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第51回日本神経学会総会 シンポジウムー15 平成22年5月22日

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(1)

第2回 鎌ヶ谷総合病院 脳神経外科 定期講演会 平成23年4月15日 19:30~20:30 湯浅 龍彦 T.Yuasa MD & PhD 鎌ヶ谷総合病院千葉神経難病医療センター センター長 特発性正常圧水頭症: その病態、診断、鑑別診断 iNPH Pathogenesis ,

Diagnosis and differential diagnosis

(2)

はじめに

なぜ

NPHが重要なのか

特発性正常圧水頭症(iNPH)は、歩行障害、認知障害、尿失禁を3徴とす る慢性交通性水頭症であり、高齢化社会を迎えたわが国の大きなきな

問題である。

iNPHは、treatable gait disturbance and preventable dementiaとし てとらえるべきであり、 早期診断、早期治療が重要であることは勿論であるが、 原因解明と予防において神経内科医と脳外科医、 更には、基礎科学者の連携が重要である。 厚労省研究班「正常圧水頭症と関連疾患の病因・病態と治 療に関する研究」(湯浅班:平成17年度~平成19年度、 新井班:平成20年度~現在)

(3)

歴史・定義・分類

 NPHは1965年Hakim S, Adams RD によって報告された。  正常圧とは一見髄液圧が高くないことから命名されたものである が、脳圧は平衡状態にあるのであって、圧が全く正常であるとは 見做されていない。  原因は不明であるが、髄液循環動態の異常とその背景には脳 のコンプライアンスの低下があると想定されている。  定義:iNPHは初老期を侵す慢性の交通性水頭症で、脳脊髄 圧は概ね正常であり、その原因が不明のものと定義される。 NPHの分類 (1)iNPH:特定の原因のみつからないもの (2)symptomatic(sNPH):髄液還流障害を来す先行疾患の存在 (3)comorbid(cNPH):AD、PSP、PDなど老年期の併発疾患の存在

(4)

iNPH:大いなる疑問

(平成17年)

iNPHのidiopathicとは何か?

ある一つの疾患があるわけではない。

髄液循環動態不全が本態であろう。

髄液の産生、循環、吸収に関する

解剖・生理、病理学の理解が必要。

果たして”normal pressure”でよいのか?機序は何か? 呼称はどうすべきか?=>Idiopathic chronic hydrocephalus in elderly(iCHE)

(5)

ポイントは髄液にあり、

1)ダイナミクスの正しい理解

#産 生: 脈絡叢/500ml/日 #循 環 脳室からの送り出し: 中脳水道、 マジャンデイ孔、ルシュカ孔、 中山孔  送り出しの力:  心臓の拍動、  脳の弾性と軟性、  ependymal cell の働き 脊髄腔から末梢神経の神経周膜管内 #吸 収:クモ膜顆粒から上矢状静脈洞、 ependymal cell間隙を通して レッサーパスウエイへの流れ。

(6)

ポイントは髄液にあり:

髄液は単なる緩衝液ではない

(1)髄液のダイナミズム;その背景にある分子機構 脈絡叢における濾過機能(髄液産生と特異分子) 上衣細胞と髄液攪拌機能、分泌機能、ローカルホルモンの機能 sub-ependymal regionの機能、髄液の脳内への吸収と流れ 脳の拍動(コンプライアンス)、中脳水道フロー 脊髄レベルでの髄液の循環と吸収、停滞の意義 末梢神経周囲腔における髄液の流れと意義 (2)髄液中の分子:生理活性物質の意義

(7)

I

NPHの疫学研究

 (1)population-based study(山形大:伊関、川並、加 藤: JNS電子版2008)=Evans Index0.3以上+高位 円蓋所見の頻度:61歳で0.45%;70~72歳で0.53%  熊本市内の脳ドック検診= Evans Index0.3以上は、 2.8%(稲富ら)  東京都心の救急病院=脳室拡大+高位円蓋所見の頻 度は、2.1%(本多ら)  老人福祉施設でのiNPHの頻度(伊藤、和泉ら):  グループホーム=11.1%  養護老人施設=15.7%  特別養護老人施設=23.4% iNPHの頻度:有病率パーキンソン病 に匹敵し、シャント術適応例は ALSに相当する。

(8)

喫煙と

耐糖能異常

(iNPH研究班)

(9)

○堀、加藤らは、正常対照の中脳水道のVG(velocity gradient)は5.2~ 6.6(平均5.77)、 iNPH症例の11例中8例では、VR(ventricular reflux)が 著明、かつ、VGが低下(3.3~5.4:平均3.75)。 Part I: 髄液動態 ○新潟大関耕二、桑原武夫、湯浅龍彦らは、脳が心臓に同期して活発に収縮、拡張 することを、世界に先駆けて報告した。 ○そして、NPHでは、中脳水道でのto and flowが失われることを示した。 ○東海大大磯病院、山田らは、側脳室へのback flowが失われることを示した。 INPHでは髄液は、側脳室やシルビウス裂からの流出が停滞する。流れて行かない。 停滞することを示した。溜まりには大血管の拍動が必ず存在する。

(10)

T

HE

CSF C

IRCULATION

BULK FLOW MODEL REVISED MODEL

CSF is absorbed by brain capillaries CSF is absorbed

by arachnoid villi

Dan Greitz(カロリンスカ大)

The CSF is absorbed by the brain capillaries

(11)

INPH:毛細血管レベルの病変を指摘(大浜ら)

 大脳白質には特異なcystic病変が見られた。  毛細血管周囲硬化所見が顕著、  深部白質の中等動脈と小動脈の硬化所見はない。  更に浸潤するアストロサイトの変化はこれまた特異で、同細胞のアク アポリン染色が消失。 INPHではBinswanger病よりも更に径の細い毛細血管レベルでの病変の重要 性が認識された。

(12)

iNPHでは、脳の毛細血管レベルの病変と

脳のコンプライアンスの低下に注目すべきである

○脳のコンプライアンスとは、脳実質の硬さ、弾力性、柔軟性であり、生理的には 脳の収縮性に反映される。 ○iNPHでは、脳実質内の組織液が再吸収されて流れて行くべき毛細血管レベルに 障害があり、組織液、脳実質へ流れた髄液の排出障害を来す。と考える。 ◎脳血管レベルでの問題が、コンプライアンスの低下をきたし、髄液還流、特に脳実質内 から流れ出す経路(レッサーパスウエイ)に問題をきたし、脳室からの流れ出しをも 停滞させ、脳室拡大をもたらした状態がiNPHであろうと考える。

(13)

NPH関連遺伝子:

Kato T, Sato H. Emi M. Seino T. Arawaka S. Iseki C. TakahashiY. Wada M. Kawanami T.: Segmental copy number loss of SFMBT1 gene in elderly individuals with ventriculomegaly: a community-based study.InternalMedicine, 2010 in press. (山形大学加藤ら)

 AVIM4例とpossible NPHの4例にて抗SFMBT1遺伝子のintron2のseg

mental copyは、 8例中4例で変異。一方、健常者100例中では1例のみに 変異。

SFMBT1 stainingは、

 (1) the muscle cells in the arterial medial layer (A and B),  (2)the epithelial cells of the choroid plexus (C and D),  (3)the ependymal cells (E)に陽性であった。

(14)

FUTAKAWAS., NARAK., MIYAJIMAM., KUNOA., ITOH., KAJI H., SHIROTANIK.,

HONDA T., TOHYAMAY., HOSHIK., HANZAWAY., KITAZUMES, IMAMAKIR., FURUKAWA

K., TASAKIK., ARAIHIROYUKI, YUASAT., ABEM., ARAIHAJIME, NARIMATSUH.,

HASHIMOTOY.: A UNIQUEN-GLYCAN ON HUMAN TRANSFERRIN INCSF: A POSSIBLE BIOMARKER FOR INPH. NEUROBIOL. AGING, IN PRESS

図5 髄液型トランスフェリンの存在 髄液および血清タンパク質をSDS-PAGE で展開後に銀染色した結果である.両者のパ ターンがよく似ていることがわかる(図4A).一方,同じサンプルを抗トランスフェリン抗体 を用いたウェスタンブロット法で解析すると髄液中には血清に見られない特徴的なバンド が観察される.これを髄液型TF と名付けた(図4B).また,血清トランスフェリンと 同じ移動度を示すものを血清型TF と名付けた.

(15)

図6 正常圧水頭症におけるトランスフェリン・インデ ックスの上昇 髄液代謝異常症である正常圧水頭症患者では髄液型トランスフェリンの含有量が 低下し,トランスフェリン・インデックスの有意の上昇が認められた. Neurobiol. Aging, in press 脳21 Vol. 14 No. 1 2011

(16)

INPHでは、髄液中LEUCINE RICH GLYCOPROTEIN(LRG); INPH症例ではLRGが特異的に増加する。 新井 一、◯中島 円、宮嶋雅一、野中康臣、荻野郁子 順天堂大学脳神経外科 iNPHの髄液の研究

(17)

当院の髄液タップテスト実施要項:

 運動機能評価:3mTUG(秒数)+2分間歩行(距離数)  高次脳機能テスト:MMSE,FAB,TMT-A,TMT-B  施行手順: (1)タップテスト前テスト:時期をずらしての2施行: そのうち1回は高次脳機能検査 (2)入院:タップテスト(髄液30ml採取) (3)タップ直後の検査:3m+2分 (4)タップ後(1~2日)のテスト: 3m+2分 (5)タップ後1週間目のテスト: 3m+2分+高次脳機能 判定:(a)自覚症状、(b)家族の申告、(c)運動機能評価

(18)

I

NPHの歩行障害の特徴

歩角の増加、

足挙上の低下、

左右バランス失調

(19)

タップテストで実施する高次脳機能検査につ

いて

 (1)MMSE  (2)FAB  (3)TMT-A  (4)TMT-B  (5)agitationスコア

(20)

I

NPHの認知機能障害の特徴

認知障害は歩行障害に次ぐ

iNPH

の主要徴候である。

iNPHは、

前頭葉機能

注意機能、作動機能、

精神運動速度、遂行能力

)の低下

を特徴とする。

(21)

I

NPHの排尿障害

iNPHの排尿障害は右前頭葉の血

流低下と関連。

iNPH患者の排尿障害は、歩行・認

知障害による

2次的機能性尿失禁と

右前頭葉の機能障害によるものが混

在(榊原ら)。

(22)
(23)

2008年

(24)
(25)
(26)

INPHの幅広い臨床:特殊病型

AVIM

(27)

A

SYMPTOMATIC VENTRICULOMEGALY WITH

FEATURES OF IDIOPATHIC NORMAL PRESSURE HYDROCEPHALUS ON

MRI (AVIM)

78歳、男性 AVIM例

(28)

症例4 (IG) 78歳、男性

 原病歴:7年前(H15年)から水頭症と診断されるも 運動機能、日常生活に目立った障害はない。=>AVIMと診断  高次脳機能検査:MMSE=23/30,FAB 13/30, TMT-A=46秒、TMT-B=120秒 タップテストは未施行

(29)

iNPHの特殊例:

AGITATION型

72歳女性:

Agitation type のiNPH長期経過観察例;

最近再び歩行困難増悪、精神症状悪化し、

タップテストを拒否され、漢方を試みた。

(30)

症例5 :NT 72歳、女性 AGITATIONを呈すNPH症例  主訴:歩行障害と性格変化、コンタクト不良  既往歴:H2年頃から、抑うつ的、不眠、10年前から被 害妄想あり。長らく近くの精神病院で精神障害として多 量の投薬歴あり。H17年、パーキンソン症候群の精査で 国府台病院。  脳MRIよりiNPHを疑う。髄液タップにて精神症状が改 善。  精神状態は比較的落ち着いていたが、最近再びコンタ クト不良になって、杖歩行。受診困難で、診察もままなら ない状況。  MRI所見:側脳室拡大、シルビウス裂拡大、前頭部拡 大、局所のたまり、ドーム徴候あり。 NPH-GO-005

(31)

I

NPH-

AGITATION TYPE

2009/04/09

(32)

鑑別診断

○脳画像上しばしば混同する可能性のある疾患:

longstanding overt ventriculomegaly in adult(LOVA)(大井静雄)

○易転倒性を主訴とする症候群

純粋易転倒症候群PEFS(湯浅龍彦),

頚椎症性失立失歩(cervical spondylotic astasia abasia:CSAA)(湯浅龍彦) ○NPHとは異なる疾患であると同時に併存する可能性のある疾患:comorbid(cNPH):

(1)Binswanger病; (2)Parkinson病;

(3)Alzheimer病;

(33)

LONG

-

STANDING OVERT

VENTRICULOMEGALY IN ADULT

(LOVA)

HYDROCEPHALUS

(OI

ET AL

longstanding overt ventriculomegaly in adult(LOVA); 慢性の閉塞性水頭症、著明な脳室拡大、大頭症、 トルコ鞍の破壊を呈す。

平均発症年齢は39歳とiNPHより若年。

(34)

医療54(6):270-274.2000

(35)
(36)
(37)

BINSWANGER病(症例ー1)

iNPHを疑い2度にわたってタップテスト実施、しかし、効果なく、 Binswanger病とした。LRGの増加はなかった。

(38)

Binwanger症例-2

TE

86歳、男性

 主訴:寝てばかりいる。食べない。失禁。  既往歴:右肺がん手術(60歳)、糖尿病、高血圧、 84歳、胃悪性リンパ腫  現病歴:5年前から進行性の認知症を呈し、 3年前から睡眠時間が長くなり、最近は食事以 外は寝ている。食事は一日一食、量も少ない。 ・現症:少歩、早足。

タップテスト有効。

・脳MRI:水頭症とBinswanger病の合併疑い。 ・方針:シャント手術適応なし。

(39)

Binswanger 病:症例-2

(40)

BINSWANGER病と

INPH:

障害される血管のサイズが異なる。リスクが異なる。

最小動脈の

硬化所見

高血圧

毛細血管周

囲硬化所見

喫煙と耐糖

能異常

Binswanger 病 INPH

(41)

-NPH(神経変性症と合併するNPH)

AD合併例/パーキンソン病合併例/PSP合併例

 ADの合併: INPH28例で、シャント術に合わせて脳生検(Bech-A zeddinら:JNNP2007)  6割に脳血管病変  4割にアルツハイマー病変  パーキンソン病の合併:  MIBG-心筋シンチにて確認  PSPの合併:画像所見の類似性、どちらも前頭葉の障 害パターン、易転倒性も似る。

(42)

PSP+cNPH

78歳 男性 INPH

様々な全身合併症が先行し、

診断が困難であったPSP+

iNPH例:

VP-シャントを勧めるも,本人の希望もあって、

漢方で経過観察中

様々な背景を有すNPH

(43)

OH 78歳、男性

 主訴:起立歩行障害  既往歴:2008年心臓冠動脈ステント処置、 慢性硬膜下血腫手術、 けいれん発作。抗てんかん薬服用、 時々記憶をなくす、体がふらつく。  2010年 前立腺肥大の手術。  現症:意識、眼球運動正常、起立・歩行障害(+)、 姿勢反射障害(+)。 最初MRIにてPSPを疑う。しかし、高位円蓋部所見が進んで きてiNPHを疑う。

(44)
(45)

iNPH患者においては、術後のリハビリプログラムの整備が緊要(平田好文) iNPH患者の術後リハビリの問題点: ・退院後の在宅率 83%(老健 13%、その他) ・老々介護 30%、昼間の独居50%、終日独居13% ・万歩計:1日平均歩行数:402歩。 ・地域リハの利用者 50%、 ・自発性が低下、生活活動性が低い=>活動性の確保が課題

(46)

術後の

NPH症例に対する更なる対策

NPH

-VP-シャント術後の 79歳、男性

シャント術々後1年8カ月:

最近尿失禁が出現、歩行やや悪化

=>漢方の試み

(47)

:TY 79歳、男性(VP-シャント術後)  主訴:歩行障害  現病歴:7~8年前から足が前に出にくく、4~5年前からは容易に転倒。  3年前から尿失禁、物忘れ、2年前から現実と空想のことが混乱。  2009年シャント術施行、尿失禁、頻尿、夜間頻尿がほとんど改善。  現在、小歩だが、万歩計で8,000~10,000歩を歩いている。  2010年初めより排尿回数が増え、時々尿失禁が出現。  シャントバルブでの圧調整に関してはもう少し様子を見てから(脳外科)、  もう少し何とかならないか(患者側の要求)、  =>漢方開始。

(48)

今後の課題:

#新たな概念の確立と分子生物学に基づいた治療法の開発 新たな外科治療法の確立 新たな内科的治療法の開発:薬物療法の工夫 #外科手術の適応のない症例(高齢者、認知障害のつよい例、精神症状 が前面にでた例)に対する早急な具体策:繰返しタップ、漢方 #術後患者の継続治療体系と体制整備: メンタルトレーニング、 継続的歩行リハビリと社会参加のプログラム、 リエゾン #早期診断、早期治療; 危険因子の特定と予防法の確立 軽度認知障害や易転倒症候群からiNHPの早期診断へ。 #患者会の援助

図 6 正常圧水頭症におけるトランスフェリン・インデ ックスの上昇 髄液代謝異常症である正常圧水頭症患者では髄液型トランスフェリンの含有量が 低下し,トランスフェリン・インデックスの有意の上昇が認められた. Neurobiol

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