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粗大運動能力尺度を用いて痙縮治療の適応と理学療法の効果を判断し日常生活での歩行能力を獲得した脳性麻痺児の1 症例

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 72 47 巻第 1 号 72 ∼ 77 頁(2020 年) 理学療法学 第 47 巻第 1 号. 症例報告. 粗大運動能力尺度を用いて痙縮治療の適応と理学療法の効果を 判断し日常生活での歩行能力を獲得した脳性麻痺児の 1 症例* 阿 部 広 和 1)# 吉 岡 明 美 1) 根 本 菜 穂 1) 平 良 勝 章 1). 要旨 【目的】ボツリヌストキシン A 療法(以下,BoNT-A)の途中から粗大運動能力尺度(以下,GMFM)で 評価を行い,その後に整形外科手術と術後理学療法を行うことで日常生活での歩行能力を獲得した脳性麻 痺児の症例を報告する。 【症例と経過】脳性麻痺痙直型両側性麻痺,GMFCS レベル III の男児。日常生活 での歩行能力の獲得を目標に BoNT-A と理学療法を実施していた。BoNT-A4 回目より理学療法頻度・介 入方法を見直した。BoNT-A5 回目(7 歳 5 ヵ月)より GMFM-66 で評価を開始,GMFM-66・独歩能力と もに改善したが,施注後 3 ヵ月には低下した。そこで,整形外科医とともに本人と母親に GMFM の結果 をもとに経過・機能予測を提示し,整形外科手術(8 歳 6 ヵ月)を施行し,術後 1 年で日常生活での歩行 能力を獲得した。 【結論】理学療法士が GMFM-66 などの客観的評価を行い,子どもとその家族と治療方 針を考えていくことが重要であると思われた。 キーワード 脳性麻痺,粗大運動能力尺度,整形外科手術,ボツリヌストキシン A 療法. はじめに. 4) tion Classification System( 以 下,GMFCS) レ ベ ル. III の児を担当する機会を得た。ボツリヌストキシン A 療.  理学療法において,適切な介入内容・頻度,ゴール設. 法(Botulinum toxin type A Therapy: 以 下,BoNT-A). 定を決めることは重要である。小児理学療法においても. の実施中に GMFM での評価を開始し,その評価を用い. 同様であり,これらを決めるうえで信頼性・妥当性に優. て BoNT-A と理学療法の効果判定を行い,今後の機能. れた評価を使用することは必要不可欠である。そして,. 予測を本人と母親に提示することで下肢に対する整形外. 客観的評価を子どもとその家族に提示し,意思決定をす. 科手術に至り,術後理学療法を継続したことで日常生活. ることが望まれる。. での歩行能力を獲得した。その理学療法評価内容と介入.  脳性麻痺児の粗大運動能力は,ゴールドスタンダードで. 経過について報告する。. ある粗大運動能力尺度(Gross Motor Function Measure: 1) 2) 以下,GMFM) で評価することが推奨されている 。し. 症例と経過. かし,小児リハビリテーション実態報告書によると,本邦. 1.症例. の病院・診療所における GMFM の使用率は,わずか 6.2%.  GMFM での評価を開始した時点で 7 歳 4 ヵ月の男児。. 3). にとどまり ,一般的に用いられていないことを示唆して. 出生時体重 1,520 g(在胎週数 30 週 0 日) ,脳室周囲白. いる。. 質軟化症による脳性麻痺痙直型両側性麻痺で GMFCS.  今回,脳性麻痺痙直型両側性麻痺・Gross Motor Func-. レベル III。4 歳 2 ヵ月時の田中ビネー知能検査で IQ79,. *. A Case of Child with Cerebral Palsy who Acquired Walking Ability in Daily Life by Judging Adaptation of Spasticity Treatment and Effect of Physical Therapy using Gross Motor Function Measure 1)埼玉県立小児医療センター (〒 330‒8777 埼玉県さいたま市中央区新都心 1‒2) Hirokazu Abe, PT, MSc, Akemi Yoshioka, PT, Naho Nemoto, MD, Katsuaki Taira, MD: Saitama Children’s Medical Center # E-mail: [email protected] (受付日 2019 年 1 月 4 日/受理日 2019 年 10 月 10 日) [J-STAGE での早期公開日 2020 年 1 月 10 日]. 普通学校特別支援学級に通学している。運動発達歴は, 座位 1 歳 5 ヵ月,つかまり立ち 2 歳 0 ヵ月であった。1 歳 2 ヵ月から地域の療育センターで理学療法開始とな り,3 歳 3 ヵ月時に当センターを受診し,整形外科手術・ 選択的脊髄後根切断術が検討された。4 歳 3 ヵ月時に, 選択的脊髄後根切断術(切断率;右 56%,左 57%)が 施行され,4 歳 5 ヵ月で金属支柱付き短下肢装具(Ankle.

(2) 痙縮治療の適応を判断し歩行能力を獲得した脳性麻痺児の 1 症例. 73. 表 1 ボツリヌストキシン A 療法の施注部位 部位(右 / 左). 1 回目 5y10m. 2 回目 6y1m. 3 回目 6y7m. 4 回目 6y11m. 5 回目 7y5m. ハムストリングス. − / 32. 36 / 36. 30 / 50. 45 / 25. − / 60. 下. 三頭筋. 後脛骨筋 合計. − / 32. 36 / 36. 30 / 50. 15 / 50. − / 60. −/−. −/−. −/−. − / 25. − / 60. 64. 144. 160. 160. 180. 投与量(単位 / 筋). 図 1 BoNT-A 施注前後の変化 a:BoNT-A 施注前(6 歳 6 ヵ月),b:BoNT-A 施注後(6 歳 7 ヵ月). 両写真とも左初期接地を示している.BoNT-A 施注後は尖足が改善 されている.. Foot Orthosis:以下,AFO)装着下での両側クラッチ. る。 今 回 は,GMFM を 間 隔 尺 度 化 し た GMFM-66 の. 杖歩行を獲得した。母親は独歩能力の獲得を望んでいた。. GMFM-66 basal and ceiling(以下,GMFM-66 B&C).  5 歳 7 ヵ月頃よりハムストリングスと下. 三頭筋の筋. を使用した。GMFM-66 B&C は,66 項目をすべて評価. 緊張亢進(左>右)が認められ,Modified Ashworth. するのではなく年齢と GMFCS レベルを基準に難易度. Scale は 1-2 であった。立位姿勢はクラウチング肢位・. マップの項目を 15 項目以上行う方法である。Basal レ. 内反尖足で,独歩能力は 2 ∼ 3 歩であった。そのため,. ベルは 3 回連続「3」である箇所とする。もし年齢と. 整形外科での BoNT-A を開始した(表 1) 。BoNT-A 初. GMFCS レベルを基準に開始した項目で 3 回連続「3」. 回から 3 回目までの施注後は,クラウチング肢位・内反. とならなかった場合は,より簡単な項目を行い,Basal. 尖足ともに一時的に改善されるが(図 1),独歩能力は. レベルを決める。そして,難易度の高い項目を行い 3. 変化しなかった。BoNT-A3 回目までは,学校内で両側. 回連続「0」であるところ Ceiling レベルとし採点する。. クラッチ杖歩行が可能であったが,徐々に車椅子を使用. GMFM-66 B&C は信頼性・妥当性ともに確認されてお. する機会が多くなっていた。. 5) り,評価時間も 66 項目を行うよりも短時間で行える 。.  BoNT-A4 回目以降は,短距離の独歩能力の獲得と日. 難易度マップを用いることによって,目標項目を決定す. 常生活での歩行獲得を目標とすることを本人・母親と共. ることができる。本症例はこれを用いて課題項目を抽出. 有し,理学療法の頻度を月 1 回・40 ∼ 60 分間から週 1. 1) した 。. 回・40 ∼ 60 分間に変更し,理学療法内容も見直した。.  また,粗大運動能力の変化を詳細に評価するために. 5). また,BoNT-A5 回目より理学療法評価内容も見直し,. Reference Percentiles(以下,centile)を用いた。centile は,. 関節可動域や記述的な独歩能力の評価のみではなく,. 各 GMFCS レベル内の何パーセンタイルに位置するかを. GMFM などを使用した。. 6) 表すものである 。Gross Motor Ability Estimator 2 を用. いて GMFM-66 スコアを算出し,centile 上に GMFM-66 2.評価項目. のスコアをプロットした。. 1)GMFM. 2)Functional Mobility Scale(以下,FMS).  GMFM は脳性麻痺児・者の粗大運動能力を評価し,5.  FMS は子どもの機能的移動能力を移動補助具の使用. つの異なる領域で構成されている。各項目を 0(まった. を考慮して分類する評価尺度である. くできない)から 3(完全にできる)の 4 段階で評価す. の具体的な距離,5 m,50 m,500 m を歩く能力を採点. 7). 。FMS は 3 種類.

(3) 74. 理学療法学 第 47 巻第 1 号. 表 2 BoNT-A 5 回目から整形外科手術術後 3 年までの変化 BoNT-A 5 回目. 整形外科手術. 施注前 (T0). 1 ヵ月 (T1). 3 ヵ月 (T2). 術前 (T3). 7y4m. 7y5m. 7y7m. 8y6m. 9y6m. 10y6m. 11y6m. 53.9. 56.6. 54.2. 56.2. 65.0. 59.1. 64.6.  No.56. 0. 1. 1. 1. 3. 2. 3.  No.64. 0. 2. 1. 0. 3. 0. 2.  No.70. 0. 0. 0. 0. 3. 3. 3. Centile(パーセンタイル). 55. 70. 55. 65. 95. 80. 95. 年齢 GMFM-66. 術後 1 年 (T4) 術後 2 年 (T5) 術後 3 年 (T6). FMS  5 m. 3- クラッチ杖を使う. 3. 5- なめらかな床面で独歩できる.  50 m. 1- 車椅子を使う. 1. 3- クラッチ杖を使う.  500 m 独歩能力. 1- 車椅子を使う. 1. 3- クラッチ杖を使う. 2∼3歩. 15 m. 2∼3歩. 2∼3歩. 200 m. 200 m. 200 m.  膝窩角. 30°/30°. 10°/10°. 15°/15°. 30°/30°. 10°/20°. 35°/35°. 35°/35°.  DKF. 20°/20°. 35°/25°. 30°/25°. 30°/15°. 30°/30°. 20°/30°. 10°/20°.  DKE. 15°/ 0°. 20°/10°. 10°/ 0°. 0°/‒5°. 20°/20°. 10°/20°. ‒5°/20°. ROM(右 / 左). BoNT-A; Botulinum toxin type A Therapy, GMFM; Gross Motor Function Measure, No.56;上肢の支えなしで,20 秒間立位保持 できる,No.64;上肢の支えなしで床から物をつまみ上げ,立位に戻る,No.70;前方へ 10 歩歩いて止まり,180 度回転して戻っ てくる,Centile; Reference percentile, FMS; Functional Mobility Scale, ROM; Range Of Motion, DKF;足関節背屈(膝屈曲位) , DKE;足関節背屈(膝伸展位). する。採点は 1(車椅子を使う)から 6(すべての床面. た。大. で独歩できる)という 6 段階で行う。日本語版 FMS は. は 2 であり,膝折れが立位保持練習で頻回に見られた。. 8) 信頼性・妥当性ともに確認されている 。. また,2 ∼ 3 歩の独歩能力を有していることから,歩行. 3)関節可動域測定. 時は MMT4 程度の筋出力はあると考えたが,持続的に.  関節可動域測定は,膝窩角(popliteal angle) ,足関節. 発揮することは困難であった。そこで,大. 背屈膝屈曲位(以下,DKF),足関節背屈膝伸展位(以. 力増強を目的に,立ち上がり練習を利用した筋力トレー. 下,DKE)を測定した。. ニングを行った。この立ち上がり練習は腰掛け台の高さ. 四頭筋の Manual Muscle Test(以下,MMT). 四頭筋の筋. を立ち上がれる高さから行い,手つなぎでの介助量を減 3.経過と介入・治療内容. 少することや徐々に台の高さを低くすることで負荷量を.  右下肢よりも左下肢でハムストリングス・下 三頭筋・. 調整した。粗大運動能力としては,独歩能力は 2 ∼ 3 歩. 後脛骨筋の筋緊張亢進の増悪を認めたため,BoNT-A5 回. であったが,膝歩きは可能であった。そのため,膝関節. 目(7 歳 5 ヵ月)は,左下肢筋に限局して施注した(表 1) 。. や足関節に起因した姿勢制御の問題があると考え,前述. 施注前(T0)の GMFM-66 は 53.9(centile:55 パーセンタ. した筋力トレーニングや AFO の調整を行いながら立位. イル)であった。難易度マップをもとに目標となる課題と. 保持練習・歩行練習を並行して行った。立位保持練習. して,項目「No.56 立位:上肢の支えなしで,20 秒間保持. は,セラピストが膝関節を介助し立位保持することから. する」 ・「No.64:上肢で支えずに,床から物をつまみ上げ,. はじめ,徐々に膝関節より遠位を介助し,介助量を調整. 立位に戻る」などの立位課題が抽出された(表 2) 。この. しながら立位保持の学習を行った。また,開脚立位から. 立位課題が低下している原因を,1)筋緊張亢進とそれに. ステップ肢位に変化させることで難易を調整した。歩行. 伴う支持基底面の低下,2)大 四頭筋の筋力低下と考え,. 練習もセラピストが最小介助で骨盤介助からはじめ,. 下記の理学療法を行った。. 徐々に遠位介助することで歩行時の身体制御を学習して.  BoNT-A の効果によりクラウチング肢位は改善し,内. いった。ホームエクササイズとして,施注筋に対するス. 反尖足にも改善はみられたが,全足底接地には至らな. トレッチング・立ち上がり練習での筋力トレーニング・. かった。全足底接地で立位保持練習・歩行練習が行える. 立位保持練習を行った。. ようにするため,金属支柱付き AFO にヒールアップや.  BoNT-A5 回目と理学療法の効果を表 2 と図 2 に示し. フレアをつけるなどの工夫を行った。膝関節のクラウチ. た。施注後 1 ヵ月(T1)で 56.6(70 パーセンタイル). ング肢位は,BoNT-A により改善されたが残存してい. となり,独歩能力は金属支柱付き AFO 装着下で 15 m.

(4) 痙縮治療の適応を判断し歩行能力を獲得した脳性麻痺児の 1 症例. 75. 図 2 GMFCS III の Reference Percentiles での GMFM-66 の推移 T0;BoNT-A5 回目施注前,T1;施注後 1 ヵ月,T2;施注後 3 ヵ月,T3;術前,T4;術後 1 年,T5;術後 2 年,T6;術後 3 年. となった。GMFM-66 の立位課題(No56, 64)で改善が. 術後から退院までの 2 ヵ月間・週 3 ∼ 5 回・40 ∼ 60 分. みられた。しかし,施注後 3 ヵ月(T2)には 54.2(55 パー. 間,退院から 1 年間は月 1 ∼ 2 回・40 ∼ 60 分間で行わ. センタイル)となり,独歩能力も施注前と同様となった。. れた。介入内容としては,BoNT-A4 回目以降と同様に. FMS は変化しなかった。. 立位保持練習・歩行練習を継続した。また,学校内での.  BoNT-A と理学療法の併用により,独歩能力の改善が. 生活を想定した場合,歩行からの静止や方向転換が必要. 得ら れ た。 し か し, 本 症 例 は 身 長 が 増 加 し て お り左. であった。そのため,セラピストの声かけに応じて静止. DKE は 0°となり,さらに足部内反が増悪していた。そ. する練習やランダムに置いた障害物を避けるような歩行. して,ハムストリングスの筋短縮が増悪することでクラ. 練習を行った。院内の廊下で通行人を避けながら歩行す. ウチング肢位の悪化も予想され,筋短縮が今後の歩行能. る練習も実施した。立位保持練習は,児のモチベーショ. 力改善の阻害因子になると判断した。そのため,これま. ンを保つためにゲーム性のあるキャッチボールやバッ. での BoNT-A と理学療法の併用療法を継続していくだ. ティングなど動的な立位保持練習に難易度を変更した。. けでは効果に限界があると考えた。.  下肢に対する整形外科手術と理学療法の効果を表 2 と. 9). は,GMFCS レベル III の粗大運動能力は. 図 2 に示した。術前(T3)の GMFM-66 は 56.2(65 パー. 7 歳 11 ヵ月でピークに達し,徐々に低下すると報告し. センタイル)であったが,術後 1 年(T4)で 65.0(95 パー. ている。本症例は 7 歳であり,筋短縮が進行すれば,粗. センタイル)と改善した。表 2 の GMFM-66 の各項目で. 大運動能力が低下していくことが予測された。そこで,. は,術前に 0(まったくできない)もしくは 1(10% 未満). 整形外科医と今までの経過,GMFM-66 の結果がプロッ. だった項目が 3(完全にできる)となった。独歩能力も. トされている centile のグラフ(図 2)と Hanna による. 2 ∼ 3 歩から術後 1 年ではプラスチック AFO 装着下で.  Hanna ら. 6)9). をもとに,1)BoNT-A は効果があり数歩歩. 200 m 可能となった。また,FMS は 5 m では 5(なめ. けるようになった,2)このまま筋の短縮が進めばグラ. らかな床面で独歩できる),50 m と 500 m では 3(クラッ. フどおりに粗大運動能力が低下する可能性がある,3). チ杖を使う)に改善した。また,術後 3 年(T5-6)まで. 整形外科手術と術後理学療法を行えば独歩獲得の可能性. 粗大運動能力・歩行能力ともに維持できている。歩容は. があることを本人と母親に提示し,話し合いを行い,整. 尖足が改善され,初期接地は全足底接地となり,ステッ. 形外科手術を施行することになった。. プ長も改善した(図 3)。. データ. 4.整形外科手術と術後管理・理学療法と経過. 考   察.  8 歳 6 ヵ月時に下肢に対する整形外科手術が施行され. 1.理学療法経過について. た。右は半腱様筋切離・アキレス腱延長術(Vulpius 法) ,.  BoNT-A5 回 目 の 施 注 後 1 ヵ 月(T1) で 独 歩 能 力,. 左は半腱様筋切離・アキレス腱 Z 延長・後脛骨筋延長・. GMFM-66 の立位項目で改善がみられた。システマティッ. 前脛骨筋外側移行・長趾屈筋切離・長母趾屈筋腱切離術. クレビューによると BoNT-A は,理学療法との併用で歩. が行われた。. 行機能が改善するとされている. 10). 。BoNT-A1-3 回目の. 部から足部までをギプス固定し,荷. 理学療法は月 1 回と低頻度であった。BoNT-A4 回目か. 重練習はギプスカット直後から全荷重が許可された。装. らは週 1 回に変更し,本人と母親にホームエクササイズ. 具はプラスチック AFO を作成した。術後理学療法は,. を行ってもらい練習頻度を高めた。介入・練習頻度の見.  術後 2 週間,大.

(5) 76. 理学療法学 第 47 巻第 1 号. 図 3 整形外科手術術前(a)と術後(b)の歩容の変化 写真 a,b は右から順に左初期接地,左立脚中期,右初期接地,右立脚中期を示している. 左右ともに術前は初期接地から立脚終期にかけて終始,足尖外側接地でステップ長が短かっ た.術後は初期接地が全足底接地となり,立脚中期における片脚支持時間が伸び,ステッ プ長が改善している.. 直しが,この改善の一要因と推察される。. ため,学校での歩行を想定した歩行練習に難易度を変更.  心身機能・身体構造の面では,足部のアライメント修. した。このように心身機能・身体構造の問題点を解決し. 正のために AFO を工夫したこと,筋力トレーニングが. つつ,立位保持練習・歩行練習を実施したことが整形外. 効果的であったと考える。Bjornson ら. 11). は,脳性麻痺. 児が動的な AFO を装着することで,GMFM が改善す. 科手術後の FMS の変化に結びついたと考える。  今回,GMFM-66 B&C をもとに本症例の粗大運動能. ることを報告している。今回,BoNT-A のみでは立位時. 力を評価した。GMFM-66 B&C は理学療法実施時間内. の足底接地がみられなかったため,AFO を工夫するこ. で行える評価あり,難易度マップを用いることで目標設. とにより支持基底面の改善をはかった。脳性麻痺児に対. 定が行え,粗大運動能力を経時的に評価するために非常. する筋力トレーニングは痙縮を悪化させることなく,筋. に有用であったと考える。また,Reference percentiles. 力増強や身体パフォーマンスを改善するとされてい. を使用することで予後予測を行うことができ,図 2 は視. る. 12). 。今回,BoNT-A によりクラウチング肢位や足部. 覚的にもわかりやすく,本人や母親に提示しやすい評価. の内反尖足は改善したが,立位保持練習時に膝折れが頻. 法であると考える。. 回に見られた。そのため,粗大運動能力の改善には筋力.  BoNT-A5 回 目 の 施 注 前 と 1 ヵ 月 後 で GMFM-66 の. 増強が必要と考えた。脳性麻痺児は分離運動が困難な場. centile は,15 パーセンタイルの変化がみられた。centile. 合が多いため,開放性運動連鎖よりも立ち上がりなどの. の測定誤差は 20 パーセンタイルとされており. 閉鎖性運動連鎖での筋力トレーニングが実施される場合. 例 で は 有 意 な 変 化 で は な い と 解 釈 で き る。 し か し,. が多い. 13)14). 。そのため,立ち上がり練習を用いた筋力. 16). ,本症. GMFM-66 の立位項目(No.56, 64)で改善がみられ,金. トレーニングを行った。そして,脳性麻痺児のリハビリ. 属支柱付き AFO 装着下での独歩が 15 m 可能となった. テーションでは課題指向型のトレーニングが推奨されて. (表 2) 。GMFM-66 のスコアだけで判断するのではなく,. 15). 。BoNT-A 施注時は,独歩能力を改善するため. 各項目の変化や独歩能力の改善を含めて詳細に分析した. にセラピストの介助による立位保持練習や歩行練習のみ. ことや BoNT-A の効果の限界を把握したことが整形外科. であったが,整形外科手術術後は独歩能力が改善された. 手術後の粗大運動機能改善の予測につながったと考える。. いる.

(6) 痙縮治療の適応を判断し歩行能力を獲得した脳性麻痺児の 1 症例.  本症例は,本人と母親が歩行能力獲得を目標にしたこ と,整形外科医と理学療法士が GMFM をもとにその目 標が実現可能かどうかを検討し歩行能力を獲得する可能 性があると判断し,話し合いが行われ下肢に対する整形 外科手術に至った。術後 3 年の時点では,GMFM-66 の 結果や本人と母親の反応をみても良好な結果が得られた と考える。しかし,思春期にかけて成長スパートがあり 再び筋短縮を来たし粗大運動能力が低下し,歩行能力が 制限される可能性がある。今後も定期的に評価を行い, 粗大運動能力が維持できているかを把握する必要があ り,低下した場合には適切な介入方法や環境に合わせて クラッチ杖と車椅子駆動の併用などを提示することが重 要であると考える。 2.理学療法評価の提示と本人と母親の思い  本症例は内反尖足が増強してきた BoNT-A4 回目頃よ り,整形外科医と理学療法士が整形外科手術を提示して いた。しかし,整形外科手術は不可逆的で侵襲度が高い ため,本人と母親は慎重な態度を示していた。そのため BoNT-A を行いながら,理学療法評価の見直しを行っ た。そして,GMFM-66 を用いて BoNT-A の効果や今後 の機能予測を提示することで整形外科手術に至った。理 学療法士による客観的評価が,本人と母親の整形外科手 術の意思決定を援助するツールになったと考える。  術後の GMFM-66 の結果を見せると,本人・母親とも に喜ぶ様子がみられ,母親は「目標を達成することがで きました」, 「手術してよかったです」との言葉があった。 また,本人も理学療法実施場面で,歩行距離の目標を定 めその目標を達成したときには,グットポーズで笑顔が 見られた。単なる数値のみの結果ではなく,本人と母親 からそのような言葉が聞かれたことが,なによりの効果 判定であったと考える。 結   論  脳性麻痺痙直型両側性麻痺・GMFCS レベル III の児に 対 し,GMFM-66 に よ る 理 学 療 法 評 価 を 行 い な が ら, BoNT-A・整形外科手術と理学療法の併用療法を行い, 日常生活での歩行能力を獲得した。BoNT-A と理学療法 の効果を GMFM-66 で示し,機能予測を行うことで整形 外科手術に至った症例である。今回の経験から,GMFM66 などの客観的評価を用いることが,子どもとその家族 に適切な理学療法介入や機能予測に対する治療選択を提 案できると思われた。 倫理的配慮  本人および親権者に症例報告の趣旨・倫理的配慮・写 真の掲載について説明し,書面にて同意を得た。. 77. 利益相反  本論文に関して開示すべき利益相反はない。 文  献 1)Russell DJ, Rosenbaum PL, et al.: Gross motor function measure (GMFM-66 & GMFM-88) user’s manual. 2nd ed. London, United Kindom: Mac Keith Press, 2013. 2)日本リハビリテーション医学会:脳性麻痺リハビリテー ションガイドライン(第 2 版).金原出版,東京,2014. 3)公益社団法人 日本理学療法士協会:小児リハビリテー ション実態調査報告書.http://www.japanpt.or.jp/upload/ japanpt/obj/files/chosa/syouni_houkokusyo_2016.pdf (2018 年 8 月 5 日引用) 4)Rosenbaum PL: Prognosis for Gross Motor Function in Cerebral Palsy: Creation of Motor Development Curves. JAMA J Am Med Assoc. 2002; 288: 1357‒1363. 5)Brunton LK, Bartlett DJ: Validity and reliability of two abbreviated versions of the Gross Motor Function Measure. Phys Ther. 2011; 91: 577‒588. 6)Hanna SE, Bartlett DJ, et al.: Reference curves for the Gross Motor Function Measure: percentiles for clinical description and tracking over time among children with cerebral palsy. Phys Ther. 2008; 88: 596‒607. 7)Graham HK, Harvey A, et al.: The Functional Mobility Scale (FMS). J Pediatr Orthop. 2004; 24: 514‒520. 8)Himuro N, Nishibu H, et al.: The criterion validity and intra-rater reliability of the Japanese version of the Functional Mobility Scale in children with cerebral palsy. Res Dev Disabil. 2017; 68: 20‒26. 9)Hanna SE, Rosenbaum PL, et al.: Stability and decline in gross motor function among children and youth with cerebral palsy aged 2 to 21 years. Dev Med Child Neurol. 2009; 51: 295‒302. 10)Ryll U, Bastiaenen C, et al.: Effects of leg muscle botulinum toxin A injections on walking in children with spasticityrelated cerebral palsy: a systematic review. Dev Med Child Neurol. 2011; 53: 210‒216. 11)Bjornson KF, Schmale GA, et al.: The Effect of Dynamic Ankle Foot Orthoses on Function in Children with Cerebral Palsy. J Pediatr Orthop. 2006; 26: 773‒776. 12)Scholtes V, Becher JG, et al.: Effectiveness of functional progressive resistance exercise strength training on muscle strength and mobility in children with cerebral palsy: A randomized controlled trial. Dev Med Child Neurol. 2010; 52: 1‒7. 13)Liao HF, Liu YC, et al.: Effectiveness of Loaded Sit-toStand Resistance Exercise for Children with Mild Spastic Diplegia: A Randomized Clinical Trial. Arch Phys Med Rehabil. 2007; 88: 25‒31. 14)Dodd KJ, Taylor NF, et al.: A randomized clinical trial of strength training in young people with cerebral palsy. Dev Med Child Neurol. 2003; 45: 652‒657. 15)Novak I, Mcintyre S, et al.: A systematic review of interventions for children with cerebral palsy: State of the evidence. Dev Med Child Neurol. 2013; 55: 885‒910. 16)Bolster EA, van Schie PE, et al.: Long-term effect of selective dorsal rhizotomy on gross motor function in ambulant children with spastic bilateral cerebral palsy, compared with reference centiles. Dev Med Child Neurol. 2013; 55: 610‒616..

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