原 著
*群馬大学医学部保健学科(School of Health Sciences, Gunma University)
2008年4月28日受付 2008年12月2日採用
新人助産師の視座から捉えた
分娩介助・継続事例実習指導の課題
The assignment of practice of clinical care
delivery and continuing midwifery care
from the perspective of newly graduated midwives
中 島 久美子(Kumiko NAKAJIMA)
*國 清 恭 子(Kyoko KUNIKIYO)
*阪 本 忍(Shinobu SAKAMOTO)
*荒 井 洋 子(Hiroko ARAI)
*常 盤 洋 子(Yoko TOKIWA)
* 抄 録 目 的 助産師教育課程を修了した新人助産師の視座から分娩介助・継続事例実習での学びが臨床現場に活か された内容,臨床現場での困難・苦労の内容,実習で学びたかった内容を明らかにし,分娩介助・継続 事例実習指導の課題を検討する。 対象と方法 A大学卒業後3∼4ヶ月の新人助産師7名を対象とした。データは半構造的面接法により収集し,分析 はベレルソンの内容分析法を参考に行った。 結 果 新人助産師が感じる実習での学びが臨床現場に活かされた内容の特徴として,【経験に伴う基礎的な 助産診断・技術】,【産婦や助産師との関わりの中で学んだ助産師の責任と態度】他2つが抽出された。臨 床現場での困難・苦労の内容は,【助産ケア経験の不足から生じる助産診断・技術への戸惑いと難しさ】 他3つ,実習で学びたかった内容は,【母乳育児支援に対応するための助産師と共に行う乳房の診断なら びに保健指導】,【妊産褥婦および新生児の対象理解に繋げるための助産診断・技術】他2つが抽出された。 結 論 分娩介助・継続事例実習指導の課題として以下の内容が示唆された。 1.分娩介助一例毎に振り返りを通して学習課題を確認する。 2.産婦に寄り添うケアの大切さを経験させ,助産師からの助言が受けられる実習環境を調整する。 3.分娩介助以外の助産ケアを経験できる実習時間の有効活用と学生の学習意欲を引き出す。 4.モデル的役割を担う助産師の母乳育児支援の場に学生が同席出来る実習環境を調整する。 キーワード:新人助産師,分娩介助・継続事例実習,実習指導,助産師教育課程Abstract Purpose
We investigate the three points of view concerning the practice of clinical care delivery and continuing mid-wifery care from the perspective of newly graduated midwives. The first point of view concerns cases in which the clinical practice is successfully applied in the clinical setting. The second concerns cases in which the newly gradu-ated midwives face difficulties in the clinical setting. The third concerns newly gradugradu-ated midwives' suggestions regarding the practice of clinical care delivery and continuing midwifery care. This study evaluates the efficiency of the practice of clinical care delivery and continuing midwifery care.
Subjects and Method
Semi-structured interviews were conducted on seven midwives who had graduated from a midwifery educa-tional program three or four months prior. Interviews were transcribed and a qualitative inductive analysis was per-formed using the methods of Berelson.
Results
Clinical practices that were successfully applied in the clinical setting were "midwifery diagnoses and skills based on practice experiences" , "midwives' responsibilities and attitudes affected by communication with senior midwives and pregnant women" and other two factors. Concerning about a difficulty in the clinical setting, the midwives reported "confusion regarding diagnoses due to a lack of experience" and other three factors. During in-terviews, the newly graduated midwives reported that they hoped to learn about "breast diagnoses and health guid-ance for breastfeeding care through senior midwives' advice", "midwifery diagnoses and skills for understanding pregnant woman and newborn babies" and other two factors.
Conclusion
The present findings suggest the following four points for improving clinical practice: 1. Reconfirm what the subjects learned by reflecting on the care delivery after each practice.
2. Emphasize the importance of experience in caring for pregnant woman, and establish an environment that en-courages advice from senior midwives
3. Use practice time effectively for midwifery care other than care delivery, and motivate students. 4. Experience the practice of breastfeeding care with a model midwife.
Key words: newly graduated midwife, practice of clinical care delivery and continuing midwifery care, practice guidance, midwifery educational program
Ⅰ.緒 言
昨今の産科医師不足による産科病棟の閉鎖や出産難 民,さらには児童虐待等の問題が深刻化する中,正常 な出産を取り扱い,その後の子育てまで幅広く支援で きる助産師の実践能力に期待が寄せられている。 しかし,現状では新人助産師が職場に適応できずに 定着率の低下が問題とされている。これには,助産師 教育と臨床現場とのズレによる,新人助産師のリアリ ティショックが一因とされ(原田,2006),その背景に は,短期間で助産の実践能力を高めることを目標にし た助産師教育に問題点があると指摘されている(石渕, 2002)。また,ここ数年間に助産師教育は,大学,大 学院,大学専攻科,短大専攻科における助産師教育課 程と多様化し,今後の助産師教育のあり方について, とりわけ分娩介助・継続事例実習の質の向上や充実を 考える議論が尽きない(江幡,2007;渡邉,2007)。さ らに,看護基礎教育の充実に関する検討会(2007)では, 助産師教育についての現状として,助産学実習の時間 数の問題を指摘し,出生数の減少から実習環境・指導 体制の確保などの課題を挙げ,分娩介助・継続事例実 習の教育内容の改正案を提示している。 これまでに分娩介助実習・継続事例実習に関する 研究では,分娩介助実習の教授法に関する研究があ り(常盤,2002;松岡,2004;丸山,2005),これらは 学生の視座に基づき教育者の立場から助産学実習につ いて考察し,実習指導のあり方を検討している。しか しながら,学生の視座から得られた実習指導のあり方 は,臨床現場における助産師の実践能力に繋げる実習 指導の課題を検討するには限界がある。助産師の実践 能力を高める教育のあり方を検討するためには,助産 師教育課程修了後の新人助産師の視座から実習の内容 を検討することが重要であると考えた。つまり,分娩 介助・継続事例実習での学びが臨床現場にどのように 活かされているのか。また,臨床現場においてどのよ うな困難や苦労に直面し,学生時代に実習において学びたかった学習内容とは何なのか。それらを新人助産 師の視座から把握することにより,分娩介助・継続事 例実習指導の課題を見出す事ができると考えた。それ により,助産師の実践能力を高め,社会のニーズに見 合う助産ケアを提供できる助産師育成に貢献できると 考える。 そこで本研究では,新人助産師の分娩介助実習・継 続事例実習での学びから捉えた臨床現場に活かされた 内容,困難・苦労の内容,学びたかった内容を明らか にし,分娩介助・継続事例実習指導の課題を検討する ことを目的とした。 〔用語の操作的定義〕 新人助産師:助産師教育課程を修了後,新卒助産師と して産科病棟に配属され勤務している助産師 分娩介助・継続事例実習:分娩介助実習と1例の分娩 介助を含む継続事例実習
Ⅱ.研 究 方 法
1.研究デザイン 質的記述的研究デザイン。 2.対象および調査期間 対象は,平成15年度A大学保健学科助産学選択コー ス15名のうち,助産師として配属され勤務している 新人助産師で,卒後3∼4ヶ月の面接調査に協力が得 られた7名である。調査は平成16年6∼7月に行った。 3.データの収集方法 平成15年度卒業生の中から対象者を選定し,研究 依頼と同意を得た後,面接日時を決定し,このとき研 究の主旨と内容を説明した。面接時に再度,研究の主 旨と内容を文書と口頭にて説明し,同意書への自署 をもらった。面接内容は了解を得てテープに録音した。 面接場所は,対象の指定する場所,もしくはA大学で 実施した。1回の面接時間は45分から1時間30分の範 囲で平均1時間であった。 4.調査内容 半構造的面接法により,新人助産師に対して就職後 から現在までの臨床現場での困難や苦労の内容,実習 で学びたかった内容,及び学びが活かされた内容につ いて語ってもらった。面接内容は「助産師と諸制度に 関する検討̶助産基礎教育検討小委員会」より,現在 の助産師基礎教育の持つ問題について卒業生を受け 入れている臨床現場から検討された内容を参考にして 以下の5つの質問項目を作成した。①分娩に関する知 識と技術,②保健指導など総合的な助産師の能力,③ 助産診断などの判断能力,④助産師としての意識・態 度・責任感。 対象の属性として,新人助産師が置かれている職場 の労働環境について,以下の内容を質問項目に追加し た。①病産院施設の概要(施設の規模や産科系職員数, 助産師の臨床経験年数等),②産科の看護体制,③新 人助産師の教育システム(新人助産師数と新人研修, プリセプターシップ制の有無や内容)。 5.分析方法 分析は,ベレルソンの内容分析法により行った。面 接内容を逐語録におこし,臨床現場の困難や苦労の内 容,実習で学びたかった内容,及び学びが活かされた 内容が表現された文脈を抽出してデータ化し,それを 記録単位とした。次に,困難や苦労の内容,学びた かった内容,及び学びが活かされた内容についてそれ ぞれ同じ意味で表現された記録単位を集め,内容の類 似性に従って分類し,抽象化の作業を得てコード化し た。その後,その意味表現の同質性,異質性に基づき 集約,分類し,カテゴリ化を行った。 分析過程においては,質的研究法を熟知した助産学 の研究者によるスーパービジョンを受けた。結果の信 頼性を確認するために,質的研究に長けた助産学の研 究者2名に分析を依頼し,スコットの式に基づく一致 率を算出した。また,本研究においては,カテゴリ分 類の精度を上げるため,分析を依頼した2名の研究者 の分類結果や意見を参考に,カテゴリ分類や命名の精 選を繰り返し,信頼性の確保に努めた。 6.倫理的配慮 研究への倫理的配慮として以下の事柄を口頭及び文 書で説明した。研究参加は自発的意志によること,面 接での途中に中断することは自由意志であり,中断し ても不利益がないこと。また,データは研究者以外に 取り扱うことがなく厳重に保管し,本研究以外に用い られることはなく,研究終了後に研究者の責任により 処分すること,さらに,論文作成の際は個人が限定さ れるような情報は提示しないことを説明し,同意書に サインをもらった。7.助産師教育過程のカリキュラムの概要と分娩介 助・継続事例実習状況 A大学における助産師教育課程のカリキュラムは合 計21単位,そのうち,分娩介助・継続事例実習は4単 位で実習期間は4年次後期の9月から約3ヶ月間に集中 した実習であった。分娩介助実習は,研究対象者7名 全員が10回の分娩介助を経験していた。継続事例実 習では,10回の分娩介助のうち1例を妊娠末期から受 け持ち,分娩・産褥1ヶ月まで継続した実習を行って いた。その他の助産師教育課程カリキュラムの概要を 表1,分娩介助・継続事例実習状況を表2に示す。
Ⅲ.結 果
1.対象の属性 助産師として就職した11名のうち研究協力の承諾 が得られた新人助産師7名を分析対象とした。対象者 の就職先は,大学・総合病院が6名であり,ほとんど が新人研修のある病院であった。調査時点での助産師 業務の内容は分娩,妊婦,褥婦,新生児係りなど,一 通りの業務についている者が6名であった。その他の 対象の属性を表3に示す。 2.新人助産師の感じた実習での学びが臨床現場に活 かされた内容,臨床現場での困難・苦労の内容,及び 実習で学びたかった内容 対象7名のデータから,分娩介助・継続事例実習で の学びが活かされた内容は45記録単位,臨床現場で の困難・苦労の内容は35記録単位,助産学実習で学 びたかった内容は33記録単位,計113記録単位が抽出 された。これらの記録単位を分類した結果,実習での 学びが活かされた内容は13サブカテゴリ,4カテゴリ, 臨床現場での困難・苦労の内容は10サブカテゴリ,4 カテゴリ,実習で学びたかった内容は10サブカテゴリ, 4カテゴリが抽出された(表4,5,6)。 以下,各カテゴリ(【 】で示す)について,サブカ テゴリ(〈 〉で示す)と,そこに含まれた記録単位 (「 」で示す)を用いて説明する。 1 )実習での学びが臨床現場に活かされた内容 実習での学びが新人助産師の臨床現場に活かされ た内容として,(1)【経験に伴う基礎的な助産診断・ 技術】,(2)【産婦や助産師との関わりの中で学んだ助 産師の責任と態度】,(3)【助産師のモデル的助産ケア から学んだ実践的な助産診断・技術】,(4)【ハイリス ク事例から学んだ異常分娩の診断・助産ケア】という 4つのカテゴリが得られた(表4)。カテゴリを構成す 表1 助産師教育課程指定規則とA大学における助産師教育課程カリキュラムの概要 〔助産師教育課程指定規則〕 基礎助産学(5) 助産診断・技術学(6) 地域母子保健(1) 助産管理(1) 分娩介助・継続事例実習(8) 合計(21)単位 〔A大学における助産師教育課程カリキュラム〕 助産学総論 周産母子論 母性看護方法論 母性看護方法論演習 母性保健論 1 1 1 1 1 助産診断・技術学 6 地域看護学方法論 1 助産管理論 1 分娩介助・継続事例実習 助産管理実習 地域看護学実習 4 1 3 合計 21単位 ( )は指定規則助産学必要単位,網掛けは読み換え科目 表2 A大学における分娩介助・継続事例実習状況 実習施設と配置 直接介助数 間接介助数 帝王切開介助数 実習時間帯別直接介助実習状況 1例あたりの分娩介助実習時間 分娩介助実習期間 継続事例実習状況 継続妊婦受け持ち開始の週数 継続妊婦に妊娠期間に関わった回数 県内7カ所の大学・総合病院のうち1施設を学生2名のペアで実習する 平均10.2回 平均2.7回 平均1.9回 日勤帯52.4% 準夜帯30.1% 深夜帯17.5% 平均11時間20分(最小9時間50分,最大15時間52分) 平均54日間(最短39日間,最長80日間) 1名の妊婦を妊娠期より受け持ち,分娩期,産後1ヶ月まで継続する 平均34週(最小31週,最大36週) 平均6回(最小3回,最大9回)る記録単位の出現率は,(1)【経験に伴う基礎的な助産 診断・技術】が46.7%で最も高く,次に(2)【産婦や助 産師との関わりの中で学んだ助産師の責任と態度】が 28.9%であった。 (1)【経験に伴う基礎的な助産診断・技術】 このカテゴリは,特に産婦への助産ケアが分娩経過 診断の理解に繋がり,経験から得られた基礎的な助産 診断・技術が臨床現場に活かされた内容を示した。 〈産婦と関わる経験により培った基礎的な分娩期の助 産診断〉,〈一人の産婦への継続的な助産ケアによる 分娩経過診断〉,〈分娩介助による基礎的な助産技術〉, 〈正常分娩の理解により学んだ生理的範囲を逸脱して いないかという診断〉,〈乳房の変化を観察できた経験 により学んだ基礎的な乳房の診断〉,〈新生児の処置や ケアの経験から学んだ新生児ケア〉という6つのサブ カテゴリから構成された。 新人助産師からは,例えばサブカテゴリ〈産婦と関 わる経験により培った基礎的な分娩期の助産診断〉で は,「産婦との関わりにより分娩進行に沿った兆候を 捉えることができ,分娩の三要素に沿った観察とア セスメントができていた。その視点は働いてからも役 立っている」と語られた。サブカテゴリ〈一人の産婦 への継続的な助産ケアによる分娩経過診断〉では,「実 習では学生2人で直接,間接の役割で介助に入れて, 一人の産婦をじっくり診るというのは大切。今は同時 に何人か診るけど,今はこの産婦さんの傍についた方 がよくて,この産婦さんは離れていても大丈夫とか少 しわかる」と語られた。また,「タイムリーな振り返り 表3 対象の属性 [対象の病産院施設の概要] (n=7) 施設の規模 産科の勤務体制 分娩部 新生児室 外来部 大学病院:1,総合病院:5,産婦人科医院:1 3交替:5,2交替:2 独立した部署:1,産科病棟看護単位に含まれる:6 独立した部署:1,産科病棟看護単位に含まれる:6 独立した部署:4,産科病棟看護単位に含まれる:3 [所属病産院における新人助産師の教育システム] 新人研修の有無 新人研修の内容 プリセプターシップ制の有無 有:6,無:1 接遇,医療過誤等の講習,及び,採血,輸液等の基礎看護技術 有:7 [入職してから,3∼4ヶ月までの助産師業務の内容] ・分娩,妊婦,褥婦,新生児係り,一通りの業務についている:6 ・分娩部,新生児室,妊婦褥婦室が独立し,妊婦褥婦室に配属されている:1 表4 実習での学びが臨床現場に活かされた内容 カテゴリ・サブカテゴリ 記録単位 出現率(%) (1)経験に伴う基礎的な助産診断・技術 産婦と関わる経験により培った基礎的な分娩期の助産診断 一人の産婦への継続的な助産ケアによる分娩経過診断 分娩介助による基礎的な助産技術 正常分娩の理解により学んだ生理的範囲を逸脱していないかという診断 乳房の変化を観察できた経験により学んだ基礎的な乳房の診断 新生児の処置やケアの経験から学んだ新生児ケア 21 10 3 1 3 2 2 46.7 22.3 6.7 2.2 6.7 4.4 4.4 (2)産婦や助産師との関わりの中で学んだ助産師の責任と態度 産婦との関わりの中で学んだ助産師の責任と態度 産婦との関わりの中で学んだ助産師の精神的ケア 助産師の助産観に触れ培った理想とする助産師像 13 5 3 5 28.9 11.1 6.7 11.1 (3)助産師のモデル的助産ケアから学んだ実践的な助産診断・技術 助産師のモデル的助産ケアから学んだ分娩期の助産技術 助産師による乳房マッサージからの学んだ乳房ケア 助産師による保健指導からの学んだ実践的な保健指導 8 5 1 2 17.7 11.1 2.2 4.4 (4)ハイリスク事例から学んだ異常分娩の診断・助産ケア ハイリスク事例から学んだ異常分娩の診断・助産ケア 3 3 6.7 6.7 計 45 100%
学習により一例一例の個別的な分娩を重視した,助産 師としての課題を明確にした上で次回の分娩に活かす ことができた」との語りより,一例毎の分娩介助の振 り返り学習が活かされていた。 (2)【産婦や助産師との関わりの中で学んだ助産師の 責任と態度】 このカテゴリは,産婦との関わりの中で学んだ助産 師として産婦に寄り添うケアへの姿勢や精神的ケアの 重要性,また,実習を通して指導助産師個々の助産観 に触れ学んだ助産師としての責任や態度が臨床現場に 活かされた内容を示した。 〈産婦との関わりの中で学んだ助産師の責任と態度〉, 〈産婦との関わりの中で学んだ助産師の精神的ケア〉, 〈助産師の助産観に触れ培った理想とする助産師像〉 という3つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,サブカテゴリ〈産婦との関わり の中で学んだ助産師の責任と態度〉では,「分娩での産 婦との関わりから学生であっても産婦に頼られ,感謝 されていた。今もお産のときには出来る限り産婦さん の傍にいられるようにしている」と語られた。サブカ テゴリ〈助産師の助産観に触れ培った理想とする助産 師像〉では,「指導者さんがどのような思いで産婦のケ アに関わっているかという助産観に触れることで,理 想とする助産師像が築かれた。実際に働いてから大変 な時も学生時代に指導者さんから聞いた言葉を思い出 してやっている」と語られた。 (3)【助産師のモデル的助産ケアから学んだ実践的な 助産診断・技術】 このカテゴリは,助産師のモデル的助産ケアを模倣 しながら実際の状況に合わせて助産ケアを実践するこ とで,模倣ではなく自分の助産診断・技術となって臨 床現場で活かされた内容を示した。 〈助産師のモデル的助産ケアから学んだ分娩期の助 産技術〉,〈助産師による乳房マッサージから学んだ乳 房ケア〉,〈助産師による保健指導から学んだ実践的な 保健指導〉という3つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,サブカテゴリ〈助産師のモデル 的助産ケアから学んだ分娩期の助産技術〉では,「分娩 時に助産師が産婦に対してどのようにコミュニケー ションをもち,産婦の陣痛計測のためにどのように腹 部触診を行い,褥婦の乳房変化に合わせてどのよう に乳房マッサージを実施しているのかを助産師の技を 真似て,自分のものにしようと努力していた。働いて からはほとんど一人で任されるから,あの時は助産師 さんがこういう時にはどう話していたかなとか思い出 す」と語られた。 (4)【ハイリスク事例から学んだ異常分娩の診断・助 産ケア】 このカテゴリは,産科的な合併症やリスクを伴う分 娩事例に立会い,吸引分娩や帝王切開分娩に緊急に変 更された場合,学生の立場で直接分娩に関わることが 出来ないが,受け持ちから離れるのではなく見学を通 して異常分娩の診断と助産ケアに繋げる視点が臨床現 場で活かされた内容を示した。 〈ハイリスク事例から学んだ異常分娩の診断・助産 ケア〉という1つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,「緊急で帝王切開分娩になって, その時はどうしてよいのかわからなかったけど,助産 師の動きを見学できて,後で産婦の情報から異常時の 対応を振り返り確認することで,見学だけで終わらず に考えることができた。実際に働き出すと,初めての ことばかりだから,実習で一度でも見学できたのは良 かった」と語られた。 2 )臨床現場での困難・苦労 新人助産師が感じている臨床現場での困難・苦労 の内容として,(1)【助産ケア経験の不足から生じる 助産診断・技術への戸惑いと難しさ】,(2)【助産ケア を母子の状況に合わせて提供することの難しさ】,(3) 【不十分な助産ケアと未熟な助産診断・技術への葛藤】, (4)【理想の助産と臨床現場のやり方とのズレへの戸 惑い】という4つのカテゴリが得られた(表5)。カテゴ リを構成する記録単位の出現率は,(1)【助産ケア経験 の不足から生じる助産診断・技術への戸惑いと難し さ】が60%と最も高かった。 (1)【助産ケア経験不足から生じる助産診断・技術へ の戸惑いと難しさ】 このカテゴリは,実習で経験できなかった様々な事 例に対して,臨床現場では適切な助産診断・技術を求 められることへの戸惑いと難しさの内容を示した。 〈全妊娠期間を通した助産ケア経験不足から生じる 助産診断・技術への戸惑い〉,〈異常事例に関わる経験 不足から生じる異常妊産婦を観察することの難しさ〉, 〈経験不足から生じる新生児の経過観察や処置の難し さ〉,〈経験不足から生じる母乳育児支援の戸惑いと難 しさ〉という4つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,サブカテゴリ〈全妊娠期間を通 した助産ケア経験不足から生じる助産診断・技術への
戸惑い〉では,「実習では全ての妊娠期間を通した妊婦 の変化を観察できていなかったので,臨床現場で観察 してもそれが正常かどうかの判断が難しい」と語られ た。サブカテゴリ〈経験不足から生じる母乳育児支援 の戸惑いと難しさ〉では,「継続事例の産褥期の正常経 過は観察したが,母乳へのケアはその人その人で,母 子の状態に沿った母乳育児を支援しようとしても難し い」と語られた。さらに,サブカテゴリ〈異常事例に 関わる経験不足から生じる異常妊産婦を観察すること の難しさ〉では,「異常妊娠や異常分娩時の観察の経験 がほとんどないので,切迫早産の妊産婦への観察や誘 発分娩の際の管理など,どうすればよいのか困ってい る」と語られた。 (2)【助産ケアを母子の状況に合わせて提供すること の難しさ】 このカテゴリは,臨床現場で一度に多様なケースを 受け持ち,助産師としての判断能力を要求されること への困難の内容を示した。 〈分娩経過に沿った適切な助産診断・技術の難しさ〉, 〈妊婦の個別性を重視した保健指導の難しさ〉,〈複数 の産婦を受け持つことから生じる助産診断の難しさ〉 という3つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,サブカテゴリ〈分娩経過に沿っ た適切な助産診断・技術の難しさ〉では,「複数の産婦 を同時に受け持ち,助産診断をしてケアをすることや 妊産婦の個別性を重視した保健指導をすることは難し い」と語られた。 (3)【不十分な助産ケアと未熟な助産診断・技術への 葛藤】 このカテゴリは,一人の産婦に対して助産ケアを実 践する実習と異なり,多様な業務の中では十分な助産 ケアが出来ない事への葛藤,また,母子の安全性に努 めながら助産ケアを実践することへの過剰な責任と助 産診断・技術の未熟さへの葛藤の内容を示した。 〈複数の産婦を受け持つことから生じる助産ケア不 足への葛藤〉,〈分娩の安全性に努める助産師としての 過剰な責任と未熟な助産診断・技術への葛藤〉という 2つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,サブカテゴリ〈複数の産婦を受 け持つことから生じる助産ケア不足への葛藤〉では, 「臨床現場では業務の忙しさに追われ,なかなか一人 に対して十分な精神的ケアが出来ない」と語られ,サ ブカテゴリ〈分娩の安全性に努める助産師としての過 剰な責任と未熟な助産診断・技術への葛藤〉では,「お 産の現場では母子の安全が一番,それが全て助産師の 腕にかかってくる」,「間接介助が出来ない。ベビーの 吸引が一番出来ない」と語られた。 (4)【理想の助産と臨床現実のやり方とのズレへの戸 惑い】 このカテゴリは,実習で培った理想的な助産と臨床 現場でのやり方のズレに対する戸惑いの内容を示した。 〈産婦を中心とした理想の助産と臨床現場のやり方 とのズレへの戸惑い〉という1つのサブカテゴリから 構成された。 新人助産師からは,「分娩時に産婦への不必要な処 置や,医師との考え方の相違から生じるやるせない思 表5 現場での困難・苦労の内容 カテゴリ・サブカテゴリ 記録単位 出現率(%) (1)助産ケア経験不足から生じる助産診断・技術への戸惑いと難しさ 全妊娠期間を通した助産ケア経験不足から生じる助産診断・技術への戸惑い 異常事例に関わる経験不足から生じる異常妊産婦を観察することの難しさ 経験不足から生じる新生児の経過観察や処置の難しさ 経験不足から生じる母乳育児支援の戸惑いと難しさ 21 6 5 4 6 60.0 17.1 14.4 11.4 17.1 (2)助産ケアを母子の状況に合わせて提供することの難しさ 分娩経過に沿った適切な助産診断・技術の難しさ 妊婦の個別性を重視した保健指導の難しさ 複数の産婦を受け持つことから生じる助産診断の難しさ 7 4 1 2 20.0 11.4 2.9 5.7 (3)不十分な助産ケアと未熟な助産診断・技術への葛藤 複数の産婦を受け持つことから生じる助産ケア不足への葛藤 分娩の安全性に努める助産師としての過剰な責任と未熟な助産診断・技術への葛藤 5 3 2 14.3 8.6 5.7 (4)理想の助産と臨床現場のやり方とのズレへ戸惑い 産婦を中心とした理想の助産とそれに反する臨床現場のやり方への戸惑い 2 2 5.7 5.7 計 35 100%
いを抱いている」と語られた。 3 )実習で学びたかった内容 新人助産師が感じている実習で学びたかった内容 は,(1)【母乳育児支援に対応するための助産師と共に 行う乳房の診断ならびに保健指導】,(2)【妊産褥婦お よび新生児の対象理解に繋げるための助産診断・技 術】,(3)【継続的な助産に繋げるための妊娠期から産 褥期における助産ケア】,(4)【異常経過や産科的リス クに対応するための知識とアセスメント】という4つ のカテゴリが得られた(表6)。カテゴリを構成する記 録単位の出現率は,(1)【母乳育児支援に対応するため の助産師と共に行う乳房の診断ならびに保健指導】が 39.4%と高く,次に(2)【妊産褥婦および新生児の対象 理解に繋げるための助産診断・技術】が33.3%であっ た。 (1)【母乳育児支援に対応するための助産師と共に行 う乳房の診断ならびに保健指導】 このカテゴリは,母乳育児支援について見学を通し て助産師が行う母子の経過に沿った乳房の診断や保健 指導について学びたかった内容を示した。 〈多様な事例の見学を通した助産師による乳房の診 断や母乳育児指導〉,〈助産師による産褥期の保健指 導〉,〈分娩に関わった母親への助産師と共に行う乳房 ケア〉という3つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,サブカテゴリ〈多様な事例の見 学を通した助産師による乳房の診断や母乳育児指導〉 では,「実習では出来るだけ多くの母子の授乳場面に 立ち合い,助産師の乳房マッサージや指導の実際を見 学し,助産師と一緒にケアに関わりたかった」と語ら れた。 (2)【妊産褥婦および新生児の対象理解に繋げるため の助産診断・技術】 このカテゴリは,妊産褥婦,新生児を受け持つ経験 が少ないため,より多くの事例に関わる経験を持つこ とにより助産診断・技術について学びたかった内容を 示した。 〈複数の事例の妊産褥婦を受け持つ経験を通した助 産診断・技術〉,〈産科的リスクや分娩経過を踏まえた 新生児のアセスメントとケア〉,〈分娩進行中の産婦か ら対象理解に繋げるための情報収集ができる助産技 術〉という3つのサブカテゴリから構成された。 新人助産師からは,サブカテゴリ〈複数の事例の妊 産褥婦を受け持つ経験を通した助産診断・技術〉では, 「短期間の継続事例だけではなく,もっと多くのケー スについて学びたかった」と語られた。 (3)【継続的な助産に繋げるための妊娠期から産褥期 における助産ケア】 このカテゴリは,妊娠期から産褥期において,継続 的に対象の変化や状況に則した診断と助産ケアの実践 について学びたかった内容を示した。 〈妊娠初期から継続事例を受け持つことによる実践 的な助産ケア〉,〈分娩介助に限定しない分娩第1期か ら産褥期を通した継続的な助産ケア〉,〈継続事例を通 した実践的な出産準備教室における保健指導〉という 3つのサブカテゴリから構成された。 表6 実習で学びがたかったことの内容 カテゴリ・サブカテゴリ 記録単位 出現率(%) (1)母乳育児支援に対応するための助産師と共に行う乳房の診断ならびに保健指導 多様な事例の見学を通した助産師による乳房の診断や母乳育児指導 助産師による産褥期の保健指導 分娩に関わった母親への助産師と共に行う乳房ケア 13 9 3 1 39.4 27.3 9.1 3.0 (2)妊産褥婦および新生児の対象理解に繋げるための助産診断・技術 複数の事例の妊産褥婦を受け持つ経験を通した助産診断・技術 産科的リスクや分娩経過を踏まえた新生児のアセスメントとケア 分娩進行中の産婦から対象理解に繋げるための情報収集ができる助産技術 11 7 2 2 33.3 21.1 6.1 6.1 (3)継続的な助産に繋げるための妊娠期から産褥期における助産ケア 妊娠初期から継続して受け持つことによる実践的な助産ケア 分娩介助に限定しない分娩第1期から産褥期を通した継続的な助産ケア 継続事例を通した実践的な出産準備教室における保健指導 6 3 2 1 18.2 9.1 6.1 3.0 (4)異常経過や産科的リスクに対応するための知識とアセスメント 異常経過や産科的リスクに対応するための知識とアセスメント 3 3 9.1 9.1 計 33 100%
新人助産師からは,サブカテゴリ〈妊娠初期から継 続事例を受け持つことによる実践的な助産ケア〉では, 「継続さんと妊娠期の関わりがほとんどもてず分娩に なってしまった。できるだけ早い時期から受け持ち たかった」と語られ,サブカテゴリ〈分娩介助に限定 しない分娩第1期から産褥期を通した継続的な助産ケ ア〉では,「10回のお産を取り上げる技術に意識を集中 するあまり,分娩第1期の関わりや分娩を踏まえて産 褥期の母子の経過観察をすることが十分に出来ていな かった。もっと,広く対象を診ておきたかった」と語 られた。 (4)【異常経過や産科的リスクに対応するための知識 とアセスメント】 このカテゴリは,正常から逸脱した妊娠,分娩の経 過や産科的リスクを伴う分娩のケースについて,見学 だけに留まらずに,疾患への理解とアセスメントにつ いて学びたかった内容を示した。 〈異常経過や産科的リスクに対応するための知識と アセスメント〉という1つのサブカテゴリから構成さ れた。 新人助産師からは,「直接分娩介助は出来ないが, 見学だけで終わらずにその場できちんと異常の経過や リスクを伴う分娩について振り返っておけばよかっ た」と語られた。 3.分類の信頼性 本研究における分析の結果で示した分類の信頼性を スコットの式によって確認した。すべての分類に関し て2名の研究者間の一致率は,実習での学びが臨床現 場に活かされた内容,現場での困難・苦労の内容,実 習で学びたかった内容それぞれにおいて,94%,97%, 86%と算出され,信頼性は確保された。
Ⅳ.考 察
1.実習での学びが臨床現場に活かされた内容から捉 えた実習指導の課題 新人助産師にとって実習での学びが臨床現場に活か された内容とは,助産ケアを通した対象との関わりに より得られた基礎的な助産診断・技術であり,実習で の学びが臨床現場に活かされた内容の約5割りを占め ていた。その大半は,正常な分娩経過について産婦と の関わりにより培った助産診断・技術であった。新人 助産師は,分娩介助の経験を重ねる毎に,分娩経過を 予測しながら助産診断・技術の基礎を学んでいた。こ の結果は,教育側から分娩介助実習を検討した従来の 研究(名取,2004;岩木,1996;小山,1993)と同様の 結果であった。こうした学びの背景には,分娩介助毎 に実施される助産診断・技術の理解を促す教員,指導 助産師との振り返り学習の効果が考えられる。よって, 実習指導において,分娩介助の経験を重ね,分娩介 助一例毎に振り返りを行い,学生個々の目標達成状況, 助産診断・技術の達成状況を把握しながら,学習課題 を明確にし,助産診断・技術を体得させることが重要 と考える。昨今の産科病棟の閉鎖や出産難民の問題に 対し,正常な分娩を介助することが出来る助産師に期 待が寄せられている(遠藤,2006)。学生時代の「分娩 介助10例程度」の経験の中で学ぶ助産診断・技術だけ では,卒業後,直ちに臨床現場での助産師の実践能力 に結びつけて考えることは難しい。しかし,分娩介助 一例毎の振り返りを通した学習課題の確認により,助 産診断・技術を体得することは,正常な出産の介助を 担う新人助産師の自信となり,臨床現場における助産 師の実践能力を高める要素に繋がると考える。以上よ り,分娩介助一例毎に振り返りを通して学習課題を確 認することが分娩介助・継続事例実習指導の課題であ ると示唆された。 次に,実習経験が臨床現場に活かされた内容で高い 出現率を占めたのは,産婦や助産師との関わりの中で 学んだ助産師としての責任や態度であった。看護実践 教育のアウトカムには,知識とスキルと態度が含ま れ,これらは実践教育,実践学習を通して達成される (キャスリーンB&マリリンH, 2002)。この助産師と しての態度は,学生自らが産婦へのケアを通して,ま た助産師からの指導や助言により得た対人的関係に より形成された結果といえる。さらに,助産師のホリ スティックな テーラーメイドのケア が妊産褥婦への 支援として掲げられ(高橋,2001),出産の価値が重要 視される今日,産む人が主体の自由なお産をサポート できる助産師の実践能力が求められている。一人で多 様な業務に負われる臨床現場では,マンツーマンで産 婦を受け持ち,分娩経過に合わせたケアをすることは 難しい。それ故,産婦や母子に寄り添うケアの大切さ を,実習での経験を通して産婦から直に感じ取ること が,助産師の責任や態度を育む上で重要であると考え る。教員は,学生に対して積極的に産婦や母子との対 人的関係が得られるよう促し,さらに学生が指導助産 師からの助言が受けやすい実習環境を作れるような調整役となる必要がある。以上より,産婦に寄り添うケ アの大切さを経験させ,助産師からの助言が受けられ る実習環境を調整することが,分娩介助・継続事例実 習指導の課題であると示唆された。 2.臨床現場の困難・苦労の内容及び実習で学びたかっ た内容から捉えた実習指導の課題 まず,新人助産師が感じる臨床現場の困難・苦労の 内容は,対象への助産ケア経験の不足から生じる助産 診断・技術への戸惑いと難しさであり,全体の6割を 占めた。また,実習で学びたかった内容では,妊産褥 婦および新生児の対象理解に繋げるための助産診断・ 技術が全体の約3割を占めた。看護系大学で助産師教 育を受けた卒業生の反応を調査した研究では,実習の 経験不足が指摘され,ゆとりがなく大変だった,技術 に自信が持てなかったなどの否定的な評価が指摘さ れている(石渕,2002)。本研究で新人助産師がケア経 験の不足と感じた対象とは,全妊娠期間を通した妊婦, 異常妊産婦,新生児であり,実習で学びたかった内容 とは,そのような対象理解に繋げるための助産診断・ 技術であった。原田ら(2006)によると,新人助産師 特有のリアリティショックには,妊産褥婦および新生 児のケアに対するものが含まれており,本研究におけ る新人助産師の臨床現場における困難・苦労の内容と 同様であった。 継続事例以外に妊産褥婦・新生児への助産ケアの経 験をするには,教員,指導助産師,双方による実習環 境の配慮,かつ,分娩介助実習・継続事例実習以外の 実習時間の有効活用が求められる。例えば,妊娠期の 助産診断・技術には,助産師外来における個別的指導 や助産ケアの見学,出産準備教室における集団的指導 の見学が有効であり,新生児の観察や母乳育児支援に は,分娩に立ち会った母親と新生児について,その後 の母子の経過を観察し,授乳場面に同席しながら助産 ケアを見学することが有効であろう。このような妊娠 期,産褥期の実習を短期間の分娩介助・継続事例実習 において遂行するには,学生個々の学習意欲が重要と 考える。新人助産師の語りにおいても,「10回のお産 を取り上げる技術に意識を集中するあまり,分娩第1 期の関わりや分娩を踏まえて産褥期の母子の経過観察 をすることが十分に出来ていなかった」とあり,分娩 介助実習に固執してしまう学生もいた。そのため実習 指導では分娩介助以外の実習場面においても学生の学 習意欲を引き出す働きかけが求められ,臨床現場にお ける助産師の担う実践能力は,妊娠期から産後の母子 のケアまで多岐に渡ることを実習を通して学習させる 必要があると考える。以上より,分娩介助以外の助産 ケアが経験できる実習時間の有効活用と学生の学習意 欲を引き出すことが分娩介助・継続事例実習指導の課 題であると示唆された。 次に,新人助産師が実習で学びたかったことは,母 乳育児支援に対応するための助産師と共に行う乳房の 診断,助産師による乳房マッサージや保健指導の見 学であり,全体の約4割を占めていた。興味深い点は, 新人助産師が望む母乳育児支援に関する実習とは,学 生自らの助産ケアにより得られる直接的な学びではな く,指導助産師の実践から得られた間接的な学びであ る点である。つまり,産褥期の母乳育児支援に関して, 指導助産師の助産診断・技術から得られる学びの重要 性を意味している。現場において新人助産師は,様々 な母子に関わり,個別性を重視した保健指導や日々変 化する乳房の診断を要求され,改めて母乳育児支援の 難しさを痛感する。よって,産後の母子に関わる際に は,指導助産師と共に育児支援の場に立ち会い,指導 助産師が行う乳房の診断や保健指導の見学を通してア セスメントの視点や保健指導の技術を養うことが重要 と考える。それには,先に述べた現場での困難・苦労 の実習課題と同様に,分娩に立ち会った母子のその後 の経過について,授乳の場面に同席しながら助産ケア を見学するといった学生の学習意欲が問われる。実習 指導では,学生の学習意欲を引き出す働きと常に指導 助産師との連携が求められ,モデル的役割を担う指導 助産師の助産ケアの場に同席できる実習環境の調整が 必要と考える。さらに,学生が母子の健康課題の捉え 方を強化できるように,指導助産師に対して専門的立 場から母乳育児支援に関するアセスメントの視点を解 説していただけるような学生への指導の依頼が必要と 考える。以上より,モデル的役割を担う助産師の母乳 育児支援の場に学生が同席出来る実習環境を調整する ことが,分娩介助・継続事例実習指導の課題であると 示唆された。 以上,臨床現場の困難・苦労の内容と実習で学びた かった内容から実習指導の課題についていくつか考察 した。多様化する助産師教育の現状の中,本研究で対 象とした大学における助産師教育課程の統合カリキュ ラムでは,短期間の実習のため,妊娠期,産褥期の実 習は,継続事例での学びに頼らざるを得ない状況にあ る。従って,本研究で明らかにされた新人助産師の視
座から捉えた分娩介助・継続事例実習指導の課題につ いて,教育現場で取り組む一方で,今後は,実習での 達成が困難な課題について,実習施設と連携して院内 教育プログラムの開発に寄与することも必要と考えら れる。