クリニカル・テクノロジー
乳歯の萌出遅延
島 田 幸 恵
Delayed Eruption of the Deciduous Teeth Yukie SHIMADA
Department of Pediatric Dentistry, Showa University School of Dentistry
昭和大学歯学部小児歯科学講座 (2011年9月1日受理)
要旨
歯の萌出遅延には全身的な原因や局所的原因には腫瘍,嚢胞など様々あるが,乳歯の萌出遅 延の頻度は永久歯に比べ非常に少ないと言われている.しかし,乳歯の萌出遅延した状態を長 期に放置しておくと,舌突出癖などの口腔習癖を招くばかりでなく,対合歯の挺出などの不正 咬合やひいては後継永久歯への影響も大きい.よって,乳歯の萌出遅延の早期発見と早期治療 を行うことは永久歯咬合誘導上重要である.今回は乳歯萌出遅延症例の対応法について報告す る.
乳歯は,乳中切歯,乳側切歯,第一乳臼歯,乳犬歯,第二乳臼歯の順に萌出するので,保護 者や一般歯科医にはわかりにくい.通常,乳歯咬合完成期(Hellman 歯齢ⅡA期)は平均2.5±0.35 歳である.したがって,少なくとも3歳ころには全ての乳歯は萌出していることになる.遅く とも4歳ころまでに乳歯の萌出遅延の診断ができるようになると,その後の治療の困難性や後 継永久歯への影響を最小限にすることができるのではないかと推察する.
図1 図2
図3 図4
図5
図7
図6
図8
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Ameloblastic fibrodentinoma
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図11 図12 図10 図9
5y7m 5y11m
7y0m
図13 図14
図15 図16
緒言
成長発育期の小児においては,歯の萌出遅延に遭遇す る機会が多い.しかし,乳歯の萌出遅延の頻度は非常に 少ないと言われている1〜4)が,乳歯の萌出遅延の状態が 長期に続くと,隣接歯や対合歯に問題を生じるだけでな く,舌突出癖や異常嚥下癖などの口腔習癖を招き口腔機 能面でも問題を生じる場合があるので歯の萌出遅延を早 期に発見し,早期に治療を行うことは重要である.萌出 遅延の局所的原因は,過剰歯,腫瘍,嚢胞などが様々あ るが,そのまま放置しておくと乳歯自体が埋伏し摘出し なければならなくなったり,その後継永久歯も埋伏する 場合もある.
乳歯は下顎乳中切歯,上顎乳中切歯,上顎乳側切歯,
下顎乳側切歯,上顎第一乳臼歯,下顎第一乳臼歯,上顎 乳犬歯,下顎乳犬歯,下顎第二乳臼歯,上顎第二乳臼歯 の順に萌出してくる(図1)5).乳前歯,乳臼歯の順で萌 出してこないために保護者も一般歯科医も萌出順番に混 乱を来たしやすいため萌出遅延の診断が遅れる場合が多 い.特に乳歯列期から,乳歯が萌出遅延を来たすと長期
に乳歯の萌出スペースに空隙を生じ舌突出癖や異常嚥下 癖などの口腔機能面でも問題を誘発しやすいばかりでな く,後継永久歯の萌出障害をも二次的に誘発することに なる.また,第二乳臼歯が萌出遅延を生じ,発見が遅れ ると,その後方の第一大臼歯が近心傾斜し萌出し,第一 大臼歯の初期咬合に障害を生じてしまうことになる.
乳歯の萌出遅延はその後継永久歯の萌出遅延や,その 後方にある第一大臼歯の萌出方向の異常をも誘発する観 点からも早期に発見し治療を行わねばならないことは言 うまでもない.
そこで,今回は乳歯の萌出遅延した症例に対する対応 について報告する.
小児への歯科用コーンビームCT撮影時の対応 乳歯の萌出遅延を診断するにあたり,萌出遅延の原因 となる病巣と,乳歯,永久歯歯胚が重なるため,二次 元的エックス線写真だけでは診断が困難となる.歯科用 コーンビームCTが開発される以前は,パノラマエック ス線写真,咬合法エックス線写真,口内法デンタルエッ クス線写真,頭部エックス線規格写真などの二次元的な
図1 乳歯の萌出時期と萌出順序―日本小児歯科学会,1988―5)
図2 症例1 初診時(4歳10か月)の口腔内写真.
図3 症例1 初診時(4歳10か月)のパノラマエックス線写真.│ DE 間に透過像が認められるが,病巣は不明である.
図4 症例1 4歳11か月時の歯科用コーンビームCT像.類円形の嚢胞様のものの中に石灰化物が認められた.
図5 症例1 5歳7か月時 全身麻酔下治療で顎骨腫瘍摘出術を行った.摘出物は,Ameloblastic fi brodentinoma であった.
図6 症例1 病理所見.①Ameloblastic fi brodentinoma(エナメル上皮線維腫に相当する部位).病変は被膜様構造 を有する境界明瞭な結節状を呈していた,病変内は歯乳頭に類似した歯原性外胚葉性間葉組織成分が主体で あり,そこには索状あるいは胞巣状の周縁に柵状配列を伴った歯原性上皮成分の増殖が散在性に認められた.
②象牙質様組織形成部位.③象牙質硬組織の強拡大.②,③より一部に細管様構造を有した硬組織の形成や 象牙質粒に類似した構造がみられることから象牙質と考えられた.以上よりエナメル質の形成が明らかでは ないため,Ameloblastic fi brodentinomaと診断した.
図7 症例1 6歳0か月時 Ameloblastic fi brodentinomaを摘出後│ E は咬合平面方向に萌出してきた.しかし│ 5 は,
│ E の近心根の近心位にあるため今後経過を追っていく必要がある.
図8 症例2 初診時(4歳2か月時)の口腔内写真とデンタル型エックス線写真.│ C 萌出相当歯槽堤の頬側歯肉粘
膜に膨隆が認められる.デンタル型エックス線写真には,多数の石灰化物が認められる.
図9 症例2 4歳4か月時の歯科用コーンビームCT像.│ C 埋伏し,│ C の歯冠上部と│ 2 の歯冠を覆い,また│ D の 近心根部約1/2部までおよぶ集合性歯牙腫が認められ,その影響で│ 1 は捻転していた.
図10 症例2 4歳6か月時の全身麻酔下治療での歯牙腫摘出時の写真と摘出物.全身麻酔下治療下で集合性歯牙 腫を摘出した.集合性歯牙腫は│ C の歯頚部と結合していたため,│ C の摘出も行った.│ 2 の歯胚を歯牙腫 で覆っていた.
図11 症例2 4歳9か月時のパノラマエックス線写真.歯牙腫摘出後,│ 123 の歯胚は順調に歯胚を形成している.
図12 症例2 5歳4か月時の口腔内写真.歯牙腫摘出後,可撤保隙装置を装着し経過観察していたら, 1︱1 は捻 転を改善し萌出してきた.
図13 症例3 初診時(5歳7か月)の女児の口腔内写真. E ︳部の歯肉は硬く,粗造感があり,歯槽堤の発達が少ない.
図14 症例3 初診時(5歳7か月)のパノラマエックス線写真および歯科用コーンビームCT写真. E ︳遠心に
傾斜し,歯根が彎曲している.歯冠上部に低石灰化物を認める.
図15 症例3 全身麻酔下治療時(5歳11か月時)の口腔内写真. E ︳は遠心に傾斜していたので,意図的脱臼し
近心に起し,遠心側に再度傾斜しないようにサージセルⓇ を挿入した.また,開窓状態を保つためにスーパー
ボンドⓇ で矯正用ボタンを付与した.
図16 症例3 パノラマエックス線写真.(①5歳7か月時:初診時,②5歳11か月時:全身麻酔下治療後,③7 歳0か月時: E ︳は 6 ︳の萌出と伴に萌出してきた.)
エックス線写真を組み合わせて用いて診断を行ってきた が,診断の難しい症例も少なくなかった.小児において は,二次元的エックス線写真では,乳歯と永久歯歯胚が 位置的に重なり相互位置関係の診断が難しい場合が多 かった.また,低石灰化な病巣の場合,従来型の二次元 的エックス線写真では,単なる透過像として出現し病因 を究明できない場合もある.また,小児は動くものに対 して追視することが多いのでパノラマエックス線写真や 歯科用コーンビームCTの撮影を困難にしている.しか し,このような動く機械の写真撮影前に小児の顔の前で 紙を半筒状にしたものを動かし,その時顔を動かさない 練習を行ってから撮影に臨まさせると,独りでエックス 線室に入室し,エックス線の機械が動くことへのパニッ クを防御することができる.この練習の遊びを取り入れ 数回繰り返すことで小児は学習し歯科用コーンビーム CT撮影も低年齢の小児でも可能となる6).
症例1
4歳10か月の男児.下顎左側第二乳臼歯の萌出遅延 で来院した.下顎左側第二乳臼歯部は低位であること,
長期に萌出してこなかったため,左側乳臼歯部への舌 突出癖が認められた.また,対合歯の上顎左側第二乳 臼歯は挺出していた.下顎左側第一乳臼歯と第二乳臼歯 との間に間隙があった(図2)が,パノラマエックス線 写真では明らかな病巣が不明確であった(図3).通常 であれば,低年齢なので経過観察してしまうところで あった.しかし,歯科用コーンビームCTを撮影したと ころ,第一乳臼歯と第二乳臼歯間に境界明瞭の類円形の 病巣が認められた(図4).低年齢であり協力状態を得 ることが難しいこと,手術部位が乳歯列の左側下顎乳臼 歯部を切開しなければならないため全身麻酔下で摘出 を行った.摘出物は類円形の弾性を有していた(図5).
病理組織検査を行ったところ,エナメル上皮線維象牙質 腫(Ameobrastic fi brodentinoma)であった(図6).エ ナメル上皮線維象牙質腫摘出後左側下顎第二乳臼歯は咬 合位および第一乳臼歯遠心面方向に萌出してきた(図 7).歯科用コーンビームCTでは,パノラマエックス線 写真の断層域外のものや,Ameobrastic fi brodentinoma のような低石灰化な病変も検出できることが判明した.
Ameobrastic fi brodentinomaは,エ ナ メ ル 上 皮 線 維 腫
(Ameobrastic fi broma)の間葉成分の分化が進み象牙質 の形成を伴う良性腫瘍である.エナメル上皮線維腫とこ の腫瘍方の成熟段階が異なる一連の同系腫瘍とみなされ ているが,それぞれの報告が少ないためにこの概念はま だ確定的とはいえないと報告されている7).エックス線 的には,硬組織の形成量,石灰化の程度に応じて不透過 像が,単房性骨透過巣の内部に観察される.組織学的に
は,定型的なエナメル上皮線維腫の所見と,胞巣周囲間 質の硝子化が広範囲におよび類骨のようにみえる場合,
歯原上皮に直接骨様基質を未熟な異形成な象牙質と解釈 することから,エナメル上皮象牙質腫と呼ばれている.
特に若年時には,未石灰化の状態だった腫瘍が経過とと もに石灰化したことが報告されている8).よって,小児 期には特に病巣が低石灰化の状態のため診断が難しいと 思われる.小児のエックス線所見で霊長空隙や発育空隙 以外の歯列に空隙があり歯の萌出障害をきたしている場 合には,歯科用コーンビームCTで精査を行うことを推 奨する.本症例では,下顎左側第二小臼歯歯胚は,下顎 左側第二乳臼歯の歯根の分岐部になく,第二乳臼歯の歯 根の近心位にあるため,今後第二小臼歯の萌出誘導を 行っていく必要がある.
症例2
4歳2か月の男児.左側下顎乳犬歯が萌出してこない ため精査のため当科を受診した.下顎左側乳犬歯部への 舌突出癖が認められた.保護者は,左側下顎乳犬歯相当 部には膨隆していたため,そのうち萌出してくると思っ ていた.しかし,4歳になっても下顎左側乳犬歯が萌出 してこないため近医でデンタル型エックス線写真を撮影 したところ,同部位下石灰化物が認められたため来院し
た(図8).初診時は協力状態が得られないため,デン
タル型エックス線写真撮影を行った.石灰化物の範囲が 広範囲に及ぶこと,隣在する左側中切歯,側切歯,犬 歯に影響を及ぼしている可能性が高いため歯科用コーン ビームCT撮影で精査する必要と思われた.しかし,号 泣し歯科用コーンビームCTの撮影は著しく困難であっ たため,診療室でコーンビームCTのエックス線管が回 転するシミュレーションを半筒状の紙で時計周り,半 時計周りで回転させる練習をして,家でも遊びながら練 習してもらい,2か月後撮影をすることができるように なった.歯科用コーンビームCT検査において乳犬歯は 埋伏し,下顎左側乳犬歯と側切歯,第一乳臼歯の歯根 1/2におよぶ集合性歯牙腫が認められた.また,集合性 歯牙腫のために下顎左側中切歯は捻転していた(図9).
4歳と低年齢であること,術野が大きいことにより全身 麻酔下で顎骨腫瘍摘出術を行うこととした.術前のプラ ンとしては,集合性歯牙腫の摘出を行い,乳犬歯を保存 し,牽引誘導する予定であった.しかし,集合性歯牙腫 は,乳犬歯の歯頚部から発症していたため,乳犬歯も同 時に摘出することとした(図10).摘出した集合性歯牙 腫は,乳犬歯の歯頚部から発症し大小20数個付着して
いた(図10).集合性歯牙腫は下顎左側側切歯の歯冠を
覆っていたが剥離可能であったため,側切歯は保存し経 過観察することにした.4歳9か月(術後3か月)時,
パノラマエックス線写真所見において左側中切歯捻転の 若干改善しており,側切歯,犬歯の歯胚は順調に形成し ている(図11).術後乳犬歯を摘出したため可撤保隙装 置を装着し経過観察している(図12).下顎両側中切歯 は,5歳4か月で通常より若干早く萌出してきているが 捻転もほぼ改善されている.また,下顎左側乳犬歯部に 可撤保隙装置を装着したことで,舌突出癖も改善された.
通常下顎乳犬歯の萌出時期は男子で1歳7か月ころで ある5).乳犬歯より先に第一乳臼歯が萌出するためにそ の時期から保護者は乳犬歯が後から萌出してくるから様 子を見ればそのうち萌出してくるだろうと考えてしまっ た.また,近医でも,1,2歳の低年齢ではあえてエッ クス線写真撮影までして検査するより経過観察をしてし まうことが多いと思われる.このように,保護者側から も歯科医側からも乳歯の萌出遅延の発見を遅らせてしま う要因があると推察される.
症例3
5歳7か月の女児.下顎右側第二乳臼歯の萌出遅延を 主訴に来院した.初診時の口腔内所見において,下顎右 側第二乳臼歯部の歯槽骨の発達は認められず,歯肉は粗 造で硬く,線維化していた(図13).パノラマエックス 線写真撮影したところ,下顎右側第二乳臼歯は遠心に 傾斜し歯根は彎曲しているように見え,第一大臼歯の歯 胚より低位にあった.また,図13に示すように対合歯 の上顎右側第二乳臼歯は挺出していた.精査を行うため 歯科用コーンビームCTを撮影したところ,第二乳臼歯 上部に類円形の石灰化物を含む腫瘍性病変が認められ
た(図14).低年齢であること,術部が臼歯部後方で深
いことにより,全身麻酔下で顎骨腫瘍摘出術を行った.
摘出物の病理組織検査を行ったところ,歯冠周囲過誤 腫9)であった.以前も報告したように10,11),歯冠周囲過 誤腫で萌出遅延をきたしている場合,歯冠周囲過誤腫摘 出術を行うのみでは,埋伏している歯が歯根形成し萌出 するスピードより創傷部位を治癒する過程のスピードの 方が速く再度線維性の結合組織で覆われてしまい萌出遅 延が改善されず,再度開窓術を行わねばならないことが 多かったが,歯冠周囲過誤腫摘出後その歯冠上部にスー パーボンドで矯正用のボタンを付与することで開窓状態 を保つことができ萌出誘導することができる.そこで,
今回も,下顎右側第二乳臼歯は遠心に傾斜し,歯根もほ ぼ完成している状態だったので意図的脱臼を行い,再度 第二乳臼歯が遠心傾斜しないように遠心部にサージセ ルⓇ を挿入し歯軸を起こし,歯冠周囲過誤腫摘出後,スー パーボンドⓇ で矯正用のボタンを付与し経過観察を行っ た(図 15,16).その後,下顎右側第一大臼歯の萌出と ともに,第二乳臼歯は近心に傾斜しながら萌出してきた.
通常,下顎第二乳臼歯は2歳ころに萌出してくる5).し かし,今回萌出遅延が発見診断されたのが5歳7か月と かなり遅かった.両親も子どもが生まれてから乳歯が萌 出し始めた時は比較的歯の萌出を気にしていたが,第二 乳臼歯のころになるとあまり気にしなくなってきていた という.保育園の歯の健康診査でも指摘されることがな く,歯科を受診することがなかったので萌出遅延の発見 が遅れたという経緯があった.乳幼児において,幼稚園,
保育園の歯科健康診査で歯の萌出のスクリーニングでき ればこのような不幸が少しでも減少させることができる のではないかと思われる.また,長期に下顎右側第二乳 臼歯が萌出遅延したために臼歯側方部への舌突出癖が認 められたが,下顎右側第二乳臼歯が萌出後改善された.
まとめ
乳歯の萌出遅延を発症すると,まず,対合歯の挺出な どの咬合異常や舌突出癖などの口腔習癖を招き,後継永 久歯の萌出遅延も二次的に発症する.萌出遅延の発見が 遅れれば遅れるほど,習癖除去が難しくなり,その習癖 により原因除去し萌出誘導しようと思っても舌突出癖な ど萌出遅延部位への舌の圧入により,萌出が困難になる 症例も多い.萌出遅延の原因除去と舌の筋機能訓練を併 せて行わなければならない.よって,萌出遅延により習 癖が出現する前に乳歯の萌出遅延を発見できるようにす るとよい.早期に発見できれば,乳歯の歯根形成途上な ので,元々ある乳歯の萌出力を利用し萌出誘導が可能と なる.そのためには,それぞれの乳歯の平均的萌出時期 を覚えておくことがよいが,小児歯科専門でない歯科医 の場合,なかなか,乳歯の歯の萌出時期をイメージする のは難しいと思われる.通常乳歯咬合完成期(Hellman の歯齢ⅡA期)になるのは,2.5±0.35歳である.したがっ て,3歳ころには,全ての乳歯が萌出していることにな る.また,歯科用コーンビームCTの撮影の協力状態を 得られ適確な診断を行うことができる時期,手術による 後継永久歯への影響を考慮し前歯部の歯胚が歯冠完成し ている時期などを考慮すると,遅くとも4歳ころに乳歯 の萌出遅延の原因を発見できれば早期に治療ができ,比 較的簡単な方法で治療できるのではないかと考える.今 後,さらに乳歯の萌出遅延症例を重ねていくことで,乳 歯萌出遅延早期発見のためのスクリーニング法を確立す ることが重要であると思われる.
謝辞
稿を終えるにあたり,病理組織検査・診断に関して貴 重なご助言をいただいた昭和大学歯学部口腔病理学教室 立川哲彦元教授,入江太朗講師に深謝申し上げます.
文 献
1)大塚由美子,小杉誠司,冨沢美恵子,野田 忠,米 持浩子,朔 敬:下顎左側第二乳臼歯萌出遅延の2 例.小児歯誌,36: 165 172, 1998
2)千田隆一,千葉桂子,斉藤 竣,真柳秀昭:後継永久 歯胚の位置異常による第二乳臼歯埋伏の1例.小児 歯誌,26: 621 630, 1982
3)片尾秀信,峰正 博,大東道治,稗田豊冶,伊賀成 知,岡野博郎:3歳女児に見られたAmeloburastic fibromaの1例.小児歯誌,20: 534 539, 1982 4)柳井みず紀,田代知帆子,島田幸恵,井上美津子,
入江太朗,立川哲彦:埋伏した下顎右側第二乳臼歯 を萌出誘導した1例.小児歯誌,49: 52 59, 2011 5)日本小児歯科学会:日本人小児における乳歯・永久
歯の萌出時期に関する調査研究.小児歯誌,26: 1 18, 1988
6)島田幸恵:萌出障害にたいする二次元的エックス線 診断の限界.小児歯科臨床,16: 43 49, 2011
7)二階宏昌:組織診断アトラス 顎口腔の病変.杏林書 院,東京,1997, pp 28 30
8) Slootweg PJ: An analysis of the interrelationship of the mixed odontogenic tumors-ameloblastic fibroma, ameloblastic fibro-odontoma, and the odontomas. Oral Surg Oral Med Oral Pathol, 51: 266 276, 1981
9) Yonemochi H, Noda T, Saku T: Pericoronal hamarto- matous lesions in the opececula of teeth delayed in er uption: an immunohistochemical study of the extracellular matrix. Oral Pathol Med, 27: 441 452, 1998
10)島田幸恵:歯冠周囲過誤腫による萌出遅延の治療.
昭和歯誌, 26: 363 641, 2006
11)島田幸恵:外科的咬合誘導.小児歯科臨床,14: 49 58, 2009