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一養護教諭の実践研究報告から捉えられる'養護実践の活動過程

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熊大教育実践研究第 2 3 号 , 1 7 1 ‑ 1 7 8 ,  2 0 0 6  

一養護教諭の実践研究報告から捉えられる'養護実践の活動過程

斉 藤 ふ く み * ・ 嶋 津 貴 子 * *

A  C o u r s e  o f  A c t i v i t i e s  o n  E d u c a t i o n a l  H e a l t h c a r e  P r a c t i c e  D e r i v e d   f r o m  P r a c t i c a l  R e s e a r c h  C o n d u c t e d   b y   a  Y  o g o  T e a c h e r  

Fukumi 

SAITO 

and Takako 

SIDMAZU 

はじめに

養護実践は,養護教諭が行う実践活動と解するこ とができる.後藤1)は,養護教諭の実践の課題は,

「子どもの発育・発達への貢献

J

という教育活動と しての中身を問うことといえるとして, r 養護教諭 の実践」という表現には深い意味が込められており,

単純に実際の活動を実践と呼ぶことは'陣れると述べ ている.養護教諭の実践活動という言葉は, 1 9 9 4 年 第 4 1 回日本学校保健学会の一般発表演題の中に見出 される

2)

ーベまた, 1 9 9 7 年第 4 4 回日本学校保健学会 長向井ら

5)

の挨拶文の中で「学校保健のもつ教育機 能(活動)の独自性を教育科学の側面から解明する ためには,学校保健活動の中核としての養護教諭の 実践に期待するところ余りある」と述べ,養護教諭 の実践は一層注目されてきた.その後,養護教諭の 実践活動に関する研究が積み重ねられている

6)7) 

8)

は,養護教諭の活動過程を r 1  .実態把握・

問題発見J r  2 . 問題構造の明確化,発生要因の分 析 J r  3. 問題の共有化と教育目標,教育計画との 相互関連

J

r  4. 学校保健・安全計画や個別的支援 計画の見直しと修正 J r  5 . 計画の実施J r  6  .評 価」の 6 項目に分類した.これは,小倉

9)

附の提唱 した学校保健活動の過程( 1  .問題の発見と選定 2 . 学校保健診断 3 . 計画化 4 . 実施 5 .

価)をベースにしたものである.さらに盛

ω

は , 2 0 0 0 年には,先の 6つの養護教諭の活動過程を,養 護活動の過程として第 1 段階から第 6 段階まで段階 に分けて修正している.このように養護教諭の活動 過程を段階を踏んで捉えることは,個々の養護実践 活動を検証する際に有用である.

熊本大学教育学部附属中学校では r 気づきから 実践までの『考えるカ』を育成するために」を研究 主題に掲げて,平成 1 5 年度より 3 年継続で研究が深

*熊本大学養護教諭特別別科

**熊本大学教育学部附属中学校

められている.平成 1 7 年度は,健康教育領域におい て,自律的健康管理能力の向上を目指して,養護教 諭の実践活動に根ざした研究が進められており,授 業実践研究会で S養護教諭よりその成果が報告され た発表の随所に養護教諭の実践を問い直す重要な 事柄がちりばめられていた.本研究は, s 養護教諭 の実践研究報告を,盛による養護活動の過程を基比 検証して,何が養護教諭の専門性であり,実践者と して求められているものは何か,さらに実践活動を 支えている原動力を探ることとする.

対象および方法

S 養護教諭が,平成 1 7 年度熊本大学教育学部附属 中学校授業実践研究会健康教育分科会で報告した実 践研究報告∞を研究対象とする.方法は,内容分析 手法ゆを用い,報告に記された文字(データ)を忠 実に養護活動の過程のプロセスに添って分析した.

合わせて,活動過程に対応した養護教諭の思考過 程

ω

も検証した.

結果および考察 1 .   S 養護教諭の実践研究の枠組み

S

養護教諭は,研究主題を「健康を『自ら考え,

つくる』生徒の育成 自律的健康管理能力の向上を めざして " " ' J と設定した.自律的は r 自分で自分 の行為を規制すること.外部からの制御から脱して,

自身の立てた規範に従って行動すること

J

同の意味 から,社会的な意味を持つ自立的と異なり,自らを 律する(コントローノレする)という,より個人的な 意味内容を持っている.

研究の枠組みは基本的な生活リズムを自らっ くりだす能力を育成する J こ と を 目 的 と し て 生 涯にわたる健康な体の維持J と「自己受容感・自己 肯定感

j

の実現を目指して,そのための養護実践活 動の柱を「保健室の機能を生かした,健康を『自ら 考え,つくる J 生徒への支援Jと立てた.実践研究 報告は,ヘノレスチェツクシートの活用,生活リズム

t

(2)

一養護教諭の実践研究報告から捉えられる養護実践の活動過程

の振り返りシートの活用,保健室来室時の対応,本 校養護教諭に求められる役割の 4 つの項目で構成さ れていた.

2 .   S 養護教諭の養護実践の活動過程と思考過程 1  )ヘルスチェツクシートの活用

ヘルスチェツクシートの活用における養護実践の 活動過程を表 1 に示した.活動過程は目的‑動機一 工夫一気づき・確認一分析・判断一支援・実践一変 容の流れとなっていた.対象は,初めは生徒であり,

その後保護者が加わっている. s 養護教諭は,赴任 後生徒の様子を観察し始め(実態把握),ヘルス チェツクシートを活用する目的を「自分の基本的な 生活をまず気づき感じるJ と設定した. s 養護教諭

は,・質問の仕方を修正することにより生徒が自分を 振り返ることができるなどの工夫をしながら実践し,

3 割の生徒が自分で起きられないという実態に気づ いた.このことから保護者の思いや認識を確認して いる.データとして示された生徒の実態を分析・判 断し,生徒が自分の生活をコントロールしていくた めの支援が必要と感じ,支援の必要な生徒に声かけ の実践を行っている.その結果,生活リズムを意識 する生徒が増えてきたなどの生徒の変容を捉え,更 に生徒の健康な生活の見直しに保護者を巻き込むと いう養護実践活動の発展を確認できた.このような 活動過程を通して,思考しながら実践する養護教諭 の姿を捉えることができた.

2) 生活リズムの振り返りシートの活用

生活リズムの振り返りシートの活用における養護 実践の活動過程を表 2 に示した.活動過程は,目 的一動機一気づき一分析・判断一支援・実践一実 態ー判断・分析一支援のあり方一変容‑願いの流れ になっていた.対象は生徒で、あった.生活リズムの 振り返りシートの活用の目的を r l 学期の生活を振

り返り,健康な生活が送れているか自己評価を行 う J と設定し実践する中で s 養護教諭は生徒の自 己評価と生活のしかたの実行面で食い違いがあるこ とに気づいた.そのことから,生徒に基本的な生活 リズムを押し付ける(型にはめる)というよりも,

むしろ自分の健康状態や環境の変化に適した生活リ ズムを自分でコントロールするカを身につけさせる ことが重要であると分析・判断した.これは,より 自校の生徒の実態を捉えた判断といえる.さらに支 援・実践を行っていき,その中で把握された生徒の 実態を深く分析し,時間的な余裕がない中でも心の ゆとりを持つ努力をしている生徒の姿を認め,その ことは S 養護教諭の支援のあり方にも変化をもたら

している.結果として,生徒がそれぞれの時間を利 用し,規則正しい生活を心がける様子を捉えている.

最後の「願いJでは,生徒の実情を十分理解した上 で,夏休み中の健康管理と生徒の自律的な管理能力 と表現能力の育成を願い,生徒の将来を見通した養 護教諭の思いが表現されていた.

3 ) 保健室来室時の対応

保健室来室時の対応における養護実践の活動過程 を表 3 に示した.活動過程は,実態一分析・判断一 支援のあり方一省察一次なる支援一変容の流れが認 められた.対象は生徒であった.生徒は保健室来室 時に痛みを訴えたり,薬を要求するという実態から,

これが中学生のあるべき姿なのかと感じ,生徒は自 分の健康状態の原因を十分に理解しておらず,健康 に関する認識が低いと分析・判断していた.生徒へ の支援のあり方を思考し,実践するも, r 保健室に 来室した短時聞に,このことを伝えるには時聞が足 りず,生徒には十分理解できず,ただ説明のように なってしまわないか心配もある J と記述している.

この部分は,自らの実践活動を振り返り,問題点は 何かを追究する姿であり,省察(自分自身を省みて 考えめぐらすこと)附に該当した.その後, s 養護

教諭は,生徒一人ずつに少しずつ丁寧に向き合うと いう支援につなげていき,結果として,生徒が現在 の健康状態の原因には生活リズムが関係していな かったかを考えて来室するという生徒の変容を捉え た.

4)

本校養護教諭に求められる役割

「本校養護教諭に求められる役割

J

における S養 護教諭の思考過程を表 4 に示した.思考過程は,省 察・問いかけ一実態把握一結果一分析・判断‑養護 実践活動の目標一養護教諭の願いの流れが認められ た.対象は,養護教諭である.思考過程の初めには,

「保健室の機能を生かし,養護教諭の役割を充分実 践できているだろうか

J

r 中学校の養護教諭として の役割は何が大切になるだろうか

j

という省察・自 らへの問いかけを行っていた.そこで,同僚に対し て「養護教諭の役割をどのように求めているか

J

と 尋ね,①健康相談に関すること②学校保健情報の把 握に関すること③保健指導・保健学習に関すること

の 3 点を把握した.この結果を受けて,職員は「生 徒の様々な健康問題における支援が必要であると考 えている

J

と分析・判断し,養護実践活動の目標を 設定した.このように職員に尋ねることは,生徒の 実態把握をするだけでなく,共に教育活動を行って いく同僚が捉える生徒の健康実態を把握することに

‑172‑

(3)

ヤ︿守・轟

‑ N  

盟 申 繍

部 ヘルスチェツクシートの活用における養護実践の活動過程

活 動 過 程

対象

目的

軍機 工夫

気づき・確認 分析・判断 支援・実践 変容

生徒 自分の基本的 体育大会までの 「自分で起きた 全備句に

7

劃ほどの生徒が 自分で起き、さらに気分良く な生活をまず 健康管理にも充 カサ「今日の気分 自分で起きていることがわ スッキリ目覚められるよう 気づき感じる 分な効果がある は ど ん な 気 分 かったが、

3

割の生徒が自分 自分の生活をコントロール

と思い実施した か J と聞くこと で起きられていない していくための支援が必要

によって、自分 だと感じた

の行動を振り返 ることができる と考えた

生徒 就寝時間別に見ると、

12

時 本来、成長期に重要な醐跡乃

以降に扇濯してしも生徒は、 必罰金を指導する中で、競寝 自分で起きている割合や朝 時間が遅い生徒の生活リズ 気分よく起きている割合が ムには おかしさ"はないか 少なくなっている。しかし、 探ることが大切であると感 就寝時間による差があまり じる

ないことに驚いた

生徒

1

年生、

2

年生、

3

年生の就 醐民のリズムについては、

2

この「ヘルスチェック

j

を行 ‑自分で生活リズムを目で見 寝時間の平均 年生から

3

年生になる時期 うことで個人個人の生活リ て確認することで、自舌リズ にどのリズムが自分の体や ズムを拒蕗けることができ、 ムを意識する生徒が増えた 心に適しているか、考え、選 心身に負担のある生活を送 ためか、体育大会当日のケガ 択することが、その後の鱒棄 っている生徒や生活リズム や病気の数は昨年度より大 な生活につながるのではな の時間や

'JI

慎番の乱れやすい 変少なかづた

いかと考えられる 生徒への声かけができるよ ‑毎日の「ヘルスチェック J うになった が単調にならないように、体

の調子の欄などに詳しく関 心を持ちながら記録してい る様子が伺えた

保護者 ‑我が子の生活を把握してい 家庭と協力した健康教育を 「ヘルスチェック J を保護者

ない 行う必関空を感じた に一度返すことで、菊窪での

‑不規則な生活を

I

t ; 程位する 生活の見宜しにも参考にな

っている様子だった 表 1

ー 口

ω

(4)

ー綿織鉢謬

3 w

澗 混 濁 滞 叫 薄 暗 M 7 0

一 清

N . 0 雪 印 離 職 制 利 用

獅 3 部塑節前

生活リズムの振り返りシートの活用における養護実践の活動過程

対象 活蹴副室 願い

目的

霞磯

気づき 分析・判断 支援・実践 実態 分析・判断 支援のあり方 変容

生徒 1学期の 自 分 の 推 測 し て い ‑生活リズムは悪いが、健康に過ご 生 活 を 健 康 や たとおり、評 せるということである。生活リズム 振 り 返 生 活 を 価の中で「健 は、一樹旬こ「良い

J

とされる習慣 り、健康 考 え 生 康

J

と答える ではないが、自分の体や心に無理が な 生 活 活 し て 生徒も、生活 なく、毎日また同圏として良いリズ が 送 れ い る か リズムは、 ムの組織:iI~ある生活ができている事 て い る 確 認 す 「良くない

j

で健康であることへの開面につなげ か 自 己 る 意 味 と認めてい られるのではないかと考える 評 価 を で も 重 る生徒が多 ‑多様化した、時間に追才オ

L

ている

干~-丁フ

要 で あ い 事 が わ か 中学生に、基材句な生活の自舌リズ

る と 考 った‑ ムを押しつけることは、無理方注じ える るが、自律という意味でも、健康状

態ヰ環境の変化に適した生活リズム' を自分でコントロールした生活を継 続していくことが個人の力をつける

ものと考える

生徒 時 間 に 心のゆとりを 「好きな

H

J

追 わ れ 持てる「好きな カ ミ

た 生 活 時間

j

を確認し →趣味の時間 →心にゆとりの

でもよリ た ヰ習い事 ある生活を送つ

ラック ている

ス で き ‑→寝ていると →生活の忙しさ

る 時 間 き を感じさせる

は 不 可 →テレピや自 →楽しんでいる

欠だ 由な時間

生徒 生徒に自分の ほとんどが睡 生徒は時間の使 時間の使い方 それぞれに 夏休みは目標や課題

生活リズムを 眠時間の確保 い方を考えなけ に工夫(が必 時間を利用 を自分でつくり発見 振り返りアド に関してであ らばならないと 要だと)感じ し、規則正 し健康管理を続けて バイスを考え った。夏併称の わ か っ て い る る しい生活を ほしい。夏休みだか させる。夏休み 生活も「早寝早 が、実際に態度 心がける様 らこそ、意識し自律 を健康に過ご 起き」を目標に で表す事が難し 子が伺える 的な管理を十分実践

すための生活 している生徒 いのだろう し表現能力を身につ

目標を考えさ は多い けてほしい

せる 表 2

ー ロ 仏

l

(5)

功+

ヤ ︿ ヤ ・ 轟

4

• 部

保健室来室時の対応における養護実践の活動過程

活 動 過 程

対象 実態 分析・判断 支援のあり方 省 察 次なる支援 変容

生徒 生徒は保健室に来て症状を訴え 果たして、これが中学 るとき、「先生、頭が痛いです」 生のあるべき姿なの

「先生、おなかが痛いです J r 先 か不安に感じた 生、足が痛いです J など痛みを 頭が痛い、おなかが痛 訴えてくることが多い い、足が痛い原因など

自分で考え、伝える意 保健室に来室した短 1 人ずつ、少しずつ原 最近は、少しずつであ 志がなく、一つ一つ誘 時間に、このことを伝 因を見つめ、抵抗力や るが、「早く寝たけど、

導していく必要があ えるには、時聞が足り 免疫力を高める事を 風邪をひいていて頭

る ず、生徒には十分理解 伝える必要がある が痛いです J r 朝ご飯

健康に関する意識が できず、ただ説明のよ を食べていないから、

低いことが顕著に感 うになってしまわな 気分が悪いです J など

じられた いか心配もある 現在の健康状態の原

生徒 「薬をください

j

と来室する生 自分の健康状態の原 人間には、薬にはない 因に生活リズムの関

徒も多い 因を十分に理解し、分 強い回復カがあるこ 係はなかったか考え

析できていないで、た とを十分に知っても て、来室する生徒も増

だ症状が良くなるよ らいたいと考える えている

うに内服薬に依存し ている

表 3

.:J  U

(6)

ー琳繊鉢謬

δ

湘 課 事 浦 裁 昨 日 7 0

⁝ 荷

NPF

m m m S

部 四 社 脳 部

「本校養護教諭に求められる役割 J における

S

養護教諭の思考過程 思 考 過 程

対象 省察・問いかけ 実態把握 結 果 分析・判断 養護実践活動の 養護教諭の願い

目標

養護教諭 ‑保健室の機能 本校職員に「養 ①健康相談に関 担 任 や 教 科 担 ‑養護教諭とし 今日における多くの社会的な問題の中で、生徒自身が (自分自身) を生かし、養護 護教諭の役割を すること 任、職員の多く て、個人の健康 健康を意識し、考え、っくり、喜びを感じながら、自

教諭の役割を充 どのようにもと ②学校保健情報 が、生徒の個別 管理能力を高め らの大切なカとして育んでほしいと願っている 分実践できてい めているか

J

尋 の把握に関する の様々な健康問 る支援を行う

生徒観 健康観 養護教諭観

るだろうか ねた こと 題における支援 ‑担任や教科担

‑中学校の養護 ③保健指導・保 が必要であると 任、職員と充分 生徒自身が健康 健康は目的では 養 護 教 諭 と し 教諭としての役 健学習に関する. 考えていること に連携を図る であることを喜 なく、自己実現 て、一人ひとり

び、感謝する心 のための基礎と の生徒を大切に

割は何が大切に こと が分かつた ‑学校経営の組

を育て、新たな し、「考えるカ

j

なるだろうか 織のーっとして な る 資 源 で あ

健康課題に立ち る。その健康は、 の育成に努めた 保健室経営を効

向かうカを身に 自ら管理し、高 い。微力ではあ 果的に行う

つけた生徒 め、つくるもの るが今後も養護 である。健康管 教諭として生徒 理能力は、生徒 の健やかな成長 の輝かしい未来 に携わり、共に を実現するため 喜びあっていく

。に培うべき必要 養護教諭であり な力である たい

表 4

ーミ∞│

(7)

斉 藤 ふ く み ・ 嶋 津 貴 子

つながり,その学校で養護活動を展開していく養護 教諭の基盤の形成につながるものであり示唆に富む.

最後にS 養護教諭は「養護教諭の願い

J

を述べてお り,その願いを形.作っているものは確固たる生徒 観・健康観・養護教諭観であり,高い実践能力を備 えた

S

養護教諭の養護教諭像

17)

が捉えられるととも に , s 養護教諭の実践活動を支えている原動力と思 われた.

3 .   S 養護教諭の実践研究報告から導かれるもの 盛 ( 2 0 0 0 ) による 6段階の養護活動の過程は,① 健康実態の把握・健康問題の発見②問題構造の明確 化③ヘノレス・ニーズの共通化④学校保健計画や個人 的支援計画の見直し修正⑤実施⑥評価である. s 養 護教諭の養護実践における活動過程は大まかに目標 設定一活動の工夫一実態からの気づき一分析・判 断一支援・実践一確認一分析・判断一支援のあり 方一省察一次なる支援一変容のプロセスが存在する ことが確認された.さらに思考過程においては,省 察一実態把握‑結果一分析・判断一目標設定一養護 教諭の願いのプロセスが存在することが確認された.

これらの過程は,盛の養護活動の過程と重なる部分 と S 養護教諭の独自の活動(思考)過程が存在した.

それぞれの過程内の項目を繋ぐ矢印は,一方向では なく逆方向もあり,さらに活動過程から思考過程へ,

思考過程から活動過程へ繋がっていく相互関連が認 められた(図 1 ). 

盛闘は,養護活動の専門性のレベノレは,実施の有 無ではなく,どのように判断し,どのように実践し,

その結果子どもがどのように変容したかに左右され るとしている. s 養護教諭の実践を丁寧に辿ってい くと, 6つの過程を進んだり戻ったりしながら,生 徒の様子の変化を確認して,支援の修正を行ったり,

自らの実践を省察する行為が見出された. ドナノレ ド・ショーン叫によると,反省的実践家における専 門性とは,活動過程における知と省察それ自体にあ るとされる.すなわち「行為の中の省察Jが重要な

概念になり, s 養護教諭の報告の中に「省察Jが見 出されたことは,養護実践家である養護教諭の専門 性を実証する事実と思われた.教師の行う授業が,

生き物であり教師の力量や技術の向上により日々変 化しているように,養護教諭の実践活動も養護教諭 の行為の中の省察の繰り返しにより,新たなものを 創造したり,実践したり,変化していかなければな らない.実践的専門家は実践により育っていき,獲 得・習得した知識・技術をもって実践することに よって生徒に還元する.養護教諭は,自らの能力が そのまま子どもの健康に生きるカを育てることに影 響するものであり,大変責任の重い仕事である.そ れゆえ,常に子どもや職員,子どもを取り巻く社会 の情勢を捉え,健康に関わる様々な情報を収集し,

子どもの健康の保持増進に役立てながら自ら自己成 長していく養護教諭が望まれる. s 養護教諭の実践

研究報告から,省察し成長していく養護教諭像を見 出すことができたと思われる.

ま と め

平成 1 7 年度熊本大学教育学部附属中学校授業実践 研究会健康教育分科会において, s 養護教諭が発表

した実践研究報告の文字(データ)を内容分析する ことにより,以下の諸点が把握された.

1 .   S 養護教諭の養護実践の活動過程は, 目標設 定一活動の工夫一実態からの気づき一分析・判 断一支援・実践一確認一分析・判断‑支援のあ り方‑省察一次なる支援一変容のプロセスの存 在が確認された.

2 .   S 養護教諭の思考過程は,省察一実態把握一結 果一分析・判断一目標設定一養護教諭の願いのプ

ロセスの存在が確認された.

3 . 活動過程と思考過程のそれぞれの過程内の項目 を繋ぐ矢印は,一方向ではなく逆方向もあり,さ らに活動過程から思考過程へ,思考過程から活動 過程へ繋がっていく相互関連が認められた.

4 .   S 養護教諭の養護実践の活動過程には,実態を

│ 活 動 過 程 │ 目 標 設 定 仲 間 の 工 如 実 態 特 づ 向 析 判 断 仲 支 援 実 践 仲 確 認 時 析 判 開 察 特 修 正 特 変 容

│ 思 考 過 程 │ ふ 実 態 把 握 仲 結 果 仲 分 析 判 断 件 目 標 設 静 養 護 教 諭 の 願 い

s 養護教諭の実践研究報告から導かれた養護実践の活動過程と思考過程

‑177‑

(8)

一養護教諭の実践研究報告から捉えられる養護実践の活動過程

専門的に分析'・判断し,子どもの変容を捉えると と も に 省 察 が 見 出 さ れ , 養 護 実 践 家 で あ る 養 護 教 諭 の 専 門 性 が 確 認 さ れ た .

文 献

1 ) 後藤ひとみ:第 8 章養護教諭と研究(大谷尚子他『養 護学概論

J)

, 2 1 5 ,東山書房,京都, 2 0 0 0  

2 ) 中丸弘子・藤本比登美:養護教諭の実践活動(第 1 報) 保健室来室生徒へのかかわり,学校保健研究, ' 3 7 ,  S u p p l .   3 4 3 ,  1 9 9 4  

3)

藤本比登美・中丸弘子:養護教諭の実践活動(第

2

報) 保健室来室生徒へのかかわり,学校保健研究, 3 7 ,  S u p p l .   3 4 4

, 

1 9 9 4  

4)

藤本比登美・中丸弘子:養護教諭の実践活動(第

3

報) 保健室来室生徒へのかかわり,学校保健研究, 3 7 ,  S u p p l .   3 4 5 ,  1 9 9 4  

5)

向井康雄・山本万喜雄:ご参会のみなさんへ,学校保 健研究, 3 9 ,  S u p p l .   5 ,  1 9 9 4  

6 ) 山崎隆恵・小林訓子・小林央美・斉藤ふくみ他:養護 教諭の研究能力に関する研究第 2報「研究発表

j

の分 析から,日本養護教諭教育学会誌, 3  ( 1 ) ,   2 1 ‑ 3 2 ,  2 0 0 0   7 ) 斉藤ふくみ・堀内久美子:養護教諭に関する学会発表

演題の動向一日本学校保健学会および日本養護教諭教 育学会の分析からー,熊本大学教育学部紀要, 5 3 ,  1 2 3 ‑ 1 3 1

, 

2 0 0 4  

8)

盛昭子:第

2

章養護教諭の専門的機能 第

3

節養護教

諭の活動過程(飯田澄美子・堀内久美子・天野敦子他 編「養護活動の基礎

J)

, 3 5 ‑ 4 6 ,  1 9 8 8  

9 ) 小倉学:養護教諭その専門性と機能, 1 1 5 ‑ 1 2 0 ,東山書 房,京都, 1 9 7 9  

1 0 ) 小倉学:学校保健活動, 2 9 9 ‑ 3 2 2 ,東山書房,京都,

1 9 8 0  

1 1 ) 盛昭子:第

3

章養護活動の過程

2.

養護活動の過程 (大谷尚子他

f

養護学概論

J)

, 4 4 ‑ 5 4 ,東山書房,京都,

2 0 0 0  

1 2 ) 嶋津貴子:健康教育研究主題 健康を「自ら考え,つ くる

J

生徒の育成 自律的健康管理能力の向上をめざ して ,平成 1 7 年度授業実践研究会研究資料集, 8 6 ‑ 9 3 ,  熊本大学教育学部附属中学校, 2 0 0 5  

1 3 ) 斉藤ふくみ・宮腰由紀子・津島ひろ江:養護実習記録 簿の分析における内容分析の有効性一文献研究を通し てー,学校保健研究, 4 7 ( 5 ) ,  4 5 2 ‑ 4 6 8 ,  2 0 0 5  

1 4 ) 前掲書 8 ) , 3 5 ‑ 3 7  

1 5 ) 新村出編:広辞苑, 1 2 2 5 ,岩波書底,東京, 1 9 8 6   1 6 ) 前掲書 1 5 ) , 1 3 2 0  

1 7 ) 日本学校保健学会「養護教諭の養成教育のあり方

J共

同研究班:これからの養護教諭の教育, 2 7 ; 東山書房,

京都, 1 9 9 4   1 8 ) 前掲書 8 ) , 3 5  

1 9 )   ドナノレド・ショーン(佐藤学他訳):専門家の知恵,

2 1 5 ,ゆみる出版,東京; 2 0 0 1  

‑178‑

参照

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