Ⅰ.はじめに
脛骨高原骨折は,関節軟骨の損傷を伴う代表 的な関節内骨折である。近年,交通事故やスポー ツ外傷の増加にともない増加の傾向にある。脛 骨高原骨折では一般的に関節面が陥没転位して いる場合には,解剖学的整復を期しできるだけ 強固な内固定を行い,外固定をせずに術後早期 より運動を行う傾向にある。しかし半月板や ACL をはじめとする諸靱帯損傷の合併や,関節 面の不適合の問題があり,術後疼痛や変形,不 安定性を残すことがある。今回我々は,過去 3 年間において経験した脛骨高原骨折の症例に付 き検討したので,若干の考察を加えて報告する。
Ⅱ.症
例過去 3 年間に脛骨高原骨折(顆間隆起骨折も 含む) と診断された 23 例 23 関節について検討を 行った。年齢は 40 ~ 79 才(平均 62 才),受傷機 転は転倒が 14 例,高所からの転落が 6 例,交通 外傷 2 例,不明が 1 例であった。関節面に骨傷 が及んでいない症例,転位が少ない症例にはギ プス固定を 4 週行い(15 例),関節荷重面に骨 傷が及んでいるもので転位や陥没が高度のもの
(8 例)は手術を行った。合併損傷としては,
MCL + ACL + LM が 1 例,MCL + LM が 2 例,
LM が 2 例,MCL が 1 例であった。
治療後の ROM は,保存療法例では- 10°~
140°手術療法例では,- 20°~ 125°であった。
骨折の分類では,顆間隆起骨折を含む無転位 型が 13 例と一番多く,分離陥没型が 4 例,部分 陥没型が 3 例, 粉 砕 型 が 2 例, 全 体 陥 没 型, 分 離 型 が 1 例 で あった(表1)。
脛骨高原骨折の検討
岩手医科大学整形外科
安 田 利 彦 一 戸 貞 文 阿 部 正 隆
県立久慈病院整形外科宗 像 秀 樹
県立千厩病院整形外科成 島 勝之助
鹿角組合病院整形外科笹 村 拓 美 双 木 慎
表1 骨折の分類(Hohl の分類)
無転位型 13 例 (顆間隆起骨折を含む)
部分陥没型 3 例 分離陥没型 4 例 全体陥没型 1 例 分離型 1 例 粉砕型 2 例
分離陥没型 4 例,粉砕型 2 例,分離型 1 例,
全体陥没型 1 例に対し観血的整復固定術を行っ た。
Ⅲ.代表的症例
症例 1:64 才男性トラックの荷台に乗っていたところブ レーキをかけられ,荷台よりアスファル ト上に転落した。
レントゲン上で,分離陥没型の骨折を 認めた。(図1.図2)L M の合併損傷 例である。
Tibia volt にて固定を行い,術後 2 週 目より CPM による運動を開始した。 術 後 4M で全荷重とした(図3)。術後の ROM は,0°~ 135°であった。
症例 2:62 才女性
荷車より荷物を下ろそうとして転倒し 受傷した分離陥没型の骨折である(図4.
図5-a)。
Cancellous screw 二 本 に て 固 定 し た
(図5-b)。術後 ROM は,0 °~ 140°
である。
図 2
図 3
図 4 図 1
図 5
症例 3:43 才女性
3 m の高さの石垣より転落して受傷。
粉砕型の骨折である(図6.図7)。陥 没骨片を持ち上げ,Tibia volt にて固定 し,骨欠損部に骨移植し k-wire にて固 定した(図8)。術後 ROM は,- 10°~
120°である(図 9 )。
症例 4:72 才男性
バイクで走行中ネコが前方を通ったた め急ブレーキをかけたところ転倒した。
粉砕型の骨折であり陥没部分を整復し,
Bolt nutt 2 本と anatomical plate にて 固定した(図 10)。
a
b
図 6
図 7
図 8
Ⅳ.考
察脛骨高原骨折は,解剖学的に分類するものと,
生体力学的に分類する方法がある1)2)。一般的 には,Hohl の分類が利用されている。Hohl に よれば分離陥没型が多いが,我々の症例では,
無転位型が多かった。しかし,手術症例を見る と分離陥没型が多く Hohl の報告と一致した。
治療方法は,骨片の転位陥没の程度により決 定するが,野村等は,無転位型や,関節面の陥 没が 5mm 以内の安定した症例は保存療法の対 象になると述べている3)。また,榊田は外顆の 陥没が 5mm で 5°10mm 以上では 10°以上の外
反変形を来たすと報告している4)。そのため,
転位のある症例は観血的整復固定術の適応とな る。我々の症例では,分離陥没型 4 例,粉砕型 2 位,分離型 1 例全体陥没型1例に対し手術を 行った。
手術時期について遠藤は 2 ~ 3 週待って局所 の繊維軟骨ができ,骨片がばらばらにならない 時期に手術を行うと述べている5)が,我々は全 身および局所に問題がなければできるだけ早期 に手術を行っている。
治療を考える上で靱帯損傷,半月板損傷の有 無が治療成績に影響する。外顆骨折では,MCL 損傷が 10 ~ 30%に合併するとの報告がある6)7)
が,靱帯損傷の初期診断は困難なことが多いの で,術前麻酔下でのストレス診断が必要である。
また,関節面の陥没が高度な場合は,半月板の 損傷も考えられる。損傷のある半月板は損傷の 程度により切除,部分切除,または縫合を行っ ている。
しかし,半月板を温存し関節面の不適合性を 残すことはこの骨折の治療上好ましくないため,
半月板の損傷が認められない場合でも関節面の 観察のため,切離後縫合する場合もある。
後療法であるが,我々の症例では術後 2 週目 より自動運動を開始している場合が多いが,
Burri は,術後 24 ~ 48 時間で自動介助運動を開 始している8)。また,術後超早期の運動が術後 成績に影響するという報告も見られる9)ため,
最近では CPM を用いて術後早期より運動を開 始するようにしている。部分荷重は,術後 10 週 より開始し,約 15 週で全荷重としている。
治療の判定には,解剖学的評価と機能的評価 を行う Hohl and Luck の判定基準が用いられ ることが多い。我々の評価では,解剖学的整復 の容易な無転位型や分離型は成績が良好であり,
分離陥没型や粉砕型のように関節面の不整を残 したり固定性に問題があるものに可のものが認 められた(表2)。
図 9
図10
Bone Joint Surg.,49-A:1455-1476,1969.
2) Kennedy, J. C.:Experimental tibial- plateau fractures.J. Bone Joint Surg.,55- A:1522-1534,1968.
3) 野村茂治ほか:脛骨顆部骨折の治療成績,
整形外科 Mook,59:17-33,1989.
4) 榊田三郎ほか:膝関節顆部骨折の治療成績 整形外科,26:1069-1077,1975.
5) 遠藤寿男:脛骨顆骨折,骨折,外傷シリー ズ 5:214-219,1987.
6) Ramussen, P.:Tibial condylar fractures.
J. Bone Joint Surg.,5 5 - A : 1 3 3 1 - 1 3 5 0 , 1973.
7) Schatzker, J., et al.:The tibial plateau fracture.Clin. Ortho.,138:94-104,1979.
8) Burri, C., et al.:Fractures of the tibial plateau.Clin. Orthop.,138:84-93,1979.
9) Schatzker, J.:Compression in the surgical treatement of fractures of the tibia.Clin.
Orthop.,105,:220-239,1974.
表2 治療成績
症例 数
解剖学的評価 機能的評価 優 良 可 不可 優 良 可 不可 無 転 位 型 13 13 0 0 0 12 1 0 0 部分陥没型 2 1 1 0 0 1 1 0 0 分離陥没型 4 1 2 1 0 0 2 2 0 全体陥没型 1 0 1 0 0 0 1 0 0 分 離 型 1 1 0 0 0 1 0 0 0 粉 砕 型 2 0 1 1 0 0 1 1 0
以上より,脛骨高原骨折の治療では,関節面 の解剖学的整復が最も重要な事であり,関節面 の不整がない症例においては保存的療法で十分 な治療成績が残せるが,関節面の転位陥没の大 きな症例では,解剖学的整復と術後早期の運動 開始が治療成績を左右すると思われるので,靱 帯損傷の合併に注意しながらできるだけ早期に 強固な固定により整復位を得ることが重要であ ると思われた。
参考文献
1) Hohl, M.:Tibial condylar fractures.J.