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少年非行の実態と教育の問題 : 校内暴力と登校拒否を中心として

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(1)

∼校 内暴力 と登校 拒否 を中心 として∼

教育学教室 /1ヽ

洋 一 郎

1.

は じめ に 少年非行が最近 また増加の傾向にあ り

,昭

和57年 に主要刑法犯で補導 された少年の人員 は戦後最 高 となっている。戦後 における少年非行 の推移 をみる と

,現

在 は

,昭

和26年及 び39年 に次 いで

,戦

後第3の ピー クの形成期 にある といえよう(附表参照)。 全国的な少年非行の特徴 として

,高

校生段 階か ら中学生段階への低年齢化傾向が強 まってお り,しか も

,刑

法犯で補導 され る少年の約

90%が

, 中流 ないしそれ以上の家庭 の出身であ り

,非

行 の一般化傾向 もうかがわれ る。 とい うことは

,非

行 は特別 な者の問題ではな く

,少

年の誰 もが非行 を犯 す可能性 をもっているとい うことである。 一般的に

,非

行少年 とは

,少

年に適用 され るべ き行為基準 に反す る行為ない し行状 のあ る少年 を 意味す るのであるが

,非

行 についての判断や評価 は

,子

供 を保護 した り

,教

育 した り

,あ

るいは取 り締 った りする側の価値観や道徳観および児童観 によって

,か

な り大 きく影響 されるものであ る。 また,「非行」と「非行少年」の関係 を正 しく理解す るために

,次

の見解 は重要であると思 う。 すな わ ち,「当初 はゆがめられた人格 の一部が非行 として現われていたのに

,そ

の適切な処置 を誤 ると, 周囲の無理解や取 り扱いの過誤 に適応 していかなけれ ばな らないために

,健

康 な部分 もしだいにゆ がめ られ

,や

がて手に負えない非行少年がで きあがるのである。つま り

,非

行 はあるが

,は

じめか らの非行少 年 というものはいない。非行少年 とか

,非

行傾向 というものは

,結

局 はつ くられてい く ものである。」 この小論 では

,少

年の問題行動の典型 として

,反

社会的行動 としての「校内暴力」および

,非

社会 的行動 としての「登校拒否」の問題 を中心に考察する。最近 はとくに校 内暴力

,家

庭 内暴力

,登

校拒 否の増力日が社会問題 となっているが

,こ

の ような問題行動の発生 には

,共

通する傾 向 と原因が ある と思われるのである。教育相談の うちで

,最

も多いのが全国的 にみて登校拒否 に関す る ものになっ てお り

,

これ は一見対照的な家庭 内暴力

,校

内暴力 といった暴力型の非行の増加 とも対応 してぃる のである。 したが って また

,登

校拒否の問題 を考察す ることは

,最

近の非行現象 を教育 の問題 とし て とらえ直す手がか りを得 ることがで きるのではないか ということである。非行や登校拒否の増加 現象は

,そ

れ らの問題行動に共通する教育 の問題 を

,父

母や教師

,あ

るいは地域社会 に問いか けて いるのではないか と思われ るのである。

(2)

小林洋一郎 :少 年非行 の実態 と教育 の問題

2.校

内 暴 カ 最近の非行の特徴は

,万

引や乗物盗などの初発型非行の増加に加 えて

,シ

ンナー乱用

,性

非行な どの好奇心型非行 と

,殺

,暴

,傷

害,リ ンチやい じめっ子などにまでいたる他者への攻撃型非 行が増加 していることである。 しかも

,中

学生による教師に対する暴力事件や浮浪者襲撃事件や校 内の リンチ事件にみられるように

,粗

暴 。凶悪 さ

,陰

湿 さを増 し

,残

虐性の度が強 まっている。 こ こでとくに校内暴力事件に注目してみたいと思 う。校内暴力事件 というのは,青 少年白書によると, 「中・高校生による171学校内での①教師に対する暴力事件

,②

集団による又は集団の威力 を背景 と する生徒間の暴力事件及び学校施設

,備

品等に対する損壊事件のほか

,竹

冴巳行の原因・ 動機が学校 と密接な関係 を有する校外での暴力事件をいうとされている。]昭和56年の校内暴力の状況 は

,第

1 表0のとお りである。発生件数は2,085件で

,補

導人員は10,486人 となってお り

,中

・ 高校別にみる と

,中

学生の事件が1,842件 と全体の

88.3%を

占めている。 第1表 校 内暴力事件 の補導状 況 (昭和55・56年) 区 分 年 次 計 中

生 高

生 件   数 補 人 導 員 被 害 者 件   数 補 人 導 員 被 害 者 件   数 補 人 導 員 被 害 者 町写 55 1,558 7,108 3,837 990 H召 56 2,085 10,468 8,862 3,820 増 減 数 1 A383 A 17 ▲ ■3 ▲ 344 ▲ 366 増滅率 (%) 15.6 ▲7.9 53.2 ▲0.4 A31.7 ▲17.6 ▲37.0 資料出所 警察庁調べ 第2表 中・ 高校生による教師に対する暴力事件の推移 (昭和51∼ 56年

) (人

) (人)

件 数総 数 中学生 による事件 高校生 による事件 害 師 被 教 補 導 人 員 件 数 害 師 被 教 導 員 補 人 件 数 害 師 被 教 導 員 補 人 日召不日51年 245 328 372 738 資料出所 警察庁調べ

(3)

2表

0により

,教

師 に対 す る暴力事件 の推移 をみると

,昭

和56年 中 は発生件数772件

,補

導人員 1,612人

,被

害教師943人 となってお り

,前

年 に比べ るといずれ も激増 している。 また

,中

。高校生 別 に見 ると

,中

学生の事件 が738件と全体 の

95.6%を

占めている。 鳥取県における昭和57年 中の校 内暴力事件 による検挙補導人員 は

, 8件

24人 (56年は

7件

15人)と なってお り

,

その うち中学生が

6件

18人を占め

,対

教師事件

3件

はいずれ も中学生 となっている電 全国的にみれば

,鳥

取県 は最 も少 ない方である と思われるが

,表

面化 しない潜在的な可合蟄隆を考慮 すると安心 しておれないであろう。新聞報道°によると

,昭

和57年度 の卒業式の当 日

,校

内暴力事件 な どの恐れがある として

,警

官が校 内・ 学校 周辺 に出動 して警戒 に当たった中学校 は

,警

察庁の調 査結果 による と,全国10,758校 のうち1,812校 と昨年 に比べ61校増 で

,約 6校

に1校の割合 となって いる。 これに対 し高校 は全国5,284校の うち

,合

計313校で昨年 よ り64校減 っているが

,警

察の力 を 借 りなければ卒業式がで きない とい う状況 は,驚ろ くべ き実態であ る。東京都のあ る区内の調査nに よって も

,校

内の暴力的傾 向の実態 は想像以上で

,教

師に対す る暴力 をみて も

,44%の

中学校で起 っている という。 また

,校

内暴力の前段症状 ともい うべ き

,教

師 に対す る暴言

,い

やが らせ

,指

導 無視

,授

業妨害

,エ

スケー プな どが中学校 の

80%に

み られ るとい う深刻な事態 も指摘 されている。 清水将之氏 は,「青年期 の若者 は

,す

べて衝動性・攻撃性 を内に秘 めてお り

,極

言すれば

,全

員が それ を暴力行為へ と行為化 させ る可能性 を持 っていると言 うこともで きるように思われ る。」と述べ ているが

,

この ことは

,総

理府が昨年 まとめた「青少年 と暴力 に関す る研究調査」で も

,あ

る程度 裏付 けられている。新聞°による と

,政

令指定都市 を中心に計13都市 に住む12歳か ら17歳までの少年 2,000人を対象 に昭和56年に行われた ものであるが

,中

学・高校生の約

3割

,教

師 を殴 った り

,け

った りしたい と思 っている。 また

,親

に対 して物 を投げた り

,暴

れた りしたい と思 っている青少年 が

4割

以上 もい る。この うち実行 したのは,「先生 への暴力」は

15%だ

が,「授業妨害」は

7.7%,「

施 設破壊」は

3.3%で

,三

つの うち どれか一つを実行 した生徒 は

95%と

,約 10人に1人の割合 になって いる。また,「自分の学校 で先生への暴力があつたJ と答 えたのは,中学では

14.5%,高

校では7.5%と いう数字 になっている。「なぜ校 内暴力が起 きるの か」を聞いた ところ

,第

3表

の ようになってお り, 先生の側 に原因があると指摘するものが圧倒的に 多 くなっている。 また

,青

少年 白書 によると

,実

際の教師への暴力の動機 について

,警

察庁が把握 した ところでは

,第

1図拗)のとお り ,「注意 あるい は厳 しい しつけへの反発

,仕

返 し」が約

80%で

圧 倒的に多 く

,次

いで,「学校 の生徒指導

,授

業の在 り方に反発」が約10%となっている。先の清水氏 が言われるように,「暴力」とい う反社会的な行為のみに目を奪われずに

,そ

の少年の行為の背景に 何があったのかを明 らか にす る視点が必要なのではないか とい うことである。教師に対 する暴力事 件の主たる原因が

,生

活指導や処偶措置 に対 する報復 ともみ られ るのである。校内暴力事件では「巻 き込 まれた生徒や教師が 日常的に当該生徒 にどのように接 して きたか といった

,基

礎的問題 を根源 的に問い直 すことが

,問

題解決 ない しく治療〉への方途 につなが ってゆ くもつと思われるのである。 校 内 暴 力 の 理 由 複 数 回 答 先生が え こひい きす る 51.4% 先生が しつ こ くしか る 42.1% 先生が しっか りしていない 39.5% 本人 が 自分 を抑 え られ ない 36.4% 悪 い仲 間 に入 っている 29.9% 家庭 がお もしろ くない 26.4% 勉強がわか らない 24.2% したい放題 に させておいた 22.9% 強 い ところを見せたか つた 21.2% 先生が な ぐる 18.7% 他の生徒 に相手 にされ なし 13.7% そ の 他

4.5%

(4)

266 小林洋一郎 :少年非行の実態 と教育の問題 第1図 対教師暴力の原 因・動機 (昭和56年) 資料出所 警察庁調べ

3.登

校 拒 否 昭和55年度間 に50日以上欠席 した

,い

わゆる長期欠席児童・生徒数 は

,青

少年 白書 によると第4 表りの ように

,小

学校24,660人

,中

学校31,525人 となっている。これを理 由別 にみ ると

,小

学校 では 病気 による者が

71.8%,学

校嫌 いによる者が

14.9%を

占めているが,中学校 では病気 による者が40.

7%,学

校嫌いによる者 が

45.9%を

占めている。昭和55年度 間の中学生の長期欠席者 は

,学

校嫌 いに 第4表 理 由別 長期欠席者数 の推移 小

(人 ) 中 学

仏) 区 公 昭和49年度 昭和52年度 昭和55年度 昭和49年度 昭和52年度 昭和55年度 総 数 25,889 (100.0) 24,505 (100.0) 24,660 (100.0) 23,493 (100.0) 26,870 (100.0) 31,525 (100.0) 病

気 20,080 (77.6) 18,224 (74.3) 17,714 (71.8) 12,957 (55.1) 13,134 (48.9) 12,840 (40.7) 経済的理由 286 (1.1) 311 (1.3) 262 (1.1) 629 (2.7) 575 2 . . > 546 ・ ・ 7> 学 校 嫌 し 2,651 (10.2) 2,965 (12.1) 3,679 (14.9) 7,310 (31.1) 9,808 (36.5) 14,478 (45.9) そ の 他 2,872 (11.1) 3,005 (12,3) 3,005 (12.2) 2,597 (11.1) 3,353 (12.5) 3,661 (11.6) 資料出所 文部省「学校基本調査

J,( )内

は%である。 先生が構 って くれない ことに反発 1.4 威勢を誇示するため

67

そ の 他 2.2 学校の生徒指導, の在 り方に反発 注意 あるいは厳 しい しつけへの反発,仕返 し

798%

(5)

よるものが最 も多 くて

,全

体 の約

46%に

あた る14,478人で

6年

前 と比較すれば約

2倍

に増大 してい るのである。 学校嫌いで長期欠席 をす る児童・ 生徒 の中には

,学

校がお もしろくな くてずる休 みす るいわゆる 「怠学型」と

,学

校 へ 行 きた い気持 はあるけれ ども何 らかの理 由で行 けない心因性 によるいわゆる 「登校拒否症」と呼ばれるものに大別す ることがで きる。 最近 は

,登

校拒否(SChOol refusal)の 呼称が多 く使 われ るよ うに な った が

,

昭和45年(1970年) 頃 までは

,ほ

とん どが学校恐怖症の呼称 を使 っていたりとい う。また

,三

井収介氏 は

,登

校拒否 とい う子 どもに初 めて接 したのは昭和30年代の半ば頃であると述べている“)が,その頃の報告 は,学校恐 怖症の成因を母子 の分離不安 に求 め

,母

子関係 を重視 していた といわれ る。山崎道子氏 は

,当

時の 研究報告 に共通する傾 向 として

,例

えば

,①

家族構成上 の特徴 は

,欠

損家族が少な く

,

ことに母親 欠損の家庭が ほとん どみ られない こと

,別

,離

婚 を経験 している家族が稀 なこと。登校拒否児の 同胞順位 は一人子 か 末 子 が 多 く「赤 んぼ」として扱 かわれてい るものが多い こと。②母親 の養育態 度 には

,極

度の過保護か ら

,過

保護 と厳格が両立するもの

,支

配的な もの まで とり上 げられている が,母親のいずれの行動 も意識的には子 どものためになることを願 って行動 してい ることを指 摘 し, 母親か ら意識的には拒否 されている子 どもがいない ことなどをあげてい 懇ぞしか しまた,昭和40年頃 か ら研究報告 は次第 に,「初期の分離不安説か ら

,学

校 の場 を重視する考 え方や自我発達 による登校 拒否機制 の分類 な ど広が りのある展開 をみせ

,家

族内力動 との関連 もまた

,母

子関係 を重視 した も のか ら両親の性格特徴 を重視 し

,

とくに父親の性格の歪みや非社会的特徴が

,父

親 として

,夫

とし ての役割を障害 し

,子

どものためのモデル にな りえない こと

,妻

に対 して も心理的支持 を与 えるこ とができない ことが

,子

どもらにもつよい影響 を与 え

,か

つ家族全体の力動 を支配 してい ることを 強調す るようになった∫)と いうことである。 このような家族要因や母子関係 の特徴か ら

,治

療上の方向 として

,本

人である子 どもよ りもまず 1父 親や母親のカウンセ リングの必要性が見い出されるのである。また

,最

近の非行や問題行動のあ る子 どもの家族状況の特徴 にも共通するものが あると思われ るのである。 鳥取県教育研修 センターでは,「登校拒否生徒 に関す る実態調査」 を昭和55年度 に実施 している。 その報告書によると

,

県 下 す べ て の 中学 校(公立)と高校(公立・ 私立)を対象 として

,昭

和55年 4月 か ら昭和55年 11月 までの間に

,心

理的理由あるいは怠学傾 向によ り

,15日

以上連続 また は断続 欠席 した ものについて調査 した もので,その結果 は第

5表

171の ようになっている。出現率 は,中学校 第5表 登校拒否生徒数及 び出現率 中 学 校 高 等 学 校 男 女 計 男 女 計 1 12 13 2 11 17 3 11 ll 計 77 55 出現率 (%)

0.28

0.38

0.33

0。 44

0.25

0.35 資料出所 鳥取県教育研修センター「登校拒否生徒に関する実態調査」(昭和55年)

(6)

小林洋一郎 :少年非行 の実態 と教育の問題

0.33%,高

校0.35%と なっているが

,年

間 を通 してみると現在で はもっと割合が高 くなっていると 思われる。 この調査では

,中

学校 の場合 は男子 よ りも女子の方が多 くなっているが

,高

校 で ははる かに女子 よ り男子 の方が多い。 また

,高

校では

,第

1学年が最 も多 く

,学

年が進 むにつれて少 な く なっている。 また

,中

学 。高校 とも

,神

経症的傾向のつよい狭義の登校拒否に くらべて

,学

校不適応や非行 と か らんだ登校拒否が多 くなっているという。そ して登校拒否以前の学業成績 をみる と

,中

学・ 高校 とも下位の ものが非常 に多 くなっているというのが特徴である。 いわゆる「怠学型」の登校 拒否 は, 授業がわか らなかった り

,学

校生活がお もしろ くないために起 ると考 えられ るので

,ま

,学

校生 活の中で とり残 されが ちな児童・生徒が

,ど

の ように した ら学習意欲 をもち

,達

成感や充実感 を味 わ うことができるだ ろうか とい う観点か ら

,個

別的に指導

,援

助 していかなけれ ばな らない。 それでは

,神

経症的傾 向のつよい登校拒否 とい うのはどのような ものなのであろうか。次 にあげ る事例 は

,筆

者が直接 に聞いた ものである。 (事例

),高

2年

生の男子。自我意識が強 く

,成

績 はよい方だが体育がにがてで

,人

に笑われ た ことやちょっ としたつ まづきが もとで挫折感 を味わい

,高

2年

目に登校拒否が始 まった。 学校が こわい

,学

校 というシステムが こわい

,プ

ールが こわい ということになる。登校 をすす めると

,明

日か ら行 くと気楽 に約束するが

,当

日になるとけっ して行 こうとしない。 日曜 日は 何時で も起 きられ るが

,月

曜 日になる と朝 は起 きようとしない。 こうい う状態では どうしよう もないので

,大

学教官の

S氏

(筆者の先輩)は

,姉

さんより頼 まれて

,そ

の子の世話 をす るこ と に し

,転

校の手続 きもした。 しか し

,新

しい高校 にも 1日 半登校 しただけで また学校へ行 かな くなった。登校 しないのな らば

,親

元に帰 りなさい といって も帰 らない し帰 る気 もない。学校 が遠 くすぎるのでは と思い近 くに下宿 させてみたが

,一

向に登校する気配がないので また自分 の うちにつれ もどした という。明 日は行 くと約束 させて も何 のた しに もな らない。 は じめはだ ましているのでは と思 ったが

,そ

うではな くて

,本

人 はほん とうにその時 は学校 へ行 く気持 に なっているのである。 当日になると登校 しないでふ さぎこんでいるが

,学

校 の終了時間 にな る と元気になる。 自分(S氏)の息子たちに学校 はいかにつ まらないか をふ きこんだ りす るの で困 った。 その子の家庭 は経済的に余裕が あるので

,ス

テレオや レコー ドを買って もらい

,

レ コー ド鑑賞 にこりだす。そうか と思えば

,サ

ボテ ンの収集 にこって

,小

遣銭 をつぎこむ。

S氏

は自― 分の息子 にはあま り買 ってやれないし

,み

かねてそれ とな く注意 した ところ

,あ

れて しか たが なか った。カウンセラーの所へは理屈 をこねていかない。半年 は格闘であった。学校へ行 かな いのな らいっそ退学 して働 くか とい うとその気 になるが

,あ

くる日になると気持 が変わ つてい る。登校拒否の子 どもは公的な場 に出るのが こわいので

,決

して働かない とい うこともわ かっ た。顔 をみるたびに学校 へ行 きなさい とか

,仕

事 をしなさい と駆 りたてると

,か

えって心 を開 かないで

,む

しろ鉄の鎧で武装するような状態 になって しまう。 ついにあきらめて好 きに させ ることにした。 はじめのうちはぶ らぶ らし, まともに話 をしなかった。時 にはケ ンカみた いに 議論 もした。 その うち時々郷里の親元 に帰 るようになった。やがて勉学の意志 もでて きたので, あ る高校の先生 に事情 を話 して受験 させて もらい

, 2年

お くれで高校

1年

に再入学 した。担任 の先生 は理解があって大変 よ く

, 3年

間通学 し

,文

芸誌 などの発行 に参加するな ど

,無

事高校 を卒業 し

,大

学に も進学することがで きたのである。 その子 は

,小

学生の頃は勉強が よ く出来 て

,ス

ター的な存在であった。家庭 で もまわ りの も のか らチヤホヤされて育 ち

,自

分 は優秀だ と思い込 んでいた。 また

,人

形の ようにお とな しく

(7)

いい子であった。母親 は子 どもの世話 に一生 けんめいだ った。子 どもがい じめられ ると

,い

じ めた子 どもの うちに抗議す ることもあった。父親 は子 どもに対 して甘 く

,た

いていの ものは買 ってや り

,き

びしさがなかった。 そ して、仕事やつ きあいでいそが しく

,家

族 と一緒 に食事 を することはあって も

,山

ヘー緒 に出かけた り

,子

どもと一緒 になって何か つくった りするとい うようなことはなか った。

S氏

,登

校拒否児 をあずか り世話 をした経験 か ら

,登

校 をすすめることをやめて

,子

どもにす べてをまかせ

,自

律的な生活がで きるようにや りなおす ことが必要であると述べ られたのである。 東京都立教育研 究所 の研究で も

,登

校拒否の子 は小 さい時

,ひ

とりで育 て られた ようなお とな し い子が多い。親 の感情で一方的に世話 を焼いた り

,子

どもへの強い期待が子 どもに「無言の圧力」 を与 えているな ど

,親

の態度 に問題 があると指摘 している

P

鳥取県 において も登校拒否の子 どもが増加 しているようである。鳥取県教育研修 センターが

,昭

和57年度 に受 けつ けた教育相談 をまとめた ところ

,登

校拒否 に関す るものが最 も多 く

,一

般相談の 889件 (のべ件数

)の

うち約

40%を

占めた というぎな 種別で は,ガ ヽ学校

,中

学校

,高

等学校 の)頁で割 合が高 くなっていて

,市

,郡

市 に関係 な く相談が多い とい う。 玉井収介氏 は

,登

校拒否のタイプを事例研究 をもとにして三つに分類 している。すなわち,「分離 不安群」,「優等生の息切れ」,「父親不在の男の子」と呼 ばれてい るものである〔°先にあげた事例は,

2番

目のタイプの優等生の息切れに相当すると思われ るが

,母

親 の過保護

,父

親 の放任 といった養 育態度 は

,分

離不安群 と父親不在 のタイプに もかかわ りを もっているようである。山崎道子氏 は, 玉井氏 らの類型化 を参考 にして

,神

経症的登校拒否 と呼ばれてい る群だけをとりあげ

,そ

れをさら に二つの下位群 に分類 している狐)が,これは玉井氏のあげた三つのタイプに対応するもの と思われる。

(1)A群

(分離不安群) 非常 に過保護 に養育 され

,母

子間の結 びつ きが強い。低学年児で は彗校で きないことの問題意識 が低 く

,し

たがって頭痛・ 腹痛 な どの心気症的訴 えが少 ない例 もみ られ る。親 がついて一緒 にいれ ば登校で きるもの もある。 鬱

)B群

(中核群) ある時期 まで成績 も比較的上位 に位置づけられ学校 内適応が表面化 されることはなかったが

,学

級委員 に選挙 され る とか

,転

校 などによる心理的圧力が誘因 となって登校拒否 になる場合が多い。 問題意識 は強 く

,し

たが って心理的葛藤 の状態にあ り

,心

気症的訴 えもつ よ く

,家

族 に対 し

,激

し い暴力 をふ るうケースもしば しば出現す る。 は

)C群

(父親 との同一視失敗群) 父親がいないか,Vゝつ も弱い存在で

,男

性の同一視 のモデルにな らない。ある時期 までは問題 を もちなが らもどうにか登校 しているが散発的 に休みはじめ

,

しだいに完全拒否 とな り

,家

庭 に閉 じ こもり

,夜

と昼 を逆に した生活 をす るようになる。 山崎氏 はまた と くに

C群

(父親 との同一視失敗群)と登校拒否 児 の発 生 に関 心 をもち

,慢

性重症 例 を対象 にして父親像 を分析 してい る。 その結果す この場合の父親像 は弱々 しく

,父

親 としての権 威 の欠如が顕著であ り

,二

人以上 の発生 をみてい る家 族 の 父 親 像 は「変 り者」で代表 され

,対

人関 係の障害 と社会的孤立がめだっていた とい う。 とくに後者の場合

,両

親間の相補機能が きわめて低 く

,子

どもは父親か らも母親か らも支持が得 られず不安 を招 きやす く

,こ

こに登校拒否児が二人以 上発生する基盤が あるとした♂) 鹿児島県教育 セ ンターでは

,昭

和56年間 に合計114件の登校拒否関係 の面接相談 (全体 の

37%)が

(8)

小林洋一郎:少年非行の実態 と教育 の問題 あつた との ことであるが

,同

セ ンターの有馬研究主任 は

,子

どもの生育歴 と登校拒否が深 く関係 し ていることを指摘 し

,登

校拒否児の特徴 を分析 してい就)同研究主任 は ,と くに母子分離不安症 につ いて,「何かの事情で父親が不在 だった り

,父

親 と子 どもの接触がなかった り

,あ

るいはやさしい父 親が増 え過 ぎた りしてい る状況の中で

,母

親 との結 びつ きが強 ま り

,子

どもの教育 に `厳 しさ″が 不在 している。 これ は,子どもの精神形成上極 めて大 きい針)と述べてい るが,きわめて重要な指摘で ある。

4.非

行 の発 現 過 程 と教 育 校 内暴力 と登校拒否の実態 をい くらか明 らかにしてきたつ もりであ るが

,こ

れ らの問題行動の発 現過程 をどのように とらえるかによって

,教

育的な対応 も可能 になると思われるのである。青少年 白書が指摘 しているように

,現

代青少年のパ ースナ リティーの変容 を一つの背景 として

,様

々 な要 因が働 いて現実に非行 が発現す るもの と考 えられる。同書では

,非

行 の背景

,要

因 として

,誘

発的 要因 と抑止的要因を想定 し,両者の均衡が崩れた ときに実際 に非行が発生す るとの考 え方に立 って, 非行の発現過程 を考察 しようとしていなPまず,誘発的な要因には,内的な もの と外的な ものがあ り, 内的な誘発的要因 としては

,劣

等感

,疎

外感等の個人の心理的状況 をあげることがで きる。劣等意 識の結果 として起 って くる問題行動について

,池

田美彦氏 は

,二

つに大別 していると° 第一のタイプは

,劣

等意識が強 まるにつれ て逃避の傾 向を示 し

,家

に閉 じ込 もった り

,登

校 を拒 否す るようになる内向するタイプである。 第二のタイプは

,劣

等意識の補償 として攻撃性 を強め

,反

抗 や暴力的言動 を示すようになるタイ プである。 第二のタイプは

,劣

等意識か ら逃がれ

,仲

間か ら認め られたい とい う気持 ち(自己顕示)と

,さ

び しさ

,心

細 さか ら自己 を守 るためにグループを作 った り

,そ

れに加 わった りするタイプである。 また

,社

会的疎外感が もとで非行化の徴候 を示す場合 としては

,親

子関係 の不適切や兄弟間での 被差別感 な どか ら

,家

族内での疎外感 を強めてい く場合や友人関係 の適応 に失敗 して駅立 し

,学

校 外や盛 り場集団 に友達 を求 めた り

,あ

るいは家に閉 じこもるなどの非社会的な問題行動などを示す 場合がある 『 ) 次に

,外

的な誘発的要因 としては

,俗

悪な出版物

,看

,デ

ィスコ

,ゲ

ームセ ンター等のいわゆ る有害環境 やスーパーマーケ ッ ト

,駅

前 自転草置場等の非行 を誘発 しやすい環境

,不

健全な交友関 係

,非

行 を容認する風潮等が考 えられ るのである。 青少年 白書は また

,非

行の抑止的要因 について

,内

的な もの と外的 な もの とに分 けて考察 してい る。 岡堂哲雄氏 によると

,抑

制理論 は

,内

的統制 システム と外的統制 システムとによって行動 を説 明 しようとするもので

,強

い内的な抑制力 とそれを強化する外的な抑制力が

,規

範か らの逸脱 (構 造的なゆがみで もな く

,心

理的偏衛で もない),すなわち社会的法的 な行為基準の侵犯 に対 しての絶 縁体 を形成する と仮定 されているものであるρ 内的抑制力は

,主

として人 の自己因子か らなり

,自

己統制力

,欲

求不満耐性のかた さ

,責

任感 と いった行動 を内的に規制す るものである。 外的抑制力 とは

,人

の直接的な社会環境 における構造的な緩衝帯の ことで

,そ

の人 の行為基準の 制度的強化(法規制)が あ り

,効

果的な指導や躾(社会的統制)があ り

,社

会的に受容 され

,一

体 感や 所属感 を経験する機会があることなどによって規定 されるもの とされている。

(9)

鑢幹八郎氏 は

,家

族 と非行 との関係 を重視 した非行への心理的四過程 を図式的 に示 している♂' 第2図において

,A過

程 は家族か ら少年が弾 き 出され る過程 であ り

,家

族病理の観点か らもっと も重要視 され る。次に

B過

程がある。少年 は学校 状況か らも弾 き出 され る。 また

,家

族状況 と学校 状況あるいは職場か ら弾 き出された少年 の欲求充 足の過程 が

C過

程である。ここで得 られた ものは, 自分で満足するか

,友

人 に分 け与 えられ る。 これ が

D過

程である。 これ ら四つの過程 は相互的 な も のであるが

,少

年の場合一方向 となっている とこ ろに特色がある とされている。

A過

程 において は

,結

,少

年の否定的同一性 の感覚が家族 の分裂機制 を促進 させ

,そ

の結果, たった一人の異分子的悪者である少年 は家族の一 員 として安定することがで きず

,家

か ら弾 き出さ れる というものである。 そして

,B過

程 および

C

過程 を経てはじめて

,非

行 として行動化 され るの である。 しか し

,場

合 によっては

,行

動化傾向 は

B過

程 と

C過

程で修正 され ることが あ りうるので あるが

,そ

の メカニズム を

B過

程 に求 めると次のように要約 され る。

(1)学

業不振 や特異な行動 は交友 を難 か しくし

,孤

立 しやす くす る。

(2)お

とな し く孤立児 となるか

,暴

力 にものを言わせてつっぱ りをはじめる。 しか し

,い

ずれ も やがて分裂の機制 に支 えられ

,こ

れに呼応す る否定的同一性 をクラス と学校 か ら与 え られ

,本

人 も 受 け入れ る。 これ らが学校状況か らのはみ出 し

,あ

るいは弾 き出 されの要素 となる。 ●

)も

,特

定の信頼する友人が出来た場合

,あ

るいは信頼できる教師に出合 った場合

,こ

の分 裂の力動の修正 も可能である。

14)し

か し

,一

般 に(3)の機会 は多 くない。 また

,教

科中心主義教育体制 は

,生

活指導の時間的精 神的余裕 を教師に与 えない。

B過

程 は,非行の発生 と学校生活の状況 との関係 を分析 した ものである と思われ る。このように, 非行 の発現する過程 を

,家

庭 お よび学校か らの分裂の機制 による弾 き出 しの論理 で一般的 に説明 さ れている ところに意義がある。 ところで

,非

行 をどのように とらえるか とい う点 に関 しては

,W.ヒ

ー リーが提唱 した といわれ る一つの非行理論 に共感 を覚 えるのである。すなわ ち,「非行 も他の行動 と同様 に

,非

行少年 自身 に とっては意味ある自己実現の一つの変型であって

,彼

らの願望や欲求や衝動 が障害因子のために正 常 な方向か らはずれて非行 とい う行動 に代償 を求 めるのであ り

,こ

の障害因子 の主 な ものは家庭の 人間関係であるぎ)とい うものである。この ような観点か ら非行 を抑制す るための根本的な対策 は,家 庭 においては

,父

母の役割に応 じた養育態度 のあ り方 を考 えなが ら

,暖

かい人間関係 を実現 してい くことに求め られ るのである。 学校教育 においては,「学校生活の不適応が非行 と密接 な関係 にあな」とい う観点か ら

,教

師 は, 一人ひ とりの児童・生徒の心 を開かせて理解 し

,教

師 と児童 。生徒相互間の好 ましい人間関係づ く りを軸 に して

,個

別化学習 を基本 にしたわかる授業 を創造 してい くことが必要なのである。 第2国 家,学校か ら弾 き出 され 社会的誘発物への近 づ き 社会的誘発物 ・ (鑢 幹八郎 による)

(10)

小林洋一郎:少年非行の実態 と教育の問題 〈註 〉

1)樋

口幸吉,「非行傾向 とはなにか」,上出弘之・ 伊藤隆二編,『非行傾向のある子 ども』,福村出版,1982年, p 18 2)『青少年白書』,日召和57年版,総理府青少年対策本部編,昭和58年

,p203

3)同

,p204

4)同

書,p.204 5)「少年非行概況J,鳥取県警察本部刑事部少年課,昭和58年2月

,p2

6)「日本海新聞J,1983年3月29日付 7)『子 ども白書』,1981年版,日本子 どもを守 る会編,1981年7月

,p259

8)清

水将之,「暴力」,山中康裕編,『問題行動』, 日本文化科学社,1982年

,p56

9)「朝 日新聞」,東京版,朝刊,1982年7月19日付 10)『青少年白書』,前掲書

,p73

11)清水将之,前掲書

,p57

12)『青少年 白書』,前掲書,p.133 13)山崎道子,「登校拒否 と家族」,カロ藤正明他編,講座 『家族精神 医学』,弘文堂,昭和57年

,p214

14)玉井収介,『登校拒否』,教育 出版,1981年,彼は,この著書の中で,登校拒否 に関す る最初の レポー ト「学 校恐怖症 の研究」 を共 同で出 したのは昭和35年であ るが,その後急激 に登校拒否に関す る報告や相談 が増加 してい ると述 べてい る。 15)山崎道子,前掲書,p.216 16)同書,p.218 17)「学校教育相談 の進 め方(1乃 ―登校拒否の理解 と指導―,鳥取県教育研修 セ ンター,昭和56年9月刊

,p2

18)「朝 日新聞」

,東

京版,朝刊,1982年5月12日付 19)「日本海新聞」,1983年4月12日付 20)玉井収介,前掲書,pp 17∼47 21)山崎道子,前掲書,pp 221∼222 22)同書

,p220

23)「鹿児島新報」,朝刊,1982年4月26日付, 24)同上 25)『青少年 白書』,前掲書,pp 17∼23 26)池田美彦,りF行傾 向の早期発見」,上出弘之 。伊藤隆二編,『 'F行 傾 向のある子 ども』,福村 出版,1982年, pp.101∼102 27)同書,pp.103∼104 28)岡堂哲雄,「非行傾 向 のある子 どもの治療教育:理論」,上出弘之・ 伊藤隆二編,『非行傾 向のあ る子 ども』, 福村出版,1982年

,p142

29)鑢幹八郎,「家族危機 と少年非行」,カロ藤正明他編

,講

座 『家族精神医学』,弘文堂,昭和57年,pp.405∼409 30)武村信義,「非行の原因」,上出弘之・伊藤隆二編,『非行傾向のある子 ども』,福村 出版,1982年,p.80 31)「 内外教育」

,昭

和56年12月 18日付,愛媛 県教育委員会 は,公立小 。中・ 高・ 特殊教育校 のすべての児童・ 生 徒・ 保護者・ 教員約54万人 を対象 に『健全育成 に関す る意識調査』 を実施 した結果,子ども,親

,教

師 の間 に大 きな意識 のずれがあることがわか り,また,「学校生活の不適応が非行 と密接 な関係 にあるJとい う認識 にもとづいて,学校教育へ とりくむ ことを求 めてい る。 (昭和58年4月30日受理)

(11)

238,830ノ碇 一 〈戦後第2 の ピーク〉 東京オ リンピッ│ く戦後第 1の ピーク〉 O朝鮮戦争の翌年 O戦後の混乱 と経済的困窮 ○窃盗等の財産犯罪が多い 〇年長少年が多い の年

1

0高度の経済成長 に 伴 う都 市 化 の 進 展・ 核家族化 。戦 後 の ベ ビー ブ ー ム・ レジャー ブー ム

〈戦後第 3の ピーク期形成〉 ○石油ショックと経済環境の変化 (高度成長→安定成長) O核家族化・ 少子家族化・ 共働 きの増加 ○国民の意識・ 価値感の多様化 O進 学率の向上 ○テレビの普及 。雑誌のはんらん Oス ーパーマーケット・ 自転車 。オー トバイ の増加―初発型非行 ○非行 の低年齢化が顕著 となった 瓢 聟 澪 報 畔 珊 報 襲 ヨ 沸 鵡 吟   蝉 珊 せ =   糾 朗 餅 補 導 人 員 ︵本 県 ︶ 補 導 入 員 ︵全 国 ︶ 166,433ノ( 一 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 資料出所 ○凶悪・ 粗暴 犯が多 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 鳥取県警察本部刑事部少年課 「少年非行概況」(昭和57年)

(12)

参照

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