目次
2.5 臨床に関する概括評価 ... 3
2.5.1 製品開発の根拠 ... 3
2.5.1.1 光線力学的療法 ... 3
2.5.1.2 ME2906及び半導体レーザによる光線力学的療法... 3
2.5.1.3 食道癌 ... 3
2.5.1.4 化学放射線療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌 ... 4
2.5.1.5 化学放射線療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌の治療上の課題 ... 5
2.5.1.6 化学放射線療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌における光線力 学的療法の意義 ... 5
2.5.1.7 開発の経緯 ... 6
2.5.1.8 ME2906及び半導体レーザによる光線力学的療法の化学放射線療法又は放 射線療法後の局所遺残再発食道癌適応を目指す意義 ... 6
2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 ... 8
2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 ... 8
2.5.4 有効性の概括評価 ... 9
2.5.4.1 試験デザイン ... 9
2.5.4.1.1 本治験を比較試験で行わない根拠 ... 9
2.5.4.1.2 評価項目の設定根拠 ... 10
2.5.4.1.3 目標被験者数の設定根拠 ...11
2.5.4.2 患者背景 ...11
2.5.4.3 局所完全奏効(L-CR) ... 12
2.5.4.4 確定局所完全奏効(生検陰性)(cL-CR) ... 13
2.5.4.5 病変ごとの局所完全奏効(生検陰性)(Lesion L-CR) ... 14
2.5.4.6 病変ごとの確定局所完全奏効(Lesion cL-CR) ... 14
2.5.4.7 局所無増悪生存期間(L-PFS) ... 15
2.5.4.8 無増悪生存期間(PFS) ... 16
2.5.4.9 局所無増悪期間(L-TTP) ... 17
2.5.4.10 全生存期間(OS) ... 18
2.5.4.11 効能・効果 ... 19
2.5.4.12 光線力学的療法の治療条件 ... 19
2.5.4.12.1 薬剤投与量 ... 19
2.5.4.12.2 薬剤投与からレーザ光照射までのインターバル時間 ... 19
2.5.4.12.3 照射エネルギー密度 ... 20
2.5.4.13 PDTに際しての留意事項 ... 20
2.5.4.14 有効性のまとめ ... 20
2.5.5 安全性の概括評価 ... 21
2.5.5.1 試験デザイン ... 21
2.5.5.2 被験者背景 ... 21
2.5.5.3 比較的よく見られる有害事象及び副作用... 22
2.5.5.4 重篤な有害事象及び副作用 ... 24
2.5.5.5 皮膚光感受性 ... 25
2.5.5.6 PDT施行にあたっての留意点 ... 26
2.5.5.7 安全性まとめ ... 27
2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論 ... 28
2.5.6.1 ベネフィット ... 28
2.5.6.2 リスク ... 29
2.5.6.3 結論 ... 29
2.5.7 参考文献 ... 30
略号一覧
略号・記号 省略していない表現又は定義
cL-CR confirmed local complete response(確定局所完全奏効)
CR complete response(完全奏効)
CRT chemoradiotherapy(化学放射線療法)
CT computed tomography(コンピューター断層撮影法)
CTCAE common terminology criteria for adverse events(有害事象共通用語規準)
DLT dose-limiting toxicity(用量制限毒性)
ECOG-PS Eastern Cooperative Oncology Group Performance status
(ECOGの一般状態指標)
EDL excimer dye laser(エキシマダイレーザ)
EMR endoscopic mucosal resection(内視鏡的粘膜切除術)
ESD endoscopic submucosal dissection(内視鏡的粘膜下層剥離術)
FAS full analysis set(最大の解析対象集団)
GCP Good Clinical Practice(医薬品の臨床試験の実施の基準)
JCOG Japan Clinical Oncology Group(日本臨床腫瘍研究グループ)
L-CR local complete response(局所完全奏効)
L-PD local progressive disease(局所進行)
L-PFS local progression-free survival(局所無増悪生存期間)
L-TTP local time to progression(局所無増悪期間)
MedDRA/J Medical Dictionary For Regulatory Activities/ Japanese(ICH国際医薬用語集日本語版)
NE not evaluable(評価不能)
OS overall survival(全生存期間)
PDT photodynamic therapy(光線力学的療法)
PFS progression-free survival(無増悪生存期間)
PMDA Pharmaceuticals and Medical Devices Agency(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
QOL quality of life(生活の質)
RT radiotherapy(放射線療法)
2.5 臨床に関する概括評価
2.5.1 製品開発の根拠 2.5.1.1 光線力学的療法
光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)は、腫瘍組織や新生血管への集積性がある光感受性 物質を患者に投与した後、組織に特定の波長のレーザ光を照射することにより光感受性物質に光化学 反応を引起し、産生された一重項酸素(活性酸素)の強い酸化作用により細胞を変性壊死させる治療 法である。
PDTは、光感受性物質が存在し、かつレーザ光が照射された部位のみに光化学反応を起こさせる 局所的療法である。細胞を変性壊死させる作用をもつ一重項酸素の寿命は0.04 ~ 4 μ秒と短いため、
効果の範囲はレーザ光が照射された部位に限られている1)-4)。また、PDTで使用するレーザ光は一般 的なレーザ治療に用いられる高出力のものとは全く異なり、出力は弱い。高出力のレーザ治療は、
PDTと異なり、熱エネルギーにより病巣を焼き切る(蒸散させる)方法であり、癌治療の分野でも 腫瘍を縮小、あるいは破壊するために用いられている。この方法の課題は腫瘍選択性がなく、レーザ 光が照射された部位は正常部位でも反応が起こることである。一方、PDT用レーザの出力は手をか ざしてもほとんど熱さを感じない程度であり、反応が起こる範囲を光感受性物質が集積した病変部位 へとコントロールできることが特徴である。以上のことから、PDTは正常組織への侵襲性の低い、
病変部位選択的な治療法として、様々な疾患領域で発展していくことが予想される。
2.5.1.2 ME2906及び半導体レーザによる光線力学的療法
タラポルフィンナトリウム(販売名: 注射用レザフィリン®100 mg、以下「ME2906」)はPDTに 用いる光感受性物質であり、半導体レーザ(販売名:PDレーザ、PDレーザBT)との組合せにより、
2003年10月に早期肺癌を適応として、2013年9月に原発性悪性脳腫瘍を適応として承認されている。
ME2906は第二世代の光感受性物質であり、第一世代のポルフィマーナトリウム(販売名: フォト
フリン®静注用75 mg)と比較して体内からの排泄速度が速いため、光感受性物質の投与で問題とな
る光線過敏反応の消失が早いという特長がある。ポルフィマーナトリウムでは投与後少なくとも1ヵ 月間は遮光する必要があり、その遮光の照度は300ルクス以下でなければならない。光線過敏反応の 消失が早いME2906は遮光期間が2週間へと短縮され、その遮光の照度も500ルクス以下で問題ない ことが確認されている。レーザ装置については、ポルフィマーナトリウムと組み合わせて用いるエキ シマダイレーザ(excimer dye laser: EDL)は、装置の大きさが飲料自動販売機程度あり、本体質量は
250 kg以上と人力では持ち上げられないものであった。一方、ME2906と組み合わせて用いる半導体
レーザは、質量14 kgであり、一人でも持ち運べるサイズまで小型・軽量化された。また、消費電力 も少なく、定期交換を必要とする色素が不要でメンテナンスが容易といった特長もある。
2.5.1.3 食道癌
食道癌とは、食道に発生する悪性腫瘍の総称であり、主な組織型は扁平上皮癌と腺癌である。日本 人の食道癌の90%は扁平上皮癌で、特に男性に多い。食道癌の国内総患者数は、厚生労働省「平成 23年(2011年)患者調査」によれば、男女合計28000人と推計され、まれな疾患である。本邦の食
道癌の進行度分類は、壁深達度、リンパ節転移及び他の臓器の転移の程度によってStage 0 ~ IVに分 けられている。食道癌は、現在推奨されている最善の治療を受けたとしても予後が悪い疾患である。
特に進行期であるStage IIB ~ IVで、化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)、放射線療法
(radiotherapy: RT)を施行した患者の1年生存率は46.9%、30.5%と、満足のいく予後とは言えない。
食道癌診断・治療ガイドライン(2012年4月版)24)及び医学書25)によると、食道癌の原発巣におけ る腫瘍増大に伴って以下の病態が発現し、quality of life(QOL)を著しく損なうことが知られている。
すなわち、原発巣の増大に伴う病態には、1)食道狭窄による嚥下障害とそれによる栄養障害、2)
周囲臓器・神経の圧迫による気道狭窄・神経麻痺、3)気道や縦隔との瘻孔形成に起因する感染症や 膿瘍形成、4)腫瘍による胸痛発現などがある。
食道癌の治療には、大きく分けて、内視鏡的治療、外科手術、化学療法、RTの4つの治療法があ り、最近ではそれらの効果的な組合せによる集学的治療が治療成績向上につながっている。
外科手術は、3領域の拡大リンパ節郭清に加え、術前化学療法の導入により治療成績が向上してい る。従って、現在、我が国の進行食道癌(Stage II/III)に対する標準治療は、術前化学療法+外科手術 とされている。一方で、外科手術には依然として解決すべき課題もある。例えば、外科手術における 治療関連死亡、術後合併症や術後のQOLの低下は他の消化器癌の手術に比べると多いと言われてい る。
RTと化学療法を同時併用するCRTは、機能温存可能な治療法であり、非外科的治療を行う場合の 標準的な治療として位置づけられている。CRTにおいて高い抗腫瘍効果が見られた場合、食事の通 過障害を改善させる症状緩和的な効果があることが報告されている26),27)。Stage IV患者を対象とした CRTにより、95%の被験者で原発巣が消失、縮小又は維持された。この時、75%(30/40名)で通過 障害が改善され、治療前に中心静脈栄養などのサポートが必要だった症例の85%(17/20名)でサポー トが不要になったという報告26)がある。一方、CRTは局所の遺残再発率が34 ~ 40%6), 7)と高く、さら に遺残再発病変への標準的治療法は確立していない。この点が根治性の面から大きな問題となってい る。
これら現在の治療法において、CRT後の遺残再発病変に対する非外科的な治療法が確立されれば、
食道癌に対する治療の成績向上が期待される。
2.5.1.4 化学放射線療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌
CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌の患者数は以下のように推定される。化学療法又はRTの対 象となる患者は、食道癌に罹患した患者の30%程度との報告があり5)、国内総患者数28000人を基に 算出すると年間約8400人が該当する。さらに、化学療法とRTを組み合わせたCRTを実施した食道 癌患者の遺残再発率は34 ~ 40%という報告があり6), 7)、年間約3000人が該当すると考えられる。
CRT又はRT後に原発巣の完全奏効(complete response: CR)が得られず遺残した場合の腫瘍の再 増大速度は極めて速く、増悪までの中央値は37日との報告もある28)。急速な原発巣の増大は以下の 病態を引き起こすと考えられる24),25)。
1) 原発巣の進行に伴う食道狭窄によって高頻度に発現する嚥下障害は、「食べる」という人間に とって重要な生命維持機能を損ない、患者の栄養状態の悪化を招くことになる。
2) 気道圧迫は気管・気管支狭窄を招き、呼吸機能を低下させ、時には突然の呼吸停止を来たす場 合もある。反回神経への浸潤や圧迫による神経麻痺は、誤嚥性肺炎の原因にもなりえる。
3) 周囲臓器への直接浸潤による気管や肺との瘻孔形成は、肺炎、縦隔炎、膿胸などを生じること になる。唾液などの気道への流れ込みによる咳嗽・呼吸困難感などにより、食道狭窄がなくて
も経口摂取が不能となることもある。さらに、癌の浸潤により大動脈への穿通をきたす場合に は、大量吐血などの致死的病態も生じる。
4) 腫瘍により胸痛が発現する。
従って、上記のような著しいQOLの低下を引き起こす原因となる原発巣の腫瘍増大が起きる以前 に、腫瘍を非外科的に局所コントロールし、根治が可能になれば、腫瘍増大に伴う嚥下障害、栄養障 害、気道狭窄、誤嚥、瘻孔形成、胸痛発現等を防ぎ、QOLの向上にもつながる。このためには、新 たな治療選択肢としての、CRT後の局所遺残再発病変に対する有効かつ安全な局所治療の開発が急 務である。
2.5.1.5 化学放射線療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌の治療上の課題
現在、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対する確立された標準治療はなく、一般的には サルベージ外科手術や化学療法が試みられている。しかし、RT単独治療患者には、高齢者や合併症 を有する者が多く、局所遺残や再発を来しても実際にはサルベージ外科手術や化学療法は難しいこと が多い。また、CRT後の局所遺残再発病変に対する化学療法はCR率0 ~ 6%と報告されており、根 治は極めて難しい8)-13)。CRT後のサルベージ外科手術では、肺炎などの呼吸器合併症、縫合不全等が 報告されている。特に通常手術に比べて気管壊死・穿孔や再建胃管壊死などの組織虚血による重篤な 合併症の頻度が高いことが問題とされている。さらに術後合併症による在院死亡が7 ~ 22%にのぼり
14)-18)、安全な治療とは言い難く、その侵襲性の高さから実施困難な患者や治療拒否する患者も少なく
ない。
このような状況から、より侵襲性の低いサルベージ治療の開発を目指した内視鏡的治療の応用が武 藤らにより進められてきた。その一つとして、遺残再発が粘膜固有層にとどまる場合のサルベージ治 療として、内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection: EMR)による原発巣のコントロールが 試みられてきた19), 20)。しかしながら、サルベージEMRには、治療対象となる癌の壁深達度が粘膜固 有層にとどまる小さな病変に限られるという大きな課題がある。また、RT後に認められる潰瘍の残 存や瘢痕による高度の線維化を伴う患者では技術的に困難であることも課題の一つと考えられてい る。
2.5.1.6 化学放射線療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌における光線力学的療法の意義 CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者におけるPDTの目的は、EMR又は内視鏡的粘膜下層剥 離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)が適応外である潰瘍の残存した病変、瘢痕による高度 の線維化を伴う病変及び粘膜下層から固有筋層に局所遺残再発した病変を、安全かつ腫瘍選択的に破 壊することで、原発巣を局所コントロールし根治させることにある。
原発巣の局所コントロールにより嚥下障害等のQOLが改善することから26),27)、PDTで原発巣を根 治させることによりQOLの更なる改善が期待できる。
CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌は、確立された標準治療がなく、現在試みられている外科手 術、化学療法、内視鏡的治療も安全性、有効性、適応範囲の面でそれぞれに課題がある。これに対し て、PDTによる低侵襲のサルベージ治療は、サルベージ外科手術では得られない高い安全性とサル ベージ化学療法では得られない原発巣の根治を非外科的に達成することが期待できる。そのことによ り、腫瘍増大に伴う嚥下障害、栄養障害、気道狭窄、誤嚥、瘻孔形成、胸痛発現等を防ぎ、QOLの 向上にもつながると考えられる。
2.5.1.7 開発の経緯
食道癌に対するME2906と半導体レーザを用いたPDTの臨床報告はなく、レーザ照射エネルギー 密度と食道組織障害の程度を基礎的に検討したデータもなかったため、武藤らは、非臨床試験として イヌの食道を用いて安全性を検討した(【4.2.3.7.7-01】)。その結果、ヒト食道では50 J/cm2を安全 な開始量と判断した。次に、武藤らは、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対するME2906 と半導体レーザを用いたPDTの推奨レーザ照射エネルギー密度を明らかにする目的で、第I/II相臨 床研究(UMIN試験ID: UMIN000003970)を行った。臨床研究(第I相)は用量制限毒性(dose-limiting
toxicity: DLT)を主要エンドポイントに設定して実施された。ME2906の投与量を40 mg/m2に固定し、
かつ半導体レーザの照射エネルギー密度を、レベル1(50 J/cm2)、レベル2(75 J/cm2)、レベル3
(100 J/cm2)まで漸次増量した。各レベル3名、計9名が登録され(男性9名、年齢中央値: 72歳)、
レベル1 ~ 3のいずれもDLTとなる有害事象は発生しなかった。またGrade 2以上の有害事象も認め
られなかった。有効性においては、56%(5/9名)がCRとなった(T1では67%(4/6名)、T2では
33%(1/3名))。この結果、食道における推奨レーザ照射エネルギー密度は100 J/cm2と決定した
(【5.3.5.2-02(参考資料)】)。
臨床研究(第I相)と同様のCRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者を対象に、レーザ照射エ ネルギー密度を100 J/cm2に設定し、臨床研究(第II相)を実施した。10名が登録され、第I相試験
で100 J/cm2照射した3名を含めた全13名(男性12名、女性1名、年齢中央値: 70歳)について解
析した。有効性では、主要評価項目である局所治療効果判定のCR率は61.5%(8 名/13 名、片側90%
信頼区間40.2% ~ )、壁深達度で分けると、T1では77.8%(7/9名)、T2では25.0%(1/4名)であっ
た。安全性では、発現した有害事象はいずれもGradeは1又は2であり、特に問題となる事象はなかっ た。解析の結果、高い有効性と安全性が示唆されたことから、本治療法は有望な治療法と考えられた
(【5.3.5.2-03(参考資料)】)。
この臨床研究成績を基に、第II相探索試験の位置付けで、医師主導治験が計画された。前述の通 りに、現在、対象疾患であるCRT又はRT後の局所遺残再発食道癌に対する確立された標準治療は ないことから、対照群を置かずに単群試験として実施する計画とし、PMDAとの対面助言(
相談、20 年 月 日実施)が実施された。
以上のような経過を経て、2012年から医師主導治験が実施された。その結果、局所完全奏効(生 検陰性)(local complete response: L-CR)率が全対象に対して88.5%という極めて良好な成績が示さ れた。これは、サルベージの化学療法の効果と治療介入する臨床的意義を考慮して全対象に対して設 定された閾値CR率15%を大きく上回るものであった。なお、壁深達度ごとのL-CR率は、T1に対
して100.0%、T2に対して57.1%であった。安全性の面では、重篤な副作用は発現せず、本治療法に
よって大きな問題となる有害事象は特に認められなかった。この良好な成績を踏まえ、「化学放射線 療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌」の効能追加を目的とした承認事項一部変更の承認申請 を行うこととした。
なお、治験対象としたCRT又はRT後の局所遺残再発食道癌は非常にまれな疾患であり、ME2906 は希少疾病用医薬品として指定された(2014年3月17日付 薬食審査発0317第2号)。
2.5.1.8 ME2906及び半導体レーザによる光線力学的療法の化学放射線療法又は放射線療法後の
局所遺残再発食道癌適応を目指す意義
CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌は、確立された標準治療がなく、現在試みられている外科手 術、化学療法、内視鏡的治療も有効性、安全性、適応範囲等においてそれぞれに課題があり、新たな 治療法が強く望まれている。
食道癌領域におけるPDTの治療は1980年代より試みられており、今日まで世界的に多くの研究が 行われ良好な成績が得られている。CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌に対しては、矢野らによる ポルフィマーナトリウムを用いた臨床研究21)-23)や、武藤らによるME2906を用いた臨床研究及び医師 主導治験が実施された。その結果、極めて高いL-CR率と安全性が確認されており、新たなサルベー ジ治療として期待できる。また、ポルフィマーナトリウムPDTは、1ヵ月以上の遮光が必要なため、
患者の負担が少ない次世代PDTの開発を求められている。ME2906によるPDTでは遮光期間も短縮 され、より患者負担の少ない治療法といえる。
光感受性物質及びレーザ装置で食道癌を適応として本邦で承認されているのは、表在型食道癌にお けるポルフィマーナトリウム及びEDL、YAG-OPOレーザーのみである。
このような医学的、社会的背景から、ME2906及び半導体レーザによるPDTをCRT及びRT後の 遺残再発食道癌に適応拡大することにより、有効で安全なサルベージ治療の新たな選択肢を医療現場 に提供する意義は大きいと考える。
2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 該当なし
2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 該当なし
2.5.4 有効性の概括評価
CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対するME2906及び半導体レーザ(PNL6405EPG)に よるPDTの有効性は、医師主導治験で評価された。医師主導治験の用法用量等の治療条件は、医師 主導治験に先立ち実施した臨床研究の成績を基に設定した。なお、本申請では医師主導治験成績を評 価資料、臨床研究成績を参考資料と位置付けた。
本項では、評価資料である医師主導治験の成績を中心に有効性を評価した。
2.5.4.1 試験デザイン
医師主導治験は、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対するPDTの有効性及び安全性を 検討することを目的に、多施設共同一般臨床試験として実施された。目標被験者数は25名とした。
CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者を対象に、ME2906 40 mg/m2を1回静脈内投与し、投与4
~ 6時間後に、病変に対して100 J/cm2のレーザ光照射を行った。レーザ光照射翌日の内視鏡観察にて 明らかな遺残が認められた場合にのみ、追加のレーザ光照射を実施した。
有効性の主要評価項目はL-CRとした。副次的評価項目は、確定局所完全奏効(生検陰性)
(confirmed L-CR: cL-CR)、局所無増悪生存期間(local progression-free survival: L-PFS)、無増悪生 存期間(PFS)、局所無増悪期間(local time to progression: L-TTP)、全生存期間(OS)、病変ごと の局所完全奏効(生検陰性)(Lesion L-CR)及び病変ごとの確定局所完全奏効(生検陰性)(Lesion cL-CR)とした。なお、主要評価項目である局所完全奏効(生検陰性)の評価材料となる内視鏡検査 及び病理報告書については、中央判定委員会による中央判定を最終判定とし、中央判定結果を主要評 価項目の解析データとして採用した。中央判定委員会による局所治療効果判定の結果、総合局所治療 効果判定が局所進行(local progressive disease: L-PD)となった場合は、局所再発・局所増悪「有」と 判定されたこととし、副次的評価項目L-PFS、PFS、L-TTPに反映した。
有効性解析対象集団は、本治験に登録され、ME2906投与又はPDTの一部でも実施された被験者
をfull analysis set(FAS)と定義し、登録後に重大な治験実施計画書違反又はGCP違反があると判明
した被験者、登録後に不適格であると判明した被験者を除外した。
2.5.4.1.1 本治験を比較試験で行わない根拠
現在、医師主導治験の対象疾患であるCRT又はRT後の遺残再発食道癌に対する確立した標準治 療はない。その中で、試みられている他の治療方法との比較試験は、以下に示した根拠により不可能 と考えた。
1) サルベージ外科手術との比較
CRT又はRT後の遺残再発患者に対する治療は一般的に外科手術が行われている。サルベージ 外科手術の有効性の成績は、5年生存率が25 ~ 38%と報告されている14)-18)。そのうち、遺残再 発病変がT2(固有筋層浸潤)までの被験者では3 ~ 5年生存率が40 ~ 60%と比較的良好である
14), 16)。しかし、術後合併症の頻度や治療関連死亡の頻度が高く安全性面での課題が大きいため、
サルベージ外科手術は実臨床でも試験的要素を持つ治療として行われているにすぎない。また、
本治験では、サルベージ外科手術を希望しない又は手術不可能な患者を対象としていること、
サルベージ外科手術とPDTでは治療の侵襲度が異なることから、比較試験を行った場合の同 意取得は極めて困難で実現性に乏しいと考えた。
2) ポルフィマーナトリウムを用いたPDTとの比較
既 存のポルフィマーナトリウムを用いたPDTを同時対照とした比較試験の実施は困難であった。
3) 化学療法との比較
食道癌CRT後の化学療法は、ドセタキセル単剤での治療が一般的である。本邦で行われた食 道癌に対するドセタキセル第II相試験での奏効率は20%、CR率は0%であった8)。また、その 他の抗癌剤による局所遺残再発病変に対する治療成績でも、奏効率0 ~ 16%、CR率0 ~ 6%と根 治は極めて難しいことが知られている8)-13)。PDTは根治を目的としたサルベージ治療であり、
根治が期待できない化学療法を同時対照とする比較は倫理的に許容されないと考えた。
4) 内視鏡的粘膜切除術との比較
武藤らは食道癌CRT後の遺残再発病変に対するEMRの治療成績を報告している19), 20)。EMR は入院期間も短く、重篤な合併症や遮光期間もないため、最も簡便な治療である。しかし、RT 後の著しい線維化を伴う組織を切除するのは技術的にも困難で、粘膜固有層にわずかに残存す る小さな遺残再発病変しか完全切除を見込めない。EMRで非完全切除となった場合の再発率 は57%20)と高いため、粘膜下層から固有筋層に浸潤した場合の治療は、PDTを選択する方が根 治を期待できると考えた。以上のように、EMRとPDTでは治療適応が異なるため比較試験は 困難である。本治験では、PDTの有効性を適正に評価するため、EMRで治癒切除可能と判断 できない病変を選択する基準を設けた。
2.5.4.1.2 評価項目の設定根拠
1) 主要評価項目「局所完全奏効(生検陰性)(L-CR)」設定の妥当性
PDTによる治療は局所のみに対して行うものであるため、PDTの有効性はレーザ光を照射した 原発巣で評価すべきである。また、食道癌原発巣のCRT後の遺残再発腫瘍の再増大速度は極 めて速く、1~2ヶ月で食道狭窄を来し、経口摂取不能となることもまれではない。このことは、
局所コントロールが可能になれば、QOLの改善に結びつく可能性があることを示している。な お、矢野らから報告されたポルフィマーナトリウムとEDLを用いたサルベージPDTを実施し た患者37名での長期成績をPDT後にCRとnon CRの判定で比較した。その結果、CRと判定 された被験者の3年、5年生存率がそれぞれ72.4%、61.3%なのに対して、non CRと判定され た被験者では殆どの患者が2年以内に死亡し、3年、5年生存率は8.9%、0%であり、局所CR 率と生存率は相関しているとも考えた。
2) 副次的評価項目設定の妥当性
L-CRが4週間以上継続した場合を確定L-CR(cL-CR)として副次的評価項目とした。また、
悪性腫瘍の治療における一般的評価項目であるOS及びPFSを副次的評価項目として設定した。
なお、PDTは局所療法であるため、PDTの実施部位における増悪・再発を評価するL-PFS及
びL-TTPも副次的評価項目として設定した。L-CR及びcL-CRは、病変ごとの局所治療効果判
定を元に患者ごとの最良効果を評価しているが、病変ごとの局所治療効果の最良効果がL-CR である病変をLesion L-CR、L-CRが4週間以上継続しcL-CRとなった病変を、Lesion cL-CRと して評価した。
2.5.4.1.3 目標被験者数の設定根拠
医師主導治験は、L-CR率を主要評価項目として、ME2906及び半導体レーザ(PNL6405EPG)に よるPDTの有効性を評価することを主目的として実施した。
本治験では、サルベージ治療として外科手術を希望しないか手術が不可能な患者を対象としている。
化学療法に関してはCRがほとんど期待できず(ほぼ0%)8)-13)、標準的薬剤も確立していないため、
CRとなる患者がわずかでも得られれば、安全性の点も含めて本治療が有用であると判断できる。
ただし、本治療によって得られるL-CR率が10 ~ 15%以下であれば、治療介入としての臨床的意義 が小さいと考える。このことから、閾値L-CR率を15%と設定した。
一方、矢野らによるCRT後遺残再発37名(PDT前T1: 20名、T2: 17名)に対するポルフィマー ナトリウムPDTの結果は、T1及びT2のCR率はそれぞれ75.0%及び41.2%であり、壁深達度の違い により明らかな差を認めた(T1: 75%、95%信頼区間: 50.9% ~ 91.3%、T2: 41.2%、95%信頼区間: 18.4%
~ 67.1%)22)。矢野らがその後に行ったポルフィマーナトリウムPDTを用いたT1の遺残再発病変に
対するサルベージPDTの第II相試験でも、CR率76%(19/25名、95%信頼区間: 54.9% ~ 90.6%)と 再現性のあるデータが得られている23)。また、肺癌の第II相試験では、ME2906と半導体レーザを用 いたPDTのCR率がポルフィマーナトリウムPDTと同程度であることが報告されている。これらの 背景に基づき、期待L-CR率をT1に対して75%、T2に対して40%とした。
以上の設定のもと、事前予測分布に基づくベイズ流の方法を用いて、L-CR率が目標L-CR率(閾 値L-CR率に等しいとする)を上回る事後確率が97.5%を超える場合に治療が有効であると判断する こととした。必要被験者数は、T1割合と壁深達度別期待L-CR率を考慮し、デザイン事前分布のも とで治療が有効であると判断する確率が90%以上になるように求め、必要被験者数は25名以上と求 められた。
T1及びT2の最低限の情報が得られるようにするため、T1とT2をそれぞれで少なくとも6名以上 を登録することとした。25名中6名(24%)以上と設定したのは、抗癌剤の第I相試験で用いられる 3例コホート法を考慮し、少なくともこれと同等の精度で情報を収集するためである。
また参考のため、頻度論に基づく必要症例数も求めると次のようになる。すなわち、T1あるいは T2の何れかの割合が24%を下回らないように登録することを前提とし、この範囲で検出力が最小と
なるT1割合24%の下では閾値L-CR率15%、期待L-CR率48.3%となる。以上の設定の下、片側有
意水準2.5%、検出力90%以上とすると、必要症例数は22例(検出力91%)以上となる。ベイズ流の
方法で求められた症例数(25例以上)は、頻度論でいう検出力の上でも90%以上を保つことが分か る。
以上の考察に基づき、目標被験者数を25名とした。
2.5.4.2 患者背景
医師主導治験での有効性解析対象被験者の人口統計学的及び他の基準値の特性は【2.7.3.3.1.2.1】に 示した。
FAS 26名は、全被験者が男性で、年齢の中央値は71.5歳(範囲51 ~ 86歳)で、80歳以上が7名
であった。Performance status(ECOG-PS)は、スコア0が73.1%(19/26名)、スコア1が23.1%(6/26 名)、スコア2が3.8%(1/26名)であった。病理組織型は、全て扁平上皮癌であった。登録時のTNM 分類による壁深達度は、T1a(癌腫が粘膜内にとどまる病変)が0名、T1b(癌腫が粘膜下層にとど まる病変)が19名、T2(癌腫が固有筋層にとどまる病変)が7名であった。T1b及びT2を1病変 ずつ認めた被験者が2名おり、PDTの対象となったのは28病変(T1b: 21病変、T2: 7病変)であっ た。
これらの背景は、市販後に治療対象となる実際の患者集団8), 11), 12)と比べて、特筆すべき相違はない ものと考えられた。
2.5.4.3 局所完全奏効(L-CR)
医師主導治験では、L-CR率を主要評価項目として設定した。総合局所治療効果の最良効果がL-CR である被験者の割合をL-CR率とした。局所治療効果の判定基準を【表2.7.3-2】及び【表2.7.3-3】に 示した。なお、局所とは、医師主導治験の登録時に確認された食道癌の遺残再発病変の全てであり、
本治験によるPDTを実施された部位を示した。評価対象病変(照射病変)が2つある場合、【表2.7.3-4】
に従って各時点における総合局所治療効果を判定した。局所治療効果は、L-CR > L-nonCR/nonPD >
L-PD > NEの順に良好であるとした。最良効果は、Day 22以降最長でPDT施行24週後までの局所治
療効果判定において記録された局所治療効果から、最も良好な判定とした。
医師主導治験の有効性解析対象(FAS)26名でのL-CRについてベイズ統計に基づく結果を表
2.5.4-1に示した。なお、二項分布に基づく結果を表 2.5.4-2に示した。L-CRは23名で、非L-CRは3
名であった。
ベイズ流の方法を用いて推定した事後分布において、L-CR率が閾値L-CR率(15%)を上回る事
後確率は100.0%となり、97.5%を超えたことから本治療は有効と判断した。また、二項分布に基づく
点推定値は、88.5%(23/26名)、その95%信頼区間は69.8% ~ 97.6%であった。
表 2.5.4-1 局所完全奏効(L-CR)の事後分布(ベイズ統計)(FAS)(医師主導治験)
観察値 Beta(a,b)
L-CR数 非L-CR数 計 A B
23 3 26 24 4 0.885 100.0% 70.8% ~ 95.8%
最頻値 目標値15%以上
の確率 a) 95%信用区間
L-CR: 局所完全奏効、非L-CR: 非局所完全奏効
a) 主たる解析の判断基準: L-CR率が目標値とする15%以上となる確率が97.5%を超える場合、「治 療が有効である」と判断する
5.3.5.2-01: CSR表11.4-1
表 2.5.4-2 局所完全奏効(L-CR)(二項分布)(FAS)(医師主導治験)
L-CR数 L-PD数 L-nonCR/
nonPD数 NE数 計 L-CR率 95%信頼区間 a)
23 0 3 0 26 88.5% 69.8% ~ 97.6%
L-CR率(%)={(L-CR数)/(L-CR数+L-PD数+L-nonCR/nonPD数+NE数)}×100 a) 95%信頼区間はF分布に基づく正確な方法により求めた。
5.3.5.2-01: CSR表11.4-2
現在、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対する確立された標準治療はなく、一般的に行 われているサルベージ外科手術、化学療法のうち、許容できる安全な治療として実施されている化学
療法のCR率が0 ~ 6%8)-13)と報告されていることを考慮すると、医師主導治験で得られたL-CR率
88.5%(23/26名)という有効性成績は、現在の化学療法を明らかに上回る成績であった。
2.5.4.4 確定局所完全奏効(生検陰性)(cL-CR)
医師主導治験では、cL-CR率を副次的評価項目として設定した。総合局所治療効果の最良効果で L-CRが4週間以上継続しcL-CRとなった被験者の割合をcL-CR率とした。
FAS 26名での、cL-CRについてベイズ統計に基づく結果を表 2.5.4-3に示した。なお、二項分布に
基づく結果を表 2.5.4-4に示した。
ベイズ流の方法を用いて推定した事後分布において、cL-CR率が閾値L-CR率(15%)を上回る事
後確率は100.0%となり、97.5%を超えたことから本治療は有効と判断した。
また、二項分布に基づく点推定値は、88.5%(23/26名)、その95%信頼区間は69.8% ~ 97.6%であっ た。
L-CRとなった全被験者がcL-CRとなり、高い有効性が確認された。
表 2.5.4-3 確定局所完全奏効(cL-CR)の事後分布(ベイズ統計)(FAS)(医師主導治験)
観察値 Beta(a,b)
cL-CR数 非cL-CR数 計 A B
23 3 26 24 4 0.885 100.0% 70.8% ~ 95.8%
最頻値 目標値15%以上
の確率 a) 95%信用区間
cL-CR: 確定局所完全奏効、非cL-CR: 非確定局所完全奏効
a) 主たる解析の判断基準: L-CR率が目標値とする15%以上となる確率が97.5%を超える場合、「治 療が有効である」と判断する
5.3.5.2-01: CSR表11.4-4
表 2.5.4-4 確定局所完全奏効(cL-CR)(二項分布)(FAS)(医師主導治験)
cL-CR数 not cL-CR数 a) L-PD数 L-nonCR/
nonPD数 NE数 計 cL-CR率 95%信頼区間 b)
23 0 0 3 0 26 88.5% 69.8% ~ 97.6%
cL-CR率(%)={(cL-CR数)/(cL-CR数+not cL-CR数+L-PD数+L-nonCR/nonPD数+NE数)}×100 a) not cL-CR: cL-CR以外のL-CR
b) 95%信頼区間はF分布に基づく正確な方法により求めた 5.3.5.2-01: CSR表11.4-5
2.5.4.5 病変ごとの局所完全奏効(生検陰性)(Lesion L-CR)
病変ごとの局所治療効果の最良効果がL-CRと評価された病変の割合をLesion L-CR率とした。そ の結果を表 2.5.4-5に示した。FASの28病変のうち、Lesion L-CRは25病変、Lesion L-CR率(95%
信頼区間)は89.3%(71.8 ~ 97.7%)であった。
表 2.5.4-5 病変ごとの局所完全奏効(Lesion L-CR)(FAS)(医師主導治験)
L-CR数 L-PD数 L-nonCR/
nonPD数 NE数 計 Lesion L-CR率 95%信頼区間 a)
25 0 3 0 28 89.3% 71.8% ~ 97.7%
Lesion L-CR率(%)={(L-CR数)/(L-CR数+L-PD数+L-nonCR/nonPD数+NE数)}×100 a) 95%信頼区間はF分布に基づく正確な方法により求めた。
5.3.5.2-01: CSR表11.4-6
また、壁深達度で分けたときのLesion L-CR率について表 2.5.4-6に示した。T1(癌腫が粘膜下層 までにとどまる病変)のLesion L-CR率は100%(21/21病変)、T2(癌腫が固有筋層にとどまる病変)
でのLesion L-CR率は57.1%(4/7病変)で、ポルフィマーナトリウムを用いたPDTの成績22)である
T1 75%、T2 41.2%と比較しても遜色ない治療成績であった。
表 2.5.4-6 壁深達度別の病変ごとの局所完全奏効(Lesion L-CR)(FAS)(医師主導治験)
壁深達度 L-CR数 L-PD数 L-nonCR/
nonPD数 NE数 計 Lesion
L-CR率 95%信頼区間a)
T1 21 0 0 0 21 100.0% 83.9% ~ 100.0%
T2 4 0 3 0 7 57.1% 18.4% ~ 90.1%
Lesion L-CR率(%)={(L-CR数)/(L-CR数+L-PD数+L-nonCR/nonPD数+NE数)}×100 T1: 癌腫が粘膜下層までにとどまる病変、T2: 癌腫が固有筋層にとどまる病変 a) 95%信頼区間はF分布に基づく正確な方法により求めた。
5.3.5.2-01: CSR表11.4-9
2.5.4.6 病変ごとの確定局所完全奏効(Lesion cL-CR)
病変ごとの局所治療効果の最良効果でL-CRが4週間以上継続しcL-CRとなった病変の割合を Lesion cL-CR率とした。その結果を表 2.5.4-7に示した。FASの28病変のうち、Lesion cL-CRは25 病変、Lesion cL-CR率(95%信頼区間)は、89.3%(71.8 ~ 97.7%)であった。
表 2.5.4-7 病変ごとの確定局所完全奏効(lesion cL-CR)(FAS)(医師主導治験)
cL-CR数 not cL-CR数 a) L-PD数 L-nonCR/
nonPD数 NE数 計 Lesion cL-CR率 95%信頼区間 b)
25 0 0 3 0 28 89.3% 71.8% ~ 97.7%
Lesion cL-CR率(%)={(cL-CR数)/(cL-CR数+not cL-CR数+L-PD数+L-nonCR/nonPD数+NE数)}×100 a) not cL-CR: cL-CR以外のL-CR
b) 95%信頼区間はF分布に基づく正確な方法により求めた 5.3.5.2-01: CSR表11.4-7
2.5.4.7 局所無増悪生存期間(L-PFS)
医師主導治験では、L-PFSを副次的評価項目に設定した。L-PFSのイベント定義を表 2.5.4-8に示 した。
表 2.5.4-8 局所無増悪生存期間(L-PFS)のイベント定義(医師主導治験)
評価項目 イベントa), b)
局所無増悪生存
(local progression-free survival: L-PFS)
1) 総合局所治療効果のL-PD
2) 総合局所治療効果がL-nonCR/nonPDまたはNEのまま局所治療効果 判定の期間(PDT施行24週後まで)が終了した後、その後の内視鏡 検査で局所に明らかな肉眼的増悪(潰瘍の増大、粘膜下腫瘍様隆起 の増大)を認めた
3) 総合局所治療効果がL-CRと判定された後、内視鏡検査で局所に腫瘍 の再発を認めた
4) あらゆる原因による死亡 a) イベントが複数ある場合は、いずれか早い日とする。
b) 期間算出にあたっては症例登録日を起算日とする。
Kaplan-Meier法によるL-PFSの解析結果を図 2.5.4-1に示した。被験者26名のフォローアップ期間
は36 ~ 511日間であったが、多くの被験者は治験期間終了までにはイベントが発生せず、1年以内の
フォローアップ期間で打ち切りとなった。その中で発生したイベントは5名であった。なお、打ち切 りデータが多数を占めたが、医師主導治験のフォローアップ期間で収集したデータからは中央値は 428日と算出された。
図 2.5.4-1局所無増悪生存期間(L-PFS)のKaplan-Meier曲線(FAS)(医師主導治験)
5.3.5.2-01: CSR図11.4-3
2.5.4.8 無増悪生存期間(PFS)
医師主導治験では、PFSを副次的評価項目に設定した。PFSのイベント定義を表 2.5.4-9に示した。
表 2.5.4-9 無増悪生存期間(PFS)のイベント定義(医師主導治験)
評価項目 イベントa), b)
無増悪生存
(progression-free survival:
PFS)
1) 総合局所治療効果のL-PD
2) 総合局所治療効果がL-nonCR/nonPD又はNEのまま局所治療効果 判定の期間(PDT施行24週後まで)が終了した後、その後の内視 鏡検査で局所に明らかな肉眼的増悪(潰瘍の増大、粘膜下腫瘍様 隆起の増大)を認めた
3) 総合局所治療効果がL-CRと判定された後、内視鏡検査で局所に 腫瘍の再発を認めた
4) CT等の画像検査でリンパ節や遠隔臓器等に、新たな転移又は増悪
を認めた(リンパ節転移はCT上短径が1cmを越えるリンパ節腫 大を転移・増悪とする)
5) 臨床的に明らかにリンパ節や遠隔臓器等に、新たな転移又は増悪 を認めた
6) あらゆる原因による死亡 a) イベントが複数ある場合は、いずれか早い日とする。
b) 期間算出にあたっては症例登録日を起算日とする。
Kaplan-Meier法によるPFSの解析結果を図 2.5.4-2に示した。被験者26名のフォローアップ期間は
36 ~ 511日間であったが、多くの被験者は治験期間終了までにはイベントが発生せず、1年以内のフォ
ローアップ期間で打ち切りとなった。その中で発生したイベントは10名であった。なお、打ち切り データが多数を占めたが、医師主導治験のフォローアップ期間で収集したデータからは中央値は428 日と算出された。
図 2.5.4-2 無増悪生存期間(PFS)のKaplan-Meier曲線(FAS)(医師主導治験)
5.3.5.2-01: CSR図11.4-4
2.5.4.9 局所無増悪期間(L-TTP)
医師主導治験では、L-TTPを副次的評価項目に設定した。L-TTPのイベント定義を表 2.5.4-10に示 した。
表 2.5.4-10 局所無増悪期間(L-TTP)のイベント定義(医師主導治験)
評価項目 イベントa), b)
局所無増悪
(local time to progression:
L-TTP)
1) 総合局所治療効果のL-PD
2) 総合局所治療効果がL-nonCR/nonPDまたはNEのまま局所治 療効果判定の期間が終了した後、その後の内視鏡検査で局所 に明らかな肉眼的増悪(潰瘍の増大、粘膜下腫瘍様隆起の増 大)を認めた
3) 総合局所治療効果がL-CRと判定された後、内視鏡検査で局 所に腫瘍の再発を認めた
a) イベントが複数ある場合は、いずれか早い日とする。
b) 期間算出にあたっては症例登録日を起算日とする。
Kaplan-Meier法によるL-TTPの解析結果を図 2.5.4-3に示した。被験者26名のフォローアップ期間
は36 ~ 511日間であったが、多くの被験者は治験期間終了までにはイベントが発生せず、1年以内の
フォローアップ期間で打ち切りとなった。その中で発生したイベントは3名であった。なお、打ち切 りデータが多数を占めたが、医師主導治験のフォローアップ期間で収集したデータからは中央値は 428日と算出された。
図 2.5.4-3 局所無増悪期間(L-TTP)のKaplan-Meier曲線(FAS)(医師主導治験)
5.3.5.2-01: CSR図11.4-5
2.5.4.10 全生存期間(OS)
医師主導治験では、OSを副次的評価項目に設定した。OSのイベント定義を表 2.5.4-11に示した。
表 2.5.4-11 全生存期間(OS)のイベント定義(FAS)(医師主導治験)
評価項目 イベントa)
全生存
(overall survival: OS)
あらゆる原因による死亡
a) 期間算出にあたっては症例登録日を起算日とする。
Kaplan-Meier法によるOSの解析結果を図 2.5.4-4に示した。被験者26名のフォローアップ期間は
36 ~ 511日間であったが、多くの被験者は治験期間終了までにはイベントが発生せず、1年以内のフォ
ローアップ期間で打ち切りとなった。その中で発生したイベントは2名で、中央値は、イベント発生 が50%を超えなかったため、推定できなかった。
図 2.5.4-4 全生存期間(OS)のKaplan-Meier 曲線(FAS)(医師主導治験)
5.3.5.2-01: CSR図11.4-6
2.5.4.11 効能・効果
各種食道癌のうち、根治治療を目的としたCRT又はRTを行ったにも関わらず局所に遺残再発し た食道癌がPDTの対象になり得ると考えた。
CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌に対するサルベージ治療として、外科手術、化学療法、内視 鏡的治療(EMR又はESD)などが試みられているが、現在確立された標準治療はない。それぞれに 課題があり、有効かつ安全な新しいサルベージ治療の開発が求められている。
そこで、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者を対象に医師主導治験を実施した結果、L-CR
率88.5%(23/26名)という高い有効性が確認された。
以上のことから、効能・効果は「化学放射線療法又は放射線療法後の局所遺残再発食道癌」とした。
2.5.4.12 光線力学的療法の治療条件 2.5.4.12.1 薬剤投与量
医師主導治験での薬剤投与量は、早期肺癌適応及び原発性悪性脳腫瘍適応と同じ用量であり、臨床 研究でも使用された40 mg/m2とした。ME2906は早期肺癌及び原発性悪性脳腫瘍を適応として既に 承認されており、ECOG-PS、臨床症状、理学的所見、血液検査所見などに加えて、皮膚光感受性試 験も本用量で確認されている。また、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者を対象とした臨床研 究も同じ用量が使用されており、本用量では明らかに過剰と考えられる問題は生じていない。した がって、安全性の観点から、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者を対象とした医師主導治験で も同じ用量を用いることとした。
医師主導治験の結果、臨床研究と同様に、用量が明らかに過剰と考えられる問題は生じず、良好な 有効性も認められた。
以上のことから、薬剤投与量は現行の承認条件と同じ「40 mg/m2」とした。
2.5.4.12.2 薬剤投与からレーザ光照射までのインターバル時間
医師主導治験でのインターバル時間は、早期肺癌適応と同じであり、臨床研究でも用いられた4 ~ 6 時間とした。ただし、食道癌では、食道という臓器の特性上、呼吸性移動、心拍動、蠕動又は攣縮等 により、レーザ光照射を適切に行えず、その場合、腫瘍消失(CR)に至らない可能性がある。この ことから、確実な照射を行うために、明らかな遺残が見られた場合に限り、翌日の追加照射も認める こととした。
臨床研究では、実際に投与23 ~ 28時間にて翌日の追加照射を6名で実施し、安全性上の大きな問 題もなく、2名でCRが得られた。検査室又は治療室の確保等の治験運用上の都合を考慮して、医師 主導治験では、翌日の追加照射のインターバル時間は「22 ~ 32時間」とした。なお、肺癌適応時に 実施した第I相試験のデータにより、このインターバル時間の範囲内においては、血中薬物濃度に大 きな違いはない。
医師主導治験の結果、全26名中16名で翌日の追加照射が行われ、安全性面で問題となることは生 じず、13名でCRが得られた。このことから翌日の追加照射は重要であると考えられた。
以上のことからインターバル時間は、基本的には現行の承認条件と同じ「4 ~ 6時間」とし、翌日 の内視鏡観察で明らかな遺残を認めた場合にのみ追加のレーザ光照射を行うこととし、そのインター バル時間は「22 ~ 32時間」とした。
2.5.4.12.3 照射エネルギー密度
医師主導治験での照射エネルギー密度は、早期肺癌適応と同じであり、臨床研究でも用いられた 100 J/cm2とした。
臨床研究(第I相)において、照射エネルギー密度を50 J/cm2(レベル1)、75 J/cm2(レベル2)
及び100 J/cm2(レベル3)にて、低レベルから漸増し、3例コホート法を用いて照射エネルギー密度
の推奨量を検討した。各レベルでのDLTの発現状況に基づき、最大耐用量を推定の上、照射エネル ギー密度推奨量を決定した。
最大の解析対象9名におけるDLT発現被験者数を表2.7.3-26に示した。照射エネルギー密度
50 J/cm2(レベル1)、75 J/cm2(レベル2)及び100 J/cm2(レベル3)のいずれにおいても、DLTは
発現しなかった。レベル3においてもDLTを認めなかったことから、照射エネルギー密度推奨量は レベル3の照射エネルギー密度100 J/cm2と決定した。これを踏まえて、臨床研究(第II相)以降は、
照射エネルギー密度100 J/cm2にてPDTを施行した。
医師主導治験の結果、臨床研究と同様に、照射エネルギー密度が明らかに過剰と考えられる安全性 上の問題は認められず、良好な有効性が認められた。
以上のことから、照射エネルギー密度は現行の早期肺癌と同じ100 J/cm2とした。
2.5.4.13 PDTに際しての留意事項
医師主導治験では、対象病変をT2(癌腫が固有筋層にとどまる病変)までとしており、T3(癌腫 が食道外膜に浸潤している病変)及びT4(癌腫が食道周囲臓器に浸潤している病変)に対する有効 性及び安全性は確立できていないことから、適応患者を選択する際には超音波内視鏡検査等を実施し、
腫瘍病変の壁深達度を確認することとする。
また、食道という臓器の特性から、呼吸性移動、心拍動、蠕動又は攣縮等により、レーザ光照射が 不十分になることがあるので注意する必要がある。逆に、病巣部位以外に照射してしまうと組織障害 のおそれがあるので、レーザ光照射に際しては、病巣の周辺部以外の正常組織への照射は、極力抑え るように注意することとする。
なお、L-CRとなった場合でも再発のリスクを考慮し、早期肺癌適応と同様に、本療法施行後は、
定期的に内視鏡検査、組織診等を行い、病巣の経過を観察することとする。
2.5.4.14 有効性のまとめ
医師主導治験の結果、被験者26名で、ベイズ流の方法を用いて推定した事後分布において、L-CR 率が閾値L-CR率(15%)を上回る事後確率は100%となり、97.5%を超えたことから本治療は有効と 判断した。また、二項分布に基づく点推定値は、88.5%(23/26名)、その95%信頼区間は69.8% ~ 97.6%
であった。壁深達度別のLesion L-CR率は、T1で100%(21/21病変)、T2で57.1%(4/7病変)であっ た。
以上の結果より、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対するME2906を用いたPDTは、
サルベージ化学療法では得られない原発巣の根治を非外科的に達成することが期待できる。そのこと により、腫瘍増大に伴う嚥下障害、栄養障害、気道狭窄、誤嚥、瘻孔形成、胸痛発現等を防ぎ、QOL の向上にもつながると考えられた。
2.5.5 安全性の概括評価
CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対するME2906及び半導体レーザ(PNL6405EPG)に よるPDTの安全性は、医師主導治験で評価された。医師主導治験の用法用量等の治療条件は、治験 に先立ち実施した臨床研究の成績を基に設定した。なお、本申請では医師主導治験成績を評価資料、
臨床研究成績を参考資料と位置付けた。
本項では、評価資料である医師主導治験の成績を中心に安全性を評価した。
2.5.5.1 試験デザイン
医師主導治験は、CRT又はRT後の局所遺残再発食道癌患者に対するPDTの有効性及び安全性を 検討することを目的に、多施設共同一般臨床試験として実施した。目標被験者数は25名とした。CRT 又はRT後の局所遺残再発食道癌患者を対象に、ME2906 40 mg/m2を1回静脈内投与し、投与4 ~ 6 時間後に病変に対して100 J/cm2のレーザ光照射を行った。レーザ光照射翌日の内視鏡観察にて、明 らかな遺残が認められた場合にのみ、追加のレーザ光照射を実施した。
安全性の評価項目は、有害事象・副作用の発現率、臨床検査値の推移、皮膚光感受性試験結果とし た。有害事象は、「ME2906を投与した際、又は半導体レーザを使用した際に被験者に生じる、あら ゆる好ましくないあるいは意図しない徴候(検査値の異常変動を含む)、症状又は病気のことであり、
ME2906又は半導体レーザとの因果関係の有無は問わない」と定義した。なお、ME2906投与からPDT
施行4週後であるDay 29(治療期間)までに新たに発現したものを有害事象として取り扱った。
ME2906・PDTによる副作用は、「被験者に生じた有害事象のうち、ME2906・PDTとの因果関係が
「関連なし」以外と判定された有害事象」と定義した。有害事象のGradeは、「有害事象共通用語規 準(Common Terminology Criteria for Adverse Events : CTCAE)v4.0日本語訳JCOG版」に従って、Grade
1 ~ 5の5段階で判定した。心電図検査は、登録前及びPDT施行1日後であるDay 2に12誘導心電
図を測定した。胸部X線検査は、登録前、Day 2、Day 8及びDay 15に測定した。皮膚光感受性試験 は、被験者の手掌背部を直射日光に5分間曝露させ、被験者の手掌背部の状態により、紅斑等の光線 過敏反応を評価した。有害事象の表示、集計に際しては、症例報告書に記載された症状・所見、件名 を「ICH国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J ver.17.0)」を用いて下層語に読み替え、基本語、器 官別大分類で分類した。本資料中の有害事象名は基本語を用いた。安全性解析対象は、ME2906投与 又はPDTの一部でも実施された全被験者とした。
2.5.5.2 被験者背景
医師主導治験の安全性解析対象被験者はFASと同じであり、人口統計学的及び他の基準値の特性 は【2.7.4.1.3.1】に示した。
2.5.5.3 比較的よく見られる有害事象及び副作用
安全性解析対象26名のうち、有害事象は26名(100.0%)に199件発現した。このうち、ME2906 及びPDTとの因果関係が否定できなかった有害事象(副作用)は、26名(100.0%)に発現した109 件であった。半導体レーザとの因果関係が否定できなかった有害事象(半導体レーザによる副作用)
はなかった。有害事象による死亡はなく、治験の中止の原因となった有害事象もなかった。
Grade 3以上の有害事象、副作用の発現頻度を表 2.5.5-1 、表 2.5.5-2 に示した。
Grade 3以上の有害事象が6名(23.1%)に発現し、その内訳は、リンパ球数減少が4名(15.4%)、
血中ナトリウム減少、好中球数減少、低血圧が各1名(3.8%)であった。これらは全てGrade 3であ り、Grade 4、Grade 5の事象はなかった。
比較的よく見られた有害事象(発現率が10%以上の事象)は、臨床検査以外では、食道痛が14名
(53.8%)、発熱が8名(30.8%)、便秘が5名(19.2%)、臨床検査では、血中アルブミン減少が23 名(88.5%)、C-反応性蛋白増加が21名(80.8%)、リンパ球数減少が16名(61.5%)、アスパラギ ン酸アミノトランスフェラーゼ増加、血中カリウム増加が各8名(30.8%)、血中ナトリウム減少が 7名(26.9%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、ヘモグロビン減少が各6名(23.1%)、総 蛋白減少、白血球数減少が各4名(15.4%)、血中カリウム減少、γ-グルタミルトランスフェラーゼ 増加、好中球数増加、尿中蛋白陽性、血中アルカリホスファターゼ増加が各3名(11.5%)であった。
Grade 3以上の副作用は2名(7.7%)に発現し、その内訳はいずれもGrade 3のリンパ球数減少で
あった。
比較的よく見られた副作用(発現率が10%以上の事象)は、臨床検査以外では、食道痛が14名
(53.8%)、発熱が8名(30.8%)であった。臨床検査では、C-反応性蛋白増加が21名(80.8%)、
血中アルブミン減少が9名(34.6%)、リンパ球数減少が7名(26.9%)、アラニンアミノトランス フェラーゼ増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加が各5名(19.2%)、γ-グルタミル トランスフェラーゼ増加、好中球数増加が各3名(11.5%)であった。
副作用の中で最も高頻度で認められたC-反応性蛋白増加は、早期肺癌で46名中12名(26.1%)、
原発性悪性脳腫瘍で27名中0名(0.0%)であり、それらと比較して発現頻度が高くなっている。し かし、有害事象の発現頻度を比較すると、早期肺癌では46名中26名(56.5%)、原発性悪性脳腫瘍 では27名中26名(96.3%)であり、食道癌も含めて、いずれも高頻度で認められた。
食道癌患者に対してPDTを実施した場合に治療部位に発現する特徴的な副作用は、食道痛、嚥下 障害、食道狭窄であった。治療部位での炎症反応及び使用した消化管内視鏡による消化管粘膜などの 損傷が原因と考えられた副作用は、発熱、C-反応性蛋白増加、好中球数増加であった。これらの症状 は軽度で、薬剤投与等の処置で十分コントロール可能であった。なお、サルベージ外科手術の術後合 併症として報告されているような重篤な有害事象は発現しなかった。
早期肺癌及び原発性悪性脳腫瘍適応の治験データと同様に本医師主導治験でも認められた副作用 は、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、γ- グルタミルトランスフェラーゼ増加、血中アルカリホスファターゼ増加などの肝機能値異常であった。
いずれも程度は軽度であり処置なく回復した。
なお、肝機能検査値異常の副作用の発現頻度(治験データ)は、早期肺癌では49名中8名(16.3%)、
原発性悪性脳腫瘍では27名中18名(66.7%)、食道癌では26名中7名(26.9%)であり、合算する と102名中33名(32.4%)であった【表2.7.4-37】。