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窯芸 作陶及び釉薬の研究

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(1)

窯芸 作陶及び釉薬の研究

著者 松澤 香織

雑誌名 東京家政大学生活科学研究所研究報告

13

ページ 25‑32

発行年 1990‑03

出版者 東京家政大学生活科学研究所

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009790/

(2)

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ブリット粕に使用する顔料とブリット 写真1

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卜紫色粕と4号紫マット粕のテストピース        写真4

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ブリット色粕のテストピース Nα5〜No.8 写真3

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下絵具(紫)による粕のテストピース

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 環元焼成   写真6

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(4)

窯芸 作陶及び粕薬の研究

松澤香織

Ceramic Art−Studies of Ceramics and Glaze

Kaori MATSUZAWA

        緒言

 この二年間を迎えるために,次のことを自分 なりの大きなテーマとしました。私のこれまで の作陶の中心は「食器」の制作にありました。

テーブルコーディネイトにたいへん興味をもっ ていた私は,グルメ時代の幅広い食生活を楽し むようになってきた私達日本人にとっても「食 器」は欠かすことのできない,とても重要な演 出の一っだと思っていたからです。そこで古く は縄文時代から土器を通じて人間の生活に密着 してきた「やきもの」を今までとは違った角度 から自分なりの方法で見っめ直してみたい,そ してそこから自分の世界を土を作って表現した いと思い,テーマとしました。

 一年目の制作は,自然を取り上げました。異 常な気象の変化や,年々失われていく自然に対

して,もっと自然を見っめ直そうではないか,

という考えの元に自分なりの表現方法としてオ ブジェを制作してみたのです。この作品では,

粕がけの際以前から使ってみたいと思ってい た何色かの下絵具を使用し,水,空気,光など を表現しました。中でも特に私の気に入ってい た色である下絵具の紫も,他の色と同様部分的

に彩色を行い,オブジェは完成しました。オブ ジェの完成後,彩色されている紫の色に尚もひ かれ,これを粕薬にすることはできないのだろ うか。そして是非生活に生かせるものに施粕し てみたい。と思い,そこから二年目の研究が始 まったのです。

 「紫」と一口に言ってもその種類は多く,赤 に近いものから青に近いものまであり,又調合 物や焼成方法,焼成温度,施紬する土によって

も違います。そこで次の三っに絞りました。低 温で安定した色が得られるブリット色紬,下絵 具の紫から得られる粕,そして市販の二種類の 紬を使い,それぞれの粕調の変化を調べてみま

した。

1.プリットによる紫の色粕と   土の違いによる紬調の変化

1.プリットについて

 ブリット(Frit)とは,炭酸ソーダ,カリ,

又は棚酸,棚砂などの水に溶ける原料を,珪石 などの水に溶けない土石原料と一緒に調合し,

増塙の中に入れ1200℃位の温度で融かしてガラ

(5)

東京家政大学生活科学研究所研究報告 第13集 ス状にする。これをブリットと言う。このブリッ

トを用いる場合の利点としては次のことがあげ

られる。

①水溶性の原料を直接粕に用いずに他の原料と  一緒に調合して熔融することで,水に不溶の  ガラスにすることができ,水溶性の原料を直  接粕に用いた時に生ずる変化を防ぐことがで  きる。

②低温では反応の遅い原料(バリウム化合物な  ど)は,始めからブリット成分に入れておく  と粕成分として多量にとれ,又使用温度範囲  を広げることができ顔料の発色にも効果的で  ある。

を混合し,ミル調合で作る。その基礎ブリット には,Nα1からNα21まで21種類のブリット粕が あり,色紬を作るために用いられる。ここで使 用するブリット粕は,No. 1で焼成温度はsko5a から03a用の標準ブリットである。組成は次の とおりである。(※ブリット紬Nα1〜Nα21は技 報堂出版素木洋一著「紬とその顔料」により示

されているブリットを使用)

丹英砂鉛石棚

34.0%長石 12.0%

24.0 石灰石   7.0 18.0  カオリン  5.0

③粕としては好ましい原料でも人間にとって有  害であるものをブリットにすることで無害な  ものにすることができる。

④組成を同じにし,生原料を粕成分として用い  るのとブリットにするのでは,後者の方が高  濃度の粕泥漿にすることができ,又嵩を小さ  くすることができる。またブリット粕は,化  学反応が完全に終っているので化学的に不活  性であるため,素地や,下絵具に対してより  一層安定する。

 1)ブリット粕の作り方

 あらかじめ増塙を窯の中で800℃前後に加熱 しておき,調合物を投入して温度を上げ,ガラ ス状態になったらこれを水中に流す。ガラスは 白濁して軽石のようになり粉砕しやすくなる。

注意1.ここで作ったブリット粕は小量である     ため調合物が反応して融かした状態か     ら水中に流さないでそのまま冷却し取     り出して粉砕する。

注意2.棚砂を多く加えた調合物は加熱すると     同時に瑚砂が膨張してあふれ出るので     増塙に投入する際,数回に分けて入れ     なければならない。又棚砂を無水瑚砂     にするとこのことは防げる。

⑤それぞれの粕の原料の比重,粒子の大きさ,

 形状などが大きく違ってもブリットにするこ  とで調合物組成の分離を止めることができる。

 そして均一な発色や著しい光沢をもたらすこ  とができる。

⑥あらかじめ熔融することで粕原料から大部分  のガスが除かれ,気泡の原因を少なくおさえ  ることができる。

これらの利点を生かしブリット粕の制作をする。

2.ブリット粕の制作

ブリット色粕は基礎になるブリット粕に顔料

3.顔料を作る

 顔料の調合物と調合比にっいては次に示した とおりに行う。それぞれの顔料の調合物に応じ て調合物を乾式混合で行うものと,湿式紛砕で 行うものとあるので注意しなければならない。

顔料の調合物を混合した後の焼成温度は,それ ぞれの指定された温度で行う。写真1参照

 1)顔料の調合物と調合比

①薄紫色顔料No.10 表一1

  劃  ︹  鉛  酸錫酸ムヒ  ロ酸棚ク

99.0%

9.01 0.90

一26一

(6)

      窯芸 作陶及び紬薬の研究

※表一1で示した調合物は,少量の水を用い⑦薄紫色顔料Nα41 表一7   て湿式紛砕し,ぬれたままskO5a〜03a

  (1000℃〜1040℃)で焼成する。

②薄紫色顔料No.11  表一2

酸化錫 硯目酸

クロム酸鉛〔黄〕

88. 89%

8.89 2.22

酸化錫 棚 酸

酸イピコノ ミノレト

クロム酸鉛〔赤〕

88. 9%

8.9 0.9 1.3

 ※表一2で示した調合物は表一1で示した方   法で紛砕し焼成する。

③薄紫色顔料Nα12  表一3

62.42%

31.21 6.24 0.13

 ※表一7に示した調合物は乾式混合し,sk3a   〜4a(1140℃〜1160℃)で焼成する。

⑧灰色顔料No.31   表一8

   銅   ︹   鉛   酸錫石酸ム化灰 

酸石棚ク

酸化錫

酸化アンチモン

95.90%

4.10

 ※表一3で示した調合物は表一1で示した方   法で紛砕し焼成する。

④赤色色顔料No.40  表一4

45.5%

28.4 20.5 4.5 1.1

※表一8で示した調合物は,乾式混合しsk8

〜9(1250℃〜1280℃)で焼成する。

    リ    カ    酸    ム錫石英酸ロ化灰  ク酸石石棚重

 ※表一4で示した調合物は前二者(酸化錫,

  石灰石)を乾式混合し,熱水に溶かした重   クロム酸カリ溶液を混合物に注ぎ充分に混   合してからsk4a〜5a(1160℃〜1180℃)焼   成する。

⑤暗青色顔料Nα28  表一5

40.0%

20.0 20.0 20.0

4.ブリット色粕の制作

 ブリット色粕は基礎になるブリット紬と顔料 を混合し,ミル調合で作らなければならない。

ブリット色紬の調合物と調合比は次に示したと おりで行う。又,ここで使用するブリット粕は 量産できないため,先に説明したブリット粕Nα 1に最も近ものを市販されているブリットに変 えて使用する。

 ※ブリット粕は日陶産業株式会社の有鉛ブリッ   トM−51を使用。

 1)ブリット色粕の調合物と調合比

①明帯赤薄紫色不透明粕

ブリットNo, 1 薄紫色顔料No.10 カオリン カオリン

酸イヒコノX ノレト

亜鉛華 酸化錫

80.0%

12.0 8.0

②帯赤薄紫色 不透明紬

ブリットNo. 1

カオリン 薄紫色顔料No.11

80。0%

8.0 12,0

 ※表一5に示した調合物は湿式紛砕し,skO3   a〜01a(1040℃〜1080℃)で焼成する。

⑥明青色顔料Nα60  表一6

86.0%

10.0 4.0

③柔らかい薄紫色 不透明光沢紬

水酸化アルミニウム 亜鉛華

酸イヒコノN ノレト

ブリットNo. 1

カオリン 石 英

薄紫色顔料No.12

83.0%

 4.0  2.5  10.5

※表一6で示した調合物は乾式混合し,sk7

〜8(1230℃〜1280℃)で焼成する。

(7)

東京家政大学生活科学研究所研究報告 第13集

④薄紫色 不透明マット粕 表一9

﹄﹄﹄︒5﹄

フ石力滑赤 胸英刺石幽 州ン職糊

d 依醐

   殊    助    勾 60

S111410

⑤明藤色不透明粕

ブリットNo. 1

酸化錫 カオリン 暗青色顔料No,28

84.35%

8.44 6.28 0.93

⑥藤色 不透明光沢紬

  剥がれやすいので注意しなければならない。

  これらの問題を少しでも防ぐために布海苔,

  又はCMCを適量混入するとよい。

③紬がけをして乾燥し,本焼して完成である。

 ※本焼の焼成温度は,表一9の④薄紫色,不   透明マット粕がskO2a(1060℃),それ以外   の全ての色粕がskO5a〜03a(1000℃〜iO40   ℃)で焼成する。

     釦ヨ         む     ハ㎞    料ト  ン 顔ツ錫華リ英色リ化鉛オ 青フ酸亜力石明 74.0%

5.0 5.0 4.0 6.0 6.0

⑦明薄紫色不透明光沢粕

80.0%

4.0

6. 0

8.0 2.0

5.ブリット色紬の土の違いによる紬調の変化  このようにして出来上ったブリット色粕を使

い次のような実験を行った。6種類の土を選び その土に出来上った8種類のブリット色粕を施 紬し,粕調の変化を見るのである。使用した6 種類の土は,

ブリットNo. 1

カオリン 石 英

薄紫色顔料No.41 灰色顔料Nα31

⑧薄紫色 不透明光沢粕

80.0%

8.0 12.0

噸⊥9自り04﹁0β0

※6種類の土を適量,

伸ばし厚みを5ミリ5センチ角の正方形に 作り乾燥させ素焼したものをテストピース  とする。テストピースに施粕した結果は次  のとおりである。   写真2,3参照

五斗蒔土(白土)

特赤粘土 五斗蒔黄土

テラコッタ+信楽粘土(同量ずっ混合)

信楽粘土 信楽荒目土

        それぞれ板状に叩いて

ブリットNo. 1

カオリン 薄紫色顔料No.41

 2)ブリット色紬を作り焼成する。

①それぞれの調合比による調合物を合わせて混  ぜ,水をたして乳鉢で充分にすりっぶす。

 ※この際,調合物によっては粒子が荒い物が   あるので,金槌で砕いてできるだけ細かく   してから乳鉢でする。

②乳鉢で充分すりっぶしたブリット色粕に水を  たし,紬がけに適した水分量にする。

 ※本来はこれでブリット色粕として粕がけを   するわけであるが,ブリット色粕中の調合   物が非常に沈澱しやすいので常にかくはん   しなければならない。又,粕がけの後粕が

 今回のブリット色粕では,鉛を含んだ有鉛ブ リットを使用したため,その特徴である光沢,

透明感,色調などのよさが得られることが実際 にわかった。問題点としては,低温焼成の粕を 使用したため,この焼成方法に適した土が限ら れてしまうということである。テストピースの 中でも,⑤の信楽粘土を⑥の信楽荒目土は楽焼 としても使用できるものなので,これ以外の土 があわなかったのである。このことを解決する ために二っの方法を行なってみた。一っは,粕 がけをしないまま本焼の温度で焼成をし,今度 は粕がけをして指定の温度で再び焼成する方法 である。これは土自体は普通に焼き締まるが,

〜28〜

(8)

窯芸 作陶及び粕薬の研究

Nα〔ブリット色軸〕

  粕調 の 変化

k土の種類1−6まで先に記載〕

 菖蒲の花のやや青みがかった色に発色。土に 謔髞白イの変化はあまりみられなかったが琴山が ッを薄くすると1,5,6の土が和の発色にむ

「ているように思う。

 ①に比べてやや赤みが強く光沢のある紫に発 F。1,5は,この粕をより鮮やかに見ぜ2,

R,4,6は深みのある味わいに見せている。

 小豆色に近い光沢のある紫色に発色。和を厚 ェけしたものと薄がけしたものでは,粕調に大 ォな差が出る。土の種類に関係なく厚がけの方

≒Fに近い。1,5は紫色に近い発色を見せ,

Q,3,4,6は微妙に小豆がかった紫色にな

驕B

 紅藤色のような紫色に発色。厚がけの場合,

yによる粕調の変化に差は全くない。薄がけの 鼾№ノは,1,5のような白っぽい土にむく粕 ナある。2,3,4,6の薄がけは避けたい。

 藤色というより青に近い発色である。土によ 髞白イの変化に差はあまりないが,2,3,4 ノついては微妙に色の深みを感じる。

 淡い水色に発色。2,3,4は多少,土の赤 ンが紬にむいているのは,1,5である。

 紫紺というような色で,やや青みがかった紫 Fである。1,5,6は明るめの紫紺で,白系 フ土が,発色をよりすんだきれいな紫に見せて

「る。2,3,4は土の赤みが土に影響し,や 竦ヤみがかっている。

⑦に近い色で,やや赤みが強く,あっがけし ス部分は白い斑点が出るのが特徴である。1,

Tの白い土に対して青みの強い紫が強調された キんだ色に発色し,2,3ぽ4,6は土の赤み ェより紫色に見せる効果があるようだ。白い土 ノ対してもおもしろみの出せる粘である。

粕がかかりにくくなってしまうという欠点があ

る。

 二っめの方法とは,指定の温度まで上げるの に普通より時間をかけて焼成していくというこ とである。粕がけは普通にできるが,本来土が 焼き締まる温度に達していないため,食器とし て利用する場合どこまで使用に絶えられるか疑 問である。色がきれいに発色することなどの点 から言うと鑑賞して楽しむことに向いているの かもしれない。

 ブリットの色紬を終えて紫色や藤色のブリッ トらしいきれいな発色を得ることができた。中 でも特に気に入った色が得られたと思ったのは,

②,⑦,⑧の色粕である。ただし,ブリットを

作る上で専用の器具類がなかったため苦労し,

多くの工程を経てやっと出来上ったわりには,

あまりたくさんの量ができず,制作が難しがっ た。焼成温度と土の焼締まりの関係やブリット を作る工程を考えると粕として使用するのは簡 単ではないということがわかった。

H 下絵具による粕

 次に下絵具の紫を使って粕を作る。この際の 目的は基本の粕に下絵具をどのくらいの割合で 添加すると丁度良い紫色の粕が得られるのか,

そして土の違いによる粕調の変化はどうなのか を調べることにある。使用する調合物は,次の とおりである。

①下絵具(紫) 3号石灰粕 白マット粕

②下絵具(紫) 4号石灰粕 白マット粕  ※3号石灰粕対,白マット粕,4号石灰粕対   白マット粕のそれぞれの調合比は3対7と   し,基本粕とする。その中に添加する下絵   具(紫)の割合は,1%,3%,5%,7%,

  10%,15%,20%.とする。

 土の種類は,

  1 信楽粘土   2 信楽荒目土

  3 テラコッタ+信楽粘土(同量ずっ混合)

 以上の3種類で行う。テストピースに関して は,ブリット色粕の際に説明したものと同じで ある。焼成方法は,酸化焼成と環元焼成の2っ で行い,焼成温度は先に1280℃とする。(下絵 具は東京丸二陶料の下絵具を使用する。)

 1)酸化焼成        写真5参照、

  ※土の種類のNo.は上に記載

 下絵具を使用した粕から次のことがわかった。

酸化焼成による粕調の変化からは,3号石灰粕 を使用したものの方が紫色の発色が良い。4号 石灰紬を使用した方は,1%から茶を含んでい る発色のものが多く紫色の紬としては使用でき ない。又,下絵具(顔料)として彩色した時の色 と粕成分を加えたものとでは発色が異なり,多

(9)

東京家政大学生活科学研究所研究報告 第13集 3号紫色紬を使用したもの

土の種類 粕調 の 変化

1

5%から紫が発色し始め7%,10%と発色が濃 ュなっている。15%,20%は発色を通りこして,

ヰFに発色している。

2

1と同様,5%,7%,10%の順に紫色の発色 見せている。15%,20%は茶色に発色1に比 ラて紫色に柔らかさのある発色をしている。

3

1や2と違い多少赤みの強い土を使用している スめ1%から微妙にむ紫色を含んだ発色をして

「るように見える。はっきりと紫色とわかるの ヘ5%からであり,7%,10%の順で濃くなっ トいる1や2とは少さ違った紫でやや深みがあ 髏Fにでている。

土の種類 粕調 の 変 化9

1 7%まで紫色の発色は見られず,10%でようや ュ,くすんだ紫色に発色。15%以降は茶に近い。

2

5%から微妙に紫がかってはいるが茶を含んで

「る。7%で紫とグレーのような色に出て5%

ッ様茶色がかっている。10%では茶色がかった

≒Fに発色。15%以降は茶色に発色。

3

5%まで茶を含むグレーで,7%から茶色が強 ュなり,10%で微妙に紫を含むが茶の要素が強 ュ15%以降はこげ茶色である。

2)環元焼成        写真6参照

①3号石灰粕を使用したもの

1%はべ一ジュががったグレー。3%以降はほ とんど茶色。

②4号石灰粕を使用したもの

土の種類 粕調 の 変化

1 3%までほとんど乳白色。5%以降茶色。

2 1%から7%まで茶色。10%以降こげ茶色。

3 1%から20%まで少しずっこげ茶になっている。

少紬にしたものの方がくすんだ紫になってし ワっ た。環元焼成による粕調の変化からは,紫色の 発色は得られなかった。下絵具(紫)を使用して 粕を作る場合,下絵具(紫)の添加量は5%から 10%の間がよく,酸化焼成にする。

 この結果から,本来の下絵具として紫の色を そのまま紬にできなかったことが残念であり,

意外であった。粕として使用したいと思ってい た一つであるがくすんでしまい顔料を粕にして 使うことの難しさがわかった。

皿 3号紫色紬と4号紫マットの土の      違いによる紬調の変化

 3号紫色粕と4号マット粕を使用し,6種類 の土に施粕する。焼成方法は酸化焼成と環元焼 成で行いそれぞれの粕調にどんな変化が出るの かを調べた。

 ※3号紫色粕,4号紫マット粕はそれぞれ東   京丸二陶料のものを使用する。使用する土   はブリット色粕の際の使用と同様とし,焼   成温度は1280℃とする。 写真4参照  1)酸化焼成した3号紫色粕の粕調の変化

土の種類 粕調 の 変 化

1 葡萄色〔えびいろ〕を薄くしたような色に発色。

yが白いためか色に透明感を感じる。

2 赤茶がかった土のため,1より紫が茶がかって

「る。

3 土の色が影響し,深みのある紫に発色。多少青 チぽい紫である。.

4 赤みが強く,茶がかった紫色。

5 1と同様である。

6 土の色である黄土色が強く,黄色がかった紫色。

2)環元焼成した紫色粕

土の種類 粕調 の 変化

1 青みの強い紫に発色。少し濁った色にでている。

2 黒っぽいグレーの中に赤紫が微妙に見えている。

3 グレーの地に青紫がうっすらと浮きでている。

4 2と似ていてグレーの地に赤紫が発色している。

¥面に多少土の鉄分の影響が見られる。

5 薄い紫に粕を厚がけしたところが赤紫に発色。

6 グレーの地にやや青みがかった紫で発色。

 3号紫粕による紬調の変化を終えて次のこと がわかった。酸化焼成の場合,白い土には本来 の粕の色がきれいに発色し,2や3のような赤 みの強い土にはやや青みがかった紫が得られる。

環元焼成の場合,酸化焼成の時の柔らかな赤み が消え,青みの強い紫に発色している。特に鉄 分の多い土のものも環元焼成によって変化する

一30一

(10)

窯芸 作陶及び紬薬の研究 ので,色に深みや,くすんだ色合いが出てくる。

 又,環元焼成の度合いによって多少色も異な るので,そこにおもしろみが出てくる。

 この結果から特に酸化焼成による白土を使っ たものと赤みのある土を使ったものとがむいて いるように思った。

3)4号紫マット紬の酸化焼成による粕調の変   化

土の種類 粕調 の 変化

1 全体が桔梗の花の色ようで,その中にピンクの Fを無数に散らしたような発色である。  1 2 部分的に紺がかかっていて粕の厚い部分がピン

Nを含んだ紫に発色。

3 1よりやや紺がかかったピンクを含む紫色。

4 呉須の色を含むピンクがかった紫色。

5 1と同様。

6 3と似ていて紺がかったピンクを含む紫色。

4)4号紫マット粕の環元焼による紬調の変化

土の種類 粕調の 変化

1 青みがかった紫色で,ピンクがかっていない。

2 黒っぽい地に厚がけの部分が青紫に発色。

3 黒っぽい地で所々青紫が浮きでている。

4 紺がかった黒地に所々青紫が浮きでている。

5

青みがかった紫色に多少ピンクの斑点が見られ 驕B

6 紺がかった地に青紫が浮きでている。

 4号紫マット紬を焼成し終えて,次のことが わかった。酸化焼成の場合,全体的には派手な ピンクを含む紫色で,赤土系統に粕がけしたも のは,薄く粕がかった部分が紺になる。又白土 系統に粕がけしたものは紺が多少柔らかなブルー に出る。環元焼成の場合全体として暗い色に発 色している。赤土系統に粕がけしたものは,紺 や,黒ぽい色を含み非常に深みがでておもしろ い味わいが感じられる。酸化焼成の際の色合い とは違ってくすみのあるおちっいた発色をみせ ている。この結果から酸化焼成による白土の粕 調がとってもきれいで鮮やかな発色が今まで使 用した粕にない又別の紫のおもしろさを発見で きた。赤土も同様是非使ってみたい粕である。

IV 作陶の研究

 作陶の研究では,一年目に於いてオブジェの 制作をした。「自然」をテー一マにイメージを膨

らませデザイン画として表現していった。

 制作は始めに,石膏で原形の型をとり,石膏 型から土をおこす。一日置いて,土を多少乾燥

させ,整形をし,再度時間をかけて充分乾燥さ せてから素焼,本焼をする。使用した土は信楽 粘土である。この作品を通して表現したかった ことは,自然が年々失われていく今,もう一度,

自然を見っめ直す必要があるのではないかとい うことであった。っまり,文明がどんな進歩し ても人間にとってかけがえのないものは,やは

り自然なのである。自然の中の空気,光,、水,

土,太陽など今もはるか遠い昔も少しも変らず 神秘的な力を感じさせる不思議な力を持ってい る。人間は常に自然と共に生き,自然に生かさ れ,時には人間が生きていくための浄化の役目 もする。必要不可欠な存在なのである。人間は 自然なしには生きられないという意味も含めた 作品作りを進めてきた。出来上った作品は,空 間を利用して並べて全体が一っの作品として意 味あるものにしたかった。二年目は,一年目の オブジェを通して興味を持った紫の粕を使って 生活に生かせるものに施粕してみたいと思った

ことからろくろ成形を中心に,皿,鉢,花器な どを制作した。使用した土は,信楽荒目土,五 斗蒔,五斗蒔黄土,特赤粘土,などである。先 に行った粕薬の研究の際に是非使ってみたいと 思った粕で施紬を行った。

         結言

 今回の研究を通じて粕を作ることの難しさ,

粕を扱うことの難しさを改めて知ったような気 がする。シンプルなラインを持った器も,粕薬 一っで複雑なおもしろさを与える力を持つ,そ んなところにはかりしれない魅力を感じた。

 二年間の研究,作陶の中から自分の「やきも

(11)

        東京家政大学生活科学研究所研究報告 第13集

ブリット色粕による 花器       の」の世界の窓口を見つけられたように思う。

      今後も自分自身の方法で一っ一っ体験しながら

大皿,茶碗,鉢

作陶の技術を身につけていきたい。そしてやき ものを作る楽しさ,見る楽しさ,使う楽しさ,

をいっも感じ伝えられるような作品作りをして いきたい。今回の研究にあたり,御指導下さい ました諸先生方に心から感謝申し上げます。

        参考文献

1)素木洋一:工芸用陶磁器,技報堂,

       昭和49年 2)素木洋一:粕とその顔料,技報堂,

       昭和43年 3)大西政次郎:陶芸の粕薬,理工学社,

  1980年4)やきもの,美術出版社,1987年 5)かたち,かたち社,1989年

一32一

(12)

正 誤

ページ  行目

P.29表33 3ぽ4 3.4

〃 表32と33の間

〃   28(謹の行) 先に 共に

P.30  6〈謹の行) 4号マット粕 4号紫マット粕

P.52 7行目 除徽効果 防徽効果

〃  21行目 除菌防徽剤 防菌防徽剤 P.52表 試料メーカー 削除 P.53表 〔住宅用スプレー剤〕 削除

(1)実験材料 削除

P.70 (7) 當一K−(φ訟一2号鰍郡φ・・)<・

一         一   一       一   }

P.71 (4 V躍9。P。十9iPi

一       ㎜   }

〃  (9 ) (ユ十ρ)Pa一ζlf=1,(1十σ)Piηゴ=1

〃  (21) δφ・=・φ、δ9・+φ」」δ9・

〃下から2行目(左欄) δφ・,δφi

だ上から1行目(右欄) δx。_〔ρζ(φ」)n−cz5 ..1[)i)+ση(φ・・P・一φ識・)〕

笠{φ…2暑!φ暗1φ身+

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P.85 表1 胸囲(㎏) 胸囲(αの

・〃  表1  A 1.23 123

B 1.33 133

東京家政大学生活科学研究所研究報告第13集

参照

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