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・養護教諭の職制の変遷と展望         

養護教諭の身分の権衡上の 問題について

浦 中   淳

(1983年10月29日受理)

は じ め に

養護教諭の制度は,明治後期に配置された学校看護婦に始まるが,1}2)その職制の呼称位置付け,

定数,養成制度等については,幾多の変遷を経て今日に至っている。現在の養成制度においても,看護 系一非看護系,大学・短期大学一指定教員養成機関,正規の課程一副次的免許取得等に大別されて,

       曽

{成の多様性と統一の困難性が指摘される。教員養成は,大学の正規の課程における養成を原則とし,

教員の養成数が不充分な場合に限り指定教員養成機関において行うことになっているが,養護教諭養成 については,従来看護婦免許との関連から変則的養成にならざるを得ず,また短期大学,指定教員養成 機関における2年制養成が過半数を占めている事情もあり,さらに法制上も,養護教諭は,教諭とは異 なる職種として位置付けられて,いろいろな制約をうけていることなども加わって,今後養護教諭の養 成・免許制度の改善や資質の向上とともに,職制上,身分上の矛盾点,問題点の改善が望まれる。殊に 昭和50年度から養護教諭養成課程が設置され,4年制の,大学の正規の課程における本格的な養護教諭 養成が開始されて,年間およそ450名の教育学士の称号を持つ養護教諭養成が実現した現在,その身分 の権衡上の問題点の解決は,早急に検討されなければならない課題であり,さらに養護教諭集団全体の 権衡上の問題としても,十分な配慮が望まれる。3)〜5)

かねてより教員養成・教員免許制度の改善が,各種の機関において検討され,試案,提言などが公表 されてきたが,実施には至らずに経過していた。6M1〕ところが昭和58年6月15日付で,30数年来の静寂 を破ってかなり唐突に,文部大臣は「教員の養成及び免許制度の改善について」教育職員養成審議会へ 諮問し,昭和58年11月22日付で答申が行われた。6)今後国会で審議され,法令改正をまって,昭和61年 度より実施が予定されている。それに伴い関連法令の改正,整備が行われると思われるが,この機会に,

研究・調査資料をもとに,文部省をはじめ関係諸機関に働きかけて,養護教諭の身分の権衡上の是正が 行われることを期待したい。

養護教諭の職制の変遷

養護教諭養成制度は,明治38年トラホーム治療対策として配置された学校看護婦に始まるとされ,以 後,学校衛生婦,学校看護婦などの呼称を経て,昭和16年国民学校令公布により養護訓導の職制が成立 し,養成制度も発足した。1) 2)その養成については高等女学校卒業程度の学歴を求め,また看護婦免許と 無関係の,訓導と同資格の養護訓導が養成されることになった。昭和18年国民学校令の改正により,養 護訓導は必置制となったが,附則により当分置かないことが出来るとされた。戦後になり,占領下の我 が国の教育改革は,アメリカ軍政部の意向によって推進され,アメリカ的スクール・ナースの発想から

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基礎資格として看護婦免許が要求され,養成講習会などが開催されて,養護教諭の充足が行われた。昭 和22年学校教育法の制定により養護訓導は養護教諭に改称され,第28条によって必置性が定められたが,

附則第103条「当分の間,養護教諭は,これを置かないことが出来る」条項によって緩和されて今日に 至っている。昭和24年教育職員免許法の制定公布により,教員養成は原則として大学において行うこと になったが,看護婦免許の事情から,養護教諭養成については大学の正規の課程における養成は不可能 であり,変則的養成制度にならざるを得なかった。講話条約発効後の昭和28年7月に,教育職員免許法 が改正され,再び看護婦免許とは無関係のわが国独特の養護教諭養成コースが新設され,少数の大学な がら,併設課程として養護教諭一級免許の取得が可能となり,指定教員養成機関の養護教諭養成所も設 立されて,看護婦・保健婦系と併せて,養護教諭の需給に応じることになった。養護教諭の必置制の請 願も次第に増加して,文部省も養護教諭養成計画を策定し,数次にわたる5か年計画により,養成増員

と配置率の向上を図った。先づ37年度から5か年計画で,5,000名の定員増と,国立の指定教員養成機 関として,教育系大学・学部に養護教員養成課程(1年課程)を設置し,看護婦免許所有者を対象に養 護教諭養成を開始した。続いて昭和40年には国立養護教諭養成所設置法の制定公布により,看護婦免許

に無関係の3年制養成を取り敢えず進めることになり,将来4年制課程への移行を前提に,全国9大学 に,国立養護教諭養成所が指定養護教諭養成機関として附置されたが,予期していたよりも数年も早く,

昭和50年度より,4年制の養護教諭養成課程の設置に伴って移行・廃止されることになった。養護教諭 養成課程は,現在国立の10大学(定員450名)に設置され,待望の大学の正規の課程による,教育学士 の称号をもつ本格的養護教諭の養成が実現した。

養護教諭問題を考える上で,養護教諭の実態を知る必要がある。小中高校における養護教諭数は,お よそ3.6万人で,配置率は度重なる定数改正により80%を越えてきているが,全校必置制と大規模校に おける複数配置制が達成されると,全小中高校数を4万余校として養護教諭は4万余名となり,全教員 数約100万名のうちの4%弱を占める教師集団になるものと予測される。また幼稚園などにおける養護 教諭の充足も望まれる。養護教諭の年間免許取得者の概数は,1級免許1,000名,2級免許3,000名,

計約4,000名のうち,就職者数は,需給の関係から最近は減少が激しく変動傾向にあるが,1級600名,

2級800名,計1,400名を推移していると思われる。そのうち1級免許取得者のおよそ半数程度は,4 年制大学における養成であり,殆んど教諭(保健)の免許を取得しているが,残りの約半数は看護婦+

1年の課程で,基礎教育課程が各種学校であるため,教諭免許を持っていない。2級免許状取得者は,

主として2年制の短期大学および各種指定養成機関で養成され,教諭免許を持たない者が多い。特別立 法による旧国立養護教諭養成所は3年課程で,養護教諭2級,中学校教諭2級(保健)を併せて取得さ せていた。なお,現職養護教諭における看護系の占める割合は,次第に減少傾向にあり,また過去に採 用された養護助教諭も,認定講習などによって免許の上進が行われている。

養護教諭の身分の権衡上の問題と改善について

養護教諭に関する現行法令上の特徴,問題点を集約すると,次のようになる。① 教諭と養護教諭は 明確に区別された職種である。学校教育法第28条,教育職員免許法第2条。② 養護教諭免許状は校種 別ではなく機能別で一本である。その1級は中学校教諭1級,高等学校教諭2級免許相当である。③ 校長,教頭,保健主事,主任等の資格は教諭に限定されており,養護教諭は除外されて,完全に登用の 道が閉ざされている。③一1 保健などの教諭免許状を持たない養護教諭については,基礎資格を欠く

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ことになり,一般教諭免許状と無関係の看護系や指定養護教諭養成機関などのような各種学校における 養護教諭養成では,管理職,主任などへの登用の見通しは全く立たず,制度上の制約が厳然と立ちはだ かっている。 ③一2 またたとえ保健の教諭免許状を持っていても,中高校においては何とか適用可 能であろうが,他の校種殊に小学校などの教諭免許状を持たない殆んどの養護教諭にとっては,小学校 などにおける適用は不可能である。③一3 校長職については,教諭1級免許状を基礎資格として比較 的緩和な資格条件となっているが,教頭にっいては校種別の教諭1級免許に限定されており,一層きび

しい基礎資格が要求されているので,各校種別の校長にはなる資格があっても教頭にはなりにくく,特 に小学校教頭職の有資格者は殆んどいないことになり,実質的には登用の門が完全に閉ざされているこ とになる。それに加えて,校長,教頭の管理職試験についても同様な基礎資格を要求しているので,登 用の道は閉ざされている。③一4 養護教諭として採用された後,保健の教諭免許状を所有しているか

らといって,教諭への職種の変更が可能かどうか疑問があり,また養護教諭職を教諭在職と見倣すかど うかについても疑問がある。一部には,学級経営の経験がないことを理由に,養護教諭の管理職,主任 などへの登用を否定する考えもある。④法によらずに施行規則によって設置された保健主事制度が,

保健専門職の養護教諭の任用を除外して教諭のみに限定していることは,現実には養護教諭の職制上の 矛盾点の最たるものであり,少なくとも養護教諭についても任用可能な方向へ改善が望まれる。さらに 52年度より主任手当が支給されて中間管理職的な色合いを帯びて来たり,また保健主事を通してでなけ れば職員会議に提議出来ないなどの現状があり,養護教諭制度の根幹に触れる制度上の問題点である。

以上のような現行法令上の問題点は,殊に養護教諭養成課程の正規の課程を経て,教育学士の称号を 持つ養護教諭(女,男)が,校長,教頭,保健主事,主任にも成り得ず,教諭に進んだ同僚の教育学士 のみならず,他学部出身の学士号をもつ教諭に比べても制度上不利な立場になり,さらに不公正なこと には,2年制短期大学の課程を経て教諭2級免許状をもつ教諭が保健主事,主任になり・現行法令では 教職歴が15年経てば,自動的に各相当学校の教諭の1級普通免許状の資格を得て,校長,教頭・主任等 に登用される不都合を考える時,養護教諭の職制,身分等に関する権衡上の配慮が早急に望まれる。発 想の転換による抜本的改正がない限り,改善は困難であり,文部省,人事院等において,法制上,身分 上の公正さをはかり,制度上の矛盾を取り除く施策を,ここ数年位の間に実施されるよう要望する。

現行法令の範囲内で改善策を考える時,第1案養護教諭と教諭の区別をなくして教諭とするように 整備する。第2案養護教諭の免許を校種別とし,校種別教諭免許+養護教諭免許を取得出来るように 教育課程を整備する。3}などがこれまで提起されているが,養護教諭について,看護婦系と非看護婦一 教育系の養成課程を共存させる限り,現実には,各種学校扱いの看護婦系では,教諭への道は完全に閉 ざされている。また教育系で,養護学校教諭などと同じく,養護教諭免許についても校種別の基礎免許 状に加えて養護教諭免許状を取得させる第2案では,恐らく養護教諭にはならずに「般教諭に流れてし まって,養護教諭の計画養成は困難であろうと推察される。また校種別教諭免許状+養護教諭免許状を 取得しても,採用時に養護教諭として採用されれば,教諭として扱われる保証は困難であろう。いつれ

にしても,この第1,2案では,養護教諭集団全体の職制上,身分上の不利な条件に対する根本的な解 決策にはなり得ない。そこで現実的には看護婦系養護教諭についても適用可能な法令改正を考慮し,養 護教諭集団全体に及ぶ改善策を考える必要がある。さまざまな矛盾や混乱を伴うと思われるが,第3案

として次のような改正案を提起したい。 3−1 当面する問題として,先づ保健専門職の養護教諭が 保健主事になれない点の改善案として,学校教育法施行規則第22条の4の②の規定を,「保健主事は,

教諭または養護教諭を以って,これにあてる。」と改正することについては,差程異論はないであろう。

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同条に規定する他の主任については,教諭をもって充てるとする現行法令でも容認出来るが,「教諭ま たは養護教諭」と変更すれば・全体の統一がとれて一層好ましいと考えられる。 3−2 また施行規 則第8条の校長資格の規定は,校種を問わず教諭の1級普通免許状のみを基礎資格とし,教職年数とし て養護教諭職も含まれている。また例えば高校の校長について,修士の学位相当の高校教諭1級免許状 所有者の規定はなく,単に教諭1級普通免許状で事足りており,高中小幼校園の区別はない。さらに第 9条において私立学校の校長職は,教育関連職に5年以上従事した者とされ,教育職員免許状取得の有 無を問わない緩和規定がある。要するに校長の資格は,現行法令では2級免でも教職歴15年以上で1級普 通免許状が自動的に取得されるので,教諭,養護教諭を問わず1級普通免許状所有者を基礎資格とする

ことで容認可能と思われ,第8条を「校長の資格は,教育職員免許法による教諭または養護教諭の1級 普通免許状を有し・かつ,5年以上,次の各号に掲げる職にあったことにする。」と改正することを提起

したい。 3−3 現行法令で最も問題になる点は,教頭の資格規定である。従来学校教育法第28条で は・教頭が規定されておらず,施行規則旧第22条の2において規定されていたが,昭和49年の法改正に より,学校教育法第28条に教頭職が規定され,校長の補佐の位置付けがなされ,これをうけて施行規則 第10条に「教頭の資格は,教育職員免許法による各相当学校の教諭の1級普通免許状を有し,」と規定さ れた。教頭は,職制上校長を補佐する管理職であるから,基礎資格として校長と同等であって然るべき と思料されるが,却ってきびしい校種別教諭1級免許状が要求されている。そして管理職登用(試験)

の際に,校長職の基礎資格として逆に準用されてしまっている実情である。第10条を,前記校長の基礎 資格の改善に準じて改正することも考えられるが,むしろ第10条を第8条に含めてしまって「校長およ

び教頭の資格は,」として削除することが望ましい。

昭和58年6月15日付で,文部大臣は,教育職員養成審議会に対し,「教員の養成及び免許制度の改善に ついて」諮問し・11月22日付で答申されたが,早急に改善方策が検討された項目の大要は,次のよう なものである。1.教員免許状の種類:特修(修士),標準(大学),初級(短期大学)免許状

2・免許基準:専門科目の最低単位数の引き上げと教職専門科目の科目区分および単位数の改善,教育 実習の最低単位数の引き上げとその履修内容・方法の多様化,弾力化などの改善,特修免許状の基準。

3・新しい免許教科の設定等:現行の2級から1級普通免許状への,在職15年+0単位で上進する特例 を廃止し・教職経験+現職教育による単位によって免許の上進を行う。 4.改善すべきその他の事項

:教育実習の実施方法等の改善,その他。 なお養護教諭の免許状にかかわる養護専門科目名の手直し も若干行われた。また看護婦,保健婦等からの免許取得に関しては,厚生省管轄の養成にっいては改善 に触れておらず現行通りであり・文部省所管の養成のみ改善が行われている。今回の改善案では,教職専 門科目の大巾な改善が行われ,従来の看護婦系養成を勘案したと思われる低い教職専門科目単位数の設定 から,他免許に準ずる基準に引き上げが行われたことは,教諭と養護教諭の基礎資格の接近となり,身 分の権衡を考える上では,その解決が容易になると思われるが,一方,免許状の格差がより鮮明化し,

非教育系における養成は,一層不利な立場に立つことも予想され,在職年数15年による2級より1級へ の上進特例の廃止は,養護教諭にとっては,その養成の多様性から,かなりきびしい対応を迫られるこ とになり,身分の権衡上の問題解決を,一層困難にするものと思料される。

お わ り に

養護教諭の職制の変遷を辿り,養護教諭の職制,身分の権衡上の問題の改善策として,現行法令の改

(5)

正を一案として提起したが,学校教育法の根本理念に触れる問題であり,法令適用の整合性,統一性を はかることは極めて困難で,文部省,人事院などの関係機関で十分に検討して,遅くとも教育学士の称 号をもつ養護教諭が,管理職相当の年齢になるまでには,法令改正を実現し,養護教諭の身分の権衡上 の問題の是正を要望したい。既に養護教諭養成課程が発足した昭和50年5月に,旭川市の北海道教育大 学養護教諭養成所で開催された第9回旧国立養護教諭養成所協議会において,新設の養護教諭養成課程 卒業生の教育学士の称号を持つ養護教諭が,職制上,身分上不利な立場になることのないように,文部 省に考慮方を要望した。日本教育大学協会第二部会養護部門および国立大学養護教諭養成協議会は,本 件を含む養護教諭の全般的問題について,現職養護教諭とも連携をとりながら,研究・調査活動をすす めており,今後さらに文部省等の関係機関とも協議をはかりながら,養護教諭の理想像を求めて,養護 教諭の身分の権衡上の問題の解決を含む養護教諭養成制度の改善や学校保健の分野で,活発な活動を展 開することが期待される。

この論文の要旨は,昭和56年10月14日に富山大学教育学部で開催された,昭和55年度日本教育大学協会第二部会 研究会に訟いて,発表された。

参考引用文献 1)小倉:『養護教諭  その専門性と機能』,東山書房,197α 2)杉浦:『養護教員の歴史』,東山書房,1974.

3)須藤:「養護教諭の地位向上に関する研究」 学校保健研究,21, p。394〜400, 1979.

4)浦中:「養護教諭の資格,身分,地位の向上に関する研究」,日本教育大学協会第二部会研究会,p.127〜130,

1979.

5)国立大学養護教諭養成協議会研究委員会報告書:「養護教諭の地位・身分について」,p。34〜40,1983。10.

6)教育職員養成審議会答申:「教員養成及び免許制度の改善について」, 1983.11.

7)国立大学協会教員養成制度特別委員会:「大学に澄ける教員養成(案)」,1983.6.

8)日本教育大学協会教員養成制度委員会:「教員免許制度に関する調査中間報告書」,1983.6。

9)自由民主党文教部会教員問題に関する小委員会:「教員の養成,免許等に関する提言」,1983。5。

10)日本教育学会:「教師教育の改善に関する実践的諸方策についての研究最終(第4次)報告」,1982.8.

11)文部省大学学術局教職員養成課:「教員養成制度に関する検討資料」,1982.9.

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