学習者に視点をすえた国語科 授業の創造を
一 ﹁読む﹂という学習の主体性
小学校第三学年における説明的な文章の﹁理解﹂︑ ﹁要
.点﹂の指導を中心として︑小・中学校の国語科授業の課題
を指摘し︑考えてみたい︒
その一つの資料として︑昭和43年と昭和52年の小学校学
習指導要領から︑第三学年の読解︵または理解︶の指導事
項を抜き出して示してみた︒ ︵傍点は︑引用者が付す︒︶
︿昭和43年﹀ ⁝ ︿昭和52年V
ω 次の事項について指導⁝ア 文章の内容が表される する・ ⁝ように工夫して音読する ︵ア〜ウは省略︶ ⁝こと・
︒ ・ ◎ ︒ ︒ ︒ ︒ ⁝ ︒ 9 ︒ ︒ ︒
工 要点をおさえて読む⁝イ 文章や話の要点を理解
り り り り り む の りこと︒ ⁝ し︑自分の立場からまと ⁝ ︒︒︒②︒︒ オ 表現に即して読みと一 めてみること︒
ろうとする習慣をつけ⁝ウ 読んだ内容について感 ること・・ ⁝想をまとめたり・自分な 力表現のすぐれている⁝らどうするかなどについ
ところに気づくこと・⁝て考えたりすること・
キ 読むために必要な文⁝工 読んだ内容について話 字や君を増すこと∴し合い・天天の感じ ク わからない文字や語⁝ 句を見つけ学こと∴ ② ωの指導と関連させて⁝ ことばに関する次の事項一
について指導する・ ㎜
︵ア〜オ書略︶ ︸
⑭ ωおよび②に示す事項⁝
とともに︑次の事項につ⁝ いて指導する・ ⁝ ︵アは省略︶ ⁝
イ 読んだ内容について⁝
感想をもったり︑自分⁝
ならどうするかなどに⁝
ついて考えたりすること⁝
ウ 人物の気持ちや場面⁝
の情景を想像しながら⁝
読む︒ ⁝
工 読んだ内容について⁝ 話し合い・ひとりひと⁝
りの感じ方や考え方に⁝ 加 藤
節
方や考え方には違う点が
あることを注意すること︒
む り り り り む り リ
オ 自分の立場から大事だ
り の り り り り り り
と思うことを落とさない
りで理解すること︒
力 人物の気持ちや場面の
情景を想像しながら読む
こと︒
り り む
キ 語句の意味を文脈に沿
り の
って考えること︒
ク 文章の叙述に即して︑
表現されている内容を読
みとる習慣をつけること︒
ケ 内容を理解するため︑
また︑自分の表現にも役
立てることができるよう
にするため︑意味のまと
まりごとに内容を整理し
て文章を書くこと︒
コ 表現の優れている箇所
一9一
は違う点があることに︸ に気付き︑自分が表現す
気づくこと︒ . ︸ るときにも応用してみよ
オ 長い文章でも終わり一 うとすること︒ まで読み通すこと・⁝
この表からもわかるように︑説明的な文章を読む力をつ
けさせるための指導事項一特に﹁要点﹂の取り扱いがかな
り違っている︒
では︑どのように異なっているであろうか︒
昭和43年の学習指導事項︵上段︶の﹁工要点をおさえて
読むこと︒﹂について﹁小学校指導書 国語編﹂ ︵昭和興
年版・幽ページ︶は︑
この学年では︑﹁工要点をおさえて読むこと︒﹂が中
心的な指導事項である︒要点をおさえて読ませるために
は︑文章の要点に特に深い関係のある語句や文を確実に
理解させるように指導することがまず必要である︒
と解説し︑述べている︒これに対して昭和52年の学習指導
要領︵下段︶の﹁イ 文章や話の要点を理解し︑自分の立
場からまとめてみること︒﹂について﹁小学校指導書 国
語編﹂ ︵昭和52年版︑49ページ︶は︑次のように解説して
いる︒ ︵傍点は︑引用者が付す︒︶
第三学年では︑ ﹁イ 文章や話の要点を理解し︑自分
の立場からまとめてみること︒﹂が学年目標に対応する
重要な指導事項である︒この事項の指導に当たっては︑
り り む り む こ り む りまず︑叙述に即して︑文章や話の中の幾つかの要点を正
む り り り り り り り の り り り り り り む確に理解させる︒そして︑次に︑それを読み手あるいは
り り り り り り り り り り り り り り む り り む ロ リ聞き手である児童自身の立場から見直させ︑特に大事だ
り り ゆ り り り り り り の り り り む り り りと思っているところや関心を深めたところを抜き出し︑
り り り り り り ち り る り りり り む り りそれを中心にして内容を整理させる︒つまり︑文章や話
り り り り り り り り の り り む の り り の む る む りを︑ただ受け身の立場で理解するだけでなく︑児童が主
む こ り り り む り り り む り り む の り の り り り体的に読んだり聞いたりするように指導する︒⁝⁝ これら二つの解説を比べてみると︑現在の国語科教育は︑ 学習者である子どもの主体的学習態度を育て︑それをも学 力としながら学習の主体としての児童生徒の﹁自ら考え正 しく判断する力を養う教育への質的転換を図っていこうと する意図﹂ ︵教育課程審議会﹁教育課程の基準の改善のね らい﹂昭和51年10月による︶が明確に表されていると言う ことができる︒これらのことは︑ ﹁語句の意味﹂の取り扱 い方にも現われており︑上段ωのクと︑下段キのそれぞれ の指導事項の表し方に明確な違いとなって示されている︒ こういう指導事項の表し方の根底には︑書き手の言語活 動の結果として生まれた﹁文章﹂をどうとらえるか︑また 文章︵あるいは作品︶を﹁読む﹂という読者としての働き をどう見るかという見方や考え方の大きな違い︑相異があ るように感じられるのである︒例えば︑現在の国語科にお ける説明的な文章を読むという行為は︑文章に記述されて
いる事柄について読み取って﹁知る﹂という活動だけでな
一 IO一
く︑その事柄をなぜ文章表現として読み手に伝えるのか︑
その事柄をどうとらえているかなどを読みとることであり︑
更に文章に表れてくる書き手という﹁人間﹂に触れ︑相対
峙し︑読み手である﹁自己﹂の内面に位置づけ︑何かを獲
得し︑創造することのできる活動であるという﹁読者論﹂
的視点が採られていると見ることができるのである︒
二 国語科授業の現状と課題
国語科における指導事項が︑前述のように変わった背景
には︑これまで述べてきた理由のほか︑これまでの国語科
教育の現状の問題点をも挙げることができるのである︒
まず︑ ﹁小学校指導書 国語編﹂ ︵昭和52年版︑10ペー
ジ︶は︑国語科の﹁目標﹂を簡略化したことについて︑
国語科の目標をこのように簡素化して示したのは︑や
お も ぽ こ り り り り
やもすれば︑指導内容が児童の実態を無視していたずら
ゆ り り り り ゆ も む り り り り む り り り り り
に高度になったり複雑になったりする傾向のあるのを抑
り も
止することを期待したからであって︑教科の目標の基本
的な考え方は︑昭和43年の学習指導要頷の精神を継承し
ているのである︒⁝⁝
と述べ︑国語科教育の問題傾向を指摘しているのである︒
この問題傾向は︑国語科教育が﹁題材︵あるいは作品︶﹂
中心で構想される点に︑その原因があると見ることができ
るものであり︑授業構想の視点の転換が必要であろう︒ 次に︑指摘できるのは小・中学校の説明的な文章に多く 見られる︑次のような傾向性である︒具体的に示すために︑ 光村図書・小学校第三学年下所収の一月単元の教材﹁チン パンジーと道具﹂ ︵西田利貞︶の一段目を引用する︒
⁝ ①チンパンジーは︑このありつかの小さなあなを見つ︸
⁝けると︑近くの木の皮をはいできて︑歯と手をうまく使⁝
⁝って︑長さ二十センチメ⁝トルぐらいの細いぼうを作り⁝
⁝ます︒②そして︑そのぼうを︑ありつかのあなにさしこ⁝
⁝みます︒③シロアリたちは︑てきが入ってきたと思って︑⁝
⁝大さわぎでぼうにかみつきます︒④しばらくすると︑チ⁝
︸ンパンジ⁝は︑ぼうをそっと引き出して︑いっぱいつい⁝
⁝ているシロアリをぺろりと食べるのです︒⑤チンパンジー一
⁝は︑何度もこれをくり返します︒ ︵数字は文を表す︒︶
この記述に対して︑子どもたちは︑初読の感想において︑
書かれている事柄を読み取り︑驚きを述べるのである︒そ
れにもかかわらず多くの指導者は︑五つの文に述べられて
いる事柄を確かめるだけである︒書き手が読み手に最も訴
えたかったことは五つの文に述べられていることのどれか︑
一すなわち要点すらも明らかにしないのである︒修飾語
を付けて詳しく表現している意図︑文末表現として表れて
いる書き手の判断の仕方などが採り上げられることなく︑
﹁読む﹂という学習・指導が終わっているのが︑国語科の
授業の現状ではなかろうか︒
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