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広島県における小売業の活性化

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Academic year: 2021

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2007 年度(平成 19 年度)調査研究レポ−ト

広島県における小売業の活性化

平成 20 年3月

広島経済同友会

地域経済委員会

本調査研究レポートは,広島経済同友会からの依頼により, 中国電力株式会社エネルギア総合研究所が実施したものです

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要 旨

1.小売業の現状 広島県における小売店数,従業者数,年間販売額は,90 年代に入りいずれも低下傾向にある。 一方,売場面積は,近年の郊外型大規模商業施設の相次ぐ立地等もあり,ほぼ一貫して拡大傾向 で推移している。広島県の対全国シェアは2%台(事業所数2.4%,従業者数 2.4%,年間販売額 2.3%,売場面積 2.6%)となっている。従業者規模別では,個人商店にみられるような小規模店 舗の割合は年々低下しつつある。業態別では,家電量販店,ホームセンター,ドラッグストアな どの専門スーパーとコンビニエンスストアの伸びが大きい。 最近の個店の動きでは,専門性や個性を高めるため新規ブランド誘致などの店舗改装や,ワン ストップショッピングなど消費者の囲い込みを狙った店舗の大規模化とともに,他業態の強い部 分を吸収するなどの事業展開を図っている。 2.広島県における消費者ならびに小売業者の意識調査 最近の消費者意識について中国電力㈱エネルギア総合研究所と中国地方総合研究センターと の共同で実施したアンケート調査によると,単なる低価格志向だけでなく,品質に対するこだわ り志向も高まりつつあり,価格と品質のバランスが重視されている。また,品揃えが豊富なこと も買物場所選択の重要な要素となっている。なお,広島市は全国の大都市と比較すると,中国地 域の居住者にとって買物先として必ずしも魅力ある都市とは限らないものの,中国地域内では選 択される割合が最も高い。一方,小売業を経営する広島経済同友会会員企業を中心に本委員会が 実施したアンケート調査によると,小売業の競争激化の背景として,人口減少に伴う消費者自体 の減少(市場の縮小)など社会情勢の変化や消費者の価値観の変化といった外部要因に加えて, 企業側の要因として,オーバーストア,店舗面積の大型化などがある。 今後の課題としては,商品の魅力向上,魅力的な店舗づくり,経営改善,ならびに同業他社や 地域との連携強化に加え,まちづくりに関する行政による戦略の必要性などがあげられている。 3.小売業の活性化に向けて 今後の小売業を取り巻く情勢は,人口減少に伴う市場の縮小に加えて,消費者ニーズの多 様化・個性化,高度化,インターネット通販や超広域的購買行動への対応など厳しい環境変 化が継続する。また,大店法の廃止やまちづくり三法の改正など法制度面での規制あるいは 規制緩和といった政策的変更などへの対応も迫られている。 小売業活性化のため,中心市街地においては,取扱商品の量・多様性や品質等商品力の向 上をはじめとする個店の魅力向上(小売店経営者の役割),商店街の規模や店舗の多様性など 集客力の強化に伴う商店街の魅力向上(商店街組織の役割),公共施設を含めた総合的な都市 機能の強化(行政等の役割)などによる魅力向上が求められる。また,商店街と大型店との協 働(役割分担)により,学生をはじめとする多様な主体が参加するイベント等の共同実施や, 各事業者が異なる品揃えで商品提供(ブランド商品,流行商品等)を行うことで,他商圏から の消費者を取り込むことなどが考えられる。さらに,製造者と小売業者との連携により,近 年増加傾向にある観光客(外国人も含む)を対象とする商品開発や地域ブランド商品の確立な ども必要である。

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目 次

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 本レポート作成までの委員会における活動内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 第 1 章 わが国および広島県における小売業の現状 1.小売業の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2.最近の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 第2章 小売業を取り巻く社会経済情勢の変化 1.社会経済情勢の変化と小売業の変容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 2.まちづくり三法と小売業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 第3章 広島県における消費者ならびに小売業者の意識調査 1.消費者の意識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 2.商店街の取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 3.会員企業の意識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 第4章 小売業の活性化に向けて 1.小売業の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 2.他地域の取り組み事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 3.小売業活性化への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68

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はじめに

広島県では近年,郊外型の大規模商業施設が相次いで立地し,なかでも広島都市圏は,大都市 圏を中心に出店していた家電量販店が進出するなど,中国地域の中では最も商業集積が進んでい る。ただ,こうした都心周辺部で商業集積が進む一方で,都市中心部の中小規模小売店や商店街 の衰退といった現象も起きており,広島県のみならず全国的にも懸念される状況になっている。 このため,国においては,中心市街地の活性化を図ることを目的として「まちづくり三法」を 改正し,2007 年から施行された。他方,人口減少による需要の縮小や消費者行動の変化などもあ って,消費支出自体が伸び悩んでおり,商業やサービス業を中心とした経済活動は停滞感が強ま る可能性もある。さらに,こうした人口減や消費活動の停滞は製造業を始めとする他産業へも影 響していくことが考えられる。 そこで,本委員会では,わが国および広島県における小売業の現状(第1章)と小売業を取り 巻く社会経済情勢の変化(第2章)を確認したうえで,広島県における消費者ならびに広島経済 同友会会員を含む小売事業者に対するアンケート調査に基づき分析(第3章)を行った。そして, これらの調査・分析結果や勉強会,さらには他地域における取り組み事例などを踏まえて,広島 県における小売業の活性化に向けた対応策(第4章)を提案している。 今回の調査に関して,勉強会やアンケート・ヒアリング調査などにご協力いただいた方々に深 く感謝申し上げます。

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本レポート作成までの委員会における活動内容

○第1回委員会(2007 年 5 月 25 日) ・勉強会「小売業の競争激化と地域の盛衰」 講師 (社)中国地方総合研究センター 地域経済研究部長 本郷 満 氏 ○幹事会卓話(2007 年 7 月 5 日) ・テーマ「広島市広域商圏調査について」 講師 広島修道大学 商学部教授・商学部長 近藤 和明 氏 ○第2回委員会(2007 年 8 月 7 日) ・勉強会「まちづくり三法の見直しと最近の状況について」 講師 中国経済産業局 産業部産業振興課 流通・サービス・商業室 室長補佐 竹廣 智治 氏 ○第3回委員会(2007 年 10 月 22 日) ・勉強会「事例から見る商店街とまちづくり」 講師 広島修道大学 商学部教授 川名 和美 氏 ○先進地視察(2007 年 11 月 15 日∼16 日) ・金沢市:㈱金沢商業活性化センター ・富山市:㈱まちづくりとやま,富山県商工労働部商業流通課 ○第4回委員会(2007 年 12 月 14 日) ・調査報告書(案)の検討 ・先進地視察会報告 ○第5回委員会(2008 年 2 月 14 日) ・調査報告書(案)の検討

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第1章 わが国および広島県における小売業の現状

1.小売業の状況 (1)事業所数・従業者数・販売額・売場面積 わが国における小売業は,かつては生活拠点に密接して立地する小規模な個人商店や,都市の 中心部に形成された中小規模の小売店からなる商店街などの形態が多かった。しかし,高度経済 成長とともに大量生産,大量消費の時代に入って以降は店舗数の増加に加え,店舗の大規模化, 立地の多様化が進んできた。 1972 年を 100 とした小売店の事業所数(店舗数),従業者数,年間販売額,売場面積(第1図)を みると,全国,広島県ともに 82 年まではすべての項目が上昇しており,小売業の活動が活発化し ている様子がうかがえる。 82 年以降は事業所数の低下傾向がみられるようになった。これは2度のオイルショック,貿易 摩擦,円高不況などを経てわが国経済の構造変化が起きる中で,小売店舗間の競争が激化したも のと考えられる。80 年代後半から 90 年代はバブル経済の影響による年間販売額の拡大があった ものの,90 年代半ばをピークに下降傾向となっている。従業者数も年間販売額の低下とほぼ同時 期に緩やかに減少している。 しかし,売場面積はほぼ一貫して拡大傾向で推移しており,最近に至るまで売場面積の拡張を 重視した店舗づくりを行っていることを示している。 なお,広島県における小売関連指標の 2004 年時点での対全国シェアは2%台(事業所数 2.4%, 従業者数 2.4%,年間販売額 2.3%,売場面積 2.6%)となっている。 83.9 153.5 459.0 252.3 0 100 200 300 400 500 600 72 74 76 79 82 85 88 91 94 97 99 02 04年 事業所数 従業者数 年間販売額 売場面積 (3.1兆円) (375万㎡) (18.5万人) (3.0万店) 82.8 151.0 471.1 235.9 0 100 200 300 400 500 600 72 74 76 79 82 85 88 91 94 97 99 02 04年 事業所数 従業者数 年間販売額 売場面積 (133.3兆円) (14,412万㎡) (776万人) (123万店) 第1図 事業所数,従業者数,年間販売額,売場面積の推移(1972 年=100) 資料:経済産業省「平成 16 年商業統計表」ほか (全国) (広島県)

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次に,事業所数(店舗数),従業者数,売場面積のそれぞれと,年間販売額との関係から販売効 率(第2図)をみると,80 年代半ばから事業所数が減少したことなどから効率化が進み,事業所あ たりの販売額は 97 年まで上昇してきたが,現状ではほぼ頭打ち状態となっている。 従業者あたりの販売額をみると,91 年まで上昇し,しばらく横ばいで推移した後,90 年代後半 からの販売額の減少に伴い低下している。至近年では,従業者数の減少が進むとともに,販売額 が下げ止まったことから,底打ちしているようにもみえる。 売場面積あたりの販売額は,91 年まで一貫して上昇していることから,売場面積の拡大以上に 販売額の増加がみられた。しかし,90 年代半ばに下降傾向に転じて以降は,ほぼ一貫して低下傾 向で推移している。これは,先にみたとおり,販売額の低下にもかかわらず売場面積が拡大を続 けていることによるものであり,小売業者の店舗にとって売場面積の重要度が高まっているため と考えられる。 なお,広島市はすべてのデータで全国や広島県を上回っているが,これは広島市の人口集積に 加え,百貨店や家電量販店などの大型店が集積しており集客力や販売力があるためと考えられる。 しかし,2004 年以降,大型店の出店が相次ぎ,売場面積あたりの販売額が低下しており,今後一 層の競争激化が予想される。 0 20 40 60 80 100 120 140 160 72 74 76 79 82 85 88 91 94 97 99 0204年 全国 広島県 広島市 (万円/㎡) 0 500 1000 1500 2000 2500 72 74 76 79 82 85 88 91 94 97 99 02 04年 全国 広島県 広島市 (万円/人) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 72 74 76 79 82 85 88 91 94 97 99 0204年 全国 広島県 広島市 (万円) 第2図 販売効率の推移 資料:経済産業省「平成 16 年商業統計表」ほか (事業所あたり販売額) (従業者あたり販売額) (売場面積あたり販売額)

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(2)従業者規模 従業者規模別に事業所数の構成比(第3図)をみると,全国,広島県においては,94 年には2人 以下の小売店が全体の5割を超え,広島市も 45%程度あったものの,2004 年にはそれぞれ5∼6 ポイント低下し,全国 45.9%,広島県 44.8%,広島市 38.2%となっている。一方,割合自体は 高くないが従業者規模 30 人以上,20∼29 人,10∼19 人といった比較的規模の大きな小売店の割 合は次第に高くなっている。このように,小売業においては個人商店にみられるような小規模店 舗の割合が低下しつつある。 また,構成比だけでは変化がわかりにくいため,94 年から 99 年,および 99 年から 2004 年の 5年間での構成比の変化(第4図)をみると,全国,広島県ならびに広島市のいずれも2人以下の 小売店の減少が続いており,かつ低下幅も大きい。一方,コンビニエンスストアのような企業組 織の形態の増加を反映して,5∼9 人や 10∼19 人規模の構成比は拡大を続けている。 30人以上 20∼29人 10∼19人 5∼ 9人 3∼ 4人 2人以下 (%) 44.1 40.7 38.2 3.8 0 20 40 60 80 100 94 99 04年 (%) 51.0 48.7 45.9 2.6 0 20 40 60 80 100 94 99 04年 (%) 51.2 48.5 44.8 2.9 0 20 40 60 80 100 94 99 04年 第3図 従業者規模別にみた事業所数構成比の推移 資料:経済産業省「平成 16 年商業統計表」ほか (全国) (広島県) (広島市) (凡例)

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(3)業態別事業所数 小売業には様々な形態があり,取扱品目 ではなく,百貨店,スーパー,コンビニエ ンスストアなどの業態別(第1表)にみると, 過去 10 年程度の間にかなりの変化(第5図) が起きている。 業態の中で歴史が古く,都市の中心部に 立地し,主として高級品を扱う小売店とし て発展してきたのが百貨店であるが,94 年 以降事業所数は減少傾向にある。94 年を 100 とした指数でみると,2004 年には全国 では他の業態に比べ最も低い水準となって いる。一方,広島県では 94 年から 97 年に かけて4店舗の新規出店があったため一時 的に指数が高まっているものの,その後は -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 2人以下 3∼4人 5∼9人 10∼19人 20∼29人 30人以上 99/94年 04/99年 (%) -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 2人以下 3∼4人 5∼9人 10∼19人 20∼29人 30人以上 99/94年 04/99年 (%) -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 2人以下 3∼4人 5∼9人 10∼19人 20∼29人 30人以上 99/94年 04/99年 (%) (全国) (広島県) (広島市) 第4図 従業者規模別の事業所数構成比の変化 資料:経済産業省「平成 16 年商業統計表」ほか 資料:経済産業省「商業統計表」 第1表 業態分類 セルフ 方式 主要取扱品目 備 考 百貨店 × 総合スーパー ○ 専門スーパー 衣料品スーパー 衣が70%以上 食料品スーパー 食が70%以上 住関連スーパー 住が70%以上 うちホームセンター コンビニエンスストア ○ 飲 食 料 品 営業時間14時間以上、売場面積30㎡以上250㎡未満 ドラッグストア ○ 医 薬 品 その他スーパー ○ 総合スーパー∼コンビニエンスストアを除くセルフ店 専門店 衣料品専門店 衣が90%以上 食料品専門店 食が90%以上 住関連専門店 住が90%以上 中心店 衣料品中心店 衣が50%以上 食料品中心店 食が50%以上 住関連中心店 住が50%以上 その他小売店 × 百貨店、専門店、中心店以外の非セルフ店 専門店に該当する小売 店を除く 衣食住にわたる各種商品を小 売し、そのいずれも小売販売 額の10%以上70%未満の範囲 内にある事業所で従業者50人 以上のもの。 ○ 売場面積250㎡以上 × ×

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業績不振による閉店などもあり,各業態の中でもかなり低い水準にまで落ち込んでいる。 専門店,中心店のように小規模ながらも得意の商品分野を持ちつつ,特定の消費者ニーズに対 応してきた小売店も全国,広島県,広島市とも低下傾向となっている。 これに対して,この 10 数年間で大きく事業所数を拡大しているのが,専門スーパーとコンビニ エンスストアである。専門スーパーは近年,広島県,広島市とも頭打ちになっているものの,他 業態に比べると高い水準にあり,コンビニエンスストアはいずれにおいても拡大が続いている。 特に,コンビニエンスストアは都市中心部から郊外まで広く立地し,食品類など基礎的消費に近 い分野を中心にバランスのよい品揃えと,親しみやすい店舗形態で発展してきた。コンビニエン スストアの中には,食料品店や酒店,雑貨店などの個人商店から転換したものもかなり見受けら れることも,急速な発展の理由の一つと考えられる。 合計81.6 114.3 81.8 133.9 150.8 72.6 90.6 60 80 100 120 140 160 94 97 99 02 04年 (9,848店) (8店) (18店) (316店) (374店) (5,596店) (2,733店) 81.1 66.7 102.0 127.5 155.7 75.5 84.5 60 80 100 120 140 160 94 97 99 02 04年 (3.0万店) (12店) (50店) (903店) (830店) (1.6万店) (9,219店) (123.8万店) (308店) (1,675店) (3.6万店) 82.5 66.5 92.8 143.9 151.4 78.1 中心店83.9 60 80 100 120 140 160 94 97 99 02 04年 (4.2万店) (72.7万店) (35.8万店) 第5図 業態別にみた事業所数の推移(1994 年=100) (全国) (広島県) (広島市) 資料:経済産業省「平成 16 年商業統計表」ほか (凡例) 合計 百貨店 総合スーパー 専門スーパー コンビニエンスストア 専門店 中心店

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さらに近年では,専門分野に特化したホームセンターや家電量販店,都市中心部で小規模展開 を行うドラッグストア,さらに巨大店舗の代表であるショッピングセンターなども増加しており, 小売業は様々な業態を展開することにより消費者ニーズへの対応を図っている。 (4)業態別販売額 各業態により売場面積が大きく異なるため, 売場面積あたりの各業態の年間販売額比較(第 6図)をみると,広島県,全国ともコンビニエ ンスストアや専門店,中心店といった小型店舗 における効率が高い。百貨店も比較的高い水準 にある。 これは,コンビニエンスストアが効率的な 店舗運営をしていること,百貨店については, バブル崩壊以降,不採算店の閉鎖や店舗改装 など販売促進を積極的に進めてきたことによる ものと考えられる。 次に,99 年から 2002 年ならびに 2002 年か ら 2004 年の間で,事業所あたりの年間販売額 の平均伸び率(第7図)をみると,広島県,全国 とも高い伸びを示しているのがドラッグストア で,他の業態を大きく上回っている。2002 年から 2004 年にかけて,広島県の専門スーパー,中 心店はプラスに転じているが,百貨店,総合スーパー,ホームセンター,コンビニエンスストア は 99 年から 2002 年のプラスからマイナスに転じ,また,専門店は2期連続でマイナスが続くな ど厳しい状況にある。 -10 -5 0 5 10 合計 百貨店 総合スーパー 専門スーパー ホームセンター コンビニエンスストア ドラッグストア 専門店 中心店 02/99年 04/02年 (%) -10 -5 0 5 10 15 20 25 合計 百貨店 総合スーパー 専門スーパー ホームセンター コンビニエンスストア ドラッグストア 専門店 中心店 02/99年 04/02年 (%) 0 50 100 150 200 百貨店 総合スーパー 専門スーパー ホームセンター コンビニエンスストア ドラッグストア 専門店 中心店 全国 広島県 (全国) (広島県) 第7図 事業所あたり年間販売額の伸び率 資料:経済産業省「平成 16 年商業統計表」ほか 第6図 業態別売場面積あたり年間販売 額比較(小売店計=100) 資料:経済産業省「平成 16 年商業統計表」

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2.最近の動向 (1)百貨店 小売業は業態により好不調が分かれており,広島県においても業態内のみならず業態間の競争 も激化していると考えられる。このため,不採算店の閉鎖や合理化のみならず,顧客獲得のため の新規出店や店舗改装なども行われている。 本節では,新聞報道を中心に広島県における最近の状況について,2005 年以降の動向を業態別 にまとめた。 百貨店については,2007 年 9 月に大手百貨店である大丸と松坂屋の経営統合が行われ,また, 2008 年 4 月には三越と伊勢丹も経営統合を行う予定であり,全国的には規模拡大を目指した動き が活発となっている。統合に伴う店舗の再編成や地方店舗への影響は現在のところ未知数であり, 今後の動向に着目したい。 広島県における主要百貨店等の動向(第2表)をみると,いくつかの店舗の閉鎖とそれに伴う合 理化が行われている。一方,福山市への天満屋進出などの新規出店もある。全般的に百貨店の売 上が伸び悩むなかで,業績改善が見込めない店舗を閉鎖し体質強化を図るとともに,より幅広い 顧客層を取り込むための店舗改装や新規出店が行われている。 (2)スーパー 百貨店と異なり,スーパー(総合スーパー)は新規出店の動きが活発化(第3表)している。なか でも,イオン,フジ,イズミなどによる大型ショッピングセンターの出店ないし出店計画が相次 いでおり,広島市内をはじめ各地で積極的な店舗展開が進められている。店舗立地についても, 大都市中心部からやや離れた場所や,いわゆる商業集積地区ではない工場跡地などへの進出もみ られる。フジグラン神辺はその代表的なものと考えられ,店舗の大規模化により集客力を向上し, 第2表 広島県における百貨店の最近の動向 資料:新聞情報など 項目 企業名 概      要 05年 3月 合理化 三越 2月28日,800人の予定で募集した早期退職者に1,000人の応募があったと発 表。 06年 3月 閉店 天満屋 天満屋三原店は,12日の営業を最後に閉店。天満屋としては,初の百貨店閉 鎖。競合店の台頭などで売上げが低迷,不採算続きで業績回復も見込めないと 判断。 5月 出店 天満屋 広島県福山市のJR福山駅前で大型複合ビルの建設計画を進める福山市伏見 町市街地再開発準備組合は15日,商業施設の核テナントとして天満屋との出店 協議を始めると発表。今後,出店条件など具体的な調整に入り,2010年度の施 設の完成・開業を目指す。 9月 改装 福屋 八丁堀本店は,28日に大型改装を終えオープン。地上8階の物販フロアのうち, 一部改装も含め6フロアを改装。1975年以来最大の改装で,事業費20億円。改 装したフロアは,従来比1割増の売上げを目指す。 07年 3月 改装 三越 広島店で中四国地方初出店となるフランスの高級ブランドを上旬にオープン。 20-30歳代を軸に,幅広い客層の取り込みを狙う。春の改装では3年ぶりに大規 模なリニューアル。 4月 改装 福屋 八丁堀本店で21日,米国の高級ジュエリーブランドをオープン。 6月 出店 福屋 八丁堀本店南隣の約500㎡の土地に新たな商業施設として3階建て程度のビル を建設し,08年秋にもオープンする計画。 7月 改装 そごう 12日に広島店新館9階を刷新。上質感を全面に出したインテリアフロアをオープン。団塊世代などを対象。 8月 改装 三越 24日,広島店2階婦人服フロアを7年ぶりに全面改装。投資額は1億円で,三越 店舗で初の婦人服セレクトショップ型フロアを導入。 9月 改装 福屋 13日に八丁堀本店の紳士服フロアを10年ぶりに全面改装しオープン。7つの新 ブランドを出店し,うち4ブランドは広島初出店。 公表年月

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周辺市町を含む広域的商圏を対象としている。 また,スーパーにおいても出店計画ばかりではなく,中四国地域から完全撤退するダイエーに みられるように,いくつかの店舗閉鎖も行われている(ただし,ダイエー跡地には他のスーパーが 入店し,引き続きスーパーとして利用されている)。 第3表 広島県におけるスーパーの最近の動向 項目 企業名 概      要 05年 1月 提携 ユアーズ 広島県内を地盤とする同社は11日,山口,九州で展開するスーパーの丸和(北九州市)と提携。同社は丸和の筆頭株主となっててこ入れを図る。 イオン 広島市北西部の「ひろしま西風新都」に,中国地方の店舗に新商品を供給する 地域物流センターを,福山通運と共同で計画。年内稼動を目指す。 2月 閉店 ダイエー 下関を除き中国地域から全面撤退する方針。これまで既に8店舗を閉鎖してお り,今回は残っていた6店舗のうち5店舗が閉鎖対象となった。 3月 出店 イズミ 日本たばこ産業が2004年3月末閉鎖した広島市南区の広島工場跡地に,地元 最大手のスーパーの同社が出店することが決定。約5万㎡にも上る広大な敷地 に大型複合商業施設が立地する。 出店 マックスバ リュ西日本 広島市の「ひろしま西風新都」に「イオン西風新都ショッピングセンター」を出店。 宅地などの整備が進んでいる同地区で初の大型複合商業施設。 4月 出店 マックスバ リュ西日本 2006年2月までに広島県に2店,山口県に4店を出店すると発表。 出店 万惣 流通競争の激化で抑制していた新規出店を再開。今年は広島市安芸区と東広 島市に出店し,来年以降年3-5店ペースで出店。将来はテナントを含めたショッ ピングセンターの展開も目指す。 出店 ハローズ 衣料や飲食店,ドラックストアなどを併設した同社初の本格的な複合店舗「駅家モール」を福山市駅家町にオープン。 出店 フジ 28日,広島県神辺町(現福山市)に大型複合商業施設「フジグラン神辺」が開 業。飲食,衣料など約90テナントが入り,広域の集客を目指す。 6月 出店 イズミ 2011年2月期までに,中・四国,九州地方で10店以上を出店予定。いずれも大型ショッピングセンターの「ゆめタウン」となる。 7月 出店 マックスバ リュ西日本 26日に福山市新市町に「ザ・ビッグ新市店」をオープン。15日に閉店した食品 スーパー,マックスバリュ新市店を業態変更。 8月 出店 エブリイ 備前市に出店し,直営,フランチャイズ(FC)合わせて20店舗体制を整えた。広 島県内にも直営1店を出す計画で,2006年6月期末には直営で10店舗になる。 将来は広島市など広島県西部へも積極出店する考え。 9月 広島市の「ひろしま西風新都」に,大型物流センターの新設が相次ぐ。6月に稼 動したスーパーのフジ向けに続き,大手スーパーのイオン向けも11月に稼動を予 定。コンビニなどに対応した食品卸も進出。 閉店 ダイエー 経営再建に向けた閉鎖54店舗をすべて確定し,新たに15店の閉鎖を発表。首都 圏,近畿,九州に店舗を集約し,中国・四国地区からは全面撤退。 10月 跡地利用 ダイエー 11月下旬に閉鎖する広島店の土地・建物を米ローンスターグループの投資会 社,スター・キャピタル(東京・港区)に売却すると発表。 12月 出店 山陽マル ナカ 同社最大規模となる郊外型複合大型店「山陽マルナカ可部店」を広島市安佐北 区にオープン。2月開業の白島店に続き広島県内2店目。 06年 1月 出店 ユアーズ 旧ダイエー袋町店舗の地下1階でスーパーマーケット「ユアーズ袋町店」を出 店。 2月 出店 アクト中食 業務用食品を一般家庭向けに販売するチェーン店を展開する同社(広島市西 区)は,9月までをめどに店舗数を現在の1.4倍にあたる100店に拡大。市場規模 の大きい関東地方を中心に出店し,将来は全国展開を目指す。 3月 出店 ハローズ 兵庫県に初出店。広島県・岡山県へのドミナント(地域集中)出店を核とする従来 の出店方針に,瀬戸内沿岸部の食品市場を広く取り込む戦略を加えることで,年 率10%の売上増を目指す。 買収 石原商事 福岡県内で食品スーパーなどを手がける同社は広島の中堅スーパーのおおうち (広島市)を買収した。広島市内の6店舗を引き継ぎ,市内での新規出店も進め る。年内に広島市で10店程度を出店する計画。従業員284名は引き継ぐ。 6月 出店 ユアーズ 広島市に同社としては初の近隣型ショッピングセンターを出店。大和ハウス工業 が開発を進めている「アクロスプラザ高陽」(広島市安佐北区)に11月にも出店。 売り場面積は約1,500㎡で,同社としては大規模店舗となる。 10月 出店 藤三 7年ぶりに出店を再開。三次市内に県北初の店舗をオープンするのをはじめ,県 北から県西部にかけて出店する。 改装 イオン ソレイユ内のジャスコ広島府中店の2階アパレル売り場を全面改装し,7日オープ ン。04年3月の開店以来最大の改装で,改装費用は約2億5千万円。 11月 改装 イズミ 17日,同社初の少子高齢化に対応したモデル店舗として,ゆめタウン江田島をリ ニューアルオープン。従来のゆめタウン江能から名称変更し,年齢層が高い顧客 向けの衣料品や食料品の品ぞろえを強化。敷地21,000㎡で,2階建て延べ 13,800㎡。 公表年月

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(3)専門店 近年,小売業の中でウエイトを高めてきた専門スーパー(家電量販店,ホームセンターなど)と ドラッグストアを中心に動向(第4表)をみると,スーパー同様に出店が目立つ。なかでも,昨今 のDIY(Do It Yourself)志向を反映してホームセンターの出店が活発化している。 家電量販店では,業界トップのヤマダ電機や域外の有力企業であるコジマも広島県内での店舗 を増やすなど進出を活発化している。一方,地元大手のデオデオは大型店舗を中心に中国地域内 で 20∼30 店程度の出店を展開するとともに,域外進出からの対策として既存店の店舗面積の拡張 (注)広島県に本社がある企業の県外への出店等を含む。以下,同様。 資料:新聞情報など 項目 企業名 概      要 06年 12月 出店 イズミ 7日,ゆめタウン佐賀をオープン。店舗面積はゆめタウン高松に次ぐ広さ。本格的 なモール型施設は同社初。九州で19店舗目。店舗面積は49,200㎡。投資額は 約100億円。年間1200百万人の来店と,260億円の売上げを見込む。 07年 2月 ユア−ズ 会社更生法の適用を申請した石原商事の運営するスーパー「アパンダ」の店舗 を引き継ぐ方針。広島市内に8店舗。 4月 増床 イズミ 既存店5店舗の大型増床に過去最高の62億円を投じる方針。08年度も同規模の 増床を継続する予定。国のまちづくり三法見直しで新規出店が難しくなる中,既 存店の活性化を図る。ゆめタウンの山口(増床面積825㎡)宇部(同3,800㎡)博 多(同9,100㎡)大牟田(同6,000㎡)はません(熊本市,同4,000㎡)の5店。 出店 イズミ 香川県の丸亀市と三豊市に相次ぎゆめタウンを出店。いずれも2008年秋の開業を目指す。四国ではゆめタウン高松を含めて三店舗となる。 6月 出店 イズミ 12日,南区宇品内港地区の広島県有地2.2haを購入し,大型商業施設の建設を 計画。店舗面積は10,000㎡超。2009年にも開業する見通し。 フレスタ 20日,イズミの大型商業施設計画に対し,計画予定地の南隣の県有地で営業し ているフレスタが「譲渡は信義則に反する」などと県がイズミに土地売却や賃貸を しないよう広島地裁に仮処分命令を出すよう申し立て。 7月 出店 イオン 広島市安佐南区三菱重工業跡地に大型ショッピングセンターをオープンする出 店計画を申請。店舗面積は38,706㎡で将来的には増床も検討。 8月 事業拡大 ユア−ズ 宅配事業を拡大し,今年度中に広島市内で2∼3店舗に増やす。3年後に5店で売上高5億円を目指す。 10月 出店 フレスタ 10月にハーティウオンツとの複合店である海老園店(広島市佐伯区),吉島店 (広島市中区),12月に室の木店(山口県岩国市),波出石店(広島市佐伯区)の 4店を開業予定。平成20年4∼5月に矢野店(広島市安芸区),7月に相田店(広 島市安佐南区)をオープンする予定。レッツこころ店(広島市安佐南区)をフレス タこころ店として増床し,平成21年春に再開店する計画あり。 増床 イズミ 広島県がイズミに大竹市晴海の埋め立て地約9haを売却する方針。イズミはゆめ タウン大竹を約2倍に増床し,2010年度までの開業を目指す。計画では中央部を 駐車場とし,周辺部に温浴施設や家具店,ホームセンター,スポーツ用品店など 複数のテナント店舗を配置。店舗面積合計は約23,000㎡。既存店と合わせて約 46,000㎡となり,中国地方有数の商業集積地が誕生。 11月 改装 ユア−ズ 22日に宮内店(廿日市市),29日に楠木店(広島市西区)を全面改装オープン。 改装の投資額は1億2千万円と1億円。年間売上高は両店とも18億円を見込む。 出店 イズミ 1日,広島市南区に08年2月に開業するゆめタウン広島本店の概要を発表。イズ ミの直営店舗のほか,紀伊国屋書店の大型店舗を含む180の専門店が出店。高 級感のある店舗作りで,全国50店舗目となるゆめタウンの旗艦店。 12月 出店 イズミ ゆめタウン出雲(出雲市)の新設を届け出。開店予定は2008年5月。店舗面積は 33,498㎡で山陰最大のSC。年商200億円が目標。同計画をめぐり,地元商店街 の小売業者や周辺住民ら20人が11月13日,県の開発許可の取り消しを求める行 政訴訟を松江地裁に提起。 改装 フジ フジグラン広島を全面改装し,3年以内に新規オープンする方針。施設の老朽化 に加え,来年相次いで開店する大型店への対抗策。 出店 フレスタ 13日に佐伯区五日市中央に波出石店をオープン。10月以降だけで海老園(佐 伯区),吉島(中区),室の木(岩国市)に続く4店目の新店。大型ショッピングセン ターの開業が続く広島都市圏で,店舗網が薄かった西部エリアのドミナント(地域 集中)戦略を強めている。08年以降も年2店程度の出店を維持する方針。 08年 1月 出店 イズミ 広島市南区皆実町に建設中の大型ショッピングセンター・ゆめタウン広島のオー プン日を2月22日と発表。1-3階が売り場で,店舗面積は約3万8700㎡。専門店 は広島都市圏で最大規模の約200店が出店。内訳は,衣料が約70,生活雑貨が 約40,帽子・靴・アクセサリーなどファッショングッズが約20,飲食・菓子店が約 40,銀行・エステなどサービスが約30。 公表年月

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や,家電以外の玩具や住関連を中心とした店舗の新規出店など新業態への展開も進めている。 最近店舗が急増しているドラッグストアについても店舗間競争が激化しており,訪問介護事業 など新たな事業への進出もみられる。 第4表 広島県における専門店の最近の動向 項目 企業名 業態 概      要 05年 1月 事業拡大 エディオン家電量販 店 デオデオの持株会社の同社は,会社更生法の適用が申請された家電店ニノミヤ (大阪市)のスポンサー企業として名乗りを上げた。ニノミヤ支援により,関西での 販売シェア拡大を図る。 出店 ファーマ シィ ドラッグス トア 中四国地域最大の調剤薬局チェーンの同社は中国・関西地区での出店ペース を上げる。2007年3月をめどに店舗数を41店から75店に増加。売上高を2004年 10月比で約2倍に。 清算 デオデオ 家電量販 店 関連会社で無線によるインターネット接続事業者のブロードバンドコムを3月末で 清算。光ファイバーや非対称デジタル加入者線(ADSL)など有線の普及で競争 力がなくなったと判断。 4月 出店 コーナン 商事 ホームセ ンター 広島県神辺町に,県内2店目の「コーナン神辺店」をオープン。西隣は28日に開 店する「フジグラン神辺」。 5月 出店 大黒天物 ディスカウントストア 中四国地方での新規出店を加速させる。8月以降に広島県内で2店を開店し,山 陰と四国にも初出店する。市場規模が比較的大きな都市に進出し,売り上げアッ プを図る。 出店 デオデオ 家電量販 店 2005年度から,6,000-10,000㎡の大型店舗を軸に中国地域で積極的に出店。 店舗が少ない山口県と山陰両県を中心に3年間で20-30店程度を出店。 6月 出店 デオデオ 家電量販 店 百貨店の福屋八丁堀本店に2日,家電を販売する「デオデオ八丁堀ショップ」が オープン。福屋が家電量販の同社に出店を要請。 7月 事業拡大 エディオン家電量販 店 4月に3社目のミドリ電化(兵庫県)を傘下に加え,発足3年で業界2位に規模拡大 した。 9月 出店 コメリ ホームセ ンター ホームセンター大手の同社(新潟市)は2006年3月までに,庄原,三次,江田島 市など中国地域に10店余りを集中出店。中国地域では岡山市に物流拠点を設 けた2003年4月以降,年間約10店のペースで出店しており,2006年3月には50店 体制に拡充。 出店 ザラ・ジャパン 衣料専門 スペインのファッションブランド「ZARA」を国内で展開するザラ・ジャパン(東京)は 11月上旬,広島市中区八丁堀に「ZARA広島店」をオープン。中四国地方への 出店は初。 10月 出店 ププレひまわり ドラッグストア 2010年9月期までに店舗数を今の約2倍の100店,年間売上高を2.2倍強の450億 円を目指す。より広い売り場の店舗を拡充するとともに,岡山県と広島県西部へ の出店を強化する。 出店 ヤマダ電 家電量販 同社は21日,福山市に「テックランド福山西店」をオープンした。広島県東部で は,2000年12月に開店したテックランド福山店に次ぐ2店目で,県内では7店目と なる。 ハーティ ウォンツ ドラッグス トア 中国地域最大手のドラッグストアチェーンである同社は,2006年3月に岡山市に 市内1号店となる「ウォンツ東岡山店」のオープンを皮切りに,岡山県への出店を 本格化。 11月 改装 デオデオ 家電量販 防府店と三原店を全面改装して12月初旬にオープン。大手の進出に対抗して売り場面積をそれぞれ1.6倍,2.2倍に広げる。 06年 2月 出店 ニトリ 家具専門 店 家具・インテリア販売最大手の同社は,同社の空白地域だった中国地域への出 店を本格化させる。11月に大型店「ニトリ広島インター店」を広島市安佐南区緑 井地区に出店。 出店 デオデオ 家電量販 店 中区袋町のダイエー広島店跡地に玩具販売を柱にした「デオデオネバーランド 袋町店」を開業。 3月 出店 青山商事 衣料専門 ショッピングセンターに初出店。団塊世代が大量に退職時期を迎える2007年以 降の紳士服市場の伸び悩みを見越し,出店戦略を転換。成長を続ける広域集客 型SCに出店先を広げる。 4月 出店 コーナン商事 ホームセンター 広島市安芸区に「ホームセンターコーナン広島中野東店」を9月以降オープン。 コーナンの店舗と24時間営業の食品スーパー大黒天物産との複合店「ラ・ムー」 との複合型店舗。 出店 ダイキ ホームセ ンター 広島市安佐北区に10月末完成を目標とする複合大型店「アクロスプラザ高陽」の 核テナントとして出店。地場食品スーパー,ドラッグストアのウォンツ等も出店す る。 提携 エディオン家電量販 東京・秋葉原が拠点の石丸電気と資本提携することで合意。 5月 出店 デオデオ 家電量販 店 広島市西区の大型商業施設「広島フェスティバル・アウトレットマリーナホップ」内 にオーディオビジュアル関連の家具・インテリアや住宅設備,照明器具など「住」 をテーマにした店舗を開店。 6月 出店 コジマ 家電量販 店 2007年2月に,福山市に「コジマNEW福山店」を出店。同社の広島県内への出店 は2004年10月にオープンした「コジマNEW宇品店」に次いで2店目。 公表年月

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(4)コンビニエンスストア 急成長を続けていたコンビニエンスストアは,最近になって店舗数が飽和状態になりつつあり, 新たな展開を図っている企業(第5表)も出ている。地元のポプラは出光興産と提携して給油所内 に店舗を設置したり,立地環境に応じて大型タイプの出店を進めるなどして集客力の向上を図っ ている。また,ファミリーマートは,市街地型のコンビニエンスストアが過当競争にある中で, 全国初となる卸売市場への出店として広島市中央卸売市場をはじめ,常石造船の敷地内や広島国 際大学のキャンパス内などへの出店も行っている。 このように,コンビニエンスストアにおいても,単なる出店攻勢では先行きの成長が見込めな いことから新たな事業展開を図りつつある。 資料:新聞情報など 項目 企業名 業態 概      要 06年 12月 増床 ヤマダ電 機 家電量販 店 2日,テックランド福山店をリニューアルオープン。売場面積は,改装前の1.3倍と なる約6630㎡に増床。 07年 2月 出店 コジマ 家電量販 店 3日,県内2店目となるNEW福山店をオープン。売場面積3560㎡。 移転 ベスト電器家電量販 店 東広島店を国道375号バイパス沿いに移転。New東広島店として7月下旬をめど に開店。店舗面積は約600㎡から約5.6倍の3350㎡に拡大。 閉鎖 ベスト電器家電量販 店 広島店新館9階にあるそごう広島店を25日に閉店。同店は04年3月にオープン。 売り場面積は約2000㎡。 3月 事業転換 住吉屋 衣料専門 店 大型店展開を縮小し,パターンオーダーをメーンとした小型店を拡充する路線に 転換。2年後を目処に広島市や東広島市に売り場面積100-150㎡の紳士服店を 5店出店。 出店 デオデオ 家電量販 本店(広島市中区)西隣に大型店舗の建設構想。 4月 閉鎖 ジュンテン ドー ホームセ ンター 本郷店(三原市)を今期中に閉鎖する。 7月 出店 コスモス薬 局 ドラッグス トア 08年5月期に中四国で新たに50店出店する計画。広島県と岡山県では初めて出 店する。 8月 出店 コジマ 家電量販 2007年12月にコジマNEW広島インター緑井店を出店。広島県内では3店目。店舗面積は約2700㎡。年間の売上げ目標は40億円。 出店 エディオン家電量販 店 2007年度中にエディオンブランドの1号店を関東地方に進出する方針。12月上 旬,エディオン高井戸店を東京都杉並区に出店する。 出店 ジュンテンドー ホームセンター 9月15日に東広島市内の大型ショッピングセンター内に開業。年間売上高7億円を見込む。 出店 ユーホー ホームセ ンター 東広島市へ初進出。2008年秋の開業予定で年間売上高16億円を見込む。 出店 本通ヒル ズ 24日オープン。アディダスジャパン他が出店。 9月 改装 デオデオ 家電量販 店 12日,宇部市のデオデオゆめタウン宇部店を全面的にリニューアルし,10月5日 にオープン。店舗面積を既存店の5.1倍となる約5000㎡に拡大。山口県で最大 規模の店舗とし,シェアトップの県内で地盤強化を図る。 10月 出店 ヤマダ電 家電量販 大規模小売店の届け出を三原市に提出。200台収容の駐車場を備える郊外型だが,中心市街地の立地。2008年6月の開店をめざす。 出店 エディオン家電量販 店 2011年3月期末までの3年間に全国で120店を出店する方針。不採算店の閉鎖を 差し引いた純増でも,70店舗程度を確保する。低価格を売り物にする同業他社と の差別化を図る。 11月 出店・閉鎖 はるやま 商事 衣料専門 店 08年3月期の出退店計画を大幅に見直し。不採算店の閉店数を10店舗から過去 最大の23店舗にし,出店を40店舗から32店舗に減らす。 出店 ニトリ ホームセ ンター 08年夏以降をメドに宇品(広島市南区)に出店する。約7000㎡の敷地に5000㎡ 規模の店舗面積の見込み。広島県内では4店舗目。 12月 移転・改称 デオデオ 家電量販 08年3月中旬に広島市中区大手町にネバーランド広島本店をオープンする方針 を発表。2月中に閉店する旧ダイエー広島店内のネバーランド袋町店を移転・改 称。5階建て民間ビルを賃貸。1-3階が売場で,4-5階が事務所・倉庫。知育玩具 や鉄道模型,プラモデル,ゲームなどを揃え,売場面積は約2000㎡。 08年 1月 出店 ビックカメ ラ 家電量販 店 08年3月に広島市南区のベスト電器広島店内にテナントとして出店。家電販売は ビックカメラが引き継ぎ,ビックカメラ・ベスト広島店としてオープン。ビックカメラの 中国地方への出店は岡山市の岡山駅前店に次いで2店目。ベスト電器広島本店 の売場約1万2000㎡のうち1-6階の約1万㎡に出店し,広島都市圏で最大。家電 全般に加え,宝飾品や酒類,スポーツ用品なども揃える予定。ベスト電器の店員 約80人はビックカメラに出向。年間売上高は現在の1.5倍の約80億円を予想。 公表年月

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(5)その他の小売店 ショッピングセンターなどを中心に各種小売店の動向(第6表)をみると,2004 年 3 月にダイヤ モンドシティ・ソレイユが開業し,その後 2005 年 3 月にはアウトレットショップのマリーナホッ プが開業した。大規模ショッピングセンターは幅広い年齢層を対象に集客力が高く,地域経済に 与える影響も大きいことから,今後の動向が注目される。 第5表 広島県におけるコンビニエンスストアの最近の動向 資料:新聞情報など 項目 企業名 概      要 05年 1月 ポプラ 出光興産と同社は,給油所へのコンビニ店舗の併設と給油所内の売店への商品 供給で合意。同社が給油所への展開で提携するのは初めて。 4月 出店 ポプラ 今期から地域特性に応じて品揃えやサービスを付加した大型タイプの店舗の出 店を進める。2006年2月までに新規出店の約3割に当たる37店を大型タイプとし て集客力を高める。 6月 出店 ファミリー マート 常石造船の敷地内に新規出店。業界の競争が激化する中,大規模工場内への 立地などで新市場を開拓する。造船所への出店は全国初。 8月 出店 ポプラ 地域特性に応じた品ぞろえやサービスを付加した大型タイプの店舗(スーパーコンビニ)を関東地区に初出店し,同地区で本格展開。 9月 セブンイレ ブン 広島世羅店で来店の少ない高齢者への訪問販売を開始。店舗外での需要掘り 起しを図る「御用聞き」作戦を,全国の店舗で本格化する。 10月 出店 ファミリー マート 広島市中央卸売市場(西区)内に出店。市場利用者だけを対象にした異例の立 地で,中央卸売市場内の出店は全国初となる。コンビニ業界は市街地の出店が 飽和状態に近づいており,「閉鎖商圏」である施設や事業所内への出店が本格 化する兆し。 11月 ポプラ 携帯電話やカードを端末にかざすだけで代金を支払える電子マネー「Edy(エ ディ)」を利用できる店が,中国地域で1,000店を突破した。 06年 2月 出店 ポプラ 従来店舗より大型の「スーパーコンビニ」の山陰1号店を,島根県安来市と鳥取県 琴浦町にオープン。品揃えやサービスを強化,大手の参入などで競争が激化す るコンビニ業界で生き残りを図る。 3月 出店 ファミリーマート 東広島市の広島国際大学東広島キャンパスに,4月上旬に出店。寮生を中心 に,深夜・早朝の買い物を望む学生のニーズに対応し,大学側が誘致。同社に よると大手コンビニチェーンが大学に出店するのは,中四国で初めて。 4月 出店 エーエム・ ピーエム・ ジャパン 生鮮コンビニ「フードスタイル」を広島市中区にオープン。同社の出店は中四国 初で,生鮮コンビニとしても中四国初登場となる。 12月 出店 ファミリー マート 16日,山陽自動車道佐波川サービスエリアに新型のハイウェー・コンビニ 「ReSPOT(リスポット)」を出店。中国地方の高速道路にコンビニが出店するのは 初めて。 出店 ローソン 20日,広島東郵便局の局舎内にローソンが開店。局舎へのコンビニ出店は中国地方で初めて。 07年 4月 施策 セブンイレ ブン 独自の電子マネー「nanaco(ナナコ)」利用者にポイントを付与して顧客を囲い込 む戦略を開始。5月28日に全店舗で利用可能に。 出店 ポプラ 07年度,5年ぶりに店舗を増やす計画。08年2月期は前期比10店舗増の794店, 09年2月期は807店まで拡大する計画。新規出店のうち20店をスーパーコンビニ にする。 出店 ローソン 既存店を改装した新業態のコンビニエンスストアのローソンプラス広島寺町店を オープン。広島県では1号店。 6月 施策 セブンイレ ブン 8月末までに約300店で店内で調理した商品(フライドチキンやコロッケ)を販売す る。対象店舗は順次増やす計画。 7月 施策 ローソン 携帯クレジット「クイックペイ」を全約8500店で使えるようにする。「Edy(エディ)」も 8月中に全店で使えるようにする計画。 施策 ファミリーマート 10日から「エディ」とドコモの携帯クレジット「iD」を全国約7000店で利用可能に。 8月 施策 ローソン 地方店舗の採算性を改善するため,24時間営業体制を見直し,採算性が低い店 の営業時間を短縮し,店舗を縮小する。 10月 施策 ローソン 都市部の店舗より地方にある店舗での価格を低く押さえる形で地域差を設ける方 向で検討。大手コンビニエンスストアが同一商品の地域別価格を導入すれば初 のケースとなる。 組織改革 ポプラ 11月1日付で商品開発,経営企画,システム開発といった主要機能と人員を広島 市の本社に集約する。将来は関東や関西などの商品開発も順次統合する。 12月 出店 ポプラ 19日に山陽自動車道奥屋PAに新業態のハイウェイ彩家1号店(東広島市)を出店。 公表年月

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(6)今後の動向 広島県の小売業では消費者ニーズの多様化に合わせた多様な店舗形態が出現しており,さらに 各店舗が個別ニーズに対応すべく専門性を高める方向に進んでいるものや,消費者の囲い込みに よるワンストップショピングを狙った大規模化などに進むものなどがある。 今後についても,各種の小売店はそれぞれの強みを活かしつつ,さらに他の業態の強みとなっ ている部分も吸収しつつ,事業展開を進めていくものと考えられる。各小売店間の競争はより激 化していくことが予想され,従来型の小売店については徐々に淘汰が進んでいく可能性も大いに 考えられる。 第6表 広島県における各種小売店の最近の動向 資料:新聞情報など 項目 企業名 概      要 05年 3月 出店 広島フェスティバル・ アウトレット「マリーナ ホップ」 中四国最大級のアウトレットモールを核にしたショッピングセンターが,広島市西 区観音新町にプレオープン。臨海部のレジャー性を前面に打ち出した観光型と いう広島都市圏でもこれまでにもない業態を掲げる。 4月 ダイヤモンドシティ・ソレイユ 中四国最大級の郊外型複合商業施設として開業以来1年を迎えた同施設は,初 年度の売上目標400億円弱,来客数1,600万人強と,いずれも当初目標の8割に とどまる。(2007年8月に「イオンモール広島府中ソレイユ」へ名称変更) 6月 マリーナホップ 入場者が開業2ヶ月余りで100万人を超える。山口や岡山など県外ナンバーも目 立ち,運営するカミングは「観光拠点として計画通りの集客ができ,順調な滑り出 し」と見ている。 7月 生活協同組合連合会 コープ中四国事業連合 中国・四国の9生協で,商品を共同購入する同連合(コープCSネット)を設立。高 コスト体質の改革を目指す。 11月 改装 福山ロッツ 福山市の大型複合商業施設,福山ロッツがリニューアルオープン。2年半前の開店以来,初めての大規模改装。 12月 出店 長者メガモール 東広島市西条町で,敷地面積約12ヘクタールの大規模ショッピングセンター「長 者メガモール」を開発する計画が進む。ホームセンターダイキ(松山市)が核店 舗。 06年 1月 シャレオ 第三セクター「広島地下街開発」の債務超過問題で,同社は市議会建設委員会 で今後の自助努力策を説明。魅力ある店舗誘致などにより,10年後の年間購買 客数は現状より50万人増の350万人を目指す。 2月 増床 マリーナホップ 9月末までに,家電量販やインテリア店などを誘致して,物販部分を現在の約1.7 倍に当たる約1万8,000㎡に増床する計画。2005年3月の開業からまもなく1年で, 初年度の来場者数は目標の310万人を超えるが,売上高が目標の8割弱にとど まっていることへの対応。 改装 パルコ広島 ファッション専門店などが入る同店は3月にかけて大幅改装し,広島県初出店と なる18店を含む20ブランドを新たに導入。1994年の開店以来,最大規模のリ ニューアル。 3月 改装 マリーナホップ 15日,観光周遊船が接岸できる旅客桟橋「マリーナホップ港」の開港式を開く。4 月に3社の遊覧船や旅客船が運航を始める計画で,年間30万人以上の利用を 見込む。 4月 改装 エールエールA館 開業7年を迎えた広島市南区の再開発ビル専門店街が一部リニューアル。10周 年の2009年春に向けた大規模改装の一環で,期間限定の出店を除くと新店 オープンは4年ぶり。 10月 出店 ハローズ 福山市でボウリング場や2つのスーパーなど6店舗で構成する複合商業施設を計 画。敷地面積は87,165㎡で08年11月末のオープンを目指す。 12月 決算 シャレオ 06年9月の中間決算で中間期で初めて黒字を計上。 出店 広島駅南口Bブロック 21日,再開発組合は中四国一となる52階建ての超高層ビルなどを建設する新た な再開発計画を報告。1∼2階を店舗とする。完成目標は2012年度。 07年 1月 改装 アッセ 5月から08年3月にかけ1階と3階を順次改装。ファッションビルへのイメージ転換を図る。総事業費は数億円規模の見込み。 4月 出店 アクロスプラザ高陽 12日,一部オープン。スーパーのユア−ズ,ホームセンターのダイキ,ドラッグスト アのハーティウォンツなど11店が集る。大和ハウス系のディベロッパーが開発し, テナントを募集したもの。 9月 出店 シャレオ 10月上旬に05年2月以来,店舗入居率が100%になる。 11月 改装 サンステーションテラス福山 福山サントークを全面リニューアルし,1日オープン。年内には91店(うち新規44店)が出そろう。初年度売上げ目標は52億円。 08年 1月 改装 アッセ 3-5階を改装して3月12日に新装オープンする。22店が新規出店するなど99年4 月のアッセのオープン以降最大規模の改装。若者向けのファッションを強化し, 集客力のアップを図る。新装オープンと同時に3-4階の営業終了時間を20時から 21時に延長。 公表年月

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第2章 小売業を取り巻く社会経済情勢の変化

1.社会経済情勢の変化と小売業の変容 (1)小売業構造の変化 わが国の小売業の歴史は古く,1904 年に近代的な小売産業が登場(東京日本橋に三越百貨店が 開設)してから 100 年を超えている。この 100 年間に小売業者は時代によって異なる消費者のニ ーズを上手く捉え,様々な形で進化・発展を続けた。 低価格ニーズに対しては,大量生産や大量仕入など効率的な経営と低価格販売を実現したスー パーマーケットという形態を出現させた。また,ライフスタイルの変化に伴う消費者ニーズの多 様化に対しては,コンビニエンスストアという形態を生み出すなど新業態を次々に展開していっ た。さらに,89 年の日米構造協議でのアメリカ側の市場開放要求,国際化やグローバル化などを 背景に規制緩和が一気に進展した。 その後,バブル崩壊による経済的停滞に加え,大型店の出店規制緩和などの要因により,郊外 型大型店が成長する一方で,中心市街地の商店街が衰退するなど小売業は全国的に大きな構造変 化が進み,現在は人口減少下の市場縮小の中で競争・淘汰が進む構造調整が不可避な時代を迎え ている。 このため,2006 年には逼迫した地方自治体財政と疲弊した中心商店街の再生を図るため,いわ ゆる「まちづくり三法」(中心市街地活性化法,都市計画法,大規模小売店舗立地法の総称)が大 幅に改正され,床面積1万㎡超の大型小売店の郊外立地が原則禁止されるなど,再び出店規制が 強化されるようになった。 本節では,広い視点から,わが国における社会経済情勢の変化と小売業構造,消費者行動の変 化の流れ(第7表)を概観する。なお,消費者意識の変化に関しては,第3章において記述する。 (2)社会経済情勢の変化 わが国の小売業は,社会経済情勢や生活者意識などの変化に伴って,時代とともに姿を変えて きた。以下では,広島県の小売業にも影響を及ぼすと考えられる人口・世帯数,高齢化(第8図) などの主要な社会経済情勢を取り上げて,これまでの変化の状況を振り返る。 ①人口減少時代の到来 全国の人口は 2005 年から減少に転じているが,広島県では全国に先んじて 95 年の 288 万人を ピーク(中国地域のピークも 95 年の 777 万人)に人口減少時代を迎えている。地域需要に依存する 小売業にとって,人口動向に規定される購買力の縮小は直接的な影響が懸念されるものである。 特に,中山間地のみならず都市部においても人口減少が予想されており,これまでは市街地の拡 大に対応して郊外型大型店などの立地が進んできたが,今後は従来とは異なる店舗の再編が進む ことが想定される。 ②少子高齢化と世帯構造の変化 出生率の低下による年少人口の減少と長寿化による高齢者人口の増加が進んでいる。同時に単 身世帯の増加や1世帯あたり人員の減少など世帯構成も変化していることから,各種商品に対す

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1980 年代以前 1990 年代 2000 年代 特 色 生産主導の流通システム 第2次流通革命 消費主導の流通システム ○人口増加から停滞へ ○少子高齢化・世帯構造変化 ○プラザ合意後の円高の進行 ○情報化 ○車社会化 ○右肩上がり時代の生活様式 ○人口減少への転換 ○成熟化(バブル崩壊と低成長) ○高度情報化 (インターネットの普及) ○車社会化の定着と公共交通の 見直し ○成熟社会の生活様式 ○人口減少の加速化 ○成熟化(低成長)の継続 ○車社会化の反省と公共交通 の再生 ○成熟時代の生活様式の浸透 ○大店法による出店規制 ○大店法規制緩和・廃止 ○まちづくり三法の施行から 改正へ(出店規制強化) ○新業態小売業(ディスカウントストア, コンビニエンスストア等)の成長 ○商店街・中小小売店の低迷 ○ローサイド型等郊外化の進展 ○多様な通販・訪販の成長 ○価格破壊の進展(カテゴリーキラー,パ ワーセンター,スーパーセンター,アウトレットモール, ホールセールスクラブ,ワンコインショップ,SPA, 業務用スーパー等) ○百貨店・GMSの低迷 ○商店街・中小小売店の衰退 ○コンビニエンスストアの成長鈍化 ○外資企業の参入・撤退 ○郊外化の加速 ○インターネット通販の登場 ○ディスカウント型業態の定着・発展 ○中心市街地活性化への取り 組み ○郊外化の加速から抑制への 転換 ○インターネット通販の普及 ○大量生産・大量消費から多品 種少量生産・流通へ ○POSの普及 ○多品種少量生産・流通の深化 ○QR・ECR等SCM導入の 動き ○POSの浸透,EDIの導入 ○製配販連携の消費者対応生 産・流通 ○SCM導入の進展 ○POSの浸透,EDIの普及 ○高級志向・ブランド志向の普及 ○低価格志向と利便性志向の強 まり ○こだわり消費志向の強まり ○高級志向・ブランド志向の強ま り ○低価格志向と利便性志向の 定着 ○こだわり消費志向の定着 ○高級志向・ブランド志向の定着 ○ワンストップショッピングから多目的 購買行動への進化 ○多様な通販・訪販利用の普及 ○多目的購買行動の定着 ○インターネット通販利用の萌芽 ○多目的購買行動の超広域化 (超広域的購買行動) ○インターネット通販利用の普及 (注)変化の方向性をわかりやすくすることを優先しているため,時代区分は厳密なものではない。 資料:通商産業省「21 世紀に向けた流通ビジョン−わが国流通の現状と課題−」(1995 年) 宮澤健一「価格革命と流通革命」(1995 年)など 第7表 小売業変容と消費者行動変化の視点 社会経 済情勢 小売業 小 売 シ ス テ ム の 変 容 消費者 消 費 者 志 向 の 変化 消 費 者 行 動 の 変化

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る量的・質的なニーズの変化が生じている。今後とも,これらの要因に基づく購買力の量的縮小 と質的変化は,ますます強まりながら継続するものと考えられる。 1051 1752 6292 8409 3725 2567 33.7% 20.1% 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 80 85 90 95 00 05 10 15 20 25 30 2035年 0 5 10 15 20 25 30 35 40 (万人) (%) 実績値← →将来推計値 65歳以上 15-64歳 15歳未満 65歳以上割合(右目盛) 23 40 134 186 83 60 20.9% 34.5% 0 45 90 135 180 225 270 315 360 80 85 90 95 00 05 10 15 20 25 30 2035年 0 5 10 15 20 25 30 35 40 (万人) (%) 実績値← →将来推計値 65歳以上 15-64歳 15歳未満 65歳以上割合(右目盛) 2.37 2.54 3.21 137.0 138.6 203.5 241.5 75 100 125 150 175 200 225 250 80 85 90 95 00 05 10 15 20 2025年 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 (1980年=100) (人) 実績値← →将来推計値 世帯数総数(指数) 単身世帯数(指数) 1世帯あたり人員 (右目盛) 3.08 2.47 2.33 129.4 124.3 210.0 192.2 75 100 125 150 175 200 225 250 80 85 90 95 00 05 10 15 20 2025年 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 (1980年=100) (人) 実績値← →将来推計値 世帯数総数(指数) 単身世帯数(指数) 1世帯あたり人員 (右目盛) 第8図 人口等の推移 (全国) (広島県) (全国) (広島県) (注)2010 年以降の人口の数値は,2005 年の国勢調査を踏まえた推計(中位推計)。 なお,広島県の人口推計は 2006 年 12 月に公表された全国の将来推計人口を基に作成された数値。 資料:人 口 総務省「国勢調査結果」,国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」(広島県は 2007 年 5 月,全国は 2006 年 12 月推計) 世帯数 総務省「国勢調査結果」,国立社会保障・人口問題研究所「世帯数の将来推計」(広島県は 2005 年 8 月,全国は 2003 年 10 月推計) [人 口] [世帯数]

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③社会経済の成熟化 わが国はバブル崩壊後,長期的な低迷を続け,特に 90 年代後半以降は名目ベースの経済成長率 は停滞傾向にあり,所得の減少による個人消費の伸び悩みがみられた。これに伴い小売業におい て価格破壊が進むと同時に,消費者の低価格志向が浸透した。また,最近では格差社会の論議も 加わり,高級志向と低価格志向の二極化が進んでいる。このような社会経済の成熟化は,全体的 な規模縮小が進む中でのニーズの多様化・個性化・高度化を引き起こしており,小売業の中には 上手く対応して急成長する企業・店舗と,反対に経営破綻や販売不振に陥るものもある。今後と も小売業界での二極化が進行するものと考えられる。 ④高度情報化(インターネットの普及) 情報・通信技術の飛躍的な発展は,小売業の情報化を急速に進めてきた。特に,現代はインタ ーネットが急速に普及し,インターネット人口普及率は全国で 59.4%,広島県で 56.8%(総務省 統計局「社会生活基本調査(2006 年 10 月)」)となっている。これは 10 歳以上人口に占める比率 であるため,実際の消費者の大半がインターネット利用可能な環境にある。インターネットは時 間・場所を選ばず利用できるため,店舗に出向くことなく商品購入ができる。このため,インタ ーネットを含む通信販売の売上高(第9図)は年々増加し,2006 年度は3兆 6800 億円と推計され, 1983 年の調査開始以来の最高額を更新した。 さらに,インターネット利用による「ネットスーパー」という業態も出現している。これは, インターネットで受けた注文品を近くの店舗から配達するシステムで,あるネットスーパーでは 顧客の59%が主婦とのことである。この背景には,消費者側ではネット通販に慣れてきた消費者 の増加に加え,生産者から小売業者までの流通・物流などの一連の流れを総合的に管理し最適化 を図るSCM(Supply Chain Management)などに代表される高度情報技術の進歩がある。

IT技術は今後とも進化を続けていき,通信販売の市場規模も大きくなる傾向にあることから, 今後の消費者の購買行動と小売店の経営に与える影響が大きいと考えられる。 第9図 わが国の通信販売市場規模の推移 資料:社団法人日本通信販売協会「第 25 回通信販売企業実態調査報告書」(2007 年 11 月) 2.4 2.5 3.4 2.6 2.3 2.2 2.2 2.2 2.8 3.0 3.7 2.1 2.0 1.9 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06年度 (兆円)

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