7Y
理科教育における
観察の機能に関する実験的研究(第18報)
一一 q観的観察力評価法案と「メモ効果」の分析一一
自然科学教郁院室高野恒雄
§1.研究の意味
§2.調 査 方 法 (1)調 査 対 象
② 3種の観察問題の客観化の試み
§3.調査結果
(1)観察得点
(2)各観察点の観察率 ⑧ 各観察得点間の相関係数
§4.客観的観察:力評価法案
§5. 「メモ効果」の分析
(1)観点の局所化 (2)観点の時系列化 (3)観点の抽象化
(4)集中的観察における観点の断片化
§6.結 論
§1.研究の意味
Q) 前報において筆者は,これまでに考察してきた物理,化学的現象および生物事象につい
ての観察問題を整理して7種の観察問題とし,これを同一被検者群に与えて観察を行なわ せ,得られた観察記録の評価結果に因子分析法を適用して,観察力の全体的な構造を明ら かにし,これに基いて2種の観察力評価法試案を提出した。すなわち,因子分析の結果抽 出された3個の観察力の因子である変化の観察(第1因子),多角的観察(第1[因子),
集中的観察(第皿因子)の各々を代表する観察問題を組合せて,観察力評価法A(綜合的 および診断的),B(診断的)を構成した。
本報においては,評価法Aを構成する3種の観察問題,すなわち水素の観察(第1因子 の変化の観察を代表),ヨウ素の観察(第III因子の多角的観察を代表)および虫めがねに
よる像の変化の観察(第皿因子の集中的観察を代表)を客観化するために,観察終了後観
察対象を取り去って,選択法と完成法を併用したテスト形式の問題を被検者に与え解答さ
せるという方法をとって,その結果を検討した。それからこの場合,メモの形での記録が 観察結果にどのような効果を示すか,すなわち「メモ効果」を実験的に明らかにし,分析
したのである。
§2.調 査 方 法
(1)調査対象
茨城県西茨城郡岩間町立岩間第一小学校,5年生1クラス,48名。
(2) 3種の観察問題の客観化の試み
前述の観察力評価法Aを構成する3種の観察問題である水素の観察(第1因子),ヨウ 素の観察(第皿因子)および虫めがねによる像の変化の観察(第三因子)を,前報と同様 に被検者に与えるのであるが,今度は観察終了後観察対象を被検者から取り去って,つぎ に示すような選択法と完成法を併用したテスト形式の問題を被検者に与えてみたのであ る。問題内容およびその正解を示せば,表1〜6のようになる。
表 1
水素の観察問題
(・)あわの出ぐあいは・はじめ{1:鉱}だんだん{1:鉱}なり・おわりにはまた {1:蓼藍く}なる。
②大きいあわは・小さいあわよりも・上にのぼるとき{1溝婁ll:
(8)あわの⊥り方は・小さいあわは{1:藝勝まが。て}のぼり趣き/・あわは {1渉勝まが。て}のぼる・
(4)あわが・かたまりからはなれたばかりは{1:煎},だんだん{1:擬1}なり・そ
れからは,同じはやさでのぼる。⑤あわがたくさんあがるときは,水が( )のようにうごく。
(6)そのとき小さいあわは( )のようにうごき,大きいあわは( )。
(・)かたまりに・あわができると{1:静灘ξ犠上る.
(8)そのとき・小さいあわはかたまりから{1:骸}はなれ汰きい・E…P12it・かたまり
から{1嘱刻はなれる・
⑨ かたまりの同じところがら,つづいてあわがでるときは( )のように上る。
⑳ そのときのあわの上り方をよくみると,ときどき( )ができる。
⑳ しけんかんをななめにすると,いくつものあわが( )になり,上る。
働長く時間がたつと,かたまりは,ところによって( )色にかわる。
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報) 81
くぼ でば
⑬ そのとき,かたまりの凹んだところは( )になり,叱ったところは(
図 水の上をみると( )がみられる。
働 そのとき,とくに( )がめだち,( )する。
⑱ 水の⊥のしけんかんのかべには,( )がっく。
(17)そのかべのようすをよくみると,水のすぐ⊥のかべは(
),…番⊥の方のかべは( )がっく。
ふ
㈹ しけんかんを振ってみると,あわは( )⊥る。1
)o
),その上のかべは(
表 2
水素の観察悶題の正角準
ω②⑧㈲㈲㈲㈱㈹㈲⑳⑳働⑬回㈲⑯働⑱
2, 1, 21
1, 2 2, 1(対流 あるいは グルグルまわり)
(対流 あるいは グルグルまわり),(消えてしまう)
2
1, 2(1本の線 あるいは 筋)
(間 あるいは ⊥らないとき あるいは すきま)
(一結 あるいは 一つ)
(黒 あるいは 灰)
(黒 あるいは 灰),(光っている。 あるいは つやが表)る。)
(水滴 あるいは 霧 あるいは 水玉)
(中ぐらいの水滴),(高くとび上り)
(ちらばった水滴)
(小さい粒 あるいは 曇っている),(大きい粒),(中ぐらいの粒)
(一一度にたくさん)
表 3
ヨウ素の観察問題
(・)しけんかんのそこを・しずかに回すると川むりのようなもの{1:震二三翫.
色は( )色である。
(2)しけんかんのそこにあるかたまりは,{1:螂瓠.
うご
四一は・ U難1雛鍔難り懲厩
@) しけんかんのかべに( )のような形のかたまりが,くっつく。
ねつ つよく ねつ
(5)少し熱すると( )がわのかべに多く,かたまりがっく。強く熱すると( )が
わのかべに多く,かたまりがっく。(6)しけんかん砒の方ほど・く・つ/・たかたまりが{1:銑N。
(7)かべについたかたまりの中には,( )のような,かわった形のかたまりもみられ
る。
1.すきまもなく,ぎっしり,くっついている。
(8)かべについたかたまりは,2。数は多いが,一つ一つはなれている。
3.ポツポツはなれていて,数も少ない。
ねつ ⑨ かべについたかたまりを,しけんかんのわきからちょっと熱すると,( )のよう
な形にかわる。働 かべについたかたまりが,きえてなくなると,かべは( )色にかわる。
ねつ
⑳ かべについたかたまりを熱すると,だんだん,かたまりは( )の方にうこいてい
ってくっつく。(12)けむりのようにもやもやしたもαま・空気より(1:鳥ll:
㈱ しけんかんの中のもやもやしたものが手や,紙にくっつくと,( )色になる。
くち
⑳ しけんかんの口の方から,中をのぞいてみると,かべについたかたまりの中には,
( )のように,かわった形のものがある。
㈲ かべについたかたまりが,下にさがってくると,( )になる。
表 4
ω②⑧㈲㈲㈲ω⑧⑨⑬⑳働⑬⑳㈲
ヨウ素の観察問題の正解
1,(むらさき あるいは 赤い)1 2
(針 あるいは とがった形のもの)
(上),(下)
2
(木の枝 あるいは その類似物)
2
(もよう あるいは 類似表現)
(褐色 あるいは 茶色)
(上 あるいは 下)
1
(褐色 あるいは 黄色 あるいは 茶色)
(かべに立ったかたまり)
(回せられて,ガスになり,また上の:方にくっつくように)
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報)
83
表 5
虫めがねによる像の変化の観察問題
(1)虫めがねを,目にもう少しでくっつくぐらいに近ずけてみると,しんぶんの字が,
{1:羅1}と・/羅1うの字と大体同じ大きさに}・賑鱗に}みえ
る。
②虫めがねを・肋ら少しはなすと・その字が{る:奈妻1}なる・
(3)虫めがねを,だんだん,もっと購からはなすと,字は( )なってしまう。
(4)一・んどは・/l:1媚喉喬lllら響きさの}・{1:霧}の字がみえ
てくる。
(5)その字が{毒:奈套1}なり・{1憾え鮒みえる・
(6)その字がまた・{1:綴}なる・
(7)つぎには,字はまた( )なってしまう。
(8)こんどは・
oli翻こら_さの・{5:携}の字が{1:羅1}みえる・
⑨虫めがねが・だんだん・しんぶん紙に近ずくと・そ畔は{毒:奈套1}なる・
α①蜘ねを・しA…s・ /L *Lkにく・つけると o1;舘1ら蹴きさの睡える・
表 6
ラ ラ ラ α②β儀僑絡σ侶⑲Go
虫めがねによる像の変化の観察問題の正解 2, 1, 2
1
(みえなく あるいは ひろがってわからなく)
2, 1, 1 2, 1
1
(みえなく)
1, 2, 1
2 3
このようにして,これまでの自由記述式あるいは簡単な観察方法の指示を伴なった観察
記録の場合とは異なって,個々の各現象について逐一問いを提出して解答させることによ
って,客観化の試みを行ってみたわけである。
この際,後述する観察における「メモ効果」を実験的に検討するため,被検者をつぎの ような二つのグループに分け,3種の観察問題のそれぞれについて,2種の観察力評価過 程を採用した。
(A)メモしない被検者(普通の評価過程)
まず,これまでと同様に各被検者に自由観察させ,30分経過したら観察対象を被検者か ら取り去り,上述の問題を記述したプリントを配布し解答させる(15分間)という過程で ある。この場合,自由観察の後で観察対象を取り去ってしまうのは,そうでないとプリン トの各問題がかなりくわしく各現象に触れているので,これまでの研究によって明らかに なっている観察方法の指示効果が現われ,その問題の文章を参考にしながら新たに観察し てしまうので,自主的な観察だけではなくなると考えられるからである。
(B)メモした被検者
今度は各被検者が自由観察をするとき,観察内容についての自由なメモを取りながら行 い,30分経過したら観察対象およびメモを被検者から取り去り,プリントの問題を配布し 解答させる(15分間)という過程である。すなわち,どんな形でもよいから自由なメモを 取らせ,メモが最終的な観察結果にどのような効果をもたらすかを比較検討するために,
このような過程をとってみたのである。またこの場合,観察後に観察対象およびメモの両 方を取り去ってしまうのは,前述の(A)のときの観察対象を取り除く理由のほかに,メモが 残っていると,十分に頭の中に観察対象の表象が形成されていない場合でもメモを頼りに 問題に答え得ることが考えられるので,自主的な観察を評価しようとの意図で取り除いた
のである。以上の2種の観察力評価過程を要約して示せば,表7のようになる。
表 7
2種の観察力評価過程
(A)メモしない被検者 自由観察 Yi
観察対象を取り去る
・
プリントの問題に解答する
(B)メモした被検者
メモをとりながら自由観察
」
観察対象およびメモを取り去る s
プリントの問題に解答する
本調査においては結局,二つの被検者グループに3種の観察問題を行わせるとき,それ
ぞれの場合に2種の観察力評価過程を採用することになるのであるが,二つの各グループ
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報) 85
については,表8のようにRotatlo貧Methodを適用して,各グループの観察順序を決定
した。
表 8
各グループの調査過程(Rotation Method)
グループ1 メモした
/
メモしない メモしないグループ豆
ヨウ素
水 素 虫めがね
メモしない s メモした i メモした
この理由は,「メモ効果」をできるだけ客観的に把握し,また後述の各観察得点閥の相 関係数を求める場合のことを考慮したためである。
§3.調 査 結 果
(i) 観察得点
3種の各観察問題について,それぞれ2種の観察力評価過程をとって調査結果を,平均 観察得点の形で示したものが表9であり,2種の観察力評価過程のそれぞれの場合におけ
る平均観察得点相互の比を求めたのが表10である。
表9 平均観察得点
\
黶Q陸剥ヨウ素
メ モ し な い
メ モ し た
iptJモ
7. i3 i
6.64
8.04 6.92
2.96 1
3.83
虫めがね 5.12 4.14 4.00
表IO平均観察得点の比
\ 一一 Q1水計ヨウ素
メモした
^メモ 2.72」
1.8!メモした ^メモしないi
i. i3 i 1.04虫めがね 1.04 O.81
表9において,「メモ」とある欄は,2種の観察力評価過程の内,メモした被検者(B)か
ら観察後プリントの問題に解答する前に取り上げたメモの内容を評価して得られた観察得
点である。このメモは前述したように,どんな形でもよいから自由にメモをとらせたもの
で,意識的に他人に読ませる文章にはなっていず,またメモせずに記憶の中にとどめる現
象事象もあることから,当然観察得点の形で評価すれば低い得点になるわけであるが,他 の得点と砒較のために臆に求めたものである。また表・・の「メモした/メモ」とある 欄は,メモした被検者のプリントの問題に解答したものの評価による最終的な観察得点と,
上述のメモの内容の評価による得点の比を示すものである。
つぎに,観察得点の分布の巾をみるために,それぞれの場合の最高および最低観察得点 を示すと,表11のようになる。
表J1 最高・最低観察得点
水
素
最副最低
ヨ ウ 素
最副最低
虫 め が ね
最副最低
メモしないi・・
4 8 49 2
メモした 13
410
4メ
モ16
E1 6 2 6 3
(2)各観察点の観察率
水素の観察,ヨウ素の観察および虫めがねによる像の変化の観察の3種の観察問題にお いて,観察によって見出され得る各観察点について,その観察点を見出した被検者は全体 の被検者の何%にあたるか(観察率)を求め,各観察力評価過程について示したのが表 12,13および14である。
表12各観察点の観察率とその比(水素の観察)
観勲レモしないレモしたレ司メモした/メモiメモした/.モしな、、
1
87.0 72.8 68.21.1 O.8
2
43.5 59.2o
C>cOt ユ。4
3
56.6 54.6o
oe1.0
4 82.7 54.6
o
c>eO.7
5
34.8
72.8 22.73.2 2.1
6 4.4 1 22.7 o
c>o5.2
7
9」.3 81.9 54.61.5 f O.9
8
69.6 72.8 27.32.7 1.0
9
21.7 31.84・5 i 7.0 1.5
10 4.4 18.2 e
oo4.1
11 21.7 22.7
4.5 1 5.0 1.0
12
56.6 27.3o
c>OO.5
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報) 87
i3 1 O 4.5 o
cxos
14
39.1 63.74.5
14.0c>o
L6
15 o o o
16 65.2 i 86.4
13.66.3 1.3
17
4.4 o o o
玉8
30.4 59.2 95.5O.6
1.{表13各観察点の観察率とその比(ヨウ素の観察)
際目メモしないレモした メモ}メモした/メ副メモした/メモ臨、
1
1oo.o 10S.O loo.e1.0 LO
2
91.0 87.0 60.91.4 1.O
3
77.3 78.3o
(>o1.o
4 81.9 82.7 」 10e.O
O.8 1.0
5
4.5 o o o
6 9.1
56.6 13.e7
27.3 34.84.3 6.2
,,.i 1
1.3
8 45.4 69.6
17.4 4.0
9
o t o 4.4 o
1.3
1.5
10 4.5 13.0 o
c>O2.9
11
95.5 87.0 26.13.3 O.9
12 27.3 26.1
o
oo1.0
13
91.0 52.2 26.12.0 O.6
14 9.i i 4.4 8.7 O.5 E O.5
15 o o o
表14各観察点の観察率とその比(虫めがねによる像の変化の観察)
観察剰メモしないレモしたレモ
1
33.3 57.2メモした
^メモ
メモした//メモしない
61.9
e.g 1.7
2
75.e 57.219.e 3.0 t O.8
3
58.3 61.9 28.62.2
1.14 45.8
4.8 o
c>oO.1
5
33.3 33.4o
cxO1.e
6
33.3 28.6o
ooO.9
17
8
9
54.2 28.6 85.8
50.0 23.8 100.0
41.6 33.4 57.2
10
87.585 .8
47.6e.3 O.5
O.2
O.6
1.8
O.5
e・s 1.0
なお各表においては,各観察力評価過程における観察率相互の比も求めて示してある。
(3)各観察得点間の相関係数
3種の観察問題の各観察得点閥の相関係数を求めてみると,表15のようになる。なお異 なった観察力評価過程間の相関係数も示してある。
表15相関係数
水 素(メモした)一水
素(メモ)
十 O.45ヨウ素(メモした)一ヨウ素(メモ) 十〇.46 虫めがね(メモした)一虫めがね(メモ) 十〇。57
水 素(メモしない)一ヨウ素(メモした)水素(メモしない)一虫めがね(メモしない)
十〇.15
十〇.12
ヨウ素(メモした)一虫めがね(メモしない) 十〇.17
§4. 客観的観察力評価法案
上述の調査結果にもとずいて客観的観察力評価法の実際をのべると,つぎのようにな る。まず基礎資料として,5年生の3種の観察問題(いずれも最も自然な観察状態であ
る「メモ
オない」場合)における平均観察得点および得点分布の状態を整理して示すと,
表16のようになる。
表16 各観察問題の観察得点分布
点
﹃⁝対
手
均
・ム〜
@\
水
ヨ ウ剰
7.13素
6.64一
最高点t最低劃標準偏差
11 4
8
4虫めがねi
5.129 2
1.85
1.19 2.09
種類の異なる各観察の観察得点を同一尺度で比較できるようにするために,調査対象の
被検者群について1表16の価からt得点を求めると,表17のようになる。
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報) 89
表工7各観察闘題の粗点とt得点の関係 粗
胤.セ16 15
水
素
ヨ
ウ
素97.9 92.5
虫 め が ね
14 87・1
13
81・712 76.3
11
70.910
65.595.e 86.6 78.2
9
60.1 69.873.4
f
68・68
54.7 61.463.8
7
49.3 53.06
43.9 44.659.0
5
38.554.2
36.2 49.4
4
3
33.1
27e8 44.6一﹁
27.7
2
22.3ユ9.4 39.8
11.0 35.0
1
16・92.6
o
11.5
各
回5.4
8.4粗点満ぺ. 18 15
30.2 25e4
4.8
10
ここで「各差」というのは,回報と同じように粗点の1点の差に相当するt得点の差で ある。また「粗点満点」とは,各観察を理想的に完全に行うことができた場合の観察し得 る観察点の数であり,満点を意味する。また表の上部の空白は事実上あり得ない得点の範 囲であり,ヨウ素の観察の欄の最低点の粗点0に相当するt得点が記してないのは,この 観察においては観察点1(プリントの問題の1)は被検者の全員が観察できており,した がって1点の観察得点を獲得するのは極めて当然であり,粗点0というのは相対評価のt 得点で示せば0以下になるので,事実上あり得ないことと考えて記さなかったのである。
このようにして求めたt得点で3個の因子を代表する観察力を表わせば,客観的な観察 力の綜合的評価および観祭力のタイプの診断的評価ができることになる。1人の児童(0)
の場合を実例として示せば,つぎのようになる。この場合,前述したように調査過程に
Rotacion Methodを適用してあるので,この児童は水素の観察(第1因子)と虫めがね
による像の変化の観察(第皿因子)は
「メモしない」で行ったが,ヨウ素の観 察(第III因子だけは)「メモした」ので,
表16および17の内ヨウ素の観察の部分だ けは使えないので,ヨウ素の観察(メモ した)について別に求めてみると,平均 観察得点6.92,最高点10,最低点4,標 準偏差1.47で,これを基礎として計算し た粗点とt得点の関係は,表18のように
なる。
以上によって,この児童の観察力プロ フィールを求めてみると,図のようにな
る。
図の側方に示してあるように,水素の 観察の観察得点はt得点で70.9,ヨウ素 の観察は57.3,虫めがねによる像の変化 の観察は44.6である。これらの値を3個 の因子を表わす3本の軸(互いに12e。開 いている)の上にプロットし,各点の聞
表18 粗点とt得点
粗 点 ヨ ウ 素(メモした)
14
98.113
91.312
84.511 77・7
10
70.99 64・.1
8
57.37
50.56
43.75
36.94 30.1
3
23.32
16.51 9.7
o 2.9
各 差1 6.5
粗点満点 15
z
// ノ11
f tN / lx l i X
/ I X
1
/ 1
// 1
/ /ノ!ノ
︑ \
皿
児童0の観察カプロフィール
1﹇
t得点 1 70.9
五 57.3 贋 44.6172.8 1 ×一 3
11
57.6C得点 9 6 4
19
1 ×一 3
11
6.3
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報)
91
を線で結ぶと,実線の三角形になる。これを3種の観察得点の平均値(t得点では全部 50.0)を結んでできる点線の正三角形と比較すると,第1因子が平均より相当すぐれ,第
皿因子は平均よりややすぐれ,第皿因子は平均よりかなり劣ることが認められ,概括的に みれば1型(変化の観察のタイプ)の観察力の持主であることが診断できるのである。
それから綜合的に観察力を評価するには,上記の3種の観察のt得点を合計して172.8 となるので,これを3で除すれば57.6となり,すなわち平均値の50.0に比してややすぐれ ていることがわかるわけである。
以上はt得点によって行った評価であるが,ここで10点満点のC得点に直して求めてみ ると,表19を使って水素の観察(1)は9,ヨウ素の観察(ll )は6,虫めがねによる像 の変化の観察(皿)は4となり,綜合評価は合計値19の%,すなわち6.3となり,一面10 点満点のわかりやすい得点表示となる。
表19得点関係表 このようにして客観的観察力評価法が可能で
あるが,ここで観察後に配布するプリントした 問題について吟味すると,つぎのようなことが いえる。まず水素の観察においては圖は表12か らわかるように,「メモしない」場合には観察 率が0であり,㈲は「メモしない」,「メモした
」,いずれの場合にも観察率が0である。この 理由として,この二つの観察点はその内容を問 題の形で問う場合,適確な表現をとりにくいと (2)
いう点も考えられるが,観察点自体が第2報に も示してあるように非常に観察困難であること を,あげなければならない。したがって事実上 観察者がほとんど存在しないならば,被検者が
C得点 t 得
点10 72・5 tv 77・5 9
67.5 N 72.5 8 62.5 N 67.57 57・5 v 62・5
6 52・5 tv 57・5
5
47.5 v 52.54
i 42・5−47.s
3
37・5 一 42・52
32・5 v 37・51
27.5 n一 32・5o 22・5 rv 27.5
特殊な場合を除いては,問題における姻および飼は省略してさしつかえないといえようQ 以上と同じような理由から,ヨウ素の観察における(9)と飼も省略してよいと考えられる。
なお前述の小学校5年生の観祭力プロフィールにおいては,このような漏話は全然影響な
いことは,該当する観察点の観察率が0であることから明らかである。このような問題内
容の改訂をした最終的な客観的観察力評価法における問題とその正解を示せば,表20〜25
のようになる○表20
水素の観察問題
(・)あわの出ぐあいは・はじ碓:蓼姦く}だんだん{1:鉱}なり・おわりには・ま た{る:蓼姦く}なる.
(2)大きいあわは・小さいあわよりも」・にのぼるとき{杢:獣1
(3)あわの上り方は・小さいあわは{毒:藝易募まが。て}のぼり・大き・励は {1:套霧まが。て}のぼる・
(4)あわが・かたまりからはな梱まかりは{嬬羽だんだん鶴穿1}なり・それ
からは,同じはやさでのぼる。(5)あわがたくさんあがるときは,水が( )のようにうごく。
(6)そのとき小さいあわは( )のようにうごき,大きいあわは( )。
(・)かたまりに・あわができると・{1:携駿ξ鴇上る.
(8)そのとき・小さいあわはかたまりからil:骸}はなれ・大きい捌ま・かたまり から{1:艶}はなれる・
⑨ かたまりの同じところがら,つづいてあわがでるときは( )のように上る。
㈲ そのときのあわの上り方をよくみると,ときどき(
a1)しけんかんをななめにすると,いくつものあわが(
(12)長く時問がたつと,かたまりは,ところによって(
⑬水の上をみると( )がみられる。
依萄 水の上のしけんかんのかべには( )がっく。
㈲ そのかべのようすをよくみると,
( ),一番上のかべは( )がっく。
ふ
⑱ しけんかんを振ってみると,あわは( )上る。
)ができる。
)になり,上る。
)色にかわる。
水のすぐ⊥のかべは(
),その上のかべは表 21
ラ ラ ラ ラ
ララ ラ
きノ任②信@侮6α㊨
水素の観察問題の正解
2, 1, 2
1
1, 2 2, 1(対流 あるいは
(対流 あるいは
2
1, 2
グルグルまわり)
グルグルまわり), (消えてしまう)
⑨働⑳働⑬働㈲囮
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報)
(1本の線 あるいは 筋)
(間 あるいは上らないとき あるいは すきま)
(一緒 あるいは 一つ)
(黒 あるいは 灰)
(水滴あるいは霧あるいは水玉)
(ちらばった水滴)
(小さい粒 あるいは 曇っている),(大きい粒),(中ぐらいの粒)
(一度にたくさん)
93
表22
ヨウ素の観察問題
(・)しけんかんのそこを・しずかに擁すると・けむりのようなもの{1耀讐邑瓶.
色は( )色である。
(2)しけんかんのそこにあるかたまりは{1:滋雨.
うご
1.けむりのように,もやもや動き出すが,とけない。
うご
(3)かたまりは,2.けむりのように,もやもや動き出したり,とけたりする。
3.そのままの形である。
㈲ しけんかんのかべに( )のような形のかたまりが,くっつく。
ねつ つよ ねつ
(5)少し熱すると( )がわのかべに多く,かたまりがっく。強く熱すると( )が
わのかべに多く,かたまりがっく。(6)しけんかんの上の方ほど・く・つ/・たかたまりが{1:舞、.
(7)かべについたかたまりの中には,( )のような,かわった形のかたまりもみられ る。
(8)一・たかたまりは o1病蒙彌読輪擁麗 る.
⑨ かべについたかたまりが,きえてなくなると,かべは( )色にかわる。
ねつ
(1① かべについたかたまりを,熱すると,だんだん,かたまりは( )の方にうごいて いってくっつく。
ωけむりのようにもやもやしたのは・空気よ唯礎1::
働 しけんかんの中のもやもやしたものが,手や紙にくっつくと( )色になる。
くち⑬ しけんかんの口の方から,中をのぞいてみると,かべについたかたまりの中には,
( )のように,かわった形のものがある。
表 23
ヨウ素の観察問題の正解 Cl) 1,(むらさき あるいは 赤い)
(2) 1
偶㈲㈲⑥㈲⑧⑨⑳⑳働⑬ 2
(針 あるいは とがった形のもの)
(上),(下)
2
(木の枝 あるいは その類似物)
2
(褐色 あるいは 茶色)
(上 あるいは 下)
1
(褐色 あるいは 黄色 あるいは 茶色)
(かべに立ったかたまり)
表 24
虫めがねによる像の変化の観察問題
(!)虫めがねを,目にもう少しでくっつくぐらいに近ずけてみると,しんぶんの字が,
儲え謝羅1うの字と大㈹大きさに擁ま鱗に}みえる・
②蝸が縫目から少しはなすと・その字が{1:奈套1}なる・
⑧ 虫めがねを,だんだん,もっと目からはなすと,字は( )なってしまう。
(4)こんど蝿:羅1喉喬翫倣きさの/{1:鯛の字がみえ
てくる。
(5) kの字が{1捺薯1}なり・ll・羅1}みえる・
(6)その字がまた・{1:綴}なる・
(7)つぎには,字はまた( )なってしまう。
(8)こんど 繼ェ翫旧きさの障調の字が臆鮒みえる・
⑨虫めがねが・だんだん・しんぶん紙}・近ずくと・その字は{1:奈墓1}なる・
(1・)虫めがねを・しん禰・くっつける S1;翻1ら_さの}字醜る・
表 25
虫めがねによる像の変化の観察問題の正解
(!) 2, 1, 2
(2) 1
(3) (みえなく あるいは ひろがってわからなく)
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報) 9.5
(4) 2, 1,1
(5) 2,1
(6) 1
(7) (みえなく)
(8) 1, 2, 1
(9) 2
(10) 3
§5. i一メモ効果」の分析
前述の調査結果をよくみると,メモの観察結果に及ぼす効果,すなわち「メモ効果」は つぎにのべるような+の面と一の面を含んでいることがわかる。
(i)観点の局所化
表12,13および14に示した各観察問題における各観察点の観察率とその比をよくみてみ ると, メモした/メモしないの比の値が大小いろいろで,凹凸がはげしいことがわかる。
1よりはるかに大きい比,すなわち「メモ効果」の著しい観察点がそれぞれいくつかある が,同様に1よりかなり小さい比,すなわち「メモ効果」が一の逆効果として表われてい る観察点もかなりみられるのである。このような事実は,これまで研究してきた観察方法 の指示効果などにおいては,ほとんどみられなかった。
水素の観察に例をとると,観察点6の比は5・2,観察点10の比は4・1と意外に大きな値を 示し,著しい「メモ効果」を示しており,さらにこれほどではないにしても観察点5,14 および18は明らかに1より相当大きい比を示し「メモ効果」の存在を意味する。これに対 し観察点1,4,12および17はいずれも1を下回る比を示し,「メモした」ことが却っ.て 一の効果をもたらしたことになるのである。
このようにメモをすることは,数多く観察点をくわしく徹底的に観察するために必要な 数多くの観点の内,一部の観点に注意を集中するようになる傾向,すなわち「観点の局所 化」を助長し,そのため注意を集中した観点については「観察の深化」 (+効果)を結果 し非常に望ましい影響をもたらすことになるのであるが,一方それ以外の観点については 注意は普通以下になる傾向,換云すれば,「注意の非分配性」 (一効果)を示すことにな るわけである。全体的にみれば,水素の観察,ヨウ素の観察,いずれにおいても+効果の 方が一効果より大きいとみてよいが,+,一両面の効果を示すことは注目に価いするとい
えよう。
(2)観点の時系列化
表10において3種の観察問題の平均観察得点の比をみてみると,メモした/メモしない
の比が最も大きいのは水素の観察である。すなわち全体的にみた場合,水素の観察におい て最も著しい「メモ効果」が発揮されることになる。ところで水素の観察は,観察力の第 1因子である変化の観察の代表である。したがって変化の観察における「メモ効果」は,
多角的観察や集中的観察におけるそれよりも著しいといえる。
このことについてもう少しくわしく考えてみると,水素の観察において特に著しい「メ モ効果」のみられる観察点6(小さい泡は対流,大きい泡は液面で消失。)および観察点 10(泡の線状上昇に間激的なまとまりがある。)は,いずれも現象の変化の時間的経過を ずっとみていて把握しなければ観察できない観察点である。その意味でいわば現象の時系 列的観察が必要であり,メモすることが「観点の時系列化」をもたらすといえる。そして この効果を分析すれば,+効果として「変化の観察の深化」がみられ,他方一効果として
「空間的知覚の狭小化」があらわれるのである。後者の一効果は前述の「観点の局所化」
と密接に結びついているものであるが,実例をあげるとヨウ素の観察において観察点14
(管壁に対してほぼ垂直に立っている結晶がある。)は,メモした/メモしないの比が0.5 と意外に小さい値を示しているが,この観察点はそれ以外の観察点を観察するときのよう に試験管を側面からみていたのでは観察できず,試験管の口の上方から中をのぞくことに よって始めて見出すことができる観察点であるので,この場合「メモ効果」が一になると いうことは,「空間的知覚の狭小化」と解釈されるのである。また同じヨウ素の観察にお ける観察点13(手や紙に付着した結晶は一様に黄褐色を呈する。)の比は0.6で,やはり 相当小さい値を示しているが,これもメモすることによって注意の方向性が強くなり注意 が試験管内の現象にばかり向けられる結果になると考えられ,上述と同様な解釈が成り立
つわけである。(3)観点の抽象化
ヨウ素の観察において,観察点6(試験管壁の上方ほど結晶の分布が粗である。)のメ モした/メモしないの比は6.2で意外に高く,「メモ効果」の著しく大きいことを意味し,
また観察点8(結晶は三三に一様につかず,核を中心として成長する。)の比も1.5で,
他の観察点と比べると「メモ効果」が相当大きいことがわかる。
この二つの観察点の共通点は,試験管壁に付着している結晶の分布状態の観察であるこ
とにある。「分布状態」を把握することは,個・・e? の結晶を単独に観察していたのでは不可
能で,結晶相互の位置的関係を全体的に一一度に認知することが必要である。すなわちこの
場合の観点は,普通の場合に比べてより抽象的なものであるといえる。したがってこれら
の観察点において「メモ効果」が著しいことは,メモすることが「観点の抽象化」をもた
らすことを意味すると考えられるのである。この「観点の抽象化」の+効果としては,佃1
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18報) rJ7
keの結晶に対する「感覚的把握から概念、的,理性的把握へ」と認識が深化することであ り,そのため位置的関係の把握なども可能になるが,一面現象を単純かつ粗雑に「観念的 概括化」してしまうことになると,一効果といわなければならない。
このような「観点の抽象化」の効果は他にもみられ,例えば水素の観察の観察点io(泡 の線状上昇に問激的なまとまりが歩)る。)はメモした/メモしないの比が4.1と非常に大
きいがこの観察点の持ちようは前述のように時系列的な変化の観察であるとともに,線状 上昇している泡の連続状態の断続に目をつける必要があり,「抽象的観点」を必要とする
ところにあるといえる。
(4)集中的観察における観点の断片化
これまでのべた「メモ効果」の三つの傾向は,いずれも「+効果」と「一効果」の両面 を含んでいる(全体的には「+効果」の方がまさる)が,今度の傾向は「一効果」という 否定的側面だけをもつものである。
顕著な実例は,虫めがねによる像の変化の観察においてみられる。この観察は集中的観 察の代表であり,時聞的にも集中の度が強く,実質的には20〜30秒聞で行うものである。
長時間の観察時間は与えてあるが,それはこの短時間の観察を何回も繰返すことによって 現象を確認していくだけで,1回の実質的な観察時開は数十秒になる。大人が徹底して行
っても,1分開に及ぶことは稀である。しかしこのことは,虫めがねによる像の変化の観 察が容易なことを意味するのではないのであって,却って短時間に神経エネルギーを強く (1)
集中する必要があり,そうでなくては十分な観察は不可能な性格をもっているのである。
ところでこの虫めがねによる像の変化の観察だけが,表10の平均観察得点におけるメモ した/メモしないの比が1以下になりO.81という低い値を示している事実は注目させられ る。この事実はメモすることによって,強い神経エネルギーの集中が妨害され,散逸する ことを意味するといってよいであろう。特にこの観察においては,虫めがねを目から紙ま で移動する問の微妙な像の変化の紡…的把握が必要であり,この場合の精神状態は短時間 ではあっても持続する「観察のリズム」ともいうべきものが重要になる。この「リズム」
がメモするという行動によって破られることになり,その結果「観点の断片化」が起り,
全体的に観察得点が低下するようになると考えられる。
ただしこのようなことは,「蜘!コ的観察」に短時間神経を集中する場合にだけいえるこ とである。またメモすることをしないで十分観察してしまった後に,観察した現象を確認 するためにメモするのは決して一効果とはならないと思われるが,被検者が児童のときは
このような観察の手順,呼吸を要求するのは,仲々むずかしいことである。
以上の4種の「メモ効果」の内容を要約すれば,表26のようになる。
表 26
「メモ効果」の分析
ω観鯛所化 q駕黙感果)
変化の観察の深化(十効果)
(2)観点の時系列化
空間的知覚の狭小化(一効果)
感覚的把握→概念的・理性的把握(+効果)
⑧観点の抽象化
観念的概括化(一効果)
つぎに上述の「メモ効果」を,別の角度から分析してみることにする。「メモ効果」と は,i換云すれば「観察の文章化の効果」といえるであろう。この「文章化」がどのような 意味をもち,そのためにどんな「効果」がもたらされることになるのかを構造的に把握し
ようとしたのが,表27である。
表 27
「観察の文章化の効果」の分析
何が,何に対して,どういう条件で,どういう方法で,何をしたら,結果はどうなった。
〔主体〕 〔対象〕 〔状態。状況〕 〔方法・手段〕 〔作用〕 〔生成物・現象〕
(S bject)陣t)(Ci「cumstance)(Method)(蜘 i臨…)
いつ, どこで, どんなわけで
〔時間要素〕 〔空間要素〕 〔因果要素〕
(Time) (Place) (Causality)
文章化の意識
聯対する感覚。霧。状況の分棚確イヒ
時間要素→観点の時系列化 空間要素→観点の局所化 因果要素→観点の抽象化(3)
すなわち,観察の文章を分析すれば最上段のような内容をもつものと考えられる。ここ にあげた文章を構成する各部の内,始めの〔主体〕と〔対象〕,は特にメモをしなくても 大部分の被検者には相当把握できることである。したがって「メモ効果」には直接大きな 関係はもっていないといえる。
つぎに〔方法・手段〕と〔作用〕については,メモをすることによぽて自分の採用した
これらの計画,行動に対する反省が行われることになるので,かなり「メモ効果」が表わ
れると考えられるQ
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第18幸の 99
ところで最も「メモ効果」に関係の強いのは,〔状態・状況〕であろう。すなわち「ど ういう条伴で」ということは,メモをすることによってずっと明確化され,分析されるこ とになるのは自然である○
この〔状態・状況〕は,さらに分析すると〔時間要素〕,〔空問要素〕,〔因果要素〕
の三つに分けてとらえることができるが,これらがそれぞれどのように「メモ効果」に関 係をもつのかを考えると,表の最下段に示したように,メモをするとき当然もつ「文章語 の意識」によって,それまでに現象に対する感覚,知覚によって形成されていた表象が特 に〔状態・状況〕について分析されて明確化し,その内「時間要素」の明確化が「観点の 時系列化」をもたらし, 「空疑要素」の明確化が「観点の局所化」をもたらし,「因果 要素」の明確化が「観点の抽象化」をもたらすことになると考えられる。このようにして
「メモ効果」の内容は文章構造と符合し,構造づけられることになるわけである。
ぼ−
糸
§ 6
以上は,3個の観察力因子を基礎とした客観的観察力評価法の立案と,「メモ効果」の 分析とに焦点をおいて行った研究であるが,大約つぎのようなことがわかった。
(i)前町の観察力の因子分析の結果明らかになった観察力の3個の因子をそれぞれ代表 する観察問題,すなわち変化の観察(第1因子)の代表としての水素の観察,多角的観察
(第∬因子)の代表としてのヨウ素の観祭,集中的観察(第皿因子)の代表としての虫め がねによる像の変化の観察の3種の観察問題を,選択法と完成法を併川したテス1・形式を 採用して客観化し,客観的観察力評価法として構成することができた。
(2)これによって観察力の綜合的評価がなされ,さらに各被検者の忌垣力プロフィール を画くことによって観察力のタイプの診断的評価が可能であることが実証された。
(3)観察中にメモすることの観察結果に及ぼす効果,すなわち「メモ効果」を分析した 結果,①「観点の局所化」(+効果として「観察の深化」,一効果として「注意の非分配 性」としてあらわれる。),②「観点の時系列化」(+効果として「変化の観察の深化」,
一効果として「空間的知覚の狭小化」),③「観点の抽象化」 (+効果として「感覚的把 握から概念的,理性的把握への発展」,一効果として「観念的概括化」),④「集中的観 察における観点の断片化」(一効果)が明瞭にみられることがわかった。また全体として は「メモ効果」は,「+効果」の方が「一効果」より大きいことがわかった。
㈲ 「メモ効果」を「観察の文章化の効果」という立場から,文章構造の分析を基礎と して考察し,「メモ効果」は主として「文章化の意識」による「状態・状況」(時間要素,
空問要素,因果要素を含む)の明確化に原因するところが大きいことを,構造的に明らか
にすることができた。
終りにのぞみ,本研究の調査に御協力を頂いた海開第一小学校の職員の方々に,心から 感謝の意を表する。
文 献
(1)高野1亘雄:本研究(第17報)一因子分析法による観察力の構造分析と評価法試案一,本紀要,13
(1963) , 109t一.
(2)本研究(第2報)一水素の実験における観察機能の分析一,本紀要,5(1955),99〜.
(3)中井 浩:思考工学入門,ダイヤモンド社,工964,138〜145.を参照。
Abstract
Experimental Studles on the Functio n of Observation iR ScieRce Education. X VIIi
−Proposal of the objective method of eva]uation fer the power of observation and the analysis
of Memo Effect .一
Tsuneo Takan o
(Faculty of Education, lbarki University)
In the present work, the proposal of the objective metbod of evaluation for the power of observa tion constructed by the three preblems of observation, that is, Observation of Hydrogen
as the representative of Observation of Change of Phenomena (first factor of power of
observation) , Observation of lodine as Many−sided Observation of Object (second factor)and Observation of the Variation of lmage by the Lupe as Observation by Concentration of
Attention (third faceor) is done.
Then, the effectiveness of this method as the general and diagnostic evaluation is confirmed.
As Memo Effect , that is, the effect of taking the memo between the observation to the result of observation, the following tendencies are confirmed.
① Localization of Po三nts of View ( Deepening of Observation as+effect, Non−
concentrativeness of Attention as 一 effect) .
(2) Continuativeness of Points of View ( Deepening of Observation of Change of Phe−
nomena as 十 effect, Narrowing of Perception for Space as 一 effect) .
@ Abstractness of Points of View ( Progress of Observation from Sensory Recognition to
Rational Recognition as十effect, Pressing Summarization of Phenoiinena as−effect).
@ Fragmentation of Points of View in Observation by Concentration of Attention ( 一 effect) .
And the analYsis of Memo Effect from the standpoint of the syntax is done. Then, it is clarified that the chief cause of M emp Effect is Discernrnent of Circumstance of Phenomena by writing the composition.