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疲れ強さ増加に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

2i1

直径方向に丸孔を有する軟鋼丸棒…の 疲れ強さ増加に関する研究

技術科研究室 片  岡   久

(1970年10月29日受理)

1. ま え が き

荷重を受ける機械部品の中には油みぞ,ピン孔その他の必要から丸棒に直径方向に小孔 を明けざるを得ないときがしばしば生ずる。この小孔を明けたときには当然の結果として 各種の強度が低下するばかりでなく,孔の端部に応力集中が起りこの部分よりき裂を生じ 部品の破壊に至ることも稀ではない。曲げ応力,振り応力の何れが働くときでもその外周 部で最大応力となり,更に孔という切欠きのために応力集中が生ずるからである。この現 象は静荷重のときにも見られるが繰返荷重を受けるときは応力が小さくとも材料の疲れと なりき裂発生の原因となり,重大な事故発生につながる場合も少くない。

この防止策として滲炭法,窒化法,高周波焼入れなどの表面硬化法が有効であることが 知られているが,耐摩粍性を必要としないときはこれらの面倒な処理は省略され,孔を明 けたままの状態で使用されることが多い。本実験では上記のような面倒な処理によらず,

孔の周囲に押込荷重を加え望性変形従って加工硬化を与えるという簡単な操作により疲れ 強さの向上を計ろうと試みた。

2.疲れ強さについて

材料にある大きさの応力を作用させたとき唯一回の作用では破壊しないが何回も繰返し 作用させると・ついに破壊することがある。このような現象を材料の疲れ(fatigue)とよ び・繰返し作用する応力Sと破断に至るまでの繰返し数Nとの関係を示す曲線がS−N 曲線である・Nは対数目盛にすることが多い。第1図はS−N曲線の一例でS−N曲線 の水平部の応力は無限回の繰返しを与えても材料が破壊しない最大応力である。この応力 が疲れ限度(fatigue limit)である。またS−N曲線の傾斜部の応力は有限回の繰返し数 に耐える最大応力を示しており,これをその繰返し数に対する時聞強度とよぶ。大気中に ては107回の繰返し数に耐えた鋼材はさらに応力の繰返しを継続しても破断することが殆

どないので鋼材のN=107回以後のS−N曲線は水平にあらわす。

材料の疲れ限度は繰返される応力の種類によって異なる。本実験では両振り族り応力を 与えて行ったが,他の種類の応力に較べてその疲れ限度は最も低く,通常行われている回 転曲げ疲れ限度の0.5〜0.6倍とされている。

疲れ強さに影響する因子は非常に多く,材料および熱処理が同一と見なされる場合でも 試料の形も表面仕上の条件その他によって複雑な影響を受ける。一般に疲れ限度を低下さ

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212 茨城大学教育学部紀要 第20号

遍25

6

R

心:租20

106     10・     108 0.22%C鋼 繰返し数N

第1図

せる因子としては(a)荒い表面仕上,(b)切欠きの存在(切欠き効果),(c)試料寸法の 大きさ(寸法効果),(d)圧入物,(e)めっき処理,(f)繍食作用などがあげられ,疲れ限 度を上昇させる因子としては(a)高周波焼入れ,(b)浸炭処理,(c)窒化処理,(d)ショ

ットピーニングなどとされている。

本実験では直径方向に丸孔を持つ丸棒に繰返し涙り応力を与えて行ったが,この切欠き 効果は切欠き係数βで表わされる。βは表面を十分平滑に研摩仕上げした試験片の疲れ 限度をσ。,。とし,形状係数がαなる切欠きをもつ試験片の疲れ限度をσ甑とすればβミ σ田。/σ耽で表わされる。R. E. Petersonの実験結果に本実験に用いた試験片形状寸法を入 れて兄るとβ≒L3である。

3.実 験 経 過

(a)疲れ試験機

疲れ試験機としてその与える応力の種類によって種々のものがあり最も広く用いられる のが回転曲げ疲れ試験機である。しかし機械部品としては繰返し振り応力を受ける場合が 多く,また疲れ限度も低く,切欠きのために起る集力集中の度も強いので本実験では涙り 疲れ試験機を用いた。その主要な機能および構造を示せばつぎの通りである。

Schenk式ねじり疲れ試験機i 応力繰返し数……1,500〜3,000rpm 荷重側グリップ最大振れ角……正負各15Q 荷重側試験片取付部最大振幅……正負各12mm 負荷モーメント繰返荷重……正負各3.8kg−m 動的荷重を加えた場合……正負各4.Okg−m 主電動機一同期電動機2.5KW

構造図……第2図

機構は・1三電動機Cにより弾性継手L離心装置Dを経てクランクBによって負荷側 グリップを左右に振動せしめ試験片Aに繰返し振りを与える。離心装置は油槽内で回転

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片 岡:直径方向に丸孔を有する軟鋼丸棒の疲れ強さ増加に関する研究      213

G F  I工

・ 「一…一一一π一翔l A o

1

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     〃『〃π;L必   〃

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_____−L__________

C L____乙__________________L_

D 、 −       1

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第2図

する二重離心装置となっている。負荷機構はすべてギヤポンプによって潤滑油を絶えず送 入する。この種の機構のため試験片の曲げ,振りの変化は1%以内にて応力の計測は容易 である。負荷側グリップの振動量を加減するには回転する外部円筒の離心位置(離心6 mm)に内部クランク軸を設け,これを離心度調整装置のウォームおよびウォームホィー ルEを手動にて操作すれば結局クランク軸の回転軸に対しての離心半径は6−6=Omm,

または6十6=12mmの間において総合離心半径を加減することができる。負荷の計測に は負荷の部分より試験片を介して伝達されるモーメントによる応力棒Fの捉れ量をダイ ヤルインジヶ一タGによって読んだ値から応力棒の性能曲線にて負荷モーメントを求め る。また試験中はダイヤルインジケータの計測スピンドルを加減ねじにて出入せしめ応力 棒の運動端にやや接燭する状態にてダイヤルインジケータの読みを取る。応力棒の検定は 重錘を用い静的荷重を与えて行った。また主電動機の主スイッチにはマグネットコイルを 取付け,その回路にリレー接点を設け,試験片の切断または離心装置の故障に伴う油槽内 の温度上昇などの場合にはマグネットコイルに作動して自動的に主スイッチを切るように

した。

(b)試験片

第3図の如く全直径16mm,平行部直径7mm,全長100mmとし,平行部中央に直 径i.38mmの小孔を設けたものを用いた。材質はりベット材で分析結果はつぎの通りで

ある。

鳳 }Si  蜘 l P l S !

1     0・21%      0・19%    1     0。32%    i        (瓦015%    1        α028%    ; L      _._.

糟『8

、 、 景 ・

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___叛』___漁 31      −       一       脚

、      」こぐ一寸幽 N

13雌 30

L3。

        100、配      円        ・

第3図

,       1

(4)

214      茨城大学教育学部紀要 第20号

L38φドリルにて2290rpm,切削逃度9.95m/mm,送り0.001021nrn/revにて切削し 切削油は充分供給した。平行部はv>>仕⊥げ孔明け後0番エメリーペーパにて研磨した。

(c) 押込荷重用円錐体

寸法は第4図の如くであり,頂角は90°に精

密に仕上げた。材質は0.6%Cr鋼で,900°C 90° 水中焼入れした。台はブリネル硬さ試験機のも 120°,

のを用いた。

(d)実験方法

ワえがきで述べた如く,応力集中の起ると思

10ヂ

われる孔の端部に円錐体にて押込荷重によって        第4図 ヴ湿性変形を与え,それによって疲れ強さの向上

を計った。即ち押込み荷重の変化による疲れ強さへの影響を知るため,…定の涙りモーメ ントを繰返し与え,試験片の破断に至るまでの回転数の大小によって疲れ強さを比較した・

勿論厳密には恢りモーメントを変化させ破断に至るまでの回転数を記録してS−N曲線を 描いて疲れ限度を求め,これによって比較検討すぺきであるが,ほぼS−N曲線が相似と なるので上記の簡便法を採用した。

つぎに円孔を持つ丸棒の振れ応力を求める計算式は解折が複雑でその発表例を筆者は見 ていない。従ってつぎの近似式を用いることにした。即ち孔の断面積に相 hする長方形断 面だけ極断面係数が減少するものと考えて

Mt=振りモーメント  kg−cm d 崇試験片平行部外径  cm doこ円孔の直径     cm Zp=極断面係数     cm3

τ,、==振り応力       kg/cm2 としたとき

㌍M・/ろ一M・/[卸一砦(8+剃kg/・㎡

として計算した。ただし塑性変形による断面積の減少は極めて僅かなので省略した。

塑性変形を与えるために90°円錐体を圧入するには万能試験機の圧縮側を使用し,試験 片をVブロックに乗せて手動で荷重を加えた。尚比較検討の基準として押込荷重を与えな いものおよび孔の面取りしたものについても実験した。押込み荊重は50,100・150・200・

250,300,350kgと7段階に分けて測定した。

繰返速度は3000rpmにして昼夜別なく連続運転した。試験片は各押込荷重,無荷重,

面取り各々3ケずつ作り耐久試験を行った。

4. 実験結果および考察

(a)実験結果を表およびグラフに示せば次頁の通りである。

各押込荷重の3ケの試験片については可成りのバラツキが見られたがグラブでわかるよ うに良く傾向が現われている。即ち押込荷重の上昇と共に繰返回数も増加するが約200kg の荷重のとき敢高に達する。これ以上では逆に減少し,350kgでは無荷重のときより疲れ

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片 岡:直径方向に丸孔を有する軌鋼丸棒の疲れ強さ増加に関する研究      215

押込荷重を与えた試験片の破断に至るまでの繰返回数の変化

__π一

試験

ヤ号

繰返摸り

ー伽♪押込荷重@ん9 繰返回数(1) 繰返回数(皿) 繰返回数(皿)       無荷重のス均繰返回数 ときの比

@     1較

1 14.3 0 1.0268x106 1.0932x106 0.9104x106 1.0101×106 1,000 2 50 1,1303x106 0.9704×106 1.0456x106 1.0721x106 1,069 3 100 1.2670×106 1.4852×106 1.3522×106 1,3681×106 1,350 4 150 1.3640x106 1,4602×106 1.4170×106 1.4104×106 1,396 5 200 1.4329×106 1.5703×106 1.6892x106 15641x106● 1,545 6 250 1.3404×106 1,2609×106 1.5104×106 1.3706×106 1,356 7 !ノ 300 1.1023×106 1.2816x106 0.9775×106 1.1205×106 1,108 8 350 0.8522×106 0.9703×106 0.8043x106 0.8756×106 0,866 9 !ノ 面取り 0.7148x106 0,8612×106 0.8120x106 0.7960x106 0,787

2x,6

1×,♂

゜鈍1・・15。2。0・与・3・0鋤面取リ才甲込荷悔

第5図

強さが低下することがうかがえる。これは過度の押込荷重のため塑性変形が過度に進み,

結晶粒を破壊し却って疲れ強さを低下せしめたものと思われる。この実験結果より適当な 塑性変形による硬化は孔部よりの疲れ破壊を防ぎ得ることが確認された。本実験に用いた 試験片では約200kgの押込荷重のとき最も良い結果が得られたが他の寸法のときにはそ れそれに適した押込荷重があるものと思われる。この荷重の大きさは理論的,数式的に解 明することは不可能で多くの実験の積重ねに侯たなければならない。

また製作現場では孔を明けたとき面取りを行う場合がしばしばあるが,疲れ強さの面か らは却って低下させ有害であることが確められた。これは単純に断面積の減少がその原因

(6)

216      茨城大学教育学部紀要 第20号

と考えられる。

(b)破断面の模様について 破断面を観察すると

① 細い貝殼状に破壊が進行したと思われる部分

② 粗い大きな結晶を有する破面の部分

③ ①の部分に属していて茶色に焼けたように見える部分 の3つの部分に分けられる。

①の部分は疲れによって生じた破面で細かく滑かである。②の部分は①が進行して材料 の断面積が減少し荷重に耐えかねて一時に破断したと思われる部分である。③の部分は応 力集中のため生ずる疲れ破断特有のものとされている現象で材料が疲れ破断するとき発生 する熱のため焼けた部分である。

破断面の写真1,3,5,9を示す。

     鷺罪驚 鴇擁藤豪綜:や一慨縷     鰍ン     継二翻     外

E穿鵡㌻鞭、陵     気      ド.   ・ 郵.    転㌦ パ    へ       帯       蝕毒      ら

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P謬1■欝1.1?∴ 藁繧 吟…. 副 聡謬澗騨7蒙謬¶瞬蒸

(7)

片岡;直径方向に丸孔を有する軌鋼丸棒の疲れ強さ増加に関する研究      217

5.ま  と  め

厳密には各押込荷重に対する疲れ限度を求めて比較検討しなければならぬが,試験に要 する長い時間のため出来なかった。しかしS−N曲線に相似性があることにより,本実 験の如く繰返し振り応力を一定にして破断に至るまでの繰返回数の大小により比較しても 十分その結果が期待しうる。即ち所要寸法の孔を有する丸棒に対して如何なる押込荷重が 最も良く疲れ強さを向上せしめうるかを知ることができる。

本実験の結論を要約すると

(1)直径方向に円孔を有する丸枠の疲れ強さの向上のために,一方法として丸孔端に 押込荷重を加え塑性変形を与える方法が有効である。

(2)本試験片では約200kgの押込荷重が最適であり,無処理のときに比べ約1.5倍の

.耐久回数を示した。

(3)最適値の押込荷重より少くても多くても耐久力は減少し,特に多すぎると無処理 のときより低下する。

(4)丸孔に対する面取りは却って疲れ強さを低下せしめる傾向にあり益がないので避        .F

ッた方が賢明である。

Abstract

AStudy on Increase of Fatigue Strength in Mild Steel Bar with a Small Hole in Radial Direction

Hisashi Kataoka

(Faculty of Education, Ibaraki University)

Small holes are often bored on machine parts:fbr instance oil hole and pin hole.

墨  Consequently they bring about a lowering in strength and concentration of stress. When they are loaded with repeating torsion or bending, sometimes a crack comes out on its part and grows. In the worst case, the crack results in the fracture of】machine parts,

that is fatigue fracture.

As one method of prevention from fatigue fracture in the bar with small hole, we adopt usually case harden五ng:cementat三〇n or nitriding. But these treatments are troub豆e・

some and expenslve. Therefore, in this study, I tricd increase of fatigue strength by giving plastic defbrmation on the around of the small hole. By this experlmen亡, I could obtain about 50% increase of fatigue strength in repeating torsion test。

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