茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)213−229 213
養護教諭志望学生の養護教諭志向に関する研究
一養護教諭課程への志望動機と在学中の志向の変容にっいて一
大谷 尚子㌔堀江 宮子**
(1984年9月29日受理)
Studies on the Attitudes of the Students in the Nurse−Teacher Course toward School Nurs㎞g Career
一Motives for Majoring in the Nurse・Teacher Course and the changes of ther Attitudes While in College一
Hisako OTAN1*and Miyako HO RIE**
(Received September 29,1984)
1 は じ め に
学校教育法第28条に「小学校には,校長,教諭,養護教諭及び事務職員を置かなければならない。
ただし,特別の事情のあるときは,事務職員を置かないことができる。……(中略)……⑤養護教 諭は,児童の養護を掌る。……(後略)」と,養護教諭を全校に配置すべきことが昭和22年に規定 されている。それから30数年経過した今日,ようやく,小学校における養護教諭の配置が全国平均 で80.5%に達した状況である。学校に欠かすことのできない職員の一人である養護教諭が長い間配 置されないままにされ1㍉今なお配置されてし・ない学校がある現状一これは,わが国の養護教諭の 養成が立ち遅れ,その人員確保が困難であったことが大きな原因とみなされるであろうがさらに,
その背景には,養護教諭に対する学校関係者を初めとして社会一般の人々から,養護教諭の存在や その職務内容についての理解がなされず,社会的評価がなされていなかった状況を認めることができ
よう。
また,養護教諭養成を主目的とする4年制の養成課程が設置されたのは,わが国では昭和50年で あり,その数は今日10ケ所に及んでいるが,養護教諭として養成される人数の大半は,今日でも2 年制の短大卒業生の方が多い現状にある2)・3)。このような即成的な養成・教育は養護教諭の人員 確保はあっても,養護教諭に対する社会的評価は必ずしも高めることは難かしい。
このように,養護教諭に関して,十分理解されず,評価が必ずしも高くはない社会的状況の中で はあるが,養護教諭を養成・教育する側にあっては,養護教諭に対する志向を高く持つ者が養護教
*茨城大学教育学部教育保健研究室
**茨城県筑波郡谷和原小学校
諭課程に入学し,在学中に養護教諭の志向をさらに高め,意欲的に現場に出て行き養護教諭職を遂 行してほしいと願わされる。また,教育が,対象である学生の実態に即して行われるべきものであ るのであれば,社会一般に,養護教諭についての理解が十分とは云えない今日,養護教諭養成・教 育の場合は,一層,対象となる学生の実態,即ち,養護教諭に対する認識・理解,志向状況等を把 握しておくことが重要である。
そこで,本研究は,本学教育学部の養護教諭養成課程学生を対象に,養護教諭養成課程を志望し 受験しようとした過程について,また,さらに,大学在学中における養護教諭への志向の変容を明
らかにしようとした。そして,養護教諭養成・教育が,学生の実態に即して卒前教育から卒後教育 へとつなげていく方策を探りたい。また,大学への進学指導のあり方についても一資料としたい。
H 研 究 方 法
1.調査対象 表1 調査対象・時期及び回収数
茨城大学教育学部養護教諭養成課程の学生。 学生 養 教 課程 教諭課程 昭和52年度入学生から昭和56年度入学生の 学年度
52 53 54 55 56 52 54 56 5学年の学生210名(表1参照)。
配なお対照群として,教育学部の学生で養護 布 数 40 41 43 42 44 170 230 210 教諭養成課程以外の学生を調査した(昭和52, 調 一次調査
5生56年度入学生).以下教諭課程学生と蟻 3月 T〜6月
27
36 34 41 44 72 169 162
称す。 別
2,調莇法 暖 数 二次調査 蛯ノ10月
/ 31 31 39 43 / / / 質問紙調査法
R.調査時期
1981年の春と秋 (表1参照)
4.調査内容
1)大学入試前における養護教諭とのかかわり体験
保健室の訪問状況,在学校養護教諭に対してもつ印象,身近かな養護教諭の存在の有無。
2)養護教諭への志望過程
志望過程(段階)の体験時期,そのきっかけ,大学受験の志望内容,養護教諭課程の出願動機,
養護教諭に対する理解状況。
3)大学入学後の養護教諭志向の過程
養護教諭について理解が深まったり,自分の学ぶ目標がもてたきっかけ,養護教諭になりたい とさらにその思いが強められたきっかけ,養護教諭になることに対する疑問や転科したい気持に なったきっかけ,またその解決のいきさつ。
4)卒業するにあたって(S52・53年度入学学生のみ対象とする)
養護教諭の立場や期待,必要とされていることがらに対するやりがい感と不安・不満感の有無。
大谷・堀江:学生の養護教諭志向 215
皿 結 果 と 考 察
A 養護教諭課程への志望動機
1.養護教諭養成課程への受験経過 (入学年度)°@ 5° 1・・%
1)受験に至るまでの時期(図1)
B茨大養護教諭課程を知った時期
@茨城大学に養護教諭養成課程があるこ ニを知ったとする者は,S53,54年度の i階では,高校3年生になってからとす
遜驕夷姦 つ 56 灘 ■鴨●●・
T5
F: 副
※
る者が多かった。しかし,4年課程の養
護教諭養成課程が設置されて7年目の56 轟 56 懇
年度に至って,ようやく50%を越す者が 墜 55 :擬
な o・o幽・
高2までに知るほどに知られるようにな り 54 選
た ※
った。しかし,高校3年生になって初め ト知った者が3割もまだ存在することは,
2零
53 電竃 瞭●
※
た 52
周知浸透の必要性を思わされる。
・養護教諭になりたいと思った時期 S52年度入学生(卒業直前生)を始め,
r53〜55年度入学生(4〜2年次生)
ぎ蓑程
56 :°。{::・…罰』二 ● . ● ●. ● ●
T5 :薄ξ㌢ ■ ・ o .
いずれも「大学入学後」に養護教諭にな 叢 54 1 りたいと思ったと回答している者がいた。
アの真意は「自分自身で養護教諭になり
湊壽期 ●
T3 i二擢鑑
T2 ・∵∴
たいと思うようになった時期」というこ 鑑鴨
とであり,不本意ながら養護教諭課程に 0 50 100%
[コ中学〜高2入学し勉学を進めてきたが,大学在学中 匡≡ヨ高3に,自分自身の意志として養護教諭にな 圃浪人
りたいと明確に自覚できたとする者と解 皿皿大学に入って 釈できよう。養護教諭志向の無い蕎あ ■無記入
るいは低い志向しか持たない者4)が入学 検定は・x2検定,あるいはフィ・シャーの直接確率
してきている現状における養護教諭養成 計算法に基づく(危険率5%:※ 1%:※※ α5%;※※※)以下同.
課程の入学生の姿を見ることができる。
しかし,中学から高校2年という早い 図1 受験に至るまでの時期 時期に,既に養護教諭になりたいと思っ
ている者も数は少ないが着実に毎年2割ほどみられることに注目したい。
。茨大養護教諭課程を受験しようと決心した時期
ほぼ1割の者が高2までに決心し,あとの残りの大半が高校3年の時に受験を決心している。
他の課程・分野の大学受験に失敗して浪人中に養護教諭課程の受験に変更した者は1〜2割ほど みられる。このような者もまた養護教諭志向という点では注意を要する者になるであろう。なお,
共通一次試験が初めて実施された54年度の場合には,このような浪人生が少なくなっているのも,
当時の受験指導の成果を反映していると言えるであろう。
以上・受験に至るまでの3つの 表2 受験に至る過程相互の関連 段階について,その相互の関連を
クロス集計し分析した結果表2の 養
養り護 受
オ験 養u護
通りとなった。 時知教
冾ツ諭 スい諭った教 梃たを 望教∠@
養護教諭課程を受験しようと決 た課
@程 時とに厲vな 期心 位の 心した時期が,高3の夏までの者
早い 早い 早い 第1位
は,養護教諭の養成課程を知った 養護教諭課
時期は高2までと早く・養護教諭 程を知った 〜高2>高3〜 ※ ※※※ ※※※
になりたいと思った時期も高2ま 時期 での者が多いという結果である。 養護教諭に
2)養護教諭養成課程を知ったき なりたいと 〜高2>高3〜 ※※※ ※※※
思った時期 っかけ
受験を決心茨城大学の養護教諭養成課程の した時期 〜高3 高3
@夏 〉秋_ ※※※
ことについて知ったきっかけを列 挙してもらった結果をまとめたの
が表3である。 表3 養護教諭課程を知ったきっかけ(情報源)
高校での進路指導・担任との話
回答数 年度別比較
しあいによったとする者が4割ほ n;155
i)内% S53:S54〜46 どみられる。次いで多いのが,受
高校での進路指導,担任との話し合い 63(40.6) (25.0)嵌(45.3)
験雑誌や入試要項等雑誌類による 本,雑誌,入試要項等
49(31.6)
ものであった。 養護教諭(母校・近所)
21(13.5)
共通一次試験の開始年度である 高校の先輩・友人
18(11.6) (22.2)※(8.4)
S54年度からは特に進路指導に 家族・親類
7(4.5)
よって知ったとする者が増えてい その他,N.
A. 8(5.2)
る。それ以前は,雑誌類か先輩や
友人からの情報源であったことと 50 10%
対照的である。 養教n=21 66.7 28.6 B 母校や家族,近所にいる養護教 家族n=7 57.1 28.6 4.3
諭から知ったとする者は14%ほど 本・雑誌 46.9 34.7 楽 n=49
で数としては多くない。しかし, 先「離蓋人図2に示す通り,情報源が養護教 進肇瀧 38.1 46.044.4 33.3 劉15.9
諭であった場合,大学在学中の養
護教諭に対する魅力度にまで差異 [コ養教の方が魅力あり 吻同じ を生じさせていることが明らかで ■教諭の方が魅力あり
ある。即ち,進路指導で知ったと 図2 養教課程についての情報源別にみた養護教諭 する者に比べて,「教諭より養護 と教諭の魅力度比較
大谷・堀江:学生の養護教諭志向 217
教諭の方が魅力あり」と養護教諭への志向を強く持っている者が有意に多い。
また,養護教諭が情報源であったとする者は,それ以外の情報源をもった者と比べて,養護教諭 に対する印象は,肯定的なものであった(図3)。
0 50 100%
37.3 類楽豪
66.72.友だちのように親しみやす
も、 20.9 崇楽巌
3.何でも聞いてくれる,相談 57・1
18.7 ※楽崇にのってくれる。
4.積極的に指導してくれる 52・4 21.6 ※※顛 5.いろいろと指導してくれる 42・9
15.7 ※※※
[:コ養護教諭が情報源だった者n=21
目その他の者・−134
図3 養護教諭が情報源だった者の養護教諭に対する印象の特徴
即ち,「明るく,親しみやすく,何でも相談にのってくれそうな先生,そして,積極的にいろいろ 指導してくれる先生」という印象を持っている者が有意に多くなっていた。
高校の養護教諭の直接的な進路に関する助言指導の内容力斗担任の進路指導の内容と比べて,養 護教諭への志向を高める内容を包含していることが示唆されるとともに,高校生が養護教諭の所に 相談に行くには,養護教諭に対して肯定的な印象を持っていることが,前提であることがうかがわ
れる。
なお,雑誌類で,茨大養護教諭課程を知ったとする者は,「教諭の方が養護教諭に比べて校内の 位置づけは高い」と入学前に思ってしまう者は少ない(41%,他の情報源の者は59%,0.5%の危 険率で有意差あり)。
しかし,「給与が養護教諭と教諭は同じである」と知った者も少なく(45%,他の情報源の場合 は71%,0.5%の危険率で有意差あり),情報源としての限界を示していよう。
3)養護教諭への志望理由
大学受験するにあたって,養護教諭養成課程を志望
表4 第一志望の内訳 順位の第1位にしたものは44%であった(表4参照)。
他の教諭課程学生の第一志望者の割合(77%)に比べ, 養護教諭教諭課程
課程学生 学 生著しい差を認める。養護教諭養成課程の学生の場合, (n=182)(n=313)
入学時点では養護教諭への志向の高い者が多くはない 養護教諭養成課程 [i画_※※※0
ニいうことが明らかである・ 澱轟教育学部ll:1/票
養護教諭課程への志望理由は表5の通りであった。 看護・医療技術系 5.5 4.2 本人自身が教育や教育者に対する魅力や意欲を感じ その他N・A・ &7 9・0
て,とする内容が多く,養護教諭を教育職員 表5 志望理由
の一員としてとらえた内容になっていた。し 養護教諭 教諭課程 かし,一方,教諭志望学生の場合「学科への 課程学生 学 生 n=182 nニ384 関心」を志望理由にあげた者と比べて「保健
一般教師との比較から 4L8%① 一
・看護関係の関心から」とする者が多くなつ 教育に魅力を感じて 31.9 ② 30.2%① ていたり,「一般教師との比較から」の回答 教育者への意欲から 28.6 ③ 14.6 ③
が多いことから・養謝諭と教諭とは異なる鵬講等(学科) 18・1④23⑥
存在であることに・積極的な意義゜魅力を感 適性性格から 16.5 ⑤ 10.2 ⑤ じている者が多い点が注目できよう。 担任・両親等の期待,
なお洪通歌試験以降の入学生ほ己教黎嚢教諭の影響勧め 2・6⑥15β②
育に魅力を感じ,保健・看護等の関心をもっ そ の他 8.2 12.8 ④ 者が多く,担任・両親等の勧めにより志望し 注)養護教諭生は該当するものいくつでも選択
たとする者は少なくなっていた(危険率0.5 教諭課程生は1つのみ選択
%で有意差)。 ○内の番号は選択順位を示す。
即ち,近年は,担任や両親の勧めによるよりは,自分自身の判断により決めており,特に,教育 に魅力を感じ,教育現場で働きたい,しかも保健・看護等に関心があるので,普通の教諭ではなく 養護教諭に,あるいは,教諭と比べて養護教諭の立場は独特なものがあり,その点に魅力があるの で養護教諭を志望するという者が多いと言えよう。
2.養護教諭課程入学者の入学前における養護教諭とのかかわり,養護教諭観の特徴 一教諭養成課程入学者との比較一
養護教諭課程を受験・入学した者は,教諭課程を受験・入学した者と比べて,養護教諭観が異な るのではなかろうか。養護教諭に対する理解・把握状況が異なることにより,養護教諭への志向と なったのではなかろうか。
そこで,養護教諭課程学生が,小・中・高校時代に,養護教諭とどうかかわったか,また,養護 教諭をどう捉えているのか,教諭課程学生と比べてその特徴を探っていきたい。
1)身近かな養護教諭の存在
家族・親類あるいは近所等の身近かな人に,養護教諭または教諭の人がいるか,という質問に対 して,8%が養護教諭の存在を,49%の者が教諭の存在を認めていた。この数値は,教諭課程学生 の場合よりやや多い数値であったが有意な差ではなかった。
ほぼ半数の者が,身近かに教育職員がいる者であったことは注目されよう。
2)小・中・高校時代の保健室訪問
保健室への訪問頻度は,「数多く,又は,時々訪問していた」という者は,中学時代において養護 教諭課程学生の方が教諭課程学生より有意に(5%の危険率)多くなっていた。しかし,小学校,高校 時代は,両者とも同じ50〜60%の割合であった。養護教諭課程の学生が保健室に足繁く通ってい た者とは言いきれない。
しかし,その訪問理由あるいは,養護教諭との接触機会をみると(図4),両者の間には有意差 が認められるものが多かった。
養護教諭課程学生は,小学校時代には,けがや病気の処置を養護教諭にしてもらったという印象
大谷・堀江;学生の養護教諭志向 219
(記憶)が90%の者にみられ,教諭課程学生に比
べて有意に多くなっている。しかし,中学,高校時 種 小 中 高
代になると「けがや病気の処置」を養護教諭との接 10
ッがや病
※
触機会にあげる者は少なくなる(かえって教諭課程 気の処置
学生の方が高校時代は多く回答している)。 50 また,一方,養護教諭学生は,小・中・高時代に
保健委員2 楽崇
@ ※
保健委員をしたという者が有意に多くなっている点 ※
が注目される。そのことと関連して,友達の付添で ロ健室を訪問したり何となく養護教諭と話をする関
友達の付添4 スとなく
bの相手20 畦 楽 ※
係が作られてくるようである。健康相談を受けたと 健康相談 10 する者も,やや多くみられたが,有意な差ではなか
進路相談10 った。
3)養護教諭に対する印象 皿皿養教課程入学者(53〜56年度生)
絜ウ諭課程入学者(54年度生)
それまでの小・中・高校時代に接触した体験をも
図4 養護教諭と接触した機会とに養護教諭に対する印象を回答してもらった結果
が,図5の通りである。 肯定的印象 否定的印象
「けがした時,丁寧に処置して 1 けがした時 しっかり処
丁寧に処理
くれる」と7割の者が回答しては してくれる 楽 置できない
いるが,教諭課程学生の場合,養 明るくて話 ブスッとし
2 ていてとっ
護教諭を否定的にとらえている内 しやすい きにくい
容が多く回答されていた。
3 何んでも聞 心から話せ
即ち,「暇そう,何をしているの いてくれる ない
だろう」「他教師から孤立してい
暇そう,何 いつも忙し
る」「みんなの前で教えたりしない」 4 そう.活動的 をしている
楽 のだろう
「頼りにならない」「独自の専門
他教師から 5 他教師と協
孤立してい
性を発揮できない」という回答が 調している
楽 る
養護教諭課程学生に比べて有意に
みんなの前
6 積極的に指 で教えたり
多くみられた。
導する しない
嶺
逆に言えば」養護教諭課程を受
7 頼れる存在 頼りになら
験した者は,教諭課程を受験した ない
者を初めとする社会一般の人々の ※
努力によっ 独自の専門
見方とは異なり,養護教諭に対す 8 て専門性生 性発揮でき
かせる ※ ない
る印象を,「努力によって専門性
が生かせる」等積極的印象をもつ 50 0 50%
ている肱否定的印象をもつ者 圃霧嚢灘1翻野1}56年度生
は少ないと言える(特に56年度
多くなっていた)。 図5 養教に対してもっている印象
このような養護教諭に対する中 1)養教の校内での位置づけについて 2)養教の給与について 立的,肯定的な印象が,養護教諭 % %
0 50 1000 50 100
像となり,養護教諭志向(養護教 諭課程の受験)へとつながってい54年度入学
39.0 75.6 .5
■
ったと言えよう。 21.2 32.7 46.2 17.9 26.9 5.2
4)養護教諭に対する理解 1.9@ 2.5
入学時点で,養護教諭に対する 55.0 35.0 10. 75.6 0.・150
56年度入学
ハ置づけをどう捉えていたのかを 51.9 3.4 .7 46.2 21.5 32.3
回答してもらった結果が図6であ
る。@ 口同じ ∈ヨ淵の方編い,多い 團養教の方が多い
本来,教諭も養護教諭も校内で 彪勿わからない 上段は緻課程 下段は教諭羅
の位置づけは同等であり,給与も
同額で,同等の立場にあるのであ 図6 入学時における養護教諭に対する認識状況 るが,入学時点で知っている者は
決して多いとは言えない。
養護教諭課程学生の場合,S53年度とS54年度以降の比較では,後者の方が「同等である」と 認識して入学してくる学生が有意に多くなっている(0.5%の危険率)。
さらに,教諭課程学生の場合は,.S54年度とS56年度を比べると, S56年度の方が養護教諭 に対する認識が向上し養護教諭課程学生のそれに近づいている5)。これらのことから,社会一般 の養護教諭に対する理解が徐々にではあるが,深まりつつあることを知ることができる。
そして,養護教諭課程を受験した学生は,教諭課程学生を初めとする社会一般の認識より,「給与 は同額である」ということについて理解していることが明らかになった。給与が実質的に,その職 務遂行者の立場を評価しているとも言えるわけであるから,養護教諭課程を受験した学生は,その ことを十分理解することができたために,養護教諭課程の受験に踏み切ったとも言えるであろう。
3.養護教諭課程を第一志望にした者の特徴
養護教諭課程を第一志望にして受験した者は,入学時点では,養護教諭志向の高い者と言える。
養護教諭課程で学ぼうとする学生には,そのような養護教諭志向の高い者ほど歓迎されることは言 うまでもない。そこで,そのような養護教諭志向の高い者の特徴を探っていきたい。
1)受験の過程 表6 受験に至る過程別第一志望の割合
表6は,受験に至る過程を段階的に分
け,そのうちの第一志望者の割合を示し 第一志望者の割合
たものである。 養護教諭課程を知 〜高2 (n=79) 57.0% ※※※
った時期 それ以降(n司03) 32.0
養護教諭になりたいと思った時期が高
Q以前の者ほど,養護教諭課程を知った 養護教諭になりた
「と思った時期
〜高2 (n=31)
サれ以降(n=151)
83.9 ※※※
R5.9
時期が高2以前の者ほど,そして受験を
受験を決心した時 〜高3夏(n=68) 70.6
決心した時期が高3夏以前の者ほど,養 期 それ以降(n=114) ※※※
Q7.2
護教諭課程を第一志望にしていることが 明らかとなった。
大谷・堀江:学生の養護教諭志向 221
なお,受験に至る過程相互の関連は表2に示し 表7養護教諭課程の情報源にみた第一志望の割合 た通りである。 養護教諭(母校近所等) 66.7%
2)養護教諭課程について知ったきっかけ 本,雑誌,入試要項 53.1 養護教諭から養護教諭課程について知った者は, 家族,親類 42.9 第一志望に養護教諭課程をあげた者が7割と,養 高校での進路指導,担任との話しあい 30.2 護教諭志向に非常に高い傾向を示した(表7)。 高校の先輩,友人 16.7
それに対し,高校の先輩,友人とか,高校での
進路指導,担任との話しあいによった群は,養護教諭課程を第一志望とする者の割合は有意に少な くなっていた。
養護教諭の話しの内容が,養護教諭志向にプラスに働く内容であることが推察される。また,反 対に高校の先輩,友人あるいは担任からの情報力斗養護教諭に関して決して十分な情報になってお
らず,例えば単なる入学試験の容易度などに限定されるものであることが示唆される。
進路指導のあり方について考えさせられることである。
3)養護教諭とのかかわり状況
表8は,養護教諭志向の高い 表8 養護教諭課程受験に至る過程と,養護教諭とのかかわり状況
者(参3−1))が他の者より,
養護教諭とのかかわりにおいて
L意差が認められたものを示し a 養護教諭課程の
@ 受験過程
思養 養 受 養つ護 成 験 護た教 コ の 教時諭 1 決 諭
ている。 期に ス 心 課
な を 時 程 身近かに養護教諭がいたとい ..@り ..知 ..期 ..の
b 養護教諭とのう者や,養護教諭に対して「何 早 た 早 つ 早 第志
@ い た 一望 でも聞いてくれる。相談にのっ かかわり状況 い と い時 い 位順
@ 期 位 てもらえる」という印象をもっ 身近かに養護教諭が:いた ※ ※ ※ ※
ている者は,第一志望者に多く 保健室訪問頻度:多かった ※
みられること醐らかとな夷 欝 このような結果から,養護教 機と 会の
悩みの相談にいった F達の付添いで保健室を訪 黶C養護教諭と話した
※※
諭志向の高い者は,大学入学前
明るくて話しやすい ※ に身近か礒護教諭が存在し・ 議保健室訪問も多く,とくにその つ教
けがした時,ていねいに処
uしてくれる ※
て諭 燉eが,心の悩みの相談や,友 いに
何でも聞いてくれる,相談にのってくれる
※※※ ※ ※※※
る対だちの付添いで訪問し養護教諭 印し 象てと話したとする者と言える。そ
いろいろと教えられること ェ多い
ュく印象に残っている
※※※
ヲ
して,養護教諭に対して肯定的
印象をもっている者が多いが 表中※印は・a欄記載の群がその他群と比べてb欄回答が 有意に多かった項目を示す。
ことに「何でも話を聞いてくれ
る」存在として印象づけられた者は,養護教諭志向が高くなっていることに注目したい。
前述(1−1)図2,3−2)表7)のように,情報源が養護教諭であった場合に,養護教諭志向が高ま ることとあわせて,小・中・高校で勤務し,児童生徒に日々接している現場の養護教諭が,間接的
に養護教諭養成にかかわっていることが明らかとなった。
千代田らの調査6)でも,養護教諭志望の決定に際して,助言,相談を受け,その影響が大きかっ たとした者が53%であったが,その相談者としてトップ(27.5%)に養護教諭があげられていた
こととも通じるものと思われる。
今後も,現場の養護教諭が保健室で身近かな存在,何でも話を聞いてくれる存在として,児童生 徒に接していくことを期待したい。そして,養護教諭に対して肯定的印象をもった者が,養護教諭 に進路指導の相談に出向き,適切な助言を受けてほしいと願わされる。
B 大学在学中の状況
1.入学後の不安・悩みとその解消 1)入学後の不安・悩みの内容
入学後に,養護教諭になることに疑問をもったり,他学科に転科したいと思ったことのある者は 在校生の67%に及んだ。
図7の棒グラフは,それらの不安・悩みの内訳を示したものである。
本学独自の教育課程に関連することの悩み・不満が数としては多くみられた。養護教諭課程につ いて知らないまま入学した学生,とくに,入試の容易度から受験した学生がいるとすれば,医学・
看護学のための基礎としての専門科目が1年次から始まる教育課程に,ついていけないと,不満や 不安をもつ学生がいることはうなずける。
養護教諭一般に関することの不安・悩みは,1割前後でありあまり多くはなかった。しかし,養 護教諭が本質的に教諭と異なる存在であること,そして現実には,養護教諭が社会的に十分理解さ れてはいない側面をもちながらも,それらは克服されるべき課題であることを,自ら学生自身が納 得していくしか解決の道は見当らないことであり,養成・教育上留意すべき数値である。
また,学生自身の適性,能力に対する不安をもつ者が,やや多くみられることにも注目したい。
学生自身が理想とする養護教諭像と自分の性向・実力との間のギャップを認めた結果とも言えよ う。この種の悩み有りとした者は,他の悩み有りとした者と比べて,養護教諭に対する印象として
「他教師と協調して活動している。積極的に指導してくれる。保健のことなら何でも知っている」
をあげた者が有意に多かった。理想とする養護教諭像の重圧に耐えられなくなった学生ということ であり,養護教諭志向という面からとらえれば,養成・教育側の指導によって,より一層養護教諭 志向へと転化する可能性を秘めている学生たちといえよう。
2)不安・悩みの解消
不安・悩みをどのように解消したかを回答してもらった結果が図7の右欄の表である。
「友人に励まされて」「友人との交流」「サークル活動」等,友人という言葉が数多くみられる。
このことから,大学在学中における友人関係が,養護教諭志向にとって重要な役割をもっているこ とがわかる。
2.在学中の養護教諭志向に作用したもの 1)養護教諭志向をプラスに作用したもの
在学中に養護教諭理解,養護教諭志向が高まったと回答した者の,そのきっかけを示したのが表 9である。
大谷・堀江:学生の養護教諭志向 223
←不安・悩んだ者の割合 不安・悩みが解消したいきさっ
教育 4.1 養教課程の位置づけ 。授業内容にやりがいを感じて
課程
。生活時間の工夫でサークル活動と両立させた
痴 36.9 ・・キ泓偏詳、櫨。) 。サークル先輩に相談して B援業で養教の重要性を理解して 。友人に励まされて
する
こ 27.9 専門科・魏てな。) 。自分から興味をもって学ぶように努力して 。友人との話しあい,励ましにより B高校の養教に相談して 。苦労してここまでやってきた,ためになるしと思って
と
一 。養教の実践事例を読んで 。友人との交流によって 。実習中に担任以上の生徒との連
般 13.1 担任がもてない がりを発見して 。職務の重さ・素晴しさを知って 。養教の専門性,独自性を追求して
窪 みたい 。まず,養教になって,この疑問を解決したい
教に関す
7.4 養教や学校保健の現状 。教育実習で母校の教師・養教・生徒と交流して B来年からは自分が養教になると思って
歪
将来,養教にやりがい 。授業を受けていくうちに徐々に
と 7.4 が見出せるか 。看護・教育実習を体験し,ある程度の知識をもち自信がついた
学 。本を読んで 。友だち,教官に相談して 。講義や養護実習を体験して
生に
28.7 自分の適性 。職業の価値感が変って 。医学について興味が出てきて
関 。自分のなりたいと思っていた職種に接点をみつけて
す 。勉強していくうちになんとなく 。これから勉強していけば知識が自分のものになって
る
こ 19.7 自分の力量不足 いくだろうと思って 。友人。サークルでの話しあいで
と 。今まで先輩もやってきたのだから,自分も…と思い直して
50 0
曲養教になることに疑問をもったり,他学科に転科したいと思ったことのある者(総数):回答者の67%
図7 入学後の不安・悩みの内訳とその解消のいきさつ
日常生活の中で,特に友人等との 表9 養護教諭理解・養護教諭志向にプラスになったきっかけ 話しあいという回答が,どの学生に
烽P0〜20%みられた。前項のこと 回答者 ォっかけ
2 3 4 卒
N 年 年 業生 生 生 生
とあわせて,友人の大切さを示して
「る。
日
@ 常ゥ 生
友人・先輩・恩師・知人
ニ族との話し合い・交流 20% 23% 8% 15%
専門科目のうちの1年の「養護教 ら 活 本・雑誌・新聞・TV 3 32 4 4 諭論」は,入学後も養護教諭志向に
動揺をみせる学生の存在を重視し, 1年 「養護教諭論」 57 59 21 23 3年制養成所時代より,オリエンテ 専
基礎・臨床医学・看護学 30 14 8 ・ 一ション的役割を担った授業科目に 2年
なっているものである。 門 看護実習
(
46 13 8
この表の結果から,上記の趣旨が 科
3年 教育実習
未履
5 29 12 達成されていると言えよう。
表10は,授業「養護教諭論」が養 目 学校保健・養護活動科目
習 29 58 護教諭志向を高めるに至らせた内容 養護実習 ) 54 81
をまとめたものである。 4年
養護教諭像を見出せるような授業 卒業研究 4 12
内容と,養護教諭に対して一生懸命
表10 「養護教諭論」が,養護教諭志向を高めるに至らせた内容 O養護教諭の職務内容を知った。
O養護教諭の役割を知った。
O養護教諭が見えてきた。
↓
・自分の理解していた養護教諭とは,
かなり違う。
o専門性が必要なことを知った。 噛 ・これからの子どもにとって大切なの は,健康な体であって,それを守っ
↓
ていくのが,私たちがなろうとして
「る養護教諭である。
O養護教諭の重要性を知った。 9
O養護教諭の必要性を知った。 1 ノ
↓
黷、やりがいある仕事であると O教官の授業姿勢(養護教諭,保健指導に わかった。
一生懸命)に感じるところがあった。
に取り組んでいる授業担当教 表11 「養護実習」が養護教諭志向を高めるに至らせた内容
官の研究と教育の姿勢が,学 O実習校の養護教諭に接して〜
生の養護教諭志向に有効に働 ・児童に接する姿勢,やさしさに触れて。
いていることがわかる。 ・学校内で信頼されていた養護教諭。
そのほか,看護実習,教育 ゜生徒指導の係教諭に期待されていた養護教諭。
・誇りをもって仕事をしていた養護教諭。
実習,養護実習という学外実
習を通じて養護教諭への志向 。児童生徒と接して〜
を高めたとする学生も多くみ ・子どもが悩みなどを相談してくれた時。
られた。看護実習の場合は, 子どもたちと接していて・自分が生き生きとするのを感じた。
患者さんと接する中で,生命 O養護教諭の独自の役割を知って〜
や健康の大切さを実感として ・生徒を評価せずに接することができる。
受けとめることができ,健康 ・他の教師と違った面の大きさに感動した。
に関与する養護教諭の仕事の
o現場における保健ニードを知って〜
重要性を認識するに至ったと ・保健の問題点を具体的に知って。
いう回答であった。 ・勉強・受験に追いたてられている生徒の健康について,少しでも 教育実習の場合は教育に対 いいからアドバイスしていきたいと思った。
する関心を深めることができ・ 。養護教諭の職務内容を理解して〜
そのことにより,養護教諭(教 ・(職務を見たり,実際に実習してみて)自分なりに職務内容を理 育者)への志向を高めたとす 解し・養護教諭の理想像もできあがった。
る回答であった。養護実習の 。自己め適性を確認できて〜
場合は,種々の回答がみられ ・マイペースでやれそう。
・自分でどんな養護教諭になりたいか,方向を決めようと思った。たが(表11),学生が現場で ・自分にあった仕事ができると思った。
活躍している先輩養護教諭に
大谷・堀江:学生の養護教諭志向 225
接したり,現場の問題を肌で感じとったり,自ら生徒へ働きかけた,その体験が養護教諭志向に大 きく作用したようであった。
養護実習が養護教諭課程学生の養護教諭観(あるいは養護教諭志向)に大きく影響を及ぼすことは,
筆者(大谷)の種々の調査7)〜11)で明らかにしてきたが新たに,この表から,志向変容の動機 を知ることができた。
2)養護教諭志向をマイナスに作用したもの
前項であげた,養護教諭志向にプラスに作用する要因も,時には,一部ではあるが,マイナスに 作用したとする学生もみられた。
その内容は表12である。
表12 養護教諭理解,養護教諭志向にマイナスに作用したもの
具 体 的 内 容
1. 教 養 科 目 a。養護教諭より魅力ある授業,他に興味がむいた。
b・自信がなくなった(責任の重さを知って,重要な地位にあるの 2.専 門 科 目 を知って,子どもを扱う大変さをわかって)。
@養護教諭になる適性がないと思った。
c.多すぎる,難しい,進行が早い,覚えることが多い,広くて浅い。
3. 教 職 科 目 a.養護教諭より一般教師になりたくなった。b.自信がなくなった(非行・自殺等の問題に直面した時)。
a.看護婦という職業に魅力を感じた。
4。看 護 実 習 b.自信がなくなった(知識が中途半端であることを知って)。
c.実習しているという感じがしない実習。
a.一般教師になりたくなった(授業,学級経営生徒との密接な 5.教 育 実 習 aD養護教諭・教師が自分に向いてないように思えた。関係)
c.一般教師の養護教諭観,人間関係を知って。
6. 養 護 実 習
b.養護教諭になる資格がないことを痛感して。c.養護教諭の立場がわかり,がっかりした。
ク ラ ス 内 c. 「養護教諭になりたい」という意欲をもっている人が少ない。
7.友
養護教諭課程内 c.自分の養護教諭像とは異なる像をもつ先輩との出会い。
人との
教育学部内 a.担任になれる友人・教壇に立てる友人をうらやましいと思う。c.養護教諭についての理解がない。
交流
大 学 内 iサークル等)
メD養護教諭についての理解がない,将来の同僚として不安になる。
(注)具体的内容 a:その要因が専攻学生に対して養護教諭より他のものに魅力 を感じさせた事柄。
b:その要因が専攻学生に自信を失わせてしまった事柄。
c:その要因がもつ問題点に由来して養護教諭志向を減じさせ
た事柄。
養護教諭志向がマイナス方向に動くという中身は,3種に分けられる。1つは,それが養護教諭 より他の職種等に魅力を感じさぜ結果として養護教諭志向を減じさせてしまうもの,2つ目は,
嚇
ツ々の学生自身の問題であり,自己の能力を過少評価し,自信を失ってしまい養護教諭志向が減じ
一
るもの,3つ目は,その要因がもつ問題に由来しているもので,学校現場における養護教諭そのも の,あるいは養護教諭養成の抱えている現状とその問題を指摘する内容である。
ここでは,特に2つ目のb項目に注目すべきであろう。
前述(B1−1)したことであるが,養護教諭の重要性,養護教諭の仕事のやりがいを知れば知るほ ど,自分の力量や適性に疑問を感じる者があらわれることである12)。
普通一般には,学生の養護教諭志向を高めるために,養成・教育者側が,養護教諭の仕事の重要 性等を強調し,そのことで,ある種の成果を収めるのであるが,それには,落し穴があるというこ
とである。
このような自信喪失型の学生に対しては,個別のフォローアップが必要であろう。
また,自信の裏打ちとなる直の実力を育成させることは忘れてはならないことである。
3.卒業前におけるやりがい感・不安感 最後に,学生が,どのよう
なことに,やりがいを感じ,(瀦い感の回答率が高かつ) やりがい 不安・不満 また,不安,不満感を抱いて,
一般教師とは異なる視点から 53年度
養護教諭養成課程を巣立とう の子どものとらえ方がある 54年度 としているのかをみてみたい ヘルスニ_ズを持つ子に対し
養教独自の接し方がある
(図8)。
保健教育面の働きも益々期待
設問は,現在の養護教諭の されている
おかれている状況をありのま
養教は平常時の授業を担当し まに記述し,そのことに関し ない
て,やりがいと感じるか,不
養教は学級担任とならない 安・不満と感じるか,逐一回
答を求めたものである(一部 (不安の回答率が高かった項目)
に両者に賛同を示す回答者も
卿養護を掌る擢だけの規定で
みられた)。 職務を行う
1つの事実,現象に対して, 校内での位置づけは必ずし も高くない
ある学生はポジティブに受け
保健の組織活動を進めていく とめ,ある学生はネガティブ ため養教のリーダシップをと
る必要も期待されている。
に受けとめていること,すな 子どもの健康,生命に重大な
わち,受けとめ方に多様性が かかわりをもつ
あることが,明らかである。 0 50 0 50 1)やりがいとしてみなせる
こと 図8 卒業前におけるやりがいと不安・不満
「やりがい」として,学生
たちに有意に多く受けとめられていた項目は,教諭と比べて異なる養護教諭の特殊性・独自性が認 められることであった。
なお,それらの項目においても,養護教諭が平常時に授業担当しないことや,学級担任にならな いということに関して,不満を抱いている者が3割みられる点は,卒前教育の内容を吟味すること
大谷・堀江:学生の養護教諭志向 227
の必要性を感じさせられる。
2)不安。不満となること
不安・不満として卒業生が抱えこんでいる問題は,「養護を掌る」という学校教育法の規定だけ で職務を進めていくことに対する不安感が最も多かった。このことは,現職にある養護教諭でさえ 不安感を持ち,「養護教諭の職務内容を決めてほしい」という要望を出す者がいる13)ほどで,現場 では養護教諭は学校にただ1人(複数制へ期待はあっても現実にはほとんど1人だけの現況)であ るために,1つひとつの職務が個々の養護教諭の判断によって遂行されることになり「何をやって よいのか,これだけやればよいのか」という不満感,不成就感から不安感になるものと思われる。
{護教諭が専門職14)であるために,儲力勝手に1つひとつの嚇項目を決めて1まならないこと であり,また,実際に職務内容は,対象となる児童生徒の実態に即して行われるため,時代により 変遷し,また,地域や学校の状況等によって異なるものである。
養護教諭養成・教育にあたっては,養護教諭の職務の本質を理解させ,その応用力を身につけさ せることにより,不安感を減じさせるしか対策はないように思われる。
校内での位置づけが必ずしも高くは認められていないということに関して,不満感をもったり,
それにうち克つことができるかどうか心配している者が約6割ほどみられた。一方,この現状に対 しても,このような現状,即ち,養護教諭に対する無理解,ひいては保健・生命に対する軽視の状 況を変えていくことこそが,養護教諭の仕事でもある,というように受けとめている学生も約4割 みられることは注目したい。
また,養護教諭の存在価値として重要で,特に今後益々期待されようとしている組織的活動のリ 一ダーシ・プをとることや15)・16),生命をあずかる仕事ということ1・対して1ま,卒業直前の学生に とっては,非常に重荷になっていることが明らかにされた。確かに,大学卒業するや否や,学校で 唯一の養護教諭として,多くの子どもの生命をあずかり,多様な教諭たちを相手にすることは至難 の技のようにも思われる。新任教諭が学年の仲間の教師に助けられながら力量形成していくど翌?
比較しても新任の養護教諭の置かれている状況を見通すならば,卒前に不安感を抱くことも当然と も言えよう。
養護教諭養成・教育にあたっては,前述の養護教諭志向にマイナスに作用する要因を除去するよ うに努めなければならないが,それは,単に,事実・現象を学生に提示するだけというのではなく,
その捉え方(やりがいと思えるような)や考え方も,学生をフォローする必要があると思われる。
また,単に「やりがいある」ことだけを強調するのではなく,確実な実力を身につけさせること,
あるいは,卒業後現場にあって,その力量を自ら形成していくことが可能な方策・見通しをもたせ ることが,卒前教育においてとても重要なことと思われる。
W ま と め
本学教育学部養護教諭養成課程に学ぶ学生を対象に養護教諭課程への志望動機や大学在学中の養 護教諭に関する理解および志向の変容に関する調査を行った結果,次のような所見を得た。
1.本学の養護教諭養成課程への受験過程をみると,共通一次試験の前と開始以降では,受験生の
様相が異なっていた。共通一次試験以降の近年においては,茨大の養護教諭養成課程について知る 時期が早く養護教諭課程を知るきっかけは高校での進路指導によるものが多くなっていた。
2.養護教諭養成課程に入学した者の約半数は,入学時点においては,養護教諭を第一志望に望ん でいた者ではなかった。養護教諭課程を志望した理由は,教諭と比較し,養護教諭の独自性を認め たとする内容が多かった。
3.教諭養成課程学生と比較すると,養護教諭課程学生の場合は,小・中・高校時代に養護教諭と のかかわりが深く,養護教諭に対して否定的印象をもつ者は少なかった。また,養護教諭の立場と
して,教諭と同等であることを,「給与は同額」ということから知っている者が多かった。
4.養護教諭課程受験生のうちでも特に養護教諭志向の高い状態で入学した者は,養護教諭にな りたいと思った時期,養護教諭課程を知り,受験しようと思った時期が早い者であった。また,養 護教諭から養護教諭課程のことを知った者であり,養護教諭に対して「何でも話を聞いてくれる」
というよえな肯定的印象をもっている者であった。
5.養護教諭課程に入学後,教育課程や一般の養護教諭に関する問題で悩んだり不満をもつとか,
自分自身の適性や力量不足に悩む者も多くみられた。特に,理想とする養護教諭像をもつ者ほど,
自分自身との間にギャップを認め悩みに思うようであった。
6.在学中には,友人関係によって養護教諭志向が高あられることが明らかとなった。また,専門 の授業科目,ことに,学外実習やオリエンテーション的内容の授業科目は養護教諭志向に成果が認 められた。一方,同じ作用要因が養護教諭志向にマイナスに働いたと回答した学生もみられた。
7.卒業前,養護教諭として巣立とうとしている学生には,同じ現象でも「やりがい」と感じる者 と「不満・不安」等マイナスに受けとめる者とがみられた。概して,養護教諭が教諭とは異なる養 護教諭独自の立場があることについて,やりがいを見出しているようであった。
また,養護教諭の専門性,重要性に重荷を感じ,不安をいだいている学生が多く認められた。
なお,本稿の一部を第29回日本学校保健学会において発表した。
本調査にご協力いただいた学生の皆さんに感謝いたします。
注
P)本田尚子,笹川久美子『養護教諭未配置校における学校保健の実態調査』「学校保健その研究課題と方法」
東山書房1973pp33−42.
2)文部省大学局職員養成課調査(1977.6.1現在)によると,4年制大学卒業して養護教諭として就職した者 は5%,あとは短期大学等の卒業生である。(前島康男「教育実習をあぐる諸問題」『教育』国士社1979p.40).
3)大谷尚子,久保田京子『全国養護教諭養成機関の教育内容に関する調査』(1979年未発表)によると,4年 制卒業生のうちの就職者率は16%であった。 (調査回答についての分析).
4)国立養護教諭養成所協会「国立養護教諭養成所学生に関する実態調査結果」(国立養護教諭養成所協会小 冊子)1972,