冬
No.203 2012年1月10日発行(季刊)c o n t e n t s
特集
「 睡眠
」
巻頭文 不眠症への対応について ・ ・・・・・・・・ 西田慎吾 1 睡眠時無呼吸症候群とは ・・・・・・・・・・・ 舛谷仁丸 3 快適な睡眠に効く7つのポイント ・・・・・・・ 坪田 聡 7 【連載】 放射線ストレスと葉酸による放射線障害予防 ・・ 香川靖雄 6 ヘルスケアカウンセリングケース研究 ・・・・・ 小関俊祐巻頭文
不眠症への対応について
公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター西田慎吾
はじめに 不 眠 症 の 原 因 は 多 岐 に わ た る が、 ス ト レ ス に 伴 う 不 眠 は 特 に 重 視 さ れ て お り、 適 応 障 害 性 不 眠 症 ま た は 急 性 不 眠 症 と 呼 ば れ る。 ま た、 心 理 的 な 要 因 が 消 失 し た 後 に 長 期 間 持 続 す る 不 眠 は、 精 神 生 理 性 不 眠 症 ( p sy ch op h y si ol og ic al insomnia : P P I ) と 呼 ば れ る。 こ こ で は、 主 に こ れ ら の 不 眠 症 の 鑑 別 と 対 応 の ポ イ ン ト、 治 療 に つ いて概説する。 不眠症の有病率と治療意義 日 本 の 一 般 人 口 に お け る 不 眠 症 の 有 病 率 は、 夜 間 不 眠 症 状 の 有 無 の み に 注 目 し た 場 合、 21.4% ~ 23% と 極 め て 高 い が、 日 中 の 生 活 へ の 影 響 の 程 度 を 考 慮 す る と、 こ の 水 準 は 10% 強 に な る も の と 推 定 さ れ る。 い ず れ に せ よ、 不 眠 症 は common disease の 1 つ と し て、 日 常 臨 床 で 目 に す る 機 会 の 多 い 症 状の1つである。 不 眠 症 は、 慢 性 化 に 伴 い 精 神 運 動 機 能 や 作 業 効 率 の 低 下 を 生 じ、 社 会 職 業 的 活 動 に 影 響 す る だ け で な く、 抑 う つ 症 状 の 発 現 ⑴ や Q O L( quality of life ) 低 下 ⑵ に 結 び つ く 可 能 性 が あ る。 ま た、 不 眠 症 は、 高 血 圧 、 糖 尿 病 な ど の 身 体 疾 患 の リ ス ク 上 昇 を 招 く と の 報 告 も あ る。 近 年 で は 不 眠 症 状 の 心 身 へ の こ れ ら の 悪 影 響 を 考 慮 し て、 治 療 対 応 の 重 要 性 が 強 調 さ れ て い る。 不 眠 症 状 を 有 す る 患 者 に 対 し、 早 期 に 適 切 な 治 療 を 行 う こ と で、 こ れ ら の リ ス ク を 低 減 す る こ と が 可能になる。 不眠の鑑別・対応のポイント 不 眠 の 原 因 を 鑑 別 す る 際 に は、 初 診 時 に お け る 系 統 的 な 問 診 が 必 要 に な る。 不 眠 症 患 者 を 診 察 す る 場 合 に 確 認 す べ き 事 項 を 表 1 に ま と め た。 こ れ ら の 事 項 を 初 診 時 に 患 者 自 身 に 丁 寧 に 問 診 す る こ と で、 不 眠 の 原 因 を か な り 絞 り こ む こ と が 可 能 で あ る。 し か し、 不 眠 症 患 者 の 中 に は、 自 覚 症 状 と 他 覚 的 所 見 が 解 離 す る ケ ー ス も 少 な く な い。 十 分 な 情 報 を 得 る た め に は、 可 能 な 限 り 同 居 家 族( 特 に ベ ッ ド パ ー ト ナ ー) に よ る 客 観 的 な 睡 眠 に 関 す る 情 報 を 聴 取 し て お く こ と も 必 要である。 問 診 の 結 果、 い び き や 無 呼 吸 な ど の 症 状 が 出 現 す る 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群( sleep apnea syndrome: S A S ) 、 睡 眠 覚 醒 リ ズ ム が 後 退 す る こ と で、 入 眠 困 難 や 起 床 困 難 な ど の 症 状 が 出 現 す る 睡 眠 相 後 退 症 候 群( delayed sleep phase syndrome: D S P S ) な ど の 睡 眠 障 害 に よ る 不 眠 が 強 く 疑 わ れ る 場 合 に は、 睡 眠 障 害 に 関 す る 検 査 や 治 療 が で き る 医 療 施 設 と 連 携 を 取 り、 必 要 に 応 じ て 終 夜 ポ リ ソ ム ノ グ ラ フ ィ ー ( po ly so m no gr ap hy : P S G ) 検 査 を 実 施 し、 鑑 別 診 断 と 治 療 を 行 う 必 要 が あ る。 ま た、 身 体 疾 患 や 精 神 疾 患 に 伴 う 不 眠 で は、 基礎疾患への治療が優先される。 慢 性 不 眠 症 特 に 精 神 生 理 性 不 眠 症 ( PPI ) 心 理 的 要 因 に よ っ て 生 じ た 不 眠 が、 ス ト レ ス 要 因 が 消 え た 後 も 長 期 間 持 続 し、 慢 性 化 し た 不 眠 症 で あ る P P I で は、 不 眠 を 過 度 に 心 配 し、 そ の 不 安 に 付 随 し て 過 覚 醒と身体的緊張をきたす。 不 眠 症 の 中 で も P P I は 治 療 抵 抗 性 が 高 く、 容 易 に コ ン ト ロ ー ル で き な い 症 例 も 少 な く な い。 精 神 科 の 睡 眠 障 害 専 門 外 来 を 受 診 す る 患 者 の 中 で P P I が 26.6% と 最 も 頻 度 が 高 い と の 指 摘 も あ る。 P P I は、 特 に そ の 好 発 年 齢 で あ る 中 高 年 の 不 眠 症 の 原 因 と し て 重 要 視 さ れ る が、 他 の 睡 眠 障 害 に 併 発 す る ケ ー ス が 多 い こ と に も 留 意 す べ き である。 不眠症の慢性化防止の た め の治療法 不 眠 症 の 治 療 は、 薬 物 療 法 と 非 薬 物 療 法 に 分 類 で き る。 非 薬 物 療 法 に は 睡 眠 衛 生 指 導 と、 よ り intensive な 認 知 行 動 療 法 ( co gn iti ve b eh av io ra l th er ap y for insomnia: CBT-i ) が 含 ま れ る。 不 眠 症 の 治 療 に お い て は、 こ れ ら の 3 つ を 適 切 に 使 い こ な す こ と が 重要である。 ①非薬物療法 睡 眠 衛 生 指 導: 不 眠 症 治 療 の 最 も 基 本 と な る の は、 睡 眠 衛 生 指 導 で あ る。 睡 眠 衛 生 指 導 で は、 睡 眠 に 関 す る 正 確 な 知 識 を 提 供 し、 質 の 良 い 十 分 な 睡 眠 を 得 る た め の 寝 室 を 含 め た 生 活 環 境 の 見 直 し、 不 眠 を 強 化・ 慢 性 化 さ せ る 誤 っ た 睡 眠 習 慣 を 是 正 す る こ と が 中 心 と な る。 具 体 的 な 内 容 は、 表 2 ⑶ に あ げ た 睡 眠 障 害 対 処 の 12の 指 針 に 簡 潔 に ま と め ら れ て い る。 睡 眠 衛 生 指 導 を 行 い な が ら、 患 者 と の 治 療 関 係 を 構 築 し て い く こ と も、 重 要 な ポ イントとなる。 不眠症の認知行動療法( CBT-i ): 不 眠 症 の 進 行 過 程 に お い て は、 発 症 要 因、 増 悪 要 因、 維 持 要 因 の 3 つ が 関 連 し て い る。 CBT-i は 特 に 維 持 要 因 へ の 治 療 ア プ ロ ー チ を 主 体 と し、 加 え て 発 症 要 因 と な る 過 覚 醒 状 態 の 鎮 静 化 や 増 悪 要 因 と な る ス ト レ ス へ の 対 処 法 を 習 得 さ せ る こ と で 不 眠 症 を 改 善 す る。 CBT-i の 有 効 率 は 70~ 80% で、 米 国 睡 眠 医 学 会 で は CBT-i を 慢 性 不 眠 症 に 対 す る 標 準 的 治 療 法 と し て 推奨している。 CBT-i は、 前 述 の 睡 眠 衛 生 指 導、 刺 激 統 制 法、 睡 眠 制 限 法、 認 知 療 法、 リ ラ ク セ ー シ ョ ン( 筋 弛 緩 法、 自 律 訓 練 法、 バ イ オ フ ィ ー ド バ ッ ク 法 ) が パ ッ ケ ー ジ 化 さ れ て お り、 刺 激 統 制 法 と 睡 眠 制 限 法 は 睡 眠 ス ケ ジ ュ ー ル 法 と し て ま と め て 用 い ら れ る。 CBT-i の治療セッションは、 週 1 回 60分 の セ ッ シ ョ ン を 1 ~ 2 週 間 隔 で 合 計 6 ~ 8 回 程 度 施 行 す る こ と が 多 い。 刺 激 統 制 法 は、 ① 眠 く な っ た 時 だ け ベ ッ ド に 入 る、 ② ベ ッ ド は 眠 る た め だ け に 利 用 す る、 ③ 入 床 か ら 15分 経 過 し て も 眠 れ な い 時 は、 ベ ッ ド か ら 出 る、 ④ 毎 朝、 同 じ 時 間 に 起 床 す る、 ⑤ 昼 寝 を し な い と い う 5 つ の 方 法 を 用 い て 睡 眠 行 動 を 是 正 す る。 睡 眠 制 限 法 は、 ① 睡 眠 日 誌 か ら 平 均 睡 眠 時 間 を 計 算 し、 そ れ に 基 づ い て 就 床 ― 起 床 時 刻 を 決 め る、 ② セ ッ シ ョ ン 前 1 週 間 の 睡 眠 効 率 が 85% 以 上 で あ れ ば、 睡 眠 時 間 を 15分 増 や し、 80% 以 下 で あ れ ば、 睡 眠 時 間 を 15分 減 ら す と い う 方 法 を 用 い て、 睡 眠 効 率 の 上 昇 を 目 指 す。 認 知 療 法 は、 睡 眠 に 対 す る 誤 っ た 考 え を 修 正 す る も の で、 特 に 入 眠 潜 時 と 中 途 覚 醒 へ の 効 果 が 期 待 さ れ る。 ま た リ ラ ク セ ー シ ョ ン は、 不 眠 症 患 者 の 過 覚 醒 状 態 の 鎮 静 を 目 指 し、 入 眠 潜 時 と 睡 眠 の 質 の 改 善 効 果 が 高いことが明らかにされている。 こ れ ら の 技 法 を 組 み 合 わ せ た CBT-i は、 薬 物 療 法 と 比 較 し て、 治 療 終 了 後 も 効 果 が 持 続 す る こ と や 不 眠 症 状 の 軽 減 の み な ら ず、 睡 眠 薬 の 漸 減 に も 有 効 な 点 が 長 所 と さ れ て い る。 さ ら に、 睡 眠 薬 を 長 期 服 用 中 の 慢 性 不 眠 症 難 治 例 者 に 対 し て も 有 効 で あ る と の 報 告 ⑷ も あ り、 今 後 の 幅 広 い 普 及 が 期 待 さ れる。 ②薬物療法 現 在、 不 眠 症 に 使 用 す る 代 表 的 な 薬 剤 と し て は、 超 短 時 間 型( 半 減 期 4 時 間 以 内 ) な い し 短 時 間 型 ( 同 10時 間 以 内 ) の ベ ン ゾ ジ ア ゼ ピ ン( benzodiazepine: BZ) 睡 眠 薬 も し く は BZ受 容 体 ア ゴ ニ ス ト 睡 眠 薬 が 中 心 と な っ て い る。 こ れ ら の 半 減 期 の 短 い 薬 剤 は、 従 来 か ら 問 題 視 さ れ て き た 催 眠 鎮 静 作 用 の 翌 日 へ の 持 ち 越 し は 少 な く な っ て お り、 特 に BZ受 容 体 ア ゴ ニ ス ト 睡 眠 薬 で は、 ふ ら つ き や 転 倒 の リ ス ク が 少 な い と さ れ て い る。 し か し、 副 作 用 が 比 較 的 少 な い と さ れ る 超 短 時 間 型 BZ受 容 体 ア ゴ ニ ス ト 睡 眠 薬 で も、 健 忘 や 夜 間 異 常 行 動 な ど の 副 作 用 の 出 現 ⑸ や 依 存 形 成 の 可 能 性 が 無 視 で き な い の で、 こ れ ら を 使 用 す る 時 に は、 基 本 的 に は 単 剤・ 常 用 量 で の 使 用 に と ど め、 多 剤 併 用 や 乱 用 を 防 止 す る こ と が 大 切である。 おわりに 不 眠 は、 そ の 原 因 に 見 合 っ た 対 応 や 治 療 を 実 施 す る こ と が 大 切 で あ る。 睡 眠 衛 生 指 導 や 認 知 行 動 療 法( CBT-i ) に よ り、 症 状 が 改 善 す る ケ ー ス も 多 い の で、 こ れ ら を 重視するよう心がけたい。 参考文献 ⑴ Komada Y, Nomura T, Kusumi M, et al. C or re la tio ns a m on g in so m ni a sy m pt om s, sle ep m ed ica tio n us e an d de pr es siv e sy m pt om s. Ps yc hia try a nd Clin Neur osci . 651(1): 20-29, 2011. ⑵ Sa sa i T ,In ou e Y ,K om ad a Y , e t al. E ff ec ts o f in so m n ia a n d s le ep m ed ic ati on o n he alt h-r ela te d qu ali ty of life. Sleep Med . 11(5): 452-457, 2010. ⑶ 厚 生 科 学 研 究 費 補 助 金・ 障 害 保 健 福 祉 総 合 研 究 事 業 睡 眠 障 害 対 応 の あ り 方 に関する研究 平成 13年度研究報告書 ⑷ 岡 島 義、 井 上 雄 一 睡 眠 薬 を 長 期 服 用 し て い る 慢 性 不 眠 症 患 者 に 対 す る 認 知 行 動 療 法 の 効 果 行 動 療 法 研 究 36(3): 195-203, 2010. ⑸ 西 田 慎 吾、 井 上 雄 一 睡 眠 薬 使 用 時 の 夜 間 異 常 行 動 に つ い て 臨 床 精 神 薬 理 14(2): 227-234, 2011.
プロフィール
西田慎吾
(にしだ しんご) 医療法人社団絹和会睡眠総合ケアクリ ニック代々木常勤医、公益財団法人神 経研究所附属睡眠学センター研究員、 東京医科大学睡眠学講座兼任助教、自 治医科大学精神医学教室病院助教。医 師(精神保健指定医)。自治医科大学大 学院医学研究科博士課程修了(医学博 士)。専門分野は、睡眠医学、臨床精神 薬理学。 表1 不眠症の問診で必要な確認事項(筆者作成) ・発症時期 ・症状経過 ・不眠症状の構造(入眠困難、中途覚醒など) ・身体疾患や精神疾患の確認 ・服用薬(処方薬、市販薬)の確認 ・嗜好品(カフェイン、喫煙、アルコールなど) ・生活習慣(平日・休日の睡眠時間、起床(就寝) 時刻、昼寝の有無など) ・起床時の活動(勤務時間、職務内容、通勤時間、 日中や夜間の過ごし方、眠気など) ・睡眠に関する素因(朝型・夜型、長時間睡眠・短 時間睡眠など) ・睡眠環境(就寝する部屋の騒音や照度など) 表2 睡眠障害対処の12の指針(文献⑶より引用、改変) 1 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分 2 刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法を 3 眠くなってから床に就く、就寝時刻にこだわりすぎない 4 同じ時刻に毎日起床 5 光の利用でよい睡眠 6 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣 7 昼寝をするなら、15時前の20~30分 8 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝、早起きに 9 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むず むず感は要注意 10 十分眠っても、日中の眠気が強いときは専門医に 11 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと 12 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全睡眠時無呼吸症候群(
Sleep Apnea Syndrome
:SAS)とは
医療法人ますたに呼吸器クリニック
特集
「 睡眠
」
舛谷仁丸
睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群( Sleep Apnea Syndrome : 以 下 S A S ) と は 睡 眠 中 に 10秒 以 上 の 呼 吸 の 停 止 状 態( こ れ を 無 呼 吸 と 定 義 さ れ ま す ) が 5 回 以 上 繰 り 返 さ れ る 病 気 で す。 主 に、 ひ ど い い び き と 無 呼 吸 の 指 摘、 昼 間 の 眠 気、 熟 睡 感 の 欠 如、 起 床 時 の 頭 痛 な ど の 症 状 が あ り ま す。 ま た S A S は 生 活 習 慣 病 と 密 接 に 関 係 し て お り、 放 置 す る と 生 命 に 危 険 が 及 ぶ こ と が 報 告 さ れ て い ま す。 ま た S A S 特 有 の 眠 気 は 交 通 事 故 な ど を 起 こ す 危 険 も あ り、 早 期 に 適 切 な 治 療 を す る こ と が 大 切 で す。 こ の 病 気 は 成 人 だ け の 病 気 で は な く、 幼 児・ 小 児 で も み ら れ ま す。 こ の 場 合、 学 習 や 発 達 な ど へ の 悪 影 響 が 問 題 視 されています。 SASの原因と症状 原因 睡 眠 時 無 呼 吸 は、 上 気 道( 空 気 の 通 り 道 ) が 閉 塞 す る こ と に よ り 起 こ り ま す。 閉 塞 の 原 因 は、 首 周 り の 脂 肪 の 沈 着、 扁 桃 肥 大、 ア デ ノ イ ド、 気 道 へ 舌 が 落 ち 込 む、 舌 が 大 き い( 巨 舌 症 )、 鼻 が 曲 が っ て い る な ど が 挙 げ ら れ ま す。 ま た、 欧 米 人 の S A S 患 者 さ ん は 肥 満 し て い る 人 が ほ と ん ど で す が、 日 本 人 の 中 に は 顎 が 小 さ い( 小 顎 症 ) た め、 気 道 が ふ さ が れ や す く、 や せ て い る の に S A S で あ る 方 も お ら れ ま す。 で す の で、 S A S の 患 者 さ ん 全 員 が 太 っ て い る と 思 う の は間違いです。 日本人 (アジア人) は そ の 骨 格 的 特 長 か ら 気 道 が 狭 い 方 が 多 く、 S A S の 有 病 率 も 決 し て 少 な く あ り ま せ ん。 最 近 で は 成 人 の 12% が S A S で あ る と い う 報 告 も あ り ま す ⑴ 。 子 ど も の S A S は ア デ ノ イ ド や 扁 桃 肥 大 が 原 因 の ことが多く見られます。 症状 S A S は さ ま ざ ま な 症 状 を 伴 い ま す。 い び き、 日 中 の 眠 気、 起 床 時 の 頭 痛、 睡 眠 中 に 何 度 も 目 が 醒 め る、 倦 怠 感、 起 床 時 の 熟 睡 感 の 欠 如、 う つ 傾 向、 イ ン ポ テ ン ツ な どがあります。 子 ど も の S A S に つ い て は、 ジ ョ ン ・ ホ プ キ ン ズ 大 学 医 学 部 の Halbower ら が 率 い る 研 究 チ ー ム に よ る と 記 憶、 知 能、 行 動 面 で 問 題 が あ る と 報 告 し て い ま す ⑵ 。 睡 眠 時 無 呼 吸 の 子 ど も は、 記 憶 や 行 動 に 問 題 が あ り、 ま た I Q が 通 常 の 子 ど も に 比 べ 16ポ イ ン ト 低 い ( 85対 101) と い っ た こ と が 判 明 し ています。 SASの危険性は? S A S は 治 療 せ ず に 放 置 す る と 患 者 さ ん 本 人 に も 社 会 的 に も 悪 影 響を及ぼします。 交通事故について S A S 特 有 の 昼 間 の 眠 気 は、 居 眠 り 運 転 事 故 や 労 働 災 害 な ど に つ な が り ま す。 2 0 0 3 年 の 山 陽 新 幹 線 運 転 士 さ ん の 居 眠 り 運 転 は こ の S A S の 眠 気 に よ っ て 起 こ っ た こ と で し た。 海 外 で は S A S と 交 通 事 故 の 危 険 性 に 対 し て は、 1 9 8 8 ~ 8 9 年 以 降 多 く 報 告 さ れ て お り、 S A S 患 者 さ ん が 交 通 事 故 を 起 こ す 確 率 は、 S A S が な い 方 の 約 7 倍、 一 般 ド ラ イ バ ー の 約 3 倍 で あ り、 し か も S A S が 重 症 に な れ ば な る ほ ど そ の 確 率 は 高 く な る と報告さ れ て い ま す(図2 ・ 3) 。 S A S に よ る 眠 気 で は あ り ま せ ん が、 1 9 9 3 年 の ア メ リ カ 睡 眠 疾 患 調 査 研 究 委 員 会 報 告 書 “ W ak e up A m er ic a -A National Sleep Alert ” に よ る と、 ス リ ー マ イ ル 島 の 原 子 力 発 電 所 の 事 故 や、 ス ペ ー ス シ ャ ト ル チ ャ レ ン ジ ャ ー の 事 故 は 睡 眠 障 害 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ た と 報 告 さ れ て い ま す。 た か が 眠 気 と 侮 っ て い る と 大 事 故 な ど を 起 こ し か ね ません。 幸 い S A S に よ る 眠 気 は S A S を し っ か り 治 療 す る こ と で コ ン ト ロ ー ル で き ま す。 心 当 た り の あ る 方 は 早 期 に 専 門 施 設 を 受 診 さ れ る ことをお薦めいたします。 軟口蓋 軟口蓋 軟口蓋沈下 舌根沈下 閉塞 正常 小顎症 舌が大きい 鼻中隔湾曲症 扁桃肥大 アデノイド 首周りの脂肪 舌 舌 図1 SAS の原因 SAS患者の事故発生率 事故率(%) 6% 健常者 SAS患者 全ドライバー 41% 16% 50 40 30 20 10 0 図2 SAS 患者の事故発生率(Findley L, et al. Am Rev Respir Dis. 1988 ; 138 : 337 から抜粋) SAS重症度ごとの事故発生率 事故率(%) 16% 13% 全運転手 軽症 中等症 重症 24% 46% 50 40 30 20 10 0 図3 SAS 重症度ごとの事故発生率 (Findley L, et al. NEJM 1989 ; 320 : 828 か
合併症(生活習慣病について) S A S 患 者 さ ん の 多 く は 高 血 圧、 心 臓 病、 脳 卒 中、 糖 尿 病 な ど の 生 活 習 慣 病 を 合 併 し て い ま す。 ま た S A S は、 最 近 ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ て い る メ タ ボ リ ッ ク 症 候 群 と 密 接 な 関 係 が あ り、 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 と 診 断 さ れ た 方 の 約 半 数 が メ タ ボ リ ッ ク 症 候 群 を 合 併 し て い ま す。 放 置 す る と 生 命 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が あ り ま す。 そ れ ほ ど S A S は 生 命 に 関 係 し て い る 疾 患 で す。 し か し、 S A S を 治 療 す る こ と で そ の リ ス ク を 軽 減 で き た り、 予 防 す る こ と も で き ま す。 患 者 さ ん の 中 に は S A S 治 療 を す る こ と で 高 血 圧 の お 薬 を 中 止 で き た 方 も い ら っ し ゃ い ま す。 適 切 な 検 査 を 行 い、 ご 本 人 に あ っ た 治 療 を 行 う こ と が 大切です。 ア メ リ カ で は 重 症 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 の 患 者 さ ん は 合 併 症 な ど の た め に、 約 4 割 の 方 が 9 年 後 に 亡 く な っ て い る と い う デ ー タ が あ り ます(図4) 。 日 本 で も 109人 の S A S 患 者 の 平 均 100カ 月 の フ ォ ロ ー ア ッ プ で 死 亡 率 は、 治 療 成 功 群 で 2 %、 不 成 功 群で 11.9%と報告されています ⑶ 。 検査について 無 呼 吸 を 指 摘 さ れ た り、 S A S の 疑 い が あ る 場 合 は、 専 門 医 療 機 関 な ど へ 受 診 し ま し ょ う。 睡 眠、 自 覚 症 状 に つ い て な ど の 問 診 の あ と そ の 後 の 検 査 方 法 を 決 定 し ま す。 専 門 医 療 機 関 で は S A S が 疑 わ れ る 場 合 は、 夜 間 睡 眠 中 の 状 態 を 診 る た め 基 本 的 に は 入 院 検 査 と い う こ と に な り ま す。 最 近 で は 人 間 ド ッ グ や か か り つ け の 医 療 機 関 で、 簡 易 的 な 検 査 を 受 け る こ と が で き る よ う に な っ て き ま し た。 検 査 が 可 能 な 施 設 で 簡 易 検 査 を 受 け て み て、 精 密 検 査 が 必 要 と さ れ る 場 合、 専 門 医 療 機 関 を 紹 介 し て も ら う こ とも可能です。 終夜睡眠ポリグラフィー検査 通 常 は 病 院 に 1 泊 の み 入 院 し て、 患 者 さ ん の 睡 眠 状 態( 眠 り の 深 さ や 睡 眠 の 質 ) と 呼 吸 状 態 を 同 時 に 測 る 検 査 で す。 脳 波 や 心 電 図、 胸 部・ 腹 部 の う ご き、 鼻 か ら の 気 流、 動 脈 血 中 の 酸 素 の 量 を 連 続 し て 計 測 し、 そ の 結 果 を ト ー タ ル に 医 師 が 判 断 し ま す。 こ の 検 査 は 体 に 電 極 や セ ン サ ー な ど を つ け て 行 い ま す が、 決 し て 痛 い 検 査 で は あ り ま せんのでご安心ください。 治療について S A S と 診 断 さ れ た 場 合、 次 に 治 療 法 を 決 定 し ま す。 治 療 は、 内 科 的 治 療、 歯 科 装 具、 手 術 に 分 け ら れ ま す。 患 者 さ ん に あ っ た 治 療 法 を 患 者 さ ん と 相 談 し な が ら 医 師 が 選 択 し ま す。 ま た、 治 療 を 効 果 的 に 行 う た め に も 生 活 習 慣 の 改 善 に心がけましょう。 生 活 習 慣 の 改 善 に つ い て( 日 々 の 生活で気をつけること) 肥 満 を 合 併 し た S A S の 場 合 は 生 活 習 慣 と 密 接 に 関 係 し て い ま す。 で す の で S A S 治 療 の 第 一 歩 は 生 活 習 慣 を 見 直 す こ と か ら 始 ま り ま す。 生 活 に 運 動 を 取 り 入 れ た り、 晩 酌 を さ れ る 方 は 量 を 減 ら す こ と で、 無 呼 吸 が 軽 減 す る 場 合 が あ り ます。 減量 肥満し て い る方は食事療 法や運動を行い、 減量に励 みましょう。 飲酒の制限 お 酒 は 上 気 道 の 筋 力 を 弱め る作用が あ り無呼吸を 悪化させるため、 寝る前の 飲酒はやめましょう。 禁煙 タ バ コ は 上 気 道 炎 症 を 起こさせたり、 上気道の筋 力を低下さ せ悪化さ せ る と の報告があります。 睡眠薬 睡眠薬の中に は か えって 無呼吸を悪化さ せ るタイプ のものがあります。 睡眠薬 を 服 用 し て い る 方 は、 主 治 医 に 相 談 し ま し ょ う。 無 呼 吸 を 適 切 に 治 療 す る こ と に よ り 睡 眠 薬 が 不 要 に なる場合もあります。 治療法の選択 S A S の 最 大 の 問 題 は、 そ の 方 の 生 活 の 質 を ご 本 人 が 知 ら ず 知 ら ず に 下 げ て し ま う こ と に あ り ま す。 そ れ だ け で な く S A S は、 睡 眠 中 に 体 内 が 酸 素 不 足 に な り 様 々 な 悪 い 影 響 を 引 き 起 こ し ま す。 重 症 の 場 合 は 虚 血 性 心 疾 患、 脳 梗 塞 な ど を 発 病 し や す く な る と も 報 告 さ れ て い ま す。 良 い 睡 眠 を 取 り 戻 し、 も っ と 元 気 な 本 来 の 生 活 を 取 り 返 経過年 ENTRY 軽症 重症 生 存 率 図4 重症 SAS 患者の生存率について
He J, Kryger MH, Zorick FJ, et al :Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea(experience in 385 patients)chest 94 : 9-14, 1988
睡眠時無呼吸
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CPAP療法
プロフィール
舛谷仁丸
(ますたに ひとまる) 医療法人ますたに呼吸器クリニック 大阪天満橋睡眠呼吸障害センター院 長・理事長。日本内科学会認定医・日 本呼吸器学会専門医・日本睡眠学会認 定医。 す た め に は、 適 正 な 治 療 を 受 け る こ と が 必 要 で す。 代 表 的 な S A S の治療法を紹介します。 CPAP C P A P( Continuous Positive Airway Pressure : 経 鼻 的 持 続 陽 圧 呼 吸 療 法 ) と い い、 鼻 か ら 専 用 の マ ス ク を 介 し て 空 気 を 送 り 気 道 を 広 げ る 療 法 で す。 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 の 治 療 法 の 中 で 最 も 有 効 性 が 高 く 安 全 か つ 確 実 な 方 法 が C P A P 療 法 で す。 睡 眠 中 に 鼻 マ ス ク を 装 着 し、 鼻 マ ス ク か ら 空 気 が 一 定 圧 で 送 り 込 ま れ、 睡 眠 中 に 緩 ん だ 喉 の 筋 肉 に よ っ て 喉 が 塞 が っ て し ま う の を 防 ぎ ま す。 送 ら れ て く る の は、 酸 素 で は な く 空 気 で す。 C P A P を 使 う こ と に よ っ て、 熟 睡 が で き る よ う に な り、 昼 間 の 眠 気 か ら 解 放 さ れ、 仕 事 や 運 転 な ど で も 眠 気 が な く 集 中 で き る よ う に な る こ と が 多 い で す。 日 本 の 健 康 保 険 制 度 で は、 無 呼 吸 指 数( 一 時 間あたりの無呼吸 ・ 低呼吸の回数) が 20回 以 上 の 中 等 症 の 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 の 方 が 保 険 適 用 と な っ て お り、 C P A P の 継 続 的 な 使 用 に よ っ て 虚 血 性 心 臓 病 や 脳 血 管 障 害 に よ る 死 亡 の リ ス ク を 軽 減 す る こ と が で き る と 報 告 さ れ て い ま す。 治 療 効 果 は、 翌 朝 か ら 劇 的 な 効 果 を 実 感 で き る 場 合 も あ り ま す が、 そ う で な く て も 徐 々 に 効 果 を 体 感 で き る 方 が 多 い で す。 導 入 当 初 の マ ス ク や、 空 気 圧 の 違 和 感 な ど は、 個 人 差 が あ り ま す が、 た と え 当 初 違 和 感 が 強 く て も 徐 々 に 慣 れ て し ま う こ と が 多 い で す。 治 療 成 功 の カ ギ は、 適 正 な 空 気 圧 設 定 と マ ス ク 選 択 / フ ィ ッ テ ィ ン グ で、 そ の た め 専 門 医 療 機 関 を 受 診 し 睡 眠 ポ リ グ ラ フ 下 で 適 正 圧 を 設 定 / 効 果 確認することが重要です。 マウスピース 主 に い び き 症 の 方 や 軽 症 の 無 呼 吸 症 の 方 に 有 効 な 治 療 が マ ウ ス ピ ー ス 療 法 で す。 無 呼 吸 症 の 方 に 適 応 さ れ る マ ウ ス ピ ー ス は、 一 般 の 歯 ぎ し り 防 止 用 や ス ポ ー ツ 選 手 が 使 用 さ れ て い る も の と 異 な り、 下 顎 を 前 方 に 数 ミ リ 突 き 出 し て か み 合 わ す よ う に す る も の で す。 こ れ に よ り 咽 頭 部 が 広 が り、 睡 眠 中 に 喉 が 狭 窄 / 閉 塞 す る こ と を 防 ぎ ま す。 い び き 症 の 方 に も 有 効 な 場 合 が あ り ま す。 個 人 の 歯 形 に 合 わ せ て 製 作 し ま す。 作 製 に は 経 験 が 必 要 で、 睡 眠 の 専 門 医 療 機 関 と 連 携 の あ る 熟 練 し た 歯 科 医 に 受 診 さ れ る こ と を お 勧 め し ま す。 副 作 用 と し て 顎 の 痛 み や 違 和 感 が あ り ま す が、 数 カ 月 の 使 用 で 徐 々 に 慣 れ て い く ケ ー ス が 大 半 で す。 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 の 方 は、 マ ウ ス ピ ー ス 作 成 後 そ の 治 療 効 果 を ポ リ グ ラ フ 検 査 で、 確 か め る こ と を お 勧 め し ま す。 総 入 れ 歯 や、 ひ ど い 顎 関 節 症 の 方 は 使 用 で き ま せ ん。 簡 易 検 査 な ど で“ 無 呼 吸 が 軽 症 で 治 療 が 必 要 で な い ” と 診 断 さ れ た 方 の 中 に も 睡 眠 の 障 害 が 比 較 的 強 い 場 合 が あ り、 一 度 専 門 施 設 を 受 診 さ れ る こ と を お 勧 め し ま す。 S A S と 診 断 さ れ た 方 に は、 平 成 16年 4 月 より健康保険が適用になりました。 手術療法 無 呼 吸 の 責 任 部 位 が 明 確 な 場 合 に 適 応 さ れ ま す。 小 児 の 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 の 大 半 は 扁 桃 肥 大・ ア デノイドが原因で、 そ の た め扁桃 ・ ア デ ノ イ ド 摘 出 術 が 有 効 で す。 全 身 麻 酔 で 行 う 手 術 で す。 成 人 の 場 合 は、 責 任 部 位 が 明 確 で な い こ と が 多 く、 ま た 肥 満 を 合 併 さ れ て い る ケ ー ス も 多 い た め、 手 術 適 応 に は 慎 重 な 判 断 が 必 要 で す。 ま た 肥 満 合 併 の 重 症 の 方 の 場 合 は、 手 術 そ の も の の リ ス ク が 高 い こ と も 念 頭 に お い て お く 必 要 が あ り ま す。 た だ C P A P や マ ウ ス ピ ー ス で 治 療 を 行 う 場 合 で も 鼻 の 通 気 が 良 好 な こ と が、 よ り 不 快 感 を 減 少 さ せ る た め、 ま た 鼻 詰 ま り が 無 呼 吸 の 悪 化 要 因 に な っ て い る ケ ー ス も あ り、 鼻 の 治 療 に は 積 極 的 に 取 り 組 む こ と が 必 要 で す。 耳 鼻 科 手 術 を 考 慮 さ れ る 場 合 は、 い び き / 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 を 専 門 に さ れ て い る 耳 鼻 咽 喉 科 へ の 受 診 を お 勧 め し ます。 最後に み な さ ん に 知 っ て い た だ き た い こ と は、 こ の 病 気 が 決 し て 珍 し い 病 気 で は な い こ と、 治 療 す れ ば 症 状 の 改 善 が 期 待 で き る こ と、 成 人 だ け の 病 気 で は な く、 子 ど も た ち に も S A S の 方 が 潜 在 的 に 存 在 す る こ と、 そ し て 気 づ い て あ げ ら れ る の は、 家 族・ 友 人・ 恋 人 な ど 周 囲 の 人 で あ る こ と で す。 ご 本 人 が 自 分 で 気 が つ く こ と は 意 外 と 少 な いのです。 大 き な い び き を か い て い な い か、 不 規 則 な い び き で は な い か、 い び き が 止 ま っ た り し て い な い か、 日 中 の 眠 気・ 集 中 力 の 欠 如 の 有 無 の 確認が大事です。 学 童 期 で は 扁 桃 肥 大 や ア デ ノ イ ド を 指 摘 さ れ て い る 場 合 に、 眠 気 や 集 中 力 の 欠 如 な ど が あ れ ば 要 注 意です。 一 方 眠 気 = S A S で は な く 眠 気 を 引 き 起 こ す 睡 眠 障 害 は 他 に も あ り、 ま た 現 代 社 会 で は 睡 眠 時 間 が 年 々 短 く な り、 睡 眠 不 足 で 会 社 や 授 業 中 居 眠 り し て い る 人 が 圧 倒 的 に 多 く な っ て い ま す。 こ の 睡 眠 不 足に起因する問題も重要です。 参考文献 ⑴ 谷 川 武、 櫻 井 進、 磯 博 康: 睡 眠 呼 吸 障 害 の 疫 学・ 呼 吸 器 科 2005 ; 7 : 295-300 ⑵ Halbower AC, Degaonkar M, Barker P B , E ar le y C J, M ar cu s C L , e t al. (2 00 6) C hil dh oo d O bs tru cti ve S le ep A p n e a A s s o c ia t e s w it h N eu ro ps yc ho lo gi ca l D ef ic its a nd N eu ro na l B ra in In ju ry . P Lo S M ed 3 (8) : e 3 0 1 . d o i: 1 0 .1 3 7 1 / jo u r n a l. pmed.0030301 ⑶ In ou e Y , N an ba K , H az aw a G , e tal:long term cardiovascular outcomes
in men with obstructive sleep apnea s y n d r o m e .P s y c h ia t. C li n Neur osci 2001.55:245-246
今年は福島第1原子力発電所の爆発で私たちの生活が 大きく変わりました。半減期の長い放射性セシウムにつ いて、政府は暫定基準値として水、牛乳は200Bq/kg (Bq= ベ ッ ク レ ル は 放 射 能 の 単 位 )、 他 の 食 品 は 500Bq/kg以下ならば安全と決めました。しかしドイ ツでは全食品の基準が、青少年、乳幼児は4Bq/kg以下、 大人8Bq/kg以下と125倍も低いのです。日本は年間 5mSv(mSv=ミリシーベルト:被曝の程度を示す線 量当量)以下を目標としドイツは年間0.3mSvとするか らです。そこで数値の発表を求める世論が強いのですが、 500Bq/kg以下の数字を公表すれば、食品は売れ残り、 生産者に打撃を与えます。 どんな微量でも遺伝子変異が起こるので、ドイツの基 準値は良い制度のように見えます。しかし、私達の身体 に は4000Bqも の カ リ ウ ム40の 放 射 能 が あ り、 約 100Bqを毎日食品から摂っているのです。そこで大事 なのは身体を自然や汚染の放射能被曝からも防護する食 品なのです。飛行機の旅行者、医療被爆者にも放射線防 護食が必要です。 放射線が遺伝子を壊す仕組みには、水分子を活性酸素 に変えてこれが遺伝子を壊す間接作用と、直接に遺伝子 を壊す直接作用があります。間接作用を防ぐにはビタミ ンCやEなどの抗酸化ビタミンや、トマトのリコピンな どの抗酸化物質を摂取すればよいのです。また壊れてし まった遺伝子を修復するには葉酸があるのです。事実、 ビタミンC、Eと葉酸は放射線被爆のストレス後急速に 減ります(図1)。なぜならビタミンC、Eは間接作用で 生じた活性酸素で分解され、葉酸は遺伝子損傷の修復に 大量に消費されます(図1)。そこで葉酸とそれを助け るカルシウムを摂ると、放射線を被曝しても遺伝子を大 幅に治してくれます(図2)。さて、私は長崎大学原爆 後障害医療研究施設の客員教授として、被爆者の方々の 健康度は一般人よりも良いことを知りました。被爆者健 康手帳の所持者は無料検診を受けられるのに一般人の受 診率は大変低いのです。大量被爆で多くの遺伝子が破壊 されていても、検診で早期に治療すれば病気にはならな いからです。被爆者の中でも特に野菜、果物の摂取の多 い方ほど全固形癌が少なく(図3)、また脳卒中も少な い(図4)のです。被爆者は66歳以上ですが、百歳老 人の方も多数おられ、中江ひろさんは113歳と日本人 最高齢に近くお元気です。これは放射能被爆の恐怖に対 する大変勇気づけられる事実です。