東レポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムトレリナ®
トレリナ®は、東レ㈱が開発した世界で唯一のポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムです。その優れた耐熱性、難燃性、
耐薬品性、電気特性により、工業分野において幅広く使用されています。
トレリナ®は他のフィルムに比べて次のような特性を有しています。
1.耐熱性・耐寒性 2.難燃性
3.耐薬品性 4.耐加水分解性 5.電気特性 6.クリープ特性
PPSは下図のように、ベンゼン環とイオウ原子の単純な繰り返しからなるポリマで、その存在は、FriedelとCraftsの研究などに より、19世紀の終わり頃には既に知られていました。
しかし、工業材料としてのPPSの歴史は比較的新しく、1940年代から50年代にかけていくつかの工業化の試みが失敗した後、
1967年にPhillips Petroleum社のEdmondsとHillが、パラジクロルベンゼンと硫化ソーダから合成する方法を発明したのが始ま りとされています。
Phillips Petroleum社は1972年に、この技術に基づきPPSの商業生産を開始しています。商標名を“Ryton®”と名づけられたこ の樹脂は、耐熱性、難燃性、耐薬品性、電気特性など数々の特長をバランスよく備えており、射出成形の分野で、近年最も成 長性の高い耐熱樹脂として知られています。
長期耐熱性
下図は、トレリナ®を種々の温度で強制エージングし、引張強さ、引張伸びおよび絶縁破壊強度が、各々初期の値の1/2に なるまでの時間と温度の関係をアレニウスプロットしたものです。この図から、トレリナ®を高温で長時間連続使用した場合の 耐久性を予測することができます。
トレリナ®の各種特性の半減期と温度の関係
長期耐熱温度
トレリナ®の長期耐熱温度260 240 220 200 180 160 140 10
510
410
310
2トレリナ® 絶縁破壊強度
トレリナ® 引張強さ
トレリナ® 引張伸び
ポリエステル フィルム
“ルミラー®X10”
引張伸び
規格・基準 最小厚み(µm) 使用温度の上限値(℃)
米国 国内
UL746B 電取法*)技術基準の材料登録
9 9(H13/4月取得)
(160) 155
160 170
200 180
※)電気用品取締法
伸度 強度 電気
特性の 半減期 ( 時間)
温度 (℃)
短時間耐熱性
トレリナ®は、秒~数時間の短時間なら、前記の長期耐熱温度よリさらに高温に耐えることができます。
下の表にトレリナ®を230℃および260℃で1時間加熱した時の機械特性の変化を示します。
この条件下では、特性の劣化はほとんどないことが判ります。
トレリナ®の高温短時間耐熱性
トレリナ®は、自己消火性を有しており、25µm以上の厚みにおいては、UL94規格のVTM-0グレードに認定されています。
http://www.ul.com
フィルム厚み(µm) 物性 熱処理条件
熱処理なし 230℃ 1時間 260℃ 1時間
12
25
75
引張強さ 引張伸び
絶縁破壊強度(kV/mm,AC) 引張強さ
引張伸び
絶縁破壊強度(kV/mm,AC) 引張強さ
引張伸び
絶縁破壊強度(kV/mm,AC) 破断強度、伸度:ASTM D 882-64T、フィルム長手方向を測定
絶縁破壊強度:JIS C-2151
250 67 213 250 73 247 250 72 165
220 71 213 220 68 239 220 63 166
200 87 228 170 72 264 210 79 163
耐薬品性
トレリナ®は、極めて耐薬品性に優れたフィルムです。
下の表に、トレリナ®およびポリエステルフィルムの薬品中での引張強さの変化を示します。トレリナ®は、濃硫酸および 濃硝酸を除くほとんどの薬品に対して安定で、ポリイミド、ポリエステルにおける強アルカリ、アラミドにおける酸のような 目立った弱点を持たないのが特長です。
各種フィルムの薬品中での引張強さの変化(30℃、10日間)
薬品名 濃度(%)
トレリナ® ポリエステルフィルム 25μm 25μm
強度保持率(%) 判定 強度保持率(%) 判定 濃硫酸
希硫酸 濃塩酸 濃硝酸 希硝酸 氷酢酸
水酸化ナトリウム水溶液 濃アンモニア水 炭酸ナトリウム水溶液 塩化第二鉄水溶液 過酸化水素水 メタノール エタノール アセトン 四塩化炭素 ベンゼン トルエン
メチル・エチル・ケトン n-ヘキサン 塩化メチレン
- 30
- - 10
- 10
- 2 45 30 - - - - - - - - -
11 96 100 0 97 100 94 100 98 94 80 98 100 99 94 100 98 90 98 96
不可 優 優 不可
優 優 優 優 優 優 良 優 優 優 優 優 優 良 優 優
0 92 85 0 92 90 47 0 - - - - - 94 91 90 - - - -
不可 優 良 不可
優 良 不可 不可 - - - - - 優 優 良 - - - -
耐ガソホール
トレリナ®は、ガソリンなどの燃料油に対しても優れた耐久性を示しますが、最近ガソリンの代替燃料として注目されている ガソホール(ガソリンとアルコールの混含物)に対しても、下の表に示すように優れた耐久性を示します。特に、ポリエステル フィルムの弱点であるアミン含有系に対しても、高い耐久性を有するのが特長です。
耐ガソホール性
耐フレオン性
トレリナ®は、下の表に示すように、エアコンなどで冷媒として多用されているフレオンに対しても、
十分な耐久性を有していると同時に抽出物量も非常にわずかです。
1.試験条件 (1)トレリナ®:250µm (2)フレオン:R134a (3)温度:170℃(気相)
(4)圧力:3.4~3.5MPa
2.試験結果
トレリナ®の耐フレオン性
ガソホール
トレリナ® ルミラー® S10 25μm 25μm
引張強さ保持率(%) 引張伸び保持率(%) 引張強さ保持率(%) 引張伸び保持率(%) FUEL-C
イソオクタン50%/トルエン50%
FUEL-C85%/メタノール15%
FUEL-C80%/エタノール20%
FUEL-C/ラウリルパーオキサイド2.5%
FUEL-C/トリエタノールアミン 0.5%/ジオクチルフタレート0.2%
試験条件:60℃、500時間
87 80 82 81 81
80 78 75 70 75
95 85 75 70 75
90 78 85 85 35
トレリナ® (250μm)
PET フィルム (250μm)
PEN フィルム (250μm) 備考 ) 破断強度及び伸度の保持率 保持率 (%)= エージング後の値 / 初期値 ×100
強さ保持率 (%) 伸び保持率 (%) 強さ保持率 (%) 伸び保持率 (%) 強さ保持率 (%) 伸び保持率 (%)
フィルム 物性項目 500 時間後
耐加水分解性
ポリフェニレンサルファイドは事実上、加水分解性を全く示さないポリマであり、従ってトレリナ®も、耐加水分解性に極めて優れた フィルムです。下図に各種フィルムの155℃の飽和水蒸気中での引張伸びの低下の様子を示します。絶乾状態ではトレリナ®よりも 優れた耐熱性を示すポリイミドフィルムも、水蒸気中ではトレリナ®よりもはるかに速く劣化が進むことが判ります。
各種フィルムの耐加水分解性
(155℃、飽和水蒸気中での引張伸びの劣化)
クリープ性
トレリナ®のクリープ特性をポリエステルフィルムと比較して、下図に示します。
トレリナ®には長時間応力を加え続けても、他のフィルムに比べて寸法変化が少ないという特長があります。
トレリナ®のクリープ特性
100
50
トレリナ® 50μm
ポリイミドフィルム 50μm
ポリエステルフィルム 50μm
155℃ / 飽和蒸気
2.6-PEN 50μm
0 1 2 3 4 5 エージング日数 (日)
引張伸び保持率%
( )
4
3
2
1
トレリナ® 25μm 40MPa
トレリナ® 25μm 20MPa ポリエステルフィルム 25μm 40MPa
0 1 10 100 時 間 (日)
伸 び
%
( )
温度依存性
(1) 誘電率トレリナ®の誘電率は、3.0と中程度の大きさですが、温度、周波数の変化に対して、非常に安定しているのが大きな特長です。
トレリナ®の誘電率の温度依存性
(2)誘電正接
トレリナ®の誘電正接は、誘電率の割に極めて小さく、ポリプロピレンに近い特性が得られます。120℃以下の温度領域では、
温度、周波数の変化に対して安定です。
トレリナ®の誘電正接の温度依存性
50 100 150 200 3.5
3.4
3.3
3.2
3.1
3.0
2.9
ポリエステルフィルム ルミラー® S10(25μm)1kHz
トレリナ® (25μm)1kHz
トレリナ® (25μm)100kHz
温度 (℃)
誘電率
1.5
1.0
0.5
ポリエステルフィルム ルミラー® S10(25μm)1kHz
トレリナ® (25μm)1kHz トレリナ® (25μm)100kHz
50 100 150 200 温度 (℃)
誘電正接
(tanδ)
(×10-2)
周波数特性
(1)誘電率トレリナ®の誘電率の周波数依存性
(2)誘電正接
トレリナ®の誘電正接の周波数依存性
ポリエステルフィルム ルミラー® S10(25μm)1kHz
トレリナ® (25μm)
3.3
3.2
3.1
3.0
2.9
周波数 (Hz)
誘電率
10
210
310
410
510
610
7 25℃25℃
150℃
100℃
120℃
周波数 (Hz)
10
210
310
410
510
610
71.5
1.0
0.5
ポリエステルフィルム ルミラー®S10(25μm)1kHz
トレリナ® (25μm)
誘電正接
(tanδ)
(×10
-2)
120℃
100℃
25℃
トレリナ®の代表的な用途と特性
トレリナ®のタイプ及びグレード
タイプ3×00、3000、3030及び5000はUL認定品です。
●燃焼性:25μm以上、UL94、VTM-0(自己消火性)
●長期耐熱温度指数:UL746B 機械的特性160℃ 電気的特性200℃
トレリナ®には通常のプラスチックフィルムと同様下記の通り各種加工ができます。
印刷、コーティング、ラミネート、真空蒸着、マット加工、成型加工、スリット加工、コロナ処理(易接着化)、アニ-ル処理(低熱収化)
コンデンサー関連 フィルムコンデンサ誘電体 バリアブルコンデンサ誘電体 アルミ電解コンデンサ樹脂ケース用 アルミ電解コンデンサ素子止めテープ 電気絶縁関連
モーター ・ トランス用電気絶縁 リチウムイオン 2 次電池絶縁 電子部品関連
回路基盤用途
セラミックグリーンシート離型 OA 機器関連
LBP トナーアジデータ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○絶縁性
○絶縁性
○
○
○打抜特性
○
○
耐熱性 難燃性 電気特性 耐薬品性 吸湿 ・ 耐加水分解性 クリープ特性 その他
タイプ 適用厚み(µm) 標準厚み(µm) 備考 項目
1X00 1X30 3X00 3000 3030 5000
6 以下 6 以下 9 ~ 25 9 ~ 100 9 ~ 100 125 ~ 350
1.2,1.5,2,2.5,3.5,4,6 1.2,1.5,2,2.5,3.5,4,6 9,12,16,25
9,12,16,25,38,50,75,100 9,12,16,25,38,50,75,100 125,175,250,300,350
- 内面コロナ処理タイプ
- - 内面コロナ処理タイプ
-
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