ハンドボールの発声に関する研究
岡 本 研 二*
(1984年9月29日受理)
AStudy of Voice in Handball
Kenji OKAMOTO*
(Received September 29,1984)
1 問題の所在
ポールゲームにおいて質の高いパフォーマンスを得るためには,体力や基礎技術を土台にし,更 に適確な状況判断が必要となる。つまり,タイミングや位置どりとして具現される時間的・空間的 調整の問題であり,これらは主として視覚情報に基づいた知覚作用の結果といえる。
さて,ボールゲームの中でも,とりわけ知覚対象が多様で,複雑な攻防混在型のハンドボールや バスケットボールにおいては,特に,予測に基づいた状況判断が必要である。また,集団で行なう
という特性から,集団的スキルやチームワークといったものが要求されるところに,その独自な性 格を有しているといえよう。言い方を換えれば,成員間の連絡,つまり,コンビネーションの水準
を競いあうのがこの種のボールゲームの本質と言っても過言ではない。この成員間のコンビネーシ ヨンをより高いものとするためにはチーム成員どおしのコミュニケーションを豊かにする必要があ り,その方法としては目くばせやサイン等の動作による視覚的なもの(non verbal)と言葉,声に よる言語的なもの(verbal)に大別できる。以上の観点から運動と発声の関係について検討をすす めることが,ボールゲームをより高度化していくため重要であるが,ほとんど手がつけられていな いのが現状である。しかし,その中でもいくつかの研究が近年なされてきている。
発声の生理学的効果という観点からのアプローチとしては,北村等が報告した「筋収縮速度とパ ワーにおよぼす『かけ声』の効果」1)があげられる。そこでは,陸上競技の投てき種目においては,
かけ声によって最大筋収縮速度は9%,パワーは14.6%増大することが明らかにされており,個人 の単一的な運動における生理的効果が示されている。一方,ボールゲームにおける発声の研究では 森田らの「バレーボールの言動とマナー」2)があるが,そこでは,ゲーム中の発声を,プレーに直 接関係あるものと気勢をあげるものに分類し,「気勢をあげるお祭り騒ぎ的な発声が余りにも多い。
プレーに直接関係のあるものが,もっと増加してよいのではないか」と結論づけている。この研究 から示唆されることは,チームボールゲームにおける発声の機能として,第一に,チームプレーと
*茨城大学教育学部体育研究室
神的協同)の高揚,が考えられる点である。また,森田らの分類方法に準じてバスケットボールを しての技術・戦術一コンビネーションプレーの展開(技術的協同),第二に,チームワーク(精 対象とした調査として,吉水の「バスケットボールのゲーム中における発声の特徴」3)があるが,
その中でも「勝敗の決する場面で志気鼓舞,チームワークに関する声が多くなることなどから,声 が戦術のひとつとして使われているように思える。……さらに体力トレーニングや技術トレーニン
グと平行して練習にくまれ,より戦術として工夫されていくべきであろう」と指摘されている。こ のような発声に関する研究報告からは示唆される点も多いが,まだまだ検討が不充分であり,特に ゲーム時における分析というものは皆無に近い。そこで本研究では,ハンドボールを対象にして,
第一に,ゲームにおける発声の特徴,第二に,コンビネーションプレーと発声の関係,を課題に検 討を進めた。
H ハンドボールのゲーム時における発声の特徴
ゲーム時の発声の調査と分析は以下の観点と方法によって行なった。
〈観 点〉
① ディフェンス時とオフェンス時の発声傾向の違い
② レベルの違いによる発声傾向の違い
③ バスケットボールとの発声傾向の違い
〈調査対象〉
成年男子4チーム,高校1・2年男子4チーム,中学1・2年男子4チーム,計12チーム。
〈発声内容の分類〉一最終ページに資料として一覧
① 技術・戦術的発声
a)コンビネーションプレーに関する発声
(ア)指示 (イ)確認 (ウ)評価 b)ゲーム戦術に関する発声
(ア}自己チームに関する発声 (イ}相手チームに関する発声
② チームワークに関する発声 a)志気鼓舞する発声
(ア)個人に対して (イ)チームに対して b)失敗に関する発声
(ア}自分の失敗 (イ)他人の失敗
③ その他
a)無意識な発声
b)審判の判定に対する発声 c)意味不明
L ゲーム時における発声の量と内容 プレーヤーの発声内容を12チ_ムのト 表1 選手の発生内容(12チーム) 一タルで出したものが,次の欄の表1で 技術・戦術的な発声 2,434回(75.0) あり,1試合の平均発声量は27α4回と 技発 指 示 627(19.3) なった。また,技術・戦術に関する発声
術的
確 認 2,345
i723) 1,641 (50.6) が75%,チームワークに関する発声が19 な声 評 価 77(2.4) %となり,技術・戦術の内訳も技術的な 戦発p
自己チームに関するもの
89 51
(1.6) 発声72.3%,戦術的な発声2.7%となっ
的な声 相手チームに関するもの (2.7)
38
た。
i1・1) 技術的な発声を指示(前見ろ,行け,
チームワークに関する発声 615(19.0) そのまま,はい等)と確認(5番OK,
志すCる 個 人 445 347(10.8) サイドまわった,チェンジ等)と評価(今 鼓発草コ チ ー ム
(13.8)
98
sる失す 自 分 170 126
てみると,指示が19.3%,確認が5α6(3.9) %,評価が2.4%となった。また,指示
ヨ声に発 他 人 (52) 44 (1・3) の内訳を①移動・方向の指示,②行動の そ の 他 196 (6.0) 指示,③マークの指示でみたものが表2 無意識的 な もの 170 (5.2) である。確認について,①マークの確認,
審判に対するもの 16 (0.5) ②相手の動きの確認,③状況の確認に分 意 味 不 明 10 (0.3) 類したものが表3であるが,これらをみ
計 3,245(100.0) ると,確認の発声,しかもマークの確認
口内は百分率 が41.4%をも占める所にその特徴があら
表2 指示の発声の内わけ われているといえる。
発声量 全体に占め 驫ы〟i矧
指示に占め 戦術的な発声としては自己チームに関る割合(矧 するものとして「パス回してし・こう,_
指 移動・方向の指示 357 11.0 563@ 線で守ろう」等がみられ,相手チームに
一 行動の指示 144 4.4 230@ 関するものとして「3番くるぞ,打たぜ
不 マークの指示 ユ26 3.9 2α1@ 打てん」等で相手チームを牽制する目的
表3 確認の発声の内わけ で発せられた声があげられるが,全体的 ネ量としては極めて少なく,ハンドボー 発声量 全体に占め
驫ы〟i% る割合(矧 確認に占め
@ ルのゲーム展開の現状を象徴しているよ
確 マークの確認 1,342 41.4 81B うに思われた。
相手の動きの確認 185 5.7 113 一方,チームワークに関する発声では,
認 状況の確認 114 3.5 6.g 特に個人に対して志気鼓舞する発声が全 表4 他人の失敗の内わけ
体の1α8%を占めたのが特徴的である。
@チームワークを崩す方向での発声をみ 発声量 全体に占める割合(鰯
他失l はげます 35 1.0
るために調べたのが表4であるカ㍉他人 フ失敗に対する発声が全体的には少なく,
の敗 けなす 9 0.3
その中でも,けなす発声がほとんどなか
ったのは,事前の予想を覆えすものであった。
これらの発声量と内容の全体をみ塒に,事前に予想したような技術・戦術に関する発声の乏し さ,という考え方は覆えされたといえる.細らのバレーボールの分析とは異った結果が出たのは 興味ある点である.しかし,前述したように,ボールゲ払のひとつの醍醐味である戦術面でのコ ミュニケーシ。ンに乏しかった点は,ハンドボールの現状を反映しているものと思わ礼今後の課 題を示したものといえる。
2.ディフェンスとオフェンスの発声傾向の違い 表5 ディフェンス時とオフェンス時の発声傾向
ディフェンス オフェンス
技術・戦術的な発声 2ρ53(85ユ) 381 (45.7)
指 示 326(13.5) 301(36.1)
技発 360
術 確 認
1,985
1,606(66.6)
(43.2)
35 (4.2)
的 (82。3)
な声 評 価 53 (2.2) 24 (2.9)
戦な 自 己チー ム 68 30 (1.2) 21 21 (2.5)
的声 相手チーム (2⑳ 38 (1.6)
(2.5) 0 (0)
チームワークに関する発声 238 (9.9) 377 (45.3)
個 人 151 76 (3.2) 294 271(32.5)
志鼓気舞 チ ー ム (6.3) 75 (3.1) (35.3) 23 (2.8)
失 自 分 87 71 (2.9) 83 55 (6.6)
敗 他 人 (3,6) 16 (0.7) (10.0) 28 (3.4)
そ の 他 121 (5.0) 75 (9.0)
無意識的な もの 101 (4.2) 69 (8.2)
審判に対するもの 13 (0。5) 3 (0.4)
意 味 不 明 7 (0.3) 3 (0.4)
計 2,412(100.0) 833(100.0)
( )内は百分率
上の表5はディフェンスとオフェンスの発声を比較したものであるが,これをみるとディフェン ス時がオフェンス時の約3倍の発声量となっている・特に技術的な発声における確認の項で6a6%
対42%と,その差がめだち,この点からも攻防場面による違いが浮きぼりにされているといえよ う。またデ、フェンスにおける麟の内訳をみたものが表6・オフェンスの指示の内訳をみたもの が表7であり,それぞれにおいて最も多い発声の項を比べあわせてみた時に次のようにまとめるこ とができるであろう.すなわち,デ・フェンス時は受け身的であり・オフェンスの動きに対応しな ければならないたあ溌声によるコミュニケーシ・ンが必要となると考えられる・また詣示の発 声の割合がオフェンス時に高いということは,フォーメーションプレーやコンビネーションプレー
. を円滑に行なうために個人に指示するものと考えられ・確認の発声の割合がデ・フェンス時に高い ■
フは,自分のマークや相手の動きを味方に伝え,死角となっている部分を発声によってカバーして
いるものと思われる。尚,吉水のバスケットボールにおけるオフェンスとディフェンスの比較にお いても同様の傾向がうかがわれ,しかも上級者になればなる程,オフェンス時の発声が少なくなる という点も注目すべきであろう。
表6 ディフェンス時における確認の発声の内わけ 表7 オフェンス時における指示の発声の内わけ 発声量 全体に占め
驫ы〟 確認に占め
驫ы〟i% 発声量 全体に占め
驫ы〟k% 確認に古め 驫ы〟i%
マークの確認 1β42 55.7 83.6 移動・方向の指示 241 28.9 80.1
確 指
相手の動きの確認 182 7.5 113
一 行動の指示 60 7.2 19.9
認 不
状況の確認 82 3.4 5.1 マークの指示 0 0 0
3. レベルの違いによる発声傾向の違い
表8 レベルの違いによる発声傾向 ()内は百分率
成年男子 高校生男子 中学生男子
技術・戦術的な発声 873 (71.9) 744 (73.5) 817 (80.2)
技発 指 示 403(33.2) 159(15.7) 65 (6メD
術的
確 認 816
i67.2)
375(30.9) 719
i71.0) 525(51.9) 810
i79.5) 741(72.7)
な声 評 価 38 (3.1) 35 (3.4) 4 (0.4)
戦なp発 自 己チーム 57 31 (2.6) 25 16 (1.6) 7 4 (0.4)
的声 相手チーム (4.7) 26 (2.1) (2.5) 9 (0.9) (0.7) 3 (0.3)
チームワークに関する発声 235 (19.4) 186 (18.4) 194 (19.0)
志鼓 個 人 144 75 (6.2) 123 105(10.4) 178 167(16.3)
気舞 チ ー ム (11。9) 69 (5.7) (12。2) 18 (1.8) (17,4) 11 (1.1)
失 自 分 91 65 (5.4) 63 51(5.0) 16 10 (1.0)
敗 他 人 (7.5) 26 (2.1) (6.2) 12 (1.2) (1.6) 6 (0.6)
そ の 他 106 (8.7) 82 (8,1) 8 (0.8)
無意識的 な もの 89 (7.3) 73 (7.2) 8 (0.8)
審判に対するもの 11 (0.9) 5 (0.5) 0 (0)
意 味 不 明 6 (α5) 4 (0.4) 0 (0)
計 1,214(100.0) 1,012(100.0) 1,019(100.0)
※中学生は40分ゲームなので50分に換算 表8をみれば全体の発声量は成年男子が最も多く,高校生男子と中学生男子にはあまり差がみら れない。レベルが高くなると技術・戦術に関する発声が多くなるだろうという予想は当たらなかっ た。そこで内容を更に吟味してみると,まず,技術的な発声では,特に,指示の発声と確認の発声 に著しい違いがみられる。指示の発声はレベルが高くなるに従って増える傾向がみられ,確認の発 声は減る傾向がみられた。表9からわかるように,レベルが低くなるにつれてマークの確認が増加
している。特に中学生男子においては,マークの確認の割合は67.4%を占め,このことからも,マ
一クの確認は,発声の中でも基本的な発声であり,それに対して指示の発声は,プレーの予測を含 んでいることから高度な発声であると考えられる。
次に志気鼓舞する発声は,個人に関するものが,レベルが高くなるに従って減る傾向がみられた。
また,審判に対する発声がわずかではあるが,レベルが高くなるに従って増える傾向がみられた。
以上の点からすると,レベルが低くなると,発声内容がマークの確認に偏る傾向がみられ,この ことは,低いレベルでは受け身のプレーをしていると考えられ,そのため確認の発声が多くなった
表9 レベルの違いによる確認の発声の内わけ と思われる。
成年男子 高校生男子 中学生男子 また,高いレベルでは,プレーを予測し,
マークの確認 221 434 687 それを味方に指示することによって積極的 確
相手の動きの確認 83 52 50 なプレーをしていると考えられるので,確 認 状況の確認 71 39 4 認の発声よりも指示の発声の方が多くなっ
計 375 525 741 たと思われる。
4.バスケットボールとの比較
ここでは,吉水の対比して検討を行なったが,吉水の行なった調査対象が,北関東五大学リーグ と日本リーグ参加チームであったので,ハンドボールの成年男子と比較した。また,ハンドボール は50分ゲーム(25分×25分)であるのに対してバスケットボールは40分(20分×20分)である のでハンドボールの発声結果を40分に換算して検討した。
表10ハンドボールとバスケットボールの発声傾向
()内は百分率
ハン ドボール バスケットボール 技術・戦術的な発声 697 (71.9) 2,607(60.6)
指 示 347(35.8) 1,359(31.7)
技なp発 確 認 i69.8)677 300(30.9)
2,536 i50.9)
1,134(26.3)
的生 評 価 30 (3ユ) 43(1.0)
相手チームに関するもの 20 (2.1) 71 (1.6)
チームワークに関する発声 187 (19.4) 1,372 (31.9)
志気鼓舞する発声 115 (11.9) 1,254 (29.2)
失敗に関する発声 72 (7.5) 118 (2.7)
そ の 他 84 (8.7) 325 (7.5)
無意識的な もの 71 (7.3) 264 (6.1)
無意識的なもの以外 13 (1.4) 61 (1.4)
計 968(100.0) 4,304(100.0)
(ハンドボール:成年4チーム,バスケットボール:16チーム)
表10によれば,1試合の発声量は,ハンドボール242.0回,バスケットボールは269.0回となり わずかにバスケットボールが上回っている。技術・戦術に関する発声についてはハンドボールの方 が高い割合を示し,チームワークに関する発声は,バスケットボールの方が高い割合を示した。
このことから発声内容の量的側面という限定した見方をすれば,競技レベルはハンドボールの方 が高いということになるが,発声内容の質的側面からも検討する必要があると思われるので,いち がいに言い切ることはできない。
皿 発声の必要性と効果
本研究の第二の目的は,ハンドボールのプレー場面において発声がどのような役割をもっている か,をつきとめることにある。そこで,Hで調査した中から,ディフェンス時におけるコンビネー
ション技術と発声の関係に着目して攻防2対2場面を抽出し検討を試みた。方法としては,ディフ エンスふたりのペアを限定し,熟練者群(茨大ハンドボール部レギュラー2組)と未熟練者群(同 準レギュラー2組)を比較した。また,それぞれにおいて発声を認める時と禁止した場合の違いに ついて調査することにした。尚,攻撃のパターンは以下に記すように宇津野の分類4)を手がかりに,
もっとも頻度の高い基本パターン(左右同形)5種類とそれ以外の応用パターン(8種類)の計13 種類について調査し,最終的には2対2のオフェンスパターンの3つの基本形(斜めのコンビ,縦 のコンビ,横のコンビ)の違いによるディフェンスの発声の違いについても分析をした。尚,攻撃 パターンのコンビネーションモデルには,他の熟練者を使い,できるだけ同一の攻撃場面を設定で きるよう配慮した。また,ディフェンスプレーの評価(成功か否か)については,表11のような基 準を設け,特にマークの成否という観点から分類した。 、
基本的パターン(5種類) 2 3 4 5 6
1α
2Y x x 3(\ x〆イ)x 4! ㌦〆)x7
㊧斜めのコンビ @縦のコンビ ◎横のコンビ
5 Nu 2の斜めのプレー1こは, N・4の縦のプレーには, N・7の横のプレーには,ぬ3が斜めに切り返す。 N皿5が縦にフォローする。 陶6が十字にフォローする。
、x)崎 O印…オフェンス
@ 図2 2人のコンビの基本形X印…ディフェンス (宇軒野年一「最新ハンドボール技術《攻撃編》」ベースボールマガジン社(1975))
矢印…オフェンスの動く方向
表11攻防2対2におけるディフェンス行動の分類
応用的パターン(8種類)
マークの成否 ディフェンスの行動
6 7/ 8賦 9 キ・スライマークの交
・⑱ 沁 ドができた。@(成) オフェンスの動きに対応できたが,個人技(1対1)で抜かれた。
10 11 12 13 縦,または横のずれをつくられたが,
メ 攻撃を止めた。
× x
γOx OX
鼠.砧.
マークの交
縦,または横のずれをつくられた,抜かれた。
換・スライ
図1 攻防2対2におけるオフェンスパターン
ドができな
「。 (否)
オフェンスプレーヤーひとりにディフ Fンスプレーヤーがふたりついたが,
U撃を止めた。
オフェンスプレーヤーひとりにディフ フェンスプレーヤーふたりがついて,
イかれた。
1。発声の場合と発声しない場合の違いについて
熟練,未熟練あわせて発声あり(104場合)
表12 声を出した場合と出さない場合の違い
@ (回)
と発声なし(104場面)のマーク成否をF検 閨i生起率検定)行なったものが表12であ
成(C)否(D) 計 F検定(C・D)
る。
声あり(A) 71 33 104 ** これによれば,発声がマークの成否に関係 声なし(B) 44 60 104 **
しているとみられる。特に発声時には7割も
F検定(A・B) ** の成功をおさめていたのが,発声を禁止した
*5%水準
磨魔P%水準 場合には,失敗の方が高くなるという点,興 味ある資料といえる。
2.レベルの違いによるマークの成否について
@ 図成 口否 (彫
表13レベルの違いによるマークの成・否 80
(回) 70 成⑩) 否(D) 計 F検定(C・D) ,。
未 声あり(A) 29 23 52 50
熟練 声なし(B) 17 35 52 40
者 F検定(A・B) ** 30
成④) 否(D) 計 F検定(C・D) 2・
熟 声あり(A) 42 10 52 ** 10
練 声なし(B) 27 25 52 0
未熟練者 熟 練 者 未熟練者 熟 練 者
者 F検定(A・B) ** 声 あ り 声 な し
図3 レベルの違いによるマークの成・否の割合 表13は,さらに熟練者群と未熟練者群で比較したものであり,図3はそれを図にしたものである。
これらの図表からいえることは,第一に,両群ともに発声時には成功度が高く,特に熟練者群につ いては,発声時には約80%の成功率を保つということである。第二に発声を禁じた時には,未熟練 者群においては失敗が約70%を占め,熟練者群においても,かろうじて成功の方が上回るにせよ,
成功度が発声時に比べ30%程度もダウンするということである。これらの点から,両群ともに発声 がディフェンスの成功に大きく関わっていることがわかる。
さて次に,発声の有無が両群のどちらにより有 表14レベルの違いによるマーク 効か,という点をみてみたのが表14である。これ
の成功度
声の有無 成 差 成功度
によれば,熟練者群の方が,発声による成功度が P.5倍,未熟練者が1.7倍といくぶん,未熟練者
未熟 声あり 29 群に有位の数字がでたが,統計的に差がでる程で
練者
声なし 17
12 L71倍 はなかった。今回の調査範囲からは両者ともに有 効である,という結論になるが,熟練度の高い方
熟 声あり 42
が発声に頼る必要が減じると思われるので今後更
練 15 1.56倍
者 声なし 27 に検討してみたい。
3.オフェンス攻撃パターンによる発声の違いについて
表15オフェンスの型による発声傾向
()内は百分率
縦のコンビ 斜めのコンビ 横のコンビ
指 移動・方向の指示 1 (1.6) 0 (0) 5 (2.2)
示 行動の指示 9i14.5)
3 (4.8)
3(3.6)
0 (0) 42
i18.8)
3 (1.3)
マークの指示 5 (8.1) 3 (3.6) 34(15.3)
確 マークの確認 41(66.2) 47(56.6) 132(59。3)
相手の動きの確認 53
i85.5) 11(17.7) 80
i96.4) 33(39.8) 181
i96.4) 40(17.9)
認 状況の確認 1 (1.6) 0 (0) 9 (4.0)
評 価 0 (0) 0 (0) 0 (0)
計 62(100.0) 83(10α0) 223(100.0)
図2の3つの攻撃パターンに基づいて分類したものが表15である。またディフェンスの発声内容 の分類をIIのゲーム時における発声内容の分類と同様に行ない,その割合も示した。
これによれば,どのパターンにおいても確認の発声,特にマークの確認が多いことがわかるが,
更に詳しくみていくと,マークの確認をする発声は,縦のコンビに最も多くみられ,相手の動きを 確認する発声が斜めのコンビに,そしてマークを指示する発声が横のコンビに多くみられた点が特 徴といえる。これらは,まず,縦のコンビはオフェンスのパターンが比較的単純であり,マークの 確認をするだけで充分であること,相手の動きの確認が斜めのコンビに必要なのは,マークを交換 するための「チェンジ・クロス」等の発声が特に必要なこと,横のコンビに対してマークの指示が 必要なのはポストプレーヤーの動きに対する味方どおしの指示,つまり「5番みろ,そのまま」等 の発声が不可欠なこと,などの要因と思われる。尚,評価の発声がみられなかったのは,プレーと プレーの間に話をさせなかったためと思われる。
IV 要 約
今回の調査で得られた結果は次のようにまとめられる。
① 発声内容については,チームワークに関する発声より,技術・戦術に関する発声が多くみら れた。このことはコンビネーションプレーを円滑に行なうために技術・戦術に関する発声が重 要視されているためと思われるが,戦術面での発声が少なかったのは問題として残る。
② ディフェンス時とオフェンス時を比べた時,ディフェンス時にはオフェンス時の約3倍の発 声量がみられたが,今回の調査のレベルでは,もっとオフェンス時の発声が増加してもよいと 与えられる。
③ レベル差については,予想した程の差はみられなかったが,レベルが低くなる程,発声内容 がマークの確認に偏る傾向がみられた。逆にレベルが高くなると,指示や戦術に関する発声が 増えることから,プレーの予測との関係があらわれているように思える。
④ バスケットボールとの比較では,ハンドボールの方がいくぶん技術・戦術に関する発声が多 かったが,更に質的な面からの検討が必要であろう。
⑤ 発声の有効性については,発声を許した時と禁じた時に有意な差が生じた。特に熟練者にお いては発声を有効に使用していることがわかったが,未熟練者においても発声によって失敗を 防ぐ役割を果たしているといえる。
⑥ オフェンスパターンによる発声については,どのパターンにおいてもマークの確認が多かっ たが,特に,縦のコンビに対してはマークの確認が,斜めのコンビに対しては相手の動きの確 認が,横のコンビに対してはマークの指示の発声がみられ,それらの特徴を示したといえ,オ フェンスパターンによる発声の質量の変化を伴なった対応がディフェンスには要求されている といえる。
以上の結果に基づき,今後さらに,多くのゲーム時の発声内容を調査すること,また,オフェン ス特有の発声の有効性を調べること,発声のタイミングという視点から有効性を調べること,そし て最終的には,チームワークに関する発声も含めて,ゲームという実践の中で勝利につながる発声 がいかなるものか,という点で検討をすすめていきたい。
注
1)北村潔和・福田明夫・有沢一男「筋収縮速度とパワーに及ぼす『かけ声』の効果」『体育の科学』,31,(体 育の科学社,1981).
2)森田昭子・郷守重蔵・吉野みね子「バレーボールの言動とマナーについて」『藤村学園東京女子体育大学紀 要』1,(1966),p.69−74
3)吉水昌昭「バスケットボールのゲーム中における発声の特徴」『茨城大学教育学部卒業論文』,(1982).
4)宇津野年一「最新ハンドボール技術(攻撃編)」(べ一スボール・マガジン社,1975),p.154.
資 料(ゲーム中の発声内容一覧)
① 技術・戦術的発声
a)コンビネーションに関する発声
(ア)指 示
アウト見ろ,あせるな,あたれ,行け,一歩前だ,インにこらせろ,上,上たのむ,
上見て,打て,キーパーだせ,逆見ろ,声出せ,最後まで見ろ,サイド奥だ,サイド だ,そっち行け,そのまま,それ見ろ,それ見てけよ,倒すな,出すな,出して,チ エックしろ,つけ,つなげ,つめろ,手を上げろ,出ろ,止めるな,はい,はい○,
はいれ,はさδ6,走れ,はなれろ,早く行け,早く投げろ,ハンドアップ,パス,ひ とりで行け,フォロー行け,ヘイ,ポストあけるな,ポスト見て,ボールもらえ,マ 一ク確認しろ,前,前出ろ,前見ろ,まかした,守れ,まわれ,もどれ,もってるだ け,よれ,○番見て,○番見ろ
(イ1確 認
後に来てるよ,OK,オーライ,かたまってるよ,こっち見る,こっち多い,こっち だ,これね,サイド行った,サイド入った,サイまわった,シングル,センターもら い,大丈夫,ダブル,チェンジ,流れた,ひとり,ブロック,ポスト行った,ポスト いる,ポストイン,ポスト後ね,ポストOK,ポスト下,ポスト流れた,ポストまわ った,ポストまん中,ポスト右だ,マイボールだ,もう1人いった,○番,○番上が った,○番いい,○番いった,○番OK,○番ポストね
(ウ)評 価
あぶないよ,今のこっちだ,今のダメだ,遅い,ここへこなくちゃダメだ,つめなく ちゃダメだ,もっとつめろ,もっと丸く回って
b)ゲーム戦術に関する発声
(ア)自己チームに関する発声
一線で守ろう,おちついていこう,関係ないのさがれ,セットから攻めるぞ,ディフ エンスもとにもどれ,パス回して行こう,早めに位置とろう,広がるな,ボールによ れ,ゆっくりいこう
(イ)相手チームに関する発声
打たせ,打てん,来たぞ,5人だからな,左だからくるよ,ブロックいくそ,ポスト くるよ,ポストだからな,○番打ってくるぞ,○番気をつけて,○番くるぞ,○番マ
一ク
② チームワークに関する発声 a)志気鼓舞する発声
(ア〉個人に対して
うまい,サンキュー,ナイスシュート,ナイスカット,ナイスキーパー,ナイスキャッ チ,ナイススロー,ナイスバック,やった,よし
(イ)チームに対して
1点返すそ,1本返すそ,返していくそ,がっちりいこう,がんばるぞ気合い入れ ていくそ,気をぬかないで,ここだぞ,さあいこう,守っていくそ,守りだけだぞ,
守るよもういっちょう,もう1本いくそ,ラッキー b)失敗に関する発声
(ア}自分の失敗
あれ,ごめん,すいません,すまん,ちくしょう,わるい
(イ}他人の失敗
あほ,おしい,ドンマイ,何やってんだよ,ノーマーク決めろよ,バカ
③ その他
a)無意識な発声
あ一,お一,わ一 b)審判の判定に対する発声
オーバー,ライン c)意味不明
今の何だ?,力あんな,とろいな