ICLS コース資料 G2010(第1版)
目次
1.はじめに 2
2.ICLSを学ぶためのポイント 2
3.ICLSコースで扱う4つの心電図波形(心肺停止状態の心電図) 5
4.BLS 6
5. プライマリーサーベイとセカンダリーサーベイ 11
6.ショックについて 13
7.気道管理 16
8.モニター・除細動(補足) 20
9.致死的心電図に対するアルゴリズムにおける重要点 24 10.無脈性電気活動(Pulseless Electrical Activity )= PEA 25
11.
Asystole(エイシストリー) 28
12.ICLSコースで使用する薬剤 28
13.チーム医療について 31
14.蘇生後の治療 32
15. エアウェイについて 33
16. 重症傷病者の認識と心肺蘇生 34
17. リズムチェックとパルスチェック 37
【注】本文中では『ガイドライン 2010』を『G2010』と省略します。
1.はじめに
心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン 2010(以下 G2010)が 2010 年 10 月に公表されました。これまで もいくつかの学会などがトレーニングサイトを開設し、アメリカ心臓協会(AHA)のコースに準拠したBLS1日、ACLS2日 の講習会を開催してきました。また日本救急医学会では1日で BLS、ACLS の要素を取り入れた基礎コースとして ICLS コースを各地で開催しています。
日本救急医学会認定ICLSコースは心停止の最初の 10 分間における対処法を身につけることを目的としています。
ICLSコースの目的は個人として心肺蘇生の知識、手技を学ぶだけではなく、『チーム医療としての心肺蘇生』のありか たを学習し、現場で 『リーダー』として適切な治療の指揮をとる能力も身につけてもらうことです。また
『チーム医療』のトレーニングとしても学んで頂ければと思います。
当日は講義形式のプログラムはほとんどなく、実技(スキル)が中心となります。1日間の講習で広範な内容を扱いま すので充分な事前学習が必要です。この資料は AHA のガイドライン 2010、プロバイダーマニュアル、日本救急医療 財団による救急蘇生法の指針をまとめ作成したものです。蘇生に関する基本的な知識と ICLS コースで必要な項目を 記載しました。受講までに目を通してください。
【注意】従来『心臓マッサージ』という用語は現在『胸骨圧迫』といいます。コースでは原則として胸骨圧迫という言い方 をします。(つい『心マ』といっても悪いということではありませんので心配しないでください) 一次救命処置を B LS (Basic Life Support)・プライマリーサーベイ、二次救命処置をセカンダリーサーベイと呼びます。
2.ICLS を学ぶためのポイント
この分厚い資料に『おののいて』いる受講生の方も いらっしゃるかもしれません。しかし、ICLS をこれから学ぶにあた って重要な項目はそれほど多くありま せん。以下に 学習にあたって、いくつかポイント示しま す。この点を十分理解 して今後このテキストを 読んでください。
1)BLSの重要性
心肺蘇生においては病院で行う高度の治療(二次救命処置)より もBLS の方がはるかに重要な予後決定因子 です。速やかで質の高い BLS なくして救命(さらには社会復帰)はありません。
このことはガイドラインが更新されてもかわりません。それどころかますます BLS の重要性が強調されています。
上のグラフ で わかるように、心肺停止状態になった場合には 『早期のCPR』 と 『早期の除細動』が重要です。そし て、CPR の手技は『確実』である必要があります。そのBLS の手技のなかでも重要なのが『絶え間ない胸
0 5 10 15 20
20 40 60
0
倒れてから除細動までの時間(分)
生 存 退 院 率 (% )
5分
10分
15分
グラフ中の時間は倒れてから CPR開始までの時間1分
成人(8歳以上)の BLS では
『まず通報』 『CPR』 『ショック』
の順になります。
迅速な CPR、迅速な除細動により救命率が改善します。迅速かつ確実な BLS なくして救命はありえません。
不十分なBLS後にどれだけ高度な二次救命処置を行っても救命率は改善しないことがわかっています。
『質の高い BLS』を心がけてください。
2)一次救命処置と二次救命処置
BLS を『プライマリー サーベイ』、二次救命処置を『セカンダリー サーベイ』とも呼びます。
『プライマリー サーベイ』 と 『セカンダリー サーベイ』 はそれぞれ 『 A 』 『 B 』 『 C 』 『 D 』からなり、記憶 し易い構成となっています。
ただし、『プライマリーサーベイ』も『セカンダリーサーベイ』も ABCD という順で順序よく行うわけではありません。
『プライマリーサーベイ』では CABD という順で実施します。これは胸骨圧迫をとにかく早く開始することが 傷病者の予後を改善するために最も重要であることが明らかになったからです。
『セカンダリーサーベイ』では A(気道確保)は用手的に行うことができれば気管挿管などの高度な気道確保は急いで 行う必要はなく、BVM で換気しながら C(胸骨圧迫・ライン確保・薬剤投与。ショック)や D(情報収集・原因検索・鑑別 診断・特異的な治療)などを行うことが重要です。つまり B、C、D を同時並行して行いつつ、必要があれば A を行うと 理解して下さい。
【注】LMA とはラリンジアルマスクの略です
3)除細動できるかどうか (その心電図波形にはショックの適応があるの?)
心肺蘇生中に心電図モニターが使用可能な場合には『その心電図波形』が除細動可能な波形 かどうかを判断することが重要です。もし、除細動可能な波形ならば、ショックをかけることが最良 の治療となるからです。ですから、心電図をみたら『除細動の適応か?』という点に常に注意して 治療を進めてください。
すなわち心肺停止状態では
という2つのグループに分かれます。ただし、これらの波形は治療中に相互に変化することもあります。
(たとえば VF ショック PEAなど。 いつもオーガナイズドリズムになってくれる保証はありません。)
ただ、重要なことは波形ではなく、とにかく質の高いCPRを行い、その上で波形によってショックをかけたり、アドレナリン を静注したり、原疾患に有効な治療を行ったりするのであると考えて下さい。
質の高いCPRを!! 早く・深い胸骨圧迫を!! 胸骨圧迫中断は10秒以内に!!
これを肝に銘じて下さい。
以上重要なポイント3点を示しました。さらに具体的なことはこのあとに記載されています。
補足事項:胸骨圧迫について
1. VF 時における胸骨圧迫(2分間または5サイクルのCPR)
VF であっても状況によってはショックをかける前に胸骨圧迫(2分間のCPR)をおこなうことは特に問題は ありません。長時間にわたり心肺停止状態が続き、冠動脈に血流がない状況では除細動の成功率は低 いと思われます。ですから胸骨圧迫により冠動脈に血流を流した後にショックを加えることで除細動の可 能性が改善する場合もあると考えられます。
VFは持続時間により3段階に分けられます。まず発生2~3分までのElectrical phaseで、この時点では心筋 の虚血も軽度なので治療の第一選択はショックをかけることです。次にVF発生後4~5分たった場合には Circulatory phase と呼ばれ、心筋虚血がすすんでいてショックをかけてもオーガナイズドリズムに復帰した り、心拍動が再開することが困難な時期となります。この場合には2~3分間CPRを行い、心筋虚血を改善 してからショックをかけた方が自己心拍再開の可能性が高いとされています。それ以後(Metabolic phase) ではショック、CPRのどちらを優先させても自己心拍再開率は変わらないようです。
2.除細動直後の胸骨圧迫(2分間のCPR)
VF/脈なしVTの除細動に成功してオーガナイズド・リズムとなってもショック直後の2~3分間Asystoleか PEAまたは高度の徐脈の状態であることがわかっています。これは心停止中、血液は右心系に貯留して おり拍動再開後もしばらくは充分な血液を拍出できないことによると考えられています。これらのことから ショック直後に2分間の胸骨圧迫(CPR)を実施することが非常に重要です。
3.理想的な胸骨圧迫と心拍出量
理想的な胸骨圧迫を行ったとしても心拍出量は自己心拍時の25~33% にとどまるとされています。短時間
4.心拍動下の胸骨圧迫の害について
脈があまりよく触れないけど、もしかしたら心臓が動いているかも知れないような場合、胸骨圧迫なんかしたら 有害なのでは?と心配する方もいらっしゃるかもしれません。でも心配は無用です。なぜなら弱い心拍動が ある状態で胸骨圧迫を行ってもVF に移行したり、その他の有害な影響はもたらさないことが証明されている からです。むしろ胸骨圧迫が必要な状態で『ちゅうちょ』する方が害が大きいと思ってください。
3.ICLSコースで扱う4つの心電図波形(心肺停止状態の心電図)
1)心室細動(VF)
2)脈なし心室頻拍(Puseless VT)
3)PEA・・・心電図波形自体は何でも良い。脈拍が触知できなければすべて PEA。
4)心静止(Asystole)
の 4 波形です。このうち特に脈なし心室頻拍(Puseless VT)とPEAでは脈拍が触知できるかどうかが重要 であることを認識してください。心電図のみでは心停止(血液が拍出できない状態)であるかどうかは不明 です。脈なし心室頻拍(Puseless VT)では脈拍が触知できないときのみ除細動の適応となります。
1)心室細動(VF)
粗い VF
細かい VF(一見Asystole)
という不規則な波形です。除細動が唯一の治療法といっていいでしょう。また、早期に除細動を行う
ことにより高い生存率が期待できます。VF で倒れた場合、除細動が1分遅れると 7-10%生存率が低下する といわれています。除細動ICLSコースでは AED と用手的除細動器(以後除細動器)の
2種類の器械を用いて除細動を行います。
2)脈なし心室頻拍(Puseless VT)
これは単形性のVTですが心拍数が 200 程度までなら通常は脈を触れることができます。この場合は
『非同期』の除細動の適応はありませんし、除細動を行って R on T となった時には本当にVFとなったり、
Asystoleとなったりする可能性があり危険です。脈が触れないことを確認後に除細動を行います。また、AED
でも場合によっては脈のあるVTに除細動を行う可能性があるので注意してください。
トルサ・ド・ポアン
またVTには上のようなかなり不規則な多形性のVTもあります。これはトルサ・ド・ポアンという波形で、ある薬 剤の服用により QT 間隔が延長していたり、低栄養状態などで低マグネシウム血症の場合に起こりやすいとさ れているものです。軸がうねっているように見えます。多くの場合脈なし VT です。
3)PEA
心電図波形はなんでもかまいません。原因となる病態によりいろんな波形を示します。とにかく
『脈が触れなければすべて』 PEAと覚えてください。上の波形は心電図からは単なる洞性頻脈です が出血などで循環血液量が著しく減少すれば脈が触れない状態になりますからPEAです。あとで PEAの波形の特徴と病態については解説します。
4)心静止(Asystole・エイシストリーと読みます)
これはフラットな波形で QRS がみられない状態です。
この波形も前半はPEAですが後半ではAsystoleといえます。Asystoleはいきなり普通の波形から移行する わけではなく、高度の徐脈後、時間のたったVFなどから変化していきます。一度Asystoleの状態まで至って しまうと特別な場合を除いて心臓はほぼ回復不可能な状態になっていて救命は困難とされています。ですか ら、Asystole にしないことが最も重要ですが、もしフラットな心電図を見たら『本当に』 Asystoleかどうか確かめ る必要があります。『VF』を見つけられれば救命の可能性がでてきます。
4.BLS 1) BLS
倒れている人を見つけたとき、目の前で人が倒れたときに行う救命処置のことです。そのような状況は 病院外で遭遇することが多いのですが病院内の廊下や検査室でも起こりえます。処置に必要な道具や モニタなどが手元にない状況で実施します。コースでは『ポケットマスク』は持参していることとします。
A. 心肺蘇生を開始する状態とは
3) 脈がない(これは日常的に心肺蘇生を実施する可能性のある医療従事者のみ)
の3点が満たされた状態のことです。
心電図がどうのこうのではないことに注意して下さい。
B. 発見時に救助者が一人であった場合
成人の心肺停止患者の場合、救助者が一人だけの場合(つまり助けを呼んでも周囲に誰も人がいない 場合)にはCPRの開始よりも応援要請や資器材(AEDなど)の手配を優先することが原則です。
成人の心肺停止は心原性であることが多く、ショックをかけることが重要と考えられるからです。
例えば海岸などで周囲に人がいなければ携帯電話で119通報します。すると『はい、○○消防です。火事 ですか?救急ですか?』と聞かれますので『救急です。人が倒れていて反応(または意識)がありません。
住所は××です。目印は△△です。』と手短に傷病者の状況と現在地を説明します。その後気道確保、
呼吸・脈の確認となります。
しかし、溺水や食べ物などによる窒息など呼吸原性心停止が強く疑われる場合には、まず2分間(5サイク ル)のCPRを実施したのちに応援要請や資器材(AEDなど)の手配をする方がよいとされています。
この辺は少し複雑ですが原則を理解して下さい。
C. 救急蘇生と法的問題
救急蘇生法は医療に関係のない一般市民が実施しても、原則的には医療行為と解釈されますが、たまた まそのような状況に遭遇し実施するので反復継続性がないため医師法に抵触しません。また故意や重大 な過失がなければ『緊急事務管理』に該当し、損害賠償責任を問われることはありません。
AEDの使用についても同様の解釈がされます。
一方、業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止患者に対し応急の処置を行うことがあらか じめ想定されるものがAEDを使用する場合には以下の4条件を満たす必要があります。
① 医師などを探す努力をしても見つからないなど、医師などによる速やかな対応が得られない
② 使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認している
③ 使用者がAEDの使用に必要な講習をうけている
④ 使用されるAEDが医療器具として薬事法上の承認を得ている
この4条件を満たすことにより医師法違反を免れる。ということになっています。
2) BLSの実施の順序 (C B
A)
前にも書きましたが Aとは気道、Bは人工呼吸、Cは循環(心肺蘇生では胸骨圧迫)のことです。BLSを行う時は意識
(反応)がなく、正常な呼吸をしていなければ呼吸なしとして心肺蘇生の適応です。ただし、胸骨圧迫を行う前に人を 集めて「119番通報」と「AEDの入手」を依頼することが非常に重要です。あなた一人では救命することができないので すから。
大人に対する BLS ヘルスケアープロバイダーのアルゴリズム(日本のガイドライン G2010)
★周囲の安全確認、感染予防・・・重要です。第2の犠牲者をださないように。
★ 助けを呼ぶ・・・一人で蘇生をしても助かりません。よく忘れるポイントです。
★印は非常に忘れやすい事項ですので注意してください。
*BLS のアルゴリズムで重要な点
1) 絶え間ない胸骨圧迫・・100 回/分以上、胸郭が5cm以上へこむように、胸郭の戻りも確認 2) 胸骨圧迫中断時間は10秒以内(中断は短いほどよい)
3) 安全かつ速やかな除細動
① 体動や反応がない
② 119 番通報&AED の入手
③ 気道確保・呼吸の確認・脈の確認(5秒以上10秒以内)
⑤ 呼吸と脈があれば気道確保し応援を待つ(回復体位)
④ 呼吸と脈がなければ
* 5-6 秒ごとに 1 回人工呼吸
* 2 分ごとに脈拍チェック
⑥ 胸骨圧迫を開始する
* 強く(5cm 以上の深さ)、早く(100 回以上/分)
*圧迫を解除するときは胸郭が完全に戻るように。
*胸骨圧迫中断は最小限に。
*人工呼吸ができる場合は胸骨圧迫:人工呼吸は30:2で
⑦ AED/除細動器が届く
⑧ 心電図解析
(ショック可能なリズムか?)
⑨ 除細動 1 回
直後に CPR 開始(2分間)
⑩ CPR 直ちに開始(2分間)
* 2分ごとにリズムチェック
* ACLS プロバイダーに引き継ぐか傷病者が 動き出すまで CPR 継続
ショック適応なし ショックの適応
人が倒れている(または目の前で倒れた)
をする人は交代するべきです。講習会といえども、確実な胸骨圧迫を心がけてください。
*感染予防について
「院外における心肺蘇生では感染の危険性は極めて低いので感染防護具(ポケットマスク、フェイスシールド)なしでも 人工呼吸を実施してもよい」(G2010)と記載がありますがやはり見時知らずの他人では感染の危険性は否定できない ので可能な限り感染防護具を使用するか胸骨圧迫のみの CPR を行うべきと考えます。(横井)
また院内のCPRでは感染防護具を使用するべきであるとされています。(G2010)
D. BLS の基本手技について A)気道の確保
意識がない傷病者に対しては『気道の確保』を行います。基本は『頭部後屈・あご先挙上』です。訓練を受けた 救助者では「下顎挙上法」を行ってもかまいません。また、頸椎損傷が疑われる傷病者に対する頭頚部の 安定化には器具(カラー)を用いるのではなく用手的に行います。
ICLS コースではなるべく早く CPR を開始する意味で気道確保・呼吸の有無の確認・脈拍の有無の確認を 同時に行います。(AHA のコースでは別々に行います)
頭部後屈・あご先挙上 呼吸と脈の同時確認① 呼吸と脈の同時確認②
*呼吸があるということ
倒れている人(傷病者)に呼吸があるということは「明らかに正常な呼吸」をしていることをいいます。
「あえぎ呼吸」「死戦期呼吸」などほとんど換気に役立たない呼吸の場合には「呼吸なし」と判断します。
B) 人工呼吸
1回 1 秒程度かけて胸部が上がる程度に息を吹き込みます。胸が上がる程度とは、もし測定したとすれば 1 回換気量が6~7 mL/kg 程度です。
口対口人工呼吸 BVM による人工呼吸
*BVM を使用する場合は二人法(一人が両手で気道を確保し、もう一人が換気する)の方がマスクがより顔 面に密着し、また気道確保も確実となります。
C) 脈の確認と胸骨圧迫
ヘルスケア・プロバイダー(医療従事者)では循環のサインの有無を確認する際に脈をチェックします。成人 では総頚動脈か大腿動脈を触れます。まず気管を触れ、指を側方にずらして、胸鎖乳突筋の2本の筋
束の間で総頚動脈を触れる
(パルスチェックといいます。5 秒以上 10 秒以内です。5 秒以下では意味がありません!!)
*胸骨圧迫の位置
胸骨圧迫は胸骨の下半分を両手で1分間に 100 回以上、胸が 5cm へこむように圧迫します。圧迫を 解除する時は胸郭のへこみが完全にもどることが大切です。
胸骨の下半分 肘・腕を伸ばし垂直に圧迫 胸骨圧迫:人工呼吸は 30:2
D)胸骨圧迫と臓器血流
上の図に示すように、胸骨圧迫は連続して行うことで大動脈圧が上昇してきます。冠動脈に血流を流す駆動力は胸 骨圧迫を解除した時の大動脈の血圧です。一方で脳や、全身臓器に血液が流れるのは胸骨を圧迫したときです。つ まり、大動脈の血圧が高いほど臓器血流が増えることになります。胸骨圧迫を連続的(30 回)に行うことに重要な意 味があることが理解できたでしょうか。
*胸骨圧迫と圧迫解除の時間
胸骨圧迫:圧迫解除の時間(デューティーサイクルといいます)は50%:50% (つまり1:1)とした場合が最も冠動 脈、頸動脈の血流が多かったという報告がされています。
*胸骨圧迫のみによる蘇生 (一般市民では現在これを推奨しています)
訓練を受けた救助者以外では胸骨圧迫のみを行うべきであるとされています。
注:フェイスシールド:ビニール製のシートで口対口(口対口鼻の場合もあるが)の人工呼吸を行う場合 に使用する感染予防器具。口にあたる部分にフィルターがついていて、空気は通すが細菌やウィルス に対するバリアーとなる。G2005 では感染予防にはならないとされた。BLS で感染予防デバイスを 持っていない場合は人工呼吸をせずに『胸骨圧迫』のみを開始する。
ポケットマスク:プラスティック製の透明なマスクであるがこれも口対口の人工呼吸で使用する。フィルタ ーと一方弁がついていて、フェイスシールドより換気がしやすく、感染に対する防御効果も高い。
5.プライマリーサーベイとセカンダリーサーベイ(少し詳しく)
1)プライマリーサーベイ(一次救命処置)
A:Airway(気道確保) B:Breathing(人工呼吸)
C:Circulation(胸骨圧迫)
D:Defibrillation(除細動)・・・AED による場合と除細動器による場合があります。
プライマリーサーベイでは『VF / Pulseless VT』に対しては必要である場合には、二相性波形で除細動を行う 場合は 120J~200J(機種による)で1回、単相性波形では 360J で1回ショックをかけます。
ここで重要なことは VF / Pulseless VT では1回の除細動を行うことはプライマリーABCD サーベイであるという ことです。
PEA と Asystole に対しては除細動の適応はありません。また A、B、C は行いますが 『D』はありません。
2)セカンダリーサーベイ(二次救命処置)
A:Airway(気道確保)・・セカンダリーでは高度の気道確保で原則として『気管挿管』します。
B:Breathing(人工呼吸)・・バッグ・バルブ・マスク(アンビューバッグ)を用いた人工呼吸ですが挿管 チューブの位置確認(一次確認・二次確認)が重要です。
C:Circulation・・胸骨圧迫も行いますが。静脈ラインを確保し、薬剤投与、除細動を行います。
D:Differential Diagnosis(原因検索・鑑別診断)・・・心肺停止状態となった原因を検索し、原因によって は治療が可能で、救命の可能性がでてきます。また、VF/脈なし VT でも原因検索(例えば心筋梗塞 など)を行うことは除細動後の治療という意味では重要です。
*気道確保の方法としては資材がそろったからすぐに気管挿管ではなく、バッグ・バルブ・マスクで換気が可能ならば
『やみ雲』に気管挿管を行う必要はなありません。多少気道確保がしにくい場合ではエアウェイを使う方法もあります。
特に、VF/脈なし VT では気管挿管よりも先にショックをかけた方が予後が改善されます。
しかし難治性 VF、気道分泌物が多い場合、CPR が長引く場合、他の方法では気道確保が困難な場合には気管挿管
が必要となります。
*プライマリーサーベイとセカンダリーサーベイの境界
プライマリーサーベイによっても自己心拍が再開しなければCPR を続けますが、病院内の場合には資機材(点滴 セット、輸液、薬剤、気管挿管用具など)がそろった時点でセカンダリーサーベイに移りより高度の治療を開始します。
『VF』 であれば 『VF です。セカンダリーに移ります』と宣言します。言葉や言い回しはこだわりません。
要は周囲のスタッフにリーダーの意思を伝える意味で重要であると理解してください。
*プライマリー・セカンダリーにかかわらず、救命のために重要なことは『絶え間ない胸骨圧迫』です。
『胸骨圧迫の中断を最低限にする(10秒以内)』ことが予後改善に最も大切と強調しています。
【注】胸骨圧迫時には『圧迫を緩めたとき』に心臓の冠動脈に血液が流れます。また、胸郭がしっかりともとに もどることにより血液が胸腔内(しいては心臓)に充満します。ですから胸郭のへこみがしっかり戻るよう に胸骨圧迫をすることも重要です。『押すばかりではダメ』と理解してください。
人が倒れた
意識・呼吸・脈なし 助けを呼ぶ・救急カート・除細動器(AED)要請
BLS 施行
モニター装着
VF PEA Asystole
5サイクルの CPR + フラットライン・プロトコール
セカンダリー移行宣言
DNAR なし DNAR あり 1 ショック
真の Asystole VF発見
5サイクルの CPR
リズムチェック VF/VT 継続
リズムチェック
5サイクルの CPR + セカンダリー移行宣言
蘇生中止 セカンダリー移行宣言
6.ショックについて
心臓は通常それぞれの心筋、刺激伝導系が規則正しく電気的に興奮し順序良く収縮することにより血液を拍 出しています。VFでは心室の各細胞(または筋細胞の集団)が勝手に不規則に興奮、収縮をおこなっていて 心室全体として血液を拍出する運動ができない状態です。ジョサイドウトショックは心臓に直流電流を通電して 心筋細胞の不規則な電気的活動を心臓全体同時にリセットし規則正しい動きにもどすことを目的としています。
しかし、「除細動」の厳密な定義としては「VF」以外の波形が5秒以上続けば除細動成功ということになりま す。つまり、AsystoleでもPEAでも「除細動成功」です。
しかしながら、一般的には「除細動成功」とは脈の触れる状態(自己心拍再開)に移行することと解釈する ことが普通ですし、コースでもそのような意味で統一します。
除細動の方法としては2つの方法があります。
① AED (Automated external defibrillator:自動体外式除細動器)による除細動
② 除細動器による除細動
AEDについては後述しますのでここでは除細動器を使用した除細動について説明します。
二次救命処置のアルゴリズム
除細動器による除細動
現在でも各施設で稼働している除細動器には二相性波形と単層性波形を用いるものの2種類があります。
二相性波形の方が少ないエネルギーで除細動が可能であり、また除細動の成功率が高いことがわかって います。しかし、いまだに単層性波形の除細動器も多くの施設で使用されています。
二相性波形でショックをかける場合のエネルギーは 120J~200J で、単相性波形では 360J です。
除細動器の基本的な使い方
① 除細動器の電源をいれる。 ② 心電図電極を胸壁に貼る。 ③ 電源を入れると誘導は
『パドルモード』になり、電極を貼っても心電図はフラットのままであるので“ II 誘導”にする。
④心電図波形を確認するとき(リズムチェックという)は胸骨圧迫を一時中止する。(リズムチェック は3秒程度ですませ、ただちに胸骨圧迫を再開します) ⑤ 心電図が VF であれば、ショックを行 うが、ショックを行う時はパドルを除細動器からはずす(同時に“離れて下さい”と周囲の人に言う)。
⑥ パドルに除細動用のゲルを塗るかゲルパッドを貼る。 ⑦ パドルを傷病者の胸壁に押し当 てる(右鎖骨直下と左中腋窩線上)。 ⑧ 決められたエネルギーに充電する ⑨周囲の安全 確認を行う。(私良し、あなた良し、皆良し。最終波形VF!) ⑩ 放電ボタンを押す
⑪ パドルをすぐに除細動器にもどす。
注: 胸骨圧迫を行っているメンバーに患者から離れてもらうタイミングはパドルを胸部に押し当てて、充電 を開始する直前でもかまいませんが、慣れるまでは少し早目の方が安全です。
注:充電はかならずパドルを傷病者の胸壁に押し当ててから行います。パドルが空中にある状態で行うことは非 常に危険です。(paddle in the air)
注:安全という意味ではパドルよりも除細動用のパッドを貼ったほうがよいでしょう。
内部放電
もし、充電中または充電直後に心電図波形が VF/VT から他の波形に変化して除細動の適応がなくなった場 合は“パドルを胸壁から離さずに”除細動器のダイアルを“内部放電”にあわせ、放電が完了してからパドルを除 細動器に戻します。決して充電したまま胸壁から離してはいけません。(paddle in the air)
また、充電後 30 秒たっても放電しないと(ショックをかけないと)自動的に内部放電となる機種もあります。古い 機種の一部では『内部放電ボタン』がありません。そのような機種ではいつまでたっても自動的に内部放電には なりませんが、『充電ツマミをゼロに戻す』と内部放電できます。
小児に対するショック
1~8歳の小児でも VF/脈なし VT が心停止の原因と確定した場合にはショックを行います。
AED では原則として小児用パッドを使用します。除細動器ではパドル部分がはずれるようになっており 小児用の小さいパドルが内蔵されています。従来小児に対するショックのエネルギーは 2J/kg4J/kg と されていましたが,2J/kg では除細動の成功率が 50%以下であったことから G2010 では単相性、ニ相性に かかわらず 4J/kgとされました。
AED
自動体外式除細動器ですが、実際は2~3の操作が必要なので 『半』自動体外式除細動器です。
AED が到着した時点では心電図波形が何であるかは不明ですが AED のパッドを装着すると AED が自動的 にショックをかけるべき波形がどうかを判断してくれます。もし、VF/VT 以外の波形であれば“ショックは不要 です。その場合は「胸骨圧迫と人工呼吸を行ってください」とアナウンスされます。
<AEDの使用手順>
① AED の電源を入れる(非常に重要です) これをしないと次に進まない
② 電極パッドを適切な位置に貼り、コードのコネクターを本体に接続する (パッドを貼る時も胸骨圧迫は続けます)
通常のパッド貼付位置(右前胸部と左側胸部)
右前胸部と左背部も許容できます
心尖部と左背部も許容できます
③ “心電図の解析中です”という AED のアナウンス “ショックの適応です“(VF かVTならば)
④ “ショックをかけます。離れて下さい”という AED のアナウンス
⑤ “除細動をしますから離れて下さい”『私離れています、あなた離れています、皆離れています。』
と救助者が周囲の人に声をかける。
⑥ 周囲の安全を確認したらショックボタンを押す(ショックボタンを押すのは救助者)
⑦ ショック直後から2分間の CPR 開始2分後 AED が自動的に解析開始する
注: AED が最初に解析をして“ショックの適応はありません”とアナウンスした場合でも2分間の CPR
★とにかく心電図解析をしているとき、充電・ショックをかけるとき以外は CPR を続けることが重要です!!
以上が AED の使用の手順ですがそのほかに重要なこととしては 「パッドを貼る部位の観察」です。
パッドまたはパドル
① 水濡れ ② 胸毛(特に外人さん) ③ アクセサリー ④ 貼付薬なし
⑤ ペースメーカー・埋め込み式除細動器 の5点について確認してから電極パッドを貼りますが 実際はこれらの観察を目でさっと行いながらパッドを貼るのが遅くならないようにしましょう。
当然、胸部の状態を確認する時も 胸骨圧迫/CPR は継続します。
『①水濡れがあれば拭く ②胸毛がある場合にも“とりあえずパッドを指定の場所に貼る”こと。もし、AED が“パ ッドを貼って下さい”と繰り返すようであれば、その状態では有効な通電はできないので“パッドを剥し”て胸毛を 抜き取り、新しいパッドを再度貼る。それでも、だめならレザー(AED のセットに入っている) で素早く剃る。③ 胸にアクセサリーがあれば“避ければよい。無理にはずす必要はない。パッドに重ならなければ良し。 ④ 貼 付薬は剥して、ぬめりを拭く。
⑤ペースメーカーや ICD から 8cm 離してパッドを貼る』 という対策をとります。ペースメーカー、ICD 近くにパッ ドを貼ってショックをけるとこれらの器具が故障することが報告されています。
パッドの貼付部位は以下の通りです。(ペースメーカー、ICD が右胸部に埋め込まれている場合)
左前胸部と左背部
左前胸部と左側胸部
床が濡れている場合でも、胸部が乾いていれば除細動は可能であり、救助者に危険はありません。
小児では原則として小児用のパッドを貼ります。(なければやむを得ず成人用を貼ります)
7.気道管理
1)気道確保(BLS における方法)
① 外傷がない場合は?頭部後屈あご先挙上。
② 頚椎の外傷が疑われる場合は?下顎挙上法。+頸椎保護 2)BVM を用いた気道確保と換気
①BVM の組み立て・・・ICLS コースで実際に組み立ててもらいます。
②BVM を用いた場合の気道確保・マスク保持
マスク・ホールド(一人法で)・・EC 法(一人でマスク保持と換気を行う場合はこの方法)
マスク・ホールド(二人法で) ・・EC 法&母指球法 ペースメーカー、ICD
一人の救助者 二人の救助者 セリック法
● 輪状軟骨圧迫法(セリック法)
1) 適応は意識がなく、かつ咳などの反応がない傷病者
輪状軟骨をまっすぐ上(患者の前方)から頚椎に向かって真下に圧迫する。圧迫する圧力はマニュアル には記載されていませんが、文献的には 3-4kg とされています。
【注】G2010 ではセリック法を CPR 時にルーチンに行うことは推奨されていません。その理由はセリック 法により気道閉塞を起こしたり換気の障害になっている場合が多いことが明らかになったからです。
●BURP(バープ)
セリック法に似ていますが本質的には異なる手技です。BURP とは
Backward (後方へ)、 Upward (上方へ)、 RightwardPressure (右方への圧迫)
の略で気管挿管時に喉頭展開を行うがこのとき声帯の全体がみえる人は 50%程度に過ぎ ずほとんど見えない人も 10-20%は存在します。そのような場合甲状軟骨下部から輪状軟骨 部を『後上右方』に圧迫することにより声帯を視野に『押し出す』ことにより直視下に挿管する ことが可能となります。圧迫する圧力はその時により異なります(声帯が見えるまで押す)。
実際は挿管時にセリック法と両方の意味を兼ねて無意識に行っている場合が多いのが実情です。
3)高度の気道確保 (ここからセカンダリーABCDサーベイ 気管挿管開始 1)からすべての確認終了まで 8段階の指示、確認事項があります。
セカンダリーサーベイでは『適応があれば』高度の気道確保を行います。高度の気道確保には①気管挿管、
②ラリンゲルマスク、③ラリンゲルチューブなどがあり、②と③は気管挿管と同等とされています。
ただし、①~③の実施に時間を要して胸骨圧迫、静脈ラインの確保、薬剤投与などに影響がでることは避ける べきで、場合によっては『バッグ・マスク換気』を続けたほうがよいこともあります。
気管挿管したあとの人工呼吸は1分間に 8~10 回、胸郭が上がる程度が適切です。呼吸回数は
『6秒に1回』と覚えてください。過換気は有害です!!
また、気管挿管する前と違うのは、胸骨圧迫と人工呼吸を交互に行う必要はなく、それぞれ
『胸骨圧迫は1分間に 100 回以上、人工呼吸は6秒に1回』の早さで行います。これを『非同期で行う』
高度の気道確保開始 『十分な酸素投与後に気管挿管します。準備お願いします』
気管挿管の準備 助手の一人(助手1)を指名し挿管を依頼する
『あなた、挿管お願いします。』(30 秒以内で行う。不可なら換気)
気管挿管開始 1) 『チューブは声門をこえましたか』 -->(はい。声門をこえました)
助手2に『バッグ・バルブ・マスクをつけて換気お願いします』と依頼する 挿管チューブ位置の確認
胸骨圧迫中断 ①
2)最初の1回の換気で”胸郭の挙上”と”心窩部で胃泡音が聞こえない”
ことを確認
『胸上がっています。心窩部にゴボゴボ音聞きこえません』
② 3) 5点聴診おこなう。①両側前胸部または側胸部 ② 心窩部
『両側上肺野聞こえます。両側側胸部聞こえます。左右差ありません』
『心窩部にゴボゴボ音、聞こえません』
胸骨圧迫再開 この時点で胸骨圧迫再開(重要!!)
4)『胸骨圧迫は人工呼吸と非同期で再開してください。
人工呼吸は6秒に1回で行って下さい。』
③ 5)『気管チューブ内に曇り(ミスト)みられます』
器具を使用した確認 ①EDD 6)『EDD でチェックお願いします。』(1回でよい)
(4秒以内に膨らめば)
『EDD 4秒以内に膨らみます』
②呼気ガスモニタ 7)『呼気ガスチェッカーお願いします』
(紫色が黄色に変われば)
--> (黄色に変わりました) : 助手が答える 使用可能であればカプノメータで呼気 CO2 の波形を連続モニターします
8)『チューブ固定器で確実な固定お願いします』
*EDD と呼気ガスモニター(簡易型呼気ガス検知器、カプノメータ)
気管チューブが気管内にあるかどうかを確認する器具としてコースでは EDD と簡易型呼気ガス検知器を使用 していますが、その正確性(感度、特異度)に関してはカプノメータが優れていますのでもしその場に設置されてい るのであれば是非使用するべきとされています。下に実際のカプノメータの波形を示します。しかし、長時間の心 停止患者では必ずしも終末呼気 CO2 分圧が非常に低い場合がありますので迷うことがあるかもしれません。
4)酸素投与法と酸素濃度
バッグバルブマスクと酸素濃度の関係
投与方法 酸素流量(L/分) 酸素濃度(%)
鼻カニューレ 1L / 分
2L / 分 3L / 分 4L / 分 5L / 分 6L / 分
21 - 24 25 - 28 29 - 32 33 - 36 37 - 40 41 - 44 通常のフェイスマスク
(リザーバーなし)
6 - 10L / 分 35 - 60
リザーバーつきの フェイスマスク
6L / 分 7L / 分 8L / 分 9L / 分 10 - 15L / 分
60 70 80 90 95 - 100 ベンチュリマスク 4 - 8L / 分
10 - 12L / 分
24 - 40 40 - 50
5) その他の気道確保用のデバイス
①ラリンジアルマスクエアウェイ(LMA) (Class IIa)・・・通称ラリンジアルマスクとしていますが
喉頭展開も不要で気管挿管に近い感覚で換気ができますが、気道内圧が高くなると胃・小腸に空気や酸素が流入し ます。また、歯がない高齢者では固定が難しく、胃内容の逆流に対しても誤嚥防止という点では不十分です。条件が よければ有効な気道確保・換気デバイスといえます。
<過換気を避ける理由>
以前(10 年前)は心停止では代謝性アシドーシスとなるため過換気をして呼吸性アルカローシスにし、PH を正常値 (7.40)に近づけるように指導していましたが、現在では①大きい1回換気量、②多い呼吸数、③換気量・呼吸数いず れの過剰による場合でも過剰な分時換気量は好ましくないとされています。その理由は1回換気量が多いと気道内圧 が上昇すること、空気・酸素が胃に入り、誤嚥を起こす可能性が高くなること、横隔膜を挙上し換気に影響がでること などです。また、高い気道内圧は胸腔内圧を上昇させ、静脈還流と心拍出量を減少させ、結果として心筋血流量や 脳血流量も減少させることになります。
8.モニター・除細動(補足) 1) 除細動器の特性
除細動器によりモニターを行う場合には“電源を入れると自動的に『パドルモード』になる機種が多い”
ということを知っている必要があります。通常の心電図モニターと異なり、除細動器では電源を入れて電 極を貼ってもモニター画面には直線が表示されるだけで、これを『Asystole』と診断し誤った方向へ展 開する場合がありますので気をつけてください。
電源を入れたら『II 誘導に必ず誘導を変える』と覚えましょう。
2) なぜ II 誘導なのか(I 誘導、III 誘導ではダメか?)
P 波のベクトル
II 誘導の利点
1) P 波がはっきり認識できる 心房の活動状態がわかる 2) QRS complex の振幅が大きい HR が正確にカウントできる
以上から II 誘導が第一選択となる。
『ACLS: Principles and Practice』 P 268-269
3) 脈拍のチェック
ショック状態、心停止の患者で脈拍の有無を 10 秒以内で確認することは誰にとっても非常に難しいこと です。しかし、G2005 では5 秒以上 10 秒以内でチェックすることを求めています。
もし、脈があるという自信が持てなければ『脈はない』と判断して胸骨圧迫を行うことが重要です。
4)パドル誘導
前述したように除細動器の電源を入れると自動的にパドル誘導になる機種が多いのですがこれは、速や かに除細動を行うためです。この場合通常の心電図電極を貼らず写真のようにパドルを右前胸部と左側
胸部にあて、パドル自体が電極となります。このとき左手のパドルがマイナス、右手がプラスならば II 誘 導です。この方法を“Quick Look”とよびます。除細動器を持ってきたけれど心電図電極がなかった場合 などにも応用できます。
5)カルディオバージョン(参考・・ICLSコースでは必須ではない)
<電気的除細動とカルディオバージョン。同期と非同期>
心電図で T 波が見られる時期(受攻期)に心臓に直流電流を通電すると『心室細動・VF』を誘発します。そこで、
頻脈の治療などで電気的ショックをかける場合には T 波を避けて R 波(心室興奮時)の出たタイミングに通電す ることで VF になることを回避します。これが“R 波に同期する”ということです。除細動器に『同期ボタン』があるの でそのボタンを押すと R 波に一致して縦の点線や星印がでてきますので“同期モード”であることがわかります。
一般論としては VF 以外の波形では同期することが必要であるがある種の VT では(多形性 VT、トルサ・ド・ポア ンなど) R 波の幅が広く形態が一様でないため、同期モードで通電しようとしても同期が困難でなかなか同期
気管を触れ、側方に指をすべらすと、
胸鎖乳突筋の間に総頚動脈が触れる。
せず(あるいは同期不可能で)いつまでもショックがかからないことになります。そのような同期が困難な VT では 脈無し VT として非同期除細動を行います。この場合、まれに VF に移行することもありますが、その時は再度除 細動を行います。
一方、心拍数が 150 以上で症状のある不安定な頻脈では同期モードでカルディオバージョンを行うことがあり ます。QRS 幅の広い頻脈としては VT があり、QRS 幅の狭い頻脈として発作性上室性頻拍(PSVT)などがカルデ ィオバージョンの適応となります。
<カルディオバージョン時の注意点>
同期モードで一回放電(ショックをかける)と非同期モードに戻ります。再度カルディオバージョンが必要 な場合には再度同期モードに設定することが大切です。これを忘れると2回目のショックは非同期モード で実施することになります。この場合 R on T となって、VF になることがあります。VF になった場合には そのままショックをかけると非同期モードになっていますので即座に除細動が行えます。同期モードでの ショック(カルディオバージョン)では同期をするために非同期でショックをかける場合よりも通電に少し時間 がかかりますがそのままパドルを押し当てて待ってください。
<同期カルディオバージョンの通電エネルギー> (G2010)
心電図波形 通電エネルギー
安定性単形性 VT 単相性、二相性とも 100J
心房粗動 単相性、二相性とも
50J/100J 200J 300J 360J 心房細動 ( Af )
VT(単形性)
発作性上室性頻拍(PSVT)
単相性 200J300J360J 二相性 120~200J
(注:心房粗動では 50J から始める。また、多形性 VT では 200J で非同期除細動を行う)
<同期カルディオバージョンを行う際の注意点>
同期カルディオバージョンは心拍数が 150/分をこえ、かつ症状のある頻拍のみで行います。
『治療するのは患者である。モニタではありません!!』 。 実際に同期カルディオバージョンを行う場合には
① 速やかに酸素投与を行う。
② もちろん心電図モニタを行う。
③ 静脈路を確保する。
④ ベッドサイドに1)経皮酸素モニタ 2)吸引装置 3)気管挿管器具を準備する。
⑤ 適切な鎮静を行い、意識が消失してから通電する。
鎮静はディアゼパム(ホリゾン)、チオペンタール(ラボナール)などの準備が必要です。同期カルディオバ ージョンは“除細動と異なり“緊急に必要な処置ではありませんので適応を熟慮し十分な準備のもとで行う べきです。
<二相性波形による除細動> 二相性波形
二相性波形による除細動についてガイドライン 2005 では、以下のように記載されている。比較的低エネルギー
(200J 以下)でも二相性波形では一相性波形の200J、300J、360Jという高エネルギーを用いた除細動と 同等の除細動効果が得られることが明らかになってきた(Class IIa)。しかし、①二相性波形による除細動で適 切なエネルギーはどれ程か、②複数回(ガイドライン 2005 では3連続ショックは行わない)の除細動が必要に なった場合には一相性波形のように順次エネルギーを上げるべきか、とういう点についてはエビデンスがない。
よって、①に関しては市販の除細動器は150Jの目盛りが強調されているので一応150Jでよいと思われる。
(上記の二相性波形の種類により除細動の効果に微妙な差があるらしいが)また、②については2回目以後は 1回目と同じでもよいし、順次エネルギーを上げても良いとガイドライン 2005 には記載されている(pIV-37)。
しかし、除細動器には150Jのつぎは200Jしか目盛りがないので、2回目以後も150Jでよいと考える。
6)フラットな心電図をみたら (重要!!)
心電図モニターをつけたところ波形が『フラット』であった場合、その波形が本当にフラットなのか、じつは VF で あるにもかかわらず、ある原因により 『フラットに見えるだけ』なのか確認する必要があります。
VF ならば除細動という強力な治療法があり、救命できる可能性が高いといえます。一方、本当に Asystole (心静止)ならば救命率は1%に満たないとされていますので、この差は果てしなく大きいといえます。
*フラットな心電図波形をみたら『本当に Asystole なのか』を確認しましょう。
チェックするポイントは3つありますが順序よく進めるとよいでしょう。
① 電極が剥がれていないか。ケーブルの接続がゆるんでいないか。『リード』
本当は心電図波形がでているのにフラットな波形となる理由の 90%以上はこれが原因です
② 感度が低すぎてVFを見逃しているのではないか。感度を上げる。『カンド』
③ 誘導によりVFが見えにくい場合がある。誘導を II III I と変えてみる。『ユウドウ』
これを『3つのド』と覚えると記憶しやすいと思います。
具体的な方法は(あくまで一例です。この他にも方法はいくつか考えられます)
モニター装着 リズムチェック フラットな波形 5サイクル(or 2分間)の CPR リズムチェック
1サイクル目の胸骨圧迫をしている間に『電極やケーブルの接続チェック』を行い(リード)、同時に心電図の感 度をが低すぎないか(カンド)も確認しておきます。もし感度が 1/2 などになっていたら1倍にもどしておきます。
(必ずしも感度を最大にする必要はありません。ノイズも同時に大きくなり診断的価値は向上しません)
最初の人工呼吸をする時(1サイクル目の人工呼吸時)に「リズムチェック」も行います。
もし、この時点で VF が発見できた場合には、ただちにショックをかけます。
相変わらずフラットな波形であった場合には2サイクル目の胸骨圧迫を開始し、その間に誘導をII誘導
III誘導に切り替え、2回目の人工呼吸の時にリズムチェックを行います。
もし、この時点で VF が発見できた場合には、ただちにショックをかけます。
相変わらずフラットな波形であった場合には3サイクル目の胸骨圧迫を開始し、その間に誘導をIII誘導
I誘導に切り替え、3回目の人工呼吸の時にリズムチェックを行います。
という具合です。様々な方法があると思いますが、具体的な方法はコースやブースの方針に従ってください。
9.致死的心電図に対するアルゴリズムにおける重要点
ここでは、心停止の4波形3パターンの心電図ごとに重要なチェックポイントを示します。
一部はすでに記載しましたがあらためてまとめておきますので ICLS コース受講にあたって、これだけは 記憶しておいてください。
1)VF/Pulseless VT
①プライマリーサーベイにおける除細動(1回のみ)
二相性波形では 120J-200J(機種に依存)。単相性なら 360J。
② 安全な除細動
③ アドレナリン投与のタイミング
セカンダリーサーベイでは準備ができしだい静脈ラインを確保しますが、アドレナリンの投与のタイ ミングは以下のように行った方が望ましいと思います。
VF ショック 2分間の CPR リズムチェック VF 2分間の CPR 再開+アドレナリン 1mg 静注 その理由は、二相性波形による除細動では1回目で 90%以上の成功率が報告されています。つまりアドレナリンを投 与しなくても 90%以上の患者さんは自己心拍が再開するということです。一方、アドレナリンは非常に優れた薬剤です が、反面不整脈を誘発する作用もあります。そこで、もしアドレナリンを投与しなくて自己心拍を再開させることができれ ば理想的といえます。1回目のショックで除細動が失敗した場合には「難治性の VF」ということで強力な治療を行わな ければなりません。
これ以後は薬剤投与と除細動のタイミングは無関係でかまいません。(G2005)
薬剤としては『アドレナリン』『アミオダロン』『ドーパミン』の投与量を覚えましょう。
・・・コースで必要ですので。是非記憶してから受講してください。
2)PEA
①セカンダリーサーベイで原因検索(10 個)
3)Asystole
① フラットな波形をみたら本当にAsystole かを確認。(繰り返しになりますが重要です)
VF/Pulseless VT が見つかれば原則的にはただちにショックをかけます。
② 本当にAsystole なら『DNAR ( Do Not Attempt Resuscitation:蘇生をしないで下さい)』がないか
③ 『DNAR』がなければセカンダリーABCD サーベイへ
【注】DNAR は蘇生をしないで欲しいという生前の本人および家族の希望を記載した書類
心肺蘇生はいつ中止するべきか?・・・一律な基準はない
蘇生努力終了に関しては一律の基準は存在しません。ではどうしたらいいでしょうか。日本版救急蘇生 ガイドライン策定小委員会の見解では『①目撃者の有無 ②心停止からCPR 開始までの時間 ③心肺 蘇生時間 ④治療に対する反応性 ⑤原因疾患や病態 ⑥治療の経過 ⑦心電図波形などを判断材料 とし心肺蘇生開始から15~20 分前後で蘇生中止について検討し始める。しかし、患者個々に背景が 異なるので一律な決定は危険である。偶発性低体温、薬物中毒、難治性VF/VTなどでは心肺蘇生 に努力を長めに続けることが推奨されている。家族の希望や都合で医学的判断を超えて心肺蘇生が延長 されることもある。無益な心肺蘇生が1~2時間に及ぶこともあり得る。
この問題についての本格的な議論はまだ国内では行われていない。終末期医療の在り方について 社会的な検討の中で国民的なコンセンサスの形成が望まれる。』となっています。
この問題については欧米の文献やガイドラインを適用することは意味がありません。現時点では前記のような 解釈を念頭において臨床の各ケースに対応する必要があります。ただし、少なくとも以下に示す項目について は確認する必要があります。
1) 適切なCPR がおこなわれている 2) VF がみられない 3) 高度な気道確保器具が適切に装着されている
4) 気道確保器具の位置が確認され固定されている
5) 適切な酸素化と換気の確認ができるように酸素濃度と呼気終末CO2 濃度測定がされている 6) 静脈路が確保されている
7) リズムに適した薬剤が投与されている
8) 蘇生可能な原因がない(薬物中毒、低体温などなど)
9) 家族や友人が患者の状態に納得している
10.無脈性電気活動(Pulseless Electrical Activity )= PEA
PEA には様々な病態が含まれています。要は『心電図波形はみられるが脈が触れない』ということがPEA の定義です。しかし、心エコー検査を行うと心臓は拍動している状態と言われています。(ガイドライン2005
p IV-61)すなわち、まだ本当の『心停止』には至っていない状態なので、早期に適切な処置を行えば再 び十分な拍動が得られる可能性があると認識する必要があります。
ICLS コースのPEAで求めるられることは
患者の病歴、状態・状況、身体所見、カルテ、主治医・救急隊・家族の話、検査データなどからPEA に至った原因が何か、今の状態が何かということを検索していく姿勢です。原因がわかれば有効な治療 法が存在する場合があります。少なくとも『情報収集』をする姿勢を身につけてください。この姿勢はPEA
に限ったことではありませんが特にPEAでは救命のカギになります。
(カラダ、カルテ、カゾク・・・3つのカ、さらに『かんいな検査』の4つのカも含めても良い)
コースでは以下の10 種類 (5T&5H) の状態の患者の治療について検討します。
(すべておこなうわけではないので心配は不要です)
I) 治療で最も重要なことは治療可能な原因を特定し、それを取り除くこと。もし、それができなければ 蘇生の可能性は低い。(つまり、診断が重要!!)
II)PEA の原因となる10 種類の原因は覚える必要はありませんが10 個あることは知っていてください。
IV) 生食500ml の急速負荷(15-30 分で)に反応するかどうかもチェックする。
V) 薬物治療ではアドレナリン1mg iv(以後3~5分ごとに)は必須。次に絶対的または相対的除脈の場合 アトロピン1mg iv (総量3 mg まで)も適応がある。(頻脈では使用しないこと) 輸液負荷、アドレナリンiv、
アトロピンiv はPEA では常に頭に浮かべること。
注:ただし、アトロピンは徐脈(相対的なものも含めて)に対して使用する。頻脈では不要。
注:自己心拍のない状態における薬物投与では『アドレナリン 1mg 静注後、生食 20ml で後押して上肢を 20 秒 間挙上して下さい』と指示し、薬剤が速やかに心臓に達するようにする。
PEA の心電図波形、診断、治療法(5H’s & 5T’s )
患者の状態・PEA の原因 典型的な心電図波形 原因を推測する所見 推奨される治療 Hypovolemia
(循環血液量減少)
狭い QRS 頻脈
現病歴、平坦な頸静脈 輸液、必要に応じて輸血
Hypoxia(低酸素血症) 除脈 チアノーゼ 、血液ガス所 見 気道の問題(閉塞)
酸素化、換気、確実な気 道確保吸引も有効 Hydorogen ion
(アシドーシス)
QRS の振幅が小さい 糖尿病の罹患 腎不全
適応 があれ ば炭酸水 素 ナトリウム (メイロン)
Hyper/Hypo kalemia
(高/低カリウム血症)
高/低カリウム血症とも
*広い QRS 高カリウム血症では 高い T 波 、サイン状波形
糖尿病 、腎不全 、透析 中 、シャントの存在 内服薬(ソルダクトン では高カリウム誘発も)
カルシウム 、炭酸水素ナ トリウム、ブドウ糖+インシ ュ リ ン 、 イ オ ン 交 換 樹 脂 、血液透析
Hypo thermia (低体温) J 波(オズボーン波) 寒冷環境暴露、中心体温 復温 Tablet(薬物中毒) 薬剤により様々
多くは QT 延長
除脈
空の薬剤ビン 瞳孔(縮瞳など)
神経学的所見
薬剤の確定 、気管挿管 胃洗浄、活性炭 、特異 的な拮抗薬 血液浄化、
透析など Tamponade cardiac
(心タンポナーデ)
狭い QRS 頻脈
既往歴(心膜炎など)
胸骨圧迫時の無脈 頸静脈怒脹
心のう穿刺(実際は不可 能、危険 by YOKOI)
心膜切開術(日本では)
Tension pneumothorax 狭い QRS 気胸、外傷の既往 針による胸腔穿刺
呼吸音一側のみ聴取可 手術など Thrombosis, heart
(心筋梗塞)
異常な 12 誘導心電図
*Q 波*ST の異常
*T 波陰転
既 往 歴 ( 糖 尿 病 、 狭 心 症、 心筋梗塞など)マー カー(トロポニン、CPK )
日本ではステント挿入など のインターベンションが行 われる
Thrombosis, lung
(肺血栓塞栓症)
狭い QRS 頻脈
既往歴・現病歴(手術、
長時間フライトなど)
胸骨圧迫時の無脈 頸静脈怒脹
血栓除去術
(透視下、外科的など)
血栓溶解剤投与(これは 日本では行われない)
注:この表はガイドライン2005 のプロバイダーマニュアルP55-56 から引用しましたがいくつかの記述で日本の 実情と合わない部分がありましたので変更してあります。
注:高/低カリウム血症の所見・治療では高カリウム血症についてのみ記載しました。コースでは低カリウム血症は 扱わないので低カリウム血症の所見・治療は省略しました。
注:内因性のPEAの救命率は多くの論文で10%未満(4-9%程度)です。PEAの病態は非常に幅広く、エコーで心 臓がしっかり動いているにもかかわらず低血圧(60mmHgとか)のために脈が触れないものから、ほとんど心臓 は動いていなくてただ電気的に波形がでているだけというものもあります。
*高カリウム血症の治療法
ICLS コースの『PEA』のシナリオステーション(午後に行うロールプレイ)ではかならず出てくるシナリオの一つ に高カリウム血症があります。
心電図は高くとがった T 波、②平坦な P 波、③PR 間隔延長(1度 AV ブロック)、④広い QRS などさまざま。
PEA Primary Survey
Secondary Survey D : は鑑別診断・原因検索
Hypovolemia Tablets (薬物中毒)
Hypoxia (低酸素血症) Tamponade, cardiac (心タンポナーデ)
Hydrogen ion (acidosis) Tension pneumothorax(緊張性気胸)
Hyper/hypokalemia Thrombosis, coronary (心筋梗塞)
(高/低カリウム血症)
Hypothermia (低体温) Thrombosis, pulmonary (肺塞栓症)
アドレナリン 1 mg iv(3~5分ごとに)
硫酸アトロピン 1mg iv (除脈ならば)(3~5分ごと)、 適応があれば輸液・輸血、
透析、胸腔穿刺(鎖骨中線・ 第二肋間)、気管吸引、復温、薬剤投与など
治療はカリウム濃度により異なる。
以下にカリウム濃度別の治療法を示す。優先度の高い順に記載してある。
1) 軽度(5~6mEq/l)
① 利尿薬:ラシックス 40-80mg iv.
② イオン交換樹脂:ケーキサレート 15- 30g(50-100mlの2%ソルビトールにとかして)を経口的、
経直腸的に投与 2)中等度(6~7mEq/l)
① インスリン・ブドウ糖療法
② 重炭酸ナトリウム(メイロン) 50mEq を5分以上かけて静注。
③ アルブテロール(2 刺激薬)の吸入:10 -20mg を15秒以上かけて 3)高度(7mEq/l 以上)
A.カリウムを細胞内に移動させる
1.塩化カルシウム 500-1000mg を2~5分かけて静注 2.重炭酸ナトリウム 50mEq を5分以上かけて静注
3.ブドウ糖・インスリン療法(詳細省略:横井)
4.アルブテロール(2 刺激薬)の吸入:10-20mg を15秒以上かけて B.カリウム排泄の促進
5.利尿薬:ラシックス 40- 80mg iv.
6. イオン交換樹脂:ケーキサレート 15-30g(50-100mlの2%ソルビトールにとかして)を経口的、
経直腸的に投与 7.血液透析
11. Asystole
すでに前述してありますのでそちらを参照してください。ここでは一部補足が必要な事項について記載します。
*蘇生を行わない理由がない場合(DNAR がない時)は、心静止患者の救命率が低くともプライマリー サーベイとセカンダリーサーベイは必ず行い、アドレナリンivをすべての患者に施行する必要があります。
(アトロピンの効果は疑問視されていますので使っても使わなくても結構です)(G2010)
*循環血液量が少ない状態と考えられる場合には(たとえば出血、脱水)急速輸液を行い反応をみる必要 があります。
*PEA と同様に治療可能な原因について検索を行いましょう。
*蘇生をいつ中止するのか?
以上の点について注意してください。
12.ICLS コースで使用する薬剤
*薬剤投与について
G2005 ではセカンダリーに移行したら直ちに『静脈ライン』を確保することが推奨されています。気管 挿管中でも手があいていれば行います。VF/脈なしVT では通常セカンダリーでも最初から気管挿管 は行わずバッグ・マスクで換気を行いますので、速やかに静脈を確保します。
場所は『末梢静脈』が第一選択です。(肘正中皮静脈がよいとされていますが、べつに決まっていま せん。心停止中は静注しても、薬剤がなかなか心臓に達しませんから、
『静注生食 20Ml で後押し上肢を 20 秒挙上』 という操作を行ってください。