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荒川区における新たな住宅政策のあり方について

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荒川区における

新たな住宅政策のあり方について

答 申

平成 20 年 12 月

荒川区住宅対策審議会

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目 次 はじめに --- 1 1.新たな住宅政策の前提 --- 2 (1)近年の住宅政策の動向 (2)荒川区基本構想が目指す将来像 (3)荒川区の状況 (4)計画期間:今後 10 年間で確実に実施すべき施策に重点を置く 2.新たな住宅政策の基本理念と課題 --- 7 (1)基本理念 ① 住宅政策とは、“区民の幸福な暮らしの環境づくり” ② “地域で暮らす”という概念から考える (2)新たな住宅政策に求められる課題 ① 住まいの耐震化と木造住宅密集市街地における積極的な施策の展開 ② 住宅供給から、既存ストックを活用した“質”の向上への方向転換 《多角的な視点からの環境・景観問題への配慮》 《空き家住宅の有効活用を含めた住宅・住環境の“質”の向上》 ③ 地域で暮らし続けられるセーフティネットの構築 《地域居住を前提とした高齢者・障がい者への支援》 《子育て支援の充実による若い世帯の定住・転入促進》 《地域コミュニティに根ざした荒川区独自の施策展開》 3.住宅政策の目標 --- 11 (1)住宅政策の基本目標 (2)住宅政策の個別目標 目標1:安全で安心して暮らせる住まいづくり 目標2:良質な住宅ストックと良好な住環境の形成 目標3:多様な世代が地域のなかで住み続けられる住まいづくり 4.重点的に取り組むべき施策 --- 14 (1)木造住宅密集市街地における防災性向上のための緊急対策 (2)住まいに関連する環境・景観問題への配慮 (3)空き家住宅の有効活用 (4)地域居住を前提とした高齢者・障がい者のためのセーフティネット (5)住宅政策としての子育て支援 5.施策展開への取り組みの体制 --- 20

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はじめに

荒川区住宅対策審議会は平成 20 年 1 月 25 日に、荒川区長より「荒川区における 新たな住宅政策のあり方」について諮問を受けた。 平成 18 年 6 月に住生活基本法が施行され、同年 9 月には住生活基本計画が策定 された。また、東京都でも、平成 19 年 3 月には新たな東京都住宅マスタープランを 策定している。この諮問は、このような国及び東京都における動向を背景に、荒川区 として新たな住宅政策のあり方を問うものである。 一方、荒川区では平成 19 年 3 月におおむね 20 年後の荒川区の目指すべき将来像 を示す荒川区基本構想を策定しており、現在並行して荒川区都市計画マスタープラン の改定作業も進められているところである。国や都による住宅政策の動向を踏まえつ つ、荒川区基本構想に掲げる「幸福実感都市あらかわ」の実現を目指し、新たな荒川 区都市計画マスタープランとの整合を図りながら、良好な住環境・コミュニティの形 成などを促進し、子どもから高齢者まで誰もが安心して暮らせる地域社会を築くため の住宅政策のあり方を提言することが求められている。 当審議会は、以上の認識に基づいて、従来の住宅政策の枠組みにとらわれない幅広 い視点から調査・審議を進め、荒川区ならではの特徴に最大限に配慮した、オリジナ リティー溢れる「荒川方式」としての新たな住宅政策の方向性と目標、重点施策課題 等について提言するものである。

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1. 新たな住宅政策の前提

(1) 近年の住宅政策の動向 国の住生活基本計画や東京都住宅マスタープランでは、今後の住宅政策につい て大きな方向転換が図られている。そのポイントは以下のとおりであるが、荒川 区においても、その方向転換と整合した新たな住宅政策を検討する必要がある。 ■ 住生活基本計画:『量』の確保から『質』の向上への転換 ・ 『ストック』と『市場』の重視 ・ 『良質な住宅ストック』と併せて『良好な居住環境の形成』を重視 ・ 地域特性に応じた『成果指標(数値目標)』の設定 ■ 東京都住宅マスタープラン ・ 住まいの安全・安心の確保 ・ 世代を超えて住み継がれる住宅まちづくり (2) 荒川区基本構想が目指す将来像 平成 19 年 3 月に策定された荒川区基本構想では、おおむね 20 年後の目指す べき将来像として以下の事項が示されている。荒川区における新たな住宅政策は、 これらの将来像の実現を目指すものでなければならない。 《3つの基本理念》 1)すべての区民の尊厳と生きがいの尊重 2)区民の主体的なまちづくりへの参加 3)区民が誇れる郷土の実現 《荒川区の将来像》 「幸福実感都市 あらかわ」 《6つの都市像》 1)生涯健康都市 ~健康寿命の延伸と早世の減少の実現~ 2)子育て教育都市 ~地域ぐるみの子育てと学びのまちづくり~ 3)産業革新都市 ~新産業と賑わいの創出~ 4)環境先進都市 ~東京をリードする環境施策の発信~ 5)文化創造都市 ~伝統と新しさが調和した文化の創出~ 6)安全安心都市 ~防災まちづくりと犯罪ゼロ社会の実現~

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(3) 荒川区の状況 荒川区の住宅・住環境づくりを取り巻く現状や動向には以下のような特徴があ り、それらを踏まえた住宅政策の検討が必要となる。 《居住者の状況》 ① 荒川区の人口は、今後 10 年間のうちに減少に転じるものと予想されている 近年、荒川区の人口は増加傾向にあり、人口密度や住宅密度は東京区部でも 特に高くなっている。東京都の推計によれば、この人口増加は今後もしばらく 続き平成 27 年(2015)には 20 万人を越えるものの、その後は徐々に減少 していくものと予想されている。 ② 一方、高齢者は今後も増加を続けるものと予想されている 老年人口は平成 27 年(2015 年)以降も増加し、平成 32 年(2020 年) には高齢化率が 25%を超えるものと予想されている。 《住宅・住環境の状況》 ③ 大規模開発による住宅供給はピークを過ぎた 平成 13~18 年度における南千住地区等の大規模開発による住宅供給戸数 の合計は 6,450 戸であり、それがこの間の人口増加の大きな要因になってき た。しかし、それらの大規模な住宅開発・供給は収束に向かい、今後も個別の マンション建設等は続くものの、大量の住宅供給は見込めない状況にある。 ④ 区内の約6割はいまだ木造住宅密集市街地である 荒川区の市街地は、新しい住宅市街地、基盤整備の進んだ市街地、木造住宅 密集市街地の3つに大別できるが、その約6割を木造住宅密集市街地が占める。 木造住宅密集市街地は、高齢者の暮らしやすさや子育てのしやすさなど日常 的な生活環境という面では評価されているものの、道路が狭隘なことや借地が 多いことなどから古い住まいの更新が進まず、また、居住者の高齢化が著しい ため、防災や高齢化対策などの視点からその改善が大きな課題となっている。

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⑤ 古い木造住宅が多く、持家率が高い 区内の住宅総数は約 9 万 4 千戸であるが、そのうち 15.0%が 1970 年以前 に建築された古い木造住宅である。また、持家率が 50%以上と高く、特に、 65 歳以上の高齢者がいる世帯の持家率は 70%を超えている。高齢単身世帯の 持家率も 51.2%である。 ⑥ 公営住宅は全体の 4.5%に満たず、今後の供給増も見込みにくい 都営・区営住宅は約 4,200 戸であり、全体の 4.5%に満たない。都営住宅の 建替え計画などはあるが、東京都は管理戸数を抑制する方針をとっていること から、今後の供給増も見込みにくい。 ⑦ 住宅戸数の約12.4%が空き家 区内の住宅のうち 12.4%が空き家となっている。荒川区では一戸建て持家 が多く、特に高齢者世帯の持家率が高いことから、今後それらの住宅が新たな 空き家となり、さらに増大する可能性もある。 《区民の意向(区民アンケート調査より)》 ⑧ 今後の住環境づくりには、防災と環境が重視されている 今後の良好な住環境づくりについて、災害時に備えた安全対策を求める意向 が最も高く、次いで身近な自然環境の確保・維持への意向が高くなっている。 そのほか、犯罪発生を抑制する防犯対策や、日常の買い物等の利便性の向上、 周辺の住環境と調和のとれた開発を求める意向も高い。なお、この傾向は市街 地のタイプによりやや異なっている。 ⑨ 高齢者・障がい者や子育て世帯への居住支援が求められている 居住支援については、世代に関係なく高齢者・障がい者への支援が最も求め られており、30~40 代を中心に子育て世帯への支援も求められている。また 50~60 代では、住宅の増改築やリフォームへの支援を求める意向も高い。

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⑩ 住宅の広さやローン・家賃に不満を抱えているのは主に子育て層 現在の住まいへの不満度が比較的高いのは、単独世帯や子育てを終えた親子 世帯であるが、住宅の広さやローン・家賃に限ってみれば、子育て層における 不満度が最も高くなっている。特に、借家住まいの世帯での不満度が高い。 ⑪ 世代を超えて、親子世帯の「近居」への意向が高い 高齢期における子ども世帯との住まい方として、55.7%が近所(徒歩圏内) または、電車・自動車で 60 分以内という、いわゆる「近居」を望んでいる。 世代別に「近居」の意向が最も高いのは 30 代であり、30~60 代で 50%を 超えている。なお、20 代と 70 代以上では「同居」の意向が最も高い。 ⑫ 木造住宅密集市街地の暮らしやすさについて良好な評価も見られる 木造住宅密集市街地においても、居住継続意向は 75.9%と高く、住まいや 住環境への満足度もそれぞれ 50.6%、54.4%と低くはない。 また、木造住宅密集市街地には良好な地域コミュニティが維持されているこ となどから、高齢者の生活環境や子育て環境として適しているという意見も、 それぞれ半数近く見られる。 ⑬ 区民の居住継続意向は高い 区民へのアンケート調査によれば、現在の住まいへの居住継続意向は 76.1% と高く、転居を希望する人も約半数は荒川区内での転居を希望している。また、 現在の住まいへの満足度は 52.7%、地域の住環境への満足度は 56.6%であり、 住まいや住環境に対しても一定の満足感が得られている。

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(4) 計画期間:今後10年間で確実に実施すべき施策に重点を置く 新たな住宅政策・施策の展開について具体的に示す新たな住宅マスタープラン は、10年間という計画期間を踏まえその間に確実な成果が得られるよう、将来 の動向を見据えつつも、いま早急に対処すべき課題に重点を置いた内容として定 めるべきである。 ~ 時間軸を設定して、今回策定する住宅マスタープラン(計画期間:10 年間) にはどのような役割があるかを検討する ~ 前回の住宅マスター プラン策定時 近年の社会状況の変化と 今後の動向 将来の動向 ・ 人口減少 ・ 人口増加 ・ コミュニティの変化 ・ 人口再び減少? ・ マンション等における 高齢化? ・ 大規模跡地 ・ その他 ↓ ・ 木造密集市街地の問題 ・ その他 ↓ (今後の取組みによる変化) ↓ 大規模集合住宅 などの整備によ る新規住宅地 今回の住宅マスタープラ ンで求められる施策 次期の住宅マスタープラ ンで求められる施策

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2. 新たな住宅政策の基本理念と課題

(1) 基本理念 ① 住宅政策とは、“区民の幸福な暮らしの環境づくり” 新たな住宅政策には住宅のみならず、住環境のあり方も重視することが求め られている。木造住宅密集市街地の問題など、今後の住環境整備について多く の課題を抱えている荒川区においては、この点に大きく着目し、住宅政策とは “区民の幸福な暮らしの環境づくり”であると大きく捉えて、住宅そのものだ けではなく身近な生活環境の向上も目指す。また、ハード面の整備だけではな く、住生活の安定の確保及び向上に必要なソフト面での「居住サービス」も含 めた施策の展開を図っていくべきである。 ② “地域で暮らす”という概念から考える 荒川区の住生活の大きな特徴として、木造住宅密集市街地を中心に、良好な 地域コミュニティが維持されており、地域単位での暮らしが根付いていること が挙げられる。新たな住宅政策においてもその特徴を活かし、“地域で暮らす” という概念から身近な生活環境も含め、ハード・ソフト両面から様々な施策の 展開を図る必要がある。具体的には、“暮らす人”と“暮らすまち”の関係を踏 まえながら検討していくべきである。 ~暮らす人と暮らすまちの相互関係の中に必要な施策や有効な施策を見出す~ 【必要な検討項目】 ① 区内に暮らす人には、どんな人がいて、住宅等に対しどんなニーズを抱えているか。 ② どのような暮らしの場(まち)があり、住環境等にどのような影響を与えているか。 ③ 上記を踏まえた住宅・住環境の問題に対応する施策とは何か。 暮らす人 住宅・住環境 暮らすまち 求められる住宅施策

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(2) 新たな住宅政策に求められる課題 以上の基本理念に基づき、荒川区基本構想に掲げる「幸福実感都市あらかわ」 の実現に向けた新たな住宅政策に求められる課題は以下である。 ① 住まいの耐震化と木造住宅密集市街地での積極的な施策展開 区民は、今後の住環境づくりについて「安全安心」を最も強く求めている。 そのため、平成 20 年度から本格化した既存の住宅ストックの耐震改修支援等 を積極的に進め、早急に住まいの耐震・防災性の向上を図っていく必要がある。 特に区の約 6 割を占める木造住宅密集市街地の改善は、荒川区の住環境整備 にとって最大の懸案であるため、従来から取り組まれている防災まちづくり等 の推進と並行・連携した、より積極的な施策の展開が必要である。 ② 住宅供給から、既存ストックを活用した“質”の向上への方向転換 新たな住宅政策には、ストックや市場の重視への方向転換が求められている。 また、地球環境問題等を背景に、住宅政策においても建物の長寿命化等による 環境負荷の低減に努めることも求められている。その点を踏まえ、新たな住宅 政策には以下の視点が求められる。 《多角的な視点からの環境・景観問題への配慮》 将来に渡って持続可能な住環境づくりを基軸に据え、安寧な暮らしに欠かせ ない防災・防犯対策とともに、住環境の付加価値を高める身近な自然環境の確 保・維持や周辺の住環境と調和のとれた開発が強く求められている。大都市圏 に位置する荒川区における住宅政策としては、身近な暮らしの環境を守ること に加えて、都市部に特有な温暖化であるヒートアイランド対策や地球規模での 温暖化対策など、あらゆる角度から環境負荷の低減を図る取り組みが重要であ る。さらに、低層住宅地における開発調整などと併せて、美しい町並みを確保 するための景観問題への配慮が求められる。

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《空き家住宅の有効活用を含めた住宅・住環境の“質”の向上》 平成 12 年に策定した第二次住宅マスタープランは、当時の社会状況を反映 して『住宅供給』を基本として各種施策の展開が図られてきたが、荒川区にお いても、既に住戸数が世帯数を大きく上回っており、空き家住宅も1万戸以上 存在している。今後はその数多い空き家住宅の有効活用を含めて、『既存ストッ クの活用』を基本とした住宅・住環境の“質”の向上を図る方向へと方向転換 すべきである。 ③ 地域で暮らし続けられるセーフティネット*1の構築 現在の区民の居住継続意向が高いことから、現在の区民が安心して暮らし続 けられる住宅・住環境づくりを目指すことは、住宅政策としては不可欠な課題 であり、以下の点を重視した施策の展開を図ることが必要である。 《地域居住を前提とした高齢者・障がい者への支援》 特に高齢者や障がい者の住生活には地域での支え合いが非常に重要である。 高齢者・障がい者を中心に、今後も現在の地域で暮らし続けられるような住宅 政策が求められる。 《子育て支援の充実による若い世帯の定住・転入促進》 高齢者・障がい者への支援と併せて、地域活力やコミュニティの維持に向け、 より積極的に若い世帯の定住・転入を促進していくことも必要である。 子育て世帯に現在の住宅への不満が見られること、近居意向が高いことなど を踏まえて、子育て世帯を対象とした支援を充実し、地域で安心して子育てが できる環境づくりを進めていくことなどが求められる。 《地域コミュニティに根ざした荒川区独自の施策展開》 荒川区には下町らしい人情味あふれる地域コミュニティが維持されており、 そのコミュニティ力が、地域での暮らしを支え合う大きな資源になっている。

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既に、区民やNPO、民間事業者そして大学などの連携による、地域コミュニ ティに根ざした高齢者・障がい者への住宅供給・居住支援活動や子育て支援活 動なども萌芽している。 今後、それらの活動を各地域に定着させ、積極的な展開を促進するために、 「地域居住は、地域が主体となって支援する」という考え方を柱に、地域コミ ュニティの維持・育成のための取り組みを積極的に進め、地域の住宅供給・居 住支援活動の担い手を積極的に支援するなど、ソフト面の取り組み体制の整備 を含めた施策の展開を図っていく必要がある。 *1 セーフティネット:安全網。社会的・個人的な危機に対応する方策のこと

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3. 住宅政策の目標

(1) 住宅政策の基本目標 新たな住宅政策の基本理念と課題に基づき、荒川区の特徴を活かした基本目標 として以下を提案する。 下町の暮らしやすさを活かした 安心と幸福を実感できる住宅・住環境づくり (2) 住宅政策の個別目標 基本目標の実現に向けて以下の3つの個別目標を設定する。なお、それぞれの 目標に関連する主な施策項目としては、次々ページに示すものが考えられる。 目標1:安全で安心して暮らせる住まいづくり 今後の住環境づくりについて、区民が最も強く望んでいるのは「安全安心」 であることを踏まえ、災害に対する最低限の安全確保を早急に進めるために、 従来から取り組まれている防災まちづくりと連携しながら既存住宅についても 防災性を高め、良好なストックとして有効活用していけるよう必要な支援策を 講じる。 また、荒川区民の防犯意識の高さを踏まえ、防災対策と併せて防犯にも配慮 した住環境づくりへの取り組みの充実を図る。 目標2:良質な住宅ストックと良好な住環境の形成 新たな住宅政策においても、これまでの住宅政策と同様、居住水準の向上を 目指す必要がある。併せて、近年は、住まいの維持管理や暮らしにうるおいを 与える環境・景観問題などの視点を踏まえた良好な住宅ストックや住環境づく りへの取り組みが求められている。

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そのことを踏まえて、新たに建設される住宅等の質の向上を図るとともに、 住宅の適切な維持管理を促進し、併せて建物の長寿命化や環境共生住宅の普及 など、地球環境問題等にも配慮した良質な住宅ストックの形成と、住まいやそ の敷地内の緑化など身近な自然環境の整備を図る。また、景観面についても、 都市計画マスタープランにおいて都市的な観点から示される方向性との連携を 図りながら、大規模住宅・住宅地の開発調整や個々の建物や外構、身近な公園 等による良好な住宅地景観の形成を図る。 さらに、区民やNPO、民間事業者等と連携・協力し、地域の住宅ストック を有効に管理・活用するエリアマネジメント策の一環として、区内に多数存在 する空き家住宅ストックの有効活用に向けた仕組みづくりと支援に取り組み、 空き家住宅を活用した各地域への若い世代の定住・転入促進による地域の適正 な世代ミックスと地域コミュニティの維持・育成など、地域居住を相互に支え 合うソフト面での良好な住環境の形成を図る。 目標3:多様な世代が地域のなかで住み続けられる住まいづくり “地域で暮らす”という、荒川区ならではの理念の実現に向けて、住まいや 住環境のバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化について積極的に取り組み、 今後のより一層の高齢化社会に対応した住まい・住環境づくりを図るとともに、 高齢者・障がい者が現在のまちに住み続けられるようなセーフティネット機能 を検討・推進する。 また、区内外に居住する子育て世帯に対して親世帯との「近居(地域の中で の三世代居住)」を支援し、各地域における子育て環境を充実するなど、各地域 への若い世代の定住・転入を促進するような住宅施策を展開する。

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■ 住宅政策の目標と主な施策項目 関連する主な施策項目 (2)良質な住宅ストックと 良好な住環境の形成 (3)多様な世代が地域の中 で住み続けられる住ま いづくり 既存住宅の耐震改修への誘導 新たな木造建築の防災技術の活用 ● 住宅・住宅地の防犯対策 住宅防犯設備等の普及促進 ● 地域居住を前提とした高齢者・障がい者のための セーフティネット 高齢者の賃貸住宅への入居の円滑化 住宅の改造・耐震改修への誘導 公共施設のバリアフリー化 NPOや民間事業者による支援の促進 ● 住宅政策としての子育て支援 キッズスペースの設置など民間開発への誘導 親世帯との近居への誘導 空き家活用等による支援策の検討 ● 多様な世帯の居住ニーズへの対応 ワーキングプア等の多様な世帯への対応 ● 住宅ストックの質の向上 住宅の質の向上に向けた規制・誘導 民間賃貸住宅の良質化の推進 マンションの適切な維持管理の促進 既存住宅のリフォームへの誘導 ● 住まいに関連する環境・景観問題への配慮 環境に配慮した住宅づくりと維持管理の促進 都市計画マスタープランとの連携による住 宅・住宅地開発の景観誘導 住宅の長寿命化の誘導 ● 空き家住宅の有効活用 既存の支援制度の活用促進 既存住宅の耐震改修への誘導 空き家活用の可能性についての研究 ● 良好な住環境の整備 身近な自然環境の維持・保全 良好な住宅地景観の形成 防災まちづくりと連携した建替え促進 ● 木造住宅密集市街地における防災性向上のための 緊急対策 耐震改修促進計画に基づく取り組み ● 既存住宅の耐震改修への取り組み (1)安全で安心して暮らせ る住まいづくり 住宅政策の目標

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4. 重点的に取り組むべき施策

住宅政策の目標に関連する施策項目のうち、「幸福実感都市あらかわ」の実現に 向けた基本理念と課題を具体的に反映し、荒川区ならではのオリジナリティーを 明確に示す施策として、次の5つを重点的に取り組むべき施策として提案する。 (次ページ以降に、各施策の背景と考え方について詳述する。) 【安全で安心して暮らせる住まいづくりのための施策】 ① 木造住宅密集市街地における防災性向上のための緊急対策 荒川区の喫緊の課題となっている木造住宅密集市街地の問題に焦点を当 てた当施策を重点施策の一つとして位置づける。 【良質な住宅ストックと良好な住環境の形成のための施策】 ② 住まいに関連する環境・景観問題への配慮 環境・景観問題に対する区民の関心の高さを背景に、国や東京都の動向 にも注視しつつ、当施策を重点施策の一つとして位置づける。 ③ 空き家住宅の有効活用 当施策を契機に地域コミュニティの維持・育成を図っていくために、当 施策を重点施策の一つとして位置づける。 【多様な世代が地域のなかで住み続けられる住まいづくりのための施策】 ④ 地域居住を前提とした高齢者・障がい者のためのセーフティネット 高齢者・障がい者の地域居住を積極的に支援するために、当施策を重点 施策の一つとして位置づける。 ⑤ 住宅政策としての子育て支援 住宅政策としても各地域における子育て環境の充実に取り組むために、 当施策を重点施策の一つとして位置づける。

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【安全で安心して暮らせる住まいづくりのための施策】 (1) 木造住宅密集市街地における防災性向上のための緊急対策 これまで、「近隣まちづくり推進制度」など区独自の制度創設なども含めて木造 住宅密集市街地における積極的な建替えを促してきた。それによって幹線道路沿 道などに中高層マンションが建設されて延焼遮断帯が形成されるとともに、高齢 化が進む木造住宅密集市街地への若い世帯の転入を促す効果も果たしてきたが、 一方では、街区内の市街地は道路基盤が未整備なため依然として住宅の建替えが 進まず、防災上の問題を抱えたままとなっている。 そのような状況を背景に、より身近な暮らしの安全を確保するといった視点か ら既存住宅の耐震改修などの要望が高まってきた。そのため区では平成 20 年度 に「荒川区耐震改修促進計画」を策定し、既存住宅の耐震改修への支援を本格化 してきたところである。また近年は、既存住宅の防耐火補強技術などの向上によ り、従来の建物更新だけではなく既存住宅ストックを活用しながら木造住宅密集 市街地の安全性を確保する方法なども考えられている。 長期的な視点からは、古い木造住宅の建替え促進や狭隘道路・主要生活道路の 拡幅による身近な避難路の確保、私道の公道移管による建替え環境の整備など、 従来の防災まちづくり手法による木造住宅密集市街地の改善が必要だが、その進 捗には時間がかかる。今後 10 年間で最低限の安全確保を図るために、「近隣まち づくり推進制度」など既往の防災まちづくり事業・制度との連携による建替え促 進と並行して、既存住宅の耐震改修や高齢者世帯における耐震シェルター設置へ の支援・誘導もひとつの柱とし、併せて、既存住宅の防耐火補強技術など新たな 木造建築の防災技術の活用に対する支援についても積極的に取り組み、木造住宅 密集市街地の防災性の向上に向けて、より効果的な施策の推進を図る。 ① 防災まちづくり事業・制度の積極的な導入・推進 ② 既存住宅の耐震改修や耐震シェルター設置への積極的な支援・誘導 ③ 既存住宅の防耐火補強技術による改修等の支援策の検討

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【良質な住宅ストックと良好な住環境の形成のための施策】 (2) 住まいに関連する環境・景観問題への配慮 地球温暖化やヒートアイランド現象など環境問題が深刻化するなか、住宅分野 においても、建設から廃棄までの住宅のライフサイクルを通じて、できる限り CO2削減等の環境負荷の低減に努めていくことが強く求められている。また東京 都では、環境と併せて景観にも配慮した住宅まちづくりを重視している。 荒川区においても基本構想で「東京をリードする環境施策の発信」を柱の一つ としていることから、住宅政策においても環境・景観問題への配慮に重点的に取 り組む必要がある。区民アンケートでも、今後の住環境づくりについて「身近な みどりなど自然環境の確保・維持」や「周辺の住環境と調和のとれた開発」を求 める意見は多く、「住宅の維持管理への相談・支援」や「住宅の増改築やリフォー ムへの支援」など環境問題への寄与に通じる居住支援を求める意見も少なくない。 これまで荒川区では、環境共生住宅等をPR・普及するための「エコ助成制度」 や、住宅機材の開発費に対する助成を行ってきた。加えて、「荒川ルール」等によ る良好な生活環境の維持・保全など、環境・景観に配慮した住宅づくりへの支援 も行ってきた。今後もこれらの取り組みを積極的に推進するとともに、様々な団 体による助成制度に関する情報の提供も充実を図り、景観については都市計画マ スタープランと連携し、「荒川ルール」などを活用しながら、周辺の住環境との調 和のとれた住宅・住宅地開発を誘導していくものとする。さらに、国が取り組む 200年住宅への支援の動向等を踏まえながら、住宅の長寿命化への取り組みや 建設資材の循環利用などに向けた施策の展開を図っていくものとする。 ① 環境に配慮した住宅づくりへの支援策の積極的な推進 ② 環境に配慮した住まいのリフォーム・維持管理に対する支援の検討 ③ 都市計画マスタープランとの連携による住宅・住宅地開発の景観誘導 ④ 住宅の長寿命化の促進への取り組み ⑤ 建設資材の循環利用の促進に関する取り組みの検討

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【良質な住宅ストックと良好な住環境の形成のための施策】 (3) 空き家住宅の有効活用 空き家住宅も有効に活用すれば地域の良好な住宅ストックとなり得る。荒川区 には空き家住宅が約 1 万2千戸あり今後も増加が予想される。その詳細な実態は 現時点では明らかではないが、既存データからはファミリー世帯の居住などにも 十分に耐え得る広さの住宅も少なくないものと考えられる。 今後、それらの良質な空き家住宅を既存住宅ストックとして効果的に活用し、 高齢者への生活支援や各地域における若い世代の入居促進等を図っていくために、 移住・住み替え支援機構による「マイホーム借上制度」*2など、既存の支援制度 活用の普及・促進を図る。具体的には、制度のPRと併せて、制度活用に向けた 賃貸用住宅の耐震改修支援や、借家人を対象としたリフォーム支援などを図る。 また、空き家住宅の実態を詳細に調査し、区民やNPO・不動産関係業界など との連携・協力による実態に即した適切な活用策、支援策を検討する。例えば、 空き家住宅活用の大きな障害となっている借地権問題の解決策についての検討、 空き家住宅に関する情報提供やあっ旋を円滑に行える仕組みづくりの検討、一般 住宅としてだけでなく高齢者・障がい者支援施設、子育て支援施設等への活用や、 老朽空き家住宅を除却してその敷地を地域の共用施設に利用するなど様々な活用 の可能性についての研究などが想定される。 ① 既存の支援制度(マイホーム借上制度など)活用の普及・促進 ② 支援制度活用のための耐震改修やリフォームへの支援 ③ 空き家住宅の実態調査の実施 ④ 空き家住宅の実態に即した適切な活用策、支援策の検討 *2 「マイホーム借上制度」:高齢者等が所有する住宅を借り上げ、定期借家(3年) で子育て世帯等に賃貸する制度。家賃保証があるため、高齢者にとっては生活支 援となり、子育て世帯にとっては市場よりも低廉な家賃で広い住宅に住めるとい う居住支援になる。新耐震基準を満たした住宅であることが要件であり、設備や 内装については、借家人によるリフォームが認められている。

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【多様な世代が地域の中で住み続けられる住まいづくりのための施策】 (4) 地域居住を前提とした高齢者・障がい者のためのセーフティネット 荒川区は23区のなかでも高齢者率が高く、今後も高齢者の増加が見込まれて いる。高齢者は持ち家・一戸建てに住んでいる比率が高く、区民アンケートでは 高齢期においても現在の住まいへの居住を希望するものが約半数に及んでいる。 必要な居住支援も「高齢者・障がい者への居住支援」への希望が最も多く、関連 して「現在の住宅の維持管理への支援」「増改築やリフォームへの支援」を希望す る意見も多い。高齢者・障がい者が、今後も地域で安心して幸福に暮らし続けて いけるよう、住宅政策としてこれらのニーズにいかに応えていくかが課題である。 これまで、荒川区における高齢者・障がい者に対する住宅施策は、高齢者・障 がい者用区営住宅の供給や高齢者世帯の住宅改修支援を中心として展開してきた。 また、市街地整備と関連して、公共施設のバリアフリー化への取り組みを進めて きた。今後、高齢化のさらなる進展に伴い、高齢者が住み慣れた地域で安心して 生活していけるよう、民間賃貸住宅への入居や住宅の改修に係わる支援策等を充 実していく必要がある。 また、近年、高齢者の生活を支える医療、介護、住まい等が一体となった地域 ケア体制の整備が求められている。地域ケア体制の整備に当たっては介護サービ スのほか、高齢者向けの住まいと見守りサービス、多様な住まいでの生活を支え る在宅医療を基本的施策として位置付ける必要がある。このため今後の住宅施策 においてもこの地域ケアの考え方に基づき、福祉分野の各種施策と連携し、NP Oや民間事業者によるグループホームや小規模入居施設の供給などを活発化する 支援策の充実を検討するなど、「地域居住」を前提とした施策展開を図っていく。 ① 高齢者等に対する民間賃貸住宅への入居支援の充実 ② 高齢者世帯等に対する住宅改修への支援の充実 ③ 民間マンション等における障がい者の居住に配慮した整備への誘導 ④ 公共施設のバリアフリー化の推進 ⑤ NPOや民間事業者等による住宅供給・居住支援を促進する仕組み づくり(空き家住宅の有効活用を含めて)

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【多様な世代が地域の中で住み続けられる住まいづくりのための施策】 (5) 住宅政策としての子育て支援 近年、荒川区では南千住地区の大規模開発等により 20~30 代の転入が多く見 られるが、若い単独世帯や子育て世帯の比率はまだまだ低く、今後の少子・高齢 化社会を背景に、現在区内に居住している若い世代・子育て世帯の定住を促進し、 新たな転入を受け入れていくために、住宅政策として積極的な「子育て世帯への 居住支援」に取り組んでいくことが必要である。 これまで荒川区では、定住化促進のための住宅施策の一つとして、持ち家取得 の支援、中堅ファミリー世帯への住宅供給の促進(都民住宅、公団・公社住宅の 供給)とともに、子育て世帯に対する支援に取り組んできた。具体の施策として は、三世代居住の推進策の実施や大規模マンション建設に対するキッズスペース の確保等の誘導、区民住宅、都民住宅、都営住宅等の賃貸住宅情報の提供・募集 案内などである。 今後は、より積極的な「子育て世帯への居住支援」を図っていくために、子育 て世帯による住宅の広さや家賃への不満や、区民の「近居(地域の中での三世代 居住)」への意向の高さなどを踏まえて、前出の「マイホーム借上制度」等を活用 した空き家住宅の有効活用等による、市場よりも低廉な家賃で広い住宅のあっ旋 をはじめ、地域の中での三世代居住への積極的な支援、空き家・空き店舗の活用 による子育て支援施設(一時預かり施設・コミュニティ施設等)の開設への支援 など、多角的な支援策の検討・取り組みを進める。 ① 大規模マンション建設に対するキッズスペースの確保等の誘導 ② 区民住宅、都民住宅、都営住宅等の賃貸住宅情報の提供・募集案内 ③ 地域の中での三世代居住への積極的な支援策の検討 ④ 空き家住宅の有効活用等による低廉な家賃で広い住宅のあっ旋 ⑤ 空き家・空き店舗の活用による子育て支援施設の開設支援

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5. 施策展開への取り組みの体制

住宅・住環境づくりへの取り組みは、住宅関連部署を中心にまちづくり、環境、 福祉、子育てなど、行政内の様々な部署の連携による取り組みが不可欠である。 また、行政だけで取り組めるものでもなく、区民や NPO、民間事業者などとの 連携・協力が必要である。地元の大学等による様々な研究活動との連携も効果的 であろうし、居住者の個々の事情に応じた住宅・住環境づくりを目指すためには、 地元の建築家や専門家等による継続的なまちへの関わりと支援も必要である。 そのため、重点的に取り組むべき施策をはじめ、個々の住宅施策への取り組み に当たっては、以下の考え方で進める必要がある。 産・官・学・民が協働して取り組む住まいづくり 新たな住宅施策の展開に当たっては、必要な人に必要な住まいと住環境を提供 するために、区民やNPO、民間事業者、大学、地元の建築家、専門家等と連携・ 協力しながら、地域が主体となった住まいの流通と地域居住への支援(エリアマ ネジメント)のしくみづくりも課題となる。そのためには、区民やNPO、民間 事業者等の多様なアイディアやノウハウを集め、地域における住宅供給・居住支 援の担い手を育成・支援していくことが求められる。 今後の住宅施策を効果的かつ効率的に展開していくために、前章に示した重点 施策への取り組みと併せて、以下のような取り組みを検討し、地域における主体 的な取り組み体制の整備を図っていくことも必要である。 ① 産・官・学・民による新たな取り組みを募集するモデル事業等の検討 ② 地域の様々な課題に応える複合的な事業への優先的な支援 ③ 先進的な地域におけるモデル的な取り組みへの積極的な支援

参照

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