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わが国教育環境の地域性 一 予察的考察 一

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わが国教育環境の地域性

一 予察的考察 一

原 田   榮

(1985年11月5日受理)

1・は じ め に

わが国における教育は,明治以降の学校制度の全国的かつ多面的な展開により,いまや国民生活に 占める位置は極めて高く,地域における環境構成要素といっても過言ではないほどの重要性を帯びて きているとみなすことができる。すならち,個人・家族・地域社会のそれぞれにおいて,学校という 施設における教育という機能は日常的なことであり,学校が存在し教育を受け得るという点において 環境的意義を有するとみなすことができるのである。つまり,教育をめぐる環境という狭義の視点か らでなく,学校における教育を個人・家族・地域社会における広義の環境として捉えることによって 研究を進めようとするものである。

いま,学校教育を中心とした教育体系を広義の教育環境として捉え,その地域性を究明しようとす ることは,種々の問題・課題を内包するわが国教育全般への地理学的アプローチとして重要であると 考える。勿論,教育機能全般についての地域性を究明すべきではあるが,その前提として,文部省の 学校基本調査にもとついて,属人的見地からは在学者数や進学率などを,属地的見地からは設立者別 学校や可住地100k㎡あたり学校数などを,都道府県別に考察し全国的視野から教育環境の地域性を究 明することにする。

なお,本稿は,予察的考察なので,資料の吟味や方法の検討において未然な点が多く,今後の研究 の方向牲を見出そうとするもので,御叱正を賜れれば幸甚である。

且・在学者による都道府県の教育機関型

1984年5月1日現在における保育所・幼稚園・小学校(以上を初等教育機関とずる),中学校・高等 学校(中等教育機関とする),高専・短大・大学(高等教育機関とする)の在学者は,28,423,567人で 全人口の23.82%に相当する。つまり全国民の約4分の1の人間が直接的に教育環境に関連した日常 生活を営んでいることになるのである。

これら在学者の地域性をみるために,上記の3大教育機関別の在学者の構成比から都道府県を類型 化すると,表1のようになる。すなわち,それぞれの教育機関別在学者の全国の構成比を基準とした 三角図表により類型化し,Aを初等教育型, Bを中等教育型, Cを高等教育型としたものである。ま たAB・BC・ACはそれぞれの複合型である。これらの型で最も多いのはAB型で28県で,ついで A型の10県,B型およびC型の各3県となっている。 AC型は2県, BC型は1県である。

高専・短大・大学・大学院生の構成比の高いCの高等教育機関型に相当するのは,東京都(Cの構 成比2252%),愛知県(同8.89%),京都府(同191%),の3県で,いずれも大都市を含む県であり,

さらに複合型のACでは,宮城県(同a18%),福岡県(同972彩)がこれに属するし, BC型の大阪

(2)

表1 在学者による都道府県の教育機関型(1984年)

在 学

メ 数

初等教育中等教育高等韮晴教育機 ン学者比在学宅比在学者比関型

在 学 メ 数

初等教育中等教育高等教育教育機 ン学者比在学者比在学者比関型

在 学 メ 数

初等教育中等教育高等教育教育機 ン学者比在学者比在学者比関型

%    彩    % 男   %    郎 %   %   %

(全国 2a423.567 A54.29 E 37.72 C 7.99 富 山 255,925 57.64  38.56  3.80  AB 島 根 167,582 58.35  38.30  3.35  AB

北海道 1,253,190 5436 39.51  6.13  AB 石 川 287,870 56.94 35.28  7.78  A 岡 山 443,624 55.26  38.14  6.60 AB

青森 35&962 56.01 40.11  3.82  AB 福 井 i84,593 58.81 37.07  4.12  A 広 島 664,113 55.83  37.51  6.65  A 岩 手 313,526 5651 40.10  3.39  AB 山 梨 192,842 54.17 40.15  5.67  B 山 口 360,389 55.88  38.54  5.58  AB

宮城 495,109 54.76 36,06  9.18  AC 長 野 475,164 57.99  38.76  3.25  AB 徳 島 183,505 56.56  訂.07  6.37  A

秋 田 251,921 56.65 4024  3.11  AB 岐 阜 486,337 56.77  38.67  4.55  AB 香 川 231,756 5896  36.51  4.53  A

山 形 25a612 56.68 39.63  3.69  AB 静 岡 822,095 58.38  38β8  2.74 AB 愛 媛 350,116 57.13  38.02  4.85  AB

福 島 448,918 57.65 39.12  3.23  AB 愛 知 1,614,688 5423  36.88  8.89  C 高知 180,785 59.46  36.60  3.94  A

茨 城 632,0?3 56.94 39.08  398  AB 三 重 390,926 57.72  39.04  3,24  AB 福 岡 1,116,182 54.77  35.51  9.72 AC

栃 木 43a813 5847 38.82  2.71  AB 滋 賀 248,476 63.お  34.45  227  A 佐賀ト200,676 57。65  38.49  3.86  AB

緋馬 443,322 58.18 3826  3.56  AB 京 都 680,029 48.33 32.56  19.11  C 長 崎 380,656 56.47  39,52  4.01  AB

埼 玉 1,420,654 57忍6 38.18   395  AB 大 阪 2,127,536 5L21  38.82  9.97  BC 熊 本 407,531 56.58  37,35  6.06  A

千葉 1,239.53 56.78 38.01  521  AB 兵 庫 1,231,550 54.07  38.10  7.83  B 大 分 274,555 56.35  39.62  4,03  AB

東京 2,980,155 4a83 34.65 22.52  C 奈 良 305,937 56.82 37.64  5.54  A 宮 崎 273,003 59.77  37.74  2.49  AB

神奈川 1,71鼠㎜ 54.08 38.01  7.91  B 和歌山 236253 57.00  40.57  2.43 AB 鹿児島 401,895 55.86  39.75  4.79  AB

新潟 543,223 57.74 謎}.11  3.15  AB 鳥取 】35,412 58.07 37.47  4.46  A 沖縄 318,131 57.02  38,43  4.55  AB 注 1)初等教育は保育所・幼稚園・小学校,中等教育は中学校・高等学校.高等教育は高等専門学校・短期大学・大学。大学院を指す。

2)教育機関型のAは初等教育機関型,Bは中等教育機関型, Cは高等教育機関型, AB,AC,BCは複合型を示し,全国の構成比よりもそれぞれ高い。

府(同ag7%)も高等教育機関型の県に加えられる。他に全国の高等教育機関在学者構成比に近い神 奈川県(7。91%)・石川県(778%)・兵庫県(7.83%)の3県を含めると,高等教育機関型は首都圏

・中京圏・京阪神圏を構成する都府県を中核に,広域中心都而を含む県に分布することが明らかであ る。地域性としては都市地域を特色づける教育機関であることが明らかである。

中学校・高等学校の構成比が全国のそれよりも高いB型は,神奈川県・山梨県,兵庫県の3県であ るが.大都市圏内または隣接地域の地域性を有する。保育所・幼稚園・小学校の構成比が全国のそれ よりも高いA型の初等教育機関型には,石川・福井の北陸2県,滋賀・奈良の近畿2県,鳥取・広島 の中国2県,徳島・香川・高知の四国3県,九州の熊本県の計10県で,その地域性は大都市隣…接県と

して大都市地域への中等・高等教育機関依存の滋賀・奈良2県と,石川・広島・徳島・熊本の4県の ように高等教育機関構成比の相対的高さ(778〜606%)による初等教育機関構成比の相対的高さに よるC型への移行潜在性を有する県,福井・鳥取・香川・高知4県のように高等数育機関構成比の相 対的低さ(412〜ag4%)による地域とに分れる。要するに大都市地域関連県,中核都市所在県,地 方地域的県がA型の地域性としてあげられよう。

型の中で最も多いAB型は28県に及び,高等教育機関構成比が相対的に低いことが逆に初等・中等 のA・Bを高めている県で,総じて地方地域県がこれに相当するといってもよく,東北6県,関東5 県,中部5県.近畿2県,中国3県(但し岡山県はCが6β0%でかなり高い),四国1県,九州6県

である。

さて,これら教育機関型の分布を,中部以東の東北日本と近畿以西の西南日本とに分けてみると,

AB型の初・中等型は,東北日本に16県(23県中),西南日本に12県(24県中)と東北日本に多く,

BC型の中・高等型は東北日本になく西南日本に1県, AC型の初・高等型は東北・西南双方にそれ それ1県,Aの初等型は東北日本に2県,西南日本に8県と西南日本に多くなっている。 B型の中等 型は東北日本に2県,西南日本に1県,C型の高等型も東北日本に2県西南日本に1県となっている。

さらに,北海道・東北・中国・四国・九州の24都県を周辺日本,関東・中部・近畿の23都府県を中

(3)

央日本として分布をみると,AB型は中央日本に12県周辺日本に16県, BC型は中央日本に1県で周 辺日本にはなく,AC型は中央日本になく周辺日本に2県, A型は中央日本に4県周辺日本に6県,

BおよびC型は周辺日本にはなく中央日本にそれぞれ3県の分布をみる。

また,いわゆる太平洋ベルト(埼玉・千葉・東京。神奈川・静岡・愛知・岐阜・三重・滋賀・京都・

大阪・兵庫・奈良・和歌山・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・福岡・佐賀・長崎・大分の24都 府県)では,単独型の16県中10県があり,とくに高等型のC型およびCを含む型6県のうち5県がこ の大地域に分布しており,高等教育機関型の県の集中が特色的である。

このようにみてくると,在学者による教育機関の型は,東北日本でAB型, B型およびC型が多く,

西南日本ではA型とBC型が多くなっている点から総じて西南日本での多様化が進んでいるといえる。

中央日本は5型(AB・BC・A・B・C)で多様性に富むが,周辺日本では3型(AB・AC・A)

とやや均一化に特色がみられる。また,太平洋ベルトには6型が揃い西南日本・中央日本の大地域区 分よりもさらに多様化が進んでいるとみることができよう。とくに高等型の大都而圏域集中はより特 徴的なこととしてあげられる。

いま,これら型の要因を高等型に絞って考えると,高等教育機関在学者比と人口集中地区人口率と の相関係数は+0.718,同じく1人あたり県民所得との相関係数は+0.709であることは,高等教育 機関型は都市的地域で高所得地域に多いことを示唆しており,大都市地域および広域中心都市所在県

に高等教育機関型が多く,地方的地域の県に初・中等型の教育機関型が多いのである。

皿 進学率の地域性

初等から中等,中等から高等への進学は,個人的を側面であるとともに総数としては地域的側面を 有し,その進学率の高低および収容力の多少は地域性と深い関係を有するものである。この項では,

高等学校から大学への進学率,県内地元大学進学率,収容力指数(当該県の大学進学者に対する当該 県への大学入学者割合x100)について考察することにする。表2に諸指標を示しておいた。

表2 大学進学関係指標(1982・1983年)

大学進学 地元大入学 収 容 力 大学進学 地元大入学 収 容 力 大学進学1地元大入学 収 容 力

率 階級値 率 階級値 指数階級値 率 階級値 率 階級値 指数階級値 率 階級値L率 階級値 指数階級値

(全 国 30.1免∫      150.0 富 山 33.0     6     18.2    2      44.0    1 島 根 29.6    6    18.5    2     51.1   1

北海道 25.1    4    66,5彩   4    125,5    2 石 川 31.6     6     33.3    2     135。6    2 岡 山 35.5    7     25.7    2      76.5    1

青 森 17.9     4    27.5  ・  2     90.1    2 福 井 31.6    6     22,5    2     64.6    1 広 島 40.1    7    36.6    3     89.8   2

岩 手 19.0     4    23.7    2     76.8    1 山 梨 29.6    6     17,6    2     94.6    2 山 口 345    6    18,3    2     74.3    1

宮 城 22,3     4    61.5    4    223.2    3 長 野 25,4     5     11.6    1     63.2    1 徳 島 32.0    6    23.3    2     66.3    1

秋 田 2L1     4     25.6     2     57.6    1 岐 阜 32.1    6     13.1    1     43.8    1 香 川 35.3    6    19.3    2     59。5    1

山 形 21.0     4     23.5     2     67.0    1 静 岡 30.3   6   11.2   1   37.6   1 愛 媛 38.2    7     30.1    2      51.5    1

福 島 2L9     4    16.2    1    63.5    1 愛 知 37.6    7    63.9    4    140.1    2 高 知 30.9    6    13.8    1     70.8    1

茨 城 21.5     4    21.4    2    101.7    2 三 重 28.6    5     17.8    2     44.5    1 福 岡 31ユ    6    61.2    4     202.5   3

栃 木 25.3     5    13.2    1     45.7    1 滋賀 32,3    6     8,1    1     30.6    1 佐 賀 24.9    5    18.5    2     80.2   2

群 馬 20.7     4     16,0     1     85.5    2 京 都 349    6     50.4    3    418,3    6 長 崎 28.8    5    21.7    2     54.4    1

埼 玉 23.6     5    169     1    141.8    2 大 阪 34.3    6     52.9    4    184ユ    3 熊 本 24.4    5    40.6    3     136.0   2

千 葉 27,0     5     19.9     2    122.7    2 兵 庫 39.6     7     33.5    2     1103     2 大 分 3L1    6     19.3    2      61.0    1

東 京 33.3     6    76.9    5    401.3    6 奈 良 40.1    7     11.4    1     65.8    1 宮 崎 27.8    5    15.9    1     38.3    1

神奈川 32.7     6    26.1    2    136.4    2 和歌山 28.9    5     11.6    1     34.O    I 鹿児島 27.9    5    33.2    2     72.6    1

新潟 19.5「    4    20.7    2     64.4    1 鳥 取 33.1    6     17.2    1     64.9    1 沖 縄 21.4    4     65.4    4     151.3    2

注 1)大学進学率は昭和57年5月に大学に在籍する者の率,地元大入学率は出身高校所在地県の大学への入学者割合,収容力は当該県の大学進学者に対する当該 県への大学入学者割合x100,後2者は昭和58年。

2)階級値は,それぞれの標準偏差の倍数で表わし,値の大きいほど高位である。

(4)

A・大学進学率

全国の指標値は昭和57年(1972)で3α1%であり,最高は奈良・広島両県の40.1%,最低は青森県 の179%であり,全国の指標値以下の県は24県でその分布は中部以東の東北日本で15県で近畿以西の 西南日本での9県よりも多くなっており,いわば西高東低の形をなしている。

これを仔細にみると,階級値7と6はほぼ全国の平均値よりも高い進学率を有する県であるか,東 北日本に9県,西南日本に16県,中央日本に14県,周辺日本に11県となり,西南日本と中央日本での 大学進学率が高いことがわかる。また階級値5と4の全国的平均値よりも低い県は,東北日本に14県 西南日本に8県,中央日本に9県,周辺日本に13県となり,東北日本および周辺日本で低い進学率を

示す。

とくに,階級値7の大学進学率のより高い6県は,愛知,兵庫・奈良・岡山・広島・愛媛で西南日 本に多く,階級値6の大学進学率の高い19県の分布は,東京,神奈川の首都圏と隣接の山梨県,富山・

石川・福井の北陸3県,静岡・岐阜の東海2県,滋賀・京都・大阪の京阪神圏,鳥取・島根の山陰2 県,中国の山口,徳島・香川・高知の四国3県,福岡・大分の九州2県と,大都市圏と地方的地域と

に分けられるが,全体として関東南部から北九州にかけての太平洋ベルトに高い大学進学率の県か多 いことになる。

これに対して,階級値5および4の大学進学率の低い県は,北海道・東北6県,関東5県,中部2 県,近畿2県,九州6県で主として地方的地域の県に多い。また,大都市圏周辺の埼玉・千葉,三重

・和歌山,佐賀など首都圏,中京・阪神,北九州の都市圏周辺で低いことも特徴的である。

これをまとめると,大都市地域を含む県で大学進学率が高い傾向を有し,地方的地域を含む県での 大学進学率が低い傾向がみられ,全体として西高東低の状態にあるということができるのである。ま た,大都市地域周辺での低率も特徴的な事実としてあげられ,それぞれの県の社会・経済・文化の反 映を示唆している。

B.県内地元大学入学率

出身高所在地県の大学への入学者の割合の高低は,高等教育機関の地域関連性と地域性を示すもの と考えられ,数値の高いほどその県の高等教育機関の整備が進み,数値が低いほど当該県の教育環境

(存在し利用し得るζいう意味での)が未然にあるとみることができる。

地元大学入学率の最高は東京都の76.9%で東京都の教育環境の一端を如実に示しており,これにつ ぐのが北海道の665%,沖縄の653,愛知の639,宮城の61.5%,福岡の61.2%,大阪の52.9%,京 都の5α4%でいずれも50%以上の高率である。これに対し,滋賀81%,奈良11.4%,和歌山116%

などの低率がみられる。このように,北海道・沖縄など隔離性の高い県や大都市圏・広域中心都市の 県では地元大学入学率が高い傾向がみられ,大都市圏隣接県に低いという対照的な状況がみられる。

っぎに,階級値による分布をみると,階級値3以上(率でいえば34.5%以上)の10県は東北日本に 4県,西南日本に6県となり西南日本で地元大学入学率が高いが,階級値2』および1の低い地元大学 入学入学率は東北日本に19県,西南日本に18県と両大地域間には殆んど差が認められない。このこと は,大学等高等教育機関の分布に係わることで,高等教育機関の特定県への集中,さらに高等教育機 関存在の特定県の社会・経済・文化的条件の整備に伴う広い教育環境の問題でもある。

また,栃木・群馬・埼玉の関東3県,長野。岐阜・静岡の中部3県,滋賀・奈良・和歌山の近畿3 県などの低位性は,大都市接近による他県内大学入学に関係することはいうまでもない。

このように,地元大学入学率は,高等教育機関の所在する県,換言すれば大都市地域や広域中心都

(5)

市関与県では高位となり,地方的地域の県では低位になる傾向がみられる。ここに,わが国における 教育環境としての高等教育機関の偏在性と都市環境としての高等教育機関の存在がみられるのである。

C・収容力の地域性

当該県出身進学者に対する当該県大学への入学者の割合×100を大学収容力としてみると,最高は 京都の4183と東京の401.3の収容力が大であり,それにつぐのが宮城の22a2,福岡の2025の指 数200以上の2県であり,以下,大阪・沖縄・埼玉・愛知・石川・北海道・神奈川・千葉・兵庫.茨 城・熊本などが100以上を占め,大都而地域を中心として収容力の高い県が多いことが明らかとなっ た。低い方は,50以下の栃木・富山・岐阜・静岡・滋賀・和歌山・宮崎などの県で近くに収容力の大 なる県がある県に多くみられ,ここでも高等教育機関の分布の偏在を示しているのである。

階級値の分布をみると,6は東の東京と西の京都とが双壁であるが,階級値3では東北日本1県西 南日本2県で西南日本に多く・階級値2で1煉北日本に10県西南日本に5県でやはり西南日本1,収容 容力の大きい県が多いが,階級値1では東北日本11県西南日本16県で東北日本にやや収容力が大きい 県が多くみられる。また,中央日本では階級値6が2県,同3が1県となり,東京・京都・大阪の大 都市を擁して収容力の大きい県となっているのに,周辺日本では宮城と福岡が広域中心都市を含むご

とで階級値3を示している。階級値2の15県中9県が中央日本,階級値1の27県中11県が中央日本で あることなどを考慮に入れると収容力の偏りがあることが明らかである。

以上のように,大学への進学の地域性としては,大都市中心であること,東北日本よりも西南日本 が数値的に高い県が多いこと,大都市圏隣接ないし周辺県が比較的低い数値を示すこと,東北地方と 九州地方に低い数値がみられることなどがあげられ,それぞれの県の地域的性格の基盤としての社会

・経済・文化現象ないし活動の反映とみることもできるのではなかろうか。

IV・学校密度と設立者別学校の地域性

教育環境としての学校教育を前項までは在学者と進学者といういわば属人的見地から,その地域性 を摘出してきたが,この項では可住地面積100雇あたり高等学校数や幼稚園児・高等学校生徒の公立 在園学比を通して,属地的見地から教育環境の地域性について考察することにする。表3参照のこと。

A.可耕地面積100k㎡あたり高等学校数(学校密度)

単位面積あたりの学校数=学校密度は教育環境としての意義が大であると考え,高校に例をとり考 察する。全国平均は可住地面積100虚で4.35校であるが,最高は東京の33.87で以下大阪の21.33,

神奈川の16.45が高密度県をなす一方,秋田の2.40,山形の2.74,福島の276,岩手の280,栃木の 283,新潟の2.98などの低密度県と対照的である。ここでいえるのは,大都市地域の高密度,地方的 地域の低密度のパターンがみとられることである。

階級値2以上のほぼ全国平均以上の県の分布は,東北日本に6県であるのに対して西南日本に10県 と,西南日本に高密度県が多くみられる。これを中央日本と周辺日本とで対比すると,中央日本に10 県周辺日本に6県と周辺日本の低密度が眼立つのである。これら高密度の県はまた16県中14県までが 太平洋ベルトに集中しているのである。

このようにして学校密度は都市化の進んだ所得の高い地域を県土とする県に多いことがわかり,人 口集中区人口比との相関係数は+0.774,1人あたり県民所得との相関係数は+0.827となり,そこに

(6)

表3 高校密度と公立幼稚園児比・公立高校生徒比

可住地100扁  公立幼稚   公立高校

?@た  り  園児比   生徒比

可住地100瞳  公立幼稚

?@た り  園児比 公立高校カ徒比 可住地100㎞  公立幼稚

?@ た り  園児比 公立高校カ徒比

高校数階級値i % 階級値  %  階級値 高校数階級値 % 階級値 % 階級値

高校数階級値 % 階級値 % 階級値

(全 国 4.53    25,2    71.9 富 山 3.21    1     28.7     2     77.3      9 島 根 4.10     1    85.2     4     85.1     10

北海道 1.58    1      9.8     1     79.8     9 石 川 4.60    i    10.2    1    80.9     9 岡 LII 5」8     1    84.1     4     72.8     9

青 森 3.16    1    1L9    1    77.2     g 福 井 3.55    1     58.2     3    79.5      9 広 島 6,49     2    23,0     1    70.8     8

岩 手 2.80    1     23.4     1     87.1    10 山 梨 5.15   1     4,1    1    80.2     9 山 口 5.40    2    23.5     1    74.3     9

宮 城 3,53    1     21.6     1     73.7     9 長 野 3.29    1      8.5     1    85.5     10 徳 島 5.39     2    84.9     4     97.2     11

秋 田 2.40    1    25.6    2    89.4    10 岐 阜 4.79    1     27.5     2    81.2     10 香 川 4.37     1    67.6     3     78.6     9

山 形 2.74    1    10、1    1    75.0     9 静 岡 5.36    2     36.0     2    67,5      8 愛 媛 4.37     1    23.6     1    79.7     9

福 島 2.76    1     41.0     2     83.0     10 愛 知 7.99    2     ユ5.1     1    68.5      8 高知 4.03     1    22.7     1    79.8     9

茨 城 3.16    1    38.6    2    800     9 三 重 399    1     57.8     3    793      9 福 岡 6.63     2     9.5     1    631     8

栃 木 2.83    1      2.4     1    70.7     8 滋 賀 4.26    1    85.9    4    89.2    10 佐 賀 3.12    1     8.6     1    836    10

群 馬 3B2    1     34.7     2     8α9     9 京 都 8。61    2     20.3     1     60,6      7 長 崎 5.30     2    20.6     1    72.9     9

埼 玉 7.88    2      6.7     1    76」      9 大 阪 2133    5     26.3     2    66.4      8 熊 本 311     1    2L8     1    714     8

千 葉 5.51    2     17.0     1     72.2     9 兵 庫 8.30    2     51.4     3    750      9 大 分 4,21     1    52.3     3     82.5     10

東 京 33.87    7     14.7     1    45.0     6 奈 良 7.23    2     77,9     4     733      9 宮 崎 3」6     1    108     1    74.7     9

神奈川 V 潟

16.45   4     6,1    1    69.7     8 Q.98    1    23.4    1    85.4    10

響翻1::罰1;:1 1 鹿児島

ォ 縄

3.32     1    219     1    77.8      9 T.87     2    83.4     4     95.2     11

注 1)可住地は総面積一(山地+森林+河湖の面積) これを学校密度とし高校をとりあげた。

2)年次はともに昭和58年である。     3)階級値はそれぞれの標準偏差の倍数で示した。

所在し利用し得る高校は,都市を多く包含する県ほど多く存在するのである。

B.公立幼稚園児比

義務教育前教育は保育所と幼稚園とによってなされているが,ここでは公立幼稚園児比を指標とし てその地域性をとらえることにする。全国の平均値は25.2%であるが,高率県としては滋賀の85.9%

島根の85.2%,徳島の84.9%,岡山の841%,沖縄の83.4%が80%以上の高率県としてあげられる。

低率県には栃木の2,4%,山梨の41%,神奈川の6.1%,埼玉の6.7%なとがみられる。

階級値2以上の全国的平均より高いとみられる県の分布を大地域別にみると,東北日本に8県に対 し西南日本に12県と西南日本での公立が多く,中央日本に12県周辺日本に8県と中央日本での公立化 が特徴的に捉えられる。また大都市地域内東京・神奈川・愛知・京都などが階級値1に相当すること は,私立幼稚園の経営基盤の安定に連なるのであろうか。

県ごとにみると,西南日本・中央日本に公立化の傾向が強いが,その背景としては,保育所との関 係の考察や共働きとの関係の分析などを必要とするが,これらの地域における社会資本の動向として 物質的基盤から精神的基盤への投資ないし活用が東北日本や周辺日本に比して進んでいることを実証 的に究明する必要があるのではなかろうか。

C.公立高校生徒比

公立高校の多少は,地域の教育環境の端的表現とみることができる。それは,私立高校の存立基盤 としての経済力や人口集積が不全な地域の反映としての公立とみられるからである。徳島・沖縄・和 歌山などの90%台と東京の40%台との対比はこの事情を物語るものと考えられる。

階級値11および10の公立化の高い県は東北日本に6県,西南日本に7県とほぼ同別である。階級値 9も東北日本に12県西南日本に12県と同列であり,階級値8も東北日本・西南日本ともに4県であり,

公立化の低い東京と京都は東西の両雄ということができる。

このように,公立高等学校生徒比からみた公立校は,階級値の配列に平均化がみられ大地域別の特 徴はみられないが,強いてその地域性をあげるとすれば,都市化の進行しない経済力の低い地域で公

(7)

立校が高いとみることができよう。因みに,そう高くはないが,人口集中地区人口比との相関係数は 一〇.670,1人あたり県民所得との相関係数は一〇.409であり,地方的地域での公立校が多い傾向が みられる。

前項の幼稚園の公立と同様,高等学校の場合も一般化し得る地域性は把握し難いが,その背景には 都市的社会と経済力が関与することを窮い知ることができ,今後の課題である。

V.む す び

わが国教育環境の地域性について不完全ながらも予察し得たことをまとめると,つぎのようになる。

1.所在し利用し得る教育環境が整備されているのは,都市化の進んだ地域を含む県で,人口の集積 と経済力の高さが大きく影響しているとみなすことができる。特に,高等教育機関は大都市・広域 中心都市に集中することによって,都市環境を形成する要素となっている。

2。大地域別には,近畿以西の西南日本の県での教育環境が中部以東の東北日本のそれよりも優位に あることが明らかである。これは,西南日本における社会資本の投下が物質的な面から精神的は面 へ及んでいる社会経済上の先進性によるものと考えられる。

3.さらに,いわゆる太平洋ベルトでの教育環境の整備も著しく,人口の集積と経済力の高い都市帯 を形成し教育機関の集中がさらに相乗的に教育環境を形成しつつあるものとみなすことができ,首 都圏と阪神圏の存在と相倹って多模な教育環境を呈しているのである。

4.また,大都市圏内または隣接の県には大都市圏の教育環境の傘下に入ることによって,教育環境 が未熟とみなされる県もみられる。このことは,大都市のもっ都市的機能の波及性に依存する習性

ともみられ,今後の地域問題として検討の必要があろう。

5.教育環境を広義にとることにすると,その地域の政治・社会・経済・文化・技術などの諸活動の 総合化とみなすこともでき,それはまた,地域そのものの特性ともみなすことができることが或程 度判明し,今後の研究に資していく心算である。

参照

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