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2010年度大学院スポーツ健康科学研究科博士論文要約

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Academic year: 2021

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82 順天堂スポーツ健康科学研究 第 2 巻 Supplement (2011)

〈年度大学院スポーツ健康科学研究科博士論文要約〉 Summaries of Doctor's Theses Completed in 2010

血中ヒスチジン比率と生活習慣病予防に関する基礎的研究

―動脈硬化危険因子との相関関係からの検討―

Basic research into plasma histidine levels and prevention for lifestyle diseases:

correlation of plasma histidine to arteriosclerosis risk factors as a starting point

雨宮

有子

指導教授

岩井

秀明

 緒言 動脈硬化性疾患予防対策は我が国の保健医療計画の重要 な課題であり,その対策として内臓脂肪蓄積の予防は重要 である. 摂取ヒスチジンによる脳内ヒスタミンニューロンの賦活 化を介した抗肥満作用が報告されており,その強さは,摂 取したアミノ酸組成中のヒスチジン割合および摂取蛋白質 の充足率の高さに影響を受ける可能性が示唆されてきた. しかし,これらの報告は摂取ヒスチジン量をもとにした間 接的なデータによるものであり,血中のアミノ酸組成中の ヒスチジン割合をもとにした直接的なデータで検証する必 要がある. また,動脈硬化性疾患の予防ガイドライン2007年版で は,脂質異常症の管理が中心に示され,酸化ストレスは炎 症を惹起すると共に,酸化 LDL 形成により動脈硬化症の 発症・進展へ強く関与することが指摘されている.摂取ヒ スチジンは酸化ストレス生成物質の濃度を抑制することが 報告されており,ここでもヒスチジンの果たす役割が注目 されている.しかし抗肥満作用同様,血中ヒスチジン比率 をもとにした直接的なデータは存在しておらず,血中ヒス チジン比率とこれらの動脈硬化危険因子との関係について 検証する必要がある.さらに,ヒスチジンと同経路の抗肥 満作用を有する物質としてレプチンが知られており,抗肥 満作用,抗動脈硬化作用をめぐるヒスチジンの作用に関し ては,両物質のもつ作用の関連性を明らかにしなくてはな らない. よって,ヒスチジンの作用(Fig. 1)をもとに,本研究 では,生活習慣病である動脈硬化性疾患の予防を目指し, 肥満および動脈硬化の防止における血中ヒスチジンの影響 を調べるため,まず人における血中ヒスチジン比率と摂取 ヒスチジン量との相関を明らかにした.次いで,血中ヒス チジン比率と動脈硬化危険因子(内臓脂肪蓄積型肥満,脂 質異常症,および動脈硬化に関与する酸化・炎症)の各指 標との関係を検討した.さらに,それらの関係に与えるレ プチンの影響を検討した.  方法 1. 対象 治療や薬剤投与を受けていない18歳から65歳までの男女 57名(男性34名,女性23名). 2. データ 1) 身体測定(身長,体重,腹囲) 2) 食事調査(3 日分の自記式質問紙を用い,摂取アミ ノ酸・蛋白質量を算定) 3) 血液検査(採血空腹時間12時間以上の早朝,測定 項目9 種類の遊離アミノ酸,脂質異常症診断基準項 目等LDLC・HDLC・TG・sdLDL・TC,酸化 マーカーMDALDL,炎症マーカーhsCRP, TP,レプチン) 3. データ解析 1) 血中ヒスチジン比率(血漿中のヒスチジン量/9 種 類のアミノ酸量×100())と摂取ヒスチジン比率 との相関分析. 2) 血中 9 アミノ酸比率(血漿中の各アミノ酸量/9 種 類のアミノ酸量×100())と,動脈硬化危険因子 の各指標との相関分析.その際,年齢・性別・喫煙

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83 Fig. 1 ヒスチジンの作用 83 順天堂スポーツ健康科学研究 第 2 巻 Supplement (2011) 歴・身体活動・レプチンを制御した偏相関分析.血 中 9 アミノ酸比率の因子分析. 3) レプチンと動脈硬化危険因子の各指値との相関分析.  結果および考察 1. 摂取ヒスチジン比率(摂取ヒスチジン量/摂取蛋白質 量/体重(mg/g/kg))は,血中ヒスチジン比率と有意な 正の相関関係がみられた.したがって,血中ヒスチジン 比率と動脈硬化危険因子との関連を追究する当研究の目 的の妥当性が得られた. 2. 血 中 ヒ ス チ ジ ン 比 率 は , BMI, 内 臓 脂 肪 面 積 , log TG, log sdLDL, LDLC/HDLC 比,MDALDL, log hsCRP と有意な負の相関関係がみられ,HDLC と有 意な正の相関関係がみられた.したがって,蛋白質栄養 が良好な状態でみる限り,血中ヒスチジン比率が高いほ ど,内臓脂肪蓄積型肥満,脂質異常症,酸化 LDL 生 成,および炎症の程度は低いことが検証された. 3. log Leptin は,血中ヒスチジン比率に比べ有意な相関 関係がみられた動脈硬化危険因子の各指標数は少なく, その相関係数値も低かった.また,血中ヒスチジン比率 と動脈硬化危険因子の各指標との相関関係に与える log Leptin の影響は,log hsCRP を除いてみられなかった.  結言 人において蛋白質栄養が良好な状態では,血中ヒスチ ジン比率が高いほど,動脈硬化危険因子(内臓脂肪蓄積 型肥満,脂質異常症,および動脈硬化に関与する酸化・ 炎症)の発生率は低いことが明らかになった.さらに, 炎症を除いたその関係にレプチンは影響を与えず,ヒス チジンはレプチン以上に動脈硬化危険因子との関係が強 いことが示された. 今後,動脈硬化に関与する炎症に与えるレプチンの影 響を明らかにし,血中ヒスチジン比率低下が動脈硬化危 険因子悪化のマーカーになる可能性など,介入研究を含 めて血中ヒスチジン比率に注目したさらなる検討を進め る必要が示された.

〈主要参考文献〉

1) Yoshimatsu H, et. al:Eur J Clin Invest. 32(4): 236241, 2002.

2) Yoshimatsu H, et. al:Exp Biol Med. 227: 208213, 2001. 3) Masaki T, et. al:Diabetes. 50(2): 376384, 2001. 4) 辻眞紀子,他肥満研究.10(2): 173176, 2004.

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