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2017年1月号【No.54】(2017年1月16日発行)

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特集

オンラインゲーム

消費者トラブル

特集1 オンラインゲームの基礎知識 1 特集2 オンラインゲームをめぐる近時の法的問題点 4 特集 3 オンラインゲームに関する相談の傾向と現状、事例について 9 消費者問題アラカルト

新水道ビジョン

―人口減少社会における水道事業の方策―

12 消費者問題あの時代 2012 年(平成 24 年) 15 高齢者向け住まいを考えるー契約を中心にー高齢者向け住まいをめぐる新たな動きと契約上の注意点 16

エネルギーと消費生活

日本におけるエネルギー政策策定の経緯と今後の計画

18 事例で学ぶ消費生活相談の関連法規 健康食品の通信販売 20 海外ニュース <国連、アメリカほか>薬剤耐性に立ち向かうために 23 <香港>消しゴムのテスト <オーストリア>人気のビターチョコからも鉱物油を検出 <ドイツ>乳幼児にとって快適な抱っこひもは? 消費者運動 昔・今・これから 世界の消費者団体とさまざまな課題 25 金融商品の基礎講座 投資信託(1) 28 苦情相談 劇場型勧誘による仮想通貨のトラブル 31 暮らしの法律 Q&A 保証人の責任はいつまで? 33 暮らしの判例 劇場型勧誘で使われた電話転送サービス提供事業者の責任 34 誌上法学講座 著作権法を知ろう―著作権法入門・基礎力養成講座 著作権(3)-引用- 37

ウェブ版

NO.54(2017)

目次

New

(2)

社会ICT事業本部所属。情報通信政策、消費者政策等を専門とし、電 子商取引、データ流通、コンテンツ(オンラインゲーム、電子書籍等)、 個人情報保護等の分野を研究。 福島 直央 Fukushima Nao 株式会社三菱総合研究所 研究員

オンラインゲームの基礎知識

特集

1

日本では、スマートフォン(以下、スマホ)保 有者のうち約7割がスマホでゲームをして遊ん だことがあるなど、スマホで遊ぶオンライン ゲームの普及が進んでいます*1 今回はスマホ向けオンラインゲームの基礎知 識についてご紹介します。 従来、ゲームはプレイステーションやWiiなど のゲーム専用機に、専用のソフトを購入して遊 ぶゲーム(パッケージゲーム)が一般的でした。 しかし、インターネットの普及と携帯電話端 末の高機能化により端末のブラウザからアクセ スするゲーム(いわゆるソーシャルゲーム)や、 端末にアプリケーションをダウンロードして遊 ぶゲーム(アプリゲーム)が普及するようになり ました。 2007~2012年頃はまだスマホも普及していま せんでしたので、探検ドリランド、ドラゴンコレ クションなどのソーシャルゲームがほとんどで したが、2012年頃からはスマホの普及により、

流行っているゲームは?

パズル&ドラゴンズ、白猫プロジェクト等を始 めとしたアプリゲーム(いわゆるスマホゲーム) が増えてきています。 2015年のデータ*2では、オンラインゲームの うちソーシャルゲームが527億円、スマホゲー ムが9453億円と、合計1兆円規模に達しました。 パッケージゲームのソフトウェアの売り上げが 1949億円ですから*3、スマホ向けのアプリゲー ムが圧倒的に売れていることが分かります。

1. 費用の払い方

パッケージゲームでは、パッケージの購入後、 それ以上の費用は発生しません。オンラインゲー ムでもそのような売り切り型のモデルもありま すが、多くは月会費等を支払うか、ゲームで利 用するアイテム等を購入するモデルになります。 また、パッケージゲームは基本的に発売後に内 容が変わらないのに対し、オンラインゲームで はいろいろな要素が追加されたりします。

オンラインゲームと

パッケージゲームの特徴

*1 第20回インターネット消費者取引連絡会資料「スマホゲームの 動向」(消費者庁)  h t t p : / / w w w . c a a . g o . j p / a d j u s t m e n t s / p d f / 160324shiryo1.pdf *2 『JOGAオンラインゲーム市場調査レポート2016』 (一般社団 法人日本オンラインゲーム協会) *3 『2016CESAゲーム白書』 (一般社団法人コンピュータエンター テインメント協会)

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オンラインゲームの基礎知識 特集1 特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

したがって同じゲームといっても、違うもの だと認識しておく必要があります。

2. 「基本無料」と課金のしくみ

さらに、携帯電話向け、スマホ向けのゲーム のCM等を見ると、「基本無料」と書かれている ことがよくあります。これはダウンロードして ゲームをすること自体は無料で可能ということ を意味しています。 ではどのようにしてゲーム事業者が収益を得 ているかというと(完全無料では制作費を賄え ません)、ゲームで有利になったり、ゲーム内 で自分のキャラクターを目立たせたりするアイ テムなどを販売して、収益を得ています。これ をアイテム課金型と言います(表1)。 スマホ等のオンラインゲームの場合、1つの ゲーム世界の中に多くの人が参加しています。 すると、自分が他の人よりも強いのか/うまい のか、自分は他の人よりも目立てているのかな どが気になるわけですが、他者との競争心か ら、消費者(プレーヤー)はゲームが有利になるよ うに有料アイテム等を購入することになります。 調査*1をしてみるとスマホゲームを遊んだ 経験のある人のうち、24.3%の人がスマホゲー ムにお金を払ったことがあるため、「基本無料」 とうたっていても4分の1の人は有料ゲームと して遊んでいる可能性があります(図1)。 さて、この無料/有料で気をつけなくてはい けないことがもう1つあります。パッケージ ゲームの場合、1つのゲームに対して支払う金 額は最初にゲーム機本体を買った金額と、その 後はソフトを買ったときの金額で固定されます (表1)。また月額タイプのオンラインゲームにつ いても、月当たりの金額が固定です。 それに対し、アイテム課金型の場合、支払う金 額に上限がないため、月に数万円を超えて支払 うこともあり得ます。調査*1では、スマホゲー ムにお金を払っている人のうち、3.4%が毎月 10,000円以上支払っているという結果が出てい ます。また、基本的に20代社会人、30代、50代 などで支払金額が高い傾向がありますが、中学 生、高校生などでも少数ですが、月に10,000円 以上支払っている人もいるという結果が出てい ます(図2)。 パッケージ型 アイテム課金型 初期費用 定額 無料 基本プレイ 無料 無料 追加課金 なし あり プレイに かかる総額 初期費用のみ 0円~上限なし パッケージ型とアイテム課金型の違い 表1 18.4 4.6 (%) N=4,391 10.6 71.1 お金を払ってゲーム内アイテム を購入したことがある ゲーム内の有料電子くじ (ガチャ)をしたことがある その他のゲーム内課金を したことがある スマホのゲームに お金を払ったことはない 覚えていない 0 20 40 60 80 8.1 スマホゲームでお金を支払った 経験の有無(複数回答) 図1 1,500円未満 1,500円以上3,000円未満 3,000円以上5,000円未満 5,000円以上10,000円未満 10,000円以上50,000円未満 50,000円以上 その他 4.6 2.4 1.0 68.3 62.7 14.9 12.3 64.5 65.2 70.8 59.2 55.0 67.0 54.9 66.7 11.9 17.8 21.7 12.5 10.5 18.0 10.0 15.9 5.6 15.8 11.2 7.6 8.3 10.5 17.0 12.0 11.0 16.7 1.0 2.1 1.9 2.2 4.2 9.2 7.0 4.0 7.3 11.1 1.9 1.1 1.1 4.2 6.6 1.0 2.0 6.1 1.0 2.0 1.0 1.1 3.9 1.0 1.0 2.8 4.0 4.9 0% 20% 40% 60% 80% 100% 中学生 (N=101) 全体 (N=700) 高校生 (N=107) 大学生[未成年](N=92) 大学生[成年](N=24) 20代社会人(N=76) 30代 (N=100) 40代 (N=100) 50代 (N=82) 60代以上 (N=18) 毎月のゲーム内アイテム等の課金状況 (2015年7~ 12月の平均:全体および年齢別) 図2

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特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲームの基礎知識 特集1 ないことになります。そのため、ゲーム事業者 から消費者には「PF事業者に依頼してください」 と回答することになります。 そしてPF事業者は誰が何を購入したかや、誰 の支払いについて取り消したかという詳細な情 報をゲーム事業者に渡していません(1カ月分な どをまとめて情報を送付しているため、個々の 履歴までが判別できないようになっています)。 そのため、ゲーム事業者としてはどのアイテ ムを取り消せばよいのかが分からず、アカウン ト自体を削除したりします。そうすると子ども はゲーム自体ができなくなってしまうので、不 満を抱き、取り消し自体をしたくないと主張す る、そのような状況が生まれています。 大手のゲーム事業者は、未成年者かどうかを 登録させ、未成年者の場合は金額に上限を設け ています。またPF では、有料のゲーム・アイ テムの購入の制限が可能です。 親としては PF 側での制限や、ゲームの制限 をうまく利用することで、高額の支払いが生じ ることを防ぐことが可能です。 スマホゲームを子どもに遊ばせる場合、ダウ ンロード時は無料であってもアイテム課金など で支払いが発生する可能性があり、その金額に は制限しない限り上限がなく、想定よりも高額 の支払いが発生することがある、と親は認識し ておかなくてはなりません。 ゲーム事業者も、利用者の年齢を正確には把 握しないまま、相手を大人としてサービスを提 供していることが多くあります。子どもの使用 する端末は、携帯電話会社等できちんと未成年 者と登録しておくことや、端末側で未成年者と 設定しておくことが重要な対策になります。

遊ぶ金額の上限設定と

支払いの制限

消費者は、ゲームを遊ぶ際に、誰と契約し、 誰に対してお金を支払っているのでしょうか。 パッケージゲームの時はゲームメーカーが パッケージソフトを販売し、消費者は量販店、 ゲームショップ等でそれを購入していました。 スマホゲームの場合、アプリやゲームの販売 は、スマホのプラットフォーム(以下、PF)を 通す必要があり、Android の場合は Google 社 の運営する Google Play で、iPhone の場合は Apple 社の運営する App Store で購入すること になります。このとき、誰がゲームを買ったの かという情報は、PF事業者(Google社、Apple 社)は持っているものの、ゲーム事業者には提 供されません。また、このPFでの販売時に売 上げの3割がPF利用料としてPF事業者に支払 われ、残りの7割がゲーム事業者に渡ります。 前述のようにスマホゲームで「基本無料」とう たうものは最初のダウンロード時にはお金がか かりません。しかし、アイテムを購入する際に ゲーム内で使える通貨を買うことになります。 この通貨を買うときに、支払った金額の3割が PF事業者に流れています。 例えば未成年者がゲームでアイテム購入のた めに高額を利用したときなどに、ちょっと困っ た事態が起きています。 子どもが高額の費用を支払った場合、親とし ては未成年者なのだから請求の取り消しを依頼 したいわけですが、前述のようにゲーム事業者 は誰がいつどのように契約し代金を支払ったの かという情報を得ていないことがあります。そ うすると、ゲーム事業者は申し立てを行った消 費者が、本当に未成年者なのか、またその人が ゲームをしていたのかを正確には把握できてい

ゲーム運営の構造と料金

プラットフォームと

ゲーム事業者

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特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

英知法律事務所。経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」 起草メンバー、消費者庁「インターネット消費者取引連絡会」委員。 森 亮二 Mori Ryoji 弁護士、アメリカニューヨーク州弁護士

オンラインゲームをめぐる

近時の法的問題点

特集

2

2016年4月、一般社団法人コンピュータエン ターテインメント協会(CESA)と一般社団法人 日本オンラインゲーム協会(JOGA)は、電子く じ(一般には、「ガチャ」と呼ばれるものである。 以下、ガチャ)に関する新たなガイドラインを公 表しました*2。これらのガイドラインの特徴は、 ガチャにおける出現率を消費者に対して表示す ることをルール化している点にあります。両者 のガイドラインは類似した内容なので、ここで はCESAのガイドラインを前提に説明します。 CESAのガイドラインは、「【全ガチャアイテ ム提供割合表示】:提供されるすべてのガチャ アイテムの提供割合が分かる表示」を原則とし つつ、以下の例外を許容しています*3 ●いずれかのガチャレアアイテムを取得す るまでの推定金額(その設定された提供 割合から期待値として算定される金額を いう)の上限は、有料ガチャ1回当たり の課金額の100倍以内とし、当該上限を 超える場合、ガチャページにその推定金 額または倍率を表示する。 ●いずれかのガチャレアアイテムを取得す

ガイドラインの策定等の

事業者等の自主的取組み

2016年9月20日、内閣府消費者委員会は、「ス マホゲームに関する消費者問題についての意見 ~注視すべき観点~」(以下、意見書)を公表し ました*1 この意見書の中で、「Ⅱ今後注視すべき観点」 として、 1 消費者が安心して利用できる適正な環境 2 スマホゲームの電子くじの射幸性 3 未成年者における高額課金 の3点を挙げています。このうち、1につい ては「注視すべき具体的観点」として、 適正な表示 ガイドラインの策定等の事業者等の自主的取 組み スマホゲームの電子くじと賭博罪との関係 が挙げられています。 この中から、1②ガイドラインの策定等の事 業者等の自主的取組み、1③と2スマホゲーム の電子くじの射幸性・賭博罪との関係、3未成 年者における高額課金について、簡単に説明し ます。併せて、今回の意見書では取り上げられ なかった「ゲームアイテムと資金決済法の問題」 についても説明します。

はじめに

*1 http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2016/ __icsFiles/afieldfile/2016/09/26/20160920_iken.pdf *2 CESAにおいては新たなガイドライン「ネットワークゲームにお けるランダム型アイテム提供方式運営ガイドライン」の策定であ り、JOGAにおいては以前からあった「ランダム型アイテム提供 方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドラ イン」の改訂版である。 *3 CESAのガイドライン4.(2)

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特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲームをめぐる近時の法的問題点 特集 2 意見書は、まず、賭博罪該当性については、「電 子くじで得られたアイテム等を換金するシステ ムを事業者が提供しているような場合や利用者 が換金を目的としてゲームを利用する場合は、 『財産上の利益』に該当する可能性があり、ひい ては賭博罪に該当する可能性が高くなると考え られる」としています*4。そのとおりではある ものの、ゲームの結果として金銭以外の報酬が 得られる場合の扱いなど、賭博罪該当性につい ては不明確な領域が大きく、この点も重要な課 題です。 賭博罪の成立範囲の明確化に関しては、ガイ ドラインの策定等に限らず、非犯罪化の観点も 含めた根本的な議論が必要です。刑事法の専門 家の中には、実際上処罰の対象となっているの は、競馬法、自転車競技法など、例外的正当化 規定のある公認行為の枠外で行われる、関連し て違法行為を惹じゃっ起きしまたは、暴力団等の資金源 になり得るような賭博行為に限られるとする見 解もあります*5 次に、意見書は、射幸性に関する営業につい ては、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に 関する法律(以下、風適法)が、射幸心をそそる おそれのあるものを同法の規制対象としている ことを紹介しています。もっとも、同法は、営 業が物理的設備を設けて行われる場合を対象と するため、オンラインゲームには適用されませ ん。このことから、意見書は、スマホゲームの 利用を要因とするトラブルの動向について社会 的悪影響の増加を注視していくとしており、「社 会的悪影響が増加すれば風適法のような規制が 必要となるのではないか」という立法論の視点 に立つようです。しかしながら、風適法には、

スマホゲームの電子くじの

射幸性・賭博罪との関係

るまでの推定金額の上限は 50,000 円以 内とし、当該上限を超える場合、ガチャ ページにその推定金額を表示する。 ●ガチャレアアイテムの提供割合の上限と 下限を表示する。 ●ガチャアイテムの種別ごとに、その提供 割合を表示する。 原則による場合、すべてのガチャアイテムの 提供割合が分かるので、消費者にとっての透明 性は大きく向上します。例外による場合、例え ば、4番目の「ガチャアイテムの種別ごとに、そ の提供割合を表示する」のみでは、特定の種別 (レア、スーパーレアなど)において複数のアイ テムが存在し、それぞれの提供割合がそれぞれ 異なる場合には、その中の特定のアイテム(通 常は最も良いもの)を希望する消費者にとって、 その特定のアイテムの提供割合は明らかではあ りません。 しかしながら例外の方法を選択するに当たっ ては、「サービス提供会社は自己の判断におい て、全ガチャアイテム提供割合表示に十分に相 当するユーザーの分かりやすさを維持し、加え てそれをユーザーに具体的にかつ分かりやすく 説明する場合には、全ガチャアイテム提供割合 表示に代えて、以下のいずれかを選択すること ができる」との条件が付されており、特定の種 別(レア、スーパーレアなど)における個々のア イテムの提供割合が消費者にとってまったく予 想できないような場合は、この条件を満たさな いこととなるものと思われます。 既に一部のCESA参加企業が全ガチャアイテ ム提供割合表示を実施することを表明してお り、消費者にとっての透明性は相当程度向上す るものと予想されます。今後は、例外的な方法 の運用を中心に、ガイドラインの実施状況を注 視すべきです。 *4 意見書11ページ *5 山口厚『刑法各論[第2版]』(有斐閣、2010年)516ページ

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オンラインゲームをめぐる近時の法的問題点 特集 2 特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

に表示・警告した上で、申込者に生年月日等未 成年者か否かを判断する項目の入力を求めてい るにもかかわらず未成年者が虚偽の生年月日等 を入力したという事実だけでなく、さらに未成 年者の意図的な虚偽の入力が『人を欺くに足り る』行為といえるのかについて他の事情も含め た総合判断を要すると解される」とし、考慮す べき他の事情として、❶「未成年者の年齢、商 品・役務が未成年者が取引に入ることが想定さ れるような性質のものか否か」、❷「事業者が設 定する未成年者か否かの確認のための画面上の 表示が未成年者に対する警告の意味を認識させ るに足りる内容の表示であるか」、❸「未成年者 が取引に入る可能性の程度等に応じて不実の入 力により取引することを困難にする年齢確認の しくみとなっているか等」を挙げています*6 しかしながら、準則の提示する総合判断が、 具体的な事案における適切な解決を導くとは言 い難い面があります。例えば、オンラインゲー ムの事業者が、画面上で未成年者のアイテム購 入には、両親の同意が必要であることや、虚偽 の情報を入力してはいけないことを丁寧に説明 したと仮定して、それを受けた未成年者が虚偽 の情報を入力することは、どのように評価され るのでしょうか。 まず、本件はオンラインゲームですから、 ❶「未成年者が取引に入ることが想定されるよ うな性質のもの」であり、次に、事業者として は可能な限り丁寧に説明をしているので、❷「画 面上の表示が未成年者に対する警告の意味を認 識させるに足りる内容の表示である」と言えま す。そして、❸「不実の入力により取引するこ とを困難にする年齢確認のしくみ」については、 画面上の年齢確認である以上そのようなしくみ を構築することはそもそも困難ではないか、と 賭博罪との関係で、解釈論上も重要な点がある ように思われます。すなわち風適法は、射幸性 のある営業を一定の条件の下で許容するもので あり、風適法において許容されるような営業に ついては、賭博罪が成立しないとの推認が可能 ではないかと思われます。具体的には、例えば、 風適法4条4項および同法施行規則8条が「著 しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基 準」を明らかにしています。また、同法19条は、 遊技料金および賞品の提供方法・賞品の最高価 格の基準を明らかにしており、これらを参考と することができます。 なお、パチンコにおける一般景品の交換および 特殊景品の3店方式による現金交換が事実上適 法とされていることが、この問題における不透明 感を高めていることは否定し難いところです。 取引行為に関する未成年者の保護は、未成年 者取消しによって実現されます(民法5条1項)。 オンラインゲームを含む電子商取引においては、 未成年者による申込みの受付の際に、事業者が 画面上で年齢確認の措置を取ることが一般で す。これに対して未成年者が故意に虚偽の年齢 を通知し、その結果、事業者が相手方を成年者 と誤って判断する場合には、未成年者が「詐術 を用いた」ものとして民法21条により、取消権 を失う可能性があります。ゲームをしたいと願 う未成年者が確認画面において真実の年齢を入 力することは、期待し難い一方で、事業者とし ては、通常、画面上での年齢確認以外の実効的 な方法を持たないため、解決困難な問題となっ ています。 この点について、電子商取引及び情報財取引 等に関する準則(以下、準則)は、「詐術を用いた」 ものに当たるかは、「『未成年者の場合は親権者 の同意が必要である』旨を申込み画面上で明確

未成年者における高額課金

*6 準則 http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160603001/ 20160603001-2.pdf(i.51ページ)

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特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲームをめぐる近時の法的問題点 特集 2 を引き換えることができなくなり、その結果、 前払式支払手段に保存された財産的価値が失わ れることとなります。そのため資金決済法は、 前払式支払手段の発行者に対し、未使用残高が 1000万円を超える場合には、その半額に相当す る金額(発行保証金という)の供託を義務づけて います*7。消費者は、仮に前払式支払手段の使 用前に発行者が倒産した場合でも、供託された 発行保証金から他の債権者に優先して損失の回 収を受けることができます。 資金決済法上の前払式支払手段の要件は、以 下の3つです。①金額等の財産的価値が記載・ 記録されること(価値の保存)②金額・数量に応 ずる対価を得て発行される証票等、番号、記号 その他のものであること(対価発行)③代価の弁 済等に使用されること(権利行使)です*8 一般のプリペイドカードについて当てはめれ ば、対価を支払って発行を受け(②)、金額が記 録され(①)、対象商品と引き換えることができ る(③)ものであるため、前払式支払手段に当た ります。いわゆるゲーム内仮想通貨についても まったく同じで、金銭を支払って発行を受け (②)、金額が記録され(①)、ゲーム内アイテム 等と引き換えることができる(③)ものであるた め、前払式支払手段に当たります。このように、 いわゆるゲーム内仮想通貨が前払式支払手段に 当たることについては、特に異論はありません。 これに対して、本件で問題となったアイテム 「Aの鍵」は、ゲーム内仮想通貨ではなく、外形 上はゲーム内のアイテムです。「Aの鍵」は、ゲー ム内仮想通貨で購入することもできますし、 ゲーム内の目標をクリアすることにより無償で 取得することもできます。問題は、「Aの鍵」は、 他のアイテム「A」を開けるために用いられるア イテムであり、武器や魔法のようにそれ自体を 使用するものではない点です。「Aの鍵」は、そ 思われます。 準則は、この判断基準に対するさらなる説明 として、「少なくとも、単に年齢確認画面や生 年月日記入画面に虚偽の年齢や生年月日を入力 したという事実のみをもって「詐術を用いた」と は断定できず、事業者の設定した年齢確認や親 の同意確認の障壁を容易にかいくぐることがで きるものであったかなど他の考慮要素も踏まえ た総合判断が求められると解される」としてい ます。しかしながらこちらについても、「事業 者の設定した年齢確認や親の同意確認の障壁を 容易にかいくぐることができるもの」の具体的 な内容が明らかでなく、どのような画面上の年 齢確認がこれに当たり、その結果「詐術」が否定 されるのか、明らかでありません。 未成年者取消しの「詐術」の問題は、電子商取 引の法律問題における最大の難問であり、未成 年者が最もよく利用するオンラインの有償取引 であるオンラインゲームにおいて、ひときわ顕 著なものとなっています。 2016年4月、あるゲーム事業者が提供するあ るオンラインゲームのアイテム「Aの鍵」が、資 金決済法の前払式支払手段に当たり、同社が前 払式支払手段としての届出や供託の義務を怠っ ているのではないかとの報道がありました。前 払式支払手段とは、商品券やプリペイドカード のように対価を支払って購入し、その後に商品 やサービスと引き換えるものをいいます。商品・ サービスとの引き換えに先立って消費者が対価 を支払うため、商品・サービスと引き換える前 (前払式支払手段を使用する前)に発行者が倒産 するなどした場合、消費者は、商品・サービス

ゲームアイテムと資金決済法

*7 資金決済法14条。なお、銀行との間で履行保証金保全契約(同 法15条)、履行保証金信託契約(同法16条)を締結することに より、供託に代えることができる場合がある。 *8 資金決済法3条1項。高橋康文編著『逐条解説資金決済法[増補版]』(金融財政事情研究会、2010年)566ページ

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オンラインゲームをめぐる近時の法的問題点 特集 2 特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

現するものです。これらがすべて前払式支払手 段に当たるとすると、ゲームのデザインは大き な制約を受けることとなるでしょう。 このように、交換的価値のあるゲーム内アイ テムがいかなる場合に前払式支払手段に当たる かは、微妙な問題であり、少なくとも現時点で は、これに対する明確な基準はありません。今 後の検討が待たれるところです。 意見書は、オンラインゲームに関する相談件 数が 2012 年度をピークに減少傾向にあること も指摘しています。事業者の取組み等により消 費者被害救済の喫緊の課題は後退したものの、 本稿で示したとおり、未成年者取消し、賭博罪 と射幸性、アイテムの前払式支払手段性といっ た、法理論上、解決の難しい問題がいまだ多く 残されています。それらの問題は、今後の電子 商取引一般の法律問題の課題を先取りしたもの でもあるのです。

おわりに

れによりアイテム「A」の中身(ゲーム内アイテ ムや仮想通貨)を入手できることがその価値の 本質であり、そのために前払式支払手段に当た るのではないかが問題とされました。 あらためて資金決済法の要件に当てはめる と、「Aの鍵」は、ゲーム内仮想通貨を支払って またはゲーム内の目標をクリアすることにより 無償で入手することができます。このような場 合でも、②の対価発行の要件は認められるで しょう。「Aの鍵」の個数により価値が記録され るため、①価値の保存の要件も認められます。 問題は、③権利行使の要件です。「Aの鍵」はそ れ自体を使用するものではなく、アイテム「A」 の中身と引き換えられるところに価値があると いう点では、権利行使の要件を満たしているよ うにも思われます。しかしながら、ゲームにお いては、他のアイテム等と引き換えることに価 値があるアイテムは数多く存在します。例えば、 武器や魔法を一時的にパワーアップするような アイテムは、それ自体で価値があるわけではな く、武器や魔法のパワーアップというサービス と引き換えることによって初めてその価値を実

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特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

国民生活センター 相談情報部

オンラインゲームに関する相談の

傾向と現状、事例について

特集

3

年者の場合は68.5%、成年の場合は45.2%であ り、未成年者の場合のほうが高くなっています。 課金等をした際の支払い方法については、契 約当事者が未成年者の場合は販売信用(クレジッ トカードによる支払い等)の割合が高い一方で、 成年の場合は信用供与がない手段(プリペイド カードによる支払い等)の割合が高くなってい ます。 また、成年・未成年とも、信用供与なしに比 べて販売信用の場合に、契約購入金額が高くな る傾向がみられます(図3)。

③ 相談内容

相談の内容をみると、契約当事者が未成年者 の場合、親から「子どもが勝手に課金をしてい オンラインゲームに関する相談が全国の消費 生活センター等に寄せられています。そこで、 本稿ではオンラインゲームに関する相談の傾向 と現状、事例について取り上げます。

① 年度別相談件数等

PIO−NET*1によると、オンラインゲームに 関する相談は 2012 年度をピークに減少傾向に あるものの、依然として全国から多くの相談が 寄せられています。契約当事者を年代別にみる と、相談は幅広い年代から寄せられていますが、 特に未成年者(20 歳未満)の相談が目立ちます (図1)*2。未成年者の相談(2011 ~ 2016年度 ま で 7,816 件 )の 内 訳 は、 小 学 生 が 2,471 件 (31.6%)、中学生が 2,724 件(34.9%)、高校生 が1,211件(15.5%)となっています。 契約当事者が未成年者である割合は、消費生 活相談全体においては約3%であるのに対し て、オンラインゲームに関する相談においては ここ数年では30 ~ 40%と高い点が特徴です。

② 契約購入金額・支払い方法

平均契約購入金額をみると、契約当事者が未 成年者の場合は、成年の場合と同程度か上回っ ています(図2)。2015年度の平均契約購入金額 は、契約当事者が未成年者の場合は32万6000 円、成年の場合は32万9000円となっています。 また、契約購入金額が10万円以上の割合は未成

相談の傾向

*1 PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシス テム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオ ンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄 積しているデータベースのこと。消費生活センター等からの経 由相談は含まれていない。 *2 本稿のデータはいずれも2016年10月31日までの登録分。 2011 2012 2013 2014 2015 2016 3,336 5,324 5,319 4,498 4,277 2,081 (年度) (件) 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 4月 ー10月 60歳以上 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 20歳未満 無回答または 未入力 年度別・契約当事者年代別相談件数 図1 (万円) 14.8 21.5 21.8 25.3 32.6 29.9 16.6 22.1 18.6 18.2 32.9 23.8 0 5 10 15 20 25 30 35 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (年度) 4月 ー10月 未成年契約当事者 成年契約当事者 平均契約購入金額 ※年齢無回答を除く。※契約購入金額無回答(未記入)を除く。 図2

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オンラインゲームに関する相談の傾向と現状、事例について 特集 3 特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

よる申込みを行った場合(民法21条)等は、取消 しが認められません。相談事例のように、親等 の同意を得ることの意味を十分に理解しないま ま、未成年者がゲーム内の課金について親等の 同意を得たことにして契約をしてしまい、トラ ブルになるケースがみられます。このような場 合、ゲーム内の課金についてゲーム運用会社等 に取消しを申し出たとしても、事実関係の証明 が難しいことなどから、即座に返金されるとは 限りません。 さらに、相談事例の多くでは決済手段として クレジットカードが利用されていますが、クレ たので取り消したい」といった ことなど、「契約・解約」に関す る相談が最も多くなっています。 一方、契約当事者が成年の場 合、ゲームの内容そのものにつ いての「品質・機能、役務品質」 に関する相談や電子くじの確率 表示等の「表示・広告」に関する 相談、「苦情にゲーム運用会社 が対応してくれない」などと いった「接客対応」に関する相談 が目立ちます(図4)。 クレジットカードの利用明細を確認した ところ、約9,000円が2件、約2,000円が1件 の合計約 20,000 円の請求があった。ゲー ム内の課金のようだ。まったく覚えがない が、就学前の息子が私のスマートフォンを 使用しゲームをすることはあった。スマー トフォンにクレジットカード情報を入れて いることが不安になりクレジットカード会 社に問い合わせたところ、40件のゲーム内 の課金があり、合計約37万円になることが 分かった。高額で支払うことができない。 (相談者 40歳代 女性、 契約当事者 10歳未満 男性) 未成年者が親等の法定代理人(親権者または 後見人)の同意を得ないで行った契約の申込み は、電子契約の申込みであっても、原則として 取り消すことができます(民法5条2項)。ただ し、未成年者が法定代理人の同意を得て申込み を行った場合(民法5条1項)や未成年が詐術に

相談事例

クレジットカードの利用明細に、ゲーム内 の課金の請求があった。息子が操作をした 可能性があるが高額なので支払えない。 事例1 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% ~1,000円未満 ~10,000円未満 ~50,000円未満 ~10万円未満 ~50万円未満 ~100万円未満 100万円以上 未成年契約当事者 (信用供与なし) n=1,639 無回答(未入力)442件を除く 未成年契約当事者 (販売信用) n=4,815 無回答(未入力)496件を除く 成年契約当事者 (信用供与なし) n=3,952 無回答(未入力)3,146件を除く 成年契約当事者 (販売信用) n=3,234 無回答(未入力)1,038件を除く 3.7 7.5 0.6 2.1 19.7 26.6 3.6 11.8 19.1 24.0 12.7 25.9 11.5 13.7 14.7 23.6 31.4 22.0 51.0 31.5 8.7 3.0 13.0 3.4 6.1 3.2 4.4 1.8 支払い方法にみる契約購入金額(2011年度以降) ※年齢無回答を除く。※構成比は小数点第2位を四捨五入した値である。 図3 (%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 未成年契約当事者 (n=7,816) (n=15,192)成年契約当事者 品 質 ・ 機 能 、 役 務 品 質 法 規 ・ 基 準 価 格 ・ 料 金 表 示 ・ 広 告 販 売 方 法 契 約 ・ 解 約 接 客 対 応 そ の 他 1.8 2.3 41.9 4.0 62.4 91.9 5.1 0.2 10.8 5.9 19.7 10.6 69.5 28.0 0.4 52.6 相談内容(複数回答項目)(2011年度以降) ※年齢無回答を除く。 図4

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特集

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲーム 消費者トラブル

オンラインゲームに関する相談の傾向と現状、事例について 特集 3 ではないか。 (30歳代 女性) 相談事例をみると、契約当事者が成年の場合、 ゲーム内の仕様変更等について納得がいかない 消費者がゲーム運用会社に問い合わせたとこ ろ、「個別の対応はできない」などと回答されト ラブルになるケースがみられます。ゲームの運 用方針については原則として個々のゲーム運用 会社の判断に委ねられるため、個別の対応を求 めることは難しいのが現状です。他にも「長年 利用していたオンラインゲームのアカウントが 突然停止された。納得いかない」などといった 相談が寄せられていますが、ゲーム運用会社は 各社の利用規約に基づいてアカウント停止等の 対応をとっています。まずは、ゲーム利用開始 時に同意した利用規約の内容を確認することが 重要です。 また、事例2のように、オンラインゲームで は電子くじが実施される場合がありますが、「電 子くじを利用しても希望のアイテムが出現しな い。公開されている出現率は虚偽ではないか」 など、電子くじにおけるアイテム等の出現率に 関する相談も寄せられています。希望のアイテ ムを手に入れるために、電子くじに高額な課金 をしてしまうケースもあります。 事業者団体は自主的な取組みとして、ガイド ライン等の策定(一般社団法人日本オンライン ゲーム協会「オンラインゲーム安心安全宣言」 (2016年4月1日)*3、一般社団法人コンピュー タエンターテインメント協会「ネットワークゲー ムにおけるランダム型アイテム提供方式運営ガ イドライン」(2016年4月27日)*4等)を行って いるので、事業者の運営指針を知るうえで参考 になるでしょう。 ジットカード会社に対して「子どもが勝手にク レジットカードを使用した」等と申し出ても、 多くの場合、家族間の利用として利用規約に基 づきクレジットカードの管理責任を問われ、 カード名義人である親等に請求をされることに なります。子どもは決済の意味を十分に理解し ていなくても、親の財布から黙って抜き取った クレジットカードの情報を使い、決済の手続き ができてしまう場合があります。さらに、最初 にクレジットカード情報を決済方法として登録 した時にパスワード設定をしていないと、一度 登録をしたクレジットカード情報により、その 後も決済が可能となるケースもあります。通信 契約をしていない端末でゲームをしていても、 クレジットカード情報が登録されたままの状態 であれば、Wi-Fi接続によりオンラインゲーム 内で課金が可能となる場合もあります。 利用者の年齢やゲーム利用等について親等の 同意を事前に確認するゲーム運用会社もありま すが、子どもによる高額課金トラブルを防ぐた めには、日頃からゲーム端末やクレジットカー ドの管理を徹底することが重要です。 ゲーム内で5種類ほどある期間限定キャ ラクターが順次1体ずつ追加され始めた。 私の欲しいキャラクターが発表され、迷っ たが買うことにし、約70,000円を使って電 子くじで手に入れた。しかし、翌日にその キャラクターが今後恒常的に出るキャラク ターになるとの発表があった。それが分 かっていれば約 70,000 円も使わなかった はずだ。ゲーム運用会社に最後の限定期間 に買った人に救済措置はないのかと問い合 わせたが、「補てん、返金は致しかねます」 との返信だった。突然恒常化するのは詐欺 課金制のスマートフォンゲームで、期間限 定キャラクターを高額で手に入れた翌日に 恒常化すると発表された。納得いかない。 事例2 *3 http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA_ declaration_2016.pdf *4 https://www.cesa.or.jp/release20160427/

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新水道ビジョン

-人口減少社会における水道事業の方策-

滝沢 智 Takizawa Satoshi 旧建設省土木研究所下水道部研究員、アジア工科大学環境工学科助教授などを経て2006年から現職。2016年3月から「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」委員長。 東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 教授 の減少による給水収益の減少、水道事業に携わ る職員数の減少など、さまざまな課題を抱えて います。これらの課題を克服し、将来の世代に わたって安心・安全な水道を維持するために、 2013年3月に「新水道ビジョン」(図1)が厚生労 働省により策定されました。 水道事業の担い手は、水道法により原則とし て市町村とされています(水道事業体)。また、 計画給水人口が5,000人を超える上水道事業は、 原則として水道料金収入によって経営されてお り、これは市町村が行う他の公共事業の多くが、 税金から支出されているのとは異なっています。 日本の水道施設の多くが高度成長期に布設さ れたため、今後はこれらの施設が順次更新時期 を迎えます。例えば、水道資産の多くを占める

「新水道ビジョン」策定の背景

日本の水道普及率は、2014年度末に97.8%に 達し、今や日本人にとって水道は当たり前の施 設となりました。日本の近代水道は、明治時代 に海外からコレラなどの水系伝染病が侵入した ことに対応するため、横浜や函館などの港町を 中心に普及しました。戦後は、都市人口の急増 による水不足に対応するため、水道水源の開発 と水道の布設が行われました。さらに平成以降 は、小規模な都市にも水道が布設されました。 現在、水道は水系伝染病の予防だけでなく、 水洗トイレの利用や入浴などの衛生的で文化的 な生活や、商業、工業、観光や交通など各種の 産業や都市活動を支えています。このように、 我々にとってなくてはならない水道ですが、施 設の老朽化、人口減少や1人当たりの水使用量

はじめに

新水道ビジョンの概要 出典:厚生労働省資料 図1 2004年6月水道ビジョンを策定 水道のあるべき将来像について、関係者が共通の目標を持ち、その実現に向けて取り組んでいくための具体的な施策や工程を示す。 新水道ビジョン(2013年3月公表) 【基本理念】 地域とともに、信頼を未来につなぐ日本の水道 役割分担の明示  都道府県ビジョンの策定  水道事業ビジョンの策定 各種方策の推進(例)  アセットマネジメントの徹底  水道施設のレベルアップ  ◦施設更新、耐震化  広域化・官民連携等による組織力アップ ~ 水道ビジョン(2004年6月)の策定から8年以上が経過~ ▶東日本大震災による水道施設の大規模な被災の経験 ▶人口減少社会の到来により事業環境がいっそう厳しくなる懸念  2012年2月から新水道ビジョンの検討を開始 枚挙にいとまがない課題 ◦給水人口・給水量、料金収入の減少 ◦水道施設の更新需要の増大 ◦水道水源の水質リスクの増大 ◦職員数減少によるサービス水準の影響 ◦東日本大震災を踏まえた危機管理対策 取り組みの方向性 安全な水の供給 安全 強靱な水道の構築 強靱じん 持続性の確保 持続 方策推進の要素 将来の課題に挑戦する意 識を持って取り組むこと 挑戦 関係者間の連携によって 方策を推進すること 連携 方策の推進

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水道管路の経年化率(左)と更新率(右) 出典:厚生労働省資料 図2 「命の水」としての飲料水や生活用水を被災地に 届けるという重要な役割も担っています。 水道事業を取り巻く経営環境をみると、将来 の水道事業経営はますます厳しくなることが予 想されます。人口減少社会を見据えて、水道事 業を将来の世代に引き継ぐための理念と方策を まとめたものが「新水道ビジョン」です。最初の 「水道ビジョン」は、2004年6月に公表されまし た。しかし、その後、人口減少社会が到来し、 その影響が水道事業経営にも影響を及ぼすなか で、2011年3月には東日本大震災が発生しまし た。このため、「新水道ビジョン」では、時代の 変化に合わせて水道事業の基本理念を見直し、 「地域とともに、信頼を未来につなぐ日本の水 道」という新しい基本理念を公表しました。 「新水道ビジョン」では、現在の水道事業を、 ①水道サービスの持続性は確保されているか ②安全な水の供給は保証されているか ③危機管理への対応は徹底されているか の3つの視点から分析しました。その結果、水 道事業体の料金収入が減少傾向にあり、施設更 新のための費用を支出できなくなっている、職 員数が減少して技術の継承が困難となってい る、大規模な水質事故への対応や鉛製の給水管 の交換が必要、地震に備えた耐震化をさらに推

「新水道ビジョン」の理念と方策

送水管や配水管などの水道管は、法定耐用年数 が 40年と定められています。老朽化した水道 管などの施設の更新費用も、水道料金の中から 支出しなければなりませんが、多くの水道事業 体において資産維持費は十分に確保されていま せん。そのため、水道管の更新率は年々低下し、 2014年度には全国平均で0.76%となりました。 この更新率では、すべての水道管を交換するの に約130年かかる計算になります。また、布設 から40年を経過した水道管の割合は年々増加 し、2014年度には12.1%となりました(図2)。 今後は、水道施設更新のための予算を確保す ることは、ますます難しくなると思います。そ れは、全国のほとんどの水道事業体では、人口 減少と1人当たりの水使用量の減少により、給 水収益が減少傾向にあるからです。大口の利用 者ほど1㎥当たりの単価が高くなる逓増料金制 を採用していますが、工場などの大口利用者の 海外移転により、水道料金収入が大幅に減少し ている水道事業体もあります。 また、水道事業体の職員も過去30年でおよそ 3割減少しており、現在在職している職員の年 齢構成が40 ~ 50歳代に大きく偏っていること から、水道に関する技術や事業経営に必要な人 材の確保と継承が困難になりつつあります。そ の一方で、近年多発する地震や豪雨などの大規 模災害では、応急給水や応急復旧などにより、 管路経年化率(%) 管路更新率(%) ◦年々、経年化率が上昇。  ➡老朽化が進行  法定耐用年数を超えた管路延長  管路総延長 ×100 ◦年々、更新率が低下し、近年は横ばい。  ➡管路更新が進んでいない  更新された管路延長  管路総延長 ×100 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 管路経年化率 管路更新率 2006 6 6.3 7 7.1 7.8 8.5 9.5 10.5 12.1 2008 2010 2012 2014 0 2 4 6 8 10 12 1.541.39 1.26 1.16 1 0.97 0.94 0.88 0.87 0.79 0.77 0.77 0.79 0.76 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 (年度) (年度)

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水道事業経営基盤強化検討委員会を設置し、新 水道ビジョンの方策推進における主な課題とそ の対応策をまとめました。これを受けて、2016 年に設置された「水道事業の維持・向上に関す る専門委員会」では、水道法の改正に向けた議 論を進めています。同専門委員会では、水道が 将来にわたり持続可能な事業であることが求め られる時代へと変化しつつあることを認識し、 それぞれの水道事業体が経営基盤の強化に取り 組むとともに、都道府県は広域化や連携の推進 役としての役割を果たし、国は、水道事業の基 盤強化に必要な支援を行うこととしています。 また、国は、水道事業の基盤強化を図るための 基本方針を定め、都道府県は市町村の合意を得 て水道事業基盤強化計画を策定できる、として います。さらに、上水道事業を行う事業体に用 水を供給している水道用水供給事業者について は、水道事業体との間で広域連携計画を策定で きるとしています。このように、持続的な水道 事業経営へと転換するために、水道法の改正に より国、都道府県および水道事業体が連携し、 さらに民間企業との公民連携による経営効率の 改善を実現するしくみができつつあります。水 道の利用者であり、また水道事業のオーナーで もある市民も、このような取り組みや水道事業 の現状を理解し、水道のサポーターとしての役割 を担っていくことがさらに重要となっています。 水道水を安心して飲める国は、世界でも数少 ないと言われています。その数少ない国の1つ である日本の水道を、国民の生活と経済を支え るための大切な資産として、どのようなかたち で次の世代に引き継ぐかは、今の世代の責任で す。「新水道ビジョン」ならびに水道法の改正を 通じて、将来の世代に安心して引き継ぐことが できる水道事業になることを願っています。

おわりに

進する必要がある、などが示されました。 将来の水道事業では、給水収益の減少、職員 の減少、施設の老朽化などの問題がさらに進む と推定しています。このように厳しさを増す環 境のなかで、将来の水道事業経営は、長期的な 視点から、「安全、強靭じん、持続」をめざすことが示 されました。このうち、水道の持続については、 アセットマネジメント(資産管理)に基づく施設 の管理と更新、将来の水需要に見合った水道施 設への段階的な縮小や施設の統合、さらには水 道事業の広域化や民間企業との連携など、水道 事業体として取り組むべき方策が示されていま す。その一方で、水道事業の経営は、市民が支 払う水道料金によって支えられており、水道事 業体の経営効率化とともに、積極的な情報公開 を通じて市民の水道事業への理解を進め、市民 による水道事業の支援を強化することも必要と なっています。水道の施設は親から子へと世代 をまたがって使用されるものであり、世代を超 えた水道料金負担や、より好ましい水道事業の あり方についても、水道事業の担い手である市 町村と、水道の利用者である市民がともに考え るべき時期に来ています。 「新水道ビジョン」策定後、厚生労働省は新水 道ビジョン推進協議会を主宰し、水道関連の各 種団体とともに、ロードマップを作成して取り 組みを強化しています。また、新水道ビジョン 推進協議会を全国の各地で開催し、新水道ビ ジョンの内容についての講演や、水道事業体と の意見交換をしています。 「新水道ビジョン」の策定から 3 年が経過し、 多くの水道事業体が地域水道ビジョンの中に、 「新水道ビジョン」の理念と方策を盛り込むよう になりました。しかし、「新水道ビジョン」で示し た方策の実施については、課題も明らかになっ てきました。また、水道事業体の取り組みが期 待した程には進んでいないことも明らかになり ました。そのため、厚生労働省では、2015年に

水道事業の経営基盤強化方策

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者問

あの

時代

上原 章 Uehara Akira 前 明治学院大学非常勤講師 監修 最終回

2012

(平成24年)

消費者教育推進法が成立 消費者安全調査委員会が発足 特定商取引法改正、7番目の取引類型を追加 「コンプガチャ」景品表示法に違反 消 費 者 行 政 東京スカイツリー開業 尖閣諸島3島を国有化 世の中の動き 消 費 者 問 題 「買え買え詐欺(劇場型勧誘)」が横行 「サクラ」を使った詐欺的商法が広がる スマートフォン関連トラブル増加 ◦ ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル ◦ BRAVE HEARTS 海猿 映 画 ベストセラー ◦ 聞く力 ◦ 置かれた場所で咲きなさい 流行歌 ◦ 真夏のSounds good! ◦ 風が吹いている 流行語 ◦ ワイルドだろぉ ◦ iPS細胞 とを目的として、「消費者教育の推進に関する 法律」が成立、消費者庁に消費者教育推進会議 が設置された。

消費者安全調査委員会が発足

消費者安全法が改正され、消費者安全調査委 員会が発足した。生命・身体分野の消費者事故 等を対象にその再発・拡大の防止を図るための 原因究明が行われることとなった。2005 年の ガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒死事故や 2006 年に起きたマンションのエレベーターに よる死亡事故などが調査対象となった。

特定商取引法改正、7番目の取引類型を追加

貴金属等の訪問購入をめぐってトラブルが多 発している実態に対応するため、特定商取引法 を改正し、7番目の取引類型として「訪問購入」 が新たに規制されることになった。

「コンプガチャ」景品表示法に違反

消費者庁は、オンラインゲームの利用者が「コ ンプガチャ」と呼ばれる電子くじを引いて、ア イテム等を入手するというシステムが、景品表 示法で禁止される「カード合わせ」に該当すると の見解を示した。希少なアイテムを入手するた めに高額な料金を支払ってしまうなど、多くの トラブルが発生していた。

「買え買え詐欺(劇場型勧誘)」が横行

実態のない勧誘業者が「高値で買い取る」など と言って消費者に未公開株や怪しい社債等を購 入させ、結局は買い取らずに雲隠れするという 詐欺的商法の被害が広がった。複数の詐欺的業 者が介在し、「買え買え」と持ちかけることから、 国民生活センターが「買え買え詐欺」と名付けて 注意を呼びかけた。さまざまな金融商品が用い られ、社会で話題になった事業への投資など、 商品・手口は多様化・巧妙化し、高齢者を中心 に、多くの被害が発生している。

「サクラ」を使った詐欺的商法が広がる

サイト業者に雇われたと疑われる「サクラ」が 異性やタレント、社長、占い師等になりすまし 消費者を出会い系サイト等に誘導。有料ポイン トを買わせるなどで、高額な金銭を請求すると いった詐欺的商法(サクラサイト商法)が広が り、被害が甚大化した。

消費者教育推進法が成立

消費者教育の総合的・一体的な推進を図るこ

消費者問題

消費者行政

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専門は、民法、住宅法。中央建築士審査会、よこはま多世代・地域交流型 住宅整備・運営事業者選定等委員会等の委員を務める。著書に、『集合住宅・ 住宅金融の危機管理(トラブル相談Q&A)』(ぎょうせい・2009)等がある。 矢田 尚子

高齢者向け住まいをめぐる

新たな動きと契約上の注意点

最終回 Yata Naoko 日本大学法学部准教授 活をしており、居住と介護等のサービスとを一 体的に提供する施設と大差ありません。 そこで、現在では、サ高住のうち、老人福祉 法29条の有料老人ホームの定義に該当するもの は、有料老人ホームの設置運営指導指針の対象 となり、サービス部分も含めて重要事項説明書 の作成が求められています。また、新たな動き として、サ高住の登録情報内容を見直し、職員 体制や生活支援サービスといったサービス提供 状況についてもインターネット上で公表すると ともに、第三者評価のしくみを立ち上げ、物件 選びの判断材料の充実を図るようです*2。同時 に、低所得や高齢等を理由に入居を拒否しない 賃貸住宅の登録制度も創設し、高齢者などに入 居対象者を限定した物件を「専用住宅」と位置づ け、改修費の一部を補助する等のしくみも作り、 来年度の運用開始をめざすとのことです*3 このような動きを踏まえると、サ高住と同じ 契約構造を持つ高齢者向け住まいが今後も増え ることが予想され、契約締結に際しては、次の ような点も考慮に入れておくべきと考えます。

(1)サブリース型サ高住等に対する注意点

近年、地主が建物を新築し、訪問介護サービ

契約締結に際しての

注意すべき点(総まとめ)

本連載も今回で最終回を迎えます。最終回は、 高齢者向け住まいをめぐる新たな動きを紹介す るとともに、それを踏まえて今後、契約締結に 際し、注意すべき点を簡単にまとめます。 世界でも類を見ない超高齢社会に突入してい るわが国では、医療や介護が必要になっても安 心して暮らせる高齢者向け住まい(施設・住宅) へのニーズがますます高まっています。なかで も、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住) は、2011年10月の制度開始からわずか5年で 20 万戸を突破し、その勢いは、2016 年3月に 閣議決定された今後 10 年間の住宅政策の指針 となる「住生活基本計画」の中でも、高齢者向け 住まいの増加をめざすことが盛り込まれたこと から、今しばらく続きそうです。 サ高住の多くは、一部を除けば賃貸住宅に位 置づけられ、契約構造は在宅の場合と同様、要 介護になると入居者自らが地域の訪問介護等の 事業者を選び、複数の介護サービス契約を結ぶ ことで必要な介護サービス等の提供を受けるこ とになります。しかし、国土交通省が行ったサ 高住等の調査結果*1からも明らかなとおり、 実情は、入居者の多くがサ高住に併設、隣接す る介護事業所からサービス提供を受けながら生

高齢者向け住まいをめぐる

最近の動き

*1 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関 する検討会とりまとめ(参考資料)」(2016年5月)25-26ページ http://www.mlit.go.jp/common/001132654.pdf *2 *1同とりまとめ  http://www.mlit.go.jp/common/001132653.pdf *3 国土交通省住宅局「住宅セーフティネット」  http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gyoukaku/H27_ review/H28_fall_open_review/siryo/13_1.pdf

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者向け住まいの入居に当たり代行業者を利用す る際は、当該団体の規模や職員数、サービス内 容と料金体系を始め、預託金の管理方法や保全 措置の有無等につき確認する必要があります。 少なくとも、預託金の管理については、業務の 透明性の確保や保全の観点から、別法人により 分別管理されている団体を選択すべきです。ま た、身元保証人等の代わりに、任意後見人を立 てることでよいとする高齢者向け住まいもあり ますので、まずは相談してみましょう。 なお、高齢者向け住まいの事業者特有のこと として、身元引受人が連帯保証の役割も兼ねる ケースが散見されます。身元引受人の法的定義 がないこともあって、すべて契約によることに なりますので、契約締結時には、身元引受人の 役割について必ず確認を取る必要があります。

(3)看取りケアをめぐる問題

ここ数年、高齢者向け住まいでも看み取りまで 行うケースが増えています。ただし、看取りケ ア(終末期に入った利用者が、高齢者向け住ま いで安らかに過ごせるためのケア)を実施し、実 績があるという高齢者向け住まいのすべてが、 実際に、きちんと看取りを行っているとは限り ません。看取りを行うには、医療・看護との連 携などの体制づくりが欠かせないため、高齢者 向け住まいで最期を迎えることを希望して入居 する場合には、具体的な看取り実績の内容や、 看取りのための体制づくりの状況を確認する必 要があります。特にサ高住等では、サービスは 外付けですので、実際に想定される費用負担等 も含め、より詳しく調べる必要があります。 高齢者向け住まいは、種類も多いうえに契約 内容も複雑です。高齢者向け住まいの住み替え 等の相談に応じるNPO法人等の団体なども全 国にありますので、場合によっては、契約前に 一度相談してみるのもよいかもしれません。 ス等を提供する事業者(以下、運営事業者)に長 期で一棟貸しするといったサブリース型のサ高 住等が増えています。なかには、交通機関や医 療機関等へのアクセスの悪い郊外地も少なくあ りません。そのため、一定の賃料保証を運営事 業者が契約時に地主(建物オーナー)に約束して も、結局、入居者を集められず、介護収益が上 がらないという事態が生じることになります。 そうなれば、運営事業者は、事業継続を理由に 地主に家賃の値下げ交渉をしたり、サービスの 質を落とす可能性があります。最悪なケースと して、運営事業者の倒産のおそれや、また地主 と運営事業者との間で中途解約禁止の約束をし ていても、その契約が定期借家契約ではなく普 通の賃貸借契約ならば、その約束は無効となり、 運営事業者からの中途解約もあり得ます。 費用が安いなどの理由から不便な立地のサ高 住等への入居を考える際は、土地建物の権利関 係に目を向けてみることも大事です。また、最 悪の事態が起きたときに、運営事業者が変わる 可能性や、思うようなサービス等が受けられず、 立ち退くしかない状況に至る可能性も想定しな がら、入居を検討する必要があります。

(2)連帯保証、身元引受をめぐる問題

高齢者向け住まいの多くは、入居契約に際し て、連帯保証人や身元引受人等を要求していま す。しかし、最近身寄りがない高齢者等が増え、 身元引受や死後の事務処理といった生活サポー トサービスを提供する民間事業者を利用するこ とも珍しくありません。しかし、身元引受等の 代行業の規制がないこともあって、業務の適正 性、透明性についてはかねてから疑問が持たれ ていました。そのようななか、2016年1月、同 事業を行う唯一の公益財団法人であった日本ラ イフ協会が、顧客から預かっていた預託金を流 用し、公益認定が取り消されるとともに、破産 手続開始が決定しました。現在、内閣府消費者 委員会にて調査審議中であり、将来的には一定 の規制がかけられる可能性もあります*4。高齢 *4 内閣府消費者委員会事務局「身元保証等高齢者サポート事業にかかる調査審議」『実践成年後見』65号(2016年11月)11ページ

参照

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