8一 食 物 学 会 誌 ・第27号
昆
虫
と
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一 フ ェ ロ モ ン と ホ ル モ ン ー 田 中 正 三* Shozo Tanaka SemiochemicalsとPheromone 動 物 の 中 に は 仲 間 の 個 体 間 の 通 信 を,聴 覚 や 視 覚 に よ らな い で 化 学 的 物 質 に よ って 行 な って い る も のが あ る 。 発 情 期 に な る と雌 猫 が 性 誘 引 物 質 を 発 散 さ せ て 雄 猫 を 引 寄 せ た り,餌 を 発 見 した 偵 察 ア リが 巣 に 戻 って 仲 間 を 引 率 して 発 見 個 所 に赴 く時 に 分 泌 す る物 質 な ど が これ に 当 る。 こ の よ うな シ グ ナ ル 伝 達 で 動 物 が 仲 間 に特 定 行 動 を 誘 起 させ るた め に 分 泌 す る物 質 を,ギ リ シ ヤ語 のSemion(Signalの 意 味)を 冠 し てSemio・ i) chemicalsと 呼 ぶ 。 多 くの場 合Semiochemicalsは 揮 発 性 の 有 機 物 で,空 気 を 媒 介 に し て これ を 摂 受 す る生 物 個 体 の感 覚 器 に ま で 伝 播 され て 作 用 す る のが 普 通 で あ る。 Semiochemicalsに は 同 種 の 生 物 の 異 な る 個 体 の間 で 利 用 され る もの と,異 種 の生 物 に作 用 す る も の とが 2) あ り,特 に 前 者 に はPheromone(フ ェ ロ モ ン)の 名 称 が つ け られ て い る。 似 た 働 きを す る物 質 に ホ ル モ ン が あ るが,ホ ル モ ン と フ ェ ロモ ンと の 相 異 は,前 者 が 内 分 泌 器 官 で つ く られ て そ の 生 物 個 体 の異 な る器 官 に 作 用 す る もの で あ る の に 対 し,後 者 は これ を つ く った 生 物 体 か ら環 境 中 に 放 出 され て 同 種 異 個 体 に 摂 受 され て効 果 を 示 す 点 に あ る 。 昆 虫 の 世 界 で は フ ェ ロモ ンに よ る シ グナ ル 伝 達 が 発 達 し て お り,特 に ハ チ や ア リな ど の社 会 性 昆 虫*で は 高度 に 発 達 し て い る こ とは 衆 知 の通 りで あ る。 3)Primer pheromone。 フ ェ ロ モ ン に はPrimer lphe・ romoneとReleaser pheromoneの2つ の 型 が あ る 。 4J Primer pheromoneは ミツ バ チ の 女 王 物 質 の よ うに 社 会 性 昆 虫 に お け る階 級 個 体 制 の 調 節 に 役 立 って い る よ うな もの を 指 す 。 女 王 物 質 は 将 来 女 王 に 育 て 上 げ る幼 虫 のみ に 与 え られ る化 合 物 で,唾 液 腺 分 泌 物 の 女 王 寒 天 質(ROyal jelly)に 含 まれ る有 効 物 質 で あ り,こ れ を 食 べ た 幼 虫 は 生 殖 腺 が 発 達 し て 形 態 的 に も女王 バ チ の 姿 に な る。 ミツバ チ の 女 王 物 質 は 脂 肪 酸 の誘 導 体 で, そ の 化 学 構 造 は 図1の9-Keto-2‐decenoic acidで あ t) る こ とが 決 定 され た 。 図1 ミツ バ チ の 女 王 物 質 C且3・CO・(CH2)5・CH=CH・CO2H Primer pheromoneは 試 料 を 集 め る こ と が む つ か し く,現 在 まで に ミツバ チ の 女 王 物 質 以 外 の も の で化 学 的 研 究 が 進 展 し て い る もの は な い 。 *本学生物 化学研 究室 *注 。 社 会 性 昆 虫 とは 集 団生 活 を 営 み,そ の社 会 に は 階 級 個 体 制 が あ つて,形 態 的 に も異 る雌 と雄 が 存 在 し,卵 や 幼 虫 の た め に育 房 を つ く って 発 育 が 終 る まで 保 護 す る な どの い ろ い ろ の習 性 を もつ も の を い う。 Releaser pheromone。 昆 虫 が 異 性 の 誘 引,仲 間 へ の 警 戒 の 呼 び か け,仲 間 の 誘 導 な ど の た め に 発 散 す る フ ェ ロ モ ン をReleaser pheromoneと 総 称 し て い る 。 5) これ らの フ ェ ロ モ ン類 は 図2に 示 した 種 々 の外 分 泌 腺 で つ く られsあ る もの は 一 端 貯 蔵 嚢 に 貯 え られ て必 要 に 応 じて一 時 に 発 散 され,あ る も の は 常 時 外 部 へ 分 泌 され て い る。 生 物 種 に よ って 異 るが,臭 跡 フ ェ ロモ ン な どはDufour腺, Pavan腺 また は 毒 腺 な ど で つ く られ,警 報 フ ェ ロモ ンは 大 顎 腺 や 孔 門 腺 で 主 につ く ら れ て い る。 警 報 フ ェ ロモ ンは 仲 間 に 敵 の 襲 来 を 告 げ る時 に 昆 虫 が 分 泌 す る もの で,敵 に 振 りか け て 侵 略 者 の烙 印を 押 す た め に 使 用 す る。 ハ チ や ア リの属 す る膜 翅 類 や シ ロ ア リな ど の等 翅 類 の 昆 虫 に は 多 種 の 警 報 フ ェ ロモ ンが あ る こ とが 判 明 し て お り,そ の 主 な も の を 表1に 示 し た 。 この 中 で ハ キ リア リ(Atta texana)の 分 泌 す る s) 4-Methyl heptan-3-one(図3)は 既 知 の 昆 虫 フ ェ ロ
昭和47年11月 (1972) 図2 ハタラキアリの外分泌腺 大顎腺貯室 消化管 モン中で最も作用が強いものの一つで,その最小作用 濃度は 3.3x 108molejcm3といわれている。 9 -孔 門 腺 孔 門 腺 貯室 図 3 ハキリアリの警報フェロモン CH3 招集フェロモンは仲間を呼び集めるために発散する フェロモンで,膜趨類では同一物質が濃度の相異によ って警報フェロモンにも招集フェロモンにも使用され ている例がある。また, Citralはヤマアリには警報フ ェロモンであるが, ミツバチには招集フェロモンとし て作用し, ハキリアリの 4-Methylheptan-3--oneは CH3.CH2・CH2・CH・CO・CH2・CH3 4-Methy l-heptan-3--one 表 1 膜趨類,等趨類昆虫の警報フェロモン7) 化 合 物 名 化 学 構 造 昆
Nonan-2--one CH3.(CH2)6・CO・CH3 ハチの類(Hymenoptera)
Tridecan-2--one CH3.(CH2)10・CO・CH3 ヤマアリ (Formicinae)
CH3
虫
6-Methylheptan-4-one CH3・とH・CH2・CO・(CH2)2・CH3 アリの類(ゆDo叫lichod伽ee白r巾 ae)
CH3
4-Methylheptan-3-one CH3.(CH山・ピH・CO・CH2・CHs ァリの類 (Myrecinae)
CH3
6-Methyl-6-hepten-2-one CH3・と=CH・(CH)2・CO・CH3 アリの類 (ゆDol日恥ichod伽伽eε白白r巾 .
CH3
Isoamy lacetate CHs
と
H.CH2.O・CO.CHs ハチの類(Hymen伽 ra) CH3 CH3 Citronellol CHs.C=CH・(CH2)2・CH・CH2・CHol ヤマアリくFormicinae) CH3 CHa Citral CHs.C=CH・(CH2)2・C=CH・CHOI ク α-Pinene名〉
内 ア リ (lso Terpinolene〉ユ,0-
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Limonene 〉くJ-H食物学会誌・第27号 を誘うために発散するフェロモンで,夏の宵にみられ る蚊柱や,生殖期に麹の生えたシロアリが集団になっ て飛びかう群飛と呼ばれる現象は,このフェロモンの 作用による。 Butenandtらがカイコの処女雌蛾50万匹 を原料として僅かに1211fgの収量で結晶としてとり出し た異性誘引フェロモンは,はじめて単離精製されて構 造決定が行なわれたもので, Bombykol と命名され図 4に示す化学構造をもっ脂肪族の不飽和アルコールで, カイコの雄峨に非常に強い誘引作用を示すことがわか -10 -働蟻には作用するが,雄蟻や女王蟻には全く反応がな く,また, うんと濃度が高い場合は働蟻にも招集フェ ロモンとして働くようになる。このように近縁の生物 の間では同ーの化合物がフェロモンとして多目的に利 用されている例が多いが,属や科を異にする昆虫の問 ではフェロモンの化学構造に顕著な相異がみられる。 表 2は鞘趨類の昆虫の招集フェロモγを掲げたもので, 表 1の化合物とは構造上の共通性が余りみられない。 異性誘引フェロモンは,接合に先立って昆虫が異性 表 2 .鞘麹類昆虫の招集フェロモン8) 化 合 物 名 化 学 構 造 昆 虫 CHs.(CH2)・7・CH=CH・(CH2)7・ COOCH3 CH~ ・ (CH2)7 ・ CH=CH ・ (CH2)7 ・ COOC2H5 CHa• (CH2) 14・COOC2H5 CHs' (CH2) 16・COOC2H5 CHs.(CH2)4・CH=CH・CH2・CH= CH・(CH2)7・COOC2H5 CH3 OH CH2 CHs.CH・CHz・CH・CHz・C.CH=CH2 CHs OH CH2 CHs・C= CH・CH・CH2・C.CH= CH2
、
1 ノ m a ・m m 汀 白 血 d a 門 U V A gg o T A T 〆 I、
シ ム シ フ オ ツ カ 恥1ethyloleate Ethyl oleate Ethyl palmitate Ethyl stearate Ethyl linolate ~ ク ~ ク 2-Methyl- 6-methylene-7-octene-4-o1 キクイムシ類(Ipsconfusus) 2-Methyl-6-methylen←
2, 7-octadien-4-o1 ~ー
む-CHそ
こ
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CHそ
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Verbenol キ グ イ ム シ 類 (Dendroctonus frontalis) Verbenone 1/ / 〆 Brevicomin (Dendroctonus brericomis) // Frontalin (Dendroctonus frontalis) った。この発見が化学者に昆虫フェロモンへの関心を まき起こさせることになった。そして蝶や峨の属する 図 4 カイコ蛾の Bombykol H H H CHs・(CH2)z・C=C・C=C・(CHz)s.CH20H H 10-trans, 12-cis-Hexadecadien-l-01 鱗趨類の昆虫からは,その後数多くの異性誘引フェロ モンが単離されたが,その中にはドクガ (Porthetria dispar L.)のもののように 10-2.........10-7附 と い う 超 徴量で活性がみられるものもある。表3に主な異性誘 引フェロモンを示した。 鱗趨類の異性誘引フェロモンの多くは脂肪族不飽和昭和47年11月 (1972) 化 合 物 名 表3 昆虫の異性誘引フェロモン lLJ 化 学 構 造 -11ー 昆 虫 Valeric acid trans-9-Keto-2-decenoic acid n-Undecanol cis-7-Dodecenyl acetate trans-7 -Dodeceny 1 acetate cis-8-Dodecenyl acetate cis-9-Tetradecen-1-o1 cis-9-Tetradecenyl acetate trans-9-Tetradecenyl acetate cis-11-Tetradeceny 1 acetate trans-3-cis-5- Tetradeca-dienoic acid trans-10-c is-12-Hexadeca-dien-1-o1 cis-8, 9-Epoxy-2-methyl octadecane Hexadecanyl acetate cis-ll-Octadeceny acetate trans, trans-3,7-Dimethyl deca-2, 6-dien-1, 10-diol trans, trans-10-Hydroxy-3,7 -dimethyl dec-2,かdienoicacid trans. trans-3,7-Dimethyl dec-2, 6-dien-l, 10-dioic acid trans-10-Propyl-5, 9-tridecadienyl acetate cis-7-Dodecenyl acetate H
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p u p -弐 ・ H 佃 H ・ 心o
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f -、 、 ﹁ ﹂ H H C C CHs.(CH2)II.CHOH H
CHs• (CH2)s.C=C・ (CH2)6・OCOCHa H CHs.(CH2)s・C=C・ (CHZ)60COCHa HH H
CHs.(CH2)z・C=C・ (CHZ)7・OCOCHsH H
CHs(CHz)3・C=C・ (CHZ)7・CHzOHH H
CHs.(CH2)s.C=C・ (CHZ)7・CH2OCOCHs H CHs.(CHz)a・C-C.(CHZ)7・CHzOCOCHs HH H
CHa.CHz・C=C・ (CHz)10・OCOCHs H H H CHs.CCHz)7・C= C.C=C・ CHz・COzH H H H H ヒメガガシボ(Limonius californIcus) ミ ツ バ チ(Apismelifera) メイガ(Galleriamelonella) Trichoplusia ni ハマキガ(Argyroploce leucotreta) Gropholitha moleta Laphygma frugiperda Bryotopha similis 1/ ハマキガ(Argyrotaenia velutinana) Attagenus megatoma CHs.(CH2h・C=C・ C=C・ (CH2)s・CHzOHIカイコくBombyxmori) H CHa 0^
CHs.CH・(CH2)5.CHーCH・(CH2)s.CHs CHa• (CH2)14・CH2OCOCHaH H
CHa.(CH2)o.C-C・(CHz)lOOCOCHa CHa CHa HOCHz(CHz)2・C=C・ (CH2)Z.C=C・CHzOHH
H
CHa CHs HOCHz・CHz・CHz・C=C.(CH2)z・C=C・ C02H H H ドクガくPorthetriadispar) マダラチョウ(Lycorea ceres ceres) 1/ a c -n e r S 2 仰 k b 凹 n r•.•
' . 冒 A . 1 σ 白 s u a n q d D Danaus plexippus CHa CH3 HOzC・CHz・CHz・C=C・ (CHz)z.C=C・C02HH
H
CHs.CH2・CH2 H │キバガくPectinophora CHs.(CHz)2・C=C・ (CH2)2・C=C・ (CHZ)41 gossypiella) ・OCOCH3H
立
H H
CHs.(CHz)3・C=C・ (CH2)6・OCOCH3 1/ Trichoplusia ni-12ー 食物学会誌・第27号 Benzaldehyde ζ ) - C H O ヤ ガ (Leucaniaimpura) 2,3-Dihydro-7-methyl-l
ハ
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マ ダ ラ チ ョ ウ H-pyrrolizidin-l-one (Danaus gilippus brenice) cis-2-Isopropenyl l-methyl-l 「仁一一箱I 、 、C、1C 1. i120}! ゾ ウ ピ ム シ cyclobutane ethanol (Anthonomus grandis) cis-3,3-Dimethyl-Al,,8?ヘ
LOH cyclohexane ethanol /1 CII3 CH3 cis-3,3-Dimethyl-Al"S。
¥ C I I O // cyclohexane acetaldehyde CH3 CH3 trans-3,3-Dimethyl-Al,s cyclohexane acetaldehydev
// CH3 CH3 アルコールかその酢酸エステノレで, ゾウピムシのよう なポリメチレン型の環状構造をもつものとは著しく異 っている。特に木材を侵食する鞘趨類の昆虫では侵入 手Lからこぼれ出る糞と樹粉の混合物である Frassの中 に誘引物質が含まれており,例えば林産には大害虫と いわれているイキイムシの類の Ipsconfususの Frass から単離された 2-Methy1-6-methy lene-7 -octen-4-o1 (図 5の じ ゃc
n
)
,c
目〉のテルベンアルコール識 は寄主の樹木の成分であるテルベノイドを前駆物質に してつくられたと推定される構造をもっている。 図5 Ips confususの異性誘引物質。
く
くコベ苛
臭跡フェロモンは主として社会性昆虫が発散するフ ェロモγで,餌を発見した昆虫が巣に戻って仲間を発 見場所に導く時などに使うものである。臭跡フェロモ ンはアリなどでは消化器から分泌される。表4は膜麹 類や等麹類の臭跡フェロモンを一括して示したもので, モノテルベンやセスキテルベンの誘導体が多く,その 前駆物質は植物に由来するものか,自らが全合成して いるのかは明らかでない。臭跡フェロモンの中にはシ ロアリの一種の Reticulitermesvirginicusの分泌す る n-cis-3,cis-6, trans-8, Dodecatrien-1-o1 C図6) のようにガラスの間切りをした容器を使用しての試験 で, O. 1 picogramとし、う超微量でガラス越しに効果 が認められたというものもある。 図6 Reticulitermesの臭跡 フェロモγ H H H H H CHs'CCH2)3・C=C・C=C・CH2・C=C・CH2・CH20H H cis, cis, trans-3, 6, 8-Dodecatrien-1-o1昭和47年11月 (1972) 表 4 昆虫の臭跡フェロモン山 - 13ー 化 合 物 名 化 学 構 造 昆 虫 CH3 CH3 CH3.C=CH・CH2・CH2・C=CH・CH20HIミ ツ パ チ(ApismEllifna) CH3 CH3 CHs・C=CH・CH2・CH2・C=CH・CHO タ t t CH3 CH3 CH3.C=CH・CH2・CH2・C=CH・C02H タ t t CH3 CH3 じH3・C=CH.CH2・CH2・C=コCH・CH20HI タ t c CH3 CH3 CH3・C=CH・CH2・CH2・C=CH.C02H タ t c Geraniol Geranial Geranic acid Nerol Nerolic acid CH3 CH3 CH31 δ .己│イロアリ (Aphaenogaster d-Farnescene I CH3.C=CH・(CH2)2・C= CH・(CH2)2・CHI longiceps) .CH=CH2 CH3 CH3 CH31 る :-~~ÖI マノレハナバチ (Bombus Terrestrol(2,3-Dihydro-farnEsol)I CH3.C=CH・(CH2)2・C CH・(CH2)2・CHI terrestris) .CH2・CH20H CH3 CH3 CH3・C=H・(CH2)2・C=CH・(CH2)2-ζーベニH Dendrolasin 11 111Dendrolasius fuliginosus HC CH
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フェロモンの化学構造と活性との関係 昆虫のフェロモンの化学構造を通覧すると,その炭 素骨格が長鎖の脂肪酸や脂肪族アルコールであるか, テルベンやセスキテルベン型のイソプレノイドである。 そしてハキリアリの警報フェロモンを例にとると,天 然の 4-Methylheptan-3-oneの異性体や類似構造を もっケトン類はみな大なり小なり警報フェロモンとし ての活性をもっている。表5は合成したケトン類の化 学構造と活性との関係を示したものであるが,主鎖の 炭素数は 7のものが強く,また,炭素数 7のものの間 ではカルボニル基が3ーCまたは2-Cにあるものが 活性が高い。また,メチル側鎖のある方が強力で,側 鎖の位置は4-Cに近ずくほど強くなっている。 ヤガの Porthetriadisparの異性誘引フェロモン{Ifi 性は天然、のもの(図 7(1
))と炭素が 2個 多 い も の 〈目〉および2個少いものc
n
)
の二つの合成品との 間に格段の差異がある。 このような事実はフェロモンの摂受が感覚子に存在 する摂受物質とフェロモンとの結合によって行なわれ ていることを示唆する。 図 7 ヤガの異性誘引フェロモンと 類似合成物質の活性 CHaCO・0 I.天然物 CH3.(CH2)5.CH・CH2・CH=CH・(CH2)4・ (活性) CH2・CH20H CH3CO.On
.
合成物 CH3• (CH2)5. CH・CH2・CH=CH・(CH2)2・ (不活性) CH2・CH20H CH3CO.O IIl.合成物 CH3・(CH2)5・CH・CH2・CH=CH・(CH2)G・ (活i
生) CH2・CH20H-14 - 食物学会誌・第27号 表 5 ハキリアリの警報フェロモン活性をもっ合成物質とその活性 化 合 物 名 化 "...込 寸ー CH3 構 I、'l旦f:. 最小作用濃度Cmolejcm3)
←
Methy lheptan-3-oneC天然物質)I
CHa・CH2・CH2・CH.CO・CH2・CH3 3.3X 108 7 6 5 4 3 2 1 CH32-Me向 lhepta吋-one I CH3・CH2・CH2・CH2・CO・CH・CH3 3. 3x 1014
CH3
5-Me向 lhepta吋-one
I
CHs・CH2・CH・CH2・CO・CH2・CH3 3.4X 1011CH3 6-Methylheptan-3-one
I
CHs.CH・CH2.CH2・CO.CH2・CH3 3.0X 1013 Heptan-2-one I CHs・CH2・CH2・CH2・CH2・CO・CH3 5.3 X 1011 6.7 X 1011 7. 7x 1014 Heptan-3-one I CH3・CH2CH2・CH2・CO・CH2・CH3 Heptan-4-oneI
CH3 • CH2・CH2・CO・CH2・CH2・CH3 CH3 4-Methylpentan-3-one CH3.CH・CO・CH2・CH3 2. 4x 101• CH3 4-Methylhexan-3-one CH s.CH2・CH・CO・CH2・CH3 1.1 X 1012 Pentan-3-one Hexan-3-one Heptan-3ーone Octan-3-one Nonan-3-one Decan-3-one CH3.CH2・CO.CH2・CH3 4. 7x 1015 1.7x1014 6.7 X 1011 2.6 X 1011 8.7 X 1011 2.6 X 1012 CHs'CCH2)2・CO・CH2・CHa CH3'CCH2)a・CO・CH2・CH3 CHs・CCH2)..CO・CH2・CH3 CH3.CCH2)5・CO・CH2・CH3 CH3'CCH2)6・CO・CH2・CH3 7エロモンの摂受機構 昆虫の触角には種々の形態の感覚子 (Sensillaの が あり,フェロモンはこれによって摂受されるといわれ ている(図8)。感覚子には神経細胞の樹状突起が拡 図 8 がっており,フェロモンが細胞膜に達して感覚物質と 反応すると興奮は電気的なレスポンスとなって脳にま で伝達される。)Mooreら)はフェロモン感覚の化学機 構はホ乳動物における嘆覚に酷似していて,感覚子に 特異構造をもっタン白質があり,これにフェロモンが 結合するとの仮説を提出しているoその関係は酵素の 反応における酵素タン白と基質との関係に似て,酵素 タン白の活性中心にある結合部位の立体構造と結合す ることができる構造をもっ化合物のみが基質となるこ とができるように,感覚子の摂受タン白の結合部位に 結合できる構造のものだけがフェロモン活性を示すと するものである。このような特異タン白の存在につい て, Riddiford らはヤママユ蛾の雄の触角を,タン白 質の立体構造に変化をおこさせるホルマリンや尿素で 処理すると異性誘引フェロモンに対する感受性が著し く低下することから Moore らの推定を支持している。 昆虫の生長と変態を調節するホルモン 静化した昆虫が幼虫期や踊を経て成虫になるまでの 過程では何回かの脱皮が行なわれながら生長する。 カイコに例をとると幼虫期に4回の幼虫脱皮が行なわ れ,その都度,より大型の幼虫になるが,幼虫期の末 期には蛸になり,さらに踊は成虫になる。幼虫→踊→ 成虫の変化は変態と呼ばれているが,これも広義には 脱皮の一つの型である。そして,脱皮による新しい形 態の個体が生れるのを調節しているものが変態調節ホ ルモンと呼ばれるホルモンである。このホルモンを分 泌する昆虫の内分泌腺には,脳,前胸腺およびアラタ 体の三種がある(図9)。脳ホルモンは脳全体から昭和47年11月 (1972) 分泌されるものでなく,脳間部にある神経分泌細胞か らのみ分泌される。脳ホノレモンは前胸腺刺激ホルモン とも呼ばれ前胸腺に運ばれて,この腺からのホルモン の分泌を促す。前胸腺ホノレモンは幼虫の踊化と輔の成 虫化を誘導する作用をもつので、変態促進ホルそン,あ るいは踊化ホルモンといわれている。アラタ体から分 泌されるホルモソは幼虫の形態を維持させる作用をも っホルモγで,前胸腺ホルモンと共働して幼虫を脱皮 生長させるから幼若ホルモンと呼ばれている。この三 つのホルモンの思脳ホルモンの本質についてはこれを コレス
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ロールとする研究とタン白質またはオリゴペ プチドとする研究とが対立しているが,前胸腺ホルモ ンと幼若ホノレモγについては化学的研究が進み,化学 構造なども決定し,ともにイソプレノイドに属する化 合物であることが明らかになった。 図9 カイコの脱皮に関係するホノレモンの 内分泌腺と制御機構 1¥'sa
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UI 1 1 1 注 Br脳 BH脳ホルモン LM幼虫脱皮 Ns神経分泌細胞 JH幼若ホルモン P踊化 Caアラタ体 PGH前胸腺ホルモン Cc側心体 Pg前胸腺 ID成虫化 変態に際して,表皮細胞は前胸腺ホノレモンの刺激に よって盛んにクチグラ質を分泌するが,共働するアラ タ体ホルモγの濃度が高い時は幼虫型のクチクラを, また,濃度が低くなると成虫型のクチクラを分泌する。 - 15ー したがって,アラタ体ホルモンの分泌が盛んな聞は幼 虫は脱皮変態を繰返して生長するが,幼虫期の最後の 令〈カイコでは4回脱皮して5令で踊化するのが普通 である〉の末期になると生理条件が変ってアラタ体か らのホルモン分泌がほとんどなくなり成虫への変態が はじまる。 変態促進ホルモンとその作用 前胸腺かす泌される変態促進ホルモンは,間4年 に Butenandtらによりカイコの踊500kgを用いて単離 が行なわれ,
25111gの収量で結晶として取出された。こ の物質は Ecdysoneと命名され, クロパェ (Ca11iphora erythrocephala)を試験生物としたテストで O.01,u~ の 徴量で踊化促進作用が認められた。その後カイコから は Ecdysone よりは含量は少ないが, 活性はより高 い第2の踊化促進物質が単離されたから, 前 者 を α-Ecdysone後者を β-Ecdysoneと名づけて区別する ことになったが,さらに,他の昆虫や甲殻類に数多く の踊化促進物質の存在することが判明したので, α-Ecdysoneのみを Ecdysone,βーを Ecdysterone と 呼ぶようになった。 これらのホルモン類の化学構造は Karlson らによ って研究され最終的には X線回析によって決定された。 第6表は昆虫および甲殻類から単離された変態促進物 質の一覧であるが,変態に直接的な役割りを演じてい るのは Ecdysteroneであり, Eedysterone以外のも のは脂肪体などの組織の中で Ecdysterone に変化し た後作用するといわれている。 脱皮の時には表皮細胞は新しいクチクラ質と脱皮液 とを分泌し,古いクチクラ層が離脱するが,脱皮液に は特殊の酵素が含まれていて古いクチクラの内層を消 化して吸収する。そして,変態促進ホルモンは表皮細 胞における D N Aの作用に関連し,間接的にクチクラ のタン白質の合成を調節するものであることが判明し てきている。 第9図に示すホ乳動物の副腎皮質ホルモンや性ホル モンなどと同様に見虫の変態促進ホノレモンもステロイ ドの骨格と α,β不飽和ケトンの構造をもっている が,不飽和構造がホ乳動物のものでは A環にあるのに 対し,昆虫のホノレモンはB
環にあるo また,A
,B
の 縮合環がホ乳動物のもので、はたがいに trans の関係, すなわち 5位の水素がαの立体配位をとるのに対し, 昆虫のものでは AJBcisすなわち 5位の水素がβ配 位をとる点が異る。 も一つの相異点は, これらのホ ルモンの前駆物質であるコレステロールの炭素骨格が-16 -名 称 、 、 , J 0 ・w n o e s n y o d cupν y E A U
-一
C α T F ゐ 〆 4、
Ecdysterone 11 0 (β-Ecdysone, Crustecdysone) 20, 26-D ihydroxy-ecdysone ρ し w n n u g n w v ' AU F L V 向 し V & E b g u -u v d r x t n u ρ L V D ワ μ Callinecdysone 第6表昆虫,甲殻類の変態促進ホルモン 27)抑 制 化 学 構 造。
11 ) ( ー 110。
11 OH ' () ()II HO 日0 I l ) ( 1 1 1 1 ) ( IJ() CII20H。
。
昆虫のホルモンでは全部残っているが,ホ乳動物のホ ルモンでは17ー Cの側鎖が全く失われているか,短か くなっている。 食物学会誌・第27号 単 離 さ れ た 生 物 カ イ コ (Bombyxmori) モ ロ ッ コ イ ナ ゴ (Dociostaurus maroccans) タ バ コ ツ ノ ム シ (Monducasexta) ヤ マ マ ユ ガ (Anthereapernyi) カイコ,モロッコイナゴ, タ バ コ ツ ノ ム シ , ヤ マ マ ユ ガ クロパエ (Calliphorastygia) 海産ザリガエ(Jasuslalandei) カニの類 (Callinectessapidus) タ バ コ ツ ノ ム シ (Manducasexta) 海産ザリガエ(Jasus lalandei) カニの類 (Callinectessapidus)昭和47年11月 (1972) - 17ー 第 9図 ホ乳動物のステロイドホルモンとコレステロール 24 26
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Cortisol (副腎茂質ホルモン) 幼若ホルモンとその作用 アラタ体から分泌されるホルモンは昆虫を幼虫の状態 で生長させるので、幼若ホルモン(Juvenilehormone) と命名されている。幼若ホノレモンは最初セクロピア蚕 (Hyalophora cecro酬 の 持 の 幼 虫 の 腹 に 蓄 積 さ れ ている油脂の中に発見されEcdysoneより柏遅れて単 離;こ成功した。これには第10図の (1)(n)の二種 があり, いずれもセスキテルベンアルコールの Far -nesolの誘導体とみられる鎖状の炭素骨格をもっ化合 物込ある。子れらの物質は試験生物として鞘趨類のゴ ミムシダマシを用いると 2x10-乍g,
メイガでは 5x 10ーヤgの徴量でその活性を認めることができる。 第10図昆虫の幼若ホルモン 印fcih ciff叫 │r
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Juvenile hormone 1 (Methyl 10, ll-epoxy-7, ll-ethyl-3-methyl -10,11-cis, 2-trans, 6-trans-tridecadienoate) /ふ
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Juvenile hormone II (Methyl 10, ll-epoxy-11-ethyl-3, 7-dimethyl -10, ll-cis, 2-trans, 6-trans-tridecadienoate) オオサシガメを試験生物として,合成したd,
1 -型の幼若ホルモンの異性体や Farnesol,Farnesoyl methylなどの相対活性をしらべると第7表のように Farnesolなどにも弱L、活性が認められ Farnesolや Farnesoic acidが幼若ホルモンの前駆物質と推測さ れる。 表7. 幼若ホルモン活性物質の構造と相対活性知 最小必要量(μgjg) 天 然 Farnesol(70%,ガtraus,traus) I 2300.0 d,l-Juvenile hormone(trans, trans, trans) 19.2 Methyl farnesoate 6. 9 d,l-Juvenile hormone(trans, trans, cis) 2.3 昆虫のイソブレノイド生合成能 昆虫の幼若ホルモンや変態促進ホルモンは明らかに セスキテルベンやステロールの炭素骨格をもっており, また,前掲のフェロモンの中にはテルベγやその誘導 体が数多く存在している。テノレベン,セスキテルベン, ステロイド,カロチノイドなどには,いずれも C5H8 のイソプレンの重合した形の炭素骨格が存在するので、 総括してイソプレノイドの名で呼ばれている。イソプ レノイドの生合成は徴生物から高等生物までみなアセ チルCoA3分子の重縮合でできるメバロン酸を共通の 前駆物質としこれより生成するイソベンテニルピロ リン酸の縮合で生成することが判明している(第11図〉。。 。
食物学会誌・第27号 第11図 イソプレノイドの生合成過程 A o f u 、 , ノ , e、 i C A川 弘 -C C 比一
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'al()llic acid Isopentenyl py rophspha te しかし,昆虫に関する限りイソプレノイドの合成能 はかなり低く,メパロン酸からフェロモンなどのテル ベン炭素骨格をもっ物質の生合成は僅かにナナフシの 類について認めた報告がみられるぐらいで,コレステ ローノレに至ってはクロパェや鱗麹類の昆虫数種につい て合成能を欠くことが確認されており,また,鞘麹類 の Xyleborusferrugineusの幼虫はスクアレンの環 化の段階でコレステロールの合成がで、きぬことが判明 している。したがって,フェロモンや変態促進ホルモ ン,アラタ体ホルモンの生産には餌料中のイソプレノ イドが利用されていると考えている人が多い。 Ecdysteroneが炭素骨格を同じうするコレステロー ルから合成されることは CalliphoI司 カ イ コ そ の 他 数 種の昆虫について証明されている。また,草食性や雑 食性の昆虫では, C29の植物ステロールやC28のエル ゴステロールから Ecdysteroneをつくっていること も証明されている。 Xyleborusferrugineusではコレ Geranyl pyrophosphate CH~ 0 Qt
-ì-~ 11 11 CH3-C-CH2・CH2由CH2-C=CH-CH2-0-P- O- ~-0H I _I テ ル ペ ン 類 ステロールは利用で‘きず, 消 化 管 に 共 生 し て い る FusafIumの生産するエルゴステロールによって生育 することができるとL、う変った例もある。 昆虫の変態促進物質の植物界におけあ分布 1966年中西らは,我国で古くから制ガン剤として服 用されていた民間薬の E百人青=一一(トガリパマキ, Podocarpus nakaii Hay)に, カイコの幼虫に強い踊 化促進作用を示す物質が含まれていることを発見し, これに Ponasteroneと命名した。 Ponasteroneはト ガリパマキの乾燥葉6kgから109に近い高収量でえら れ,薄層クロマト等で分離精製すると第 8表に示す 4 種の類縁化合物が混在していることがわかった。それ で,主成分を Ponasterone Aとし, 他をそれぞれB, C, Dとして化学構造の研究を行った結果いずれも Ecdysteroneと同様に B環に a,
β不飽和ケトンの構 造をもっステロイドケトンであることが判明した。昭和47年11月(1972)
。
ν 第8表 トガリパマキの昆虫変態促進物質 42) 名 称 化 学 構 造 Ponasterone A ハ リ 110 Ponasterone B 110" 110 .' Ponasteron C 含量〈混合物10g中〉。
H OHj 9.5g ハ U I 0.4 0.4 。fI 0 1 !JO Ponasterone D その後,マキ科やイチイ科の針葉樹の外にヒユ科の 植物やワラビ,ゼンマイなどの裸子植物など50包こ及 ぶ植物に踊化促進作用をもっステロイドケトンが含ま れていることが発見された。現在のところ藻類や菌類 を除くほとんどすべての植物に分布がみられ, 30に近 い活性物質が単離され,構造も決定されている。その 中には昆虫の Ecdysterone と同様に C27のものばか りでなく, C28, C29の植物ステロールの炭素骨格を もつものもある。 0.1 特に注目すべきはカイコ蛾から単離された Ecdy. soneや Ecdysteroneがマキ,イノユズチ,キンラン ソウなどにも発見されることである。また,カイコの 幼虫がほとんど唯一の食草にしているクワの葉に植物 性の変態促進物質の Inokosteroneや 20-Hydroxy. ecdysoneが含有されており,これを摂食する昆虫には 植物由来のステロイドケトンがどのような作用を示す かは興味のある問題になる。- 20ー 名 称 Inokosterone Pterosterone Stachysterone Makisterone A Amarasterone B Cyasterone 食物学会誌・第
2
7
号 第9表数種の植物性の変態促進物質とその構造 46) OH OH 化 学 構 造 含 有 植 物 HO HO HO HO H HO HO HOi CH20H イ ノ コ ズ チ の 類 (Achyranthes rubrofusca) (Achyranthes fanriei) ハ マ ゴ ウ の 類 (Vitex megapota mica) OH ワ ラ ピ HOOH民
_V
O (Pteridium aquilinum) ヒ メ シ タ . (Dryopteris thelypteris) コ ウ ヤ ワ ラ ビ (Onoc1ea sensibilis) キ プ ジ (Stachyurus praecox) ヲ カ ン マ キ (Podocarpus macrophyllus) イ ノ コ ズ チ モ ド キ (Cyathula capitata) イノコス'チ毛ドキ (Cyathula capitata) キ ン ラ ン ソ ウ (Ajuga decumbens)昭和47年11月 (1972) 植物性変態促進物質の昆虫への影響 昆虫の踊化ホルモン活性をもっ物質が広く植物界に も分布するとし、う事実は, Ecdysteroneがホルモンの 定義通りに,昆虫の内分泌器官で合成されたものであ るか,それとも食草に由来するものが,ーたんこれら の器官にプールされ,必要に応じて分泌されてくるも のなのかの疑問を投げかける。前述のように,昆虫は コレステロール合成能は欠くが,コレステロールや植 物ステロールから Ecdysteroneの合成はできるから, もし食草の変態促進物質がそのまま摂取吸収されて活 性を示すならば,この過剰の促進物質のために代謝の パランスは乱され有害な影響が現われることも考えら れる。植物性変態促進物質は注射すれば,明らかにホ ノレモン活性が認められるが,経口的に与えた場合には, 昆虫の種により,変態促進物質の構造のちがし、によっ OH ーーヨー ーさ降 110
。
このような諸事実から,昆虫の変態促進ホルモンは, ステロールを前駆物質として見虫が自力で合成するも のであり,食草中の植物性変態促進物質を利用したも のではないことは確かなようである。 何故に植物に昆虫の変態促進活性をもっ物質が広く 分布しているのかの謎は昆虫とは関係のない問題のよ うである。植物は虫害を避けるため,このような昆虫 の代謝撹乱をおこす有害物質を生産して蓄積している とする説もあるが,あまりにもヒトの主観の強い見方 である。 Ecdys~erone には植物の生長ホルモンの 1 つである Gibberellin A 3の約10%の活性があるとの報告もあ り,植物性の変態促進物質は植物自身にとって未知の 生理作用をもっ作用物質であるのではなかろうか。 - 21ー て有害作用が現われたり,全く代謝撹乱がおこらな かったりする。この理由として,昆虫の消化器からは これらの物質は吸収されないとする研究もあり,また, 吸収されても速かに解毒されるとする説もある。カイ コに関しては,乾燥クワ葉粉末と人工飼料との混合物 で飼育しながら, Inokosteroneを与えると, 3令 の 幼虫では脱皮が 1日早くなるが全部上族せずに弊死し, 5令3日目に与えると約半数が営繭しないで死ぬから Inokosterone は吸収されるが, その活性はそれほど 早急には失われないようである。最近,クロパエやホ シカメムシを用いて 14Cで標識したものを経口的に与 えた伊で,速かに吸収されるが脂肪体にある水酸化 酵素によって次式のように酸化分解され不活性化され ることが明かにされた。 flO flO。
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H02C - CH2 - CH2 C "'-CHa 昆虫の食草選択性と植物成分との関係 カイコやアゲハチョウのように草食性見虫には食草 の種を限定する,いわゆる,単食性のものが少くなL。、 カイコは実験的にはクワ以外にセイヨウタンポポの葉 を飼料としても育つが,つくる繭はクワを食草にした ものと比べると蓬かに貧弱であり,また,アキノノゲ シ,コウゾ,セイヨウタンポポ, オオイタピなどの 葉も食べるが営繭しないうちに死亡する。このような 昆虫の食草選択性は,食草中にその昆虫が生育に必要 とするすべての栄養素を十分含んでいることと,昆虫 が忌避する物質を含んでいないことなどできまると思 われる。カイコの餌料の必須要素にはタン白質,糖質, 脂質などの主要栄養素のほかに,誘引物質,噛校促進 物質,膜下促進物質の三群に別けて第10表の化合物が 必要なことが知られている。22 -表10 主栄養素以外のカイコの必須摂食因子山 (1)誘引物質 β,γ-Hexenol,β,γ-Hexenal Citral, Terpinyl acetate, Linalool, Linalyl acetate, n-Butyl propionate (の噛岐促進物質 Isoquercetin, Morin, Chlorogenic acid Ascorbic acid,β-Sitosterol (3)鴨下促進物質 Cellulose, Sucrose, Inositol しかし,これらの化合物はし、ずれも植物には広く分 布しているものであり,カイコの食草選択性の決定因 子とは考えにくい。現にカイコが摂食するもの,しヂ いものを併せて30種に及ぶ植物の葉をしらべた結果も 上記の成分に顕著な差異を認めることができなかった。 クワの葉のヘキサン抽出物をクロマト分画して多数 の画分に別け,人工餌料に加えてカイコの生育効果を しらべると, β-Sitosterolが含まれている画分に効果 の大きいもらが存在する。このものは純粋のかSitost -erol との比較試験で同一物質でないこともわかった。 また, FarnEsolや Farmsoic acid の誘導体とも異 る。現在のところでは,この物質は,極性の大きくな いイソプレノイドと推定されるがその本体はなお不明 である。このものがカイコがクワを食草とする選択性 決定因子かどうかは,今後の研究にまたねばならない。 昆虫にとってイソプレノイドが予想以上に重要な役 割をもつことは,フェロモンや変態ホルモンなどから も推定される。それにかかわらずイソプレノイド生合 成能が低い昆虫にとっては食草中のイソプレノイドは ビタミンとしての栄養的意義をもつことが十分に予測 される。この意味で,昆虫の食草選択性の研究は新し いイソプレノイド型ビタミンの発見につながる可能性 も考えられる。 文 献 1 ) Law, J.H., Regnier, F.E., Ann. Rev. Biochem., 40, 533, (1971) 2) Karlson, P., Luscher, M., Nature 183,55, (1959) Moser, J. C., in“Control of Insect Behavior by natural Products" (Wood. D.L.,Si1verstein, R.M., Nakajima, M.. Eds)(1970) 161, Academic PrEss. 3) Wi1son, E.O., Sci. Amer., 208, 106 (1963) 4) Butler, C.G., Callow, R.K., Johnston, N.C., 食物学会誌・第27号 Nature 184
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