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みらいを創る
家族
~くらしに学ぶエネルギー ~
福井大学大学院工学研究科
葛生 伸(くずう のぶ)
平成 27 年 2 月 26 日 10:30~ 11:30 ◯ ◯ 小学校理科室1 1. はじめに みなさんこんにちは,福井大学の葛生といいます。これから,一時間みなさんと実 験をしながら楽しい授業をしていきましょう。今日はあかりについて学びます。 (スライド 1) 今年は,何の年か知っていますか?今年は「国際こくさいひかりねん光 年」です。国際連合によって決 められたものです。光に関するいろいろな発見から区切りのよい年になっているので す。昨年は,光に関して日本人が 3 人もノーベル賞をもらいましたよね。そう,青色 発光ダイオード(青色 LED)に関してのノーベル賞です。そこで,今日はいろいろお 話や実験を交えながらあかりについて学んでいきましょう。昔のあかりについて学ぶ とともに,これからの世の中がどうなっているのかについても学びましょう。 今年は国際光年であるといいました。ちょうど千年前にアラビアのイブン・アル・ ハイサムという人が光の基本的な性質について研究しました。アラビアというと,余 り科学的な発見とつながりがないようよう思うかもしれません。でも,1,000 年前に は科学に関しては,ヨーロッパよりずっと進んでいました。私たちが使っている数字 もアラビアの数字です。そのほか,下の表に書いてあるように,光に関して大切な発 見が 200 年前,150 年前,100 年前,50 年前にありました。(スライド 2) スライド 2
2 2. 太陽と火のエネルギー さて,太陽のことを小さな子どもは「おひ さま」といいますね。太陽の「日」と「火」 は発音がおなじですよね。「光」ということ ばは,「日」を「借り」るので,「ひかり」(= 日借り)というと言われています。 (スライド 3) 日を借りるといっても何を借りるのでし ょうか。昼間は太陽の光が地球に届とどいていま す。夏の昼間は特に暑くなりますよね。それ は,太陽からくる光で暖められるからです。 実は光の形で太陽から「エネルギー」を借り て(実際はもらって)いるのです。 (スライド 4) 地球は太陽の光を吸収して暖められま す。その熱によって,風が吹いたり,雲がで きたり,雨が降ったり,海流が流れたりしま す。雨や風,海流のおかげで海の幸,山の幸 が育つのです。植物があるおかげで光合成 によって酸素がつくられ、私たち生き物も 生きているのです。天候が地球に恩恵をもたらしますが,災害ももたらします。地球 はこのように太陽から熱をもらって生きているのです。言葉を変えると,太陽からの 光の「エネルギー」によって,地球上のさまざまなものが生きています。植物が育つ のも光のエネルギーで光合成こうごうせいが起こるからです。その植物を動物が食べて生きている のです。その動物も他の動物が食べたりして,さまざまなものが「つながって」いる スライド 3 スライド 4 スライド 5
3 のです。(スライド 5) 「エネルギー」という言葉を聞くと難し く感じるかもしれません。簡単にいうとエ ネルギーはいろいろなものを動かす能力で す。非常に大雑把お お ざ っ ぱな捉とらえ方をすると,エネル ギーというのは「生き物や機械のエサ」とい うこともできます。(スライド 6) 3. 火とあかりの歴史 まず,光と熱の歴史から考えていくことにし ましょう。最初の人間は 400 万年くらい前にア フリカで生まれたといわれています。70 万年 くらい前の北京原人は火を使っていたといわ れています。(スライド 7) 火はいろいろな事に使われます。詳しいこと はスライドを見てください。今日はこれらのう ち,あかりについてお話することにします。 (スライド 8) 昔は,火をつくるのが大変でした。昔は木を こすりあわせて作っていたと言われています。 簡単な実験をしてみましょう。火がでるまでや ると時間がかかりますが,木をこすって焦こげ茶ちゃ 色の粉ができます。それをフウフウ吹いて火を おこすのです。そのあと火打ち石ができまし スライド 6 スライド 7 スライド 8 スライド 9
4 た。現在のチャッカマンの中でも火打ち石が使われているものもあります。皆さんの おじいさん,おばあさんの頃は火をつけるのにマッチを使っていました。(スライド 9) 火は,あかりとしても使われてきました。 最初は焚たき火やたいまつ,かがり火びのように 木を燃もやししてあかりにしました。 100 年あまり前まではランプやガス灯で火 を燃もやして灯りとしていました。 (スライド 10) 「あかり」という言葉は,「あかるい」「赤」 (日が)「あける」という言葉の仲間です。夜 明け、、などという言葉もありますよね, (スライド 11) 木を燃やすととても熱くなりますので,家 の中でもやすのは不便です。また,夏に家の 中で火を燃やすととても暑くなってしまい ます。そこで,油が使われるようになりました。約 1300 年前の奈良時代にはイワシ などの魚の油が主に使われていたようです。やがて室町時代になると荏え胡麻ご まがつかわ れるようになりました。600 年位前の室町時代には,京都の大山崎おおやまざきの離宮りきゅう八幡宮はちまんぐうが独 占販売していたという話があります。江戸時代になると菜種油なたねあぶら(なたねあぶら)が使 われるようになりました。江戸時代になっても,菜種油は高いのでイワシの油も使わ れていたそうです。 ろうそくも奈良時代からありましたが値 段が高かったので,多くの場合は油を使いま した。 1 つ実験してみましょう。蒸発皿にサラダ スライド 10 スライド 11 スライド 12
5 オイルを入れてタコ糸を 2~3 本束ねて芯にして,火をつけてみましょう。火がつき ますね。これを見ると現在のあかりに比べて非常に暗いことがわかるでしょう。江戸 時代,「行灯あんどん」というものがありました。その中では油を燃やしてあかりとしていたの です。(スライド 12) 地震などのときには,電気が来なくなり ます。このように電気が来なくなることを 停電 ていでん といいます。停電したときには 懐 中かいちゅう 電灯 でんとう やろうそくを使います。ろうそくの代 わりに台所にある油を小さな皿さらに入れてタ コ糸を使ってあかりをつけることもでます。タコ糸は,よく油でぬらしてから火をつ けてください。何本も重ねるとほのおは大きくなります。 ツナ缶を使って,同じようにあかりにすることができます。これを「ツナ缶キャン ドル」といいます。ツナ缶の上のフタの真ん中に穴をあけて,木綿の紐を差し込んで 火をつけるのです。火が消えてから中身を食べることもできます。ツナ缶としては, 写真のように引っ張ると簡単にフタが開く(イージーオープンといいます) ものがお すすめです。このフタのところアルミニウムでできているので柔らかいのです。その ため,千枚通しやキリで簡単に孔を開けることができます。その孔に,タコ糸を二つ 折りにして押し込み,タコ糸全体を油で濡 らしてから火をつけます。芯の太さにもよ りますが,二つ折りのタコ糸で 5 時間くら いもちました。暗いときは,孔をいくつも開 けて,全部に火をつけるのもよいでしょう。 (スライド 13) ツナ缶キャンドルの作り方をここに書きましたので,皆さん作ってみてください。 (スライド 14) スライド 13 スライド 14
6 明治時代になって,西洋文明が入ってくる とランプが使われるようになりました。日本 に入ったときには,石油が使われましたが, 日本開国前には 鯨くじらの油が使われていたそう です。江戸時代の終わり頃,アメリカからペ ーリーの艦隊が日本に来て開国を迫ったの は,捕鯨ほ げ い船せん(鯨をとる船)に水や食料を補給ほきゅうするためです。 明治時代になると銀座の通りにガス灯が設置せ っ ちされました。ガス灯といっても,その ままではあまり明るいものではありません。手元のガスコンロの火をつけてみましょ う。部屋を暗くしてもあまり明るくならないですよね。そこで,マントルというもの を使いました。ここにマントルがあります,ピンセットでガスコンロの火にいれてみ ます。最初は燃えます。燃えなくなるまで,燃やしてしまいます。それから,炎の中 に入れると明るく光ります。ガス灯では,このようにマントルを使って明るくしたの です。このマントルは今でも売っています。山小屋など電気が来ないところで,今で もあかりとして使われているからです。(スライド 15) 4. 電気とあかり 少し前まで,「電気」というと照明のことを 言いました。「電気を消して」という言葉を使 う人も多いでしょう。その電気が照明として 最初に使われたのはアーク灯とよばれるも のです。エジソンの白熱電球が実用化された 少し後の,明治 15 年(1882 年)に銀座に設置 されました。(スライド 16) スライド 15 スライド 16
7 ちょっと実験してみましょう。備長炭と シャープペンの芯の間に火花がとびます。 これで明るくなります。学校で実験するの は,いいのですがあまり長く見つめすぎな いようにしてください。紫外線がでている ので,目をやられるので注意してください。 電池で放電しているのですが,かなり明るいでしょう。これは,あまりにも明るすぎ るため,一般の家庭では使われませんでした。でも,ものすごく明るくなるので,映画え い が の映写機え い し ゃ きなどに使われました。その後,家庭では白熱電球が使われるようになりまし た。 現在はアーク灯は使われていませんが,放電を利用したあかりは今でも使われてい ます。体育館のあかりには何が使われているか知っていますか。水銀すいぎん灯とうとよばれるも のです。非常に明るいので,体育館や屋外のあかりとしてつかわれます。この画面を 投影しているプロジェクターも水銀灯が使われています。(スライド 17) さて,電球が作られたのは,130 年くらい 前です。皆さん,電球というとエジソンが発 明したと思っている人も多いのではないで しょうか。本当は,電球を発明したのはイギ リスのスワンという人です。でも,すぐに切 れて使えなくなってしまいました。 そこで,エジソンが 1,000 時間くらい使えるように改良したのです。エジソンは京 都の岩清水い わ し み ず八幡宮はちまんぐうという神社の裏山にある竹から作ったフィラメント(電気が流れて 光るところ)を使いました。現在は,フィラメントにタングステンという金属が使わ れています。この電球は白熱はくねつでんきゅう電 球といいます。最近日本では作られなくなりました。 スライド 17 スライド 18
8 (スライド 18) それでは,実験をしてみましょう。シャ ープペンの芯に電気を流してみましょう。 光りますね。光るだけではなく,熱くなり ます。エジソンの白熱電球では,フィラメ ントとして竹を蒸むし焼やきにして炭すみにしたも のを使いました。このシャープペンの芯も 炭と同じく炭素というものからできています。 余談になりますが,エジソンの使った竹は源氏げ ん じの氏神として有名な岩清水い わ し み ず八幡宮はちまんぐうの ある 男 山おとこやまの竹を使ったと言われています。エジソンは,発明に必要な材料がすぐに 手に入るように,世界中の様々な材料を研究所の倉庫そ う こに保管ほ か んしていたそうです。 おまけの話をもう一つ。18 世紀末にはシャープペンシルの原型の繰り出し鉛筆が あったそうです。しかし,壊こわれやすいので普及しなかったそうです。初めて実用的な ものをつくったのは,1915 年日本の早川はやかわ徳次と く じという人です。1916 年エバー・レディ ー・シャープペンシルという名前で販売はんばいしました。早川徳次は,関東かんとう大震災だいしんさいのあと, ラジオなどをつくる電機で ん きメーカーとなりました。現在は,シャープペンシルは製造し ていませんが,社名がシャープとなっています。(スライド 19) 5. 原子からの光 ちょっと話がかわりますが,太陽も,地球 も,私たちの体も全て原子げ ん しというとても小 さな粒つぶからできています。原子は非常に小 さいものです。その大きさは,百億分の 1 メ ートルです。そんなことを言っても,ピンと スライド 19 スライド 20
9 来ないと思いますのでとにかくとても小さいものだと思って下さい。原子は,スライ ドの図のようにマイナスの電気を持った「電子で ん し」とよばれるものが,「原子核げ ん し か く」とよば れるプラスの電気を持ったものの周まわりをまわっています。ちょうど,太陽の周りに地 球や金星,火星などの惑星がまわっているようなものです。しかし,電子はとっても 小さいので,私たちの日常の目にすることができるものとは違うとても不思議な振ふる 舞まいをするのです。(スライド 20) アーク灯の話のところで,水銀ランプの話をしました。水銀ランプは水銀の蒸気の 間で放電するものです。水銀ランプは,体育 館や運動場の照明などにも使われています。 ここに水銀ランプがあります。水銀ランプの 光を皆さんに配った分光シートで見てみま しょう。もやっとした色ではなく,飛び飛び の色からなっていることがわかると思いま す。分光シートというのは,光の成分に分けてみることができるものです。光の成分 というのは,虹にじのようなものです。白い光は虹のようにいろいろな色の光からできて います。 ナトリウムランプというのがあります。最近は少なくなりましたが,トンネルなど で使われているオレンジ色のあかりです。これも,オレンジ 一 色いちしょくからなっています。 これらの光は,どうして出ているのでしょうか。これらの光は,水銀やナトリウムと いった物(物質ぶっしつ)の基本となる「原子」からでているのです。実はこのことを研究し ていことで,あたらしい科学の法則が見つかりました。光の電子などは私たちの目に 見えるものと違うとても不思議な性質をもっているというものです。それは「量子りょうし 力学 りきがく 」とよばれるものです。それは,現在私たちが使っているコンピュータ,携帯けいたい電話で ん わ, 原子力 げんしりょく などの基礎き そになっているのです。少し難しいかもしれませんが,ほんのちょっ スライド 21
10 とそのお話をしましょう。(スライド 21) 原子は私たちの感覚では分からない,不思 議な性質を持っています。原子は光を出した り 吸 収きゅうしゅうしたりします。原子の性質を説明す る前に,光の性質についてまとめることにし ましょう。 光は波なみです。池などの水面すいめんの波を思おもい浮うか べて下さい。波の高いところと,高いところの間隔かんかくを「波長はちょう」とよびます。光にはい ろいろな波長のものがあります。波長が違うと色がちがいます。分光シートは波長の 違う光を分けることができるものです。虹も水の粒が太陽の光を波長の違う光にわけ ることによってできるのです。 ところが,光はもう一つの性質を持っています。一個,二個と数を数えられるので す。つまり,粒つぶとしての性質を持っているのです。とても不思議な性質ですよね。こ の性質は 110 年前にアインシュタインが発見したものです。(スライド 22) 原子の周りに電子がまわっているといい ましたが,これも「エネルギー」を持ってい ます。高いところにあるものはエネルギーを 持っていて,下に落ちるときに別のエネルギ ーになります。例えば,水力発電を考えると 高いところにある水が流れ落ちることによ って,水車を回し電気をつくります。高い所にある水のエネルギー(位置のエネルギ ー)が水の流れのエネルギー(運動のエネルギー)となり,水車を回して電気のエネ ルギーに変わるのです。電子もエネルギーを持っています。電子の持つエネルギーは, 建物の一階,二階のように飛び飛びの高さ(大きさ)を持ちます。この高さの差に相 スライド 22 スライド 23
11 当するエネルギーを持った光の「粒」がくると電子は光を吸収して高い階に上がりま す。 高い階にある電子が低い階に降りるときには,エネルギー差に相当する光の「粒」 を出してもとに戻ります。光の「粒」の持つエネルギーは,波長はちょうによって決まります。 ですからこのとき出る光は決まった波長になります。水銀ランプやナトリウムランプ では,水銀やナトリウムの電子の持つエネルギー差に相当する光を放出しているので す。だから,分光シートで見るといくつかの飛び飛びの色にわかれるのです。(スライ ド 23) ナトリウムという原子は 食 塩しょくえんの中に含ふくまれ ています。食塩を鉄の網あみに浸してガスコンロの 炎 ほのお の中に入れてみましょう。炎がオレンジ色に なりますよね。これは,「 炎 色えんしょく反応はんのう」とよばれ, 炎の中で加熱したときに原子から出る光を見る ものです。分光シートで見て下さい。色が分かれませんよね。このオレンジ色はナト リウムランプから出ているものと同じものです。(スライド 24) 水銀 すいぎん 灯 とう は,水銀の原子からでる光を利用して います。ですから,飛び飛びの波長の光が出てい ます。分光シートで確かめてみましょう。 そうすると,必ずしも自然の色が出るわけでは ありません。水銀灯は,学校の体育館などで使わ れていますが,体育館で,ものの色が外で見るのと少し違って見えることに気がつい た人もいるかもしれません。 そこで,もう少し自然の光に近いものを出すように工夫されたのが蛍光灯けいこうとうです。簡 単に言うと,水銀灯のガラスの中に蛍光体けいこうたいという紫外線があたると,目に見える光が スライド 24 スライド 25
12 出るものが塗ぬってあるものです。水銀灯も水銀の量を少なくすると紫外線の強度が強 くなります。そうすると,照明には使えなくなるばかりか,人間にとって害がいになりま す。この紫外線を蛍光体に当てて,目に見える光の成分を取り出そうというのが蛍光 灯なのです。 それでは蛍光とは,どういうものでしょうか。最近,再生紙さ い せ い しが使われることが多く なりましたが,すごくきれいな白に見える紙がありますよね。それは蛍光増けいこうぞう白剤はくざいとい うものが入っているからです。白いワイシャツなどにも蛍光増白剤が使われています。 蛍光マーカーペンというのがありますが,輝いてみえますよね。これは,蛍光という 現象を利用したものです。ここにあるのは,蛍光検査灯とよばれる水銀灯の一種です。 水銀の圧力が非常に低く紫外線を沢山たくさん出します。蛍光灯から蛍光体を無くしたものと 言った方がわかりやすいかもしれません,これは,警察が血液を調べるのに使う道具 です。血が付いたところにルミノール試薬し や くとよばれるものをかけて,蛍光検査灯の光 を当てると光るのです。この紫外線を蛍光体とよばれるものに当てると目に見える光 を発します。紙に当てると明るくなるでしょう。蛍光増白剤が入っているからです。 蛍光マーカーペンで書いたところも明るく光ります。蛍光灯は,白熱電球ほど熱あつくな りません。そのため,電気代が少なくて済みます。その上,白熱電球に比べて 6 倍く らい寿命が長いのです。最近,電球型の蛍光灯ができました。あとで,お話するよう に,電球形の発光ダイオード(LED)もあります。そのため,2012 年に白熱電球をつ くることをやめましたが,私たちの生活には何も困りません。(スライド 25) 6. 発光ダイオード LED 蛍光灯は,白熱電球に比べてあまり熱くな りません。ですから,電球に比べて無駄な電 気をあまり使いません。でも,もっと無駄な スライド 26
13 電気を使わないものがあります。発光ダイオード(LED)とよばれるものです。 去年(2014 年)三人の日本人が青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受 賞しました。発光ダイオードも水銀灯やナトリウムランプと同じように原子の光によ って光るものです。ただ,ガラスの容器の中の気体ではなく,半導体という固体にな っています。気体の場合と少し異なり正確な説明ではないのですが,電気によって半 導体の中の電子をエネルギーの高い階に持っていき,それがもとに戻る時に出る光を 利用したものです。気体によって出る光の色が決まっているように,どのような種類 の半導体を使うかによって,色がきまるのです。気体の蛍光灯は,発光するときに熱 が出ますが,LED ではでる熱の量がきわめて小さいものです。ここに,三色別々に点 灯できる LED があります。点灯してみましょう。(スライド 26) 赤色発光ダイオードは 1962 年に発明され ました。それから 30 年経った,1993 年に青 色発光ダイオードは発明されたのです。 前に水銀灯は,水銀の原子から出る光を利 用するといいました。このときは,でる光の 波長 はちょう (色)は原子の種類によって決まるので す。発光ダイオードの場合も,使っている物質により決まります。赤色は,すぐに見 つかったのですが,青色ができる物をみつけるのも遅くなりましたが,それから,実 際に発光ダイオードとして使えるようになるまでにいろいろな工夫(技術開発)が必 要だったのです。 それでは,何で青色が必要ひつようだったのでしようか。それを説明するために,一つ実験 してみましょう。(スライド 27) スライド 27
14 7. 三原色 それでは,実験してみましょう。3 人一組 になってください。懐中電灯が 3 本ありま す。これに赤と青と緑のセロハンをそれぞ れ一つずつ,セロハンテープで貼り付けて ください。先の方を動かすと光の広がりが 変わります。光の広がりをいろいろ調整し て,光を重なるように当てて,重なったところがどのような色になるかをしらべてみ ましょう。その結果をワークシートに書きましょう。3 つの色の光を重ねて,白くな るように工夫してください。(スライド 28) 懐中電灯の色を合わせるとスライドの左 のようになります。基本的には赤,緑,青の 3 つです。これを色の足し算(難しい言葉を 使うと「加法混か ほ う こ んしょく色」)といいます。このよう に,3 つの色の組み合わせで目に見える光の 色をつくることができます。この 3 つの色を 三原色といいます。絵の具の場合は,違います。右のような 3 つの色(水色[シアン, 赤紫[マゼンタ],黄色[イエロー])を組み合わせていろいろな色をつくることがで きます。これを色の引き算(難しい言葉では 「減法混げんぽうこんしょく色」)といいます。印刷の場合も同 様です。(スライド 29) この写真は,パソコンと画面を顕微鏡で 拡大したものです。パソコンでは,緑が,印 刷では黄色が白っぽく見えます。バソコン スライド 28 スライド 29 スライド 30
15 のやテレビの画面場合は「色の足し算」,印刷の場合は色の「引き算」によって色をあ らわしています。(スライド 30) いろいろな色が三原色で表すことができ るのはなぜでしょう。それは,人間の目がそ のような構造をしているからです。ワーク シートに目の構造が書いてあります。レン ズにあたる水晶体で目の奥おくの網膜もうまくとよばれ るところに,見たものが写うつります。網膜に は,暗い光を感じる桿体かんたいと明るい光を感じる錐体すいたいというものがあります。錐体は,そ れぞれ,赤,緑,青色に感じるものの 3 種類があります。ですから,目に見える光の 色を表すことができるのは,人間の目がそのようになっているからです。(スライド 31) 8. 電気のあかりと熱 電球,蛍光灯,LED を比べてみましょう。 どれもだいたい同じ明るさ(電球 40 W に相 当します)のものをつけました。LED は触っ ても熱くなりません。蛍光灯は少しあたた かくなります。電球を触るとやけどをして しまいます。ですから,手を当てるかわりに「感熱紙か ん ね つ し」という,熱くなると黒くなる 紙をあててみましょう。買い物をした時もらうレシートに使われている紙です。 ここに簡単なサーモグラフィーというものがあります。これを電球に当てると温度を 測ることができます。それぞれ測ってみましょう。何度が言いますので,温度をワー クシートに書いてください。サーモグラフィーというと,テレビで人の顔の温度など を色で示すものを見たことがあるかと思います。とても高いものでしたが,最近はこ スライド 31 スライド 32
16 のような手軽なものもできています。(スライド 32) ここにあるのは,有機ゆ う きEL と呼ばれるもの です。非常に薄型で消費電力が少ないため, 携帯電話にも使われている。電子ペーパー といった紙のように柔らかい表示ひょうじ装置そ う ちも考 えられています。先ほどお見せしたサーモ グラフィーの画面も有機 EL が使われていま す。 将来は,壁全体が照明になったりディスプレイになったりするようになったらいい なあと思っています。その日の気分で,壁やガラスに心休まる風景や絵を写すことが できるようになることも夢では無いかもしれません。(スライド 33) 今までお話したように,あかりは時代と もに変わってきました。最初はあかりとし てたき火を用いたものと思います。たき火 は,熱がたくさんでますから,あかりだけで はなく,暖房や料理にも使われました。それ が,段々熱に比べて光の割合が多いあかり が用いられるようになりました。でも,あかりが熱くなることは避けられませんでし た。この熱は,暖房や調理を兼ねる時はいいのですが,その他の場合は,は無駄なも のです。そこで,蛍光灯や LED のようにあまり熱が出ないものが作られるようになっ てきました。将来は LED や有機ELのような熱の出ない照明が主力になってくるでし ょう。あかりにとって,熱は無駄なものですが人間生活にとっては必要なものです。 (スライド 34) スライド 33 スライド 34
17 9 太陽光発電とこれから LED に電気を流すと光ります。逆に LED に 光を当てると電気を起こすことができます。 LED に,電池をつなぎます。長い方がプラス です。赤く光ります。光るのを確認してくだ さい。光ったら,すぐに電線を外して消して ください。電気を流し続けると熱くなってし まいます。次に,LED を光らせてオルゴールをつけた LED の頭に近づけます。うまく 近づけるとオルゴールからとても小さな音が出るのがわかります。これは太陽光発電 と同じ仕組みによるものです。音が小さいので,静かにしましよう。「シーッ!」と言 ったら LED を光らせて,もう一つにつないでください。音がしたら,光った LED を消 しましょう。LED も電気を流せば光ますが,光を当てると電気が流れるのです。 (スライド 35) 太陽光 たいようこう 発電 はつでん は日本などではとても高くつ きます。太陽光発電を普及させるために,普 通家庭で使う電気よりも高い値段で買い取 るようにしています。でも,それをやめよう という動きもでています。日本では,まだま だ太陽光発電は高くつきますが,電気が来 ていないところでは別です。前にテレビを見ていたら,モンゴルの草原そうげんのゲルでの生 活が出ていました。電気も来ていない生活です。でも,携帯電話を使っているのです。 どうしているかというと,ゲルの脇に太陽光パネルがあって,そこで発電した電気を 蓄電池に充電しているのです。携帯電話だけではなく,子どもがテレビゲームをして いました。日本では,電線が発達して遠くの発電所でつくった電気を私たちの家庭に スライド 35 スライド 36
18 もってくるので,大きな発電所が便利です。でも,電線が発達していないところで太 陽光発電をした方がお金もかからないのです。電線を整備するのには,たくさんのお 金もかかりますし,何よりも時間がかかります。そこで,太陽光発電が普及している のです。電話についても,これまで電話がなかったところでは,携帯電話が普及して います。そうすると,固定電話というものがいらなくなります。LED が省エネといい ましたが,これまで電気の明かりがなかったところでも,小さな太陽光パネルで発電 したものを蓄電池に貯めておいて,夜電気を使うことができます。(スライド 36) 10. おわりに 日本で電気が便利に使われているのも, 昔に多くの人達が発電所をつくり,家庭ま で電気をもってくるための電線を日本の 隅々まで引いたからです。このように,私 たちは昔の人のおかげで生きているので す。私たちが,便利で平和な生活ができるのも,お父さん,お母さん,おじいさん, おばあさんの時代やもっと昔の人たちがいろいろ工夫して,努力してきたおかげなの です。私たちが,遠くで作られたものを買うことができるのも,いろいろな人が働い ているからです。このように,いろいろな物事は昔から今へと時間的にも,世界のい ろいろな場所などの空間的にもつながっているのです。このように「つなぐ」という ことはとても大切なものです。学校で学んだ知識もバラバラな知識として頭の中に入 れているだけでは役に立ちません。いろいろつながりを考えて,自分ならどうするか など,色々なことを考えながら学んでいくことが大切です。勉強するときも,「あれと あれは似ているな」とか「あれがあるからこれかあるのだ」,「自分がやるとしたらこ うしよう」などといったように考えながら勉強しないとおとなになってからとても困 スライド 37
19 る事になります。(スライド 37) 私たちの生活では,電気やガソリン,ガスな どをたくさん使います。電気やガソリン,ガス などは「エネルギー」として使われます。また, 家や自動車やさまざまなものは,鉄,木,プラ スチックなどの「材料」が使われています。多 くのエネルギーや材料のもととなる「資源し げ ん」は地下に埋まっているものを使っていま す。余り使いすぎると,いつかはなくなってしまいます。ですから,ものを大切にす ることが大事です。(スライド 38) ものだけではなく,人を大切にすることも大 切です。私たちは,いろいろな人のおかげで生 きているのです。ものを作る人,作ったものを 運ぶ人,それをお店で売る人などさまざまな人 のおかげで生きていけるのです。ゴミを始末し たり,道路や建物をきれいに掃除したりする人も必要です。安全を守る人もいます。 私たちは,其の人達がいるために生きているのです。なかなか難しいのですが,それ を感謝することが大切なのです。(スライド 39) どんな人も大切にするためには,まずは身近 な人を大切にすることが大切です。そのために は,お父さん,お母さんが仲良く,お互いを大 切に思うことが大切です。兄弟や友達が互いを 大切にして助け合うこと,自分のできる範囲で 人のためになることをすること,目に見えない いろいろな人達に感謝することが大切だと思います。(スライド 40) スライド 38 スライド 39 スライド 40