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情報セキュリティの観点から見た 

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(1)

   

     

情報セキュリティの観点から見た 

我が国社会のあるべき姿及び政策の評価のあり方(案)   

〜「セキュア・ジャパン」の実現に向けた  情報セキュリティ政策のPDCAサイクル確立へ〜 

             

年  月  日 

情報セキュリティ政策会議了解(案) 

 

資料2−3 

(2)

目 次

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.基本認識・問題意識

2.本文書の構成

3.本文書の活用について

第1章 情報セキュリティ政策の基本目標とこれまでの取組み

第1節 情報セキュリティ政策の基本目標 ・・・・・・・・・・・・・ 1.ITを安心して利用可能な環境(IT安心利用環境)の構築

2.IT安心利用環境の有する意味

(1)国家目標実現への貢献

(2)事故、災害や攻撃等のIT利用に付随する負の側面への対応

(3)ITの有する正の効果の最大限の活用(技術発展、国際交流、

文化創造等の促進)

第2節 IT利用を取り巻く様々なリスクの存在とリスクの解決・克服

によるIT安心利用環境の実現 ・・・・・・・・・・・・・・ 1.IT利用を取り巻く様々なリスクの存在

2.IT利用時のリスクの解決・克服によるIT安心利用環境の実現

第3節 IT安心利用環境の構築に向けた我が国の取組み ・・・・・・ 第2章 IT安心利用環境の構築に向けた情報セキュリティ政策のPDC

Aサイクルの確立

第1節 PDCAサイクルの確立の必要性 ・・・・・・・・・・・・・ 第2節 PDCAサイクルの視点から取組みが欠けている部分とサイク

ル完成に必要な要素 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.基本的前提

2.PDCAの段階ごとの確認

(1)計画(Plan)段階

(2)実施(Do)段階

(3)点検(Check)段階

(4)改善処置(Act)段階 第3章 2006年時のリスクの認識

第1節 リスクの可視化に関する基本的枠組み ・・・・・・・・・・・11 1.基本的考え方

2.リスクの可視化(総論)とリスクの可視化(各論)の関係につい

(3)

3.リスクの認識の見直しメカニズム

第2節 リスクの可視化(総論) ・・・・・・・・・・・・・・・・・12

(1)我が国全体としてのリスク

(ア) IT利用の客観的・主観的信頼性に関するリスク

(イ) IT安心利用環境の構築への過程におけるリスク

(2 「新たな官民連携モデル」における対策実施主体ごとのリスク 総論

(ア) 政府機関・地方公共団体

(イ) 重要インフラ

(ウ) 企業

(エ) 個人

第3節 リスクの可視化(各論) ・・・・・・・・・・・・・・・・・16

(1)各対策実施主体が直面し得るリスク

(ア) 政府機関・地方公共団体

(イ) 重要インフラ

(ウ) 企業

(エ) 個人

(2)問題の理解・解決を促進する主体の取組みを必要とさせるリスク

(ア) 政府・地方公共団体

(イ) 教育機関・研究機関

(ウ) 情報関連事業者・情報関連非営利組織

(エ) メディア

(3)横断的情報セキュリティ基盤の形成を必要とさせるリスク

(ア) 情報セキュリティ技術

(イ) 情報セキュリティ人材

(ウ) 国際連携・協調

(エ) 犯罪取締り及び権利利益保護・救済 第4章 2009年時の我が国社会の姿

第1節 姿に関する基本的枠組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・23 1.基本的考え方

2.姿の見直しメカニズム

第2節 2009年時の姿(総論) ・・・・・・・・・・・・・・・・23

(1)我が国全体としての姿

(ア) IT利用の客観的・主観的信頼性の確保

(イ) IT安心利用環境の構築への過程

(2)官民連携モデルにおける対策実施主体の姿

(ア) 政府機関・地方公共団体

(4)

(イ) 重要インフラ

(ウ) 企業

(エ) 個人

第3節 2009年の時の姿(各論) ・・・・・・・・・・・・・・・27

(1)各対策実施主体の姿

(ア) 政府機関・地方公共団体

(イ) 重要インフラ

(ウ) 企業

(エ) 個人

(2)問題の理解・解決を促進する主体の姿

(ア) 政府・地方公共団体

(イ) 教育機関・研究機関

(ウ) 情報関連事業者・情報関連非営利組織

(エ) メディア

(3)横断的情報セキュリティ基盤の2009年における姿

(ア) 情報セキュリティ技術

(イ) 情報セキュリティ人材

(ウ) 国際連携・協調

(エ) 犯罪取締り及び権利利益保護・救済 第5章 2009年に向けた評価等について

第1節 評価等に関する基本的枠組み ・・・・・・・・・・・・・・・35 1.成果(アウトプット)指標と結果(アウトカム)指標

2.評価指標に基づく評価と補完調査 3.分析

4.政策会議への報告

5.具体的な作業方針の策定 6.具体的目標の設定

7.まとめ

第2節 評価等(総論)〜我が国全体としての評価指標について ・・・40 第3節 評価等(各論) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41

1.考え方

(1)対策実施四領域

(2)対策実施四領域以外の分野 2.対策実施四領域に関する評価指標

(ア) 政府機関・地方公共団体

(イ) 重要インフラ

(5)

(ウ) 企業

(エ) 個人

第6章 評価等の結果を受けた持続的改善のあり方

第1節 評価指標等を用いた持続的改善のあり方(基本的考え方) ・・46 第2節 持続的改善の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

1.次期計画への反映 2.取組みの改善促進

図1:IT安心利用環境のイメージ

図2:情報セキュリティ政策のPDCAサイクルの計画段階 図3:情報セキュリティ政策のPDCAサイクル

図4:取組みのスケジュール

図5:評価指標に基づく評価及び状況把握のための補完調査 図6:評価指標等を用いた持続的改善

別添1:政府機関における情報セキュリティ対策の評価指標及び評価の 枠組みについて

別紙:政府機関評価指標 −マネジメント指標−

別添2:重要インフラ分野における情報セキュリティ対策向上の取組み について

別添3:企業・個人における情報セキュリティの評価指標

(6)

 

はじめに

1.  基本認識・問題意識

我が国の情報セキュリティ政策は、その基本理念や施策の方向性等をとりまとめ た中長期計画である「第1次情報セキュリティ基本計画」と、2006年度の年度 計画である「セキュア・ジャパン2006」が各々2006年2月と6月に情報セ キュリティ政策会議において決定された

1

ことによって、計画枠組みの部分は機能し 始めている。これにより、政府機関・地方公共団体、重要インフラ、企業、個人と いう幅広い主体における対策の向上と情報セキュリティ技術、人材といった横断的 な基盤の形成のための各種施策が実施されつつある。こうした中長期的な計画と各 年度における計画は、その計画年限に応じて見直しが行われるべきものであるため、

情報セキュリティ政策としての全体の枠組みを完成させるためには、計画自体の見 直しも含めた運用サイクル(PDCAサイクル

2

)を前もって形作っておくことが不 可欠である。このため、情報セキュリティ政策について、サイクル完成に必要な要 素、手段及び手続き等を明確にし、個別の取組みの改善と、政策全体の見直しを有 機的に組み立てた体系を示すことが必要である。 

以下の認識の下、情報セキュリティ政策会議は、今般、政府機関評価指標専門委 員会、重要インフラ専門委員会、企業・個人評価指標専門委員会及び内閣官房情報 セキュリティセンターの検討を踏まえ、 

(i)

第1次情報セキュリティ基本計画及びセキュア・ジャパン2006策 定時に、克服・解決すべき対象として念頭に置いていた諸々の問題等 のリスク、 

(ii)

第1次情報セキュリティ基本計画の計画年限である2009年の初め の時点で、政策の結果として描き出すことを目指した我が国社会のあ るべき姿、 

(iii)

合理性を持って情報セキュリティ政策の評価を行うための指標やそれ を補完するための調査及びこれらにより把握した現状等の分析のあり 方、 

(iv)

評価指標等を用いた情報セキュリティ向上のための取組みの持続的改 善のあり方等 

についてとりまとめを行った。 

 

1 第1次情報セキュリティ基本計画は、2006年2月2日に情報セキュリティ政策会議で決定(参照:

http://www.nisc.go.jp/active/kihon/ts/bpc01̲a.html)。また、セキュア・ジャパン2006は、2006年6 月15日に政策会議で決定(参照:http://www.nisc.go.jp/active/kihon/pdf/sjf̲2006.pdf)。 

2 PDCAサイクルとは、計画(Plan)、実施(Do)、点検(Check)、改善処置(Act)の各々の段 階を経て、改めて計画(Plan)に戻る自律的な政策推進サイクル。 

(7)

2.  本文書の構成

本文書では、第1章において、情報セキュリティ政策の基本目標である「ITを 安心して利用できる環境(以下「IT安心利用環境」とする。 )構築の必要性及びこ れに向けたこれまでの取組みについて述べている。第2章においては、IT安心利 用環境の構築に向けて情報セキュリティ政策のPDCAサイクルを構築することが 重要であることを前提に、PDCAの各段階において必要な要素について述べた。

具体的には、これまで、どういう方向性で何を行うかという「計画」は存在するも のの、計画策定時にどのような「克服・解決すべき問題(リスク) 」が存在するのか という点や、計画に基づいて取組みを行った結果、社会がどういう「姿」となるの かという点が明示的に記述されていなかったことを踏まえた上で、計画に基づいて 取組みを行った結果を点検するための仕組みや、その結果を踏まえた取組みの持続 的改善の手法の構築の必要性について述べている。 

これを受けて第3章及び第4章においては、PDCAの計画(Plan)段階に 相当する第1次情報セキュリティ基本計画とセキュア・ジャパン2006の策定時 に念頭に置いていた2006年時のリスク及び2009年時の我が国社会の姿につ いて述べている。また、第5章においては、点検(Check)段階で必要となる 評価指標の設定や、評価指標の設定が容易でない場合等に行う補完調査、分析等に ついて述べている。さらに、以上を踏まえて第6章においては、改善処置(Act)

段階として評価指標等を活用した持続的改善のあり方について述べている。 

   

3.  本文書の活用について

本文書は、情報セキュリティ政策会議決定文書「 「セキュア・ジャパン」の実現に 向けた取組みの評価等及び合理性を持った持続的改善の推進について」に基づいて、

内閣官房情報セキュリティセンター及び各府省庁が情報セキュリティ政策の評価等 と持続的改善のための様々な取組みを実施していく際に、活用するためのものであ る。既に存在している第 1 次情報セキュリティ基本計画及びセキュア・ジャパン2 006と2007年度以降の年度計画に加えて、上記決定文書及び本文書を活用す ることで、効果的かつ合理的な情報セキュリティ政策のPDCAサイクルを完成し、

我が国が真に、 「情報セキュリティ先進国」になることを目指すこととしたい。 

 

(8)

 

第1章  情報セキュリティ政策の基本目標とこれまでの取組み

第1節 情報セキュリティ政策の基本目標

1.ITを安心して利用可能な環境(IT安心利用環境)の構築

第1次情報セキュリティ基本計画は、その基本理念において、 

「利便性と情報セキュリティの両立」を図りつつ「ITを安心して利用可 能な環境(以下「IT安心利用環境」という。 )の構築」を実現すること で、情報セキュリティ施策が射程に入れるべき我が国の国家目標の実現 を図る 

としている。そしてそのためには、 

「新しい官民連携モデル」を構築し、 「対症療法的対応」から脱却しながら、 

「資源の重点的・戦略的投入」を行い情報セキュリティ問題へ取り組んで いくことが必要 

とし、その前提として、 

「官民各主体の共通認識の形成」 、「先進的技術の追求」、「公的対応能力の 強化」及び「連携・協調の推進」が不可欠である 

という形で、取組むべきことの枠組みが述べられている。 

また、この「IT安心利用環境」は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本 法(IT基本法)第22条において述べている趣旨とも共通のものであり、 「IT 新改革戦略」においても、今後のIT政策の重点の一つとして、 「IT基盤の整備

〜安心してITを使える環境の整備」が挙げられている。 

 

これらに示されるように、情報セキュリティ政策は、IT安心利用環境の構築 を実現すべき基本目標としてとらえ、その実現が様々な国家目標の実現に貢献す るという枠組みで進められつつある。したがって、情報セキュリティ関連施策の 検討に当たっては、最終的にはIT安心利用環境の構築という基本目標に立ち返 る必要がある。 

 

2.IT安心利用環境の有する意味

(1)国家目標実現への貢献

上述のように、IT安心利用環境は、その構築が国家目標の実現につながる ものである。すなわち、IT安心利用環境は、経済大国日本の持続的発展、よ り良い国民生活の実現、安全保障における新たな脅威への対応等の国家目標実 現に向けたIT政策面における重要な媒体としての役割を果たす。 

 

(9)

(2)事故、災害や攻撃等のIT利用に付随する負の側面への対応

IT安心利用環境は、事実としてITそのものが安全であるという客観的側 面と、利用者が安全を実感しながらITを利用できるという主観的側面の双方 を有している。したがって、IT安心利用環境の構築に向けては、事故、災害 や攻撃等のIT利用に付随する負の部分に対して、以下のように客観的側面、

主観的側面の双方から対応することが必要である。 

まず、客観面については、IT機器の供給者等によって事前に必要な対策が とられているということに加え、それでもなお問題が生じた場合に備えて事業 継続性を担保する対策が行われているということが必要である。 

また、主観面については、IT利用者が、ITそのものが客観的に安全であ るという環境・状態を理解し実感していることが必要であり、更に、事業継続 性を担保する対策が行われているので、安心しながらITを利用できる、とい うことも併せて理解し実感していることが必要である。 

 

(3)ITの有する正の効果の最大限の活用(技術発展、国際交流、文化創造等の 促進)

IT安心利用環境の構築には、IT利用に付随する負の側面への対応という こと以上に、ITを安心して活用できることで、ITの持つ正の効果を更に促 進するという狙いが込められている。 

過去5年、10年単位で見ても、ITにおける様々な技術発展は社会経済活 動や国民生活を大きく変えてきた。今後とも、これまで同様に社会を豊かにす るようなITに関する技術開発を促進することが必要となるが、これを前向き に進めるためには、IT安心利用環境を構築することが必要である。 

 

また、ITは国境を越えた交流を同時的に行うこと、すなわち物理的距離を 越えた、音声から画像、映像までを含めたあらゆる手段による交流を従来より も大幅に発展させ、遠距離間でのコミュニケーションに大きな変革をもたらし た。今後も、IT安心利用環境の下でこそ、こうしたコミュニケーションの発 達も更に加速化し得ることとなる。 

さらに、ITは、ネットワーク上に仮想の(バーチャルな)世界を形成する ことで、人々のコミュニケーションの新しい形態を創り出すなど、ITを活用 した独自の文化創造という恩恵も我々にもたらしている。こうした新たな文化 創造が今後とも意欲的に行われるためにもIT安心利用環境の構築は不可欠 である。 

 

(10)

第2節 IT利用を取り巻く様々なリスクの存在とリスクの解決・克服によるIT安 心利用環境の実現

1.IT利用を取り巻く様々なリスクの存在

IT安心利用環境は、無条件に、また対策を行う様々な実施主体の努力なしで 実現されるものではない。 

IT利用に際しては(i)サイバー攻撃を受ける、情報漏えいが発生する、という ようにIT利用の安全性を担保・促進するために解決すべき個々の課題や、(ii) 個人の情報セキュリティに関する知識が不足している、情報セキュリティ対応を 行う人員が不足している、被害が生じた際に対応が後手にまわる、情報セキュリ ティを意識しすぎる余り自由な利用が阻害されるなど、取組みを進めることで克 服が求められる構造的課題といった、解決し、また克服しなければならない様々 な課題、すなわちリスクが数多く存在している。つまり、IT利用は、組織・個 人を問わず利用の過程で何らかの問題を引き起こす可能性があるリスクを、その 利用者が意識しつつ、または無意識のうちに受け止めた上で行われている状態に ある。 

 

また、こうしたリスクは、同じものが固定的に存在しているわけでは必ずしも ない。あるリスクを解決・克服したとしても、常に新しいリスクが生起している ために、IT利用者は常に何らかのリスクにさらされている状態にある。 

 

2.IT利用時のリスクの解決・克服によるIT安心利用環境の実現

IT利用が多くのリスクに囲まれているからといって、我々はその便益を捨て て、IT利用を限定したりIT利用に反対する方向に進むべきではないし、それ は実際、不可能である。毎日の生活での利用や政府・企業活動における取組み等、

社会に密接不可分な程度までITが浸透している状況に鑑みると、その利用を制 限・抑制する方向は現実的ではない。また、国民生活の基盤たる経済活動におけ る国際競争力の源泉は、IT利用の巧拙に左右されている現実を踏まえれば、我 が国のみがその利用を抑制し、それでも世界の中で生き延びるのは不可能である。  

したがって、政府は我が国におけるIT利用を引き続き促進すると同時に、I T利用者が日々生起するリスクについて十分認識できるよう、政策の企画・立案 等の取組みを行うことが必要である。その上で、こうしたIT利用のリスクに対 して継続的取組みを行うことによって、認識されたリスクを受容可能な水準以下 に管理し、このような営みを通じてIT安心利用環境を構築していく必要がある。  

 

 

 

(11)

 

               

第3節 IT安心利用環境の構築に向けた我が国の取組み

こうした状況下、我が国では、IT安心利用環境の構築に向けた取組みが従来か ら行われてきたが、2005年以降、大幅に強化され、以下のように進められてき た。 

 

政府においては、関係各府省庁の取組みに加えて、それまでの内閣官房情報セキ ュリティ対策推進室を発展させる形で、2005年4月に内閣官房情報セキュリテ ィセンター(NISC) (以下「情報セキュリティセンター」という。 )が設置され、

同年5月には高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「IT戦略本部」

という。 )の下に内閣官房長官を議長とする情報セキュリティ政策会議(以下「政策 会議」という。 )が設置された。その後、2006年2月には第1次情報セキュリテ ィ基本計画(以下「第1次基本計画」という。 )の策定により、情報セキュリティ政 策に係る基本的な理念や施策の方針等を定義する計画が策定された。 

また、それに先立つ2005年12月に、情報セキュリティのための対策実施主 体である政府機関・地方公共団体、重要インフラ、企業、個人のうち、特に喫緊の 対応が必要とされ、かつ、公益性が高い政府機関及び重要インフラに関して、セキ ュリティ対策のための基準や行動計画等が策定されている。 

政府機関に関しては、2005年12月に「政府機関の情報セキュリティ対策の ための統一基準(以下「政府機関統一基準」という。) 」が策定され、政府機関の情 報セキュリティ向上に向けて恒常的に行うべき様々な取組みのPDCAサイクルを 構築するべく、取組み基準等が策定された。また、重要インフラについては、同じ く2005年12月に「重要インフラの情報セキュリティ対策に係る行動計画」が 策定された。 

こうした取組みを経て2006年6月には、第1次基本計画に基づき一年ごとの 実施施策をまとめあげた「セキュア・ジャパン2006」が策定されている。 

 

IT利用IT利用IT利用

リスク リスク

IT利用IT利用IT利用

リスク

リスク リスクリスク

IT利用IT利用IT利用 IT安心利用環境IT安心利用環境

図1:IT安心利用環境のイメージ

(12)

 

第2章  IT安心利用環境の構築に向けた情報セキュリティ政策に関す るPDCAサイクルの確立

第1節 PDCAサイクルの確立の必要性

IT安心利用環境の構築に向けた情報セキュリティの取組みは一過性のものであ ってはならない。IT利用を取り巻くリスクは刻々と変わることから、その変化に 即した形で情報セキュリティ政策も企画・実施していくことが不可欠である。 

この観点から考えると、例えば基本的な施策の方向性等を示す情報セキュリティ 基本計画(以下「基本計画」という。 )については、一度計画を定めてこれを実施す るだけでは足りない。取組み状況及びその評価を踏まえ、少なくとも一定期間毎に 時宜に見合った見直しを行うことが必要である。 

したがって、こうしたプロセスを構築するために、情報セキュリティ政策そのも のについてのPDCAサイクルを確立するべきである。こうすることで、IT安心 利用環境の構築に向けた情報セキュリティ政策の取組みについて、一つの計画作成 から実施、評価、評価結果の次期新計画への反映及び取組みの改善を経て次の新計 画を決定するという有機的なサイクルが完成することとなる。 

 

第2節 PDCAサイクルの視点から取組みが欠けている部分とサイクル完成に必 要な要素

1.基本的前提

我が国の情報セキュリティ政策は、2006年度から2008年度の3年間を 対象とする第1次基本計画によって、その基本的な考え方や方針が定められてい る。対象期間が3年間とされているのは、2006年度から2008年度までと いう中長期の視点から見た継続的な取組みが必要である一方、IT利用を取り巻 く環境が急速に変化しているためであり、その基本的なPDCAサイクル(以下

「基本サイクル」という。 )についても、3年間とするよう設計がなされている。 

 

また、基本計画の定める目標の実現に向けた施策を具体化するための年度計画 が毎年策定されることとなっており、これにより、1年単位のPDCAサイクル

(以下「年度サイクル」という。 )も組み込まれている。 

 

2.PDCAの段階ごとの確認

以下では、PDCAサイクルの確立に向けて、PDCAの各々の段階について、

現時点においてどのような取組みがなされているか、また、取組みが欠けている

場合はその部分に対し、どのような取組みが必要であるかについて述べる。 

(13)

 

(1)計画(Plan)段階

計画段階(P)

3

の作業は、中長期計画と年度計画を策定し、 「何が必要か」 、

「何を行うか」といった具体的な活動を定めることが中心となる。これについ ては、第1次基本計画と年度計画であるセキュア・ジャパン2006の策定に よって、おおむね実現されている。ただし、現在の状況では、計画の検討に際 して前提としていたはずのリスク、要すれば、それが存在するが故に適切な対 策を採ることを必要とする課題等が明示的に示されてはいない。また、これら は、リスクに対して適切な対策を継続的に実施することで、目標とする時期ま でに当該リスクを受容可能な水準に管理(解消・低減)することを念頭に置い て設計されたはずであるが、そのようになった状態、言い換えれば政策を計画 にのっとって推進することで、リスクがどうなり、社会がどうなると考えられ るのかを設定した姿や、対策を行った結果受容できるリスク水準、等について も明示的に記述されてはいない。 

したがって、リスク及び姿を明示するために、リスクについては第3章で、

また姿等については第4章で述べる。 

 

なお、基本サイクルも年度サイクルも出発点は2006年度という同じ時点 であり、また、年度サイクルは基本サイクルに基づいて構築されるものである ため、2006年時点のリスクは両サイクルともに同じものである。 

ただし、リスクは常に新しいものが発生していることに鑑みると、必ずしも リスクの認識が2006年時点のまま続くわけではない。したがって、リスク についても少なくとも年度計画の策定と併せて見直しを実施していくことが 不可欠であり、これについては、第3章第1節2.において述べる。また、リ スクの変化に伴い、当然に将来の姿も変化し得ることとなる。これについては、

第4章第1節2.において述べる。 

               

3 以下、PDCAの各段階について、計画段階は「計画段階(P)」、実施段階は「実施段階(D)」、点検段階は「点 検段階(C)」、改善処置段階は「改善処置段階(A)」というように、PDCAの文字を後ろに付ける形で標記す る。 

(14)

 

                       

(2)実施(Do)段階

基本サイクルでは、3年間で基本計画において目標とされた情報セキュリテ ィ水準を実現するという目的の下、そのための実施の手段として年度計画が存 在している。また、年度サイクルにおいては、基本計画の設定する目標の下、

実施の手段として毎年の年度計画に盛り込まれる施策が存在しており、これら を着実に進めることが求められている。 

つまり、実施段階(D)は、既に進めることとされている施策の実施によっ て満たしていけることから、既存取組みで構造自体は完成している状態である。  

 

(3)点検(Check)段階

基本サイクルでは、第1次基本計画策定から3年後である2009年時に、

リスクが「受容できる水準」に管理できていることが目標であり、これを点検 できることが必要である。また、年度サイクルでは、情報セキュリティの対策 状況が、1年ごとに着実に基本サイクルが目指す目標へと進んでいることが目 標であり、これを点検できることが必要である。 

しかし、情報セキュリティ政策に関する従来の取組みには、この点検段階で 活用するための評価指標等が存在しておらず、点検をどう行うべきか具体的に 示されていない。したがって、情報セキュリティ政策のPDCAサイクルを確 立させるため、第5章において評価指標及び必要に応じて行われる補完調査等 図2:情報セキュリティ政策のPDCAサイクルの計画段階

○基本理念

○政府機関、重要インフラ、企 業、個人、分野横断的課題等 について取り組むべき施策の 方向性

第一次情報セキュリティ基本計画 第一次情報セキュリティ基本計画

(2006年度−2008年度)

(2006年度−2008年度)

○具体的取組み施策 セキュア・ジャパン

セキュア・ジャパン(年度計画(年度計画))

(毎年度)

(毎年度)

○第一次情報セキュリティ基本 計画の検討に際して前提とし ていた克服・解決すべき課題 すなわちリスクを可視化

○可視化に際しては、基本的に 基本計画の枠組みに沿った 形で行う

2006年時のリスク 2006年時のリスク

(可視化を図る)

(可視化を図る)

○2006年時のリスクに対して、

様々な取組みを行った結果、

2009年時において我が国 社会がどのような姿になって いるかを明示

2009年時の我が国社会の姿 2009年時の我が国社会の姿

(明示する)

(明示する)

情報セキュリティ政策のPDCAサイクルの計画段階の完成へ 情報セキュリティ政策のPDCAサイクルの計画段階の完成へ

(15)

10

について述べることとする。 

 

(4)改善処置(Act)段階

改善処置段階(A)については、IT安心利用環境の構築に向けた各種取組 みの持続的改善を行うこと、そして改善を行いながら、現行基本計画が目標と する情報セキュリティ水準の達成を目指すとともに次期情報セキュリティ基 本計画策定へとつなげていくことが目標である。こうした取組みの推進には、

点検段階(C)で評価指標を使いながら出てきた評価結果等を活用していくこ とが望ましいが、従来の情報セキュリティに関する取組みでは、このような持 続的改善に向けた取組みをどのように行うか具体的に示されていない。 

したがって、情報セキュリティ政策のPDCAサイクルを確立させるために、

第6章において評価指標等の運用、すなわち情報セキュリティ政策の評価指標 等を活用した持続的改善のあり方について述べることとする。 

 

改善処置(

改善処置(ACTACT)) 点検(

点検(CHECKCHECK)) 実施(

実施(DODO)) 計画(

計画(PLANPLAN)

【目標】 ITの安心利用可能な環境の構築

=’06の「リスク」を解消低減した’09の「姿」

【手段】 第1次基本計画

【目標目標】 ITの安心利用可能な環境の構築ITの安心利用可能な環境の構築

=’’0606の「リスク」の「リスク」をを解消低減した解消低減した’’0909の「姿」の「姿」

【手段手段】 第1次基本計画第1次基本計画

【目標】 3年間で基本計画の目標を実現

【手段】 SJ2006など

(毎年の年度計画にもPDCAサイクル有り)

【目標目標】 3年間で基本計画の目標を実現3年間で基本計画の目標を実現

【手段手段】 SJ2006SJ2006などなど

(毎年の年度計画にも

(毎年の年度計画にもPDCAPDCAサイクル有り)サイクル有り)

【目標】 ’09時に受容できるリスク水準に 管理出来る基盤がある状態

【手段】評価指標、補完調査等(双方に活用)

【目標目標】 ’0909時に受容できるリスク水準に時に受容できるリスク水準に 管理出来る基盤がある状態 管理出来る基盤がある状態

【手段手段】】評価指標、補完調査等評価指標、補完調査等((双方に活用双方に活用))

【目標】 第2次基本計画の策定、

情報セキュリティ水準の向上等

【手段】 評価指標等を用いた持続的改善

【目標目標】 第2次基本計画の策定、第2次基本計画の策定、

情報セキュリティ水準の向上等 情報セキュリティ水準の向上等

【手段手段】】 評価指標等を用いた持続的改善評価指標等を用いた持続的改善

年度サイクル(1年)年度サイクル(1年)

基本サイクル(3年)

基本サイクル(3年)

計画(

計画(PLANPLAN)

改善処置(

改善処置(ACTACT) 点検(CHECK点検(CHECK)

実施(

実施(DODO) 計画(

計画(PLANPLAN)

計画(PLAN計画(PLAN) 実施(DO実施(DO) 点検(

点検(CHECKCHECK) 改善処置(

改善処置(ACTACT)

図3:情報セキュリティ政策のPDCAサイクル

   

 

 

(16)

11

 

第3章  2006年時のリスクの認識

第1節 リスクの可視化に関する基本的枠組み

1.基本的考え方

ここでは、第2章第2節2. (1)の視点に基づき、第1次基本計画及びセキュ ア・ジャパン2006策定時に認識されていたものの明示されなかったリスクの 可視化

4

を行う。つまり、これをもって、IT利用者が改めてリスクを明確に認識 できることを目指す。具体的には、基本計画及び年度計画の枠組みに沿う形で、

2006年時のリスクの可視化を行うことを原則とする。しかし、例えば政府機 関や企業等、主体ごとに状況に違いも見られることから、柔軟に主体の特性等を 考慮しながら述べることとする。 

 

2.リスクの可視化(総論)とリスクの可視化(各論)の関係について

リスクの可視化に際しては、総論と、各対策実施主体などが直面し得る個々の リスク(各論)とを分けて考えることとする。では、これら総論と各論との関係 は、どうなっているのであろうか。第1次基本計画では、大目標たる総論があり、

その下にこれらの大目標実現に向けて各対策実施主体などが取り組むべき施策が 並べられている。これは逆に言うと、各種施策を行って対応していくべき個々の 各論的なリスクへの対応を実現していくことで総論の目標が実現される、という 関係になっている。つまり、各論的なリスクに対する着実な対応が積み重なるこ とで、情報セキュリティ政策の大目標が実現され、総論的なリスクへの対応がな されることとなるのである。 

各論分野についてのリスク認識は、第2節において可視化する。 

 

3.リスクの認識の見直しメカニズム

リスクに関しては、随時変化が生じ得ることから、その認識についても随時見 直しを行うことが不可欠である。そのため、政策会議は、新しいリスクについて、

次期基本計画策定に際して、また、少なくとも毎年の年度計画策定に際して可視 化し、政策会議決定文書となるこれら次期新計画へ反映するよう努めることとす る。 

 

4  2006年時点のリスクについては、考えられるリスクの状態・状況がすべて現実に発生しているわけでは必 ずしもないことを踏まえ、以下、リスクの可視化に際しては、総論、各論を問わず「・・・の可能性がある」とい う形で記述を行う。 

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12 第2節 リスクの可視化(総論)

我が国情報セキュリティ政策の基本目標であるIT安心利用環境の構築を目指 す背景には、IT利用に関連し、我が国にとってどのような問題、すなわちリス クが存在するのであろうか。また、IT安心利用環境の構築を目指すに当たって、

その過程においてはどのようなリスクが存在するのであろうか。以下、基本計画 策定時の背景としてのリスク認識という形で可視化を行う。 

(1)我が国全体としてのリスク

(ア) IT利用の客観的・主観的信頼性5に関するリスク

1990年代後半以降、ITの利用が爆発的に進展した結果、我が国がIT 先進国としての位置付けを得ている現在、日常生活のあらゆる局面においてI Tへの信頼性が不可欠となっている。しかし、一方では大きな障害やサイバー 攻撃等が発生する可能性が少なくないことも事実である。この場合、適切な対 策の実施や事業継続性確保等の取組みが不十分であると、社会に多大な被害や 損失が生じる可能性がある。また、これらの取組みを行った結果、安全にIT を利用できる環境が実現されたとしても、IT利用者が、その安全性を理解し ていないために、当該環境を使いこなすことができなかったり、IT利用者が、

安全性に関する確信を得ていないために、当該環境を使いこなそうとしないこ とによって、ITへの信頼が揺らぐ可能性がある。つまり、IT利用の客観的・

主観的信頼性が確保できず、ITのメリットを我が国国民が享受できなくなる 可能性がある。 

 

これを国家目標に係る様々な観点から見てみると、例えば、経済面では、国 際競争が進むなか、我が国はモノづくりに代表されるような圧倒的な技術力に 基づく伝統的強みに、更に知恵とノウハウの巧みさを効率的・効果的に付け加 える情報経済の強化を実現することで、一層の経済発展を目指すことが不可欠 となっている。にもかかわらず、情報セキュリティに関する取組みが不十分で あるために情報経済の基盤であるITの客観的・主観的信頼性が十分に確保さ れないと、こうした持続的経済発展が阻害される可能性がある。 

 

また、国民生活面では、少子高齢化の進むなか、医療や福祉、教育、防災・

災害対策等、国民の日常生活に深く関連する分野において、ITを活用した取 組みが所与となっているのみならず、更にITを効果的に利用して利便性・効

5 ここで、「IT利用の客観的信頼性」とはIT利用に際して使用するIT機器や、そのITを利用する環境の安 全性について信頼が出来ることを意味する。また、「IT利用の主観的信頼性」とは、IT利用者が、使用するI T機器やIT環境の安全性について信頼を持っていることを意味する(第1章第1節2.(2)参照)。

 

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率性を高めていく、すなわち生産性を改善していくことが重要な課題となって いる。情報セキュリティ面で十分な対応を行って、ITの客観的・主観的信頼 性を維持・向上させることは、このようなITによる生産性改善を担保するも のであるが、十分な取組みがなされない場合、様々な社会的課題に着実に対応 できず、より良い国民生活の実現ができなくなる可能性がある。 

 

さらに、安全保障面では、近年、ITを用いたサイバー犯罪やテロの脅威へ の対応に加えて、食糧、エネルギー、金融、財政等の分野におけるITの利用 拡大、すなわちこれらの分野での様々な活動においてITが基盤化(インフラ 化)していることを踏まえ、新たな脅威への対応が不可欠となっている。情報 セキュリティ面での対応によって、ITの客観的・主観的信頼性を維持・向上 することは、これらの分野におけるインフラとしてのITの利用を下支えする ために必要不可欠であるが、これができない場合、国家としての存続にかかわ る事態に至る可能性がある。 

 

加えて、国際社会における国家の存在感(プレゼンス)にも大きな影響を及 ぼす文化面では、近年、ITを用いた新しいコミュニケーションの発達を例と する(ITによる)文化創造、ITを通じた我が国文化の世界への発信、更に、

IT技術のイノベーションに率先して取り組んで我が国の優れたIT技術力 という文化を世界に発信するような機会が増えてきている。つまり、ITはそ の文化創造・発信機能によって我が国の存在感向上に大きく貢献している状況 にある。情報セキュリティ対策の充実によるITの客観的・主観的信頼性の維 持・向上は、こうした文化の創造・発信のための当然の前提となるが、これが できない場合、ITそのものに不安感が生まれ、新たな文化活動等への取組み が阻害される可能性がある。 

 

(イ) IT安心利用環境の構築への過程におけるリスク

こうしたリスクに対処してITの客観的・主観的信頼性を維持・強化するた めに、IT安心利用環境の構築が求められているが、この構築の過程

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におい ても、解決・克服が求められる様々なリスクが存在する。 

 

第一に、IT安心利用環境の構築に向けた情報セキュリティに係る取組みは、

ITの発展や実際にITを利用する際に発生した問題に対して、多くの場合、

後追い的に対応を行うという受け身の対応であることが少なくない。しかし、

6IT安心利用環境の構築に向けては、官民のあらゆる主体が対応実施主体として情報セキュリティの取組みに関 する共通意識を持ち、役割分担を行いながら対症療法的ではない対応を行うこと、すなわち「新たな官民連携モデ ル」を確立していくことが必要である(第1次情報セキュリティ基本計画参照)。 

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それでは、情報セキュリティ対策は、顕在化した問題に対する対症療法にとど まりがちになり、結果として、特に新たな脅威への対応が後手にまわってIT 利用に係る被害が予想外に拡大する可能性がある。 

 

第二に、ITが社会に浸透した現在、IT利用の際に受けた被害が他の組織 や他分野に大きな影響を及ぼす可能性が少なくない。しかし、IT利用者の視 点から見ると、情報セキュリティは、自身の目に見える範囲の問題がとりあえ ず自身に降りかからないように対応しさえすれば良いものと映り、対策の取組 みが各々の組織内の独自の対応に終始する可能性がある。このため、対策が狭 あいな視野に立ったものとなって効果的な対応ができなかったり、被害が拡大 する可能性がある。 

 

加えて、第三に、情報セキュリティの対策を進めるに際しては、利便性との 両立等のバランスの取れた対応が重要であるが、このバランスが適切でない可 能性がある。すなわち、情報漏えいや不正行為等による被害といったIT障害 を警戒して情報セキュリティ対策を行うに際し、これが過剰であれば、情報セ キュリティ対策そのものが自己目的化し、利用者の利便性が過度に損なわれる 可能性がある。 

 

(2)「新たな官民連携モデル」における対策実施主体ごとのリスク総論

基本計画における「新しい官民連携モデル」では、対策実施主体を政府機関・

地方公共団体、重要インフラ、企業、個人の四主体に分けて整理している。こ こではこれら四主体に関し、主体ごとのリスクについて述べることとする。 

 

(ア) 政府機関・地方公共団体

政府活動のIT化が進んだことによって国民の政府活動に対する信頼が揺 らぐようなことがあってはならない。この意味で、政府機関における情報の取 り扱いにおける信頼性の確保は極めて重要な課題である。また、近年では、電 子政府構築の取組みが進められており、これらの機能に対する安全性・信頼性 の維持が不可欠となっている。こうした中、例えば、外部脅威による攻撃、改 ざん又は破壊等によって、政府機関の情報システムが機能不全を起こし、結果、

高い機密性を有する情報や、法令に基づき政府機関・地方公共団体が収集した 個人や企業に関する情報の流出等の被害が発生したり、行政サービスのオンラ イン・サービスが停止する可能性がある。 

 

もちろん、こうしたリスクは以前から想定されてきたものであるが、リスク

要因は常に変化することから、こうしたリスク以外にも以前は軽微なリスクと

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考えられていたものが大きな脅威へと変化する事態も発生しうる。したがって、

リスクの経時的変化に対しても常に一定水準のセキュリティを維持できるよ うな持続的な取組みがなされないと、迅速かつ新たな対応ができない可能性も ある。 

 

(イ) 重要インフラ

重要インフラは、国民生活、社会経済活動の基盤であることから、サービス の安定的供給が最優先課題である。そのため、IT障害が発生しないような取 組み、また発生しても被害が大きくならないような取組みがなされていること が必要である。 

このような取組みは、一義的には各重要インフラ事業者等が担うべきもので ある。しかし、社会全体のITへの依存が進む中で、日増しに増大していく各 種脅威への対策は個々の取組みだけでは限界に達しつつあることから、分野横 断的な取組みを含めた新たな官民の連携体制の下で取組みがなされないと、サ ービスの安定的供給を確保できなくなる可能性がある。 

 

(ウ) 企業

電子商取引の進展や業務自体のIT化等により、我が国経済活動の重要な担 い手である企業の活動も社会に及ぼす影響が従来より大きくなり得る状況に ある。例えば、個人情報を含む情報資産は、コンピュータのハードディスク等 の記録媒体により保管されており、紙による保管時に比べると、コピーや送付 が簡単で、ネットワークの経由等により流出の危険性が高まっていると言える。

したがって、企業においても、その必要性に応じた情報セキュリティの取組み を行っていないと、企業一社で発生した情報セキュリティ上のトラブルがネッ トワークを通じて社会全体に波及する可能性がある。 

 

(エ) 個人

個人のIT利用もネットワーク経由で行われていることから、たとえ認識不 足等、悪意がない場合でも、十分な情報セキュリティ対策が行われていないこ とで社会的に大きな被害を発生させる可能性がある。 

また、ITに詳しくない個人のITの利用に際して、個人では気付かないこ とや操作・対応が難しい部分等に関して、他の主体による助力が不十分である と、この個人に被害が発生するだけでなく、ネットワークでつながっている他 の多数の個人等にも被害を及ぼす可能性がある。 

 

(21)

16 第3節 リスクの可視化(各論)

ここでは、基本計画を策定する際に認識していたリスク、すなわち、各対策実 施主体が直面し得るリスク、問題の理解・解決を促進する主体の取組みを必要と させるリスク及び横断的情報セキュリティ基盤の形成を必要とさせるリスクを基 本計画の枠組みに従って整理する。 

 

(1)各対策実施主体が直面し得るリスク

(ア) 政府機関・地方公共団体

(政府機関統一基準とそれに基づく評価・勧告によるPDCAサイクルの構築) 

政府機関の情報セキュリティ対策が、技術や環境の変化に対応しきれなけれ ば、対策水準が国際水準に比べて低いものとなる可能性がある。また、200 5年12月に政府機関統一基準が策定されたものの、省庁基準の策定(Pla n)と対策の実施(Do)にとどまり、適切な点検(Check)による状況 把握・評価とそれに基づく改善処置(Act)まで着実に行うというPDCA サイクルが確立できない場合、情報セキュリティに関する被害が生じる可能性 がある。さらに、策定された省庁基準に基づく対策の取組み水準についても、

府省庁ごとに大きな違いが生じる可能性がある。加えて、政府機関自身の対策 のみを進めても、外部委託先のような政府機関外に起因する問題によって被害 を受ける可能性がある。また、外部からの脅威のみに対応しても、内部からの 脅威に対する認識と対応が不十分で被害が発生する可能性がある。 

 

(中長期的なセキュリティ対策の強化・検討) 

政府機関のセキュリティ対策が、対症療法的な脅威への対策に終始した場合、

情報システムの開発(導入)の段階を含む様々な面において先進的なセキュリ ティ技術の導入が遅れることや、また、政府機関横断的な視点で各機関が協力 を行う取組みに欠けていることから、新たな脅威やより高度な脅威等に対して 十分対応できない可能性がある。 

 

(サイバー攻撃等に対する政府機関における緊急対応能力の強化) 

政府内において、サイバー攻撃等への迅速かつ適切な緊急時の対応及び技術 や環境への適応を実現するために必要となる情報共有や統一的な分析、対処を 行う体制が存在しない又は存在しても機能しない場合、過去の緊急時等の対応 から得られた知見が活用できず、同様の脅威によって被害を受ける可能性があ る。また、新たな脅威に対しても予防的に対応を行えず被害を受ける可能性が ある。 

 

(22)

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(政府機関における人材育成) 

政府が年々複雑化する情報セキュリティ問題に対応するための対策を進め る際に、必要な知見や専門性を持った人材が確保できておらず、また、そもそ も具体的な育成・確保のための戦略が立てられていない場合、対策が進まない 可能性がある。また、政府機関において、情報セキュリティ担当者のセキュリ ティ意識が高くなっても、幹部を含めた職員一般の意識が低ければ、適切な情 報セキュリティ対策が進められない可能性がある。 

 

(独立行政法人等のセキュリティ対策の改善) 

政府機関に近い独立行政法人等において十分な対策が行われていない場合、

情報セキュリティ面での被害が発生する可能性がある。 

 

(地方公共団体・情報セキュリティ確保に関するガイドラインの見直し等) 

各地方公共団体において、情報漏えい防止等のため取るべき対策や最近の技 術的動向を踏まえた対策がなされていない場合、情報セキュリティに関する新 たな脅威に対応できない可能性がある。 

 

(地方公共団体・情報セキュリティ監査実施の推進) 

地方公共団体において、当該団体の情報セキュリティに関する管理及び対策 が適切に実施されているか否かが把握されていない場合、情報セキュリティ対 策の実効性が確保されておらず、情報セキュリティに関する脅威に対応できな い可能性がある。 

 

(地方公共団体・「自治体情報共有・分析センター(仮称7」の創設促進) 

地方公共団体の情報セキュリティ対策に関し、情報の収集・分析・共有等が 十分に行われていないため、情報セキュリティに関する脅威に適切に対応でき ない可能性がある。 

 

(地方公共団体・職員の研修等の支援) 

地方公共団体の職員が情報セキュリティに関し十分な知識と技能を備えて いない場合、情報セキュリティ面での被害が発生する可能性がある。 

 

(イ) 重要インフラ

(重要インフラにおける情報セキュリティ確保に関する「安全基準等」の整備) 

各重要インフラ事業者等が、それぞれの重要インフラ事業分野毎に明示され

7 自治体情報共有・分析センター(仮称)とは、地方公共団体の各種IT障害の情報や対策を地方公共団体間で共 有することで、適切な予防及び復旧に役立てる仕組み。 

(23)

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ている、必要な又は望ましい情報セキュリティ対策水準に沿った、自らの情報 セキュリティ対策に対する自己検証が十分でない場合、多種多様な脅威を要因 とするIT障害が発生する可能性がある。 

 

(情報共有体制の強化) 

IT障害に関する情報に関して、官民の各主体間で情報共有、連絡・連携が なされていない場合、IT障害の未然防止、拡大防止・迅速な復旧、再発防止 に十分対応できない可能性がある。 

 

(相互依存性解析等の実施) 

ある重要インフラ分野において生じたIT障害が、他の重要インフラ分野に どのような影響を及ぼすかというIT障害の相互依存性に関し、重要インフラ 分野で適切な対応がなされていない場合、IT障害発生時の被害が拡大する可 能性がある。 

 

(分野横断的な演習等の実施) 

対策の検証(分野横断的な演習等を通じた対策の検証や課題の抽出等)や見 直し、さらなる強化に向けた取組みが、官民連携して継続的に行われない場合、

重要インフラにおける情報セキュリティ対策が向上しないため、IT利用の進 展や拡大、IT障害を発生させる要因や脅威の変化に対応できずに、IT障害 が発生する可能性がある。 

 

(ウ) 企業

(企業の情報セキュリティ対策が市場評価に繋がる環境の整備) 

企業が各種の情報セキュリティ対策を行っても市場や取引相手、政府調達の 入札元から加点評価の対象とならない等、事業利益を得ることが不可欠な企業 にとって、情報セキュリティ対策を実施することが、市場との関係で誘引(イ ンセンティブ)にならず、情報セキュリティ対策の実施が十分に進まない可能 性がある。 

 

(質の高い情報セキュリティ関連製品・サービスの提供促進) 

供給される情報セキュリティ関連製品・サービスの質が、需要側である企業 にとって十分に理解されないことにより、どの製品・サービスを選択して良い のかわからず、また、そのような状態で需要側が製品・サービスを導入しても、

需要側からは供給側に対して製品・サービスの問題点や改善点等がフィードバ

ックされないことから、結果として、情報セキュリティ関連製品・サービスの

質は向上せず、普及も進まない可能性がある。 

(24)

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(企業における情報セキュリティ人材の確保・育成) 

経営トップ等が情報セキュリティ確保を自社の中の優先順位として低く位 置付けていることなどから、企業にとって必要な情報セキュリティ人材が不足 し、また、情報セキュリティ担当者の意欲が低下し、結果として、企業の情報 セキュリティ対策が進まない可能性がある。 

 

(コンピュータウイルスや脆弱性等に早期に対応するための体制の強化) 

政府等の関係機関による支援や情報関連事業者等の連絡体制が不十分であ るため、コンピュータウイルスや脆弱性等を突いた攻撃など情報セキュリティ 問題が発生した際に、企業において的確かつ迅速な対応ができない可能性があ る。 

 

(エ) 個人

(情報セキュリティ教育の強化・推進) 

個人が情報セキュリティ教育に接する機会が少なく、情報セキュリティを当 たり前のこととして認識していないために、対策が遅れて情報セキュリティ被 害が生じる可能性がある。 

 

(広報啓発・情報発信の強化・推進) 

個人が広報啓発・情報発信に接する機会が少なく、情報セキュリティを当た り前のこととして認識していないために、対策が遅れて情報セキュリティ被害 が生じる可能性がある。 

 

(個人が負担感なく情報関連製品・サービスを利用できる環境整備) 

情報セキュリティ関連製品・サービスの利用方法が難しいことなどにより、

個人が製品やサービス利用に負担を感じ、結果的に利用しないことで、情報セ キュリティ被害が生じる可能性がある。 

 

(2)問題の理解・解決を促進する主体の取組みを必要とさせるリスク

(ア) 政府・地方公共団体

政府の情報セキュリティ政策の取組みが、縦割り的で統一性がないため、政 策資源の効率的な投入がなされておらず、取組みの費用対効果の観点からバラ ンスが取れない可能性がある。また、そもそも投入すべき政策資源について、

必要な分を確保できない結果、情報セキュリティの取組みが後手にまわる可能

性がある。 

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