Sravana
-グ リ ヒ ヤ 祭 式 研究I-高
橋
明
本 稿 は グ リ ヒ ヤ ス ー ト ラ 文 献 群1)の 中 に 見 出 さ れ る Sravapa 祭 の 儀 軌 を 全 て の 6akhaに わ た つ て 検 討 し, そ の 文 献 的 事 実 に 基 く儀 軌 の 一 覧 を 提 出 す る こ と を 目 的 と し て い る。 グ リ ヒ ヤ 祭 式 の 儀 軌 に 関 す る 紹 介 は, 既 に Hillebrandt, Gopal 等 に よ り適 切 な 形 で な さ れ て い る が2), 本 論 は 単 な る 紹 介 に と ど め ず, 全 て の 文 献 的 事 実 の 項 目化 と, そ の 出 所 を 明 示 す る こ と を企 図 す る も の で あ る。 こ れ よ り, 項 目 ご と に 若 干 の 説 明 を 加 え て い く こ と と す る。 1. 名 称 sravapa. 月 (七 月) の 満 月 の 日 に 行 う祭 の 意 味 で, sravapa と呼 ば れ る例 が 大 半 を 占 め る。-Asv. II. 1. 1; Gobh. III. 7. 1; Hir. II. 16. 1 Par. II.14. 1-次 の 二 例 も こ れ に 準 ず る。-gravarpa(n.): Sahkh. IV. 15. 1, sravapa-karman: Bhar. II. 1, 1. -Bodh. は Sarpabali と 呼 び, 蛇 に 対 す る 種 々 の 定 期 ・
臨 時 祭 の 一 つ と し て こ れ に ふ れ て い る3)。-Bodh. III. 10. 1. 2.
2. 日 時 sravapa 月 の 満 月 の 日-Asv. II. 1. 1; Gobh. III. 7. 2; Khad. III. 2. 1; Kath. 55, 2; Man. II. 16. 1; Bhar. II. 1. 2; A. P. 7. 18. 5; Hir. II.
16.2.-Sravisthiyam paurpamasyam: Sahkh. IV. 15. 1. は こ れ に 準 ず る-の 日 没 後 -Asv. II. 1. 4; Gobh. III. 7. 11-18; Ap. 7. 18. 5; Hir. II. 16. 2; Bhar. II. 2. 3.-主 要 な 部 分 は 行 わ れ る。 前 項 注 も 参 照。
3. 祭 火 ・祭 陣 大 半 の sakha は 家 屋 内 の Garhapatyagni (G. 祭 火) で 焼 供 を 行 い, 戸 外 に 牛 翼 を 塗 り 設 け た 祭 陣 に バ リ 供 を 行 う。6ahkh., Gobh., Khad. は 祭 火 も 戸 外 に 移 し 行 祭 す る。Sahkh. IV. 15. 3; Gobh. III. 7. 3-5;Khad. III. 2.
1; Bhar. II. 1. 7; Ap. 7. 18. 10; Par. II. 14. 11.
4. 供 物 の 調 理 ・順 備 こ の 祭 に 特 徴 的 な 妙 麦 ・妙 麦 粉 の 調 理, 保 存, バ リ へ の i捧 げ 物(infra 6. c) の 用 意 等 が 規 定 さ れ る。-Asv. II. 1. 2; Gobh. III. 7. 7-10; Man. II. 16. 1; Bhar. II. 1. 2; Hir. II. 16. 3;Par. II. 14. 3.
5. 焼 供 こ れ よ り祭 の 主 要 部 と な る が, ま ず グ リ ヒ ヤ 祭 式 の 通 例 に し た が い, G. 祭 火 へ の 以 下 の ご と き 供 物 の 焼 供 (homa) が 規 定 さ れ て い る。(順 序 は 不 同)
a. 乳 粥 主 神 格 と 目 さ れ る 神 効 こ (vispave svaha, 6ravapaya svaha, Sravapyai
-416-(88) Sravapa (高 橋)
paurrnamasyai svaha...), 四 回 (Gobh. は 五 回) 供 す る。-Asv. II. 1. 4; Sahkh. IV. 15. 2; Gobh. III. 7. 18・19; Kath, 55. 2・3; Par. II. 14. 3・6.
b. 妙 麦 転 用 マ ン ト ラ に よ り 一 回。-Asv. II. 1. 7 (Rv. VII. 38. 7); Kath. 55. 2・3 (KS. 16. 15=TS. 4. 2. 8. 3. h); Par. II. 14. 7. (Vaj. S. XX. 29)
c. 妙 麦 粉 蛇 た ち, あ る い は 蛇 た ち の 王 へ の マ ン ト ラ に よ り, 一 回-Kath. 55. 2・3-あ る い は 三 回4)。-Par. II. 14. 3・8・9.
d. 妙 麦 ・妙 麦 粉 混 合 麻 油 と 混 合 し, 前 項 類 同 の マ ン ト ラ (前 項 注 参 照。 蛇 た ち を 住 所, 寄 託 さ れ る 神 格 色 彩 等 に よ り 分 類 し た paryaya) に よ り, 三 回-Bhar.
II. 1. 3-6-あ る い は 四 回。-Sahkh. IV. 15. 3・4; Hir. II. 16. 3・4.
e. 麦 粉 ケ ー キ 確 固 不 同 な る 大 地 の 族 な る 蛇 の 王 に, 一 個。-ASv. II. 1. 4・5; Kath. 55. 2・3 (RV VII. 99.7. を転 用); Man. II. 16.1; Par. II. 14. 3・10.
f. 麻 油 供 目 的 ・願 望 を 述 べ る マ ン ト ラ と と も に (次 項 等 参 照) 二 回-par. II. 14. 3-5-あ る い は 四 回。-Ap. 7. 18.8.-麦 粉 ケ ー キ を 漬 け て お い た 蘇 油 を 一 度 に-Agv. II. 1. 6. (RV. 1, 1895を 転 用)-は こ れ に 準 ず る。
他 に, jaya 供-Ap. 7. 18. 9.-jaya-abhyatana-rastrabhrd-Bhar. II. 1. 3. と特 別 蘇 油 供 を 規 定 す る も の も あ る。 9. KimSuka の 花 目的 ・願 望 の マ ン ト ラ (「蚊 は 喰 い つ くされ た, 喝 いた も の は ……刺 す もの は ……」) に よ り三 回。-Ap. 7. 18. 6; Hlr. II. 16. 5. h. Aragvadha の 焚 木 目 的 ・願 望 の マ ン ト ラ (「……噛 み, 噛 ま ん と す る も の 全 て を, イ ン ドラ よ, 滅 した ま え」MP. II, 17. 1) に よ り三 回。-Ap. 7. 18. 7. 6. バ リ 続 い て こ の 祭 個 有 の バ リ供 が 行 わ れ る。 次 第 は 次 の と う り。
a. 祭 陣 (supra 3) に ク シ ャ 草 の 葉 を 敷 き, 水 を 撒 く。-ASv. II. 1. 9; Sahkh. IV. 15. 5・6; Gobh. III 7. 13; Khad. III. 2.2; Ap. 7. 18. 10; Par. II. 14. 11. b. そ こ に 蛇 た ち 及 び 蛇 た ち の 王 へ の マ ン ト ラ に よ り, 残 り の 妙 麦 粉 を 三 回
-Man. II. 16. 3; Par. II. 14. 13・14.-四 回-Asv. II. 1. 9; Sahkh. IV. 15. 13-18; Gobh. III. 7. 13・15; Khad. III. 2. 2-4; Hir. II. 16. 7-六 回-Bhar. II. 1. 9; A. P. 7. 18. 11- 一 回?-Kath. 55.4-祭 匙 に も り, あ け, 供 す
る5)。
c. そ の バ リ に 櫛 で 線 を 入 れ, 染 色 膏, 花 輪 紐 眼 膏, 鏡 を 捧 げ る6)。-Sahkh. IV. 15. 7-12; Bhar. II. 1. 9; Ap. 7. 18. 11; Hir. II. 16. 7; Par. II. 14. 15-17.
d. そ の 場 で バ リ に 宿 つ た 神 格 に 祈 る7)。-ASv. II. 1. 9; Man. II. 16. 2;
-415-Sravapa (高 橋) (89) Ap. 7. 18. 12; Hir. II. 16. 9; Par. II. 14. 18.
7. 蛇 神 へ の 供 託 ・請 願8) -ASv. II. 1. 10一一12;Man. II. 16. 4.
8. 水 の 輪 に よ る 蛇 よ け 呪 術9) cf. Kaus. 50. 17-22-Bhar. II. 1. 10; Ap. 7. 18. 12; Hir. II. 6. 16. 8; Par. II. 14. 19.
9. こ の 日 よ リ Agrahayani ま で 毎 日 バ リ 供 す べ き こ と -Asv. II. 1. 14-15; Sahkh. III. 15. 19・20; Gobh. III. 7. 22・23; Kkad. III. 2. 14・15; Kath. 55. 5; Man. II. 16. 5; Bhar. II. 1. 12・13; Hir. II. 6. 16. 10-13; Par. II. 14. 22.
10. 高 床 寝 台 に 登 る 儀 雨 期 に そ な え, 生 活 様 式 を 変 え る 節 目 の 儀 礼。-sahkh. IV. 15. 22.
11. 村 外 十 字 路 で 行 う 特 別 供 十 字 路 に 祭 火 を 設 け, 残 り の 妙 麦 を 焼 供 し, バ リ 供 を 行 う。-Gobh. IV. 8. 1-5; Khad. III. 2. 8-13.
12. 猶 若 干 触 れ な け れ ば な ら ぬ 項 目 が 残 つ て い る が, 紙 面 の 都 合 上, 割 愛 す る。
1) 現 存19種 の グ リ ヒ ヤ ス ー一 ト ラ の う ち Sravapa の 規 定 が 見 ら れ る も の は, 11種 あ る。 略 号, テ キ ス ト に つ い て は, 辻 直 四 郎: ヴ ェ ー ダ 学 論 集 (岩 波, 1977), pp. 287-291を 参 照 さ れ た い。
2) Hillebrandt: Ritualliteratur, GIAPA. III-2; Gopal, Ram: India of Vedic satras, Delhi; 1959. 3)「 年 ご と に, 六 ヶ 月 ご と に, 四 ヶ 月 ご と に, 季 節 季 節 に, 月 ご と に, あ る い は 雨 期 にASre§aの 星 宿 の も と に, 行 う べ し。」 こ れ は, Dubois (H. M. C. C. p. 641) の 報 告 す る 習 俗 と も一 致 す る 重 要 な 資 糧 だ が, グ リ ヒ ヤ 季 節 祭 と し て 確 立 さ れ た sravapa と は 異 る の で, 紙 面 の 都 合 上, 本 論 で は, 以 後, 除 外 す る。 4)「Agni の 族 な る黄 色 の, 地 上 の 蛇 た ち の 王 に, ス ヴ ァ ー ハ ー。Vayu の 族 な る 白 き, 空 中 の 蛇 た ち の 王 に, ス ヴ ァー バ ー。Sarya の 族 な る 強 き, 天 界 の 蛇 た ち の 王 に, ス
ヴ ァ ー ハ ー。」(Par.) Kath. はKS. 16. 15=TS. 4.2. 8.3(i) を 転 用。Kath. の 例 は, 妙 麦 ・妙 麦 粉 を 対 に 考 え て い る こ と を 推 測 せ し め る。(cf. 5.b)
5)「Agni の 族 な る黄 色 の, 地 上 の 蛇 た ち の 王 よ, こ れ ぞ 汝 の バ リ な り。 ……」(Par.) 注 (4) に し め し た も の と 同 型 の paryaya。 他 の sakha も類 同。
6)「 天 上 の 蛇 た ち の 王 よ, 櫛 を い れ た ま え。 ……染 色 膏 を塗 りた ま え。 ……見 つ め た ま え。」(sahkh.) 注(4) (5) と 類 同 の paryaya。
7) TS. 5. 5. 10. 1 seg. の paryaya を (Man., Ap., Hir.), TS. 4.2. 8.3を (Bhar., Par.) 転 用。
8)「 ……汝 の 族 な る 我 を 汝 の 族 な る 蛇 た ち の 害 す る こ と な か れ。」(Asv.)
9)「 蛇 た ち の や つ て 来 な い よ う望 む 距 離 の と こ ろ に, 切 れ 目 の な い 水 流 で 水 を 撒 き, (家 を 三 回 右 邊 す る。)『白 き 者 よ, 前 足 で 後 足 で 追 い は らい た ま え。 ……』と。 」(Bhar.)