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心臓血管外科手術説明書 国立病院機構東京医療センター心臓血管外科 様

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Academic year: 2021

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心臓血管外科手術説明書

国立病院機構東京医療センター 心臓血管外科

(2)

◎心臓血管外科 staff

心臓血管外科医師だけでなく、以下の病院スタッフ全員で責任持って治療にあたります。 大迫 茂登彦、山田 敏之、河西未央、尹 亮元 研修医 1 年目 2 年目 <手術> ・麻酔科医師 ・臨床工学技士 ・ICU/4B 病棟看護師 ・手術室看護師 <術前後> ・循環器科医師 ・理学療法士(リハビリ科) ・検査技師、栄養士、薬剤師 ・ソーシャルワーカー、退院支援、地域医療連携室

◎手術

・日時: 2017(平成 29)年 月 日 ( ) ・時間: 午前 9:00~ ・病名: ・手術:

◎手術日程について

外来や紹介病院にて待機、基本的に手術予定日が決まって入院していただきますが、検査結果や 症状・状態の悪化により予定が変更となる場合があります。 また当院では救急医療にも対応しているため、場合によっては重症患者さんを受け入れた場合、 手術予定を変更させていただく場合があります。 手術室や各部所のスタッフ、他の患者さんとの調整が必要となりますので、ご理解とご協力の上 お待ちいただきますようよろしくお願いいたします。

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◎心臓手術の一般的な経過

~入院から退院まで~

入院:手術より数日前 ↓ 検査:手術の前に必要な検査を適宜行います ↓ 説明:執刀医・麻酔科・看護師等から手術・入院に関する説明があります ↓ 手術:当日朝回診 朝8:30 頃 ※ご家族は朝8:00~8:30 までに病室にいらしてください ↓ 病棟出発:朝8:55 頃 ↓ 手術室入室:朝9:00 頃 ※ご家族は手術待合室で待機願います ↓ 全身麻酔他、準備に約40 分~1 時間 ↓ 手術開始:朝10:00 頃 手術時間約 時間 ↓ 集中治療室へ移動 ↓ 面会:集中治療室 ※面会に先立ち執刀医から手術の結果説明を行います ↓ (術後順調にいけば・・・) 手術当日~翌日:麻酔から覚醒、人工呼吸器離脱 ↓ 手術翌日~術後2 日:経口摂取開始、点滴・ドレーンチューブ抜去、リハビリ開始 ICU のフロアーから個室に移動、集中治療室退室 ↓ 術後3~5 日:個室から大部屋へ(部屋の状況により異なる場合があります) ↓ 術後1 週間~:○各疾患に応じて術後評価の検査を行います 冠動脈バイパス手術の場合→冠動脈造影検査(カテーテル、冠動脈CT) 弁膜症手術の場合→心エコー検査 大動脈の手術の場合→造影CT 検査 ○術前の状態によりますが、退院にむけて準備します ↓ 術後10-14 日目~:退院 ↓ 退院後約1~2 週間のところで外来に来ていただきます。 その後は当院では術後1 ヶ月、3 ヶ月、6 ヶ月、1 年を目処に諸検査を行い術後評価をいたし ます。その間おちついたところでかかりつけ医に外来通院していただくことになります。

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◎術前検査について

当科で行う術前検査には以下のようなものがあります。 ・一般検査 血液検査:手術を受ける方の全身状態の評価、血液型、感染症、特殊抗体の検査 等 検尿:尿の検査(血尿・蛋白・糖・細菌等の検査) 検便:便潜血の検査(消化管に出血性の病変がないかどうか調べる検査) レントゲン(胸部・腹部) ・生理検査 心電図 24 時間心電図:不整脈の検査 心エコー(心臓超音波検査):心臓の機能・弁膜症の有無等を調べる検査 頸動脈エコー:頸動脈に狭窄等の病変がないかどうかを調べる検査 呼吸機能検査 ABI:両手両足の動脈の性状をみる検査 下肢血管エコー:冠動脈バイパス手術の際に使用する静脈の性状を調べる検査 ・CT 頭部CT:術前の脳の状態を調べる検査 MRI:CT 検査に加えてさらに詳しく脳の状態を調べる検査 胸部・腹部CT:血管の性状や、胸部・腹部に他の病気がないかどうか調べる検査 ・その他 心臓カテーテル検査:術前にまだ行っていない方、または追加検査の必要な方 上部・下部消化管内視鏡検査(胃・大腸カメラ):出血性病変、貧血の精査 鼻腔・皮膚ぬぐい培養検査:常在菌やMRSA の検査 口腔内check:歯科口腔外科受診し口腔内の check/治療を事前に行います その他、各臓器に異常が指摘された場合は専門科と連携し各種必要な追加検査を行います みなさんに全ての検査を行うわけではありません。 疾患、紹介医からの情報提供、手術内容・入院後の診察結果などにより必要な検査を行います。

◎手術前の注意点

・入院規約、指示された安静度を守ってください。特に喫煙は厳禁です。 ・入院後、内服薬が変更/中止となることがあります。 ・症状や心臓の状態によっては術前に点滴や注射の治療を行うことがあります。 ・抗凝固薬(ワーファリン)や抗血小板薬(バイアスピリン・プラビックス等)の中止、その他薬 剤調整が必要となることがあります。

(5)

◎手術(冠動脈バイパス手術)

冠動脈とは心臓を栄養する血管で、全部で3 本(左;前下行枝、回旋枝 / 右冠動脈)あります。 冠動脈が狭窄・閉塞すると心筋に血液が十分に供給されず虚血という状態となり、狭心症や心筋梗 塞を起こします。狭くなった箇所より先にバイパス血管を縫い付け、血流をよくする手術:バイパ ス(血行再建)です。 ○バイパスに用いる血管(グラフト)は、 ・内胸動脈(肋骨の裏にある左右2 本の動脈、最も冠動脈に適していると言われています) ・右胃大網動脈(胃の周りにある動脈) ・橈骨動脈(手の動脈) ・大伏在静脈(足の静脈、最も古くから使われています)。 ○心拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB) 冠動脈バイパス手術を行う際に心臓を停止させず(人工心肺を使用せず)手術を行う方法です。 この手術には以下のような優れた点があります。 ・脳梗塞等の合併症が尐ない ・心臓や全身への負担が尐なく、術後の回復が早い ※当院では上記方法で手術を行っておりますが、すべての症例に行うことができるわけでは ありません。 ・冠動脈が心臓表面になく、血管が脂肪や筋肉の中に埋もれていると困難 ・冠動脈の性状が極端に悪い場合には困難 ・血圧や心拍がしっかりと維持できなければならない(極端な新機能低下、弁逆流)。 →上記のように心拍動下冠動脈バイパス手術が困難と思われるときは、人工心肺、IABP 等の補 助循環装置を併用します。この場合も基本的に心臓を止めることは行いません。

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◎弁膜症 ①

心臓には4 つの弁があります。血流の流れが効率よく、一方通行となるように働く一方弁です。 この弁が何らかの原因によりうまく働かなくなったのが弁膜症です。 ・狭窄症:きちんと開かない状態。そこを通るために余分な力が必要となる。 ・閉鎖不全症:きちんと閉じない状態。逆流・漏れを生じる。 ○弁置換術:問題のある(病的)弁を人工弁に取り換える手術です。 人工弁には主に下記の2 種類があります。 ・機械弁:金属(可動部分は炭素)でできており、耐久性に優れている。 ワーファリンを毎日、忘れることなく服用しなければならない。 ・生体弁:ウシの心膜・ブタの弁でできています。耐久性は機械弁に比べると劣る。 構造上従来のものと外巻構造のものがあり、外巻弁は弁口面積がより広い。 ワーファリンは継続して服薬しなくても良い。 機械弁 生体弁 <従来のもの> <外巻弁> 左房 左室 右室 右房 僧帽弁 大動脈弁 肺動脈弁 三尖弁 三尖弁 肺動脈弁 僧帽弁 大動脈弁 大動脈 上大静脈 肺動脈 下大静脈

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◎弁膜症 ②

○弁形成術:壊れた弁を修復し、自己の弁を温存する手術です。 主に僧帽弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症に対して行います。 基本的には余剰部分に対する切除・縫合、人工腱索を追加することで、弁構造を修正します。 補強のために人工弁輪を使用します。 弁障害の程度によっては形成術が困難となり、弁置換術に変更することがあります。 ○メイズ手術 / 肺静脈隔離 / 左心耳切除: 心房細動を治す手術です。 調律を整えることで、心機能の改善と血栓症(脳梗塞、等)の予防になります。 心房細動の異常な電気伝導を切るために、心房壁の切開縫合と特殊な機械を使い電気的焼灼によ り治療します。 心房細動の期間、心房の大きさ、心臓の状態によって治療効果は異なります。必要に応じて手技 を細分化します。 メイズ手術:両側心房璧の切開縫合、電気的焼灼 。 肺静脈隔離:両側肺静脈の部分のみ電気的焼灼を行います。 左心耳切除:最も血栓ができやすい部分の切除、調律には関与しません。 ○ワーファリン:血液の凝固成分の1 つを阻害することにより、血液が固まりにくくなるようにす る薬で、術後服用を要します。機械弁・心房細動:永続的服用 / 生体弁・弁形成;3~6 ヶ月間服 用毎日きちんと内服し、定期的に血液検査を受け、薬の効果を確認する必要があります。この薬が 強く効きすぎてしまうと出血しやすくなり、不十分だと人工弁や心臓内に血栓を作り、人工弁機能 不全や全身の塞栓症を起こすことがあります。ビタミンK 摂取量が多いと効果が抑制されます。 納豆・青汁・クロレラなどは摂取を避けてください。また出血性の病気(胃潰瘍、出血の多い痔、 等)や慢性的な肝機能障害のある方は、出血が増長されるため服用には注意を要します。

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◎大動脈の手術

大動脈の疾患は主に、大動脈解離・大動脈瘤があります。 ①大動脈解離: 大動脈は3 層(外膜・中膜・内膜)構造ですが、一番内側にある内膜に生じた亀裂から血液が 内膜に流入し、外層と内層に解離させていく疾患を言います。Stanford A 型と Stanford B 型 に分類され、A 型は緊急手術を要します(保存的治療では 1 ヶ月以内の死亡率 90%)。 ②大動脈瘤: 動脈が拡大(ふくれてくる)してきて、こぶ(瘤)のようになった状態を言います。胸部では 6cm 以上、腹部では 5cm 以上になると、破裂の危険性があり手術が必要となります。手術に は、人工血管を用いた人工血管置換術とステントグラフト挿入術の2 種類があります。

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◎人工心肺について

心臓は絶えず拍動しているので、心臓の手術の際には心臓を一時的に停止させ、その間『人工心 肺』という特別な装置を体に取り付けて脳をはじめとするその他の臓器に血液を送り、生命活動 を維持します。心臓手術が終了すると、心臓の拍動を再開させ人工心肺を取り外します。人工心 肺の操作は専門の技能を持った臨床工学技士があたります。

◎補足事項

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◎術前の状態が術後に与える影響

~もし以下のような状態が術前にあると…~

○心機能低下があると・・・ ・術後心不全、不整脈の頻度が高くなります。 ・創部治癒能力の低下により傷が治りにくくなる可能性があります。 ・水分貯留傾向の遷延により、手足の浮腫・体重増加・胸水・心嚢液が貯留しやすくなる可能性 があります。 ・全身の回復の遅くなる可能性があります。 ○腎機能障害があると・・・ ・術後に腎機能がさらに悪化する可能性があります。利尿剤の投与にて尿量や老廃物排泄が困難 な場合は、血液透析が必要になります。血液透析には術後の一時的な場合と維持透析導入とな る場合があります。術後の腎機能や手術の負担により影響されます。 ・免疫力の低下により感染しやすくなる可能性があります。 ・創部治癒能力の低下により傷が治りにくくなる可能性があります。 ・水分貯留傾向の遷延により、手足の浮腫・体重増加・胸水・心嚢液が貯留しやすくなる可能性 があります。 ・全身の回復の遅くなる可能性があります。 ・貧血になる可能性があります。 ○肝機能障害があると・・・ ・術後さらに肝機能が悪化する可能性があります。食欲不振、倦怠感、昜疲労、昜出血、腹水貯 留、黄疸等の症状が起こる可能性があります。 ・免疫力の低下により感染しやすくなる可能性があります。 ・創部治癒能力の低下により傷が治りにくくなる可能性があります。 ・水分貯留傾向の遷延により、手足の浮腫・体重増加・胸水・心嚢液が貯留しやすくなる可能性 があります。 ・全身の回復の遅くなる可能性があります。 ○糖尿病があると・・・ ・術直後は交感神経が優位となるため、血糖値が上昇し、調整がさらに難しくなります。適宜イ ンスリンを使用(増量)して血糖値を調整する必要があります。 ・免疫力の低下により感染しやすくなる可能性があります。 ・創部治癒能力の低下により傷が治りにくくなる可能性があります。 ・水分貯留傾向の遷延により、手足の浮腫・体重増加・胸水・心嚢液が貯留しやすくなる可能性 があります。 ・全身の回復の遅くなる可能性があります。 ○喫煙歴、呼吸器疾患があると・・・ ・術後長期人工呼吸器管理・気管切開が必要になる場合があります。 ・肺炎、縦隔炎の合併に関わる可能性があります。

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◎術前の状態が術後に与える影響

~もし以下のような状態が術前にあると…~

○肥満があると・・・ ・創部治癒能力の低下により傷が治りにくくなる可能性があります。 ・呼吸不全を起こしやすくなります。 ○臥床(寝たきり)状態であると・・・ ・呼吸不全を起こしやすくなります。 ○脳梗塞・脳出血の既往があると・・・ ・麻酔覚醒が遅れる可能性があります。 ・術中に脳梗塞、脳出血を起こす可能性が高くなります。 ○高齢者であると・・・ ・体力、各臓器の予備力が低下しています。機能不全に陥りやすく、回復に時間がかかります。 ・全身の血管の動脈硬化が進んでいます。血管の性状が悪く、手術操作に影響を及ぼす可能性が あります。また、脳梗塞をはじめとした血栓閉塞症を起こしやすくなります。 ・呼吸不全を起こしやすくなります。 ・精神的トラブルや、術後不穏せん妄(ICUシンドローム)、認知症が進行する可能性があり ます。 ○緊急手術の場合・・・ 緊急手術は待機的手術と比較し手術危険率、術後合併症ともにリスクが高くなります ・心臓の状態が不安定である ・直前まで使用した抗凝固剤、抗血小板剤の影響で出血しやすい。 ・情報、術前評価が不十分である。 ・救命が第一の目標となる。 ○再手術の場合・・・ 初回手術と比較し手術危険率、術後合併症ともにリスクが高くなります ・前回手術時の癒着剥離が必要である。 時間がかかる、出血しやすい、癒着が強いと心臓大血管を損傷することがある。 ・心機能が低下している患者がほとんど。 ・手術時間、体外循環が長くなる。 ・前回手術時間の結果によって、今回の手術内容に制限が出てくる。

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◎術後合併症

・心不全 心臓を切ったり縫ったりすることで、心臓の機能が低下します。 そのため血圧が低くなったり、心臓が腫れたりします。 ・心筋梗塞 冠動脈が収縮等で狭くなり(攣縮)、心筋に血液が流れなくなる現象(スパスム)が 起こることがあります。心筋梗塞となることがあります。 ・不整脈 手術後に脈が遅くなったり、脈の不整が出たり、心電図の波形が変わったりする ことがあります。 ・呼吸不全 手術後は人工心肺の影響や心不全のために、肺の機能が低下します。 手術後は機械を使って人工呼吸をします。重症の人は、この人工呼吸の時間が 長くなります。 ・腎不全 腎臓の働きが悪くなり、尿が出なくなります。 重症の場合、尿毒症になり、人工透析(人工腎臓・持続血液ろ過)が必要と なることがあります。 ・肝不全 輸血・麻酔薬・および手術の影響により肝障害が起こることがあります。 肝障害が起こると、手術後に心臓がよくなっても長時間の安静が必要となることが あります。 ・脳障害 低血圧・人工心肺の影響・血栓や出血のために脳の循環が悪くなり、脳卒中と 同じような症状が出ることがあります。 ・出血 心臓の手術時には、血液が固まりにくくする薬を使用します。 そのため、手術出血しやすくなります。高齢の方や再手術の方では、組織が もろかったり癒着のために止血困難となることがあります。 ・感染 創部が化膿したり、肺炎になったりすることがあります。 人工呼吸が長時間になる方は肺炎にかかりやすく、重症になると敗血症になります。 また、糖尿病の方は感染症にかかりやすかったり創感染が起こりやすかったりする と言われています。 ・肺炎 全身麻酔、気管挿管による影響もあり、気道、肺に炎症を起こすことがあります。 また呼吸運動(機能)が不十分な状態(呼吸不全;前記述)が続くことも影響します。 ・疼痛 胸骨切開、肋骨離断等、胸郭に手を加えること、チューブ類(点滴、ドレーン等)を 留置すること等が原因です。炎症を増長し、各種機能に影響する場合があります。 ・心停止 手術前に状態が非常に悪い人は、麻酔だけでも心臓が止まることや、手術後に 心臓が動かなくなったり止まったりすることがあります。 ・その他 消化管出血・腸管虚血・対麻痺・ICU 症候群(術後せん妄)・末梢循環不全 等 11

参照

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