固有創作 的個人給付 の所産 で あると主張 した。1

22 0

間中,86問が同一

,7 32問が言葉使 いにわず か な変更 が

譜め られ,別の1

33

問 は単 に重点を他 に向けた ものであ った。

地方裁判所 は訴 を聞 き入れYIY2に対 し7版の430頁〜46

0

頁 の問題 目録の複 製頒布 を禁 じ,すでに販売 された分 の収益か ら計算 した ものをⅩに支払 うよ う 命 じた。YIY2は控訴 し,Ⅹは収益の支払方法 について付帯控訴 した。控訴 裁 判所 は一審判決を覆 え したので,Ⅹは上告 した。

1 8) GRUR 8 1,5 2 0,2 7.2.81Fr age ns amml ung;UFI TA 9 2,2 0 3;Sc hul z e

BGHZ2 8 6; MDR 8 1 ,8 2 2.

(12)

1 2

商 学

41

2

〔判 旨 〕

控訴裁判所 は,

Y

lの書物 に学課指導 のための問題 目録 を用意 す る とい う

X

の思想 は著作権法 の保護 も競業的給付保護 も受 けるに価 しないと したが,そ の点で正当である

( BG H i n GRUR1 9 5 9,2 51

,統 一 乗 車 券事 件

;BGH i n GRUR1 9 7 7,5 4 7,5 5 0,5 51

,鎖状 の ロー ソク事件 ;

BGH i n GRUR 1 9 5 5,5 9 8,6 01

,広告 のアイデア事件参照)。問題集 の学術 的内容 もまた これに 該当す る,学術的理論 は自由で何 人 もこれ にア クセ ス可 能 で あ るか らで あ る

( BG

HZ

3 9,3 0 6,31

1,計算尺事件

,1 9 8 0

1

1

21

日の当法廷判決

( IZR 1 0 6 /1 7 8 )

,国家試験課題作品事件参照)。著作権保護能力があ る場合 は‑ 控訴裁 判所 も誤 っていないように‑ もっぱ ら具体的形式 ,すなわ ち問題 集 の素 材 の 選択 と構成 と個 々の問題 の定式化 に限 られ る

しか し控訴裁判所 は,本件 にお いて,『問題 あるいは要請 に関連す る対象 の選択 が,‑‑‑本文 にお いて ボー ル ド体 またはイタ リック体 で印刷 された見 出 し語 によ って 』行 われ,また 『問 題及 び要請 の定式化 』を この 『見 出 し語 』にたよっているがゆえに,著作権 保 護能力 ある創作的精神的給付 に対 して入 り込 む余地 がない とい う解釈である。

この判断 に賛成 で きない。 またⅩの問題集の秩序原理が書物の構成 と内容によっ て予定 されていよ うとも,その問題集 はなお前提 され る事実 の問題形式 にお け る単 な る機械的収集 を超 えてい る

すで に問題集 の作成 が原著 の内容 の選別 と な ってお り,事実 それ はⅩが 『試験 のための重点 による選択 』を行 ってお らず, 書物 の全体 的内容 を繰 り返 して述べ るとい う課題 に答えた ものであ って も同様 であ る。」

「しか しなが ら引用 された地方裁判所 による具体例 によ り個 々に示 め され,

Ⅹが これを利用す る可能性 は,む しろ問題 に通常人 の言葉 の衣 を着 せ るか,あ るいはむ しろ専門用語 による学術的な言葉 によるかのいずれかを行 い,これ に よ り問題 の定式化 において どち らか と言えば専門的な表現 の学習をね らうかあ るいは知識 内容 をね らうか とい う点 にあ るのみな らず,また教授法的理 由 に よ り問題 を多少 とも大 きな含蓄性 の点 か ら把握 し多少 とも回答 に向 け られ るか, あるいは教授法的理由か ら‑ 受験者 に問題 を与え る代 わ りに‑ 彼等 を うな

(13)

学術的著作物 の著作権保護能力 につ いて

1 3

が して例 えば特定 の定義 を与えあるいは器官 の一部 を数 えあげることにあ る。

個 々の問題 または要請 の定式化 は具体 的 にYlの著作者 の テキ ス トに よ って あ たえ られていないことは,それ以外 に もⅩの問題 集 にお いて及 びYlの問題 目 録 において,なるほど連結点 で一致 してい るが,その都度別 の重点 を 目当て に している

1 33

題 の問題 が含 まれている点 につ いて争 いがな い ことか ら も示 され

上述 の形成的要素 の総括的評価 の示 す ところでは,Ⅹの問題集 は前提 の事実 の問題形式 による機械的でかつ 日課 による収集 で はな く,教科書 の内容 の洞 察 と共 に重要 な もの とそ うでない ものを区別 す る能力 を前提 と し,したが って問 題集が結果 と して教科 自体 の継続 として示 され るよ うなYlの著 作物 か らの抜 琴である。」

5 )

パイプライ ン建設公募資料事件

1 9 )

〔事実

〕NATO

加盟国である被告

Y

(西 ドイツ政 府) は,燃 料 補給 のた め の北欧パイプ ライ ン系統 のユ トラン トパ イプライ ンの延長計画 を訴外

K

に委託 した。委託 内容 は,給油 タンク,通信施設 その他 の設備 を含 む特 定 の延長 区 間 のパ イプライ ン建設 に関す るものであ った。

Y

は延長 された部分区間を超 えて

NATO

海軍航空基地 とパ イプ ライ ンとの間の接続 を計画 した。

Y

はその建設 につ いてⅩよ り有利 な申出を行 った訴外

W

にその設計 を委託 した。新 たな管路 は訴外

K

の企画 した管路 に連結 された。

Y

は訴外

W

に訴外

K

の作成 した資料 を 公募資料 と共 に使用 させた。 Ⅹは訴外

K

の権利承継人であ る。 Ⅹ は

1 5000

ドイ

ツマル クの損害賠償 を請求 したが,

1

審 ,

2

審共請求 を棄却 した。

判 旨〕

個人 的精神的創作 は,学術的文書著作物 において は,著作権 法

2

1

7

号 による学術的及 び技術 的性質 の描 出著作物 におけるよ うに,個 々の描出自体 ,

1 9) GRUR 8 4

,

6 5 9

,

2 9. 3. 8 4 Aus s c hr e i bungs unt e r l age n; UFI TA 9 8

,

2 3 0;Fu且 ( Fi l m und Re c ht

映 画 と法 )

8 4,4 5 8; Sc hul z eBGHZ 31 8;NJ

W 8 5,1 6 31 ; DB ( De rBe t r i e b

企業)

8 4,2 0 2 8.

(14)

14 第41

2

す なわち形式形成 において表現 され る

これ に対 してⅩが主 として求 めている よ うに,描 出の学術的 また は技術 的内容 の創 作 的意 味 内容 は問題 とな らな い (最近 の

BGH GRUR 1 9 8 1 ,3 5 2 〔3 5 3

〕国家試験回答作成事件 ;また

B GHZ7 3,2 8 8 〔2 9 2

〕空港設計図事件参照)。 これ は著作権保護 の本 質 と,そ の工業所有権 に対す る限界 よ り生ず る

技術 的理論 の著作権法上 の保護 におい て は,形式 的及 び実体 的保護要件 を異 に し保護期間 も実質 的 に短 い技術 的保 護 権 の既存 の規整秩序 と抵触す る

.

あ る著作物 の技術 的思想賊一 技術 的理論 そ れ 自体‑ は,従 って著作権法 による保護 の対象 とな り得 ず, したが って また その技術的理論 を含 む文書著作物 の保護能力 の根拠 として引合 いに出す ことは で きない (前記空港設計 図事件)。 かか る文書著作物 の著作 権 法上 の保護能 力 は,その根拠 を もっぱ ら描 出の‑ 必然的 に創作的な‑ 形 式 に見 出す ことが で きる したが ってその保護能力 は措 出 された内容 の固有創作的な思想形成及 びその運用 あるいは描 出 された素材 の収集 ,分類 および配列 の特 に精神 的 に豊 かな形式 と方法 につ いて存在す る (前 出モヌメ ンタ ・ゲルマニアエ ・ヒス トリ

カ事件 ;国家試験答案作成事件 ;問題集事件)。」

控訴裁判所 は,上述 の法的基準 を本件係争 に適用 した点 も正 当である。 公 募資料 は原告 が保護能力 あ ると主張す る限 りにおいて,技術上 の理論 お よび技 術上 の取扱 いに関す る規則 を含 む点 に法的誤認 はな く,上告趣意書 によ って も 異論 な く確認 されてい る

しか し技術上 の理論 それ 自体 は,著作権法上 の保護 能力 はないか ら,Ⅹの意見 とは異 な り,Ⅹが長年 の経験 に もとづ いて発 見 した パ イプ ライ ン建設 の技術的解決 ,その技術的 ノウ‑ ウが技術的領域 にお け る個 人的精神的創作,す なわち特別 の技術的給付であるか どうかは問題 とされない。

さ らに控訴裁判所 は,ここで基準 とな る公募資料 の形式形成が必要 な創 作 的特 性 を認 め るに足 りない ことを認定 したが,法的誤認 をまぬがれている

記載 に よれば,公募資料 の特徴 は技術的事実 の掲示 ,技術的仕様書 および指示 の収集 にある 配列 と分類 ,具体的な形式形成,技術 的内容 の叙 述 は,固有 創 作 的, 独創的思想形成 および思想運用 の表現で はな く,個人的刻印を持 たず,む しろ 事物 の本性 に従 って生ず るものであ り,技術的な指示 としてその叙述 において

(15)

学術的著作物の著作権保護能力 について

1 5

いては合 目的性の法則 によって予 めあたえ られている。」

「 X

がかか る一般的な技術的仕様書 について著作権保護 を求 めようとす る場 合 には,それがいかなる具体的な形式形成 においてパイプライ ン建設 にお け る 平均的な工学的創作力を明白に超 えている個性的特性を示すか詳細 に説 明 しな

ければな らない。」

6 )

弁護士訴訟書類事件

2 0 )

〔事実 〕 原告 Ⅹは弁護士 で

,1 982

1 2

7

日に検察庁の捜査手続が開始 さ れた依頼人 のため捜査手続用 の訴訟書類を提出 した

。1 22

頁 に及 ぶ この訴訟書 類 において,Ⅹはその事件 を依頼人 の立場か らこれを免責 させ る目的で叙述 し た。訴訟書類 の作成 のためⅩは約

8000

乃至

1 0, 000

枚の捜査書頬 を通読 し,その 捜査 の様子 を観察 し,その書類以外 の文書 も調べた。 その訴訟書類 は,Ⅹの同 意を得て捜査手続 に関与 した秘密保持義務 を有す る者 に対 してだけアクセスが 許 された。

X

は公表 に同意 しなか った。

被告

Yl

は週刊誌 「シュピーゲル」 の発行人 で,編集主幹 が被告

Y 2

,

Y 3

ある

。 1 983

1

2 4

日の紙面 に被告

Y4

の執筆で主題 の事件 が公表 された。

1

頁の家庭欄 の本文 は,Ⅹの訴訟書類か らの引用で始 まってお り,その責 に印刷

された社説 において も繰返 しその準備書面か ら引用 された。 その際原本 のい く つかの文 あるいはパ ラグラフは省略 の表示 をせず に脱落 している。

Ⅹは漏洩 ルー トを知 らなか ったが,その複製 を著作権侵害 と見て仮処分 で以 後 の公表 を禁止す るよ う求めた。地裁 は申立 を却下 したが高裁 は禁止命令を出 した (デュッセル ドル フ高裁

i n GRUR 1 983,758

以下

)0

Ⅹは本訴 で訴訟 書類 の全部又 は一部 の複製頒布 の差止 めを求 めた。

Y

は反論 し,特 にⅩの訴訟 書類 は著作権保護 を請求で きない ものであるか ら訴えは理 由がないと主張 した。

2 0) GRUR 8 6,7 3 9,1 7.4.8 6 Anwal t s s c hr i f t s at z; ZUM ( Ze i t s c hr i f tf i i r Ur he be r ‑undMe di e nr e c ht( f r uhe rFi l m undRe c ht )

著作権法及 メディア法 雑 誌 (旧 映 画 と法 )

8 6

,

5 3 9; Sc hul z e BGHZ 3 4 5;N ∫W 8 7,1 3 3 2; Af P

( Ar c hi vf i i rPr e s s e r e c ht

新聞法雑誌)

8 6,3 6 1;NJW‑RR ( NJW‑ Re c ht ‑

s pr e c hungs ‑ Re por t ‑NJW

判例報)

8 6,1 2 5

1.

(16)

1 6

第41

2

地裁 は訴 を棄却 した。 これ に対 しⅩ は

Y

の同意 を得 て飛越上告 して,訴 の請 求 を再度行 った。上訴 は聞 き入 れ られ差戻 しとな った。

〔判 旨 〕

弁護士 の訴訟書類 は原則 と して学術 的領域 (法学) に属 し文学 の領域 に属 さない。学術著作物 において は,必要 とされ る精神 的創作 的内容 は,そ の特 徴 と表現 を第 1に措 出 され る素材 の収集 ,分類 お よび ら配列 の形式 と方法 に見 出 し,ただちにまた‑ ほとん どの文学的著作物 にお け るよ うに‑ 措 出 され る 内容 の思想形成 およひよその運 びには見 出 されない

( BGH1 9 8 0

1

2 1

日判

i m GRUR1 9 8

1

,3 5 2 ,3 5 3

,国家試験課題作品事件 ;同

1 9 8 1

2

2 7

日判

i m GRUR1 9 8

1

,5 2 0 ,5 2 1

,医学教科書 問題 集 事 件 ;同

1 9 8 4

3

2 9

日判

i m GRUR1 9 8 4 ,6 5 9 ,6 6 0

,パ イ プ ライ ン建 設 公 募 資料 事 件

;BGHZ 9 4 ,2 7 6 ,2 8 5

,現金取立 プ ログラム事件参照。)文書著作物 が十分 に創作 的 な独 創性 の程度 を有 す るか どうかの問題 は,具体 的形成 の精神 的創作 的な全 体 の印 象 によ って量 られ,正 に存在 す る形成 に対 す る全体 的な比較 においてなされ る。

前以 って知 れ た もの との全体的比較 の程度 に従 って創作的特徴 を確認 させ るな らば,これ は平均 的形成行為性 に対 置 させ るべ きで ある

著作権保護能 力 は 日 常的 な もの,手工業 的な もの,人 間技術 的 な素材 の並列 か らの明瞭 な優越 を要 求す る

( BGHZ9 4 ,2 7 6 ,2 8 5

,現金取立 プログラム事件参照)。」

一方 においてⅩの準備書面 は上記判例 の意 味 にお ける書簡 と比較で きない。

他方 において地方裁判所 はその判決 か らまた不正 に も本件 のよ うな場合 同様 に 有能 な弁護士 が相 当す る仕事‑ の傾注 に際 してそのよ うな事実 を認識 して記述 した ものの範 囲を超 え るか ど うかを 目標 にすべ きであ ると判断 して いる。 しか し恒常 的判例 によれば,Ⅹ は これ に比 す る者 と して 『同様 に有能 な弁護 士 』と 対置すべ きで はな く,む しろその準備書面 を 日常 の多少 とも日課 として の弁 護 士 の作業 と対比 し,その作業 よ りも彼 が選択 ,収集 ,配列 お よび分 類 にお いて 所与 の場合 の素材 の描 出 において明瞭 に際立 ってい ることを調べ る必要がある

しか しこの点 につ き地裁 は何 らの認定 を して いない。」

攻撃 された判決 は,それ故 に取消 し,事件 を地方裁判所 に差戻すべ きであっ

(17)

学術的著作物 の著作権保護能力 について

1 7

た。当法廷 は争 いのない事実 に基づ いて誤 りな き判断を補足す ることはで きな い。 とい うのは訴訟 の対象である全体 で タイプライターによる

1 2 2

貢 の書 面 は, その内の単 に1

0

頁の抜琴が訴訟資料 として原告 によって提 出されてい るに過 ぎ ないか らであ る この抜華 は十分でない。 ‑‑文書 の全体 の長 さか ら算定 し て‑ 短 い抜琴 のみで は,選別 された資料 の配列 と分類 の種類 と形 式 の必要 な 総合的印象 を可能 な らしめない。 したが って地方裁判所 はⅩが完全 な文書 の原 本 を求 め,その上でⅩがその資料 を個性的な配列 と形成 の原理 の下 に選 別 を行 い,配列 を し,1個の全体的事象 に組 み入れたか どうかを調査 しなけれ ばな ら ない。 その際構成 と配列 が事物的根拠 か ら必然的 に指示 され個性的形成 の余地 を許 さない場合 には,欠陥があ る

一般 に十分 な事実 の資料 と法的観点 に よれ ば,上記抜率 によ って認識 され る限 り,外観上 あ りそ うにない と思 わ れ る 方裁判所が更 めて調査 して デ ュ ッセ ル ドル フ高 等裁判 所 が

( GRUR1 9 8 3

,

758,75 9 )

処分手続 においてな した認定 ,すなわちⅩは依頼人 の歴史,その環境

との関係 および政治的,歴史的背景 に対す る態度 の描 出において精神的 エネル ギーと批評力 のみな らず創作的想像力 と形成力 につ いて も高 い能力 を示 してい るとの認定 を得 た とす るな らば,本件文書 は著作権保護 を否定 され るべ きで は ない。場合 によって はさ らに係争事件 において精神的創作的内容が また提示 さ れた内容 の思想形成及 び思想運用 に も刻 印 されているか どうかを調査すべ きで あ る。本件 が これに該当す ることもあ り得,その場合文書 の全体 的評価 に よ っ てデュ ッセル ドル フ高等裁判所が行 った認定が確認 され る,その認定 によれば,

Ⅹの文書 は事実 および法律 の素材 に対す る深 い洞察及 び言語 および様式 の手段 の高度 の駆使 を認 め させ る言語的形成技術 を特徴 と し,かっⅩは多層 的事実 関 係 を単純かつ容易 に理解 で きるよ うに記述す ることに成功 している,とい うこ

とである。」

4.

西独

BGH

の示 した原則

以上 に紹介 した学術著作物 に関す る

BGH

の重要判決 に示 された諸原則 を整 理 して見 ると次 のよ うにな る

(18)

1 8

41

2

1)著作物一般 の保護要件

著作権保護 は,個人的精神的創作 とい う要件 を具備す る場 合 に認 め られ る

2

1) その精神的活動 の量 は少 な くて よい。精神的働 きは,内容,形式形成 ,収集 , 分類 および配列 に現れ る2

2

)

2)

学術著作物 の保護要件 における特色

a)学術 において,学術的理論 (

学説) は 自由 に利 用 で きる23)。 従 って学術 上 の理論 と文書 における上記理論 の描 出 と形 式 とを慎 重 に区別 す る必 要 が あ

2

4)。個人的精神的創作 は,形式形成 にあ るか ら,学術 的,技 術 的 内容 の創 作 的意味内容 は問われない25)0

b)

技術的理論 を著作権法で保護すれば,技術 的保護 権 (特許 権 ,実 用新 案 権) と抵触す る26)0

C)

学術的,精神的創作的意味内容 は,その刻印 と表現 を素材 の収集 ,分類 および配列 の形式 と方法 に見 出すが

2 7 )

,内容 の思想形成 お よび思 想運 用 の中 に は見 出 し得 ない

2 7 ) 0

d)構成 (

組立 て) は保護 されない28)。 したが って第

2の作 品 はその構成 を

借用で きる28)0

e )

学術 的,技術的著作物 に特徴的な配列 と分類 ,具体的形式形成 ,技術 的 内 容 の描 出が,固有創作的,独創的思想形成及 び思想運用 の表 現 で あ り,個 人 的 刻 印を有 しなければな らな いので あ り,そ うで な くて,事物 の本性 に従 って

2

1)国家試験課題作品事件 (前掲注

1 7 )

;フープマ ン

UFI TA 1 7 6

頁 (前掲注

4)

参 照 。

2 2 )

国家試験課題作品事件 (前掲注

1 7 )

;フープマ ン

UFI TA 1 7 6‑1 7 7

貢 (前掲 注

4)

参照。

2 3 )

国家試験課題作品事件 (前掲注

2 2 )

参照。

2 4 )

国家試験課題作品事件 (前掲注

1 7 )

;フープマ ン

UFI TA 1 7 7

頁 (前掲注

4)

参 照 。

2 5 )

空港設計図事件 (前掲注15) ;フープマ ン

UFI TA 1 7 7

頁 (前掲注

4)

参照。

2 6 )

パ イプライ ン建設公募資料事件 (前掲注

1 9 )

;フープマ ン

UFI TA 1 7 7 ‑1 7 8

頁 ( 掲注

4)

参照。

2 7 )

弁護士訴訟書類事件 (前掲注

2 0 )

;フープマ ン

UFI TA

(前掲注

4)1 7 9

貢参照。

2 8 )

国家試験課題作品事件 (前掲注

2 2 )

参照。

参照

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