裁判員就職禁止事由に関する一考察--なぜ、法律学の大学教授と准教授は裁判員になることができないのか?---香川大学学術情報リポジトリ

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裁判員就職禁止事由に関する一考察

−なぜ、法律学の大学教授と准教授は裁判員になることができないのか?−

香川大学教育学部 髙 倉 良 一

Ⅰ.はじめに Ⅱ.制定経過 Ⅲ.裁判員制度・刑事検討委員会での議論 Ⅳ.検討 Ⅴ.おわりに

Ⅰ.はじめに

 国民が裁判員として刑事裁判に参加する裁判員制度は、平成21年5月21日から実施される予定である。 この裁判員制度では、衆議院議員の選挙権を有する国民の中から裁判員が選ばれることになっている(裁 判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)第13条。以下、裁判員法と表記する)(1)  裁判員に選任された者は「法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない」(裁判員法第9条 第1項)と規定され、「裁判員は、第70条第1項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏 らしてはならない」(裁判員法第9条第2項)との守秘義務が課される。また、「裁判員は、裁判の公正さ に対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない」(裁判員法第9条第3項)とされ、「裁判員は、 その品位を害するような行為をしてはならない」(裁判員法第9条第4項)と規定されている。  さらに、「評議の秘密その他の職務上知りえた秘密を漏らした」場合には6月以下の懲役又は50万円以 下の罰金(裁判員法第108条)が、「正当な理由がなく第39条第2項の宣誓を拒んだとき」(裁判員法第112 条3号)、「正当な理由がなく、公判期日又は公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問若しく は検証の日時及び場所に出頭しないとき」(裁判員法第112条4号)、「正当な理由がなく、公判期日に出頭 しないとき」(裁判員法第112条第5号)には、それぞれ10万円以下の過料が課されると規定されている。  このように、裁判員に選任された者に対してはさまざまな義務が課されている。そのため、「相当に堅 苦しい義務規定であることは確かである」との指摘(2)だけではなく、「罰則をもって裁判員の任務を強制 するのは、憲法18条が禁ずる『その意に反する苦役』を服させる場合に該当すると言わねばなるまい」と の指摘もなされている(3)  ところが、裁判員法では裁判員に選任されない者も規定されているのである。裁判員法では、「裁判員 となることができない」とされる欠格事由(裁判員法第14条)に該当する者と、「裁判員の職務に就くこ とができない」とされる就職禁止事由(裁判員法第15条)に該当する者、「当該事件について裁判員とな ることができない」とされる不適格事由(裁判員法第17条)に該当する者、ならびに、裁判員法第16条に 基づき裁判員の辞退の申し立てをした者で、裁判所が「同条各号に揚げる者に該当する」(裁判員法第34 条)と認めた者、検察官および被告人から「理由を示さない不選任の請求があった者」(裁判員法第36条) は、裁判員には選任されないのである。

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 これらの規定の中で注目を要するのは、就職禁止事由を定めた規定ではないかと思われる(4)。特に、 裁判員法第15条第15号で「学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教 授」が裁判員に就職することが禁止されていることは、「実務家法曹でもない大学教員などを『法律の知 識を持っている』という理由で排除することには、どのような意味があるのだろうか」と指摘されてい る(5)  本稿では、なぜ、法律学の大学教授と准教授(以下、「大学教授」と表記する)が裁判員としての就職 を禁止されるのかという点に焦点を絞って検討することにしたい(6)。結論を先取りして述べるならば、 「大学教授」を就職禁止事由に定めた点に裁判員制度の本質を考える上での重要な手掛かりが含まれてい るのではないかと思われるからである(7)

Ⅱ.制定の経過

 平成13年6月に、司法制度改革審議会(以下、審議会と表記する)の意見書(8)が内閣に提出された。 この意見書の中で、「刑事訴訟手続において、広く一般の国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働 し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる新たな制度を導入すべきである」との提言 がなされた。  この提言を受けて平成13年12月に、政府は司法制度改革推進本部(以下、推進本部と表記する)を設置 した。そして、推進本部の事務局の下に11の検討会が設置された。これらの検討会の中で、裁判員制度に ついては裁判員制度・刑事検討会(以下、検討会と表記する)が担当することになり、刑事裁判に国民が 直接参加する制度が検討されることになった。  検討会の委員には、池田修氏(東京地方裁判所判事)、井上正仁氏(東京大学教授)、大出良知氏(九州 大学教授)、清原慶子氏(東京工科大学教授、途中で三鷹市長に就任)、酒巻匡氏(上智大学教授)、四宮 啓氏(弁護士、日弁連司法制度改革調査室長)、髙井康行氏(弁護士、元検察官)、土屋美明氏(共同通信 社論説委員)、中井憲治氏(最高検察庁検事、途中で転任したため同じ役職の本田守弘氏が交代した)、平 良木登規男氏(慶応義塾大学教授、元裁判官)、廣畑史朗氏(警察庁刑事局刑事企画課長、途中で転任し たため同じ役職の樋口健史氏が交代した)の各氏が就任した。  これらの委員については、「人選はすべて事務局の意向で決められ」、「しかも大半は『官』側と分類で きる人選には、批判も寄せられた」ばかりか(9)、「制度づくりに司法関係者の考えが優先され」ることに なり、「問題点や課題を残した」との指摘(10)や、「法律専門家中心の検討会における制度設計では司法に 参加する国民の目線を生かした議論が欠けていた」との批判(11)がなされた。  この検討会は、推進本部事務局が具体的な法令案の立案作業をする上での参考となる議論をするものと 位置付けられた(12)。その結果、検討会は裁判員法の立案作業をする事務局の「知恵袋的な存在」(13)であ るとみなされた。  検討会での主な検討事項は、「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」、「刑事裁判の充実・迅速化」、 「公訴提起の在り方」の3つとされ、平成14年2月28日から平成16年7月6日にかけて議論がなされた。  この中、裁判員制度については「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」に関する事項とされ、第2 回検討会で配布された「裁判員制度・刑事検討会における当面の論点」(以下、「論点メモ」と表記する)と、 第13回検討会で事務局から配布された「裁判員制度について」(以下、「たたき台」と表記する)、それから、 第28回検討会で座長が配布した「考えられる裁判員制度の概要について」(以下、「座長ペーパー」と表記

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する)に基づいて議論が展開された。  そして、第31回検討会で事務局が作成した「裁判員制度の概要(骨格案)」(以下、「骨格案」と表記する) が示された後、2004年3月に、この「骨格案」をベースにして推進本部事務局が「裁判員の参加する刑事 裁判に関する法律案」(以下、法律案と表記する)を作成した。内閣は、この法律案を第159回通常国会に 提出した。この法律案は2004年4月23日に衆議院本会議で可決され、同年5月20日に参議院本会議でも可 決された。そして、2004年5月28日に公布され、2009年5月までに施行されることになったのである(14)

Ⅲ.裁判員制度・刑事検討委員会での議論

 裁判員の就職禁止事由について、どのような議論が検討会ではなされたのであろうか。以下、この問題 が討議された検討会の議事録(15)を、就職禁止事由全般と「大学教授」に関する事項の議論に焦点を絞っ て概観することにしたい。 ① 第5回検討会(平成14年7月10日)  最初に、就職禁止事由が検討されたのは第5回検討会であった。まず、「論点メモ」(16)に記載された「3 裁判員の選任方法」の内容が紹介された。この「論点メモ」には、「裁判員の選任方法をどのようなもの とするか」という事項とともに、「裁判員の選任については、選挙人名簿から無作為抽出した者を母体と し、更に公平な裁判所による公正な裁判を確保できるような適切な仕組みを設けるべきである。裁判員 は、具体的事件ごとに選任され、一つの事件を判決に至るまで担当することとすべきである」との審議会 の意見が記載されていた。  井上座長は、検討会の冒頭で審議会の意見を前提としつつ、「審議会の意見は、既存の制度を参考にし たわけですが、欠格とか除斥、忌避制度等を例示しております。そういうものを念頭に置きながら御議論 いただいても結構ですし、それ以外にもこういうことが考えられるのではないかというアイデアがおあり でしたら、お出しいただいても結構です」と述べた。  そして、「就職禁止事由」については、座長が選任段階の概念整理として、「一般的に大きく分けると二 段階あって、個々の事件と関わりなく、一律に資格ないし適格がない、あるいは辞退を認めるべき事由が あるので除外するというのが一つの段階だと思うのです。検察審査会の場合ですと、欠格と辞退のほかに もう一つ、『就職禁止者』というのがあって、これは公職に就いているような人はなれないというもので すが、これも欠格の一種だとすれば、欠格と辞退という二つがあって、これは一般的・一律に適用される ものです。もう一つは、個々の事件との関わりで問題となることで、こういう関係や地位にいる人が就い てもらっては困るというのが除斥であり、個々の候補者ごとに見て、その公正さに問題があると判断さ れ、あるいは、当事者が理由を示さずにこの人はちょっと御勘弁願いたいとして、除外するのが忌避とい うことだと思うのです」と発言した。  この発言に対しては、委員からは「検察審査会法に書かれている欠格事由、就職禁止、除斥、辞職、い ろいろなものが出てきていますけれども、やはりこれは基本だと思うのです。これは、旧陪審法でもほぼ 似たようなものがありましたし、ドイツの陪審、参審でも同じようなことが規定されているんです。そう いうところを見ると、むしろこれを基本にして、これに何を付け加えるか、あるいはこれから何を削って いくかという作業の方がいいのではないかという気がします」と支持する意見が出された(17)

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 この回の検討会では、この発言以外には就職禁止事由に関する意見は表明されなかった。 ② 第15回検討会(平成15年4月8日)  この回では、第13回検討会で配布された事務局作成の「たたき台」(18)をめぐる議論がなされた。この「た たき台」は、「事務局において、これまでの本検討会における議論を踏まえ、今後の具体的な制度設計に 向けた議論のたたき台とするために作成したものであるが、ここに記載されていない案を議論の対象とす ることを否定するものではない」とされた。  「たたき台」の中では、「(3)就職禁止事由」の「ア職業上の就職禁止事由」として、「(ア)国会議員、(イ) 国務大臣、(ウ)国の行政機関の幹部職員、(エ)都道府県知事及び市町村長、(オ)自衛官、(カ)裁判官及び 裁判官であった者、(キ)検察官及び検察官であった者、(ク)弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下同 じ。)及び弁護士であった者、(ケ)裁判所の職員、(コ)法務省の職員、(サ)国家公安委員会委員、都道府県 公安委員会委員及び警察職員、(シ)司法警察職員としての職務を行う者、(ス)弁理士、(セ)公証人、(ソ) 司法書士、(タ)判事、判事補、簡易裁判所判事、検察官又は弁護士となる資格を有する者、(チ)大学の学 部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は助教授、(ツ)司法修習生」が、「裁判員となることができない ものとする」とされた。  これらの職種を裁判員の就職禁止事由に掲げた理由については、「たたき台」の説明資料として配布さ れた文書の中で、「(3)就職禁止事由ア職業上の就職禁止事由」の中で、「アでは、職業等に照らして、裁 判員となることが適当ではないと考えられる者を、(ア)から(ツ)まで掲げているが、大きく二つの観点に よるものである。一つは、三権分立の観点から、立法権や行政権の中枢を担う者が、司法権を担う裁判員 となることは適当ではないという考えである。例えば、国会議員、国務大臣等が、この考え方によるもの である。もう一つは、一般国民の社会常識を反映するという観点から、司法の専門家が裁判員となること は適当ではないという考えである。例えば、裁判官、検察官、弁護士等がこの考え方によるものである」 との説明がなされた。  井上座長は、就職禁止事由に関しては「基本的な考え方としてどのように考えるべきかにつき御意見を 伺いたいと思います」と前置きし、個別的な事項については、大きな考え方の「例示としてこういう事項 を掲げるのはいかがなものかということを指摘していただく」と提案した。その結果、この回では基本的 な考え方を中心にした議論が展開された。  「たたき台」に賛成する意見を述べた委員は酒巻委員と高井委員と本田委員である。  酒巻委員は、「就職禁止事由が数として広くなるのはやむを得ない」と述べ、裁判員制度の「趣旨は、 一般国民の健全な社会常識を刑事裁判に反映していこうという」ものであるとし、「『一般国民』という意 味は、職業裁判官と協働するという観点からいって、法律の専門家でない、プロフェッショナルでない人 を加えて、新たな裁判体を創る」ものであると述べ、「司法権の行使あるいは刑事司法作用に密接にかか わる法律のプロ、あるいはその周辺の人たちが裁判員として関与するというのは、制度趣旨からいって望 ましくない」と述べた。  高井委員は、「結論的には酒巻委員の御意見に近い」と前置きした上で、「プロの裁判官に対して法律の 素人の意見を入れるということによって、より確かな認定に至ろうとするということです。そういう意味 では、法律職はやはりまずい」と発言した。  本田委員は、「三権分立の観点、もう一つは、一般国民の健全な社会常識を反映させるのだという観点

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からすれば、こういったたたき台のスタンスは十分肯定できる」と述べた。  以上のような賛成意見に対して、就職禁止事由が広過ぎると述べた委員は土屋委員と大出委員である。  土屋委員は、「たたき台で挙げられている就職禁止事由の禁止の範囲は広過ぎる」ので「もっと絞るべ きである」と述べ、その理由を「裁判員制度というのは、広く国民的な基盤を持った制度にすべきである」 と説明した。そして、「司法関係者は、職種によって一律に除く考え方が強く出ていますけれども、そこ はもうちょっと疑問で、具体的な刑事裁判との関連性において吟味する必要があるのではないかと思いま す。基本的には、裁判官と、刑事裁判の関係者は、捜査も含めて別として、それ以外の方はできるだけ参 加していただくという方がよかろうと思います」と述べた。  大出委員は、「禁止事由はちょっと広過ぎる」とし、「法律専門家という点については、裁判に直接かか わりがあるような職務に就いている人たちは、それは国民が広く参加するということの持っている意味か らいって、そこは除外する必要があると思います。それは、警察関係の方たちも含めてということになる と思いますけれども、それ以外は除外しなくてもいいのではないか」と述べた。  四宮委員は、就職禁止事由全般についての意見は表明しなかったものの、「基本的には、法律専門家だ からといって禁止をする必要はない」と述べ、その理由を「裁判員制度というのは国民主権に基づく制度 だというふうに考えます。そうだとすると、それに参加する人が法律家であってはならないということに はならない」と説明した上で、「アメリカでは職業による禁止事由というものを撤廃する動きが急速に広 まっております。今、30州になろうとしていると思いますけれども、そこでは、裁判官も検察官も弁護士 も実際に陪審員に選ばれて仕事をしているという例がたくさんあります。そういう人たちに話を聞くと、 そこに入るのは法律家として入るのではなくて、陪審員として入るのだというふうに言っておりますし、 ほかの陪審員たちもそのような仲間としての議論をしているようであります。しかも、今度は裁判官がそ の評議の中にいるわけですので、そういった議論の調整というものも十分できるのではないか」と発言し た。  この回の検討会では、就職禁止事由をどのように捉えるかという各委員の基本的な考え方の違いが明ら かになった点は注目される。しかし、議論の内容は各委員の意見を表明するだけのものであったように思 われる。 ③第24回(平成15年9月11日)  この回では、第13回の検討会で配布された「たたき台」に関して、前回までの議論を踏まえた「おさら いの議論」(19)がなされた。  井上座長は就職禁止事由について、「この項目に関しましては、たたき台の案が基本的に妥当であると いう御意見がある一方、就職禁止事由はより限定的なものとすべきであるという御意見もあったと記憶し ておりますけれども、この点について更に御意見があれば、お伺いしたいと存じます」と述べた。その結 果、第15回の検討会で意見を述べた委員を中心に、主に各自の主張を補足するような意見が述べられた。  賛成の立場から高井委員は、「原案どおりでいいと思っているのですが」、「地方議会議員も就職禁止事 由に含めるべきだ」と述べ、「それ以外に修正すべき意見はありません」と発言した。  酒巻委員は、「全体の基本的な発想はたたき台の方向で結構だと思います」と述べた上で、「一つだけ要 点を言いますと、法律の専門家は就職禁止事由に入れるべきであると思います。これは裁判員制度の趣旨 と直結する事柄だと思います。法律家でない一般国民の健全な社会常識の導入という趣旨からいって、法

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律家が入ることはおかしいと思っております。法律家にはもちろん弁護士、裁判官、検察官すべてが含ま れるということになります」と発言した。さらに、井上座長から「大学教授はどうでしょうか」と問われ ると、「たたき台には入っているんですね。要するに法律のプロフェッショナルは除外すべきであるとい うことだと思います」と述べた。  本田委員は、「たたき台は、酒巻委員が言われた法律家以外の者が裁判員になるべきであるという点と、 もう一つは、三権分立との観点からの就職禁止の二つの観点から書かれていると思うんですけれども、こ ういった観点から言うとたたき台の案で相当だろうと思います」と述べた。  平良木委員は、たたき台については「これで構わない」と述べた。  第15回の検討会で広過ぎるとの意見を述べた土屋委員は、「法律の専門家の方が除外されるという考え 方は分かるのですけれども、ただ、およそ法律に少しでも関係していれば、全部除外してしまうというの はいかがなものかなと思っています」と述べ、「どう見ても適当でないと思われるようなことがあれば、 忌避などの制度でもって対応すればいいのではないでしょうか。最初から除外するという考え方には抵抗 を覚えております」と発言した。  同様に広過ぎるとの意見を述べた大出委員は、「その意見については変わっていません」と発言し、「法 律家も構わないと思う」と述べた。そして、井上座長から「大出委員とか私のような大学の先生は……」 と質問されると、「私はやりたいです」と述べた。井上座長から「自分がやりたいかどうかは別問題でしょ う(笑)」と指摘されると、大出委員は、「だから、やれるようにしておいて……」と発言した。  第15回の検討会では就職禁止事由全般についての意見を明らかにしなかった四宮委員は、「私はちょっ とドラスチックですけれど、この就職禁止事由を設けなくていいという意見です」と述べた。そして、す べては「辞退事由でやる。それから、あとは忌避でやるという意見です」と発言した。法律家に関しても、 「法律家もそれはそれで理由は分かるのですけれども、私の意見では、原則としてこの有資格者は国民と して選ばれれば、それで仕事をしていいという考え方です」との意見を表明した。この点について、井上 座長が「法律家の場合、個人の立場と法律専門家であることとは実際上切り離せないですよね。それでも いいという御意見ですか。国民として加わるのだから、国民として意見を述べればいいということなので しょうが、そういうふうに本当に切り分けられるのかどうか、疑問なのですけれども」と質問した。する と四宮委員は、「切り離せるのではないでしょうか」と答えた。  この回については、全体的には「議論は深まったとはいえるが、各委員とも自説を主張するのみで、意 見がまとまる気配はなかった」(20)と指摘されているが、就職禁止事由に関しても同様ではないかと思わ れる。 ④第28回(平成15年10月28日)  第28回検討会では、井上座長が作成した「座長ペーパー」(21)をめぐって議論がなされた。  「座長ペーパー」では、「2裁判員及び補充裁判員の選任(3)就職禁止事由ア職業上の就職禁止事由」 との項目で、「(ア)国会議員、(イ)国務大臣、(ウ)国の行政機関の幹部職員、(エ)都道府県知事及び市町 村長、(オ)自衛官、(カ)裁判官及び裁判官であった者、(キ)検察官及び検察官であった者、(ク)弁護士 (外国法事務弁護士を含む。以下同じ。)及び弁護士であった者、(ケ)裁判所の職員、(コ)法務省の職員、 (サ)国家公安委員会委員、都道府県公安委員会委員及び警察職員、(シ)司法警察職員としての職務を行う 者、(ス)弁理士、(セ)公証人、(ソ)司法書士、(タ)判事、判事補、簡易裁判所判事、検察官又は弁護士と

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なる資格を有する者、(チ)大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は助教授、(ツ)司法修習生」 は、「裁判員となることができないものとする」と記載されていた。  この「座長ペーパー」の就職禁止事由について井上座長は、「今回の案も、個々の職業について逐一検 討した上のものではなくて、その点については、今お話したように、今後、条文化の作業において更に法 制的な面等を含めて検討がなされるということを前提としまして、むしろ基本的な考え方、方向性を示し たものと受け取っていただければと思います。そのような観点からしますと、検討会の議論では、たたき 台の基本的な考え方そのものについては、それでいいのではないかという意見が多数を占めたように思わ れます。私なりに考えましても、その二つの観点から就職禁止事由を設けるという基本的な考え方には理 由があると思われましたので、現段階の案としては、たたき台の案をそのまま採ることにしたものであり ます」と説明した。  そして、井上座長は「すべての論点について、また同じような議論を繰り返してもしようがありません から、ポイントを絞って議論していただければと思います」と述べ、「更に議論をしていただいた方がよ いと思われる項目を私の方でまず挙げて、それについて議論していただいた上で、更に委員の皆さんが、 この点も議論すべきではないかということがあれば、それを挙げていただいて議論する、そういう形で進 めさせていただいてはいかがかと思う」と提案した。  この回では、井上座長が挙げた議論すべき項目の中には就職禁止事由は含まれていなかった。また、各 委員からも言及されることはなかった。 ⑥第31回(平成16年1月29日)  第31回の検討会では事務局が作成した「骨格案」(22)が配布された。  この「骨格案」では、「(3)就職禁止事由ア職業上の就職禁止事由」として、「(ア)国会議員、(イ)国務 大臣、(ウ)国の行政機関の幹部職員、(エ)都道府県知事及び市町村長、(オ)自衛官、(カ)裁判官及び裁判 官であった者、(キ)検察官及び検察官であった者、(ク)弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下同じ。) 及び弁護士であった者、(ケ)裁判所の職員、(コ)法務省の職員、(サ)国家公安委員会委員、都道府県公安 委員会委員及び警察職員、(シ)司法警察職員としての職務を行う者、(ス)弁理士、(セ)公証人、(ソ)司法 書士、(タ)判事、判事補、簡易裁判所判事、検察官又は弁護士となる資格を有する者、(チ)大学の学部、 専攻科又は大学院の法律学の教授又は助教授、(ツ)司法修習生」が示された。しかし、これまでの「たた き台」や「座長パーパー」とは異なり、「次に掲げる者は、裁判員となることができないものとするとす ることが考えられるが、具体的な事由について更に検討するものとする」との付記がなされた。  検討会では、最初に辻参事官が骨格案の内容を説明した。辻参事官は、就職禁止事由については、 「『(3)就職禁止事由』のアの『職業上の就職禁止事由』です。ここは(ア)から(ツ)まで職業を列挙してお ります。この点は、たたき台や座長のペーパーと変わっておりませんけれども、柱書きに『次に掲げる者 は、裁判員となることができないものとすることが考えられるが、具体的な事由について更に検討するも のとする』と記載いたしました。列挙されている職業については、就職禁止事由とすべきであるというふ うに基本的に考えられるところでありますが、更に法制的な観点も加えた検討も必要であると考えられま すところから、現時点ではこのようなことにいたしております」と説明した。  この検討会では、池田委員から「事務局骨格案についての意見」が文書で提出された。この文書には、 「就職禁止は、効果としては、類型的な義務免除という側面を有している。負担の平等という観点からす

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ると、就職禁止事由に列挙されているもののうち、以下のものについては、本当に就職禁止にする必要が あるのかという観点から見直す必要があると考える(辞退事由をある程度緩やかなものにせざるを得ない ことと関連する問題である。)。(ウ)国の行政機関の幹部職員(民間と較べて均衡を失していないか)(オ)自 衛官(就職禁止にする合理的な理由があるか)(ス)弁理士(上記に同じ)(セ)公証人(上記に同じ)」と記載さ れていた。  土屋委員は、池田委員の文書について、「この意見に私は全く賛成です。今、骨子で例示されている範 囲は、余りにも広過ぎるというふうに思います」と述べた。その理由として、「特に、裁判員6人とい う、この検討会で議論していた中では、かなり大きな合議体が想定されることになると、その給源とし て、かなり広い人材を確保しなければいけないんだろうと思います」と述べるとともに、「考え方として、 ちょっとバランスが取れていないかなと思うところがあるのは、例えば弁理士とか、司法書士という、い わゆる隣接法律関係職種の方たちがリストアップされていますけれども、そういう意味では、ほかに行政 書士の方もいらっしゃるし、社会保険労務士の方もいらっしゃるでしょうし、土地家屋調査士の方なんか も隣接法律関係職種としてありますね。そういう人たちが入っていなくて、弁理士、司法書士は入ってい るとか、ちょっと一貫性が取れていないんではないかというふうに私は思います。それを外せという、リ ストアップしろという意味ではなくて、逆にここに書かれている弁理士、公証人、司法書士、こういった 方たちは外して参加していただいていいんじゃないかというふうに私は思う」と発言した。  池田委員は、「就職禁止のことは、今、話題に出ましたので、もうそれで結構です。更に検討するとさ れているところですので」と述べた。  この回では、就職禁止事由に関しては委員から文書による修正意見が出されたものの、掘り下げた議論 には発展しなかったように思われる。

Ⅳ.検討

 「大学教授」を裁判員の就職禁止事由とすることについて、合理的な根拠はあるのだろうか。もし合理 的な根拠があるとするならば、裁判員法の規定に不備はないだろうか。もし合理的な根拠が見いだせない とするならば、なぜ「大学教授」は就職禁止事由に該当すると規定されたのであろうか。以下、これらの 点を検討してみることにしたい。  検討会では、検察審査会法と陪審員法のいずれにも就職禁止規定が設けられていることを挙げた司法制 度改革審議会の報告書を前提として議論がなされた。したがって、検察審査会法と陪審員法の就職禁止規 定が、裁判員法でも就職禁止事由を定める根拠とされたと考えることができよう。  では、裁判員法と検察審査会法と陪審員法では、それぞれ、どのような職種が就職禁止事由として規定 されているであろうか。  裁判員法第15条では、「次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない」と して、「①国会議員、②国務大臣、③次のいずれかに該当する国の行政機関の職員、イ.一般職の職員の給 与に関する法律(昭和25年法律第95号)別表第11指定職俸給表の適用を受ける職員(ニに掲げる者を除く。)、 ロ.一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成12年法律第125号)第7条第1項に規定す る俸給表の適用を受ける職員であって、同表7号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの、ハ.特別職の職員 の給与に関する法律(昭和24年法律第252号)別表第1及び別表第2の適用を受ける職員、ニ.防衛省の職員 の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号。以下「防衛省職員給与法」という。)第4条第1項の規定によ

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り一般職の職員の給与に関する法律別表第11指定職俸給表の適用を受ける職員及び防衛省職員給与法第4 条第2項の規定により一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第7条第1項の俸給表に定 める額の俸給(同表7号俸の俸給月額以上のものに限る。)を受ける職員、④裁判官及び裁判官であった者、 ⑤検察官及び検察官であった者、⑥弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁 護士であった者、⑦弁理士、⑧司法書士、⑨公証人、⑩司法警察職員としての職務を行う者、⑪裁判所の 職員(非常勤の者を除く。)、⑫法務省の職員(非常勤の者を除く。)、⑬国家公安委員会委員及び都道府県公 安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)、⑭判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有す る者、⑮学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授、⑯司法修習生、 ⑰都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長、⑱自衛官」を規定し、さらに、「次のいずれ かに該当する者も、前項と同様とする。」として、「①禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告 事件の終結に至らない者、②逮捕又は勾留されている者」と定めている。  検察審査会法第5条では「検察審査員の職務に就くことができない」者として、「①天皇、皇后、太皇 太后、皇太后及び皇嗣、②国務大臣、③裁判官、④検察官、⑤会計検査院検査官、⑥裁判所の職員(非常 勤の者を除く。)、⑦法務省の職員(非常勤の者を除く。)、⑧国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会 委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)、⑨司法警察職員としての職務を行う者、⑩自衛官、⑪都道府 県知事及び市町村長(特別区長を含む。)、⑫弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、⑬公証人及び司法書士」 を規定している。  陪審員法第14条では「陪審員ノ職務ニ就カシムルコトヲ得ス」とする者を、「①国務大臣、②在職ノ判 事、検察官、陸軍法務官、海軍法務官、③在職ノ行政裁判所長官、行政裁判所評定官、④在職ノ宮内官 吏、⑤現役ノ陸軍軍人、海軍軍人、⑥在職ノ庁府県長官、郡長、島司、庁支庁長、⑦在職ノ警察官吏、⑧ 在職ノ監獄官吏、⑨在職ノ裁判所書記長、裁判所書記、⑩在職ノ収税官吏、税関官吏、専売官吏、⑪郵便 電信電話鉄道及軌道ノ現業ニ従事スル者並船員、⑫市町村長、⑬弁護士、弁理士、⑭公証人、執達吏、代 書人、⑮在職ノ小学校教員、⑯神官、神職、僧侶、諸宗教師、⑰医師、歯科医師、薬剤師、⑱学生、生 徒」と規定している。  検察審査会法と陪審員法のいずれにも、大学教授については規定されていないのである。したがって、 検察審査会法と陪審員法に就職禁止規定が定められていることを根拠とすることは、裁判員法で「大学教 授」を就職禁止とするための理由とはなり得ないのではないかと思われる。  つぎに、検討会では、「大学教授」は法律関係者の一員として、裁判官や弁護士とともに就職禁止事由 と規定するとされた。この理由付けに関しては、「法律の専門家については、法律に詳しい人が裁判員に なるのであるから、一見かえって適任のようにもみえる。しかし、職業裁判官が排除される制度・場面で あれば、法律専門家が関与すれば、類似のものが加わっている結果になり、問題が残る。また、そもそも 専門家ではなく素人判断を重視しようとする基本姿勢とも合わない。やはり、これも裁判員から除くのが 筋」(23)であり、「刑事裁判に国民の意識を反映させるという観点からすると、広い意味での法律専門家が 裁判員となるのは適当でない」(24)として支持する意見も存在する。  「大学教授」を弁護士や検察官と同等とみなすことができるかどうかは別としても、もし法律専門家で あることが根拠とされるのであれば、「大学教授」を就職禁止とする裁判員法の規定には不備があるので はないだろうか。  裁判員法第15条では、裁判官、検察官、弁護士については、現職だけではなく、その職に従事したこと がある者も就職禁止事由と規定している。さらに、「判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する

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者」と司法修習生についても就職禁止と定め、裁判官などに任官する可能性のある有資格者までも含めて いるのである。  ところが、「大学教授」については、そのような規定は設けられていないのである。「大学教授」を法律 関係者であるとして就職禁止事由と規定するのであれば、裁判官、検察官、弁護士と同様に、その経験者 も含めなければ整合性を欠く事になるのではないだろうか。さらに、「大学教授」だけではなく、講師や 大学院生までも含める必要があるのではないだろうか。「大学教授」については現職のみと規定し、退職 者や、将来その職に就く可能性がある者は含めないと判断することに合理的な根拠が存在するであろう か。  しかも、裁判員法では「学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教 授」と規定している。すなわち、就職が禁止される「大学教授」は日本国内の大学の「大学教授」である ことを前提としている。外国の大学で法律学の教育・研究に従事していた者や、日本国内の高等専門学校 や省庁大学校で法律学を担当する者は含まれていないのである。専門知識を持っていることを要件として いるのであるとするならば、これらの者も就職禁止事由の規定の中に盛り込まなければならないのではな いだろうか。  以上のことから、就職禁止事由として「大学教授」を規定することは合理的な根拠を欠くとともに、か つ、裁判員法の中の他の就職禁止事由の規定との整合性が見いだし難いことが明らかになったように思わ れる。  では、なぜ「大学教授」が就職禁止事由として定められたのであろうか。この点について、五十嵐教授 は「将来の法曹である司法修習生、『大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授』まで排 除するということは、『法律の知識を持った者は排除』ということになるだろう」(25)と述べ、「客観的に 見れば、裁判官と法律の論点で互角に渡り合える者が、裁判員の中に入っては困るということにしかなら ない」と指摘している(26)  弁護士でもあるコリンP.A.ジョーンズ教授は、裁判員制度は「明らかに『法律の素人』を裁判員として 確保するための制度設計になっているのであって、『法律の素人に裁判ができるはずがない』という類の 裁判員制度批判は、したがって極めてベーシックな次元で的外れであると思う。ここにはそれなりの意図 があるはずだ」と述べ、「私の推測だが、これは裁判官のための配慮」であり、「裁判官はおそらく、法律 の内容や解釈などをめぐって裁判員と議論したくないだろう。評議で裁判員に対して『法令はこうで、解 釈はこうだから、それに従え』と 丁寧に 説明をして、裁判員が羊のようにそれに従う、という進み方 が楽なだけでなく、裁判が早く終わるというメリットもきっとある」と述べた上で、「裁判官に匹敵する ような法律知識を持っている職種の人を排除することは、裁判官の立場からすれば合理的だ」と指摘して いる(27)  同様に、日本人弁護士も「知的興味から裁判員をやってみたいと思うような法律のプロや重要な職務に ついている公務員が入らないということで、裁判官にとって裁判員はよほど扱いやすいものになるでしょ う」と述べている(28)  筆者は、2006年6月14日から16日にかけて高松地方裁判所で実施された模擬裁判に、香川県弁護士会の 推薦を受け、裁判員として参加したことがある (29)。その際、就職禁止事由は裁判官のために規定されて いるとのこれらの論者の指摘は妥当しているのではないかと感じる体験をしたことがある。  模擬裁判が開催される前日に、偶然、市内の地下通路で出会った裁判長裁判官に、模擬裁判に裁判員と して参加するとの挨拶をしたところ、彼は即座に、「やりにくいなぁ」と述べたのである(30)。さらに、模

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擬裁判の当日、法廷に向かう直前にも、私に対して「大学の先生としてではなく、裁判員としてやって下 さい」と声をかけてきたのである。  筆者は、この模擬裁判の中で連続審理の弊害や裁判官による意見誘導の実態に触れ、裁判員制度は国民 を利用する制度に過ぎないのではないかという印象を受けた(31)  もちろん、裁判官の発言と模擬裁判での印象は筆者の個人的な体験に過ぎない。しかし、筆者の個人的 な体験を手掛かりとして考えるならば、「大学教授」を就職禁止とする規定の意図は、裁判員制度の本質 を隠蔽するためではないかと指摘できる余地があるのではないかと思われる。  もしも刑事訴訟法の大家であるような大学教授が、刑に服することを覚悟の上で、実際に裁判員として 参加した体験に基づいて裁判員制度の欺瞞性を明らかにするならば、その批判は体験に裏打ちされたもの だけに大きな反響を呼ぶことになるであろう。このような事態を防止するために「大学教授」を裁判員の 就職禁止事由に該当する者と規定したと推測することは、荒唐無稽な憶測であると一笑に付されるであろ うか。

Ⅴ.終わりに

 「大学教授」を就職禁止事由に該当する者と定めることについては、合理的な根拠を見いだし得ないこ とが明らかになったのではないかと思われる。そればかりか、この就職禁止事由を設けることには裁判員 制度の本質が明らかにされることを防止する意図もあるのではないかと思われる。  裁判員法の附則第3条には、「政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施 行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する刑事 裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるよう、所要の措置を講ず るものとする」との見直し規定が設けられている。しかし、実施してから見直すのではなく、当面の間、 その実施を延期して再検討するべきではないだろうか。 注 (1) 裁判員の選任手続きの具体的な事項については、最高裁判所が「裁判員の参加する刑事裁判に関 する規則」を制定した。この規則については、裁判所のホームページで閲覧できる(http://www. courts.go.jp/kisokusyu/keizi_kisoku/keizi_kisoku_24.html)。この規則の詳細については、楡井英夫 「『裁判員の参加する刑事裁判に関する規則』の概要と選任手続の具体的イメージ」ジュリスト1340号 78頁(2007年)、西村健「裁判員選任手続きの概要」自由と正義59巻2号83頁(2008年)参照。 (2) 田口守一「裁判員の要件−選任方法、辞退事由等を中心として−」現代刑事法6巻5号8頁(2004 年)。 (3) 石川多加子「裁判員制度に関する憲法的考察」金沢大学教育学部紀要(人文科学・社会科学編)57 号71頁(2008年)。なお、裁判員が苦役に該当するか否かについては、西野喜一『裁判員制度の正体』 (講談社、2007年)89頁、緑大輔「裁判員制度における出頭義務・就任義務と『苦役』−憲法18条と の関係」一橋法学2巻1号305頁(2003年)、同「裁判員の負担・義務の正当性と民主主義」法律時報 77巻4号40頁(2005年)参照。 (4) 米国籍の弁護士であり、同志社大学の法科大学院教授を務めるコリンP.A.ジョーンズ氏は、「裁判 員の資格に関して、私が一番面白く思うのは、裁判員法第15条に規定されている『就職禁止事由』で

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ある。つまり、事件に関係しているなどの不適格事由はなくても、その『身分』ゆえに裁判員にな れない人々がいるのである」と述べている(『アメリカ人弁護士が見た裁判員制度』156頁(平凡社、 2008年)。 (5) 五十嵐二葉『説示なしでは裁判員制度は成功しない』28頁(現代人文社、2007年)。 (6) 本稿では、司法制度改革推進本部の下に設置された裁判員制度・刑事検討委員会での議論を中心に 検討する。推進本部事務局は「裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化及び検察審査会制度に関する意 見」を募集し、その結果をまとめた文書を第31回の検討会で配布しているが、本稿では、この意見書 については紙幅の関係で割愛する。なお、裁判員制度に関する各界からの意見を分析した研究として は、中根憲一「裁判員制度−主要論点に対する各界の提案・意見」レファレンス640号75頁(2004年) 参照。 (7) 裁判員制度をめぐっては、さまざまな議論がなされている。ところが、法律学の大学教授と准教授 が、裁判員法第15条第15号で裁判員の就職禁止事由に規定されていることに関する議論は乏しいよう に思われる。 (8) 司法制度改革審議会の意見書については、司法改革推進本部のホームページに掲載されている (http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/index.html)。 (9) 山口進「法案制定に向けての審議事情」法学セミナー592号58頁(2004年)。 (10) 竹田昌弘『知る、考える裁判員制度』65頁(岩波書店、2008年)。 (11) 飯室勝彦「裁判員と国民との関係」法学セミナー592号69頁(2004年)。 (12) 第1回の検討会で、山崎潮事務局長は「具体的な法令案の立案作業は、私ども事務局が中心になっ て作業を進めるということになります」が、「テーマごとに有識者等による検討会を開催いたしまして、 意見交換を行いながら、事務局と一体となって作業を進めるという方式を採らせていただいていると ころでございます」と挨拶している(第1回議事録参照)。なお、この議事録は、検討会のホームペー ジに掲載されている(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/saibanin/dail/lgijiroku.html)。 (13) 谷勝宏「裁判員制度の立法過程の検証」名城法学54巻1・2合併号361頁(2004年)。 (14) 裁判員法成立の経緯については、池田修『解説 裁判員法−立法の経緯と課題』(弘文堂、2005年)、 丸田隆『裁判員制度』(平凡社、2004年)、小田中聰樹『裁判員制度を批判する』(花伝社、2008年)、 高山俊吉『裁判制度はいらない』(講談社、2006年)、飯考行「裁判員制度の生成過程−司法制度改革 論議の動態分析に向けて−」早稲田大学大学院法研論集99号1頁(2001年)、井上正仁・山室惠・古江 賴隆・佐藤博史・佐伯仁志「シンポジウム・裁判員制度の導入と刑事司法」ジュリスト1279号72頁(2004 年)、辻裕教「法案提出に至る経緯と法案の概要」ジュリスト1268号49頁(2004年)、西村健・工藤美 香「『裁判員制度』制度設計の経過と概要」自由と正義55巻2号14頁(2004年)、新倉修「裁判員制度 の可能性と課題」『刑事司法への市民参加[高窪貞人古希祝賀記念論文集]』7頁(現代人文社、2004 年)、柳瀬昇「裁判員法の立法過程(1)」信州大学法学論集8号99頁(2007年)、同「裁判員法の立法過 程(2)」信州大学法学論集9号227頁(2007年)、同「裁判員法の立法過程(3)」信州大学法学論集10号 119頁(2008年)、同「裁判員法の立法過程(4)」信州大学法学論集11号135頁(2008年)参照。 (15) 議事録について、裁判員制度・刑事検討会のホームページ(http://www.kantei.go.jp/ singi/sihou/ kentoukai/06saibanin.html)に掲載されている。 (16) 「論点メモ」については、検討会のホームページにPDF形式(http://www. kantei.go.jp/ jp/singi/ sihou/kentoukai/saibanin/dai2/02.pdf)で掲載されている。

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(17) 検討会の議事録は10回までは匿名とされた。そのために、座長以外の発言者の氏名は不明である。 (18) 「たたき台」については、検討会のホームページにPDF形式で掲載されている(http://www. kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/saibanin/dai13/13siryou1.pdf)。 (19) 井上座長は、第24回の検討会の冒頭で「議論すべきと思われる論点について、言わばおさらいの議 論を行う」と発言した。 (20) 柳瀬前掲「裁判員法の立法過程(2)」251頁。 (21) 「座長ペーパー」には、「これまでの本検討会での議論及びその素材となった『たたき台』を踏まえ、 座長の立場から、現段階において考えられる制度の概要の一例を取りまとめたものであり、本検討会 をはじめ各方面において議論をさらに深めていただくための素材を提供するという趣旨でお示しする ものである」との注記が付されていた。なお、「座長ペーパー」については、検討会のホームページ にPDF形式(http://www. kantei.go.jp/ jp/singi/sihou/kentoukai/saibanin/dai28/28siryoul.pdf)で掲 載されている。 (22) 「骨格案」には、「事務局としては、この骨格案の内容に沿った形で、各制度に関する法案を作成す る作業を進める予定である。なお、骨格案は、あくまで、制度の骨格を示すためのものであることか ら、制度の概要を理解しやすいようにすることを優先し、制度の細部については省略している部分や 表現等において必ずしも厳密ではない部分もある。今後、基本的には、骨格案の内容を踏まえた上 で、細部の肉付けをしつつ、法制的、法技術的な観点からの検討を加え、法案を作成していきたい と考えている」との説明が付されていた。なお、「骨格案」は、検討会のホームページに、PDF形式 (http://www. kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/saibanin/dai31/31siryoul.pdf) で 掲 載 さ れ て い る。 (23) 愛知正博「『裁判員制度』管見」中京法学38巻3・4号520頁(2004年)。 (24) 長沼規範「裁判員の選任・確保とその権限・義務」ジュリスト1268号68頁(2004年)。 (25) 五十嵐前掲書28頁。 (26) 五十嵐同書29頁。 (27) コリンP.A.ジョーンズ前掲書156∼157頁。 (28) 生田暉雄『裁判が日本を変える』35頁(日本評論社、2007年)。 (29) 模擬裁判参加の体験については、髙倉良一「なぜ、国民の大多数は裁判員制度に消極的なのだろう か−模擬裁判参加の体験を中心として−」社会科研究(香川県中学校教育研究会社会科部会)47号2 頁(2007年)参照。 (30) 筆者は、高松地方裁判所で、学生を引率して刑事裁判を傍聴したり、香川大学の関係者が関与した 事件で、この判事が裁判長を務める裁判を継続して傍聴していた。そのため、この裁判官は、筆者が 香川大学教育学部で法律学を担当していることを知っていたと思われる。 (31) 小田中聰樹教授は、「この制度は、国民を、裁判して処罰する側、権力の側に無理矢理立たせ、そ れに反抗する者は不適格者としてはじいていくという仕組みなのです」(前掲書21頁)と主張され、 「端的にいえば、民主性・市民性の『偽装性』にこの制度の本質があると私は思う」と述べておられ る(前掲書87頁)。 付記 本稿は、2009年度の香川大学生涯教育研究センターで、筆者が担当する講座「裁判員制度の本質を 考える」で資料として活用する予定である。

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参照

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