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深絞り性の優れた熱延鋼板の製造法と疲労強度に関 する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

深絞り性の優れた熱延鋼板の製造法と疲労強度に関 する研究

薬師寺, 輝敏

https://doi.org/10.11501/3080208

出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

貨当� 5 宝長E

5 . 1 緒言

主主三汐き差是千事長fJ ,ニヰδよSますー と少すごdちがB寺究}J O_J主主主宰醤

高r値熱延鋼板の素材としてはInterstjtial-Free鋼(以下1 F鋼と略す) を使用する. この材料は通常の炭素鋼に見られるような引張試験における明瞭 な降伏点が現われず, また非時効性であることが特徴的である. これらの現象 はCやNのような侵入型|封溶原子が析出物として材料内に固着されているため に, 侵入型画溶原子による転位のくぎづけ, すなわちCottrell雰囲気の形成が

行われないことに起因する. 一方, 炭素鋼の疲労挙動の特徴的な現象として,

明瞭な疲労限度とS-N曲線における折れ点の存在, およびコーキシング効果が認 められることを挙げることができる. また, 疲労限度の応力では, 微視的停留 き裂が観察されることが矢口られている. すなわち炭素鋼の疲労限度は微倒的停 留き裂の伝 ている1 ) 2) したがって微視的なき裂の停留につい て検討することは, 波労限度の存在について検討することになる. き裂が停留 することの原因については占くから研究がなされており, 組織的因子3) 4 )の他 に, き裂が伝ばする過程でき裂白eに引張の塑↑生変形が伎留することや, き裂面 の酸化によるき裂先端部への詰め秒j効果等5 )による関口比の減少6), また微t見 的疲労き裂先端の鈍化7l, によるものとする考えが示されている. しかしこれ らは炭素銅に限った現象ではないことから, 炭素鋼における明確な波労|浪j交の 存在はひずみ時効に起因するという考えが強く主張されている 8)、1Ø)昭和48

年に日本材料学会疲労部門委員会において「耐久限度周辺に関する研究」とい うテーマで研究委員会が計画され, そのサフグループの一つにおいて疲労限度 とひずみ時効との関係に重点を置いて研究が進められた. ここではひずみ時効 能を変えた低炭素鋼でさまざまな研究が行われ, ひずみ時刻jが疲労限度やコー 牛シング効果, 微小き裂の停留限界にどの微な影響を及ぼしているのかが定性 的に明らかにされた. しかし 供試材がひずみ時効能を極端に変えた材料で無 かったために, 不 十 分な結 果とったことを報 告 書にしている \ \ )その後猪 飼らは, いったん形成されたコ ッ 卜レル雰凶気を, 材料内において回復などの 他の変化をもたらす ことなく消滅させる処理(復元処理)を提案し, ひずみ時 効を疲労過程の途中でいったん取り除くことによって, t皮労過程における強化 へのひずみ時効の寄与について検討している J2いI 4 )西谷らは, 力11工硬化はあ

118

(3)

るがひずみ時効の無い純銅と比較することによって, 炭素鋼の場合き裂がほか の材料に比べて停留しやすいのは, 加工硬化とそれに伴う歪み時効によるき裂 先端部の強化作用によるものであるとした2 ) 一般の炭素鋼ではフェ ライト部 分には常に同溶Cが飽和状態になっており, 歪み時効の環境がそろっているた めに, 加工硬化と歪み時効は区別して考えることは難しい. しかし, 高r伯熱 延鋼板の素材となる1 F鋼においては, 加工硬化はするものの, その後の時効硬 化は起こらない. したがって, この材料で疲労限度の存在や疲労き裂 の停留に ついて研究する事は, 高r f直熱延鋼板の強度評価のみならず, 疲労き裂の停留 におよぼすひずみ時効の寄与について重要な知見を与えるものであると考えら れる.

本章ではCおよびNの景を極限まで減らした上に, 微量のT iを添加して完全 に侵入型問溶原子をなくした極低炭素Ti添加1 F鋼と, 比較材の回転曲げ疲労試

験を行い, 以Fのことについて検討した.

1 )歪み時効;を示さない鋼の平滑材において, 微視的停留き裂は存在するか.

2 )奈み時効を示さない鋼でコーキシング効果はみられるか.

119

(4)

5. 2 使用材料, 試験片および実験方法

使用材料は, 転炉溶製した極低炭素Ti 添加鋼(鋼種番号KC2756822, 以下T材 と呼ぶ〉および低炭素A 1キルド鋼(鋼荷番号XH1902A, 以下L材と呼ぶ)である.

製鉄所にて連続鋳造後, 粗圧延されたホ ットクロ ップ(板厚30mm)を実験室に 持ち帰り, 1 200 ocに 30分加熱後, 粒度調整のため7域の温度で圧延を行い, 板 厚を10mmとした. 概低炭素Ti 添加鋼(T材)の場合, TiC, TiNを完全に析出させ るために圧延後ただちに7000C に保持された加熱炉に入れ, 30分間この潟度に保 持した後, 炉冷した. 低炭素A 1キルド鋼( L材)の場合, 圧延後の冷却の過程 での結品粒の成長を抑えるために, 水シ ャワーをかけて冷却した. この時の冷

却速度は40-- 70 oC / sである.

表5. 1に化学成分を, 図5.1に製造行程の糊略図と組織写真を示す. L材も

O. 02%以下のC 量であるためT材と同様フェ ライトの単層であり, 比較材として 適当であると考えられる. 両材とも圧延板であるので各断面でわずかに結晶粒 俸に差がある. 板面に平行な面, 圧延方向断面, 圧延直角方向断面の)1聞に粒停 は小さくなっている. 試験片は軸方向が圧延方向と直角になるように切りIl'rし

fこ

表5.2に機械的性質を示す. 引張試験片は試験部直徳6.25mm, 標線間距脈50

mmとし, 機械加工後6000Cで 1時間真空中で応力除去焼なましを行った後試験 を行った. また, 両材のひずみ時効能を調べるために, 時効指数^ 1の測定を行

った. 図5.2に試験片の形状を示す. 測定は10犯の引張り予ひずみを与え, 100 oC,

1時間の時効処聞を行った後の変形応力の変化として求めた. 図5. 3に測定の際 の応力ひずみ曲線を示す. 時効後, L材は変形応力が30.5MPa上昇しているのに 対し, T材はおよそ2MPa変形応力が減少している. T材の場合, 全てのC, N

がTi化合物となって析tHしており, 材料内に侵入型国溶原下が存在しないため に時効をぜず, 100 oCの温度 でも僅かに同復が起こっていることも考えられる.

図からも分かるように, T材は明確な降伏応力を示さない.

図5.4に疲労試験片の形状を示す. 疲労被害をqJ央部に限定するために, 試験 部分は20 Rの鼓形である. この形状では, 応力集中係数は小さく平滑材とみなす ことができる. 機械加工後 エメリ-紙で# 1500まで仕上げ, 600 oCで 1時間真 空中で応力除去焼なましを行い, 更に表面層を70μm程度電解研摩によって除去 した. 電解研摩を行ったのは加工層を取り除き, かっ表面の観察を容易にする

ためである. 電解研摩液は, りん酸2000ccにし ゅう酸� Og, ゼラチン40g, 蒸留

120

(5)

水1000ccを加えたものを用いた.

使用した試験機は小野式小型回転曲げ疲労試験機(容量15N. m. 3000rpm)で ある. 疲労限度は5MPaの応力レベルで決定した. 波労過程の連続観察およびき 裂長さの測定は, 所定の繰返し数ごとに試験機を止めてレプリカを採取し, れに金を蒸着させたものについて光学顕微鏡により行った. 硬さの測定は明石 製作所製の微小ビ ッカース硬さ計を使用し, 負荷荷量O. 25 Nで400倍の倍率で測 定を行い, 1 0点の平均値をとった.

121

(6)

C Siccl L O. 019 Stccl T O. 003

a SII

Stccl L 273 Stccl T

表5.1 化学成分

作)

S i Mn P S

O. 01 O. 1.5 0.0] 5 O. 008 O. 01 O. 15 O. 015 O. 006

表5.

2

機械的性質

σs 1 σ(Ì 2 σ1\

ゆ(児)

Al N O. 04 O. 0025 0.04 O. 0025

(jJ 0九〕

220 302 3 9. 5 9 4. 1 130 286 37. 0 9 3. 4

Tj

O. 06

AI 3 O. 5 -2. 0

σ宍11 : Upper yj e 1 d s lrcss (MPa) びe、1 : Lower yicld strcss (MPa)

a (). 2 : 0.2月proof stress (MPa)

ゆ :

Elongation

(児)

AI : Ageing index (MPa)

a 1\ : Tcnsi le s trcngth (MPa) ゆ : Rcduc t ion of arca (月)

122

(7)

Rolling direction

Steel し (

a

)製造工程の概略

(b )光学顕微鏡組織

100μm

凶5.

1

試 験材料製造工 程の概略と組 織 写真 (その1 ) (低炭素Alキルド鋼-L材)

2j

(8)

tJ4

一 、

Steel T 下.c (

a

) 製 造 工程の概略

Rolling direction

当砂

一7一一一J101一 一 ft l?? 一 一

一 ハ 一 一 一 山 守 J 一 一部 一 ぬ 三 一 W , ・ T 一 一

(b )光学顕微鏡組織

100μm

lヌ1

5. 1

試験材料製造工程の概略 と 組織 写真 (その2)

(極低炭素Tj 添加IF鋼-T材)

(9)

125

LO

」 。判 劃

M h

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レ' 司、

50

30 、_,.. 70 30

130

(a)づI�長試験片

(b) U与効指数測定用試験片

ほI 5. 2 引仮試験片形状

(10)

126

(ポ)

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(11)

127

!叉I

5. 4

疲労試験片形状

(12)

5. 3 実験結巣および考察

5. 3. 1 S - N曲線

l三]5. 5'こ, S - N曲線をポす. L材においてはN二7.0.-.._8.0x106付近に折れ点、

が認められ, 波労限度はσ wø=165MPaである. L材は低炭素鋼であるため折れ点 は比較的高寿命側になっている. 一五T材の場合, L材ほどはっきりした折れ 点は認められないようである. 150MPaの繰返し応力で. N=1. 18 x 107で破断した 試験片があるが, これは硬さ試験を行った試験片で, 試験機から繰返し脱着し たことが原凶で破断したものであると忠われる(硬さ試験のぼ痕は結品粒の大 きさよりも小さく, 破断の起点とはならなかった) . したがって, 2.0X107 凶 を基準に考えた波労限度はT材では150MPaである.

128

(13)

129

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Steel L Steel T

: Not broken

一一争

200

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108 N

106 107

Number of cycle 100

105

S-N曲線

際I 5.5

(14)

5. 3. 2 疲労き裂発生過程の連続観察

図5. 6, 凶5.7に, L材およびT材にそれぞれの疲労限度に対しておよそl. 2倍 の繰返し応力を加えたときの, き裂発生過程を連続的に観察した試験片表面の

レプリカ写真を示す. 図に示すように, 両材とも, ほとんどの場合き裂は粒界 から発生した. 低炭素鋼焼なまし材においてはこれと[百j係な結果が報告されて いる16) 17), L材については, 600 oC, 1 時間真空中で焼鈍しているので, 焼 なまし材と同様の性質をもつものと考えられる. また凶において, T材, L材 のそれぞれの応ノJでの破断寿命はほとんど同じであるが, き裂発生寿命に差が みられる. すなわち, L材の場合, 明らかなき裂となって伝ぱを開始するのは N=5. 0 x 10� 以降であるのに対し, T f.イの場合はN=3.0 X 105ですで にかなり伝ば している. T材のノら・がL材よりも粒界強度が低くさ裂が発生しやすいことが分

かる. 一般には鋼の粒界は本質的iこ脆弱ではなく, P, IIのような不純物の偏 析によって脆化することが知られている. 一方, 侵入型国溶原寸三特にC)京子は 粒界に存在することによって不純物を粒界より排除するサイト コ ンペティシ ョ ン 効果, あるいは不純物の偏析とは関係なく独立に存在することによって, 粒界 結合ノJを増加する粒界強化効果を示すことが知られている18). T材は粒wに偏 析するC原子が存在しないため粒界結合力が弱いことが原因で疲労き裂が発生 しやすいと考えれる.

130

(15)

N=O N=35x104

N=54x104 N=58x1 04 N=62�1-04 N= 70x1 04

モ-

Axial direction

-→ t50μm,

o

a=180MPa 0

a

/0

wO

=1.2 Nf=97.3x104

図5.

6

き裂発生過程の連続レプリカ写真 (低炭素Alキルド鋼-L材)

い{ωハ{

(16)

: ; :

N=20x104 N=30x104 N=35x104 N=40x104

モ-

Axial direction

-ーラ ,50μm,

。a=200MPa

0 a

/

0 wO =

1 .2 Nf=98.3x104

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N=O

図5.

7

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N=5x104

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N=15x104

い{ωω

(17)

5. 3. 3 き裂伝ぱ曲線

区]5. 8にL材およびT材のき裂伝ぱ曲線を示す. 前節で述べたようにT材は寿 命の初期からき裂が発生するため, 寿命のほとんどがき裂伝ぱに費やされる.

一方L材は, 繰返し応力が小さい場合, 寿命のかなりの部分がき裂発生寿命と なる. 11弱者を比較するために, 横軸を破断寿命に対する相対繰返し数に喜き直 すと, 凶5.9になる. '1、材は繰返し応力に関係なくほぼ1本の曲線上に揃うのに

対し, L材では繰返し応力が小さくなる程, き裂発生寿命の割合が増している ことが分かる.

5. 3. 4 疲労過程中の硬さの変化

図5.10に疲労過程の硬さの変化を測定した結果を示す. L材およびT材にお いてそれぞれ の疲労阪皮の応力を繰返し, 所定の繰返し毎に試験機から試験片 を取り外し硬さを測定した. 試験片を素材の鋼板から切り出す際に, 板面に平 行であった部分と圧延店向iこ直角であった部分とでは結晶粒径に若干の差があ るので, 測定場所によって硬さに相違が生じる可能性がある. したがって, 測

定は試験片の最小断面となる部分でしかも, 板面に対して-15度の角度となる面 に限定した. さらに表面ですべりを生じている部分と, すべり帯の無い部分に 分けて測定を行った. 凶に示すようにL材, T材ともにすべりが 生じていない 部分ではほとんど硬さに変化は見られない〈最大に見積っても間以下) . これ に対し, すべりを生じている部分に注目すると, T材の場合N=2.Ox 106四位j交 の応力の繰返しで硬さはおよそ14%程度増加してそれ以降はほとんど変化してい ない. 一方L材の場合はN=6.0X106回を過ぎても徐々に 硬さが増している. す なわち, T材は応力の繰り返しで加工硬化はするものの, その後, 時効硬化を 起こさない. L材の場合, 応力の繰り返しを受けてすべりを生じた部分が加工 硬化した後にその部分が徐々に時効硬化していると考えられる.

133

(18)

134

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Steel L

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1 2

Number of cycle

(a)低炭素Alキルド鋼-L材 3 N

トー

0.01 0

0.1

戸』戸-

工HOCω一〉ちの」O

Steel T

2

似106]

i

Number of cycle

(b)極低炭素Ti添加TF鋼-T材 N

0.01 0

き裂伝ぱ曲線

!き1

5.8

(19)

135

o

a /0 wO

: 1.33 : 1.21 : 1.09

に」に」

工二

0) c ω

ぢ0.1

c

o

Steel L

N/Nf 0.5 0.01

0

(a)低炭素Alキルド鋼_- L材

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OD

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: 1.33 : 1.20 : 1.13

工二

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co

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0

戸」に」

0.5 N/Nf

(b)極低炭素Ti添加TF鋼 -T材 倣断寿命を1としたき裂伝ぱ曲線

0.01 0

ほ1

5.9

(20)

136

(ZωN.0) 110

Steel L A

Steel T

Steel L

/

"" Non slip region

Steel T

A

100

90

ωω ω C刀」のこ ω 」ω v-o一>

80 1.0

0.0 2.0

[1.0x107]

Number of cycle N

!立1

5. 10

炭労過程における硬さ変化

(それぞれの材料に疲労限度の応力を繰返す場合)

(21)

5. 3. 5 停留き裂の存在について

図5.11に, T材に疲労限度の繰返し応力(150MPa)を負荷した場合の, 表面観 察結果を示す. 粒界から発生したき裂は, N=1.0X107 でおよそ 230μm の長 さになっている. それ以降, N=8.0x107 まで疲労被害は徐々に増しているよ うであるが, き裂先端を拡大してみると, 伝ぱが停止していることが分かる.

長い期間の実験であるため, 疲労被害が蓄積しているように観察される部分も,

腐食の進行による被害である可能性も否定できない. き裂の停留は, 時効硬化 が重要な要因であると言われているが14), T材は時効硬化を起こさない材料で

あるから, この場合は時効硬化以外の原因でき裂伝ぱが大幅に抑えられている ことになる.

137

(22)

ハ{ω∞

N=O N=0.2x107 N=0.7X10ア

モ-

Axial direction-一歩

50μm

." .-..

. �

F可も以下

ヤル

detail of crack tip ご

l 20μm,

図5. 11 極低炭素Ti添加IF鋼の疲労限度の 応力繰返しに見られる停留き裂

。a = 0

wo=150MPa N=1.0x107 N=3.Ox107 N=5.0x107 N=8.0x107

(23)

�一一

5. 3. 6 コーキシング効果の存在について

凶5. 12にS-N曲線と, コー牛シング効果による疲労限度の上昇を示す. L材の 場合, 波労|湿度の応力(165MPa)を1.0X107回繰り返した後, 繰返し応力を5MPa

上昇させて, 吏に1.0X107出繰り返す. その後, 繰返し数1.0X107回毎に5MPa ずつ応力を上昇させた場合, σa=185MPaの繰返し応力で, N=1.53XI06で破断し た(凶中破線) . この時破断の起点とな ったのは, 疲労限度の応力を繰り返し

たときに認められた微視き裂であた. また 2.0X107回毎に応力を上昇さ た場合, 疲労限度の上昇は吏に大きく, σ a二195MPaでも破断しなかった(図中

実線) . 両者 の 疲労限度 の 上昇|隔 の 差は, 主 に き裂先端 の ひずみ時効 の 時間 の 差に起凶すると考えられる.

一一店, '1'材の場合波労限度の応ノJ(150MPa)を2.0 x 10'(回繰り返した後, 繰返 し応力を5MP a 上昇させて, 更に2. Ox 107回繰り返しでも破断しなかった. 更に

繰返し応力を5MPa 上 昇させてσ a=160MPaにした所, Nニ5.85X106で破断した. こ の場合の表面の連続観察結果を図5.1 3に示す. 破断の起点となったき裂は, jdt

労限度の応ノJの繰返し, それに引き続く5MPa高い応力の繰返しではき裂となっ て おらず, 160MPaの応力を, N=1. 5x 106回繰返した所で初めてき裂となってい る ようである. この試験片の他の部分には, 疲労限度の応力の繰返しで粒界が 関口したき裂が存在しており(図5.14) , 通常の炭素鋼の場合のように, 破断 の起点が, 常 に波労限度の応力の繰返しによって生じた微視的停留き裂である とは限らな いことが分かる. 通常の炭素鋼の場合, 応力の繰返しによる加工艇 化とそれに伴うひずみ時効によっ てき裂の先端が強化され, f云ぱiこ対する抵抗 が増す. それに加えて, き裂の停留の原因として挙げられている様々な作用が 働いてコーキシング効果が現われるとして いる が. 更にもう一つ重要なことは,

疲労限度以上の応力の繰返しにおいても, 新たにき裂が発生しないこと, すな

わち, 応力の繰返しによってき裂発生に対する抵抗も増すことが, コーキシン グ効果を示すのに必要な条件である. 然 るにT材の場合, 疲労限度の応力で発 生したき裂が, ひずみ時効以外の要因で停留したとしても, その他の部分の 強 化が行われず, 波労限度よりも僅かに高い応力の繰返しによっ て新たにき裂 発生する可能性がある. 波労限度の応力よりも高い応力で発生したこのき裂は

この 応力では停留せずに破断に至る . 一方, T材の場合でも, 通常の炭素鋼と

|可織に, 疲労限度の応力で発生したき裂が, 繰返し応力の上昇によ っ て伝ばし て破断する場合も観察された. T f.1の場合, 始 めらσa=155MPaの応ノ2.0 x

139

(24)

10(lQJ繰返しでも破断しなかった試験片も有り. 実験の範凶内ではコーキシング 効果は僅かであり, ほとんど認められないに等しいと言える.

140

(25)

141

200

nU FO

O刀コ日一一aECωωω」あ

ω仏2mO

---

108 N 107

Number of cycle 106

100

!支I

5. 12

S-N巾線とコーキシング効果

(26)

. - 、 .

い A ぜ

g

-、『 ・ ."

Axial

direction

唱Z

50μm

I唱同 �----=ーも L

N=O

弘一事��-- . ' .

o

a=150MPa

4.8x106 9.3x106 1.4x107 1.8x107 2.0x107

さ惨

2.Ox107

o

a=155MPa

--�

o

a=160MPa

1.0x106 1.5x106

5.0x105 2.5x106

‘、h r

Nf=5.85x106 図5.13極低炭素Ti添加IF鋼の表面状態の変化 (その1 )

(コーキシング効果の実験 )

3.2x106

HAω

(27)

く Axïal direction

:>

会、

o

a=150MPa

4.8x106

3

9.3x106 2.0x107

主B・

1.0x107

o

a=155MPa

2.0x107

図5. 14極低炭素Ti添加IF鋼の表面状態の変化 (その2) (コーキシング効果の実験において見られたき裂)

150μml

3.2x106

0

a=160MPa Nf=5.85x106

HAω

(28)

『司・r

5. 4 まとめ

|話r値熱延鋼板の素材となる極低炭素Ti添加1 F鋼と, 低炭素A 1キルド銅の凶 転出げ波労試験を行い, 波労限度の存在および波労き裂停留におよぼすひずみ 時効の影響について検討し, 以下のような結論を得た.

( 1 )極低炭素Ti 添加1 F鋼はひずみ時効を示さないにも拘らず, 疲労限度の応力 で, N = 1 0 0 x 1 0 O(から少なくとも70 0 x 10γ回の応力の繰り返しの間ほとんど伝ば しないき裂が認められた. したがって, 疲労過程におけるひずみ時効は, き裂 の停留に重要な役割を果たすものの, ひずみ時効はき裂停留に必ずしも必要で

はないと言える.

( 2 )極低炭素Ti添加Iド銅では, 実験の範凶内でコーキシング効果は僅かであり,

ほとんど認められないに等しい. この際波労限度の応力でき裂が発生し, ひず みl持労J以外の版!JSJで先端が強化されて伝ぱが停止したとしても, 通常の炭素鋼 のように, き裂以外の場所が疲労|浪度の応力の繰り返しで強化されることがな いため, 泌労似j支よりも少し高い応力では新たなき裂が発生し破断に至る. ーキシ ング効果にはひずみ時効の存在が必要であると言える.

( 3 ) 低炭素 A1キルド鋼および極低炭素Ti添加1 F鋼の場合, 疲労き裂はほとんど粒 界から発生した. 低炭素A1キルド鋼の場合破断寿命にたjするき裂発生寿命の割 合は, 繰返し応力が低くなるほど大きくなる. 一方, 極低炭素Ti 添加IF鋼の場 合, 応ノJレベルに関係なく寿命のほとんどがき裂伝ぱ寿命となる. これはlド釧 の場合粒界強度が弱いため, き裂発生が容易であることが原因であると考えら れる.

144

(29)

第事 6 辛苦

6. 1 緒 き

応、ヌJ在ヲ曹己QJある主易るこヰヨける さき歪斐多詮竺主主島幸呈

平滑材における破壊の起点に着目して行ったき裂発生過程の連続観察1 )によ れば,炭素鋼焼なまし材と時効硬化させたA 1合金との聞にはき裂発生までの過程 に本質的な相違が認められる. すなわち, A 1合金では1μm0下の領域からすべ りが始まり, 徐々にその長さを増しながらき裂が伝ばしていく( すべりがき裂 となる時期は明らか でない〉のに対し, 炭素鋼では将来き裂となるべき部分は 寿命のごく初期から有限な長さ( 1結品粒程度〉をもち, 応力の繰返しによっ てもはじめの うちはほとんどその長さを増さない. そして, ある繰返し数を符 てそこがき裂となってからは, き裂先端部分にひずみが集中してき裂が伝ぱ拡 大していくことが明らかにされている2 ) 一方, 高r値熱延鋼板に用いる極低 炭素鋼は不純物が少ないために, 結品粒が非常に大きくなることがある. 本章 では先ず, 概低炭素Alキルド鋼焼なまし材を用いて回転曲げ疲労試験を行い,

このような粗大な結品粒の場合でも, 一般の炭素鋼の場合と同様に平滑材では 疲労き裂は1結晶粒程度の有限な長さを単位と して発生するかどうかを検討し た. 更に, S 20 C焼なまし材と時効硬化^1合金において, 小穴をあけた試験片を

用 いて 回転曲げ疲労試験を行い, き裂発生過程を連続的に観察することによ て, 平滑材におけるき裂発生過程での相違が応力勾配のある場においてはどの ようになるかについて検討する. 西谷らはドリル穴を有する半無限休の引張り について体積力法を用いて応力分布の詳しい解析を行っている3 ) それによれ ば,頂角(2/3)πで穴の半径と深さをそろえた場合, 穴の側面の^ c上における 荷重軸方向の応力は, 図6. 1で示されるように, A点で最大であり穴の深さ方

向に向かつてこれにほぼ等しい領域が存在し, その部分の応力集中係数はおよ そ2.0である. また穴縁付近のy軸上の応力σxは関6.2のように減少していく.

したがってこの形状の穴縁近傍の表面を観察することにより, 円周切欠き材等 の深さ方向の情報をある程度推定することができる(関6. 3) . 一般にき裂発作 過程において すべり帯がどの段階でき裂となるかを判定する事は重要である.

これ迄引張り応力を加えて閉口するか否かで判断する方法が用いられているが 引い, その方法では疲労試験が引き続き可能であるような低い引張り応力下で き裂が開口するかどうかを判断すること は難しい. そこで, ー部の試験片にお

145

(30)

『司「

いて一定繰返し数ごとに試験機を止め, 試験片の表面に生じたすべり帯の凹凸 をパフ研摩によ って除去した後, 疲労試験荷重を静的に加えることによってす べり帯がどの時期にき裂となるかを観察した. この場合穴の側面についても表 而と対応させながら連続観察を行った. 穴の側面の観察は円周切欠き材の切欠 き底の観察に対応している.

また, 応力勾配のある場においても, 疲労き裂が結品粒単位で発生すること は, 切欠き感度に結晶杓径の大きさが大きな影響を及ぼすことの背景となる.

そこで, 極低炭素A 1キルド鋼において, 小穴の直径に近い寸法の結晶粒を有す る試験片, および, それより小さな結晶粒の試験片を製作し, 切欠き感度につ いて検討するとと もに, 穴縁か らのき裂発生過程を連続観察した.

146

(31)

『司哩「

4.0

ふ3.0

0>

c

6

、、

?20

b

v

1.0

O↑

A

“・

以=号L

、、‘、、、

__ -i

a/b=O.8

..._ご ♂/

以=3応

、、

a/b

ノ�ミご、

以=凡 U

ν=0.3

0.4

0.6 0.8 1.0

z

/b

!文I

6. 1

火縁A Cに沿ったσ\ 1)

(実線a/b=

L

0,破線乱/b=O. 8 )

147

(32)

『司r

1.0

ω

><

ro

〉、

0>

g- o.51

ro

、、

σ20

ν=0.3

-時一

心「うiJ品

-崎一 -・-

0.2 0.4

ス,1/a

0.6

灰I 6.2 点Aからy市111に沿っての応力分布1

}

148

(33)

149

『咽V

r' 、、

\

J..",. I

、、 、』

,,_.ーー『“

,・-、

F'、、』

、、 -�

JL (

、、 、』

‘・岡田園..--­

、....__.,

f 1 !仇

EE寸.0

2.0

穴縁の応力分布と, 円周切欠材の深さ方向の応力分布の関係

!叉1

6.3

(34)

『司司

6. 2 使用材料, 試験片お よび実験方法

使用材料は, 真空溶製した極低炭素Alキルド鋼 の鍛造丸棒(直径1 2 mm, 長さ 1. 5m) , 時刻j硬化A 1合金丸棒(直径22mm, 長さ4m)およびS20 C圧延丸棒(直径

22mm, 長さ5m)である. 表6.1に化学成分を示す. この素材に所定の熱処理を行 って から試験片を製作した. 極低炭素A 1キルド鋼の場合結品粒を2通りに調整 している. 完全焼なましした粗粒のものを0材, オーステナイト域の温度から 急冷し, 急激なフェ ライト変態を行わせることで比較的小さ な結品粒iこしたも のをQ材と する. 表6. 2に熱処理条件と 熱処理後の機械的性質を示す. 図6.4に 0材およびQ材の組織写真を示す. 0材およびQ材の平均結品粒径は, 約400μ mおよび80μm, A 1合金およびS20C焼なまし材の平均結晶粒径は, 約100μ mおよ

び25μ mである.

図6. 5に試験片の形状を示す. 平滑試験片の試験部分は100Rの鼓形である. LC 力集中係数は小さく無視できる. 小穴試験片は, 平行部中央に直径O.4 mm, 泌さ O. 2mmの小穴があけてある. 穴の形状は図6.1, 6.2の解析結果を基に決定したも のである. A 1合金試験片の場合, 機械加工後 エメリー紙で# 1500まで仕上げ,

その後更に電解研摩によって試験片表面を10μ m程度除去して実験に供した. 極 低炭素Alキルド鋼, およびS2 0 Cの試験片の場合はエメリー仕上げ を行った後60

Oocで 1時間真空中で応力除去焼なまし を行い, その後同様に電解研摩を行っ た. 電解研摩を行ったのは加工層を取り除き, かっ表面の観察を容易にするた めである. 電解研摩液はA 1合金に対して, りん酸2000ccに硫酸20ccを加えたも の, および極低炭素Alキルド鋼, S 20 Cに対しては, りん酸2000ccにしゅう酸40 g, ゼラチン40g, 蒸留水1000ccを加えたものを用いた.

使用した試験機は小野式小型回転曲げ疲労試験機(容量15N. m, 3000rpm)で ある. 疲労限度は4. 9MPa (0. 5kgf/mm2)の応力レベルで決定した(極低炭素A 1 牛ルド鋼については 5MPaとした). 2皮労過程の連続観察およびき裂長さの測定 は, 所定の繰返し数ごとに試験機を止めてレプリカを採取し, これに金を蒸着 させたものについて光学顕微鏡に より行った. このとき レプリカを小穴の中ま

で進入させる事に よって穴の側面の観察も可能になる.

すべり帯とき裂の判別については以下のような実験を行った. 電解研摩後更 に軽くパフ研摩を施した試験片を供試材とし所定の繰返し 応プJをJJ日えた後, 試 験機から試験片を取り外し, 光学顕微鏡にて表面観察を行う. その後す べり,帯 の凹凸をパフ研摩で平lこし光学顕微鏡ではすべり帯がほとんど観察され ない よ

150

(35)

『司司,

うにしてから試験片を再び試験機に取り付け, 疲労試験と同じ引張り応力を静 的に加えた状態でレプリカを採取しき裂の有無を確認する. この操作をき裂が 発生するまで繰返した. パフ研摩にはアルミナ微粉を使用し, 一回の研摩量は 平坦な部分では1μm程度のごくわずかなものである.

151

(36)

『司.r

Extra low- carbon steel

S20C Al alloy

Material

表6. 1 化学成分 何時)

C Si Mn P S Ni

. 0014 O. 01 0.11 .003 .0002

C Si Mn P S Ni

O. 19 O. 24 O. 45 .012 O. 016 0.07

Cu Si Mn Fe Mg Zn

O. 27 O. 7 O. 02 O. 44 O. 9 0.05

表6.

2

熱処理および機械的性質

Cr

Cr O. 15

Cr 0.08

Cu Fc Bal.

Cu Fe 0.10 Bal.

Ti Al 0.02 Bal.

I1eat treatment Mechanical properties

15β

S t e e 1

920 t,lhr,Quenched σs I σR ゆ(先) ゆ(児)

920 t,1hr,Annealed 86 234 43. 5 94.3

S t e e 1

920 t,lhr,Quenched σ日l σn

(先) ゆ(先)

600 t,1hr,Annealed 167 308 40. 1 89. 4

S 20C

880 t,1hr,Annealed σs I (J n Uï・ ゆ(先) 272 456 890 62. 4

Al alloy

535 t, lhr, W. Q. びO. 2 σn (J・1・ ゆ(先) 180 t, 7.5hr, Temperd 250

I

309 478 53.8

σsl : Lower yield stress (MPa)

σ日 : Tensile strength (MPa)

σO. 2 : 0.2先 proof stress (MPa)

ゆ :

Elongation (先)

Steel 0

σT : True fracture stress (MPa) ゆ : Reduct ion of area (児)

,J,,,---,,: ・/

ど:;-

Steel Q 図6.4

組織写真(横断面)

l0.5mm I

(37)

---.r

(a)ヌv滑試験片

。J O

Defail of hole

(b)小穴試験片

|玄I

6. 5

試験片の形状

153

(38)

6. 3 実験結果および考察

6. 3. 1 極低炭素AI牛ルド鋼平滑材の疲労き裂発生過程

図6. 6に, 0材平滑部の疲労き裂発生過程を連続的に観察した試験片表面のレ プリカ写真を示す. これによれば, 破断寿命の初期CN=2X 105)から, フェラ

イト結品粒界に沿った300μm程度の長いすべり帯が観察される. その後この部 分に被害が蓄積され, き裂となるのは破断寿命の40%を越えてからである. この ことは, N=16.1Xl05において, 関口したき裂の奥まで入り込んだレプリカが,

レプリカ表面にフィルム状になって残っていることから確認できる(図中A部) . その後き裂は, 先端部分周辺に疲労被害を残しながら, 伝ぱ拡大している.

このことから, このような大きな結晶粒の場合においても, 通常の炭素鋼平滑 材と同織に, 疲労き裂は1結晶粒程度の領域を単位lこ発生する事が分かる.

154

(39)

dE州qJ N=O

' .

N=2.0x105 N=4.0x105 N=6.0x105 N=1 O.Ox1 05 N=12.0x105

A

'"

N=14.1x105 N=16.1x105 N=18.1x105 く Axial direction

:>

N=20.0x105 N=22.0x105 N=26.1x105

図6.6 平滑材のき裂発生過程の連続レプリカ写真

〈極低炭素Alキルド鋼-0材,

σ a

=125MPa, Nf=3.6xl0() ) い戸切勺

(40)

__,.r-

6. 3. 2 AI合金およびS20C小穴材のS-N曲線

図6.7'こ, A 1合金およびS20C小穴材のS - N曲線を示す. 時効硬化Al合金では σ川=68.6MPa, σw2=93.1MPaであり, S 2 0 Cではσ川=147.0MPa, σι=176.4MPa

であった. (ここでσω1, σuは107回に対する疲労強度を表わすものとする.

なおσ w 1としてはき裂発生限界の応力をとった ). 一方平滑材に対してσ w 1は σ叫に等しく , A 1合金で131.3MPa, S20Cで230.3MPaである6) 7 )から,表6.3に 示 すようにσω1を基準にした切欠き係数 β1はそれぞれ.1.91(Al合金)および 1.57 (S20C)となる. 同一寸法形状を有する両者のβ1の違いは,き裂発生に 関係する有限な領域の寸法の差に起因するものと考えられる. すなわち炭素鋼 の場合はこの領域はある程度有限な大きさを持ち, き裂の発生はその部分の平 均的な条件に支配されるの に対し, A 1合金の場合は非常に小さい領域の局所的 な条件によって支配されるからである.

6. 3. 3 AI合金およびS20C小穴材の裂伝ぱ特性

図6.8に, A 1合金およびS20C小穴材の, σιに対する応力の比がそれぞれ

1. 47と1.25の応力を繰り返した場合についてき裂伝ぱ曲線の比較を示す. き裂 長さとしては試験片表面に沿って測った 長さをとっている. 図6. 8の横軸を, 破 断寿命を2基準とする相対繰返し数とき裂長さの関係iこ変換すれば応力レベルに 関係なく両者の き裂伝ぱ挙動の差が明白になる(図6. 9) . すなわちAl合金はS 20Cに比べてき裂の発生から初期の 伝ぱ段階で伝ぱ速度が速い傾向があり, き裂 長さが長くなると逆にS20Cに比べてき裂伝ぱ速度は遅くなる.

156

(41)

『司.

0105 106 107

Number of cycles

凶6.7

S -

N巾線 300

250

o o nJ』 ω 仏 室

6150 5100

cn

...

(J)

50

157

Rotating bending

\

-

i"・

司...

... S20C

.... ー- OW2

=176.4

\ ー

Q・2=

ー-

0も 1

=

147.0

\ 、、~・・

O

AI alloy

田園田園O-ー ーー ー- O-w2 =

93.1

0 ...

81ind hole

(Kt=2.0)

一ー; Not broken v: No cracl<

1õ8 N

表6.

3

�支労限度と切欠係数

ì---_

。も110 CJw

1

CTw2

β1

S20C 230.3 147.0 176.4 1.57 I

AI alloy

131.3 68.6 93.1 1.91

β1 =σwo/Oも1

(42)

158

10

戸口広』 5

_::)

£一←mwcω一

『司咽

ぢ0.5

ω L目

8 10

x

105 N

0.1

o 2 4 6

Number of cycles

き裂伝ぱrlfI線

関6.

8

(43)

159

r

寸.0

10

ぢ0.5

ω

'-

0

5

に』に」

ー�

工一←ocω一

『咽r----

1.0 0.4 0.6 0.8

N/Nf 0.2

0.1 0

破断寿命を1としたき裂伝ぱrt

f

I線

区f

6.9

(44)

『司.,--

6. 3. 4 AI合金およびS20C小穴材のき裂発生過程の連続観察

図6.10, 6.11に, A 1合金およびS20C小穴材の, 穴縁からき裂が発生する械子 を連続的に観察した試験片表面のレプリカ写真を示す.

図6.10のA 1合金の場合, き裂は初期の段階つまりN=3.7 X 104かN=3.8x 104程 度の繰返し数で穴縁の非常に小さな領域を起点として発生し, その長さは繰返 し数とともに徐々に大きくなる. 一方S20Cの場合は図6.11 ,こ示されるように,

疲労被害は宥限な領域を単位として進行する. この場合, すべり帯がかなり発 達しでもそれはき裂とは言えない. この ことは主すべり帯に平行して存在する 副すべり帯がN=2.0X10�回迄発達する事からわかるくき裂発生は, 副すべり帯 の発達が止まるN=(1. 7---2.0) x 105回付近であると思われる) .

凶6.12にき裂の発生過程を表わすグラフを示す. 縦軸は穴の縁から円周方向 iこ測定したき裂長さc (破線の場合は被害を受けた領域の長さ) , 横軸はs -

N曲線より求めた彼断寿命Nfに対する繰返し数の割合N/Nfである. A 1合金の場 合, 寿命の早い時期iこき裂が発生し急速に伝ばすることが分かる. S 20 Cの場合 も早い時期から疲労被害は認められるが, その領域の長さは, 一結品粒程度に 相当する一定値からほとんど増さない事が分かる. つまりこれが一つの結晶粒 内で疲労被害が蓄積されている段階である. 一結品粒程度のき裂が発生してか らは急激にその長さを増していく.

160

(45)

. 6

-.

ー ­

..

; '..J. "

N=O 3.7x104 3.8x104 4.0x-104 4.2x104

·

c,-

・ 日 ph ,r ,‘

'

f

, //

4e9x 104 5.2x 104 5.6x104

Axial direction E50μrY12

写hu 真印

ヵ2.

けソ £i プ N レ 礼 士→U PA O 合 引 Mm のw 連oJ h p ] AUイ1よ

肯 唯 一 一 状 a 生σ 発 裂金 き合 のM ら 化 か硬 縁効 穴時

ハHU nhu 図 H0・H

(46)

ー-戸 -・・、

---

ヘ、,\\

.

♂戸-一

N=O

S20C

3.0x 1 04 6.0x 1 04

CTa = 186.2MPa Nf:2.1 x 106 Axial direction

、、 . 司E

a -

E50μmJ

. ‘

1.3x105

ぱ1ha、、、

2ø8x 105

図6.11 穴縁からのき裂発生状態の連続レプリカ写真 (S20C焼なまし材, σa =186.2MPa, Nf=2.1xl06 )

2.0x 105

いFGU叫

(47)

163

βγ

日コ〆

5 N/Nf 10 x -10-2 15

凶6.12 倣断寿命を基準にしたき裂発生巾線

(48)

『司国「

6. 3. 5 すべり帯とき裂の判別

疲労き裂発生過程においてすべり帯とき裂をに判別するために行った実験結 果を図6. 1 3に示す. 図6.13 I-aは電解研摩後軽くパフ研摩を施したS20Cの試験 片にσ a=186. 2MPa (σ a/σ川=1. 27)の繰返し応力をN=2. 5 X 105回繰返した時 の試験片表面の状態を示したもので, I-bはその部分のすべり帯の凹凸をノ可、フ 研摩で取り去った後のレプリカ写真である. このように応力の繰返しによって できたすべり帯の凹凸はわずかなパフ研摩で取り去る事ができる. パフ研摩後 試験片表面の小さな傷がそのまま残っていることから, パフ研摩量がわずかで ある事が分かる. I-cは, その試験片を再び試験機に取り付け, 疲労試験と同 じ引張り応力を静的に加えた時のレプリカ写真である. I-bと1 -cとの差は認 められ ずしたがって1 -aの黒い線はき裂ではなくすべりによって生じた表面の 凹凸である事が分かる. この試験片に更に同じ応力を5 x 10 tI回繰返した後の表 面状態がrr -aである 1 -aと同じ場所に再び黒い線が現れており, 疲労被害が 引き続いて同じ場所に蓄積されていることが分かる. またIとは別な部分にも 疲労被害を受けた領域が現われている.

皿-aでは将来き裂となる部分に大きな疲労被害の蓄積があることが観察され る. 皿-dでは穴の側面の状態を示している. ただし穴の側面はノt‘フ研摩は行っ てお らず電解研摩の状態である. 回一dにおいてもすべり帯が確認され回一aとム わせると疲労被害を受けている領域が有限な大きさの面として把握できる. こ の面は荷重軸( x軸)に対してy方向にもz方向にも角度をもっている(軸の

方向については図1参照). 皿-bの状態で引張り応力を負荷しでも開口が認め られず (皿-c), したがって町一aの黒い部分はまだき裂ではない. 更に5 x 1

o tI回の応力を繰返すと, パフ研摩後の表面状態IV-bは皿一bとほとんど変わらな いが, 引張り応力を加えるとき裂が関口するのが明瞭に観察できる(IV-c).

このことからIV-aにおけるIV-cと対応する黒い筋はき裂であることわかる. ま たIV-a,cにおけるき裂の長さと, 皿-aにおける疲労被害を受けた領域の長さ(

すべり帯の長さ)はほぼ等しい長さである. つまり応力勾配をもつような場所 においても, ある有限な大きさの領域において疲労被害が蓄積され, ある時点、

(ここではIVの時点)でそれと同程度の大きさのき裂ができる. また穴の側面 の観察においてもき裂が確認できる. このき裂は円周切欠き材の切欠き底に発 生する疲労き裂に似ている.

き裂ができるとその後の疲労被害はき裂先端部に集中する V-aは明瞭にそ

164

(49)

0均10 ! 1 �x10 � n JOx � m �x10 � W �x10 ! v

a

・ ‘-­ .,.与、

b

C

laムcl

( d ,

ー-

Axial directionー+ ,50μm.

図6.

13

すべり帯からき裂に発達して行く過程の試験片表面及び穴側面 の連続写真(S20C, σι\ =186.2MPa,σa /σwl=1.27)

a:試験片表面の実物写真,

b:

aのバフ研摩後のレプリカ写真,

c:

bに引張 応力σ=186MPa負荷時のレプリカ写真, d:穴側面のレプリカ写真

ハ戸u

(50)

のことを示している. またき裂ができるとき裂と隣接する部分では応力 が緩和 されるため疲労被害をうけにくくな る. このことを反映してき裂が発生する以 前はバフ研摩後の応力の繰返しの都度現われていた穴縁近傍の多くのすべり帯 はV -aでは現われていない

一方, A 1合金において, σa=86.8MPa (σ 日/σ川=1. 27)の応力をN=5x104

回繰り返した時の試験片表面の観察例を図6.14に示す. 図中の黒い線は, 引張 り応力下で明かに関口する事から, もうすでにき裂であると言える.

166

(51)

�7

AI alloy (01ヨ= 86.8MPa,N = 5x

104)

Actual surfaceo

ð

. ー .

長L

o

A fter buff

同》

Under tesile

stress

t::・

←- Axial direction -→

』5匂Jm,

ほI 6.

14

11キ効硬化 Al合 金 におい て 応力繰り返し初期に発生した鋭労き裂

〈び・I =86.8MPa, συ/σwlご1.27)

(52)

『唱.,.

6. 3. 6 切欠き感度に及ぼす結晶粒径の影響

図6.15に低炭素Alキルド鋼Q材, 図6.16に0材の平滑材および小穴材のs - N曲線を示す. Q材, 0材の平滑材および小穴材のS - N曲線における折れ点 は通常の炭素鋼と比較して長寿命側に寄っている. 両材とも軟質な材料であ り,

し かも結晶粒径が大きいので, このような傾向を示すものと考えられる. この ことはこれまでの研究結果8 )と矛盾しない. ただし , Q材と0材について折れ 点の寿命の差は明確ではなく, 結晶粒径の影響を見いだすには至っていない.

両材ともに繰返し数が107を越えて破断した試験片もあるため, 疲労限度は2.0

X 107回を基準とするものとする. 図6.1 5から, 破断に対する切欠き係数β2は,

Q材で1.15, 0材で1.0となることが分かる. すなわち, 0材の場合, 直径O.4 mmの小穴でも, 疲労限度σ叫に影響を及ぼしていない. 図6.1 7に0材の小穴材 における表面観察結果を示す. 図に示すように, 0材の場合, 疲労限度近傍の 応力であっても, 穴縁からだけでなく穴以外からもき裂の発生が見られ, 破断 の起点は穴から発生したき裂でない場合も見られた. 図6.18.6.191こ, Q材およ

び0材の穴縁からき裂が発生する様子を連続的に観察した試験片表面のレプリ カ写真を示す. き裂発生過程で, Q材よりも0材の方がより大きな範囲で疲労 被害を受けていることが分かる. 小穴材のき裂発生に対する切欠き係数β1は,

結品粒径が大きくなる程小さくな り, 0材の場合βlが1に近くなっていると考 えられる. 小穴材の場合疲労限度σιはき裂の伝ぱ限界で決まっている. これ までの多くの研究によれば, き裂伝ぱに対して結品粒径の影響はほとんど見ら れないとされている9)一11 ) したがって本実験の場合においても, Q材と0材 の小穴材の疲労限度には大きな差はみられない. 0材の小穴材がQ材に比べて 疲労限度が僅か に低いのは, 穴から発生した停留き裂の寸法が0材の方がQ材 よりも長くなることに起因するものと考えられる. 一方, 結晶粒径が大きい 0 材の降伏応力は, Q材の降伏応力の1/2程度と低く, このことが平滑材の滑り発

生応力に大きな差をもたらしているので, 平滑材の疲労限度σdは, Q材より も0材の方が著しく 低くなる, その結果0材では平滑材と小穴材の疲労限度に 差がなくなったものと考えられる.

168

(53)

169

Steel Q

200 : without hole

: with hole

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150

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→:

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100

108 N

106 107

Number of cycle 105

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6.15 S

l キルド鋼Q材, 平均結 - N曲線 l括和径80川

(54)

170

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: without hole : with hole

初心 ふ

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108 N

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Number of cycle 105

凶6.16 S-N曲線

(極低炭素Alキルド鋼0材, �IZ.均結品粒径400�m )

(55)

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400μm

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6. L 7

穴の縁から発生したき裂と火以外から発生したき裂

(似低炭素Alキルド鏑O材,

σ d

=120MPa, N=2.65XI0(' )

171

(56)

『咽『

172

副同門叫」

N=O

N=1.0x105

e , 、

く Axial direction

>

N=2.0x105 /

.グ /

/

;:;ノ

N=3.0x105 N=4.0x105

図6. 18 穴縁からのき裂発生状態の連続レプリカ写真

( 極低炭素Alキルド鋼Q材, ση =145MPa, Nf=2. 87x100 )

(57)

『唱・r

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N=O

N=3.2x106

く Axial direction

>

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J

N=4.1x106

N=7.2x106 N=8.5x106

図6.

19

穴縁からのき裂発生状態の連続レ プ リカ 写 真

(極低炭素Alキルド鋼O材,

σ九 三115MPa

, Nf=1.09xl07 )

(58)

6. 4 まとめ

極低炭素A 1キルド鋼, S 2 0 C焼なまし材及び, 時効硬化A 1合金の, ヤ-滑材及び,

直径O. 4mm, 深さO. 2mmの小穴材の回転曲げ疲労試験を行い. レプリカ法により 連続的に観察する事によって, 疲労き裂発生過程の相違について検討した結果,

以下の ような結論を得た.

( 1 )格低炭素A 1キルド鋼焼なまし材の平滑試験片では, 結品粒径が40 0μmの大き な場合においても, 通常の炭素鋼と同様, 疲労き裂は1結品村粍度の有限な長 さの領域を起点として発生すること が確かめられ た.

( 2)疲労き裂の発生過程において応力勾配がある場合においても平滑材での結果 と同様にS20 C鋼焼なまし材と, 時効硬化Al合金の聞に本質的 な差異が認められ

る. すなわち, S 20 C焼なまし材の場合疲労被害は有限な寸法 の領域 (一結品粒 程度)に蓄積され, 疲労き裂は一結品粒科度を単位として発生する. 一方時効 硬化A 1合金の場合は疲労き裂発生に関係する領域は非常に小 さく, 応力の高い 部分に発生 したごく微小なき裂 が 応力の繰返し数ととも徐々に伝ぱ拡大する.

( 3 ) き裂発生に対する切欠き係数β1はS2 0CよりもAl合金の方が大きい(応力集 中係数2. 0に対し β1=1.57と1. 91) . これは(2 )に述べた疲労き裂発生に関与す る領域の大きさの差に起因する.

( 4)炭素鋼の場合, 平均結品粒径と疲労き裂発生に関与する領域の大きさには密 接な関係があ り, 小穴材の き裂発生に対する切欠き係数β!は, 結品粒径が大き くなる程低くなる. 概低炭素A 1キルド鋼焼なまし材において, 平均結品粒が/J 穴の寸法に近い材料では, β1が1に近くなった. また, こ の 材料では小穴材と 平滑 材の破断に対する 疲労限度に差が認められ なかった

( 5 )炭素鋼の場合, 疲労き裂発生過程においてすべり帯とき裂を明確に判別する 事は難しいが, 電解研摩し た試験片において, すべりの繰返しを受けた部分を 軽くパフ研摩した後, 疲労試験中の最大引張応力を負荷する事により明確に判 別できることを示した.

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