卒業論文/制作説明書見本
soraME: 顔として検出された自然素材の写真を切り抜き・積層すること
で顔を空目させる仕組み
5117E016-7 鈴木 敦也 指導教員 橋田 朋子 教授
SUZUKI Atsuya Prof. HASHIDA Tomoko
概要: 本研究では顔認識を雲などの自然素材に適用することで顔らしい要素を持った単一素材の写真を集め,それらを積層 させることにより顔の特徴を強調してより顔に見える自然素材を再構成する仕組みを考案した.またこれをインタラクティブに 体験する装置として,写真群をアクリルに印刷することで鑑賞者の抜き差しにより複数重ねた状態と個別の状態を選択的に鑑賞 できる仕組みを実現した.
キーワード:誤認識,顔検出,パレイドリア,情報提示,空目
1.
は じ め に
人が無秩序な模様を見たときに,そこにはな いはずの物の形や人の顔などを空目してしまう ことがある.また,子供が雲の形を動物や乗り物 に見立てて遊ぶように,人間は模様の中に意識的 に意味を見出し想像して楽しむこともできる.こ のような空目はパレイドリア現象とも呼ばれ,昔 から様々な場所で親しまれてきた.一方で,機械 の顔認識を無秩序な模様などに対して適用する と,顔に似た明暗パターンの模様が顔として検出 されてしまうことがある.この現象を用いること で自然物の中に存在する模様の中から人間にと っても顔に空目しうる画像を自動的に発見・収集 できる点に筆者らは注目した.ただし自然物の中 に誰もが顔に空目するような顔らしさを持った 模様が偶然現れる事は稀であり,目らしいものは あるが口が無い模様や,輪郭はあるが目や口が見 えない模様というように,不十分なものばかり検 出される場合も多い.このような点から、筆者ら は雲などの自然界に存在する模様を用いてより 確実に顔を空目してしまう仕組みが実現できる と考えた.そこで本研究では,自然素材として雲 を用い,顔検出により収集された雲の画像群を平 均合成することで,より顔らしい画像を生成する 手法を提案する.本稿では以下,システム構成と アルゴリズム,本システムで作成された画像をよ り効果的に鑑賞するための装置について詳しく 説明する.さらに,本システムで作成された画像 を人間が見たときに顔らしいと感じるかどうか を検証した実験の結果についても報告する.
2. シ ステ ム概 要
本システムは,空の写真を入力とし指定された 合成枚数で顔検出された切り抜きを平均合成し た画像を出力するシステムである.システムの概 要図を図1に示す,本システムのおおまかな処理 の流れは次の通りである.まずユーザーが空の写 真を収集し,システムに入力として与える.入力 された各写真は顔検出が行われ,顔として検出さ れた画像の切り抜きは集められて保存される.保
存された画像の中から任意の枚数切り抜きを選 択し,サイズを統一調整してから平均合成を行う.
顔検出には,Haar-like特徴を用い,分類器には openCVから提供されている正面顏検出用の分類 器を用いた.Haar-like特徴とはある局所矩形領 域内の明度勾配の強度を示す特徴で,この局所的 な特徴を複数組み合わせることで顔認識が行わ れる.このような顔認識手法は,絶対的な明度さ に依存しないため照明の明るさや光の方向など の影響に対し頑健である利点がある一方で,顔に よく似た非顔パターンに対する誤検出が比較的 多いことや,検出できる顔が特定の方向の顔のみ に限定されてしまうという欠点が挙げられると 言われている.また本システムでは顔検出を行っ たのちに左右の眼と口の検出も行い,検出されな かった画像を省く処理を行っている.
システムが問題なく動作していることを確認す るために実際にシステムを実行し確認を行った.
入力となる空の写真には,インターネット上の画 像検索を用いて集められた,空と雲以外の物体の 写り込みの無い19枚の空の画像を用いた.それ らの写真の中から,顔検出により36枚の切り抜 きが作成され、この中から無作為に1枚,3枚,
7枚,13枚,25枚を取り出して平均合成を行 った結果の例を図2に示す.
図1 システム概要図
2
図2 出力結果の例
3.
評 価 実 験
切り抜きの平均合成を行うことが顔らしさの 変化に影響を与えているかどうか,また平均合成 の枚数の変化が見え方にどのような影響を与え ているかを調査するための実験を行った.
実験はサーストンの一対比較法を用いた心理 測定実験による顔らしさの尺度値の算出を行っ た.被験者には合成枚数が異なる2枚の画像を提 示しどちらがより顔らしく見えるかを回答させ,
得られた結果から画像の「顔らしさ」の順序尺度 値を求めた.合成枚数の水準は1枚,3枚,7枚,
13枚,25枚の5水準とし,画像の個体差の影 響を考慮し各水準につき4種類ずつ,計20個の 実験刺激を作成した.画像の合成に用いた切り抜 きは,今回顔検出で収集された計36個の切り抜 きのうち,組み合わせの異なる3枚,7枚,13 枚,25枚の切り抜きを無作為に選出したものを 用いた.被験者は20代の男女5名,実験は適度 な明るさの室内で行った.
各質問での選択率を各水準ごとに平均し,尺度 値を算出した.各合成枚数の尺度値の関係は図3 に示す通りになった.合成されていない切り抜き よりも平均合成された画像の方が顔らしく感じ ると回答した被験者が多く,また合成層数が増え るに従って顔らしさが増すように感じていた被 験者が多かったことが伺える.
図3 合成枚数と顔らしさの尺度値の関係
4.
ア プ リ ケ ー シ ョ ン
以上では本システムの入出力はディスプレイ 上の画像として扱ってきたが,本研究ではさらに,
段階的な空目度合いの変化をタンジブルに手に とって調節可能にするための装置を作成した.透 過する紙に切り抜きを印刷し,それらを重ねた上 で透かして鑑賞することで,平均合成に近い効果 が得られることに注目し,以下のようなシステム を作成した.
切り抜きをそれぞれ
OHP用紙に印刷する.そ れらを奥行き方向へ等間隔に配置可能な台座を 作成し並べる.切り抜き同士の間隔は
6mmとし た.さらに,透かして鑑賞するために必要な照明 としてパワーLED を用意し,光を拡散させるた めのトレーシングペーパーで照明部分を覆い,切 り抜きの列の背後に配置する.
本装置を用いて
13枚重ねた状態と,そこから 7枚の切り抜きを抜き取った状態を図4に示す.
本装置を数名の体験者に体験してもらったとこ ろ,「何枚取り除いたら顔に見えなくなるか」と 話し合いながら出し入れしている様子が見受け られた.
図4 タンジブルに顔らしさの変化を 調節可能な鑑賞装置
5.
ま と め と 今 後 の 展 望
本稿では,入力した空の画像に対して,顔検出 を行い,検出された切り抜きの平均合成を行うこ とで,明瞭度が可変な形で顔を空目させる仕組み を提案した.機械によって顔として誤認識された 雲が,人間にとっても顔のように見えるかどうか が不確実であることを課題として挙げ,その解決 のために確度のグラデーションを持たせた状態 で顔らしさを増加させる仕組みを作ることを目 指した.具体的には,それぞれの雲を平均合成す ることにより顔らしさを向上させるという手法 を実施した.本システムの妥当性を評価するため に,一対比較法を用いた心理測定実験を行い,顔 らしさの尺度値を算出したところ,合成枚数が多 くなるにつれて顔らしさの尺度値が向上する結 果が確認された.本システムの提示手法として,
手にとって明瞭度の段階変化を行える鑑賞装置 を作成した.
今後の展望としては,ハイスピードディスプレ イを用いて、顔検出で得られた切り抜きを高速に 切り替え表示することで,肉眼では顔に見えるが 撮影時には雲に見える,という選択的な情報提示 手法を検討している.また,方向が一定に決めら れた物体の検出器であれば,顔以外にも様々な模 様を空目させることが可能であると考えられる.
参 考 文 献
[1] 文:原倫太郎, 絵:原游, 訳:翻訳ソフト, “背面ストラ イプの 浦島太郎 日本昔話 Remix2”.
http://www.hfj-ami.jp/remix/urashima.html , (参照 2017-12-20).
[2] Shinseungback Kimyonghun: “Cloud Face”.
http://ssbkyh.com/works/cloud_face/ , (参照 2017-12-20)