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日本列島におけるスギの分布状況と針葉の形態変化について

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日本 列 島 にお け るス ギの分 布状 況 と

    針 葉 の形 態 変化 につ い て

高 桑 

米 沢 信 道

綱 本 逸 雄

本 水

1.は じ め に   昨 年 度 の 研 究 「京 都 北 山 に お け る ア シ ウ ス ギ とオ モ テス ギ の分 布 調 査 一 杉 の 針 葉 の新 しい 計 測 法 の 開発 一 」1)に よ り、 ス ギ針 葉 の 中 央 断 面 の縦 横 の長 さ を 計 測 す る こ とか ら、 ス ギ の針 葉 断 面 に は横 長 の タイ プ と縦 長 の タイ プ が あ る こ とが わか った 。   京都 市 右 京 区京 北 町 美 山 に あ る片 波 山 と鍋 谷 山、 富 山県 入 善 町 の沢 杉 か ら採 集 した ス ギ の葉 サ ンプ ル は横 長 タイ プ の 針 葉 断 面 だ っ た。 一 方 、 京 女 の 森 か ら 採 集 した 「京 女 の森 の大 ス ギ 」 の針 葉 で は 縦 長 タ イ プ の 断面 だ っ た。 京 女 の 森 の 大杉 の 場 合 、 ス ギ の木 の頂 上 部 の 針 葉 断 面 は、 縦 横 比 が ほ ぼ1:1よ り少 し 横 長 気 味 で あ るが 、 中部 か ら下 部 に行 くほ ど、 縦 長 に変 化 して行 く傾 向 が あ る こ とを見 い だ した 。下 部 の針 葉 断 面 の 縦横 比 は 、完 全 な縦 長 で あ っ た1)。   そ こで 、 針 葉 断 面 が 縦 長 で あ る京 女 の 森 の 大 杉 は オモ テ ス ギ で はな い か 、 ま た ア シ ウス ギ の針 葉 断 面 は横 長 の傾 向 が あ る の で は な い か と考 え た。 も し、 そ うで あ れ ば 針 葉 断 面 を計 測 す る こ とで、 ア シウ ス ギ とオ モ テ ス ギ を区 別 す る こ とが 可 能 と な る。 こ の仮 説 を証 明 す る に は 、 典 型 的 な オ モ テス ギ とア シ ウス ギ を 選 ん で 、 木 の 上 部 か ら下 部 まで の 針 葉 を 採 取 しそ の 断 面 の縦 横 比 を測 定 す る 必 要 が あ る。 ヱ

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  そ こ で、 確 実 な オモ テス ギ と して約400年 前 に植 え られ た とい う記 録 が残 され た奈 良県 吉 野 郡 川 上 村 の吉 野 杉 を選 び、 そ の 吉 野杉 につ い て 上 部 か ら下 部 まで の針 葉 を採 集 して縦 横 の 長 さ を、 改 善 し た計 測 法 で 正確 に測 定 した。 今 ま で に、 1本 の ス ギ で 樹 冠 の上 部 と下 部 につ い て針 葉 の 断 面 を比 較 した研 究 は見 当 た ら な い 。 典 型 的 な オモ テ ス ギ で あ る吉 野 杉 で針 葉 断 面 の 比 較 検 討 を お こな っ た の で 、得 られ た結 果 を報告 す る。   同 時 に、 日本 列 島 各 地 に分 布 す る ス ギ につ い て の調 査 結 果 も報 告 す る。 2.日 本 列 島 に お け る 天 然 生 ス ギ の 分 布   2-1  ス ギ と は何 か   高 原 光2)は 「図説   日本植 生 史」 の 中 で 、ス ギ につ い て次 の よ うに述 べ て い る 。   「ス ギ(Cryptomeyia  japonica D. Don)は 、 第 三 紀 の温 暖 な気 候 に適 応 した植 物 群 が 姿 を消 して 行 くな か 、 第 四 紀 更新 世 にな っ て 日本 列 島 に現 れ、100万 年 前 頃 メ タセ コイ ァ な どが 消 滅 した 後 、更 新 世 中 ・後期 に成 っ て繁 栄 して 来 た。 現 在 、 ス ギ は、 青 森 県 の鰺 ヶ沢 を北 限 と し、 不 連 続 で あ る が、 鹿 児 島 県屋 久 島 の 南 限 地 ま で 天 然 分 布 して い る。 垂 直 分 布 で は、 和 歌 山県 新 宮 市 浮 島の 森 の標 高Om か ら、 最 高 は富 山県 立 山剣 岳 地 方 の標 高2050mで あ る。 天 然 ス ギ と混 交 す る樹 種 は、 日本 海 側 で主 に ブ ナ 等 の 冷 温 帯 性 落 葉 樹 、 太 平 洋 側 で は モ ミ、 ツ ガ、 ヒ ノ キ な どの 温 帯性 針 葉 樹 で あ る。」   日本 列 島 にお け る ス ギ の 天 然 分 布 につ い て は、 古 くは本 田静 六3)が 、 ス ギ の 野 生 地 と し て、 羽 後 の秋 田 郡 、 陸 中岩 手 郡 の 西 北 部 、 陸 前 玉 造 郡 の 軍澤 岳 、相 模 愛 甲郡 の丹 沢 山、 信 濃 安 曇 郡 西 部 の 諸 山、越 中 新 川 郡 の黒 部谷 字 猫 又 谷 、 近 江 の 比 良 山脈 、 丹 波 北 桑 田 郡 由 良川 水 源 の 山 中、 但 馬 の妙 見 山、 石 見 鹿 足 郡左 澄 村 、 美 濃 郡 紙 租 村 お よび 那 賀 郡 程 原村 等 の 山 中、 安 芸 西 北 部 山 中 の石 見 国境 付 近 の 山地 及 び佐 伯 郡 恵 下 山、土 佐 安 芸 郡 魚 梁 瀬村 山 中、阿 波 海部 郡 西 南 の 山 中、 大 隅 の屋 久 島 と をあ げ て い る。 こ の 地域 が 現 在 の どの場 所 を指 す か の 精 査 は措 くと して 、全 国各 地 に天 然 生 の ス ギ群 落 が見 られ た こ とが わ か る。 2

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      日本列 島におけるスギの分布状況 と針葉の形態変化について   また 、日本 産主 要 樹 種 の天 然 分布(ス ギ の 天然 分 布 概 説)を 調 べ た 林 弥 栄4)は 、 ス ギ の 北 限 は、 青 森 県 西 津 軽 郡 鰺 ヶ 沢 町 、 矢 倉 山 国有 林 で 、南 限 は鹿 児 島 県 熊 毛 郡 屋 久 町、 屋 久 島 国有 林 で 、 北 緯40度42分 か ら30度15分 の暖 温 帯 か ら冷 温 帯 に及 ぶ と述 べ て い るが 、 宮 島寛5)は 古 くか ら伐 採 が され て 、 造 林 が く り返 さ れ て きた の で 自生 地 域 の詳細 は明 らか で ない と述 べ て い る 。   現 在 、 天 然 生 ス ギ の産 地 は 、青 森 、秋 田 地 方 、 北 陸、 山 陰 地 方 等 の い わ ゆ る 日本 海 側 の各 地 と、 伊 豆 半 島、 紀 伊 半 島 、 四 国 の 東 南 部 及 び屋 久 島 等 のい わ ゆ る太 平 洋側 の各 地 で あ る(図1参 照)。   日本 海 側 で あ れ 太 平 洋 側 で あ れ 、 図2か ら こ れ らの 地 域 の 特 色 は年 間 降水 量 が1500ミ リ以 上 の 地域 で あ る こ とが わ か る。 ま た、 ス ギ は 吉 良 竜 夫6)の 定 義 し た 「あ た た か さ の 指 数 」 に 対 して広 い 適 応 域 を有 し て お り、 分 布 の 中心 域 は、 最 寒 月 の 平 均 気 温 が 一2.0∼4.0℃、 最 暖 月 の 平 均 気 温 が20.0∼25.0℃で 、 年 間 の平 均 気 温 が10.0∼14.0℃ にあ る と林 弥 栄9)は 述 べ て い る。 つ ま り、 ス ギ の分 布 域 は 冷 温 帯 の 南 部 に あ る とい え る。   こ の よ うな 各 地 に分 布 した ス ギ は 、 気 温 と降水 量 等 の 気 候 的 な影 響 を受 け て 自然 選 択 が 進 み 、 地 域 変 異 種 が 出 来 た と考 え て、 村 井 三 郎7)は 日本 海 側 に分 布 す るス ギ をウ ラス ギ、 太 平 洋 側 に分 布 す る スギ をオ モ テ ス ギ と概 念 的 に呼 ん だ。   ウ ラス ギ は、冬 期 が 低 温 多 湿 の 裏 日本 型 気 候 に 生 育 す るス ギ で、 そ れ に対 し て オ モ テ ス ギ と は夏 期 が 高 温 で 多 湿 な気 候 で生 育 す るス ギ で あ る。 これ は気 候 型 で ス ギ を大 別 し た に す ぎな い が 、 林 業 関 係 者 の 間 で は よ く使 わ れ る分 類 で あ る。   ウ ラス ギ系 統 の ス ギ は 、 オ モ テ ス ギ 系 統 の ス ギ に 比 べ て耐 陰性 が 強 く、 下 枝 が 枯 れ ず に降 雪 で垂 れ 下 が り、 地 面 に枝 が つ く と発根 す る、 す な わ ち伏 条 更 新 を す る の が 特 色 とい わ れ て い る。 こ の伏 条 性 天 然 ス ギ を京 都 帝 国 大 学 の 芦 生 演 習 林 で 初 め て 目 に した 中 井 猛 進 は、 こ れ を と くに ア シ ウ ス ギ(Cryptomeyia japonica var. radicans NAKAI)と 命 名 し、 ス ギ の 一 変種 で あ る と した8)。   こ こで 問 題 な の は、 村 井 三 郎 の 行 っ た生 育 す る 気候 型 で の分 類 で あ る ウ ラス

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ギ とオ モ テ ス ギ とい う呼 称 と、 中 井 猛 ノ進 が京 都 帝 国 大 学 芦 生 演 習 林 で 目 に し た伏 条 性 の ア シ ウ ス ギ とが 同 じ概 念 で は な い とい う点 で あ る。 この 点 が 現 在 に 至 る まで混 同 され て 来 て い る。今 か ら約30年 程 前 に 「杉 の来 た道 」(1976)を 著 した 島 根 大 学 農 学 部 教 授 の 遠 山富 太 郎9)は 、 ス ギ の 針 葉 の 曲 が り具 合 を全 国 の ス ギ で 調査 した研 究 成 果 か ら、 この2つ の系 統 は生 態 型(ecotype)で 連 続 的 な 変 異 で あ り、 エ コ ク ライ ン(ecocline;生 態勾 配)に 該 当 し、 区別 で きな い とい うス ギ の 一元 論 を主 張 した 。   と こ ろ が、 現 在 、 多 くの 成 書 で は 中 井猛 ノ進 の 命 名 した ア シ ウ ス ギ、 あ るい は村 井 三郎 の 呼 ん だ ウ ラ ス ギ とオ モ テ ス ギ とい う、 い わ ば二 元 論 が 既 成 事 実 化 して お り、 遠 山 富 太 郎 が 針 葉 形 態 の 計 測 結 果 か ら主 張 した 一 元 論 は無 視 され て い る。 もち ろ ん 、真 実 が どち らに あ る か は、 今 後 の研 究 成 果 に待 た ね ば な らな い こ とはい う まで もな い。   こ の よ う な矛 盾 し た既 成概 念 と科 学 的 な事 実 が 並 立 して お り、 ス ギ に 関 して の 謎 が 生 まれ て い る。 した が って 、 我 々 の研 究 成 果 が こ の よ う な状 況 を 明 らか に す る手 だ て を提供 で き る もの で は ない か と考 え て い る。 4

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図2  日本列 島 の 気温 と降 水量(気 象 庁 日本 気候 図)

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      日本列島におけるスギの分布状況 と針葉の形態変化 について 3.九 州 の ス ギ に つ い て の 調 査       オ ビ   平 成20年7月23日 ∼26日(3泊4日)に 宮 崎 県 日南 市 にあ る飯 肥杉 を調 査 した。 飲 肥 杉 は 、 初 代 飲 肥 藩 主 で あ る伊 東 祐 兵(い と うす け た か)が17世 紀 初 め に窮 乏 す る財 政 を立 て 直す た め に植 林 した の が 始 ま り とされ 、約400年 の歴 史 が あ る。 宮 崎県 日南 市 北 郷 町北 河 内 に あ る 三 ツ 岩材 木 遺伝 資 源保 存 林(標 高330m、 南 東 斜 面5ヘ ク ター ル)に は、樹 齢130年 の杉 が残 され て い る。 「ア カ」「トサ グ ロ」「ア ラ カ ワ」 と い っ た 九州 地 域 に現 在 見 られ る飯 肥 杉 はす べ て 、 挿 し木 で 増 や さ れ た もの で あ る。 九 州 地 方 で は、 お そ ら く天 然 生 の ス ギ は すべ て 伐 採 さ れ た た め 消 滅 した もの と考 え られ るが 、 宮 崎 県東 臼杵 郡 北 方 町 の 渡 瀬 国 有 林 内 に は鬼 の 目 山材 木 遺 伝 資 源 保 存 林 が あ り、1985年 の 宮 崎 大 学 の調 査 に よ り、 林 内 に生 育 す るス ギ は 天然 性 で あ る と報 告 され、 「鬼 の 目杉 」 と して 知 られ て い る。   塚 田松 雄1°)は花 粉 分 析 の結 果 か ら、 九 州 の ス ギ は 第4紀 更新 世 の 最 終 氷 期 最 盛 期(約25,000年 ∼ 約15,000年 前)以 前 に そ の 姿 を消 し、 完 新 世 晩 氷 期 を経 て、 後 氷 期R皿a末 期(約4,50(}年∼1,500年前)ま で はス ギ は なか っ た が、'II.期(約 1,500年前 以 降)に な る と、 ほ とん ど同時 に 九州 各 地 で 見 られ る よ う に な っ た と 述 べ てい る。 この 理 由 と して、 「人 間 の意 図 的 な植 林 な しに は考 え られ な い。 す な わ ち、 九 州 のR皿b期 に み られ る スギ は、(お そ ら く)本 州 か ら もた らされ た もので あ ろ う。」 と して い る が、 本 州 か らで は な く屋 久 島か ら来 た可 能 性 が あ げ られ る。   事 実 、江 戸 時 代 の 三 大 農 学者 の 一 人 であ る大 蔵永 常 著 「広 益 国産 考 」(1859)に 、 「今 か ら百 五 、 六 十 年前 に屋 久 島 か ら採 集 した杉 の種 を吉 野郡 に播 い て、 苗 を仕 立 て た 」 と書 か れ て い る こ とか ら、 現 在 の オ モ テス ギ が屋 久 島 か ら16世 紀 に は 持 ち込 まれ た もの と考 え られ る(龍 谷 大 学 の江 南 和 幸 教 授 か らの教 示 に よ る)。   した が っ て、 現 在 九 州 各 地 に見 られ る ほ とん どの杉 林 は400年 前 か ら各 藩 で植 林 され た もの で あ る と考 え て 良 さ そ うで あ る。 7

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4.オ モ テ ス ギ に 関 す る 調 査   オモ テ ス ギ の 典 型 的 なス ギ と して、400年 前 に植 林 され た奈 良 県 吉 野 郡 川 上 村 下 多 古 に 生 育 し て い る 吉 野 杉 を選 び、 平 成20年5月2日 に川 上 村 役 場 の 許 可 を 得 て調 査 を実 施 した 。 「歴 史 の証 人」 と よば れ る地 域 に生 育 す る最 大 の ス ギ の樹 の樹 高 は51.1m、 幹 周 は5.42mで 、 隣接 す る調 査 木 の樹 高 は3&4m、 幹 周3.95mで あ っ た。 土 地 の 傾 斜 は東 勾 配 が30°∼35°、 歴 史 の証 人 地 域 の最 大 の ス ギ と調 査 木 の ス ギ と は斜 面 距 離 で36m離 れ て い た。 杉 の種 取 り名 人 で あ る杉 本 充 氏 に依 頼 して、 調 査 木 の上 部 、 中 部 、 下 部 か ら杉 針 葉 をサ ン プ リ ング した 。 そ の サ ン プ ル につ い て 解 析 した結 果 を報 告 したい 。 以 下 、 この ス ギ を吉 野 大杉 と呼 ぶ 。   4-1  吉 野 大杉 の針 葉 断 面 の 調 査 結 果   吉 野杉 は、1haあ た り10,000本前 後 の苗 を密 植 す る た め 、 自然 落 枝 を し、 す らっ と した幹 を得 る の に適 して い る。 幹 の上 へ の伸 長 は著 し く、樹 高 は 高 い が、 肥 大 生 長 は緩 や か で 、 年輪 の密 な極 め て良 質 の材 が得 られ る。   今 回 サ ン プ リ ング 及 び 測 定 に用 い た 吉 野 杉 は、 奈 良県 川 上村 下 多 古 の 「歴 史 の証 人一 下 多 古 の森一 」 に あ る 大杉(幹 周5.42m、 樹 高51.1m、 樹 齢380年)の す ぐ隣 の 大杉(幹 周3.95m、 樹 高38.4m)で 、 同 年代 の 植 樹 と され てい る もの で あ る(測 定 は宮 本 氏 に よる)。 こ の杉 の枝 下 は地 上 か ら21.5mで 、 樹 高 の2分 の1 よ り上 で あ る。 調 査 地 点 は 標 高約600mの 北 向 き斜 面 で あ る。   2008年5月3日 にサ ンプ リ ング を行 っ た。 サ ン プ リ ング は 、杉 の種 取 り名 人 杉 本 充氏 と 「森 と水 の 源 流館 」 の皆 さ ん の ご協 力 で 行 っ た。   枝 葉 の 採 集 は樹 冠 上 部1(地 上 か ら35.7m)、 中上 部II(地 上 か ら30。2m)、中 下 部 皿(地 上 か ら25.2m)の3段 階 の 高 さ に分 け て行 い、 そ れ ぞ れ東 西 南北 の4 方 向 に 出 る枝 を 採 集 し た。 こ の吉 野 杉 は下 部 の枝 は 自然 落 枝 してお り、 枝 下 高 は樹 高 で い う と真 ん 中 よ り上 部 で あ る。 した が っ て 、樹 冠 中 下 部(皿)と い っ て も、他 の地 域 の杉 で い う と中 部 よ り上 に相 当す る。   こ う して、 得 られ た 材 料 を、 これ まで 行 っ て きた 方 法 を検 討 した改 良法 で測 8

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      日本列島におけるスギの分布状況 と針葉の形態変化 について 定 した。 そ の 結 果 、 ス ギ の枝 葉 、 針 葉 の 形 態 が、 上 部 か ら下 部 にか け て著 し く 変 化 し、 また 方 位 に よ っ て も小 さ くない 変 化 をす る こ とが わ か っ た。 この よ う な成 果 は、 今 後 の 杉 研 究 に とっ て 重 要 な新 知見 を も た らす と と もに、 各 地 の ス ギの 針 葉 断 面 の形 態比 較 に とり て 、基 礎 的 な資料 とな る。   4-2  今 回用 い た新 しい 方 法 (1)新 しい方 法 の 開発 とそ の意 義   2008年 度 の研 究 報 告 「京都 北 山 に お け る ア シ ウス ギ とオ モ テ ス ギ の分 布 調 査 」 で示 したデ ジ タ ル ノ ギス を用 い た 測 定 法1)は 、 生 葉 で 測 定 をす る もの で あ る が、 こ の方 法 は 時 間 の経 過 と と もに 水 分 を失 い 、針 葉 の 変 形 が 進 行 す る とい う問 題 点 を含 ん で い た。 前 年 枝 の春 ∼ 秋 の 伸 長 部 全 域 か ら30本 の 針 葉 を測 定 した した た め、 針 葉 の 大 き さ に差 が あ り、 ば らつ きが 大 きか っ た。 また 、針 葉30本 を取 りづ らい 前 年 枝 もあ る な ど問 題 が あ っ た。 加 えて 、 ノギ ス で針 葉 の変 形 を起 こ さ な い よ う に挟 み 測 定 す る こ と に は、 か な りの 熟 練 を要 す る た め、 だ れ もが で きる方 法 、 い つ で も測 定 で き る方 法 を検 討 し、 改善 した。   新 しい 方 法 は、 採 取 さ れ た枝 葉 をす み や か に ア ル コ ー ル で保 存 し、 そ の針 葉 を用 い、1本 の 前 年 枝 に つ き中 央 部 の 針 葉 を6本 選 ん で、 ニ ワ トコの 芯 を用 い て、 針 葉 中央 部 の 切 片 を切 り出 し、 実 体 顕 微 鏡 下 で 針 葉 中央 断面 の縦 長 と横 長 を測 定 す る も の で あ る。 そ して 、 これ を5本 の 前 年 枝 に つ い て 行 い、 合 計30の デ ー タ を得 る もの で あ る。こ の方 法 で は、ア ル コ ー ル漬 けで 固 定 され てい るた め、 いつ で も測 定 が で きる。 また 、針 葉 は生 葉 の と き と同 じ状 態 で変 形 が み られ な い の で、 針 葉 中 央 の切 片 が極 め て 正 確 に得 られ る。 測 定 も実 体 顕 微 鏡 下 で 行 う た め、 精 確 で あ る。 樹 脂 が抜 け 、 切 片 が ピ ンセ ッ ト、 柄 付 針 に く っつ か ず 、 扱 い や す い。 予 備 の 枝 葉 を用 い て も差 の少 な い デ ー タが え られ、 再 現 性 が担 保 さ れ てい る。   した が っ て、 今 回 の 方 法 は、 だ れ に もで き る方 法 で、 個 人差 が な く、 しか も 精 確 とい え る。 9

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図3  スギ枝 ・針 葉の 測定 部 位 (2)新 しい 測 定法 の手 順   1.枝 葉 を上 部 ・中部 ・下 部 に分 け、さ らに 、方 角 を確 認 し、サ ンプ リ ングす る。   2.枝 葉 は即80%エ タノ ー ル に漬 け る。   3.測 定 の手 順     a.エ タ ノ ー ル漬 け か ら枝 葉 を 取 り出 し、 前 年 枝 の 長 さ(①)、 幅(②)       を測 定 す る。     b.前 年 枝 中央 の 針 葉 の長 さ(③)と 先 端 の 高 さ(④)を 測 定 す る 。     c.ニ ワ トコの 芯 に柄 付 針 で穴 を 開 け、この 針 葉 を先 端 を奥 に して、入 れ る 。     d.カ ミソ リ で、 針 葉 の 中央 手 前 か ら切 片 をつ くる。 厚 さは、0.3mmぐ ら      い にそ ろ え る。     e.残 した針 葉 の先 端 の 長 さ を測 定 す る。 これ に、 切 片 の厚 み を足 す な ど       し て、 中央 の 切 片 を特 定 す る。     f.0.1mm方 眼付 ス ラ イ ドグ ラス の上 に切 片 を 載 せ 、 実 体 顕 微 鏡 下 で、 針      葉 中央 断 面 切 片 の 縦 長 と横 長 を測 定 す る。 IO

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      日本列 島におけるスギの分布状況 と針葉の形態変化について g  cか らfの 作 業 を、1本 の前 年枝 につ い た5本 の 針 葉 につ い て 行 う。 h  以 上 の操 作 を6本 の 前 年 枝 に つ い て行 い、 合 計30の デ ー タ を得 る。 そ   し て、 平 均 値 、 最 大 値 、 最 小 値 、標 準 偏 差 な ど を求 め る。    測 定 す る 形 質 は、 ① 前 年 枝 の 春 ∼ 秋 伸 長 部 の長 さ、② 前 年 枝 の春 ∼秋 伸 長 部 の最 大 幅[mm]、 ③ 針 葉 の 基 部 一先 端 間距 離[mm]、 ④ 針 葉 の       タテチョウ 先 端 の 高 さ[mm]、 ⑤ 針 葉 中 央 断 面 の 縦 長[mm]、 ⑥ 針 葉 中 央 断 面 の   ヨ コチ ョ ウ 横 長[mm]、 ⑦ 針 葉 中央 断 面 の 型 、 の7つ で あ る。 刀

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(3)生 葉 の針 葉 中央 断 面 の い ろ い ろ な型       A型 B型 C型 D型 E型 F型 *方 眼1目 盛 り は 、100μm(0.1mm)で あ る 。 ヱ2

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      日本列島にお けるスギの分布状況 と針葉の形態変化 について く 各 型 の 特 徴 〉   ス ギ 針 葉 の 中央 部 断 面 の 型 を調 べ る と、 次 の6型 が 区 分 され た 。 そ れ ぞ れ の 生 葉 で の写 真 を示 す と と もに、 以 下 に特徴 を記 す 。   A型:縦 長 で 左 右 の 出 っ張 りが 弱 い 。 サ ンプ ル:滋 賀 県海 津 神 社(下 部針 葉)。   B型:縦 長 で左 右 の や や 角 ば った 出 っ張 りが め だ つ。 サ ン プ ル:滋 賀 県 海 津        神 社(下 部針 葉)。   C型:縦 長 の こ とが 多 い が、 と き に 横 長 に な る こ と も あ る。4方 向 の 出 っ張         りは丸 み が あ る が、 上 下 方 向 に比 べ 、 左 右 方 向 が狭 い 。 サ ンプ ル:海        津 神 社 ス ギ(上 部 針 葉)。   D型:楕 円 形 か ら円形 に ち か く な るも の で 、左 右 の 出 っ張 りが短 い。サ ンプ ル:        京 都 市 左 京 区 久 多 の スギ(若 い個 体)。   E型:縦 長 の 菱型 に近 い 形 とな る もの 。出 っ張 り間 の 窪 み が ほ とん どない もの 。        サ ンプ ル:京 都市 左 京 区久 多 の ス ギ(若 い個 体)。   F型:上 下 の 出 っ張 り が広 い 丸 み を帯 び る の に対 して 、左 右 の 出 っ張 り が し         ば しば 鋭 角 に な る も の。 サ ンプ ル:富 山 県杉 沢 の スギ 。 OA∼E型 は オ モ テ ス ギ に、 F型 は ア シ ウ ス ギ(ウ ラ ス ギ)(富 山 県杉 沢 、 鍋 谷   山産)と され る もの に見 られ る。 杉 沢 で は、A∼Eの 型 も混 在 す る こ とか ら、   オ モ テス ギ が か な り入 っ て い る もの と推 測 され る 。 ○ 下枝 の針 葉 はA、Bの 葉 を もつ 。 若 い 個 体 に は、 D型 やE型 も見 られ る。 ○大 木 の 林 冠 上 部 の針 葉 はC型 の葉 を もつ 。C型 の横 長 型 は と き にF型 に類 似   す る こ とが あ る。 13

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表1測 定表 スギ枝 ・針 葉7形 質の測定表 枝 N O 0 0 0 ④ O 採 集 部 位   ス 'ギ 品 の 種 系   統 産 地 測 定者: 測 定 日: .採

最小 最大 平均値 標準偏差 前年枝 の 春 ∼秋伸長 部 長 さ 寮邑 最 大 幅 冨 邑 針    葉 測 定 針 葉 N O 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6

麟轟

一 間   先

冨塗

ulf-° C   中 門 央 日 断 旨 面 u縦   長   中 r-,央 § 断 ヨ 面 u横   長   中

  型 14

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              日本列 島におけるスギの分布状況 と針葉の形態変化について II.測 定 結 果 表2  前 年 枝 の春 ∼ 秋 伸 長 部 の 長 さ、 最 大 幅 合    計 個    数 最    大 最    小 平 均 値 標 準偏 差 合     計 個    数 最    大 最    小 平 均 値 標 準 偏 差 合    計 個    数 最    大 最    小 平 均 値 標 準 偏差 1一 西 春 ∼ 秋部 の 長 さ [mm] 147 5 32 27 29.4 2.07 最 大 幅 [mm] 27.8 5 6.3 5.1 5.5 0466 II一 西 春 ∼秋 部 の長 さ Cmm] 1172 5 36 33 /1 1ユ4 最大 幅 [mm] 32.6 5 7.0 6.0 6.5 1 皿 一 西 春 ∼ 秋部 の長 さ [mm] 195 5 43 35 39.0 1' 最 大 幅 [mm] 30.4 5 6.4 5.5 6.0 0.356 1一 北 春 ∼ 秋 部 の長 さ [mm] 126 5 31 20 25.2 4ρ8 最大 幅 [mm] 25.4 5 5.5 4.6 5.5 0.426 II一 北 春 ∼秋 部 の 長 さ [mm] 149 5 31 28 ・; 1.30 最 大 幅 [mm] ., 5 6.3 5.3 6.5 0.376 皿 一北 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 183 5 42 36.6 3.43 最大 幅 [mmコ 28.3 5 6 5.3 6.0 0.328 1一 束 春 ∼秋 部 の 長 さ [mm] 161 5 35 31 32.2 1.64 最 大幅 [mm] 30 5 6.5 5.5 6.0 0.412 II一 束 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 168 5 36 31 33.6 1.94 最 大 幅 [mm] :1 5 6.3 5.2 5.6 0.452 皿 一束 春 ∼ 秋部 の長 さ [mm] 169 5 36 31 33.8 1.92 最 大 幅 [mm] 34.5 5 7.3 6.5 6.9 0400 1一 南 春 ∼秋 部 の 長 さ [mm] 141 5 30 27 28.2 1.09 最 大幅 [mm] 30 5 6.5 5.5 6.0 0.412 II一 南 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 184 5 40 31 36.8 4ρ8 最大 幅 [mm] 29.3 5 6 5.5 5.8 0.207 皿 一南 春 ∼ 秋部 の長 さ [mm] 197 5 42 39.4 1.67 最 大幅 [mm] 34.5 5 7.3 6.5 6.9 111 ヱ5

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図4  前年枝の春∼秋伸長部の長 さと最大幅

図5  前年枝の春∼秋伸長部の長さと最大幅

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日本 列 島 にお ける ス ギの分 布 状 況 と針 葉 の形 態変 化 につい て 図6  前年枝の春∼秋伸長部の長さと最大幅 ① 春 ∼ 秋 伸 長 部 は、 北 側 が 短 く、 最 大 幅 も小 さい 。 最 大 幅 は、 西 側 と南 側 で や   や 大 き くな る傾 向 が あ る。 ② 高 さが1→ ∬→ 皿 と下 が る につ れ 、 春 ∼秋 伸 長 部 の長 さ と最 大 幅 が 大 き くな   る。 吉 野 杉 は、 下 部 に枝 を欠 くた め、 全 体 と して は コ ンパ ク トで端 正 な枝 葉 ・   針 葉 をつ け る特 徴 が あ る。 しか し、 最 上 部 か ら中部 に か け て 、 次 第 に大 き な   枝 葉 や 針 葉 をつ け る傾 向 が認 め られ る。 17

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表3  針 葉 の基 部 ・先 端 間距 離 、 先 端 の高 さ 合    計 個    数 最    大 最    小 平 均 値 標 準 偏差 合    計 個    数 最    大 最    小 平 均 値 標 準 偏差 合    計 個    数 最    大 最    小 平 均 値 標 準 偏差 1一 西 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 192.7 30 6.9 6 6.42 0.229 最大 幅 [mm] 59.3 30 2.8 1ユ 1.97 0.431 II一 西 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 1・ ・ 30 7.5 6.6 ・': 0.243 最大 幅 [mm] 77.3 30 3.2 2.0 2.57 0.353 皿 一西 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 232.7 30 8.6 7.1 7.75 'III 最 大幅 [mm] 66.2 30 3.2 1.2 2.20 'II 1一 北 春 ∼ 秋部 の 長 さ [mm] 165.3 30 6 4.7 5.51 0.356 最 大 幅 [mm] 61.3 30 2.5 1.4 1.97 1:' II一 北 春 ∼秋部 の長 さ [mm] 193.4 30 6.8 5.9 6.44 0.212 最 大 幅 [mm] ・ ・ 30 3 1.7 2.57 0.341 皿 一 北 春 ∼ 秋部 の長 さ [mm] 222.2 30 7.9 6.6 7.40 0.330 最 大 幅 [mm] 61.3 30 2.7 1.6 2.20 0.287 1一 束 春 ∼ 秋 部 の長 さ [mm] 205.4 30 7.4 6.3 684 0248 最 大 幅 [mm] 67.4 30 3 1.8 2.24 0.270 II一 束 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 1.... 30 7.5 6.5 .・ ・ 0.330 最 大 幅 [mm] 66.5 30 3 1.6 2.21 0.363 皿 一 束 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 209.7 30 7.5 6.2 6.99 1:・ 最 大 幅 [mm] 66.5 30 3.0 1.6 2.21 0.363 1一 南 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 178.2 30 6.3 5.6 5.94 1:・ 最大 幅 [mm] 67.4 30 3 1.8 2.24 0.270 II一 南 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 211.5 30 7.8 6.3 7.05 0.473 最大 幅 [mm] 66.5 30 3 1.6 2.21 0.363 u  南 春 ∼秋 部 の長 さ [mm] 230.2 30 8.4 7.0 7.67 0.377 最大 幅 [mm] 66.5 30 3.0 1.6 2.21 0.363 Z8

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日本列 島 にお け る スギ の分 布状 況 と針 葉 の 形態 変化 につ い て

上 部1

図7  上 部1に 於 ける針 葉 基部 一先 端 間距 離 と先 端 の高 さ ① 基 部 一先 端 間 の 距 離 は4.7-7.4mmで 、 先 端 の 高 さは3.Omm以 下 で あ る。 方 位 別   大 き さの 順 は、 東 〉西 〉南 〉北 の 順 で あ る。 基 部 一先 端 間 の距 離 は東 側 で 大   き く、 北 側 で小 さい。 ② 先 端 の高 さ は、南 側 でや や 大 きい。 19

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中上 部H

図8  中上部 皿に於 ける針 葉基部一先端間距離 と先端の高さ ① 基 部 一先端 間 の距 離 は5.9-7.8mmで 、 先端 の 高 さは3.2mm以 下 で あ る 。方 位 別   大 き さ の順 は 、 南 〉東 〉西 〉北 の順 で あ る。 基 部 一先 端 間 の 距 離 は南 側 で 大   き く、 北側 で小 さい。 ② 先 端 の高 さ は、東 側 が と くに小 さい 。 20

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日本 列 島 にお け るス ギ の分 布状 況 と針 葉 の 形 態変 化 につい て

中下部 皿

      図9  中 下部 皿 に於 け る針 葉 基 部 一先 端 間距 離 と先 端 の 高 さ ① 基 部 一先 端 間 の 距 離 は6.2-8.6mmで 、 西 側 ・南 側 で 大 き く、 東 側 で 小 さ い 。 大   き さ の 順 は 、 西 〉 南 〉 北 〉 東 の 順 で あ る 。 枝 の つ く位 置 の 高 さ で み る と、 皿   >H>1と な る 。 ② 先 端 の 高 さ は3.4mm以 下 で あ る 。 枝 の つ く位 置 の 高 さ で み る と、 皿>H>1   と な る 。       21

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表4  針葉中央の横長 と縦長 合 計 個 数 最 大 最 小 平 均 値 標 準 偏 差 1一 西 針葉 横長 24.49 30 0.92 0.74 0816 0.0419 針葉 縦長 24.43 30 0.91 0.73 0.814 OD468 1一 北 針葉 横長 23.35 30 0.84 0.71 o.77s 0.0329 針葉 縦長 21.95 30 0.84 0.69 0.8143 0.0325 1一 束 針葉 横長 25.73 30 0.92 o.s 0.857 0.0333 針葉 縦長 23.89 30 0.88 1.: 1'・ 0.0484 1一 南 針葉 横長 25 30 0.92 0.74 0.833 0.0426 針葉 縦長 23.89 30 1.... 1・: 1・ ・ 0.0484 合 計 個 数 最 大 最 小 平 均 値 標 準 偏 差 II一 西 針葉 横長 23.83 30 o.s7 0.76 0.794 0.024023 針葉 縦長 23.98 30 1:・ 0.73 0.799 0.030278 II一 北 針葉 横長 22.37 30 o.s 1・: 0.745 OD34609 針葉 縦長 22.93 30 0.83 0.7 0.799 0.034309 II一 束 針葉 横長 24.19 30 1:・ 0.73 1:1・ 0.044759 針葉 縦長 24.36 30 088 0.75 0.812 0.025918 II一 南 針葉 横長 23.35 30 0.84 0.72 0.778333 0.035534 針葉 縦長 24.36 30 1.... 0.75 0.812 0.025918 合 計 個 数 最 大 最 小 平 均 値 標 準 偏 差 皿 一 西 針葉 横長 22.77 30 o.gl 1・: 0.759 0.0291 針葉 縦長 24.77 30 0.9 0.76 0.825 0.0377 m一 北 針葉 横長 22.97 30 0.84 0.7 0.765 0.0343 針葉 縦長 21.46 28 0.84 0.71 0.825 0.0372 皿 一束 針葉 横 長 26.03 30 094 0.81 1:・ 0.0365 針葉 縦長 25.87 30 0.95 0.8 1:・ 11・ ・ 皿 一南 針葉 横長 24.58 30 0.9 0.77 1:・ 0.0349 針葉 縦長 25.87 30 0.95 o.s 1:. 11'・ 22

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日本列 島に お ける ス ギの分 布 状 況 と針 葉 の 形態 変 化 につ い て

上 部1

図10  上部1に 於 ける 方位 に よ る比 較 ① 全 体 と して は、 横 長 の もの が多 い 。 ② 東 側 の 枝 で は測 定 値 の す べ て が横 長 で あ る。 こ れ に 対 して、 西 側 の枝 で は、   縦 長 の も の が多 く、横 長 、 縦 長 と もに大 きい も のが 多 い。 南 側 の 枝 で は ほ と   ん どが 横 長 で、 横 長 と縦 長 の 間 に は や や 強 い 正 の相 関 が 認 め られ 、 広 い変 異   域 を示 す 。 北 側 の 枝 で は、 ほ とん どが横 長 で あ る が 、横 長 、 縦 長 と もに小 さ   い もの が 多 く、横 長 と縦 長 の 間 の相 関 は弱 い。 23

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中上 部II

図11  中上 部 皿に於 ける方 位 に よ る比 較 ① 全 体 と して は 、縦 長 の ものが や や 多 い 。1に 比 べ 、 縦 長 に シ フ トしてい る。 ② 東 側 の枝 で は 測 定 値 の 大 部 分 が 横 長 で あ る。 これ に対 して 、 西 側 の 枝 で は、   横 長 、 縦 長 相 半 ばす る。 南 側 の 枝 で は ほ とん どが 縦 長 で 、1の 場 合 と対 照 的   で あ る。 北 側 の枝 で は 、縦 長 の ものが や や多 くな る。 24

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日本列 島 にお け るス ギ の分 布状 況 と針 葉 の 形態 変 化 につ い て

中下部 皿

図12  中下 部 皿 に於 け る方 位 に よ る比較 ① 全 体 と して は 、 縦 長 の も のが 多 い。1→H→ 皿 と明 らか に縦 長 に シ フ トして   い る。 ② 南 側 の枝 で は 測 定 値 のす べ て が縦 長 で 、1で ほ とん どが 横 長 で あ る の と対 照   的 で あ る。 西 側 の 枝 で も、 測 定 値 の す べ てが 縦 長 で あ る。 南 側 と西 側 とを比   較 す る と、横 長、 縦 長 と も南 側 の 方 が や や大 きい。 東 側 と北 側 の枝 で は縦 長:   横 長=1:1を 中 心 に変 異 域 が あ り、 東 側 の枝 の 方 が 横 長 、 縦 長 と もに 明 ら   か に大 きい 。 25

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西側枝

                  図13 西側枝 に於ける高 さによる比較

OI、 豆で は、 縦 長 と横 長 ほ ぼ半 々 混在 し、 皿 で はす べ て が縦 長 で あ る。

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日本 列 島 にお け るス ギ の分 布 状況 と針葉 の形 態変 化 につ い て

北側枝

      図14 北側枝 に於ける高 さによる比較 OIで は、大 半 が 横 長 で あ る 。 IIと 皿で は、横 長 と縦 長 が混 在 す る。 全 体 と して、   東西 南 北 の 中 で最 も狭 い 変 異域 を占 め る 。 27

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東側枝

図15  東 側 枝 に於 け る高 さ によ る比 較 OIで は 、 す べ てが 横 長 で あ る。 Hで は ほ とん どが 横 長 に、 皿で は 測 定 値 の す   べ て が 縦 長 に な っ て い る。1→H→1皿 と下 が る につ れ、 縦 長 か ら横 長 へ と針   葉 断面 の形 が 変 化 す る様 子 が認 め られ る。 28

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日本 列 島 にお け るス ギ の分 布状 況 と針葉 の形 態変 化 につ いて

南側枝

      図16 南側枝に於 ける高さによる比較 OIで は、 ほ と ん どが 横 長 で あ る。 これ に対 して、  IIで は ほ と ん どが 縦 長 に、   皿で は測 定 値 のす べ て が 縦 長 に なっ て い る。 29

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5.考 察   川 上 村 の 吉 野 大 杉 の前 年 枝 の春 ∼ 秋 伸 長 部 は、 北 側 が 短 く、 最 大 幅 も小 さい。 最 大 幅 は 、 西 側 と南 側 で や や 大 き くな る傾 向 が あ る。 高 さ が1か ら 皿へ と下 が る に つ れ 、 春 ∼ 秋 伸 長 部 の 長 さ と最 大 幅 が 大 き くな る。 こ の よ うに 、最 上 部 か ら中 部 にか け て、 次 第 に 大 き な枝 葉(図3の ① 、 ②)や 針 葉 を つ け る傾 向 が 認 め られ る。   吉 野大 杉 の基 部 一先 端 間 の 距 離 は4.7-7.4mmで 、先 端 の高 さ は3.Omm以 下 と非 常 に小 さ な針 葉 をつ け る 。   吉 野 大 杉 の針 葉 中 央 部 断 面 の形 態 の型 は、C型 で あ る。 C型 に も縦 長 の もの と横 長 の もの が あ り、1本 の 枝 の針 葉 に も両 者 は 混 在 す る。 吉 野 大 杉 以 外 の オ モ テス ギ で は 、 下枝 に な る に つ れ、 縦 が 長 くな りB型 やA型 が 現 れ るが 、 吉 野 大杉 で は下 枝 が な い ためC型 の み でA型 やB型 は現 れ ない 。   北 側 と南 側 を比 較 す る と、1∼ 皿 を通 じて 、 い ず れ も南 側 が 縦 横 と もに大 き い 葉 をつ け て い る こ とが 判 明 した 。   樹 幹 上 部1で は北 側 と南 側 の 差 は小 さ く、II、 皿 と下 が る につ れ、 北 側 と南 側 の差 は 大 き くな る。 これ は、樹 幹 上 部 は 相 対 照 度 に差 が あ ま りな く、H、 皿 で は、 周 辺 の 木 、 及 び 自 らの枝 葉 が 影 響 し、 方 角 に よ って 大 きな照 度 差 が生 じ て い る た め と思 わ れ る。   北 側 で は縦 長 、横 長 と も に1∼ 皿 と下 が る につ れ て 少 し小 さ くな る。南 側 で は、 縦 長 は1∼ 皿 と下 が る につ れ て大 き くな るが 、 横 長 は 皿で最 大 でHで 最 小 と な る。   吉 野 大 杉 の前 年 枝 の 春 ∼ 秋 伸 長 部 は短 く、 最 大 幅 も狭 い 。針 葉 も短 い 。 これ らは 、 吉 野 杉 が 密 植 され た結 果 、 自 然 落 枝 を促 す 施 業 方法 にそ の 原 因 はあ る と 思 わ れ る。 吉 野 大 杉 の針 葉 断 面 の縦 長 と横 長 の変 異 は極 め て 小 さい の は、 こ う した 施 業 方 法 に よ る も の と考 え られ る。 こ れ まで の デ ジ タ ル ノ ギス を用 い た測 定 方 法 で も、 オ モ テ ス ギ の下 部 枝 の 針 葉 と上 部 枝 の針 葉 とで は顕 著 な差 異 が 生 じて お り、 上 部 の 針 葉 は、 しば しば 、C型 の横 長 の もの に な る こ とが 判 明 して 30

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      日本列島におけるスギの分布状況 と針葉の形態変化 について い た。   以 上 、今 回 奈 良県 吉 野 郡 川 上 村 にあ る吉 野 大 杉 の調 査 に よ り、樹 幹 上 部 ∼ 下 部 、 東 西南 北 に よ っ て、 ス ギ枝 ・針 葉 の 大 き さや 形 態 は変 化 す る こ とが 今 回 の調 査 で初 め て 明 らか とな っ た。   したが って 、厳 密 な ス ギ針 葉 の比 較 の た め には 、測 定 に用 い た枝 葉 が どの高 さ、 方 位 の も の で あ る か を明 らか に す る必 要 が あ る。 今 回 明 らか に した、 吉 野 大 杉 の 詳 細 な測 定 は、 今 後 の 各 地 に お け る各 品 種 、 系 統 の針 葉 形 態 の 比 較 研 究 に新 た な手 法 を提 供 す る こ とに な る。 6.天 然 生 ア シ ウ ス ギ に 関 す る 調 査 結 果   京 都 市 内 に あ るい くつ か の 天 然 生 と言 わ れ て い る ア シ ウス ギ につ い て 調 査 し た。   平 成20年8月2日 、 佐 々里 峠 か ら登 り、 小 野 村 割 岳(京 都 府 南 丹 市 美 山 町 、 標 高971.5m)に 生 育 す る 天然 生株 立 の ア シ ウス ギ を調 査 し た。 これ らの杉 は一 見 す る と巨 大 な ア シ ウ ス ギ の よ うに 見 え るが 、 驚 い た こ とに そ の ほ と ん どの も の が杉 の 単 木 で は な くて 、 ヒ ノ キや ヤ マ グ ル マ 等 の木 と合 体 した 合 体 木 で あ っ た 。   さ らに、10月13日 に は、 地 蔵 峠 か ら登 り、八 宙 山 山頂(京 都 府 南 丹 市 美 山 町 芦 生 、標 高872m)付 近 に あ る天 然 生 ア シ ウス ギ を調 査 した 。 この 場 合 も、株 立 ア シ ウス ギ と呼 ば れ て い る ス ギ は 明 らか に ヒノ キ な ど と合 体 した もの で 単 木 で は なか っ た。   したが っ て 、今 回 の 調 査 か ら、 従 来 か らい わ れ て い る天 然 生 ア シ ウ ス ギ に は ヒ ノ キ や何 本 か の ス ギ が合 体 して 株 立 ち して い る よ う に見 え る もの が 含 まれ て い る こ とが 明 らか とな っ た 。 この こ とか ら杉 の 木 の外 観 だ け で ア シ ウス ギ とみ な す こ と に は大 い に 問 題 が あ る こ とが わ か っ た の で、 今 後 は 現 地 調 査 を して伏 条 台 杉 と呼 ば れ て い る 天然 生 ス ギ につ い て は再 検 討 す る必 要 が あ ろ う。 3ヱ

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7.お わ り に   今 回の 典 型 的 な オモ テス ギ で あ る推 定 樹 齢400年 の吉 野 杉 で の計 測 結 果 か ら次 の よ うな 結 論 が得 られ た。   1)上 部 の針 葉 断面 は縦 横 比 が横 長 か ら、1:1の 比 まで 分布 す る こ と。   2)中 部 の針 葉 断面 で は、 縦 横 比 が1:1か ら縦 長 に分 布 す る こ と。   3)枝 の 方位 に よ りス ギ針 葉 の 断 面 の比 が異 な る こ と。   した が っ て 、 ス ギ の針 葉 の 形 態 の 計 測 で は 、 ス ギ の 木 の どの 部分 の針 葉 を用 い た か で結 果 が 異 な る こ とが 明 らか とな っ た 。 この よ う な 問題 点 は従 来 の研 究 報 告 で は全 く指 摘 さ れ て こな か っ た こ とで あ り、 今 後 の調 査 研 究 で は し っか り と押 さえ て お か な け れ ば な らない 点 で あ る 。   今 後 は、 京 大 芦 生 研 究 林 内 に保 存 され た ア シ ウス ギ につ い て調 査 す る予 定 で あ る。   ま た、 伏 条 台杉 と呼 ば れ て い る ア シ ウ ス ギ の何 本 か は、 今 回 の現 地調 査 で 明 らか に違 う樹 種 あ る い は 同 じス ギ が 長 年 月 に合 体 して 成 立 した もの で あ る こ と が 明 らか とな っ た。   また 、 高 知県 の魚 梁 瀬 国有 林 の 天 然 性 ス ギ で も合 体 木 と思 わ れ る ものが あ る。 謝 辞:樹 高38メ ー トル もあ る吉 野 大 杉 に登 り、 ス ギ の針 葉 サ ンプ ル を採 集 して       頂 い た木 登 り名 人 、 杉 本 充 氏 並 び に森 と水 の 源 流 館 館 長 、 辻 谷 達 雄 氏 を       始 め、 川 上村 役 場 の 関係 者 に厚 く御 礼 申 し上 げ る。   なお 、 こ の研 究 は平 成20年 度 の 京 都 女 子 大 学 宗 教 ・文 化 研 究 所 の 共 同研 究 に よ る もの で あ る 。 文献 1)高 桑 進 、米 澤 信 道 、綱 本 逸 雄 、 宮本 水 文 、 宮野 純 次(2009)京 都 北 山 にお け るア シ ウス 32

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             日本 列 島 にお け る スギ の分 布 状況 と針葉 の形 態変 化 につ いて    ギ と オモ テ ス ギの分 布 調 査 ∼杉 の針 葉 の新 しい計 測法 の 開発 ∼  京 都 女子 大 学 宗教 ・文    化 研 究所 『研 究紀 要 』22,17-42 2)高 原 光(1998)図 説   日本 植 生史   朝倉 書 店  p.207-223 3)本 田静 六(大 正11年)日 本 森 林植 物 帯 論  p.195 4)林 弥生(1951)日 本 産主 要樹 種 の天 然 分布(ス ギ の 天然 分 布 概 説)林 業 試験 場 研 究 報告    48,146-168 5)宮 島寛(1989)九 州 の ス ギ と ヒノ キ  九 州大 学 出版 6)吉 良竜 夫 他(1958)生 物 地理   朝倉 書 店 7)村 井 三郎(1947)東 北 地方 の 主要 造 林 樹 種 と変種 問 題   国土 建 設造 林 技 術 講演 集   青森    林 友 会  p.131-151 8)中 井猛 ノ進(1941)植 物 学 ヲ学 ブ モ ノハ ー 度 ハ京 大 ノ芦 生演 習 林 ヲ見 ルベ シ  植 物 研 究    雑 誌17p277 9)遠 山富 太郎(1976)ス ギの きた道   中公 新 書 10)塚 田松 雄(1980)杉 の歴 史:過 去1万 五 千 年 間  科学50、p.538-546 11)大 庭 喜八 郎(1996)日 本 人 が作 り出 した動 植 物  裳 華房   p.238-245 〈キ ー ワ ー ド〉    吉野 杉 、 ス ギの針 葉 断 面 、 ウ ラス ギ、 オ モ テス ギ 、ス ギ の天 然 分布 33

参照

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