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未来を拓くエレクトロスプレー

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Academic year: 2021

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総説(Review Article):膜(MEMBRANE),35(3),100­104(2010)

Electrospray method (in some case called as electrospray deposition: ESD) is a versatile method for forming thin films and non-woven fabrics. This method has the following advantages: (i) applicable for various solute and molten molecules, which have a wide range of molecular weights (e.g., inorganic molecules, synthetic polymers, proteins, and DNA), (ii) polymer thin films with nano/micro–scaled structures, which range from spheres to fibers, are deposited. Electrospray-deposited thin films have recently attracted much attention for applications such as antifoul-ing or biocompatible coatantifoul-ings for medical devices, high–performance filter media, drug delivery systems, biomaterial scaffolds for tissue engineering, addition of high functionality on membrane surface for water purification and biosen-sors and biochips (e.g., protein/DNA–microarrays and microfluidic devices).

Electrospray in the Future

Akihiko Tanioka

Department of Organic and Polymeric Materials, Tokyo Institute of Technology, S8-27, 2-12-1 Ookayama, Meguro–ku, Tokyo 152-8552, Japan

1. はじめに エレクトロスプレー法の歴史は 1745 年の Bose によ る〝エアロゾルスプレー〟まで㴑ることができると 言われているが,1740 年に Abe Notet がバンデグラ フを用いて水をスプレーしたとの説もある.いずれ にしも電気や分子の概念が確立していない時代から 本手法が議論されていたことは疑いのない事実であ る.次にエレクトロスプレー法の歴史の概要を示す.

1745 Bose “aerosol spray”

1882 Lord Rayleigh (UK) “electrospraying”

1917 J. Zeleny “cone-jet mode”

1934 A. Formhals (USA) First Patent of “Electro-spinning”

1969 G. I. Taylor (UK) “Taylor cone”

Radioactive source in nuclear physics Electrostatic atomization

1984 J. B. Fenn (USA) “Electrospray Ionization– Mass Spectroscopy (ESI–MS)”

1995 D. H. Reneker (USA) “Electrospun Nanofibers”

1999 V. N. Morozov (RUS) “Active Biochip by Ele-ctrospray Deposition” エレクトロスプレー法は微小な液滴を形成する手 法として発達し電着塗装として利用されている一方, ナノファイバーの製造や質量分析にも利用されて いる. 微小な液滴を形成する手法として最も簡便でかつ 広く用いられている方法は,加圧気体による霧吹き Tel: 03-5734-2426 Fax: 03-5734-2876 E-mail: [email protected]

未来を拓くエレクトロスプレー

谷岡明彦

東京工業大学 大学院理工学研究科 有機・高分子物質専攻 〒 152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1 S8-27 ●特集 ナノファイバー膜

Key words : electrospray/ material / electrospinning / nanofiber / contact angle / airfilter / membrane for water treatment/ hydrophobic surface / carbon nanotube / emitter

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である.この方法では,高速の気流によって発生す る乱流を利用して液滴を形成する.そのため,形成 される粒子径は比較的大きく,粒子径分布も広くな る.一方,超音波振動子によるアトマイザーは,一 般家庭用の加湿器をはじめ様々な分野で使用されて いるが,通常得られる液滴のサイズは 100 μm 前後と されている.これらの手法と比べて,エレクトロス プレー法は,比較的簡便な装置によって非常に微細 な液滴を形成することが可能である.エレクトロス プレー法は,1960 年代より放射性同位体のスプレー 源として利用されており,また質量分析計のイオナ イザ-として使用され,生体高分子の同定などに広 く活用されている.John B. Fenn 博士が生体高分子 のエレクトロスプレーイオン化技術によって 2002 年 度 の ノ ー ベ ル 化 学 賞 を 受 賞 し た こ と は 記 憶 に 新 しい1) ナノファイバーの形成は高分子溶液を封入したノ ズルと対向電極間に高電圧を印加することにより可 能となる.本方法は 1930 年代にすでに米国で特許化 されており,ロシアでは 70 年以上の研究開発の歴史 がある.米国アクロン大学の D. H. Reneker らが 1995 年にエレクトロスピニング法(電界紡糸法)として 改めて紹介したことと米国のナノテクノロジー政策 (NNI)の推進と相まって一気に世界的な関心を集め ることになった2~ 5) さらに,V. N. Morozov らは,独自にエレクトロス プレー法により生物活性を持つタンパク質,DNA な どをデポジットし,生物活性を保持したデポジット の形成が可能であることを報告している6~ 9).彼ら は こ の 手 法 を エ レ ク ト ロ ス プ レ ー デ ポ ジ シ ョ ン (Electrospray Deposition, ESD)法と呼んでいる.理 研の山形らは,当初生物活性を持つ物質のデポジシ ョンを目的に Morozov らと共同でエレクトロスプレ ー装置の開発を進めて来たが,これを高分子材料に 利用したところ,ナノファイバーなどの極めて微細 な構造体の形成が可能であることを明らかにして いる10~ 14). このようにエレクトロスプレー法はアトマイジン グ技術から出発し,質量分析で大きな成果を挙げる と共に,最近では材料創製技術として大きな注目を 集めるに至っている.そこでエレクトロスプレー法 によって創製される様々な材料を一括してエレクト ロスプレー材料と呼ぶことにする. 2. エレクトロスプレー材料の創製法 エレクトロスプレー法とは溶液と対向電極の間に 高電圧を印加し溶液を噴射する方法である.一般的 に溶液はノズルから噴射されるが,溶液槽から直接 電極に噴射する方法もある.Fig. 1 にノズルから噴射 する方式(a)と溶液槽(ノズルレス)から噴射する 方式(b)の概略図を示す.ノズルから噴射する方式 は 100 年以上の歴史があり,繊維状物質を作製する場 合にエレクトロスピニング法(電界紡糸法)と呼ば れる.エレクトロスピニング法は生産性が極めて低 いことから,生産性向上にノズルを多用する等様々 な工夫が施されている.生産性を向上させるために 溶液槽やシリンダからナノファイバーを噴射する方 式が最近注目され始めている.エレクトロスプレー 法は合成高分子,タンパク質,DNA,無機材料等溶 媒に可溶な材料に適用できるだけでなく,コンポジ ット化が容易であり,室温で繊維やフィルムを作製 できる.近年の技術開発の成果として溶融可能な高 分子材料にも適用することができる15~ 18). Fig. 1aはノズルと対向電極間に高電圧を印加する ことによってノズルから溶液を噴射させ,Fig. 1b は Fig. 1a Electrospray deposition with nozzle. Fig. 1b Electrospray deposition without nozzle.

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102 谷岡:未来を拓くエレクトロスプレー 溶液槽と対向電極の間に電圧を印加させ溶液槽から 多量の溶液を対向電極に向けて噴射させる.いずれ の方法も対向電極で集められた生成物は粒子状から 繊維状に至るまで様々な形態をしており,形態は溶 液濃度,粘度,分子量,電圧,溶媒の種類,湿度, 温度等に依存して決まる.一般的に分子量が小さい 程また溶液濃度が低い程,生成される物質は粒子状 の形態をとることが知られている.Fig. 2 にエレクト ロスプレー法により形成されたナノパーティクル及 びナノファイバーの SEM 画像を示す. 3. エレクトロスプレー材料の特徴 エレクトロスプレー法によって創製されるナノフ ァイバーやナノパーティクルは比表面積が非常に大 きいこと,直径が可視光よりも小さいこと等から 様々な特性が期待できる.例えばエアフィルターに おいて圧力損失が小さい理由は,ファイバー直径が 非常に小さく流体がスリップフローを起こすことに 起因している.Fig. 3 にポリメチルメタクリレート系 の疎水性高分子である poly(MMA–co–BMA–co– 2–HEMA–co–MAA)のキャストフィルム表面及びエ レクトロスプレー法でアルミニウム板にコーティン グした表面における滴下した水滴の状態を示す.キ ャストフィルム上の接触角は約 73 °であるがエレク トロスプレー法でコーティングした場合は約 140 °で あり,より疎水性になっていることを示している. 一方親水性高分子の場合はより親水性になることが 知られている.これらの現象はケレのモデルを用い て解析することができる. 高分子ナノファイバーやナノパーティクルは比表 面積が大きいことからこれらにイオン交換基を導入 すると優れたイオン交換ファブリック(不織布)や イオン交換樹脂として応用することが可能である. Table 1にポリスチレンおよびポリ(4 -ビニルピリジ ン)から作製したイオン交換ファブリックの物性を 示す.イオン交換容量は市販品に比べて現時点では 低いが BET 法によるアニオン交換ファブリックの比 表面積が約 600 m2/gと非常に大きい.バイポーラ膜 に使用すると水の解離が非常に促進される.このよ うなナノファイバーからなる不織布状材料を逆浸透 膜等の水処理材料として利用する試みが今後大きく 展開されるものと考えられる. ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をエレクトロスプ レーによりナノファイバーとし,結晶化度及び結晶 の形態を観察したところ,結晶化度はもとのペレッ トに比べて 15% 程度減少したが,β型結晶の割合が 著しく増加することがわかった.このことは PVDF ナノファイバーが圧電性と焦電性を示すことを示唆 し て お り , HEPA フ ィ ル タ ー ( High Efficiency Particulate Air Filter)や ULPA フィルター(Ultra Fig. 2 SEM images of electrosprayed materials.

Fig. 3 Contact angle of coated surface by electrospray method.

Table 1 Physicochemical Properties of IEF Fabrics

Table 2 Crystal structure of PVDF nanofiber by electro-spray method

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Low Penetration Air Filter)に代わる新しいエアフィ ルターを創製することができる.本 PVDF ナノファ イバーをコーティングしたエアフィルターを作製し て特性を計測したところ圧損が少なく捕集効率に優 れていることがわかった. フェノール系高分子をエレクトロスプレー法でフ ァイバー化後,炭化することによりカーボンナノフ ァイバーファブリックを創製することができる. Fig. 4に示すように本ファブリックに CVD 法を用い てカーボンナノチューブ(CNT)をほぼ繊維方向と 直角に成長させることができる.この CNT 成長カー ボンナノファブリックはシリコン基板のものに比べ て 1/2 程度の電圧で電子を放出させることができる 19).さらに本カーボンナノファイバーファブリック の上に CVD 法を用いて酸化亜鉛(ZnO)のナノワイ ヤを垂直に成長させることができる.ZnO ナノワイ ヤの表面に色素をコーティングすることにより色素 増感太陽電池として利用することが可能となる20) このようにエレクトロスプレー法と様々な材料創製 法を組み合わせることにより,より新しい展開が可 能となる. 低分子量の化合物や低濃度の高分子溶液をエレク トロスプレーすると,ナノパーティクルによるナノ コーティングが可能となる.本ナノコーティングで 創製された材料はバイオチップ,センサーチップ, 太陽電池,有機 EL 等への応用が可能として検討が進 められている. 4. おわりに エレクトロスプレー法によるとナノファイバーや ナノパーティクルなどナノオーダーのディメンジョ ンを持つ材料を創製することができるだけでなくコ ーティング等も可能である.このなかで,エレクト ロスピニング法を用いて作製したエアフィルターが 既に実用化されている.本フィルターは不織布や紙

Fig. 4 Coated surface of carbon nanofiber by carbon nanotube.

の上にナノファイバーを薄くコーティングすること により得られる.ナノファイバーの特徴を最大限に 生かしており,サブミクロンの微粒子の捕集効率に 優れていること,圧力損失が少ないこと,逆洗が可 能なことから今後大きな発展が期待されている. 現在ナノファイバーは,比表面積が極めて大きい ことから,再生医療のスカフォールドとして利用が 進んでいるほか,DDS,センサー,電池セパレータ ー,電極,美容材料,医療材料,水処理材料,衣料 製品へと応用が図られている. エレクトロスプレーナノパーティクルに関しては 現在のところ際立った応用は見られていない.しか しながらエレクトロスプレー法は本来アトマイジン グ技術として優れており,均一な大きさを有するナ ノオーダーの粒子状物質を簡単に作れることや電界 制御によるパターンニングが可能なことから,スピ ンコート法やインクジェット法に代わる技術として 今後大きく展開される可能性を秘めている. エレクトロスプレー法はナノファイバーやナノパ ーティクルだけではなく,LCD,有機 EL,医療用セ ンサー,ウエアラブルエレクトロ二クス等へ大きく 展開することが期待できる非常に優れた材料創製法 である. 文  献 1) 松本英俊, 谷岡明彦, 山形 豊 : 成形加工, 579-582 (2004) 2) Doshi J, Reneker DH : J. Electrost., 151-160 (1995) 3) Reneker DH, Chun I : Nanotechnology, 216-223 (1996) 4) Bognitzki M, Czado W, Frese T, Schaper A, Hellwig M,

Steinhart M, Greiner A, Wendorff JH : Advanced

Materials, 70-72 (2001)

5) Bognitzki M, Hou H, Ishaque M, Frese T, Hellwig M, Schwarte C, Schaper A, Wendorff JH, Greiner A :

Advanced Materials, 637-640 (2000)

6) Morozov VN, Morozova T Ya, Kallenbach NR : Int. J.

Mass Spectrometry, 143-159 (1999)

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104 谷岡:未来を拓くエレクトロスプレー (1999)

8) Avseenko NV, Morozova T Ya, Ataullakhanov FI, Morozov VN : Anal. Chem., 927-933 (2002)

9) Avseenko NV, Morozova T Ya, Ataullakhanov FI, Morozov VN : Anal. Chem., 6047-6052 (2001)

10)諸田賢治, 谷岡明彦, 山形 豊, 井上浩三 : 高分子論文集, 806-809 (2002)

11)諸田賢治, 谷岡明彦, 山形 豊, 井上浩三 : 高分子論文集, 710-712 (2002)

12) Morota K, Mizukoshi T, Matsumoto H, Minagawa M, Tanioka A, Yamagata Y, Inoue K : Polym. Prepr. Jpn., 619 (2003)

13) Mizukoshi T, Hara S, Minagawa M, Matsumoto H, Tanioka A , Yamagata Y, Inoue K : Polym. Prepr. Jpn., 620 (2003)

14) Uematsu I, Matsumoto H, Morota K, Minagawa M, Tanioka A, Yamagata Y, Inoue K : J. Colloid Interface Sci., 336-340 (2004)

15)谷岡明彦 : 繊維学会誌, 3-7 (2003) 16)谷岡明彦 : 工業材料, 56-60 (2003)

17) Reneker DH, Hao Fong Ed ; “Polymeric Nanofibers”, ACS Symposium Series, 918 (2005)

18) Filatov Y, Budyka A, Kirichenko V : “Electrospinning of Micro–and Nanofibers : Fundamentals and Applications in Separation and Filtration Processes”, Begell House, NY (2007)

19) Suzuki K, Matsumoto H, Minagawa M, Tanioka A, Hayashi Y, Fukuzono K, Amaratunga GAJ : Applied

Physics Letters, 053107/1-053107/3 (2008)

20) Emrah Unalan H, Yang Y, Zhang Y, Hiralal P, Kuo D, Dalal S, Butler T, Nam Cha S, Eun Jang J, Chremmou K, Lentaris G, Wei D, Rosentsveig R, Suzuki K, Matsumoto H, Minagawa M, Hayashi Y, Chhwoalla M, Tanioka A, Milne WI, Tenne R, Amaratunga GAJ : IEEE

Tran-sactions on Electronic Devices, 2988-3000 (2008)

(Received 22 March 2010 ; Accepted 24 March 2010) 著者略歴 谷岡 明彦(たにおか あきひこ) 所属: 東京工業大学大学院 理 工 学 研 究 科   有 機・高分子物質専攻 教授 専門: 有機材料物理化学 略歴: 1975年 3 月 東京工業大学大学院 理工学研究科博士課 程修了 工学博士 1975年 4 月 東京工業大学工学部 有機材料工学科助手 1981年~ 1982 年 マックスプラン ク生物物理研究所客 員研究員 1988年 12 月 東京工業大学工学部 有機材料工学科助教 授 1999年 4 月 東京工業大学大学院 理工学研究科有機・ 高分子物質専攻教授 2006年 6 月 NEDO「先端機能発 現型新構造繊維部材 基盤技術の開発」プ ロジェクトプロジェ クトリーダー

Fig. 3 Contact angle of coated surface by electrospray method.
Fig. 4 Coated surface of carbon nanofiber by carbon nanotube.

参照

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