「StageIII 結腸癌治癒切除例に対する補助化学療法
としての mFOLFOX 6 療法(L-OHP + l-LV + 5-FU)
/XELOX 療法(L-OHP + Capecitabine)の
臨床第Ⅱ相試験」に関する計画書
研究代表者
埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科
石田秀行
研究実施責任者
埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科
石田秀行
2010 年 4 月 1 日 埼玉医科大学総合医療センター倫理委員会承認【1.00 版】 2011 年 8 月 4 日 埼玉医科大学総合医療センター倫理委員会承認【1.10 版】 2011 年 8 月 4 日 改定に伴う再申請 【1.20 版】1.背景、意義、目的 【背景】 結腸癌に対する術後補助化学療法は、1980 年代後半、進行大腸癌に対して高い有用性が 報告されていた 5-FU とロイコボリン(LV)の併用療法が注目され、大腸癌の術後補助化学 療法にも導入された。 1990 年後半になると結腸癌に対する術後補助化学療法を対象に外来で簡便に投与できる 経口フッ化ピリミジン製剤が検討された。 Lembersky らは、StageII/III 結腸癌を対象に 5-FU/LV 療法(RPMI レジメン)と UFT/LV 療法の比較試験を実施し、UFT/LV 療法は 5-FU/LV 療法に対する非劣性が示された(DFS:HR=1.004(95%CI:0847―1.190))。一方、Twelves らは StageIII 結腸癌を対象に 5-FU/LV(Mayo レジメン)とカペシタビン療法(Cape 療法) の比較試験を実施し、5-FU/LV 療法に対する Cape 療法の非劣性と優越性を検討した。この 結果 Cape 療法は 5-FU/LV 療法に対する非劣性が示され優越性は示されなかった(DFS:HR =0.87(95%CI:0.75―1.00),P<0.001(非劣性))。これらの結果から経口フッ化ピリミー ジン製剤は 5FU/LV 療法との同等性が報告されたため、UFT/LV 療法、Cape 療法は、結腸癌 に対する術後補助化学療法の標準的治療法の1つとなった。
2000 年代に入ると結腸癌に対する術後補助化学療法を対象に、オキサリプラチン(L-OHP) が検討された。de Gramont らは、StageII/III 結腸癌を対象に、LV5FU2 療法と L-OHP+LV5FU2 療法(FOLFOX4 療法)の比較試験を実施し、FOLFOX4 療法は DFS において優越性が示さ れた。(3 年 DFS:78.2% vs 72.9%,HR=0.77,P=0.002)1)。欧米ではこの結果に基づき、結 腸癌に対する術後補助化学療法として FOLFOX 療法が承認された。なお、本試験は追跡調 査により 5 年 DFS と 6 年生存率が報告された。この結果 5 年 DFS および 6 年生存率におい ても FOLFOX4 療法が有意に優れ、FOLFOX 療法は、DFS に加え生存期間においても有用 性が確認された。(5 年 DFS:73.5% vs 67.4%,HR=0.80,P=0.003)(6 年生存率:78.5% vs 76.0%, HR=0.84 P=0.046)。Stage 別にみると、StageII では両群で差が認められなかったが(5 年 DFS:83.7% vs 79.9%,HR=0.84,P=0.258)(6 年生存率:86.9% vs 86.8%,HR=1.00,P=0.986)、 StageIII では、5 年 DFS、6 年生存率ともに FOLFOX4 療法の有用性が認められた(5 年 DFS: 66.4% vs 58.9%,HR=0.78,P=0.005)(6 年生存率:72.9% vs 68.7%,HR=0.80,P=0.023) 2)。また、Land らは StageII/III の結腸癌を対象に、FL 療法と L-OHP+FL 療法(FLOX 療法) の比較試験を実施し、FLOX 療法は DFS において優越性が示された(DFS:74.3% vs 69.4, HR=0.80,P=0.0034)3)。さらに、Haller らは StageIII 結腸癌を対象に、5-FU/LV 療法(RPMI 群 or Mayo 群)と L-OHP+Capecitabine 療法(XELOX 療法)の比較試験を実施し、XELOX 療法は DFS において優越性が示された。(3 年 DFS:70.9% vs 66.5%,HR=0.80,P=0.0045) 4)
以上より、結腸癌に対する術後補助化学療法において、5-FU 系抗がん剤に対する L-OHP の追加効果が確認され、本邦でも 2009 年に FOLFOX 療法、2011 年に XELOX 療法が承認 されている。
オキサリプラチンは欧米で実施された 5-FU/LV や Capecitabine との併用試験により、結腸 癌に対する術後補助化学療法の有用性が証明されている。しかしながら、本邦においては 承認されたオキサリプラチンの用法・用量の制限から結腸癌に対する術後補助化学療法の 検討されていない。
本邦においても結腸癌 術後補助化学療法に対する世界的な標準化学療法であるオキサ リプラチン + 5-FU/LV 療法(FOLFOX 療法)およびオキサリプラチン + Capecitabine 療法 (XELOX 療法)が適応可能か、また、FOLFOX 療法を 12 コースまたは XELOX 療法を 8 コース施行したときの安全性、特に副作用の発現プロファイルについて確認する目的で第 II 相臨床試験(多施設共同研究)を計画した。
【目的】
根治度Aの治癒切除を受けたStageIII結腸癌および直腸S状部癌症例に対するmFOLFOX6 (L-OHP +l-LV/5-FU)/XELOX療法(L-OHP + Capecitabine)の有効性と安全性を検討する。
主要評価項目は3年無病生存割合として、副次的評価項目は安全性(有害事象、術後補助 化学療法の完遂率)、2年無病生存割合、5年生存割合とする。 評価項目・臨床検査・評価スケジュール、データ収集についての詳細は計画書 p.28 -33 参 照。また、附随研究として、生存や再発、補助化学療法の効果や有害事象に影響する予後 予測因子を検索する。 【予想される結果と意義】 日本人において、結腸癌術後補助化学療法として世界的標準であるオキサリプラチン + 5-FU/LV 療法(FOLFOX療法) およびオキサリプラチン + Capecitabine療法(XELOX療法) が適応可能か、が適応可能か、また、FOLFOX療法を12コースまたはXELOX療法を8コース 施行したときの安全性、特に副作用の発現プロファイルについて確認することで、今後、 国内で結腸癌術後補助化学療法としてFOLFOXを検討する上で貴重なエビデンスとなりう る。また補助化学療法の効果や有害事象、再発に影響する遺伝子を検索することで、ステ ージⅢ結腸癌におけるテーラーメード医療の発展に寄与する。 2.方法 【対象および方法】 (1)対象 総合医療センター消化管·一般外科で根治度 A の治癒切除を受けた StageIII 結腸癌および 直腸 S 状部癌に対し、術後補助化学療法を施行予定で、本研究についての同意が得られた 症例とする。詳細な適格基準および除外基準は実施計画書(以下,計画書)p.18 -19 参照。 (2)方法 (本研究) 担当医の説明の結果、患者自身が選択したmFOLFOX6療法またはXELOX療法を行う。 ①mFOLFOX6療法 以下のスケジュールを 2 週間を 1 コースとして 12 コース投与を行う。以降は転移・再発
が確認されるまで無治療で経過観察を行う。 オキサリプラチン : 85mg/㎡になるように点滴静注液を採取後、5%ブドウ糖注射液 250mL ~500mL に注入し 120 分かけて点滴静注する。 レボホリナート :200mg/㎡を 5%ブドウ糖注射液 250mL に溶解し、120 分かけて点滴静 注する。 フルオロウラシル 急速投与 :400mg/㎡を 2~4 分かけて静脈内急速投与する。 持続点滴 :2,400mg/㎡を 5%ブドウ糖注射液あるいは生理食塩液に溶解し 46 時間 かけて持続静注する。なお、5-FU の持続点滴静注は携帯型ディスポーザ ブル注入ポンプまたは輸液ポンプによる投与を可とする。 ②XELOX療法 以下のスケジュールを 3 週間を 1 コースとして 8 コース投与を行う。以降は転移・再発 が確認されるまで無治療で経過観察を行う。 オキサリプラチン : 130mg/㎡になるように点滴静注液を採取後を 5%ブドウ糖注射液 250mL~500mL に注入し 120 分かけて点滴静注する。 カペシタビン :1 日 2 回、朝夕食後 30 分以内 1,000mg/㎡/回(2,000mg/㎡/day)を計 28 回(14 日間相当)を投与する。なお、カペシタビンの服用開始は、オキ サリプラチン投与当日および投与翌日の朝服用開始まで許容する。 カペシタビンの投与開始時用量 体表面積(BSA) 1回用量(錠) 1日用量(錠) <1.36 m2 1,200mg (4 錠) 2,400mg (8 錠) 1.36 ㎡≦BSA<1.66 m2 1,500mg (5 錠) 3,000mg (10 錠) 1.66 ㎡≦BSA<1.96 m2 1,800mg (6 錠) 3,600mg (12 錠) 1.96 ㎡≦BSA≦ 2.2m2 2,100mg (7 錠) 4,200mg (14 錠) XELOX 療法の 1 コース毎の投与スケジュール Day 1 8 14 15 21 L-OHP ● 130 mg/m2 (2hrs, iv) カペシタビン 朝 朝 2,000mg/m2/day 夕 夕 L-OHP:85 ㎎/㎡ l-LV:200 ㎎/㎡ 5-FU:2,400 ㎎/㎡ 5-FU400 ㎎/㎡ 2 時間 46 時間
(付随研究①) 手術時に切除した大腸癌組織および近接大腸粘膜の凍結保存が患者の同意のもとで行わ れ,病理組織学的検索結果が判明した後に本研究および付随研究①に対し、同意が得ら れた患者を対象とする。凍結保存してある大腸癌組織および近接大腸粘膜から mRNA を 抽出しオリゴマイクロアレイ法を用い、30,000 種類の mRNA の遺伝子発現と mFOLFOX6 療法の生存や再発または有害事象との関連を網羅的に解析する。網羅的解析に関しては、 ゲノム医学研究センター研究所にて、所長 岡崎先生が担当する。 (付随研究②) 本研究に同意が得られた患者のうち、付随研究2に対し、同意が得られた患者を対照とす る 。 大 腸 癌 切 除 標 本 の ホ ル マ リ ン 固 定 後 パ ラ フ ィ ン 包 埋 標 本 か ら Laser Captured Microdissection 法を用いて癌細胞を抽出し、抽出した癌細胞の各種遺伝子の mRNA 発現を real time RT-PCR 法を用いて解析する。大腸癌の抗癌剤感受性関連因子5)または付随研究① で予後予測因子候補として同定された遺伝子の mRNA 発現量を解析し予後との関連を検討
す る 。 Laser Captured Microdissection は 、 国 際 医 療 セ ン タ ー 病 理 診 断 科 教 授 清水先生(埼玉医科大学病院病理部兼担)が担当し、mRNA の抽出は、消化管一般外科 隈 元先生が担当する。 3.研究代表者等 所属 役職 氏名 消化管・一般外科 教授 石田 秀行(実施責任者) 消化管・一般外科 准教授 石橋敬一郎 消化管・一般外科 講師 馬場 裕之 消化管・一般外科 講師 隈元 謙介 消化管・一般外科 助教 傍島 潤 消化管・一般外科 助教 桑原 公亀 消化管・一般外科 助教 石畝 亨 消化管・一般外科 助教 松澤 岳晃 消化管・一般外科 助教 幡野 哲 消化管・一般外科 助教 天野 邦彦 消化管・一般外科 助教 鈴木 興秀 ゲノム医学センター 教授 岡崎 康司 ゲノム医学センター 助教 水野 洋介 ゲノム医学センター 助手 八塚由紀子 国際医療センター病理診断科 教授 清水 道生 (埼玉医科大学病院病理部兼担) 4.研究期間と予定症例数
予定症例は合計で 130 例。当科での予定症例数は年間 30 例。 ・登録期間:倫理委員会承認月の翌月(2010 年 4 月)から 4 年 ・症例集積期間:4 年(同上) ・追跡期間:最終症例登録後 5 年間 登録症例数の根拠は計画書p.44参照。 5.患者選択基準・除外基準、研究に参加されなかった場合の治療について 【患者選択基準・除外基準】 研究計画書のP18-19参照。 【研究に参加されなかった場合の治療について】 説明同意文書に下記のように記載。 「臨床試験への参加を希望されない場合は、結腸がんに対して有効な治療である手術は受 けているので、抗がん剤の投与は行わないことを選ぶことができます。あるいは、保険診 療で認められた他の抗がん剤を希望することもできます。 その他に、この臨床試験に参加されない場合の治療法につきましては、担当医師にご相 談ください。」 6.期待される利益と不利益 【期待される利益】 本臨床試験に参加することによって、結腸癌に対する術後補助化学療法の世界的な標準 的治療法、かつ海外で豊富なエビデンスを有するmFOLFOX6療法またはXELOX療法による 治療を受けることができる。また、本レジメンは外来管理が可能な治療法とされ、リザー バーシステムや携帯型ディスポーザブル注入ポンプ等の手技の普及により、入院期間の短 縮も期待でき、かつQOLを維持しながら治療を行うことが可能であると考えられる。 なお、本試験で用いられる薬剤はいずれも保険適応承認が得られているものであり、治療 法も日常保険診療として行われ得る治療法である。また、試験参加患者の試験期間中の薬 剤費を含む診療費はすべて患者の保険および患者の自己負担により支払われるため、日常 診療に比して、患者が本試験に参加することで得られる特別な診療上および経済上の利益 はない。 【予想される危険と不利益】 mFOLFOX6 療法/XELOX 療法により重篤な有害事象(神経毒性、下痢、骨髄毒性、嘔気・ 嘔吐、食欲不振、全身倦怠感、脱毛、手足症候群など)の発現が予想される。しかし、豊 富なエビデンスを有し、既報での副作用の頻度・程度を大きく上回る事は無いと考えられる。 また、これらの有害事象のリスクや不利益を最小化するために、患者選択規準、併用療法・支 持療法、減量規準等が慎重に検討されている。さらに本試験では、試験開始後は定期的に 毒性の程度や頻度をチェックされ有害事象が予期された範囲内かどうかを確認するととも に、重篤な有害事象や予期されない有害事象が生じた場合には本実施要綱の規定にしたが って慎重に検討・審査され、必要な対策が講じられる体制がとられている。
付随研究に関して、検体は手術施行時に採取するため患者に対する肉体的負担はなく、 また、遺伝情報は厳重に管理し取り扱うため、個人情報が漏洩する可能性は極めて小さい。 7.有害事象への対応 本試験では、試験開始後は定期的に毒性の程度や頻度をチェックされ有害事象が予期さ れた範囲内かどうかを確認するとともに、重篤な有害事象や予期されない有害事象が生じ た場合には本実施要綱の規定にしたがって慎重に検討・審査され、必要な対策が講じられる 体制がとられている。 8.費用負担について 本試験で用いられる薬剤はいずれも保険適応承認が得られているものであり、治療法も日 常保険診療として行われ得る治療法である。また、試験参加患者の試験期間中の薬剤費を 含む診療費はすべて患者の保険および患者の自己負担により支払われる。 9.試料の取り扱い 試験担当医師は、対象患者が適格規準をすべて満たし、除外規準のいずれにも該当しな いことを確認し、『登録適格性確認票』に必要事項をすべて記入の上、登録センターに登録 適格性確認票を FAX 送信する。登録センターで適格性が確認された後に登録番号が発行さ れ、登録確認通知の送付をもって登録とする。送付された登録確認通知は担当医が保管す る。当院での管理は、データマネージャ-の資格を有する医局秘書の補助のもとで芳賀准 教授が連結可能匿名化を行い、病理部 田丸教授が厳重に保管する。また他施設からの 登録は、芳賀准教授が匿名化を行い、厳重に保管する。参加施設のすべての研究者は、 個人情報保護のため最大限の努力を払う。 施設、研究事務局間の患者データのやりとりは、紙、電子媒体のいかんにかかわらず、 症例登録は FAX を用い、それ以外は FAX、郵送あるいは直接手渡しすることを原則とする。 10.個人情報の取り扱い 登録患者の氏名は参加施設から研究事務局へ知らされることはない。 登録患者の同定や照会は、登録時に発行される登録番号を用いて行われる。患者登録に あたっては、識別番号を設定し、連結匿名化を行い、患者イニシャル、カルテ番号等は施 設外に開示しないこととする。第三者が当該施設の職員やデータベースへの不正アクセス を介さずに直接患者を識別できる情報が、登録センターのデータベースに登録されること はない。 以上より、研究事務局では最小限の識別情報として登録番号を用いるが、参加施設のす べての研究者は、個人情報保護のため最大限の努力を払う。 施設、研究事務局間の患者データのやりとりは、紙、電子媒体のいかんにかかわらず、 症例登録は FAX を用い、それ以外は FAX、郵送あるいは直接手渡しすることを原則とする。
11.利益相反 本研究に関連するすべての担当者(申請書に記載のある研究者)について、埼玉医科大 学に報告すべき利益相反に該当するものはない。 12.知的財産権 説明同意文書に下記のように記載。 「本試験の結果により何らかの新たな知見が得られることがあります。その際に生じる特 許、その他知的財産に関する権利(特許権)は、提供されたデータに対してではなく、研 究者達が研究やその成果の応用を行うことによって生まれた新しいアイデアに対するもの です。ですから、特許権の発生により経済的利益が生じても、あなたはその権利を主張で きません。本試験の結果によって生じる特許、その他知的財産に関する権利は、研究者に 帰属します。」 参考文献
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4. Haller DG, Tabernero J, Maroun J, de Braud F, Price T, Van Cutsem E, Hill M, Gilberg F, Rittweger K, Schmoll HJ. Capecitabine plus oxaliplatin compared with fluorouracil and folinic acid as adjuvant therapy for stage III colon cancer. J Clin Oncol. 2011 Apr 10;29(11):1465-71. Epub 2011 Mar 7.
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