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0.序   章 工学技術者は,進歩する技術を習得するだけでなく, 技術の社会に対する影響を認識し,人類の幸福や福祉に 役立つ技術の応用を常に考えなければならない。そのた めに,学生は,教室で知識や技術を習得するだけではな く,現代社会が抱える問題を直視し,地域社会で実践的 に活動して様々な立場の人と出会い,心を動かすことが 大切である。そして,この技術によって恩恵を受ける 人々と向かい合い,一人一人のニーズに誠実に応える優 しい心を育てなければならない。 湘南工科大学では 1996 年以来,社会貢献活動実践型 授業科目を実施し拡充する一方,地域社会で工科系の特 質を生かした独自の社会貢献活動を実践してきた。実践 型授業科目は技術者倫理を体得する教育効果が極めて高 い。環境や福祉に対して技術が果たす役割の理解が深ま り,ユニバーサルデザインに対する意識が高まる中,福

工科系大学におけるサービスラーニング教育

—工科系の特質を生かした社会貢献活動実践型授業科目—

田 坂 さ つ き * ・石 村 光 敏 *

2

・水 谷   光 *

3

・二 見 尚 之 *

4

眞 岩 宏 司 *

5

・本 多 博 彦 *

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・木 村 広 幸 *

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・勝 尾 正 秀 *

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“Service Learning” for Engineering Students

Satsuki TASAKA*, Mitsutoshi ISHIMURA*2, Hikaru MIZUTANI*3, Naoyuki FUTAMI*4, Hiroshi MAIWA*5, Hirohiko HONDA*6, Hiroyuki KIMURA*7and Masahide KATSUO*8

When preparing university engineering students for the outside world, it is not only important to fill their heads with academic book knowledge but to also help students learn the proper applications of that knowledge in order to benefit humankind. To understand just what can benefit humankind, students need to interact with various people and discover firsthand the problems that confront modern society. With this in mind, Shonan Institute of Technology (SIT) has devel-oped a community service program that gets students out into the community helping people solve their problems. This educational program is called “Service Learning,” which basically means “learning through public service.” This paper describes the details of that program at SIT.

Since 1996, SIT has developed courses to help support practical learning through community service. “Theory of Vol-unteer” and “Community Service” are a few of those support courses. In the 2006 curriculum, the university started its original “Service Learning” program of community service. These programs include technological programs of commu-nity service, for example, PC support and making various tools for the handicapped, among many others. Students in-volved in our program learn the various needs of the community and build important problem-solving skills, while learning engineering ethics. In any community, when young people are active, engaged, and contributing to society, everyone benefits at many levels.

Vol. 41, No. 1, 2007 * 湘南工科大学総合文化教育センター准教授 社会 貢献活動連絡協議会主査 *2 湘南工科大学機械システム工学科講師 社会貢献 活動連絡協議会委員 *3 湘南工科大学電気電子メディア工学科准教授 社 会貢献活動連絡協議会委員 *4 湘南工科大学情報工学科助教 社会貢献活動連絡 協議会委員 *5 湘南工科大学マテリアル工学科准教授 社会貢献 活動連絡協議会委員 *6 湘南工科大学コンピューター応用学科講師 社会貢 献活動連絡協議会委員 *7 湘南工科大学機械デザイン工学科助教 社会貢献 活動連絡協議会委員 *8 元湘南工科大学機械デザイン工学科助教授 社会 貢献活動連絡協議会委員(故人)生前に湘南工科 大学の「社会貢献活動」に関する多大なデータの収 集および整理されたものを,本論文はほぼ同じ形式 で掲載した。 平成 18 年 10 月 24 日受付

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祉補助具製作をはじめとする学生の創造的な活動への進 展はその大きな成果である。 本論文は,まず 1 で,本学で社会貢献活動実践型授業 を行う意義と目的について概説し,2 では 1996 年から 2005年まで継続的に取り組んでいる社会貢献活動実践型 授業科目の授業改革のプロセスをサービスラーニングと いう観点から振り返る。そして 3 で工科系の特質を生か したサービスラーニングプログラム「障害者支援ものづ くり」を概説し,4 ではまとめとして工科系技術者とし てより高い教育効果を目指す科目改善の指針について述 べることにする。 1.社会貢献活動実践型授業の設立 (1) 本学の授業科目における「社会貢献活動」の意 義i 社会に貢献する活動とは,活動それ自体が社会に対し て善を創造するような活動である。社会に対する善とは, 社会の構成員に対する善である場合と,社会の構成員が 生活する環境等,公共の事物に対する善である場合とが ある。それゆえ社会貢献活動とは一般に広範囲な領域に 及ぶが,本学の授業科目で扱う「社会貢献活動」は主と して,社会的に弱い立場に置かれている構成員や公共的 な事物に対して行われる。その理由は,社会的に強い立 場にあれば,経済力も活動能力も豊かであり,自分の力 で自分に対する善を創造することが可能であるが,社会 的に弱い立場にある場合にはそれができないからである。 例えば,生まれながらの障害や事故のために重度身体障 害者として生活する人は就職が難しく,生活全般に経済 的な困難を抱えている。生活全般に介護が不可欠である にもかかわらず,有償のヘルパーを雇うことは現実的に 不可能である。それゆえ他者が無償で介護を自主的に行 う社会貢献活動は,障害者が自分で創造することができ ない善を提供する。また,環境の悪化のために生育でき なくなった野鳥のために東京の埋立地で野鳥が住める環 境を整備する活動は,環境悪化のために生存を危ぶまれ ている鳥に対して,鳥が自力で創造することができない 善を提供する。 このように,社会的に支援を必要とする人々や自然に 対する社会貢献活動は,人権や環境保護に関わる価値の あるものである。障害のある人々に対する支援は,憲法 が謳う基本的人権の尊重であり,国が保障すべきもので ある。しかし国家の福祉政策は,高齢者の増加と財源不 足のために十分のものとはいえない。一方,市民が国の 施策の不十分な部分を主体的に善意から補うボランティ ア活動は,国の内外で広く行われており,政策の手の届 かない人々にとっては他で補うことのできない価値ある 貢献といえる。また,地球環境問題についても,人の手 で自然や生態系を保護していくことの重要性はいまや疑 いの余地はない。しかし環境保護に対する国の施策は十 分とは言えず,環境関係 NGO や市民の主体的な活動は, 価値ある地球に対する貢献といえる。 したがって,本授業で扱う「社会貢献活動」を行う意 義は,人や動物の生存に関わる価値を実現することであ り,社会的に弱い立場にある存在にとっては,他で補う ことのできない貴重な活動といえる。 しかし,上記のような「社会貢献活動」を大学の授業 科目で行うためには,活動自体に社会的な価値があるだ けでは不十分である。学生がそこから何を学び取るかを 考察し,その活動の価値を見極めなければならない。 アリストテレスは「人間は社会的動物である」と言っ ii。それは,人間が自然本性において,一人では自足 して生きられないために,理性的な仕方で他者と幸福を 実現する共同体である市民社会(ポリス)を形成し,そ の中で生きるからである。それゆえ,学生が社会に対し て善を創造する行為に参与することは,市民教育の一環 として位置付けることができる。学生は,自分の活動が 社会に貢献する貴重な市民活動であることを知ることに より,自分自身の存在が社会で必要とされていることを 実感し,やりがいと自信をもって活動することができる。 その結果,社会の一員として責任感をもってやり遂げる ことにより,自分の能力を社会で生かす喜びを知るよう になる。社会貢献活動を継続する原動力は,義務感では なく,むしろ社会の中で自分の能力を生かせ,なおかつ 感謝される喜びである。その際,学生には,社会的に弱 い立場の人や自然物の要請にきちんと応える誠実さがな ければならない。相手と向かい合い,ニーズを誠実に聴 き取り,実直に受け止めて,責任を持って丁寧に応えよ うとする優しい心を育むことが重要である。それゆえ, 本科目は学生が市民社会に果たす存在価値を実感し,社 会の一員として主体的に民主的な社会を支える役割を考 察するよい機会になり,学生が主体的に社会の中で自己 の能力を実現する契機となる。その中で,工学技術者の 心を育てることが重要である。 (2) 工科系大学の授業科目としての意義 総合的学習が開始されて以来,小・中・高の授業時間 に,福祉や環境美化等,社会貢献活動の実習を経験して

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きた学生が多くなった。また高等教育においても,ボラ ンティア活動を単位化して,カリキュラムとして取り入 れる傾向が強くなっている。しかし福祉や環境美化等の 社会貢献活動が,体験することだけに意義を見出すもの であれば,大学教育としてふさわしいものとは言えない。 大学のカリキュラムとして置くためには,学生が「社会 貢献活動」を実践することにより,大学の建学の精神・ 教育目標に即した教育が行われるものでなければならな い。つまり,社会貢献活動の実践が,工学部の教育カリ キュラムと有機的な連関があり,独自の教育効果が認め られるものでなければならない。まず,本学の建学の精 神および教育目標との連関を確認する。 本学は昭和 38 年相模工業大学として開学し,平成 2 年湘南工科大学と名称変更した。「工学に関する学術の 教授および研究を行うとともに,実践的・創造的な能力 を備えた人間性豊かな技術者を育成することを目的とし, 併せて我が国の産業界および地域社会の発展に寄与する ことを使命とする」を本学の建学精神としている。近年 技術者は,産業構造の変化を柔軟に受け止め,グローバ ルな視点から多様で複雑な問題と取り組むことができる 能力が必要とされている。そこで本学では以下を教育目 標と定めている。 ①感性: Sense 現代社会が直面する問題を意識し, 的確に対応できる素養とバランスの取れた見方と判断力 の育成。 ②知性: Intelligence 工学の基礎学力と専門分野の基 礎知識,技法を十分に身につけ,専門以外の分野にも柔 軟に対応できる能力の育成。 ③強靭さ: Toughness 意欲的で粘り強い精神力と健 康な身体を持ち,様々な組織体の一員として,工学的セ ンスをもって効果的に明るく活動できる能力の育成。 これらを実現する具体的教育方法として,社会貢献活 動実践型授業の意義を考察したい。本学の学生は,工学 技術者として社会で働くことを大きな目標として,最新 の工学技術と知識を 4 年間習得する。工科系の知識を生 かして工学技術者として社会に対する善を創造すること は,社会に貢献することに他ならない。しかし,工科系 の技術や知識にもとづいた企業活動も,技術が社会に及 ぼす影響まで考慮すると,結果的に環境を破壊し,善を 創造しないことがある。また技術が特定の人々の利便性 を追求するものであり,高齢者や障害者への配慮を欠い たものであれば,広く社会に貢献するとは言いがたい場 合もある。つまり,工学技術を市民一人一人のために善 用する方法について考えることは,工学技術者にとって は重要な課題である。 工科系の技術や知識をどのように社会で活用するかを 知るためには,社会のニーズを市民社会の中で丁寧に聴 き取る必要がある。環境関係の NPO やボランティア団 体の中には,そのようなニーズを地域社会の中で具体的 に取り上げ,環境保護からクリーンエネルギーの普及啓 蒙まで広範な活動を行っている団体がある。そのような 活動の一端に触れることは,現在何が社会で必要とされ ているかを知ることに繋がる。一方,高齢者や障害者は, パソコンの使用,バリアフリー設備等の改善をめぐって 工科系技術に期待している。情報障害者といわれる高齢 者や障害者(特に視覚障害者・聴覚障害者・肢体不自由 者)にとっては,パソコン使用は画期的な文明の利器で あり,個々の障害に配慮した技術開発は近年目覚しいも のがあるからである。また障害者に対する福祉補助具は, 障害者が地域社会で不自由なく生活するためには不可欠 になっている。本学の学生が行った,障害者支援ものづ くり,高齢者や障害者のパソコンサポートや環境問題啓 蒙活動等,工科系の知識を生かした社会貢献活動の実績 は,地域社会からも高く評価され,将来も期待されてい る。何より学生一人一人が誠実で親切だと評価されたこ とは誇るべきことである。学生がこのような形で社会的 なニーズを学ぶことは,工学技術者として社会に貢献す るためには重要である。 また,学生が本科目において社会に出て活動すること は,自ら社会的な問題点を分析し,自ら社会的なニーズ を発見し,自ら解決法を考案することができるという効 果もある。工科系の技術を必要としている市民と同じ目 線で問題を整理し解決策を見出すことができれば,他か ら要請されるという受身の関わりではなく,自ら開拓す るという主体的な関わりがもてる。学生が,社会貢献活 動を通してさらに考察を進め,本学の卒業研究とも繋が るテーマの事例もあり,履修後,卒業研究,修士論文作 成へと発展した学生もいる。社会貢献活動の現場での発 見は学生の創造的な研究を育てる可能性がある。 (2) サービスラーニング教育として (イ)体験偏重主義を避けるために 阪神大震災以来,いわゆるボランティア活動はすべて 「よいもの」として,小・中・高の授業カリキュラムの 中に取り挙げられ普及していった。しかし,大学をはじ め高等教育として,ボランティア体験が即教育になる, というのは安易である。そこから学生が体験を通して学

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んでいることが,学校の教育目標に合致しており,その 他の授業科目との有機的な連関の元に,大学が目指す人 間教育に結実していくものでなければ,大学教育のカリ キュラムとして置かれるべきではない。しかし,従来の 体験学習は,高等教育においても,多少の振り返りの時 間を設けている場合はあるものの,プログラム自体は学 外企画に便乗するものが多く,成績評価の基準も明確で はなく,学校の教育目標や他のカリキュラムとの連関も 検討されなかった。 近年英米では,単なる体験学習への反省から,社会貢 献 活 動 の 教 育 効 果 や 評 価 の 客 観 化 の 必 要 が 説 か れ , 『サービスラーニング』という手法が注目されている。ボ ランティア学習研究者長沼豊も,近年のボランティア学 習が疑似体験で完結してしまうという点で,サービス ラーニングを評価しているiii 。本学はこの教育方法を批 判的に検討し,2006 年度のカリキュラム改革に導入し, 大学教育としてふさわしい科目とするための改善を実施 している。 (ロ)サービスラーニングとは サービスラーニングは,近年日本でも注目されている 教育方法であるが,概ね下記のように解されている。経 験という側面から教育を捉える系譜に属し,社会貢献活 動に,省察的な思考,コミュニティーを中心に置いた教 育,他者への福祉を志向した活動価値を見出すものであ iv 。1990 年代アメリカの教育改革からカリキュラム開 発に新たな実践が法制化を伴って普及するようになる。 これは地域における市民性を復活させることをねらいと して,アカデミックな教科内容と地域における社会貢献 活動を組み込んだカリキュラムであり,学校改善を促進 するものであるv サービスラーニングの教科書的な文献によるとvi ,サー ビスラーニングとは「他者への支援を通して,またその 経験の考察や身に付けたスキル・知識を提示するといっ た過程を通して,教室学習をより深いものにするといっ た教育手法である。」と規定されている。サービスラー ニングの中では,学生が地域でのニーズを聴き取り,そ れに応えることによって,学術的スキル,社会的スキル, 人格的スキルを地域の改善のために役立てることができ る。それによって,学生が個人として成長し,仲間を尊 重し,市民としての地域への参与を深めるだけでなく, 自分自身のことや,地域社会についてより深く理解する ようになることが期待されている。そして他者のために 生きることを通して主体的に問題を解決し,他者と連携 し,自分の能力を発揮するようなリーダーとして成長す ることができる。 わが国においても,2002 年から公立小中学校に,2003 年から公立高校に導入された『総合的学習の時間』にお ける体験学習の質向上のために,近年,サービスラーニ ングは注目されており,2005 年度は高校の教科書に登場 している。また,文部科学省は,特色ある大学教育プロ グラムに大学のサービスラーニングプログラムを認定し ており,埼玉県の社会福祉協議会もサービスラーニング ガイドブックを出版する等,国内でも注目度は高まって いる。 しかし,サービスラーニングプログラムとして,工科 系技術者の高等教育に関するプログラムは国内では未だ 開拓分野である。本学の『社会貢献活動』は,その一つ の事例といえる。 2.「社会貢献活動」の設立—2001 年度 カリキュラム改革 「社会貢献活動」の設立は,それ以前のカリキュラム 改善をめぐる様々な取り組みや学内外の多大な協力のも とに成り立っている。はじめに,その経緯を振り返って みたい。 (1)「社会貢献活動」開講の経緯 ①「ボランティア論」の開講 1996年度以前のカリキュラムでは,一般教育科目に 「倫理学」が置かれていた。この授業で「科学技術が人 間の幸福に供するか」を問うた時,学生には問題の現実 味がなく,解決へ向かう企画構想力が乏しかった。当時 「倫理学」を受講していた学生の幾人かは,単位取得状 況が悪く,遅刻が多く授業中も熱心に聞いていなかった。 その学生たちに,地域の福祉施設においてごく短期的な ボランティアを薦め,教員も同行した。学生は障害者の 置かれている状況を現実に直視し,そこで技術が果たす 役割を体感した。福祉施設では実に真剣に障害者介助を 行い,誠実な態度は施設側にも高く評価された。その 後,学生の授業態度は大きく改善し,理解が深まった。 その後学生たちは,この科目のみならず,他の科目につ いても学習意欲が高まったという。このように現実を直 視し,社会貢献活動をする教育効果は刮目すべきことで あった。そこで 1996 年,体験実習を含む総合科目「ボラ ンティア論」を開講したvii ②現場を取り込んだ授業内容 「ボランティア論」では,福祉,環境,国際協力,地

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域活動等を実践している地域・ NPO ・ NGO ・企業か ら,障害者を含む外部講師を総計 10 名程度招く授業で, 人間の幸福について学生に考えさせ,併せてボランティ ア活動の実例を紹介した。履修生は全員その中から参加 可能な実習を選択して,近隣地域で実習できる体制を とった。 ③実習時間の増設と履修制限 「ボランティア論」開講当初は半期 200 名を超える受 講生を受け入れ,藤沢市社会福祉協議会「ふじさわボラ ンティアセンター」の協力で学生の希望する実習を 1 回 4時間程度斡旋した。実習の継続による教育効果を鑑み, 1997年以降は履修生を半期 50 名に制限,実習を 10 時間 程度(23 回)とし,個別指導を重視することとした。 ④活性化する大学の社会貢献 2001年 4 月には近隣地域で精力的にボランティア活動 を行う学生サークルが結成された。学生・教職員のボラ 表 1 活性化する社会貢献 年・月 内容説明 連携団体 福祉啓蒙活動 1998/11 学生が大学祭で知的障害者芸術映画「まひるの星」を上映。 (社)日本フィランソロ 障害者の芸術活動によるチャリティー。 ピー協会 1999/7 市民向け公開講座として,小室等氏とおすぎ氏の福祉トーク 及び映画「ギルバートグレイプ」の上映。 社会福祉法人藤沢育成会 障害者と交流 1998/6– 藤沢市肢体不自由児者父母の会に協力し,学生と障害者の 藤沢市肢体不自由児者父母 現在に至る 交流会及び写真展「ふれあいの一歩」を 6 年間継続開催。 の会 < P10 写真 1 > 国際協力 1998/9 カナダの知的障害者人形劇団の公演において,舞台裏で障害 富士ゼロックス社会貢献 1999/10 者と英語でコミュニケーションを取りながら人形を手渡す 事業部 ボランティア,会場の介護ボランティア等。学生は卒業後も 社会福祉法人訪問の家「朋」 自主的に継続。 福祉研修会 1999/6 全国障害者生活支援セミナーの会場提供,学生のボランティア 全国障害者生活支援 協力。全国から約 300 名が来校。 ネットワーク 2000/1 社会福祉法人藤沢育成会の福祉施設職員研修に会場を提供。 社会福祉法人藤沢育成会 教育効果の高い内容なので学生も参加。 国際協力 2000/2– 学内放置自転車を整備し,晴海埠頭まで走行運搬してピース 日本エリトリア友好会 現在に至る ボートでエリトリアに寄贈。学長,学生自治会委員長を含む ピースボート (NGO) 全学的な実行委員会が組織され,卒業生 11 名を含む教職員学生 75名が参加。現在は規模を縮小しスリランカへ自転車を寄贈。 環境ボラン 2000/11 大学祭で「地球へのボランティア」をテーマに,環境工学の NPO法人ソフトエネルギー ティア 2001/11 研究室・地域で地球温暖化防止活動を推進する NPO 等団体・ プロジェクト・ 行政と協同企画を学生が考案。総合的学習の一環として小学 ストップフロンの会・ 5年生 72 名が参加。 エコライフ藤沢 他 表 2 「社会貢献活動」開講に至るまでの新聞掲載記事 No 掲載内容 見出し 掲載紙・日時 1 エリトリアへ自転車を贈る 放置自転車 40 台エリトリアへ 朝日新聞 2000/5/22 朝刊 2 エコボランティアしよう 環境に優しい生活紹介—湘南工科大企画展 神奈川新聞 2000/11/4 朝刊 3 ボランティアチャレンジ ボランティア学生経済的に支えます 朝日新聞 2000/12/26 朝刊 4 エコボランティアしよう 環境の最先端小学生に講義—学生学園祭で 朝日新聞 2001/11/3 朝刊 5 「ボランティア論」講義 山谷で医療ボランティア—生き方教えられる 朝日新聞 2001/11/29 朝刊 6 障害者とのふれあいの一歩 交流求める障害者—笑顔輝く姿パチリ 神奈川新聞 2001/2/10 朝刊 7 ボランティアチャレンジ 参加のきっかけ与えたい—湘南工大が制度化 毎日新聞 2001/3/10 朝刊 8 NPOと地球温暖化防止行動 「地域一丸」で温暖化防止を 神奈川新聞 2001/3/11 朝刊 9 「社会貢献活動」開講 社会貢献,単位に—湘南工大 朝日新聞 2001/12/12 朝刊

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ンティア意識が高まる中,国際的な社会貢献も実施さ れ,地域・ NPO ・ NGO ・企業・行政との緊密なネット ワークが構築された。表 1 は主な事例,表 2 は関連する 新聞記事である。 (2) 専門科目「社会貢献活動」の開講 ①総合科目「ボランティア論」の限界と問題点 以上のように,総合科目「ボランティア論」の開講は, 大学としての地域貢献や学生のボランティア活動を促進 したが,問題点が二つ浮上した。第一に授業科目という 束縛による実習時間及び実習期間の制限であり,第二に は「ボランティア論」が一般教養に留まっている点で あった。工学部の技術者教育の一環として充実させるた めには,工学技術者の基礎的な素養と位置づけ,専門教 育への動機付け,また学んだ専門教育知識の現実への実 践的応用となるような工夫が必要になる。これには,継 続的な実体験を通した学生の主体的な学習が必須であ る。 ②専門科目「社会貢献活動」の狙い そこで 2001 年,「ボランティア論」には技術者として の社会貢献にまで踏み込む内容を加え,外部講師を招く 講義のみとした。さらに実体験の有効性に鑑み,60 時間 の実習を必修とする専門科目「社会貢献活動」を創設し た。そして学生の主体性を育成するために,学期や学年 に縛られることなく,2 年生以上になれば,希望する実 習を選択できる体制をとった。実習が長期にわたるので, 総合科目には含まれなかった工科系の社会貢献活動実習 が学内教員の手で開拓され,専門教育との連携を強め viii ③社会貢献活動連絡協議会 長時間近隣社会に実習に出すためには,実習生に対し てきめ細かな指導及び実習状況の把握,大学教育との連 携が必要になる。各学科および総合文化教育センター教 員に事務担当者も加えた,全学的な「社会貢献活動連絡 協議会」が科目の運営にあたった。協議会は月 1 回程 度,取組の意義や価値を担当教員や事務職員が共有する ために会議を開き,学生の実習状況の確認,教育効果の 検討,学生が自主開拓した活動の承認等を行い,科目の 改善および将来計画を立案する。 ④大学・ NPO ・行政・地域との協働 「ボランティア論」実習先は,神奈川県や藤沢市の行 政機関,社会福祉法人,NPO 及び NGO ボランティア団 体等多様であり,学生の誠実な実習を通して強い信頼関 係が構築された。その実習(27 種)を「社会貢献活動」が 受け継ぎ,さらに地域から要請を受けて新たな実習も認 定した(13 種)。一例を挙げれば,2002 年には環境省か らの委託事業「大学・ NPO ・行政・地域の連携による地 球温暖化防止行動宣言プロジェクト」においては,NPO と協働で環境ボランティアを企画し,実習と認定した。 さらに,工科系大学の特質を生かす実習を開拓し,大学 としての地域貢献を学生の教育として実施した。 ⑤工科系の特性を生かしたボランティアの開拓 「社会貢献活動」を専門科目として位置づける以上は, 専門教育と連関がある工科系の特質を生かした社会貢献 を実践したい。そこで特に表 3 の活動を本学の教員が計 画し,「社会貢献活動」開講に先立って試行的に実施し た。地域での評価は高く,実習後,学生の学習意欲の高 まりがみられた。 ⑥地域の有識者との協働 本学が位置する藤沢市は市民による地域活動,ボラン ティア活動が活発なところとして知られ,行政も積極的 にこれを支援している。2001 年に施行された市民活動推 進条例に基づき市民活動推進センターが設置され,現在 では 300 以上の活動団体が登録している。本学は,市長 の諮問機関である市民活動推進委員会委員を委嘱され, 表 3 工科系のボランティアの試行 テーマ 年・月 活動内容 視覚障害者向け IT 講習会 2001/10 視覚障害者対象パソコン講習会をサポートできる学生を養成し, 綾瀬市主催の視覚障害者 IT 講習会をサポート。 市民向けパソコン講習会 2002/3 大学が主催し,市民向けパソコン講習会を行った。専任教員が 講師となり,学生が受講生にマンツーマンサポート。 地球温暖化防止行動 2002–3 湘南地区のソフトエネルギー施設の取材,小・中・高の総合的 学習の見学先紹介のための施設案内と地図の作成。 2002/2–2003/6 省エネにより削減される電気代を表示する「省エネナビ」を 一般家庭に設置。省エネ普及啓蒙活動。

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学生,教職員の活発な活動を通して高い評価を得てい る。 本学は 2004 年 7 月に「テクニカルアドバイザー制度」 を発足させ,地域の有識者が学内のものづくりや社会貢 献プロジェクトに参加する雇用形態を整えた。2005 年 「社会貢献活動支援室」(以下「支援室」)の開室にあ たって,市民活動推進および NPO 育成に実績のある有 識者を同制度により招聘し,情報提供と個別相談の体制 が充実した。 (3) 教育効果をあげるための授業と環境改善   ①学びの動機付け 近年,ボランティア活動の単位化,教職資格取得にお ける介護実習の義務化が進んでいる。活動自体に価値が あっても,個々の学生の関心やスキルと無関係に,活動 先や活動日が一方的に決められ,単位あるいは資格取得 のための義務と位置付けられると,自主性は育たず教育 効果は低減する。本学の「社会貢献活動」は必修科目では なく自由選択科目とし,大学が選定する教育効果の高い 40種類もの実習の中から,学生の興味がある実習を自由 に選択できるようにした。学生の希望に応じて,一つの 実習を 60 時間継続することも,複数の実習を組み合わ せることも認めている。学生が自ら開拓した活動も,審 査の上,実習と認められる。学生は,自分の興味関心や スキルを生かせる実習を選択することによって,体験を 通して自分の可能性を伸ばし,またその限界も知るよう になり,更なる学びの動機付けにもつながる。そして, そこから学んだことをフォローアップ体制のもとで振り 返り,報告書を作成する。課題を見つけてさらに考察を 深め,改めて大学で課題解決のための学習に取り組むこ ともできる。 ② PC ネットワークの活用 (イ)専用 HP 大学が多様な実習を用意して学生の自由選択に任せる ことは,斡旋作業等,事務処理上大きな負担を負う。学 内の情報ネットワークの整備された本学においては,そ れを活用することによりスムーズな実習授業の流れを構 築することが実現できた。本学では,「社会貢献活動」 専用 HP を学内サーバーを設置し,大学の内外から閲覧 できるようになっている。昨今,連絡先等の個人情報保 護が課題となる中,それに留意した,個別のパスワード で管理された個人情報に留意した HP を作成することが 要求される。本 HP はこの要求を満たし,社会貢献活動 連絡協議会委員は,科目運営に必要な実習先および学生 の個人情報の閲覧および修正が可能であり,学生は当人 の個人情報の閲覧および修正,実習先データの閲覧のみ 可能になっている。 図 2 実習先類型 2000年度 –2005 年度 図 1 社会貢献活動受講の流れ図

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(ロ)HP 上の個人登録 履修登録は,学内からインターネットを用いて登録を 行い,登録時にパスワードを発行する。その後,学生は HP上に個人専用ページを持つことになる。そして,実 習先の情報を HP で確認の上,学生が個別に 1 箇所ある いは複数の実習先を選択して登録することができる。そ の際,HP 上から活動先の地図や詳細な資料をダウンロー ドして利用できる。その後学生は,HP 上に記載されて いる指示に従って 60 時間の活動を行う。その間,学生 は個人ページに活動時間,報告書等を書き込む必要があ る。学生との連絡は基本的に HP やメールで行う。 (ハ)学生携帯電話との連携 通常大学では学生への連絡は掲示物である。しかし, それぞれ,数人しか登録していない数十種類の実習の 個々に対して掲示することは現実的ではない。「社会貢 献活動」では,学生が現在,最も利便性を感じる携帯電 話に個別メールで連絡することを基本としている。 ③社会貢献活動支援室の設置 インターネットを活用した履修システムがあっても, 学生と向かい合った指導は重要である。本学では 2005 年 4月から社会貢献活動支援室( 以後「支援室」と略記) 「支援室」を設置した。「支援室」は全学の学生が最も使用 する 4 号館に位置し,テクニカルアドバイザーが週 4 回 勤務し,教員と連携して相談にあたる。「支援室」ス タッフは,「社会貢献活動」の実習先の連絡窓口となり, 原則として年に数回は全実習先を訪問して学生の実習状 況を調査し,履修状況把握データを作成する。また「支 援室」は,「社会貢献活動」の実習が地域との連携の下に 円滑に実施されるパイプ役となり,実習先から寄せられ た教育効果等の資料を大学教育現場の学生指導にフィー ドバックする。さらに学生の相談件数や内容,学生の提 出物や実習先訪問記録等のデータを収集し,「社会貢献 活動」実習に関する資料の整備および管理を行う。これ らの資料は,社会貢献活動連絡協議会で報告され,教育 効果の検討や授業改善のための基礎資料となる。 ④現代的課題への対応 工科系の技術や知識をどのように社会で役立てるかを 知るために,現代社会における工学技術のニーズを市民 の目線で知る必要がある。工科系の知識を生かし地域の ニーズに応えた表 4 の実績は,地域社会から高く評価さ れている。 ⑤研究へのモチベーション強化 環境や情報,福祉等の現場での経験は,工学技術者と しての自己の社会的役割を発見することに繋がる。市民 ボランティアとしての現場での発見は,学生主体の創造 的な研究を育てる土壌となる。後述するチャレンジ制度 を利用した環境問題への取組や福祉補助具等の製作も, 研究へのモチベーション強化となっている。 (4) サービスラーニングプログラムの整備 ①初期 (イ)事前研修 活動自体の価値を学生が認識せずに社会貢献活動を一 定期間体験しても,社会問題の発見や学生の成長と結び つく創造の場にはなりえない。そこで事前研修として, 履修する学生に社会貢献活動の価値や意義について教員 が講義し,その理解状況を試験により確認する。 (ロ)実習先別ガイダンス 大学が斡旋する実習の内容は,HP の活動先一覧に詳 表 4 現代的課題の取組 課題 活動内容 環境問題への対応 NPOと協働でエコボランティア,エコマップ作成・省エネナビ設置,地域発地球温暖 化防止行動宣言(平成 12 年度環境省委託事業−体験的環境学習推進事業) <表 2 No. 8 > 障害者のパソコン支援 視覚障害者向けパソコン講習会,高齢者向けパソコン講習会サポート(大学が藤沢市に 寄贈したパソコンを利用),障害者向けパソコン指導 障害者支援ものづくり 言語障害者用音声発生装置 (1998–2004)重度障害者対応缶つぶし機および 補助具 (2004–),視覚障害者向けセンサー付きコーヒーカップ (2004–) 障害者用粉ふるい機,果物潰し機,変形車椅子用重量測定装置,重複障害者用ワープロ ソフト,肢体・言語障害者用コミュニケーションボード (2006–) 地域貢献 鎌倉の失われた文化財永福寺の CG 復元 (2003–),県立高校の HP 作成 (2004–),障害者 カヌーの開発および閉散期の県立プール利用への提言 (2003–),辻堂地区の防災マップ, バリアフリーマップ作成 (2004–)

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細に記載されており,地図も掲載されている。実習先案 内スライドも HP に置かれている。しかし,実習担当者 が学生と向き合って,活動に期待することや生かせるス キルを聞き取り,学生の質問に直接応える場は重要であ る。実習登録が終わってから 1 週間,活動先別に個別ガ イダンスを行い,受入れ団体について詳細説明を行い, 実習意志を最終確認し,個人情報の扱いの承諾を得る。 その後,活動受入れ団体においても具体的な活動の目的 や意義について説明を受け,実習に入る。 ②中期 (イ)フォローアップ体制 社会貢献活動を通して学生が人間的に成長するために は,社会貢献活動の目的や意義を理解し,各回の実習か ら学んだことを振り返り,次の実習にその経験を生かす ことが重要である。そのためには実習先・担当教員・支 援室の三者が,学生へのサービスラーニング体制を構築 することが重要である。そのための連携と情報交換は欠 かせない。実習先では可能な範囲で振り返りの機会を設 けるように要請し,学内では,「支援室」のテクニカル アドバイザーが豊富な経験を生かして,実習中の相談に のる。「支援室」は個々の学生について実習先や個別相 談の状況を協議会で教員に報告し,必要に応じて学生と 教員との面談を設定する。学生はその過程で,社会貢献 活動から学んだことを自ら振り返り,活動全体の価値を 見つめ直し,残された課題を克服する努力をするように なる。実習終了後,学生が作成した報告書を基に三者で 実習内容と教育効果について検討し,サービスラーニン グの改善を図る。 (ロ)中間期研修会 サービスラーニングにおいて,中間期における振り返 りは重要である。しかし異質の体験への驚きや感想を述 べる程度の振り返りでは,体験が学生一人ひとりの学び として結実することは難しい。そこで,まず,個々の学 生の興味関心を動機付けとしてスタートし,現場体験に より理解が深まり,関心が新たな発見を誘発し,そこに 社会的な課題を意識させるように,導入のための講義を 行う。社会貢献活動指導実績のある外部の専門家を特任 講師として講義を依頼することもある。その後,支援室 テクニカルアドバイザーが中心となり,実習中間期の ワークショップを行う。 ③終了期 学生は,認識の深まりや,新たな課題発見や提言,発 展的学習の可能性等について実習報告書を作成する。ま た,学生が Power Point でスライドを作成して,自らの 実習を互いに報告しあう,実習報告会も開催する。そし て優良なものについては,外部コンクール等への出展を 薦めている。 ④成績評価 (イ)教員による評価 「社会貢献活動」の成績評価は,各実習先の「学生の 実習評価」と学生が書く「報告書」,および支援室の平 常点(学内提出物の期限や連絡対応等)を参考に,社会 貢献活動連絡協議会委員が総合評価する。総合評価は平 均 87.4(100 点満点,2002 年2004 年)と極めて高く, 主な教育効果として「人としての優しさ」や「工学技術 に対する社会のニーズを知ること」が挙げられる。 (ロ)実習受け入れ先による評価 「学生の実習評価」項目は,時間の厳守・誠意・意義 の理解・社会貢献度という個別項目と総合評価項目から 構成される。評価項目が抽象的なので,実習先により基 準にばらつきは感じられるが,総合評価は最高の評価 5 が 68% である。個別評価項目についても,学生がまじ 図 3 実習先総合評価 2000年度 –2005 年度 図 4 実習先評価項目 2000年度から 2005 年度

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めに取組み,社会に対する貢献度も高く,教育効果が大 きいことがみて取れる。受入れ先の多くは,ボランティ ア経験のない学生が殆どであるにもかかわらず,学生の 誠実さ真摯さに好感を持っている。また実習を通して, 次第に適切に判断し配慮できる能力が身に付き,生き生 きと活動できるように成長したと報告を受けている。人 間力の高まりが感じられる。 ⑤地域社会へフィードバック (イ)地域での発表 学生の成長を促すために,学生が体験を地域社会で発 表する機会は重要である。NPO 主催の報告会 (2002),ボ ラ フ ェ ス タ で の 展 示 (2004), 公 立 中 学 校 で の 発 表 (20045),ボランティア講座 (2005) 等,学生が近隣地域 と体験を共有できる工夫をしている。また,NPO と共同 で近隣の小中学校に寄贈したパソコンカットモデルを用 いて,学生がパソコンの仕組みやリサイクルを子供たち に説明する機会を設ける計画もある。 (ロ)障害者支援ものづくり作品の使用 2005年からスタートした「障害者支援ものづくり」で は,学生が製作した福祉補助具を福祉施設に 1 年を限度 に無償で貸し出し,障害者の生活支援のために機器を利 用してもらう。使用した後に,学生が問題点や改善点を 聞き取り,更なる改善を進めて機器の製作,改良,調整 を行うことを試みる。1 年の使用期限内に改良,調整及 び機器チェックを実施し,改めて次の 1 年間使用しても らう,という取組みである。 ⑥顕彰 2007年には終了期の報告会を行う。他校と共同の報告 会も検討している。また 2006 年 12 月には,障害者支援 ものづくりを行ったグループ有志が,学外のコンクール に応募した。2007 年 2 月には,実習先での報告会も予定 している。学内外の顕彰と周知の機会は今後さらに充実 させたい。 (5) 履修による教育上の効果 ①科目履修が社会経験の貴重な場 ほとんどの学生が,履修前はボランティア経験がなく, 授業科目が貴重な体験の機会となっている。ボランティ アに関心があっても情報がなく機会に恵まれない学生は 多い(図 5)。実習は,学生が活動しやすい時間帯に限定 し,教育効果の高い内容活動を斡旋することで,学生の 学びの契機となる豊かな社会経験のチャンスを広げてい る。 ②活動時間の増加 「社会貢献活動」単位取得学生の半数以上が規定実習 時間である 60 時間を越えて実習している(図 6)。また 各実習先での平均活動時間は増加し実習先への定着が進 んでいる(図 7)。単位のための活動としてではなく,自 らの関心に即した発展的な活動とみることができる。 ③履修後の学生の自主活動 「ボランティア論」「社会貢献活動」を履修後,長期にわ たりボランティア活動を行う際,少額の交通費や参加費 も回数が重なれば学生には負担となる。そこで 2001 年, 図 5 ボランティア経験がない学生の意識調査 (2005 年機械工学科 4 年生) 図 6 学生の実習総時間(2005 年度) 図 7 各実習先での平均活動時間 (2002 年 –2005 年「社会貢献活動」履修生)

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本学では,学生のボランティア活動支援のために「ボラ ンティアチャレンジ制度」を設立した。1 件 10 万円を上 限とし助成金を申請できる < 表 2 No. 3, 7>。申請の中 には,既存の活動にとらわれずに,学生が独自の障害者 支援企画を長期にわたって実行する事例がある。また NPO活動に参加して海外で難民の支援を経験した学生 が,学内募金活動や写真集作成を企画する事例もある。 「ボランティア論」「社会貢献活動」履修後,チャレンジ 制度に申請する学生は多く,授業科目が学生の自主的な 活動の契機となっていると考えられる。 一方,学生の課外活動における理工学に関する創造的 な企画に助成することを目的として 1998 年に「テクノ チャレンジ制度」(後に,「テクノ・ビジネスチャレンジ 制度」に改称)を設立した。一般申請は 10 万以内,特 別申請は上限がない。2004 年度は福祉目的の企画が 4 件 (言語障害者用音声発生装置,障害者作業補助具,視覚 障害者対象生活補助具,ソーラー車椅子)助成を受け た。 「ボランティア論」「社会貢献活動」履修後,学生の教 育効果を測定するにあたり,チャレンジ制度の助成記録 が重要な資料となる(図 8)。学生の自主的な活動は年々 増加し,障害者支援や環境保護を動機付けとした,主体 的なものづくりに取り組む学生が増えてきている。 3 障害者支援ものづくり—工科系のサービス ラーニングモデル事業 (1) 社会福祉法人訪問の家との連携 訪問の家「朋」は,重度重複障害をもつ人達が通所す る場であり,メンバー(「朋」では利用者をメンバーと 呼ぶ)のほとんどは,言葉を発することも,身体を自由 に動かすことも難しく,自分の意思を人に伝える事が困 難である。10 年に亘り,訪問の家と学生のボランティア を通した連携の成果として,障害者支援ものづくりが実 現した。その成果は施設側も評価しているix ①「ボランティア論」を契機として 1996年に総合科目「ボランティア論」の立ち上げの際 に,「朋」の施設長日浦美智江氏(現在,訪問の家理事 長)が大学側から相談を受け,特任講師に招かれた事が 「朋」・湘南工科大学両者の連携の始まりである。その 後,授業を通じて学生は朋に実習やボランティア,見学 などに訪れるようになり,福祉と工学とは次第にその距 離を縮めていくことになる。 ②工科系学生らしいボランティア 湘南工科大学の教員と施設職員の間で,「工科系の学 生らしい福祉との関わり方」が検討され,「朋」のパソ コンネットワーク環境の整備やホームページの更新と いった,工学技術を活かしたボランティア活動が始まる。 学生は自分の力を活かせる場を得たことで自信を持つよ うになり,施設に向けた技術協力からメンバー個人の ニーズへ向けた協力へと変化していく。施設スタッフが 缶プレス活動について「人の力を借りてやるのではなく, メンバーが自分の力を活かす事ができる活動参加機会を メンバーに提供したい。」と話し,「機械工学を学んでい る学生として案があったら教えて欲しい。」という投げ かけをきっかけに缶プレス作業の課題解決が始まる。 ③福祉と工学の協働 改良を重ねたプレス機が大学の機械実習棟で完成し, 試運転の日を迎えた時,重度の障害がある女性がほんの 少し動かせる手でレバーを動かすと,「カタン」と缶が 落ちて潰れたところが彼女の目に入った瞬間,彼女の顔 が笑顔に変わった。その時学生の顔には,笑顔と共に達 成感が満ち溢れていた。これが朋にとって湘南工科大学 が単なる実習・見学の相手ではない,共にメンバーを支 援する連携相手へと変わった瞬間である。 朋・湘南工科大学との連携は,互いに大きな変化をも たらした。常に既存製品の利用方法に自分達が合わせな くてはならなかったメンバーは,工学という分野の協力 を得たことにより,個人の視点に合わせてつくられた製 品を得る事ができる様になった。これにより,メンバー 一人ひとりが自分の力を活かすことのできる活動参加の 機会が増え,生活の幅を今まで以上に広げることが可能 になったのである。 図 8 福祉関係のチャレンジ制度の助成額

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(2) 工学技術者教育として 今回の連携により,学生は,ものづくりの原点を体得 する事ができる。汎用性が高いものしか作られない現実 の中で,作り手主導の製品ではなく,使う人の視点に 立って製作する事の重要性。こういうものが欲しいとい う望みに耳を傾け,それに応えることの必要性。これは 工学部のものづくり教育の原点でもある。 ①「社会貢献活動」障害者支援ものづくりの開始 社会貢献活動連絡協議会では,2005 年から訪問の家 「朋」及びそれ以外の事業所,あるいは当事者の要望に 応えた障害者支援ものづくりを「社会貢献活動」の斡旋実 習に加えた。学科委員が,それぞれの専門性を生かして 学生の相談や指導にあたり,2006 年度は学生 16 名がグ ループに分かれて,7 点の障害者支援補助具の製作に取 り組んでいる。 ②障害者支援ものづくり推進に関する覚書締結 2006年社会福祉法人「訪問の家」と学校法人湘南工 科大学とは「工学技術による障害者支援ものづくり」を 推進する覚書を交わすに至っている。これまで,訪問の 家が,「どんなに障害が重くても,その人の持つ力を発 揮しながら,その人らしい生活をしていく」ことを理念 に行なってきた取り組みが,湘南工科大学という他分野 の人達の共感を得ることが出来,同じ支援者としてメン バーを支えることが出来る様になったことは,福祉に とっても大きな前進だと「訪問の家」は捉えている。障 害者支援ものづくりは,訪問の家と本学との連携の下に 結実したサービスラーニングの好例といえる。 4.更なる改善を目指して (1) 2006 年度カリキュラム改革へ向けて 体験型実習科目である限りにおいて,個々の学生の学 習意欲にばらつきがあるのは避けられない。個別学生に はできるだけ丁寧にきめ細かに対応し,学生の学びが定 着するように,さらなる大学教育のカリキュラム改革が 必要である。平成 14 年度からスタートした「社会貢献 活動」は 2 単位 1 科目であったが,平成 18 年度から実 施された新カリキュラムにおいては,2 科目計 4 単位「社 会貢献活動 1」「社会貢献活動 2」がスタートする。「社 会貢献活動 2」が「社会貢献活動 1」の発展形態となる ためには,サービスラーニングを推進することにより大 学でのカリキュラムとの有機的な連関を強化し,より創 造的発展的な学習へと深化するカリキュラム改革が必要 である。 (2) サービスラーニングガイドラインの構築 暫定的に構築した下記のガイドラインを具体化する。 ①学生がこの科目の理念を十分に理解し,学生の関 心・知識・スキルが生きる実習を行うために,実習選択 前の事前調査を丁寧に行う。 ②実習中間期において,実習先と連携して学生が実習 から何を学び取っているのかを調査する。 ③学生が問題(個人的・社会的)に遭遇した場合,そ の解決のための学習をフォローする。 ④学生の活動の成果(実践・発見・学び・問題解決・ 発展的構想)の発表する機会を設ける。 ⑤大学の授業内容,実習先の活動に関する外部評価を 定期的に行う。 ⑥他のアクティビティー(インターンシップ・自由な ボランティア)との切り分けを明確にする。 (3) 大学の授業科目との連関 大学の授業科目との連関を重視し,授業で得た知識を 社会に還元できるような社会貢献活動を開拓する。また, 既存の実習の事前知識を得る科目や,実習を通して学び を誘発した科目を明確にして,大学での学びと深く連関 した体験が行えるようなプログラムを作る。 (4) 成果をコミュニティーにフィードバックする 実習の中間期に,支援室スタッフの市民活動経験を生 かしたワークショップを行い,学生の考察の幅を広げた い。さらに従来,学生には報告書提出だけを課していた が,今後は報告会を実習先や地域の方々を招いて行いた い。実習先と協働で科目改善できるのみならず,地域全 体に市民レヴェルの社会貢献活動活性化の一助ともな る。社会貢献活動体験だけではなく,その成果を社会に フィードバックするような活動をも授業の中に取り入れ ることも検討している。 5.まとめ—工学技術者の心を育てる教育を 目指して 学生は社会に出てさまざまな立場の人々と出会うこと により,一人ひとりのニーズを受け止める心が育ち,技 術の価値を考えるようになる。技術の価値を市民一人ひ とり同じ目線で評価するという経験は,これからの技術 者に必要とされる素養の一つである“テクノデモクラ シー”xの何よりも実践的な学習となる。学生の中には, 社会貢献活動で育んだ障害のある人への強い思いが,卒 業研究,大学院での研究へと結実した事例もあるxi。ま た,生きがいを見失い,学業に打ち込めない学生や,心

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の悩みを抱えている学生が,切実な現場のニーズを受け 止め,それに応えようとすることで,大学での学びに対 するモチベーションが高まり,社会人として旅立つ自信 にもつながった事例もある。そのような教育効果が,学 生一人一人の心の成長に寄与するためには,体験から得 た糧を自分の中に学びとして位置付ける教育方法が必要 である。サービスラーニングの推進は,学生の学びの意 欲を育てて自らの成長を見守るには優れた教育方法の一 つである。われわれはこの方法を推進し,社会貢献活動 により学生の豊かな心を育て,心優しい技術者を世に輩 出するための努力を続けたい。 i「社会貢献活動」履修全学生および実習受入先に配 布される「社会貢献活動 授業案内」2002 年度2005 年 度参照。 ii アリストテレス『政治学』1252b27-1253a10 を参照。 iii 長沼 豊『市民教育とは何か』,ひつじ市民新書 P.165を参照。 iv中留武信,倉本哲男「学校と地域を結ぶカリキュラ ム開発の新たな展開—米国のサービスラーニングに焦点 をあてて—,『九州大学大学院教育学研究紀要』2001, 第 4号 1–33, P3 を参照。 v上掲書 P2 を参照。

viKay, Cathryn Berger M.A. The Complete Guide to Service

Learning vii2001 年 11 月 29 日 朝日新聞朝刊「ボランティア論 講義−山谷で医療ボランティア 生き方教えられる」掲 載。表 2 を参照。 viii2001 年 12 月 12 日,朝日新聞朝刊に「湘南工科大 学 社会貢献単位に」記事掲載。表 2 を参照。 ix 以下,山本圭一「重い障害をもつ人たちと日中生活 から生まれたネットワーク—湘南工科大学との連携から 築かれたもの—知的障害者福祉研究『さぽーと』N. 593, 2006年 P. 52–59.を参照。 x 柳田博明,山吉恵子『テクノデモクラシー宣言』丸 善ライブラリー,1998 年を参照。 xi2003 年 5 月,タウンニュース藤沢版「人物風土記 機械工学科 4 年川端隆太−ボランティアの枠をはずした い」記事参照。 参 考 文 献 アリストテレス『政治学』,岩波書店

Kay, Cathryn Berger M.A. The Complete Guide to Service

Learning 中留武信,倉本哲男「学校と地域を結ぶカリキュラム開 発の新たな展開—米国のサービスラーニングに焦点 を あ て て —,『 九 州 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 紀 要 』 2001, 第 4 号 1–33 長沼 豊『市民教育とは何か』,ひつじ市民新書 柳田博明,山吉恵子『テクノデモクラシー宣言』丸善ラ イブラリー,1998 年 山本圭一「重い障害をもつ人たちと日中生活から生まれ たネットワーク—湘南工科大学との連携から築かれ たもの—知的障害者福祉研究『さぽーと』N. 593, 2006年 P. 52–59 朝日新聞 2000/5/22 朝刊,2000/12/26 朝刊,2001/11/3 朝 刊,2001/11/29 朝刊,2001/12/12 朝刊 神奈川新聞 2000/11/4 朝刊,2001/2/10 朝刊,2001/3/11 朝刊 毎日新聞 2001/3/10 朝刊,2001/3/10 朝刊 タウンニュース藤沢版 2003/5

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