⑥
樹木実生の形態と初期生長(その 4)
持田秀雄
*・萩原信介
**Morphology and Initial Growth of tree Seedlings(NO 4)
Hideo Mochida*, Shinsuke Hagiwara**
は じ め に
樹木の実生についてまとまれた記録は柳田(1927),山中寅文(1977),山中典和他(1992,1993a,
b),宮部他(1986),小宮他(1988,1989),浅野(1995)の実生形態の記載がある。これらの報告は,
子葉の形態の発芽様式について述べたものが多く,本葉展開と,その後にわたって連続的に観察した 例はほとんどない(持田,萩原,2013,2014,2015)。
今回は,発芽及びその後の生育観察記録のなかで 1 年わたって発芽,展開,伸長の生活史を連続観 察した中で子葉及び本葉の展葉数と樹高について特に報告する。
播種地と播種方法
東京都港区白金台 5-21-5 の国立科学博物館自然教育園敷地内の無加温育苗ハウス室にて播種育成し た。
果実の採取については,主に東京都文京区で植栽された個体から採集した樹種がすべてであった。
採取方法として,樹上から直接採取,あるいは樹冠から落下した新鮮な果実を採取した。
種子の調整は,採取した果実を常温のまま保管して,果肉のあるものは果肉を水洗いし取り去り,
風乾したものを使った。
播種の時期は採取後 1 週間ぐらいで,長いものは 3 ヶ月経ったものがあった。
播種用土は,赤玉土 7:バーミュキュライト 3 とした。
播種床は,育苗箱,ビニールポットを使用した。
灌水は,ガラス室内の自動潅水装置により,1 日おきで,夏は 30 分,冬は 10 分程度であった。
無加温であるが育苗室内の気温は 1 〜 3 度,湿度は 5 〜 20%,野外よりもそれぞれ高めであった。
表 1 に種名,採取年月日,播種年月日,発芽年月日を播種一覧表としてまとめた。
*
NPO 法人樹木生態研究会会員,Society of Trees Life
**
国立科学博物館附属自然教育園,Institute for Nature Study, National Museum of Nature and Science
結 果 及 び 考 察
1.サンシュユ Cornus officinalis Sieb. et Zucc. ミズキ科
2014/2/11 に播種する。発芽は 2 年目の 3 月頃であったが,供試個体は翌年 2015/3/15 に発芽した。
翌年発芽は山中(1977)と同様の結果であった。
発芽して 9/14 に伸長展葉をおえて,樹高 90㎜であった。
子葉は地上に展開した地上子葉型であった。子葉の形は披針形で 1 対の葉を展開し,対の子葉の大 きさは同じ大きさで,個体により長さが異なっていた。長 22 〜 42㎜,幅 7 〜 9㎜であった。
子葉の幼芽から展開した,初生葉は対生で披針状長楕円形の単葉で 1 対ごとに葉を順次主軸の伸長 とともに展開した。順次型(菊沢,1986)であった。
葉の大きさ 1 節目葉身長 47㎜,幅 9㎜,葉柄長 3㎜,2 節目葉身長 42㎜,幅 17㎜,葉柄長 2㎜,3 節目葉身長,長 42㎜,幅 17㎜,葉柄長 2㎜であった。
ミズキ科の葉序は対生に対して,ミズキは互生葉序となるところが相違点である。
表 1 播種一覧表
種名 学名 科名 採取年月日 播種年月日 発芽年月日 備考
1. サンシュユ Cornus offi cinalis Sieb.et Zucc. ミズキ科 Nov-13 2014/2/11 2015/3/15 図 1 2. オオシマツツジ Rhododendron obtusum var. macrogemma
Kitamura ツツジ科 Nov-13 2014/2/11 2014/6/21 図 2
3. サタツツジ Rhododendron sataense Nakai ツツジ科 Nov-13 2014/2/11 2014/6/21 図 3 4. サクラツツジ Rhododendron tashiroi Maxim. ツツジ科 Nov-13 2014/2/11 2014/4/25 図 5 5. クチナシ Gardenia jasminoides Ellis アカネ科 Oct-14 2015/2/13 2015/5/17 図 6
図 1 サンシュユ樹高及び子葉葉数及び主軸展葉葉数:◇は樹高,□は子葉数,△は主軸葉数,×は 落葉数,播種は○.
㻜 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢 㻣 㻤 㻥 㻝㻜
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2.オオシマツツジ
Rhododendron obtusum var. macrogemma Kitamuraツツジ科
2014/2/11 に播種する。発芽の時期は,6 月上旬から中旬であったが,供試個体は 2014/6/21 に発 芽し 10/2 に伸長展葉をおえた。
子葉は地上に展開した地上子葉型であった。子葉の形は楕円形で 1 対を展開し,子葉長 2.5㎜,幅 1㎜であった。
子葉の幼芽の開葉型は順次型(菊沢,1986)の,開芽とともに 1 葉毎に順次葉を開葉させた。
互生葉序で 1 〜 5 葉を順次展開した。葉は楕円形の単葉であった。また,葉には毛があり長さ 0.8
㎜程で長く特徴的である。
葉の大きさは,1 葉目,長 2.5㎜,幅 1.5㎜,2 葉目,長 3㎜,幅 1㎜,葉柄長 0.5mm,3 葉目,長 4㎜,
幅 2㎜,葉柄長 0.5mm,4 葉目,長 3㎜,幅 2㎜,葉柄長 0.5mm,5 葉目,長 1㎜,幅 0.8㎜であった。
樹高 6.5㎜であった。
3.サタツツジ
Rhododendron sataense Nakaiツツジ科
2014/2/11 に播種する。発芽の時期はオオシマツツジと同様な時期で 6 月上旬から中旬であったが,
供試個体は 2014/6/21 に発芽し 10/2 に伸長展葉をおえた。
子葉は地上に展開した地上子葉型であった。子葉の形は楕円形で 1 対を展開し,子長 2㎜,幅 1㎜
であった。
子葉の幼芽の開葉型は順次型(菊沢,1986)の開芽とともに 1 葉毎に順次葉を開葉させた。葉は互 生葉序で 1 〜 4 葉展開した。葉は倒卵状楕円形の単葉であった。また,葉には毛があるが 0.4㎜前後 でオオシマツツジの長さ約 1/2 程度である。
葉の大きさは,1 葉目,長 3㎜,幅 2㎜,葉柄長 1mm,2 葉目,長 2.5㎜,幅 2㎜,葉柄長 1mm,3 葉目,
長 2㎜,幅 1.5㎜,葉柄長 1mm,4 葉目,長 1.2㎜,幅 0.5㎜であった。樹高 6.5㎜であった。
図 2 オオシマツツジ樹高及び子葉葉数及び主軸展葉葉数:◇は樹高,□は子葉数,△は主軸葉数,
×は落葉数,播種は○.
㻜 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢 㻣
㻞㻛㻝㻝✀㻌
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㻝㻞㻛㻣 㻝㻞㻛㻝 㻠 㻝㻞㻛㻞 㻝 㻝㻞㻛㻞 㻤
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㻌 ᶞ㧗㻌 Ꮚⴥᩘ㻌 ㍈ᒎⴥᩘ㻌 ⴠⴥᩘ㻌
4.サクラツツジ
Rhododendron tashiroi Maxim.ツツジ科
2014/2/11 に播種する。発芽の時期は 4 月下旬頃となっている。オオシマツツジ,サタツツジより も約 5 〜 7 週間程早い違いがある。供試個体は 2014/4/25 に発芽し 11/16 に伸長展葉をおえた。
子葉は地上に展開した地上子葉型であった。子葉の形は楕円形で 1 対を展開し,子葉長 2㎜,幅 1
㎜であった。
子葉の幼芽の開葉型は順次型(菊沢,1986)の開芽とともに 1 葉毎に順次葉を開葉させた。葉は互 生葉序で 1 〜 4 葉展開した。葉は長楕円形の単葉であった。また,葉には毛がありサタツツジと毛の 長さ同様で 0.4㎜前後である。
図 3 サタツツジ樹高及び子葉葉数及び主軸展葉葉数:◇は樹高,□は子葉数,△は主軸葉数,×は 落葉数,播種は○.
㻜 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢 㻣
㻞㻛㻝㻝✀㻌
㻞㻛㻝㻢 㻞㻛㻞㻟 㻟㻛㻞 㻟㻛㻥 㻟㻛㻝㻢 㻟㻛㻞㻟 㻟㻛㻟㻜 㻠㻛㻢 㻠㻛㻝㻟 㻠㻛㻞㻜 㻠㻛㻞㻣 㻡㻛㻠 㻡㻛㻝㻝 㻡㻛㻝㻤 㻡㻛㻞㻡 㻢㻛㻝 㻢㻛㻤 㻢㻛㻝㻡 㻢㻛㻞㻝 㻢㻛㻞㻥 㻣㻛㻢 㻣㻛㻝㻟 㻣㻛㻞㻜 㻣㻛㻞㻣 㻤㻛㻟 㻤㻛㻝㻜 㻤㻛㻝㻣 㻤㻛㻞㻠 㻤㻛㻞㻥 㻥㻛㻣 㻥㻛㻝㻡 㻥㻛㻞㻝 㻥㻛㻞㻤 㻝㻜㻛㻞 㻝㻜㻛㻝 㻞 㻝㻜㻛㻝 㻥 㻝㻜㻛㻞 㻢
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図 4 サクラツツジ樹高及び子葉葉数及び主軸展葉葉数:◇は樹高,□は子葉数,△は主軸葉数,×
は落葉数,播種は○.
㻜 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢
㻞㻛㻝㻝✀㻌
㻞㻛㻝㻢 㻞㻛㻞㻟 㻟㻛㻞 㻟㻛㻥 㻟㻛㻝㻢 㻟㻛㻞㻟 㻟㻛㻟㻜 㻠㻛㻢 㻠㻛㻝㻟 㻠㻛㻞㻜 㻠㻛㻞㻡 㻡㻛㻠 㻡㻛㻝㻝 㻡㻛㻝㻤 㻡㻛㻞㻡 㻢㻛㻝 㻢㻛㻤 㻢㻛㻝㻡 㻢㻛㻞㻝 㻢㻛㻞㻥 㻣㻛㻢 㻣㻛㻝㻟 㻣㻛㻞㻜 㻣㻛㻞㻣 㻤㻛㻟 㻤㻛㻝㻜 㻤㻛㻝㻣 㻤㻛㻞㻠 㻤㻛㻞㻥 㻥㻛㻣 㻥㻛㻝㻡 㻥㻛㻞㻝 㻥㻛㻞㻤 㻝㻜㻛㻞 㻝㻜㻛㻝 㻞 㻝㻜㻛㻝 㻥 㻝㻜㻛㻞 㻢
㻝㻝㻛㻞 㻝㻝㻛㻥 㻝㻝㻛㻝 㻢 㻝㻝㻛㻞 㻟 㻝㻝㻛㻟 㻜
㻝㻞㻛㻣 㻝㻞㻛㻝
㻟 㻝㻞㻛㻞 㻝 㻝㻞㻛㻞 㻤 㻝㻛㻠 㻝㻛㻤 㻝㻛㻝㻤 㻝㻛㻞㻡 㻞㻛㻝 㻞㻛㻤 㻞㻛㻝㻟 㻞㻛㻞㻞 㻟㻛㻝 㻟㻛㻤 㻟㻛㻝㻡 㻟㻛㻞㻞 㻟㻛㻞㻥
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葉の大きさは,1 葉目,長 3㎜,幅 2.5㎜,葉柄長 2mm,2 葉目,長 2.5㎜,幅 2.5㎜,葉柄長 1mm,
3 葉目,長 2㎜,幅 1.5㎜,葉柄長 0.5mm,4 葉目,長 0.5㎜,幅 0.5㎜であった。樹高 5㎜であった。
5.クチナシ
Gardenia jasminoides Ellis.アカネ科
2015/2/13 播種する。5 月上旬から中旬であったが,供試個体は 2015/5/17 に発芽し 9/12 に伸長 展葉をおえた。
子葉は地上に展開した地上子葉型であった。子葉の形は楕円形で 1 対を展開し,子葉長 9㎜,幅 7㎜,
柄長 1.5㎜であった。
子葉の幼芽の開葉型は順次型(菊沢,1986)の開芽とともに 1 対毎に順次葉を開葉させた。葉は対 生葉序で 1 〜 6 対展開した。葉は卵状楕円形または長楕円形の単葉であった。
葉の大きさは,1 節目葉身長 12㎜,幅 7㎜,葉柄長 1.5㎜,2 節目葉身長 18㎜,幅 9㎜,葉柄長 1㎜,
3 節目葉身長 25㎜,幅 13㎜,葉柄長 2㎜,4 節目葉身長 30㎜,幅 14㎜,葉柄長 2㎜,5 節目葉身長 32
㎜,幅 14㎜,葉柄長 2㎜,6 対目葉身長 32㎜,幅 14㎜,葉柄長 2㎜であった。樹高 92㎜であった。
図 5 クチナシ樹高及び子葉葉数及び主軸展葉葉数:◇は樹高,□は子葉数,△は主軸葉数,×は落 葉数,播種は○.
㻜 㻞 㻠 㻢 㻤 㻝㻜 㻝㻞 㻝㻠
㻞㻛㻝㻟✀㻌 㻞㻛㻞㻜 㻞㻛㻞㻣 㻟㻛㻢 㻟㻛㻝㻟 㻟㻛㻞㻜 㻟㻛㻞㻣 㻠㻛㻟 㻠㻛㻝㻜 㻠㻛㻝㻣 㻠㻛㻞㻢 㻡㻛㻟 㻡㻛㻝㻜 㻡㻛㻝㻣 㻡㻛㻞㻠 㻡㻛㻟㻜 㻢㻛㻣 㻢㻛㻝㻠 㻢㻛㻞㻝 㻢㻛㻞㻤 㻣㻛㻡 㻣㻛㻝㻞 㻣㻛㻝㻥 㻣㻛㻞㻢 㻤㻛㻞 㻤㻛㻥 㻤㻛㻝㻡 㻤㻛㻞㻟 㻤㻛㻟㻜 㻥㻛㻢 㻥㻛㻝㻞 㻥㻛㻞㻜 㻥㻛㻞㻣 㻝㻜㻛㻠 㻝㻜㻛㻝 㻝 㻝㻜㻛㻝 㻤 㻝㻜㻛㻞 㻡 㻝㻝㻛㻝 㻝㻝㻛㻤 㻝㻝㻛㻝 㻡 㻝㻝㻛㻞 㻞 㻝㻝㻛㻞 㻥 㻝㻞㻛㻢 㻝㻞㻛㻝 㻟 㻝㻞㻛㻝 㻥 㻝㻞㻛㻞 㻣
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