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ユニバーサルデザインを取り入れた授業づくり をめざして ~ 通常の学級における支援教育 ~ 門真市立古川橋小学校向井理恵 1. はじめに 2010 年度より 門真市教育研究会支援教育部においては 支援教育の観点に立った通常の学級における 学級づくり や 授業づくり について取り組んできた LD AD

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Academic year: 2021

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「ユニバーサルデザインを取り入れた授業づくり」をめざして

~通常の学級における支援教育~

門真市立古川橋小学校 向井理恵 1 .はじめに 2010年度より、門真市教育研究会支援教育部においては、支援教育の観点に立っ た通常の学級における「学級づくり」や「授業づくり」について取り組んできた。 LD、ADHD、高機能自閉症等の何らかの支援を必要とする子どもたちは、大半を 「通常の学級」で日々の生活を送り、授業を受けているのである。 また、これ以外にも障がいの有無にかかわらず、生活や学習上のなんらかの困難を抱 えて子どもたちも通常の学級において過ごしているのである。このように子どもたち一 人ひとりが必要としている支援の違いに対応するには、日々の授業をどう工夫していく か、また、その子どもたちの違いをお互いに認め合う集団づくりをどのようにしていく とよいかということが大きな課題となってくる。そこで、支援教育での観点を取り入れ、 個のニーズに応じた支援を行うことは、即ち“ないと困る支援”を行うことであり、周 りの子どもたちにとっても“あると便利な支援”となるのではないかと考えた。 通常の学級における「全員が参加しやすい、分かる授業」、それが「ユニバーサルデ ザインを取り入れた授業」につながると考えた。そこで学級全般を整えることで子ども たち一人ひとりに居場所ができ、充実した生活から確かな学びが生まれるものであり、 どの子も参加しやすい授業を支援教育部では追及していこうと考えた。 2 .門真市教育研究会支援教育部の3年間のあゆみ (1)1年目の取組 脇田小学校1年生においてユニバーサルデザインの視点を取り入れた国語科における音 読の授業に取り組んだ。 研究1年目と言うこともあり、校内の授業研究の指導案にユニバーサルの視点が入るよ うに付け加えていった。まずは、黒板周りの掲示物の見直し、カーテンの設置等の教室環 境の整備をし、見通しが持てるように授業の始めに全体の流れが分かるような工夫等、手 軽に取り組める視覚的支援から見直していった。 (2)2年目の取組 沖小学校3年生において、「書くこと」に重点をおいた国語科の授業に取り組んだ。 授業の中で、なるべく言葉だけの指示や説明は避け、視覚的支援を活用した。書画カメ ラ、デジタル教科書、プレゼンテーションソフトを用いて、児童の興味を引き出す工夫 をした。 できるだけ、授業に集中しやすい静かな教室環境にするために、 「今どうすべき場面なのか」を目や耳から確認できるようにするた めに、“おだまりカード”“ひそひそカード”“注目ベル”(聴覚的支 援)を用いた。 また、見通しがもてるように、スケジュールボード、学習の流れ、 注目ベル

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授業展開のパターン化、タイムタイマーを使うなどの支援を 取り入れ授業を行った。 (3)3年目の取組 研究を始めて3年目にあたる今年度は、古川橋小学校3年生において授業研究を行っ た。2年間の研究を通して、教室環境の整備の仕方、指導案の書き方、子どもの実態把 握を通しての授業づくりについて、ある一定の方向が見えつつあるところである。 1、教室環境について 子どもたちが落ち着いた学校生活を送るためには、まずは、学級においてルールが 明確にされ、教室環境が整備されているということが、前提となる。 ホワイトボードを活 用し、一日の流れが 見通せるようにして いる。 持 ち 物 の 場 所 を 視 覚 的 に は っ き り と 示 し て い る。 棚は、ブルーのカ ーテンで中が見え ないようにしてい る。 黒板に集中させるために黒板周り をすっきりとさせ、視覚刺激を少な くしている。 掲示物は教室 の横、後ろに 貼るようにし ている。 授業で黒板を広く全面で使える よう、日付は黒板外に出してい る。 タイム タイマー

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2、授業づくり 国語科(説明文「ありの行列:光村図書」)の授業に1学期取り組んだ。物語文と ちがって、イメージをとらえにくい説明文をどうすれば、どの子にも「わかった」「で きた」と実感できる授業づくりができるかということを考えていった。そのために次 のような視点を盛りこみながら工夫をしていった。 ア、 1時間の見通しをもてるようにする。 できるだけ、パターン化できるようにし、本時のめあてを確認した後、1時間の流 れをおおまかに示してから授業を開始した。 (授業の構成) イ、話形(発表名人になろう)を掲示しておき、発表するときの安心感を与える。 この掲示物を初めて貼った瞬間、「なんか、分 かりやすい!!」という子どもの素直な声が 聞かれた。 自分の考えを言ってから、なぜその ように考えたかという理由をつける 話形はほとんどの子どもたちに定着 した。友だちの意見を受けての発表 の仕方は今後授業に合わせて改良を していきたいと思っている。 つかむ・見通す ・前時までの振り返り ・めあての確認 学び合う ・一人学び・ペア学び ・グループ学び ・全員での学び まとめ・振り返り ・一人学び ・今日のまとめ ・次時の予定

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ウ、動作化、視覚化をすることで、内容理解の手助けとなるようにする。 エ、分かりやすいワークシートを用意する。 オ、要点をまとめるとき、子どもの個人差を考慮し、ヒントカードを用意した。必要 な子どもには自分で選択させるなど、子どものニーズに合わせるようにする。 子どもたちには、挿し絵がない教材文を渡してい る。あり、巣、さとうなどの絵を各班に渡し、教 材文を読みながら、絵を実際に動かしてみること で、どの子も教材に向き合うことができた時間と なった。 グループで話し合った内容を、みんなの前で交 流をする場面である。ペープサートを使って、 全員が理解しやすいように工夫をした。読み 手、文章にあわせて絵を動かす役は、話し合い の中で自然と決まっていった。どの子も前で、 発表したい意欲に満ちていた。 ⑤ ④ 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 お い た の で は な い か 、 と 考 え ま し た 。 あ り が 、 地 面 に   何 か   道 し る べ に   な る も の を   つ け て こ れ ら の か ん さ つ か ら 、 ウ イ ル ソ ン は 、 は た ら き つ づ き ま し た 。 あ り の 行 列 は 、 さ と う の   か た ま り が   な く な る ま で 帰 る と き も 、 行 列 の 道 す じ は   か わ り ま せ ん 。 も っ て 、 巣 に 帰 っ て い き ま し た 。 目 的 地 に   着 く と 、 あ り は   さ と う の つ ぶ を い き ま し た 。 ま た 、 だ ん だ ん に   あ り の 行 列 が   で き て 道 を   見 つ け て   歩 き だ し ま し た 。 そ の う ち に 、 ほ か の   あ り た ち も 、 一 ぴ き 二 ひ き と そ し て 、 さ と う に   む か っ て   進 ん で い き ま し た 。 道 の つ づ き を   見 つ け ま し た 。 よ う や く 、 一 ぴ き の   あ り が 、 石 の   む こ う が わ に ち り ぢ り に   な っ て し ま い ま し た 。 す る と 、 あ り の 行 列 は 、 石 の 所 で   み だ れ て 、 行 く 手 を   さ え ぎ っ て み ま し た 。 次 に 、 こ の 道 す じ に   大 き な 石 を   お い て 、 あ り の 読むことに抵抗ができるだけ少なくなるよう に、段落ごとに分かち書きした教材を作った。 これにより、子どもたちの発表の中でも、「段落 ○番目、○文目の・・・」と言うことができ、 話し手にとっても聞き手にとっても文章の中を 指し示す手がかりに役立ったようだ。 ( ) は ( ) 実 け ん を し て 、 ( ) が 、 地 面 に 何 か ( ) に な る も の を つ け て お い た の で は な い か と 考 え た 。 【 キ ー ワ ー ド 】 は た ら き あ り ・ あ り の 行 く 手 を さ え ぎ る ・ 道 し る べ ・ ウ イ ル ソ ン ウ イ ル ソ ン は 、 あ り の 行 く 手 を さ え ぎ る 実 け ん を し て 、 は た ら き あ り が 、 地 面 に 何 か 道 し る べ に な る も の を つ け て お い た の で は な い か と 考 え た 。 ヒントカードA ヒントカードB ヒントカードAは、内容は 理解しているが、要点をま とめることを苦手としてい る子どもに手渡した。 ヒントカードBは内容理解 につまずきが見られる支援 学級に在籍している子ども に手渡した。視写をするこ とで同じワークシートを使 っていくことができた。

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3 .おわりに 門真市教育研究会支援教育部として、「ユニバーサルデザインを取り入れた通常の学 級での授業づくり」というテーマで研究をはじめて3年目。部員のほとんどは支援学級 の担任であるため、支援学級担任を離れると、教科の研究部会に移る人がほとんどで、 継続的な研究ができないのが、部会としての悩みでもあった。しかしながら、今年度は、 通常の学級を担任しながら、そのまま支援教育部会に残る人も私を含めて3名いた。部 会の中でいつも議論に上るのが、「ユニバーサルの大切さ、必要性を市内全体に発信す ることができないか」ということである。今回、4月に転勤をしたばかりではあったが、 6月早々に授業研究をすることになったのも、1学期の段階でユニバーサルの大切さを 分かりやすく発信できるには授業を公開するしかないということになったからである。 当然、準備不足も多々あったこととは思うが、研究授業を部員の協力を得ながら、なん とか公開することができた。 ユニバーサルデザインの授業にとって大切なことは「みんながやる・みんなでやる」 ということである。研究に取り組みはじめた年、部員数人で高槻市立五領小学校の授業 を見に行った。「チーム五領」を合い言葉にし、全教職員が共通理解のもと、あらゆる 教育活動をチーム一丸となって取り組んでいる様子を見ることができた。本市教研とし ても、「チーム門真市」を合い言葉にこの研究を広めていきたいとそれぞれの部員は思 っている。この3年間、それぞれの公開授業は校内の研究テーマに沿いながら、子ども のニーズに沿ったユニバーサルの視点を盛り込んで取り組んできたものである。 しかし、ユニバーサルデザインの落とし穴は「形」だけを取り入れれば、「わかる・ できる」ユニバーサルデザインになるわけではありません。ユニバーサルデザインとは 誰にでも使いやすいものである。単に個別の配慮をするだけでは授業はわかりにくいま まである。ユニバーサルデザインが目指すものは「すべての子どもたちが楽しくわか る・できるように工夫・配慮された通常の学級における授業」である。授業を『視覚化』 する(挿絵・動作化・写真・動画など)ことにより内容のイメージ化を図ることはでき るが、大切なことはそのイメージを基盤にして論理付けしていかなれば「わかる・でき る」まで到達しないということである。そのためにも、ペア学習やグループ学習の中で、 自分の考えを述べたり、友だちの発言を共有することが大切だと思われる。これからも、 子どもの主体的な学習を促し、思考を深めていくためにも、支援学級の観点を取り入れ た教科教育も追求していく必要があると考えている。 この取組が各学校、市全体の取り組みへとつながり、子どもたちが毎日安心して学校 に通い、楽しんで授業に取り組む姿がそれぞれの学校で日常的に見られるよう、今後も 各校間の情報交流を深めていきたいと考えている。

参照

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