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23 1 Section ( ) ( ) ( 46 ) , 238( 235,238 U) 232( 232 Th) 40( 40 K, % ) (Rn) (Ra). 7( 7 Be) 14( 14 C) 22( 22 Na) (1 ) (2 ) 1 µ 2 4

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Section 1.1

はじめに

私たちが住む地球環境は様々な起源をもつ放射線に常時さらされている.地球上の放射線は,自然界 にもともと存在する 自然放射線 と人によって作り出された 人工放射線 に大別される. 自然放射線には,地球内部,岩石・土壌,建材,空気等に含まれている天然放射性同位元素1がより 安定な元素に変わる (放射性壊変) 時に放出される放射線と,地球外に起源をもつ放射線 (宇宙線) があ る.天然放射性同位元素には,原始放射性核種と宇宙線起源核種がある.原始放射性核種は,地球の年 齢 (約 46 億年) と同程度の半減期2を持つ核種とその娘核種3で,ウラン 235, 238(235,238U),トリウム 232(232Th),カリウム 40(40K, 天然カリウム中に 0.0118% 存在),ラドン (Rn),ラジウム (Ra) 等がある. 宇宙線起源放射性核種は,宇宙線が地球上の物質と衝突して作られる核種で,ベリリウム 7(7Be),炭素 14(14C),ナトリウム 22(22Na) 等がある.宇宙線には超新星爆発等の天体現象で作られた高エネルギー の放射線 (1 次宇宙線) とこれが上層大気と衝突して作られた放射線 (2 次宇宙線) がある.1 次宇宙線の ほとんどは大気中で停止するため,地表では主にµ 粒子や中性子等の 2 次宇宙線が観測される.地球環 境中には常にこれらの自然放射性同位元素や宇宙線が存在しており,人類を含む生物全体はその影響を 長期間にわたり受けてきた. 私たちをとりまく物質を構成する原子核の多くは,星の中で起きる熱核融合反応で作られた.太陽な どの主系列星では,水素原子核 4 つが融合して陽電子 2 個とニュートリノ (中性微子)2 個を放出して, ヘリウム 4(4He) 原子核が作られる.炭素 12 はヘリウム 3 個の核融合反応で作られ,酸素 16 は炭素 12 とヘリウムの核融合反応で作られ,鉄 56(56Fe) は,シリコン燃焼4で作られたニッケル 56(56Ni) が放射 線性壊変をすることで作られたと考えられている.235U,238U,232Th 等は,超新星爆発で発生した多 量の中性子を原子核が吸収して中性子過剰な重元素が作られ,これが放射性壊変を繰り返して作られた 1原子の中心には正の電荷をもつ原子核があり,そのまわりを負の電荷をもつ電子 (電荷−e) が運動している.原子核は陽子 (電荷+e) と中性子 (電荷 0) から構成されている.陽子数 (=原子番号)Z と中性子数 N の和 A は質量数と呼ぶ.原子の化学的性質 は電子の配置で決まるため,原子番号が同じ原子はほぼ同じ化学的性質をもつ.原子番号で分類された原子種を元素とよぶ.酸 素 (原子番号 8) には質量数 16,17,18 のものが自然界に存在する.このように元素が同じでも質量数 A の異なった核種を同位 元素 (同位体) と呼ぶ.質量数 13∼15, 19∼24 の酸素は短時間であれば存在できるが,しばらくすると放射線を放出してより安定 な原子核に変化する.放射線を発生する能力 (放射能) をもつ同位元素を放射性同位元素と呼ぶ.同位元素を区別する場合,元素 名の直後に質量数を書くか,元素記号の左上に質量数を書く.質量数 16 の酸素は,酸素 16 又は16O と書く.放射性同位元素の 14O,15O は,星の燃焼過程 (CNO サイクルや hot-CNO サイクル) に関係するため太陽より重い主系列星の中には存在するが,地 球上では人工的に作らない限り存在しない. 2放射性同位元素の数が半分になるまでの時間.参考セクション [1.4.2] 参照. 3放射性核種が放射性壊変をすることで作られた核種. 4シリコン 28 は光 (ガンマ線) を吸収してマグネシウム 24 とヘリウム 4 に分解する.マグネシウム 24 も光を吸収し,ネオン 20 とヘリウム 4 に分解する.このヘリウム 4 を別のシリコン 28 と融合し硫黄 32 が作られる.さらにヘリウム 4 と融合するこ とで,アルゴン 36,カルシウム 40,チタン 44,クロム 48,鉄 52,ニッケル 56 の順に合成される.ニッケル 56 は束縛エネル ギーが最大なため,これ以上にヘリウム 4 と融合することはできない.

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元素である.宇宙空間をただよう星間物質 (塵) には安定な元素だけでなく,放射性同位元素も多量に含 まれている. 地球が誕生した時,宇宙塵に含まれた放射性同位元素が地殻等にとりこまれた.半減期の短い放射性 同位元素は壊変し尽くし,今日ではほとんど残っていない.地球の年齢 (約 46 億年) と同程度の半減期 を持つ核種235U(半減期約 7 億年),238U(半減期約 45 億年),232Th(半減期約 141 億年)や40K(半 減期約 13 億年)は今日なお多く自然環境に存在している.これらは原始放射性核種と呼ばれ,大地の 放射線の発生源になっている.これらの原始放射性核種は大地の中で偏在しているため,自然放射線レ ベルは地域によって大きく異なる5 人工放射線は科学技術の進歩や社会情勢の変化に伴い生まれてきたものであり,原子炉や原子力発電 所,原子力兵器,加速器などにより直接的または副次的に生成されている6.人工放射線は目的に応じ て医療,産業,研究などに有効利用されている7.その一方で,使用済み放射性廃棄物が処理できない まま集積されており,その取り扱いが社会に対する大きな負荷になりつつある. 自然放射線や人工放射線はさまざまな分野で研究されてきた.しかし,一見独立した現象のように見 えることがらが,実は互いに宇宙・地球規模的きずなを共有している.そのため,融合科学的に放射線 を測定し捕えていくことが必要である.この実験では環境放射線をどのように測定し捕えていくかを学 ぶことにする.

●●  1.1.1 放射線とはなにか ●●

放射線とは高エネルギーの電磁波(光子),素粒子,原子核を総称したものである.放射線が物質中 を通過するとき,2次的な効果までを考えれば,ほぼすべての放射線は物質内の原子を電離する作用を 持っている.直接的に電離作用を持つ放射線のことをその性質をあらわす意味で特に 電離放射線 と呼 ぶ.地球環境における代表的な放射線であるアルファ(α)線,ベータ(β)線,ガンマ(γ)線も電離 放射線の一種である.このほか地球環境で観測される放射線にはエックス(X)線,宇宙線のなかに含 まれる寿命の短い素粒子(µ 粒子)や中間子などがある.また地球上ではほとんどが人工的に作られて いる中性子線も代表的な放射線のひとつである.中性子線は直接的には電離作用がないことから,中性 子線の物質に対する透過力は他の放射線に比べて非常に高い. 放射線は,不安定な原子核 (放射性同位元素) が壊れる時に発生する.例えば,自然界に存在する232Th は 140 億年の半減期でラジウム 228(228Ra) に壊れる.その際,約 4 MeV のアルファ線が放出される8 ラジウム 228(228Ra) は 5.8 年の半減期で,アクチニウム 228 (228Ac) に崩壊する.このとき,ベータ線 (電子) と反ニュートリノ (ニュートリノの反粒子) とガンマ線が放出される.アクチニウム 228(228Ac) も 不安定なため,崩壊を繰り返して,最後には,安定な鉛 208(208Pb) になる. 私たちは自然放射線や人工放射線に常時さらされながら生活をしている.背景のように存在する放射 線という意味で,これらを バックグラウンド と呼ぶ.1年間に私たちが受ける放射線総量を,放射線 の人体に対する線量の単位であるシーベルト [Sv] であらわすと,1 ミリシーベルト [mSv] から 2 ミリ シーベルトの間である9.同量の放射線量を,建物などから大気中に放出されるラドン10から受けてい 5参考セクション [1.4.5] を参照. 6参考セクション [1.4.8] を参照. 7人工放射線は,非破壊検査,化学分析,化合物の合成,厚みの測定,殺菌処理,品種改良,各種病気の診断,ガン治療など に利用されている.

8MeV はエネルギーの単位で 100 万 eV(電子ボルト) の意味である.1 eV は電子 (電荷 e[C]) が 1 V の電位差で加速/減速され

る運動エネルギーであり,MKS 単位系のエネルギーの単位 J とは,1 eV=1.602 × 10−19J の関係がある.

9線量の単位はシーベルト (sievert, Sv) であり,X 線,ガンマ線の場合,1 Sv= 1 J/kg である.放射線の単位の定義について

は,参考セクション[1.4.4]を参照.

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 図 1.1: 平均的な日本人が1年間に環境から受けるおおよその放射線量.比較のために平均的な米国人 が1年間に環境から受ける放射線被曝量の内訳も示してある.放射線被曝量は社会状況や住環境に大き く左右されていることがわかる. るが,その量は地理的な位置および建物の種類などの条件により異なる.いろいろな放射線発生源から 日常生活で人間が被曝する割合を,日本人について調べられたものを例として図 1.1 に示す11.灰色の 部分が自然放射線で全体のおおよそ 35%あり,放射線被曝の量の大部分は自然放射線と医療用放射線に 起因していることがわかる.比較のために平均的な米国人の被曝も示す12.これによると米国人の年間 被曝量は約 3.8 mSv であり,被曝総量は日本人の平均値と大きくは違わない.しかしラドン被曝は約 2 mSv で日本人の 5 倍あるのに対し,医療被曝は約 0.6 mSv で日本人の 1/4 にすぎない.また標高の高い 地域に住む人や日常的に航空機を利用したりそこで働く人は,宇宙線による被曝量が相対的に高いこと も知られている.このように社会状況や居住環境が年間被曝量の内訳に影響する.

Section 1.2

実験の原理

●●  1.2.1 物質による放射線の吸収 ●●

自然放射線として検出されるアルファ線はヘリウム原子核,ベータ線は電子(陽電子),ガンマ線は 電磁波である.放射線が物質を通過するときの吸収のされ方は,放射線の質量・電荷・エネルギー等の 違いにより,多少異なる. アルファ線,ベータ線,μ粒子線のように電荷を持った放射線 (荷電粒子線) が物質中で失う運動エネ を放出してポロニウム 218(218Po) に変わる.218Po は 2 本のアルファ線と 2 本のベータ線を出して鉛 210(半減期 22 年) に壊変 する.更に1本のアルファ線と 2 本のベータ線を放出して安定な鉛 206 に変わる.参考セクション [1.4.6] を参照 11日本人の環境放射線被曝線量(mSv)[「生活環境放射線」原安協 - 231,1992 より ]

12United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Bomb Radiation. Annex E: Medical radiation exposures. In Sources

and Effects of Ionizing Radiation. New York, United Nations, 1993. p 249 (国際連合原子放射線影響科学委員会補遺E:医用放射線

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ルギーの割合は,おおよそ放射線の持つ電荷の二乗に比例し速度の二乗に反比例することが知られてい る13. 荷電粒子線が物質に入射するとその運動エネルギーをしだいに失っていき最終的には静止する.物質 内に入ってから最終的に静止するまでの距離の平均値を飛程(レンジ)と呼ぶ.レンジは荷電粒子の持 つエネルギーの関数になっており,通常,密度 [g/cm3] と長さ [cm] の積の g/cm2で表示される.アル ファ線の場合,ベータ線に比べるとその質量がはるかに大きいため同程度の運動エネルギーではその速 度が小さい.従ってアルファ線の飛程はベータ線に比べるとはるかに小さい. ガンマ崩壊は,励起状態にある原子核が電磁相互作用により,より低い(安定な)状態に遷移する現 象である.これら2つの状態のエネルギー差により光子が生成され,その光子が原子核の外に出るとガ ンマ線と呼ばれる.ガンマ線はエネルギーの高い電磁波(光子)であり,物質中で光電効果,コンプト ン散乱,電子・陽電子対生成などの電磁相互作用14により吸収および散乱される.その結果,ガンマ 線強度はしだいに弱くなる.吸収体に入射する前のガンマ線強度が I0のとき,厚さ x の吸収体を通過 した後の強度は, I= I0e−µ(Eγ)x≡ I0exp { −µ(Eγ)x } , (1.1) のように指数関数であらわすことが出来る.ここでµ(Eγ) はガンマ線の吸収係数と呼ばれ,物質の種類 やガンマ線のエネルギーによって決まる量である. 図 1.2: 物質によるガンマ線の吸収.

●●  1.2.2 放射線検出器 ●●

放射線が物質中を通過するとき主として電磁相互作用により,放射線はそのエネルギーの一部または 全てを失う.この失われたエネルギーを最終的に電気信号に変換することにより,放射線を検出するこ とができる.大部分の検出器はこのような仕組みを利用して放射線を測定する.一般的には放射線によ る電離作用を利用する場合が多いが,放射線の種類やエネルギーにより,適切な測定方法と測定装置を 選択する必要がある. この課題では,比較的手軽で便利な放射線検出器として広く使用されてきた NaI(Tl) シンチレーショ ン検出器を用いて放射線を測定する. 13ベーテ・ブロッホの公式によると放射線のエネルギー損失の割合は,−dE/dx ∝ (Z/A)(z/v)2, で与えられる.ここで Z:吸収体 の原子番号,A:吸収体の質量数, z:放射線の原子番号,v:放射線の速度, dE/dx:吸収体の単位厚さ当りのエネルギーの変化. 14光電効果および電子・陽電子対生成は物質のガンマ線の吸収プロセス,コンプトン散乱は物質によるガンマ線の散乱プロセス で,反応を起こす割合は量子力学で定量的に計算できる.これらの反応を起こす割合は物質の原子番号を Z とすればそれぞれ, 光電効果:∝ Z5,コンプトン散乱:∝ Z,電子・陽電子対生成:∝ Z2の関係がある.

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図 1.3: シンチレーション検出器 シンチレーション検出器 シンチレーション検出器は現在最も一般的に使用されている放射線検出器のひとつである.シンチ レーション検出器では,シンチレーターと呼ばれる物質内で放射線が失ったエネルギーを蛍光(シンチ レーション)に変換し,それを光電子増倍管と呼ばれる光増幅器により増幅し,電気信号にする.この 検出器の特徴は以下のようになる. • 放射線を検出する物質量が他の放射線検出器(例えばガイガー・ミュラー計数管)などに比較す ると大きいためガンマ線検出効率が高い. • 放射線がシンチレーター内で失ったエネルギーに比例する信号を得ることが出来るためエネルギー 測定が出来る. • 検出器の応答時間15が早いため高計数の測定が出来る. • 多くのシンチレーターでは粒子により発光成分や応答時間が異なっているため,ある程度放射線 の種類を弁別することが可能である. シンチレーターとして使用することが出来る物質は数多く存在する.荷電粒子の測定には物質量が小さ く加工が容易な有機シンチレーターがよく使用される.大きな物質量が必要なガンマ線の測定には様々 な元素の組み合わせが可能な無機シンチレーターが用いられる.この課題ではガンマ線測定で広く使用 されている沃化ナトリウム (NaI(Tl)) シンチレーターを使用する.

Section 1.3

測定

●●  1.3.1 使用器具 ●●

測定器: 1. ガンマ線シンチレーション・サーベイメータ:TCS-172 2. ストップウォッチ 15検出器の応答時間とは,通常検出器に放射線が入射して電気信号として出力されるまでの時間をいう.応答時間が短いほど より多くの信号を処理することができる.一般的なシンチレーション検出器の応答時間は数 µ 秒以下である.

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3. 手動式数取器 4. 吸収板 (アルミ板,鉛板,岩石) 各 5 枚 5. 鉛コリメータ 6. 鉛キャップ 7. ヘッド固定用台 8. スケール付き台 9. 遮蔽カバー ガンマ線源: • 60Co 密封線源16 • 137Cs 密封線源17 実験室周辺地図: 授業中に配布する. 各自が用意するもの: 1. グラフ用紙(方眼紙,片対数方眼紙) 2. 関数電卓 注意事項   • サーベイメータのヘッド(検出器部のこと)はこわれやすいので,ていねいに取り扱う.ぶっ つけたり,落としたりするようなことのないよう慎重に扱う. • サーベイメータは水や直射日光の当らないようにして使用し,必ず所定の場所に返却保管 する. • 注意書あるいは訂正が別に示されている場合にはそれに従う. • 線源は必ず借り出しノートに記入の上,保管庫から出し入れする. • 線源は落したりしないように十分注意して扱う. • 実験が終了したら電源スイッチを切る.  

●●  1.3.2 ガンマ線用シンチレーション・サーベイメータの使い方 ●●

ガンマ線用シンチレーション・サーベイメータは TCS-172 を使用する.サーベイメータは

16コバルト 60(60Co) は,5.27 年の半減期で60Ni(ニッケル 60) の 2.5058 MeV 励起状態にベータ崩壊(参考セクション [1.4.1]

を参照)をする.この状態は不安定な為,非常に短い時間で 1.173 MeV, 1.332 MeV の 2 本のガンマ線を放出し60Ni の基底状態

(安定状態) に遷移する.

17セシウム 137(137Cs) は,30.07 年の半減期で137Ba(バリウム 137) の 0.662 MeV 励起状態にベータ崩壊をする.この状態は

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0 1 2 3 0 2 4 6 8 10 0. 3 1 3 10 30 µSv/h s-1 F UNC TION MEMORY TIME CONST Sv/h S-1 SURVEY METER 㻲㼁㻺㻯㼀㻵㻻㻺 㻻㻺㻛㻻㻲㻲 㻹㻱㻹㻻㻾㼅 図 1.4: ガンマ線用シンチレーション・サーベイメータ (TCS-172) • 本体測定部, • 検出器部(シンチレーションプローブ,ヘッド), で構成されている.測定量はシーベルトで表示され,放射線の強さにより 0.3 マイクロシーベルト/時 (µSv/h)から,30 µSv/h まで,RANGE を切換えて使用する.シンチレーション・ヘッドは,注意事項 で述べたように衝撃に弱いため,通常は格納して使用する.その際ロックされていることを確認するこ と.また,本体測定部を立てて使用してはいけない.

実験 1 環境からの放射線量の測定

実験室周辺に 15 箇所の測定点を選び,シンチレーションサーベイメータで環境放射線レベルを測定 する. 1. 実験室周辺地図に測定点を記録し,サーベイメータを用いて環境放射線レベルを測定する.指針が ゆらぐがその平均値を読み取り記入する.測定条件,例えば「壁面から 5 cm で床から 1 m」等々, も出来るだけ詳しく記録する.また貯蔵箱や樹木など,目印となるものや特別の測定対象も図に 可能な限り記入する. 2. 測定値のうちの最も適切と思われる自然放射線線量の値を用いて1年間の自然被曝線量を推定す る.通常日本人は図 1.1 に示されているように年間約 4 ミリシーベルト程度の放射線を浴びてい るといわれている.この値と測定した値とを比較し,違いなどについて考察する.

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3. 測定点1ヶ所を決め,そこでの放射線を計数する.サーベイメータのブザーを [ON] にし 10 秒間 に何回音が鳴るか18という測定を 20 回以上 繰り返し, • 実験結果の表, • 横軸に測定試行回数,縦軸に 10 秒間に鳴った回数を記したグラフ, • 度数分布図.横軸に鳴った回数,縦軸にその事象が起きた回数を記したグラフ19 をつくる.得られたデータについて,10 秒間に鳴った回数はどの程度ばらついているか,ばらつ く理由について考察する.(ヒント: 1.4.2 章および 1.4.3 章参照) 時間の測定と音の計数はそれぞれ ストップウォッチおよび手動式計数器を使用する.

実験 2 放射線強度と距離の関係

ガンマ線源 (線源) を用いて放射線強度と距離の関係を測定する. 1. シンチレーションサーベイメータのシンチレーションヘッドを取り外し,図 1.5 のように固定す る.線源をおかず,バックグラウンド (BG, 1.1.1 章参照) の強度が何マイクロシーベルト/時 かを 測定する.最低5回は繰り返し測定し,平均値を計算する. 2. 線源貸し出しノートに必要事項を記入したうえで,線源保管庫から線源 (60Co または137Cs) を借 り出す.線源はプラスティックのケースに収められている.ケースを開いてはいけない.使用し た線源の核種, シリアル番号をレポ−トに書く. 3. 線源と遮蔽カバーを図 1.5 のように配置する.線源とシンチレーションサーベイメータの距離を 5 cm, 10 cm, 15 cm, 20 cm, 25 cm としたときの放射線強度を測定する.各々の場所で 5 回づつ測 定し,平均値を計算する. 4. 測定値からバックグラウンドの強度を引いたものが,線源から放出されたガンマ線強度である. 実験データを表 1.1 のようにまとめ,横軸に距離,縦軸に強度を正方眼紙にプロットする. 5. 縦軸に距離,横軸に強度の平方根の逆数を正方眼紙にプロットする.放射線強度 I と線源とシン チレーションサーベイメータの距離 L にはどのような関係があるかを考察する. 6. 線源からの距離 L の場所での放射線強度 I を計算する関数を導出する. 7. この関数で表せる理由を考察する.(ヒント:線源を中心とした半径 50 cm の球面と半径 1 m の球 面を考える.半径 50 cm の球面上の面積 1 cm2の曲面を貫くガンマ線の本数と半径 1 m の球面上 の面積 1 cm2の曲面を貫くガンマ線の本数はどのような関係にあるか考えるとよい.) 18音は検出された放射線の量に比例した回数鳴るようになっている.放射線検出と音は1対1に対応しているわけではない. 19参考セクション [1.4.3] 参照

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図 1.5: 放射線強度と距離の関係の測定配置図

実験 3 放射線の吸収

線源を用いて放射線の物質での吸収を測定する. 1. 線源とシンチレーションサーベイメータの距離を L= 20 cm に固定する.測定では細くしぼったガ ンマ線を利用するため,厚さ 5 cm の鉛に穴をあけたコリメータを図 1.6 のように置く.低エネル ギーのガンマ線や X 線の影響を防ぐため,サーベイメータのヘッド部に鉛キャップを取り付ける. 2. 線源とシンチレーションサーベイメータの間に吸収板をはさまないで放射線強度を測定する.つ ぎに吸収板として,アルミ板を 1 枚はさみ,放射線強度を測定する.(各々の測定は5回繰り返し, 平均値を求める.) アルミ板が 5 枚になるまで増やし,放射線強度を測定する.吸収板の厚さは ノギスで測定する.(ノギスの使用方法は付録 A 参照.) 3. 吸収板として鉛板を同様に 5 枚になるまで増やしながら,放射線強度を測定する. 4. 吸収板として岩石を同様に 5 枚になるまで増やしながら,放射線強度を測定する. 5. 線源保管庫に線源を返却する. 6. 吸収板を取り外し,バックグラウンド (BG) を測定する. 7. 表 1.2 のように測定結果を表にまとめる.

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表 1.1: 放射線と距離 距離 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 平均値 平均値-BG BG 0.13 0.14 0.12 0.14 0.16 0.14 ————– 5.0 cm 9.7 9.8 9.8 9.8 9.8 9.78 9.64 10.0 cm .... .... .... .... .... .... .... 15.0 cm .... .... .... .... .... .... .... 20.0 cm .... .... .... .... .... .... .... 25.0 cm .... .... .... .... .... .... .... (単位: µSv/h) 8. 測定値からバックグラウンドを引いた値を y 軸に,板の厚さ [cm] を x 軸に取り片対数グラフにプ ロットする. 9. データを近似できる直線を引き,アルミ,鉛,岩石のデータよりそれぞれのガンマ線の吸収係数 [cm−1] を求める.(片対数グラフから傾き (吸収係数) を求める方法は付録 A を参照) 10. ガンマ線の強度を 1/50 にしたい.どの程度の厚さのアルミ,鉛,岩石を間にはさめばよいか.吸 収板毎に厚さ [cm] を求めなさい. 問題 1. 実験 2 で測定したバックグラウンド強度と,実験 3 で測定したバックグラウンド強度の間には若 干の相違がある.この理由を考察しなさい. 2. 遮蔽カバーは真ちゅう (銅と亜鉛の合金) で作られている.遮蔽カバーが実験で果たす役割を考察 しなさい. 3. 線源を使用する時,人間がうける放射線量を少なくするにはどうすればよいか考察しなさい. 選択問題 1. 線源からの放射線強度がバックグラウンド強度と等しくなるのは線源からどれだけ離れた場所か, 計算しなさい. 2. 実験 2 で,縦軸に距離,横軸に強度の平方根の逆数をプロットした.このグラフは厳密には原点 を通らない.この理由を考察しなさい.

●●  1.3.3 レポートのまとめ方 ●●

実験は,目的,原理,方法,結果,考察,結論をレポートとしてまとめることにより完結する.レ ポートは個性や内容の独自性が大切であると同時に,レポートの内容が的確に読み手に伝わらなくては

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図 1.6: 放射線の吸収測定の配置 ならない.著者と読者が内容を共有しやすくするために,レポートには共通の形式があり原則としてこ の形式に従う必要がある.形式については,テキスト p. 10 の「レポートの形式」を参照すること. この原則に従って,放射線測定を受講した場合のレポートのまとめ方を以下に要約する. • 「放射線とは何か?」,「なぜ放射線のことを知る必要があるのか?」を目的で述べる. • 「放射線を測定する手段はなにか?」を原理で述べる. • 「どのような方法で測定したのか?」を方法で述べる. • 「どのような結果が得られたのか?」を結果で述べる. • 「測定したデータに関する考察」,「実験の課題・設問に関する考察」を考察で述べる(計算過程 も明記する). • 「 簡潔な実験全体についてまとめ」を結論で述べる(感想は書かない). 基本的な形式にのっとりながら,以上のことを 簡潔 に 自分の言葉 でレポートにする.書く際の注意点 としては次のようになる. • 「図」や「表」を効果的に使用する.このとき図や表の説明や凡例,測定値,単位等を読み手に わかるようにきちんと示す. • 測定値には必ず単位をつけ,実験データには出来る限り,根拠を明示した誤差を記入する.

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表 1.2: 放射線の吸収 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 平均値 平均値-BG BG 0.12 0.13 0.11 0.13 0.15 0.13 ——— アルミ板 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 平均値 平均値-BG 0 枚 (0.000cm) 0.61 0.62 0.63 0.64 0.65 0.63 0.50 1 枚 (0.990cm) .... .... .... .... .... .... .... 2 枚 (1.980cm) .... .... .... .... .... .... .... 3 枚 (2.970cm) .... .... .... .... .... .... .... 4 枚 (3.960cm) .... .... .... .... .... .... .... 5 枚 (4.950cm) .... .... .... .... .... .... .... 鉛板 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 平均値 平均値-BG 0 枚 (0.000cm) 0.67 0.66 0.65 0.64 0.63 0.65 0.52 1 枚 (0.500cm) .... .... .... .... .... .... .... 2 枚 (0.950cm) .... .... .... .... .... .... .... 3 枚 (1.450cm) .... .... .... .... .... .... .... 4 枚 (1.950cm) .... .... .... .... .... .... .... 5 枚 (2.450cm) .... .... .... .... .... .... .... 岩石 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 平均値 平均値-BG 0 枚 (0.000cm) 0.62 0.60 0.59 0.61 0.63 0.61 0.48 1 枚 (1.010cm) .... .... .... .... .... .... .... 2 枚 (2.020cm) .... .... .... .... .... .... .... 3 枚 (3.030cm) .... .... .... .... .... .... .... 4 枚 (4.040cm) .... .... .... .... .... .... .... 5 枚 (5.050cm) .... .... .... .... .... .... .... (単位: µSv/h) • データには必ず実験条件およびそれらに対する考察を記す. • 教科書やテキスト,参考書からの引用はレポートの中で明らかにする.

Section 1.4

参 考

●●  1.4.1 放射線の発見と正体 ●●

1896 年フランスのヘンリー・ベクレルはウランの化合物から,何か写真乾板に感光する放射線が出 ていることを発見した.その後ベクレルの発見がピエール・キュリーとマリー・キュリーによって受け

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電荷 (電荷/質量),エネルギーを測定できる.自然放射性同位元素から放出される放射線は,正の電荷を 持つ放射線,負の電荷を持つ放射線,電気的に中性な放射線に分類できる.これらはアルファ線,ベー タ線,ガンマ線と名前がつけられた.その後の研究で,それぞれヘリウム原子核,電子,光子が正体で あることが分かった.後に,正の電荷を持つベータ線 (陽電子線) や電気的に中性な中性子線等の発見さ れた.これらの放射線の正体と性質を次に示す. アルファ線 アルファ線は,2個の陽子と2個の中性子で構成されているヘリウム原子核がその正体で あり,自然界ではラジウム, プルトニウム, ウラン, ラドンなどの放射性原子核の自然崩壊によっ て発生する.ラジウム 226(原子番号 88)は, ラドン 222(原子番号 86)とヘリウム原子核にア ルファ崩壊 (226Ra222Rn+4He) する.現在アルファ崩壊する原子核は 400 以上発見されており, それらの寿命は 10−16秒 (8Be) から 1017年 (204Pb) にわたっている.アルファ線は他の放射線に比 較して質量がはるかに大きく,正電荷を帯びている.したがって自然界で作られるアルファ線は 電離作用が大きく,物質中でのエネルギー損失も大きい.このためアルファ線は物質中では短い 距離 (1 mm 未満) しか進むことができない.紙1枚程度のものがあればアルファ線を止めること ができる. ベータ線 ベータ線とは原子核のベータ崩壊によって発生する電子またはその反粒子 (陽電子) のことで ある.ベータ崩壊は原子核内の中性子 (n) が陽子 (p) に変換したり,陽子が中性子に変換したりす る現象であり,前者では負の電子 (e) と反ニュートリノ (¯νe) が放出され,後者では正の電子 (e+: 陽電子) とニュートリノ (νe) が放出される.これらの粒子の中で,νe, ¯νeは電荷を持たないため通 常の検出器では測定が困難である.ベータ線は,トリチウム (3H)20,炭素 14(14C),燐 32(32P) などの放射性同位元素の自然崩壊によって発生する.ベータ線は,そのエネルギーに応じて物質 中での透過距離は異なり,トリチウムの場合は1 mm 未満,燐 32 では約1 cm の水で止めること ができる. ガンマ線 ガンマ線は,その波長が紫外線よりはるかに短い(おおよそ紫外線の 100 万倍程度のエネル ギーをもっている)電磁波のことをいう.自然界において,ガンマ線はコバルト 60(60Co)やセ シウム 137(137Cs)などの放射性同位元素の原子核崩壊から発生する.ガンマ線は,電荷をもた ないため直接的な電離作用はなく,物質に対する透過力が,アルファ線やベータ線に比べて大き いのが特徴である. X線 X線もガンマ線と同じように電磁波である.通常X線は,そのエネルギーがガンマ線のおおむね 1/1000 程度のものをいう.X線は放射性物質の自然崩壊に伴って発生することもあるが,高速の 電子を金属等に衝突させて人工的に発生させることもできる. 中性子線 中性子はウランやプルトニウムなどの重い放射性同位元素が核分裂するさいに発生する.中 性子は電荷を持たないため直接的な電離作用を起こさない.物質中で中性子は,直接原子核と反 20三重水素:1個の陽子と2個の中性子で出来ている水素原子核の同位体である.

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応を起こし,散乱によりそのエネルギーを失ったり原子核に吸収されることにより消滅する.人 体に中性子が入ると,体内にある水素原子核(陽子)と散乱し,陽子が弾き飛ばされて体内で電 離を引き起こす.この陽子の電離作用により体内細胞や遺伝子に直接損傷を与えることがある.

●●  1.4.2 原子核崩壊の特徴 ●●

単位時間に放射性原子核の崩壊する数はそのとき存在する放射性原子核の数に比例する.いま N 個 の放射性原子核があり,その崩壊確率をλ とすると21,毎秒崩壊する数の期待値−dN/dt は,dN dt = λ · N, (1.2) で与えられる.t= 0 における放射性原子核の数を N0とすると, N= N0e−λt= N0exp (−λt), (1.3) となる. 放射性同位元素の崩壊は,定数λ で決まるが通常この定数の逆数 τm= 1/λ を平均寿命という.平均 寿命を経過した元素は, N(τm)= N0e−λτm = N0exp(−λτm)= N0 e = 0.3679N0, になる.放射性同位元素の崩壊に関してしばしば用いられる言葉として半減期 T1/2がある.半減期は, 元の元素数が半分になる時間であり, N(T1/2)= 1 2N0= N0e −λT1/2 = N 0exp(−λT1/2), と書ける.従って T1/2= 1 λloge2= τmloge2= 0.6931τm, である.図 1.7 に放射性同位元素の崩壊曲線を示す. 放射性核種から放出される放射線の強度 I は上式より計算できる.t= 0 での放射線強度を I0とする と,時刻 t における強度は I= I0e− 0.693t T1/2 = I0exp ( −0.693t T1/2 ) となる.たとえば60Co の半減期は 5.26 年だから,1 kBq の60Co 線源は 5.26 年後 500 Bq になる. 年代測定への応用 年代測定は宇宙・地球化学的な観点から重要であるばかりでなく,考古学的な観点からも重要である. 放射性核種はそれぞれの崩壊定数λ で定まる速さで壊変している.原子核の数 N は式 (1.3) に従って 減ってゆく. 21一般にλ は,元素の種類により決まった値でありいくつかの崩壊様式が混在している場合が多い.この場合 λ はそれぞれの 崩壊様式の和で λ = λ1+ λ2+ λ3+ ..., のように表される.

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図 1.7: 半減期と平均寿命 ある系が与えられその系について放射性核種の出入りがないとすれば,この核種の放射線量を測定す ることによって系の置かれた時間的尺度が得られる.これを「壊変時計」と呼ぶことができる. 壊変定数は例外的な場合を除き一定と見なせる.ある事件 A が起こったときの放射性核種の数を nA とし,それから t 時間経過したときの放射性核種の数を nBとすると,この時間の間に放射性核種の出 入りがなければ, t=1 λloge nA nB で t が求められることになる.これはきわめて簡単な関係であり,これを応用した14C 年代測定,40K-40Ar 年代測定,87Rb-87Sr 年代測定,238U-206Pb 年代測定などの年代測定法が開発されている. 崩壊の確率と統計誤差 N 個の核のうち特定の 1 個が t 秒後に残る確率は exp(−λt) である.t 秒後に崩壊する確率は (1−exp(−λt)) になる. N 個の核のうち,任意の m 個が崩壊し,残りの (N− m) 個が残存する確率は, (1− exp(−λt))m(exp(−λt))N−m, (1.4) である. 一方,N 個から m 個をえらび出す仕方の数は, NCm= N! m!(N− m)!, (1.5)

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である.したがって,t 秒間に m 個の崩壊が起こる確率 W(m) は, W(m)= N! m!(N− m)!(1− exp (−λt)) m(exp (−λt))N−m, (1.6) となる. t 秒間に起こる崩壊数の期待値(多数回観測における m の平均値)Nλt = M と置き,書き換え ると, W(m) = 1 m!N(N− 1) · · · (N − (m − 1)) · (1 − exp (−M/N)) m(exp (−M/N))N−m, = 1 m!exp (−M) · N m(1 1 N)· · · (1 − m− 1 N )· (exp (M/N) − 1) m, (1.7) である.N が非常に大きな数であることにより,上式は次のポアソン分布の式 W(m)= M m m! exp (−M) (ポアソン分布式), (1.8) になる. このように,崩壊は確率の法則に従うので計数率は測定ごとに異なる値をとる.したがって,得られ た計数値にはその統計誤差,すなわち期待される標準偏差, σ = v t m=0 (m− M)2W(m)= √M, (1.9) を付記して計数の信頼度を明示することが必要となる.つまり測定値は m±√m と表される.標準偏差 を誤差として用いた場合,m が多数回測定の平均値 M のまわり±σ の範囲内におさまる確率は 68% で ある.

●●  1.4.3 ポアソン分布 ●●

実験を行ったとき測定値の誤差は,その誤りの度合いを表しているのではない.実験は測定される 量,測定器,実験者を含む大きな系で成り立っている.これらの中には小さな偶然誤差が多数存在し, 測定値の誤差はそれらの集合体であると考えられる.これらの誤差は,それぞれある範囲の中でランダ ムに決まる正負の値をもっており,測定のある瞬間ではその値は決まっていると考えられる.しかしそ のような測定を何回も繰り返すことにより,これらの誤差は互いに打ち消しあい真の値に近づいて行 くと考えられる.実験をする場合これらの誤差を出来るだけ小さくするために,測定器の精度を上げ 人為的な誤差の原因を排除するように努めることが出来る.しかし測定器の精度などが十分であって も観測する対象自身がおおきな誤差を含んでいる場合がある.放射線の崩壊がその例である.370 kBq の137Cs 放射線源 (半減期 30.07 年) について考えよう.この放射線源に含まれている137Cs 原子核は 3.7 × 105×30.07×365.25×24×60×600.693 = 5.1 × 1014個である.この放射線源では毎秒 3.7 × 105個の137Cs 原子 核が崩壊し,81.5%の割合で (毎秒 30 万個の) ガンマ線を放出する.このため原子核が崩壊した情報を 使ってつぎにどの原子核が次に崩壊するかを予測することは不可能である.したがって単位時間あたり の平均的な崩壊数を予想することは出来ても次にいつどの原子核が崩壊するかを知ることは出来ない. つまりどのように注意深く実験を行ったとしても,原子核の崩壊個数のゆらぎを減少させることは出来 ないことになる. いま 1 秒間に137Cs 原子核が崩壊する確率を p とすると p= 3.7×105 5.1×1014 = 7.3 × 10−10 ≪ 1 となり,1 秒 間に原子核が崩壊する可能性はほとんど無い.定量的に考えるため,137Cs 原子核を例として用いたが, ほとんどの放射線源で p≪ 1 は成立する.

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平均値 µ = np, を固定して n→ ∞,p → 0 とし確率を P(r, n, p) → P(r, µ) とした場合, P(r, µ) = lim n→∞,p→0 n! r!(n− r)! µr nr (1− µ/n)n (1− µ/n)r = lim n→∞,p→0 n(n− 1) · · · (n − r + 1) r! µr nr (1− µ/n)n (1− µ/n)r = lim n→∞,p→01(1− 1 n)· · · (1 − r− 1 n ) µr r! (1− µ/n)n (1− µ/n)r = µr r!e −µ, (1.11) である.従って P(r, µ) =e −µµr r! , (1.12) となる.これがポアソン分布の確率関数である.定義により r= µ は平均値になる.標準偏差は, σ2= ⟨r2⟩ − ⟨r⟩2, から求めることが出来る. ⟨r2⟩ = ∞ ∑ r=0 r2P(r, µ) = µ2+ µ, なので σ = √µ = √r, (1.13) になり,測定値は r± √r と表すことが出来る.

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ポアソン分布を計算してみよう   多数回観測における度数分布を関数電卓を用いて計算してみよう. [例題]50 回の測定を行い,その平均値が M= 3.2 であった.このときの度数分布をポアソン分 布で計算する. 式 (1.8) に従って m= 1 の場合の度数はポアソン分布式に測定回数 N = 50 を乗ずることによって 得られ, n(1)= 50 ·3.2 1 1! exp (−3.2) ≈ 6.52 である.同様にして,m= 2 の場合, n(2)= 50 ·3.2 2 2! exp (−3.2) ≈ 10.44 このようにして計算した結果をグラフにすると下図のようになる. ポアソン分布はコンピュータでも簡単なプログラムを作ることにより計算できる.興味のある人は やってみよう.  

●●  1.4.4 放射線の単位 ●●

放射線に関する国際単位は表 1.3 に掲げる. 表 1.3: 放射線に関する国際単位 量 単 位 記 号 表しかた 説 明 放射能 ベクレル Bq sec−1 1 秒間に 1 個の原子核崩壊を起す放射能 吸収線量 グレイ Gy m2· sec−1 放射線のイオン化作用によって,1 kg の物質に 1 J のエネルギーを与える吸収線量 線量 シーベルト Sv m2· sec−1 放射線が生物に与える影響を表す線量 このほかに慣習的に用いられてきた放射線に関する単位としては, • 放射能:キュリー (curie,Ci)   1 Ci = 3.7 × 1010/ sec = 3.7 × 1010Bq= ラジウム 1 g 当りの放射能. • 照射線量: ガンマ線や X 線が標準状態の乾燥空気 1 cm3当たリ 1 e.s.u.(静電単位)の正負イオ ン対を作れる強さであるとき,それら光子の照射線量を 1 R(レントゲン)と呼ぶ.

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中性子,エネルギーが 10 keV 以上 100 keV まで  10 中性子,エネルギーが 100 keV を超え 2 MeV まで 20 中性子,エネルギーが 2 MeV を超え 20 MeV まで 10 中性子,エネルギーが 20 MeV を超えるもの   5 アルファ粒子,核分裂片,重原子核 20 (出典: 「国際放射線防護委員会の 1990 年勧告」, ICRP publication 60, 1990) • 吸収線量: 放射線のイオン化作用により,1 g の物質に 100 erg のエネルギーを与えるとき,この 吸収線量を 1 ラド (rad) とよぶ.(1 rad= 0.01Gy)

• 線量: レム (rem)   1 rem=0.01 Sv がある.古い計測器や放射性同位元素にはいまだにこの表示が使用されている場合がある. 線量 放射線が生物におよぼす影響は,吸収線量 D が同じでも,放射線の種類やエネルギーによって異な る.吸収線量 D に,放射線の種類やエネルギーの違いによる生物学的効果の大きさを表す放射線荷重 係数 wR(表 1.4 参照) をかけたものが,線量 H= DwRである.放射線荷重係数 wRは放射線の水中にお ける衝突阻止能 Lの関数として定義される.線量の単位はシーベルト (sievert,Sv) である. 実効線量 人体が放射線を受けた時の影響は人体の組織や臓器により異なる.これを考慮して算出する線量を実 効線量とよぶ.実効線量 E は E=∑TwTHTと定義される.単位は線量と同じシーベルト (sievert,Sv) が 使われる.ここで,wT は組織・臓器 T の放射線感受性を考慮した組織荷重係数 (表 1.5 参照) である. HT は組織・臓器 T が受けた線量である.

●●  1.4.5 自然放射性同位元素の配分  ●●

地球が誕生した時,自然放射性同位元素は地球に均一に分布していた.やがて重力分離によって重い ものは中心部に沈み,軽い物は表面に浮かんだ.しかし,ウランやトリウムは実環境で軽い酸化物とし て存在することが多いので,ウラン鉱床などは大陸に集中して分布している.このように放射性核種は 花コウ岩質の地殻に濃縮するため,マントルに取り残される濃度は低い.しかし,マントルの体積を考 えるとその総量は無視できない.プレートの沈み込みに伴う火山マグマの上昇やマントル物質の上昇が 起きると,イオン半径の大きい放射性核種は鉱物結晶中に収まらず,マグマ溶液に留まってその表面に 達して固化する.そのため,海底火山の頂上部では,しばしば放射性核種の濃度が高い.海洋起源の地

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表 1.5: 組織荷重係数 組織・臓器 組織荷重係数 組織・臓器 組織荷重係数 生殖腺 0.20 肝臓 0.05 骨髄 (赤色) 0.12 食道 0.05 結腸 0.12 甲状腺 0.05 肺 0.12 皮膚 0.01 胃 0.12 骨表面 0.01 膀胱 0.05 残りの組織・臓器 0.05 乳房 0.05 合計 (全身) 1.00 (出典: 「国際放射線防護委員会の 1990 年勧告」, ICRP publication 60, 1990) 質の一部はプレート収束域である大陸周辺部に付加され,大陸は成長する.そのため,大陸内の放射性 核種の濃度分布は一様でない.したがって,放射性核種の濃度分布の解釈に地球発達史を考える必要が ある. 地殻中の238U 系列や232Th 系列に含まれる214Bi(ビスマス)や208Tl(タリウム)からはガンマ線の ように透過力のある放射線がでる.これが地殻ガンマ線である.その他の地殻ガンマ線として,崩壊系 列をとらない40K の寄与も大きい.自然放射性核種濃度の高い地域 (たとえばトリウムを多量に含むモ ナザイト砂の集積するガンジス川流域) ほど潜在的に地殻ガンマ線レベルも高い.しかし,実際には放 射線は土壌に吸収される.そのため,深さ約 30 cm までの自然放射線核種の濃度および表面の遮蔽状 態で地殻ガンマ線レベルが決まり,必ずしも地殻の核種濃度分布と地殻ガンマ線分布とは一致していな い.地表の 70%を占める海にはイオン化傾向の高いカリウムが溶解イオンとして存在する.そのため, 一定比率で40K が必ず含まれる.しかし,それはガンマ線源としては弱い.また,厚い海水はガンマ線 を遮蔽するため,海底面からの放射線被曝量は小さい. 大地に起因する放射線のレベルは,直接的にはローカルな地質に含まれる放射性核種(ほとんど自然 放射性核種)濃度分布に依存する.しかし,その分布の原因を説明するには,地球形成史やプレートテ クトニクスまで視野に入れた考察が必要である.

●●  1.4.6 ラドン・トロンの発生と放射能探査  ●●

大陸に濃縮した238U,232Th,40K などの原始放射性核種濃度は高い.238U 崩壊系列に属する226Ra (半減期約 1600 年)の次の生成核種が222Rn(ラドン 222)であり,232Th 崩壊系列に属する228Ra の二 つ次の生成核種が220Rn(トロン)である.これらラドン,トロンは自然放射性核種なので,地球のい たるところで発生する.また,これらは希ガスなので化学的に捕獲されず,間隙があればどこでも侵入 する.そのため公衆被曝量が大きく,放射線保護の観点から特に注意する必要がある. 地下深部で発生したラドンガスは上昇し,土壌や地下水に吸収される.断層破砕帯や地下熱水(温 泉)の存在する地域ではラドンの上昇が豊富であるため,輻射パルス値も高くなる.断層沿いの岩石は 多くの亀裂や不規則な節理の発達に伴い細片化し,岩石中の孔隙率や含水量が高くなる.このようなと ころではガンマ線に対する吸収量が低く,自然放射能(ガンマ線強度)は高くなる.そのため,地表に おいてガンマ線強度の高いところは断層破砕帯・地下水・温泉が存在する可能性が高い.地盤に潜在す る活断層・地下水・温泉の探査にガンマ線測定を用いた放射能探査が行われている. 地表付近でガンマ線を放出する元素には214Bi,208Tl,40K の3元素がある.これら214Bi と208Tl,214Bi

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10B β, 1.6×106 360 14C β, 5730 年 22000 22Na β+, 2.602 年 0.6 26Al β+, 7.2×105 1.7 35S β, 87.4 日 14 36Cl β, 3.0×105 11 39Cl β, 56 分 16 と40K の比率は地層毎にほぼ一定である.地層(地殻)中に含まれる238U が崩壊し,ラドン(222Rn) ガスが生成されると,断層破砕帯を通って地表にもたらされ,222Rn の娘元素である214Bi が濃集する. そこで,214Bi のガンマ線の値を個別に検出すれば断層破砕帯の存在を推定することができる.この原 理を用いたガンマ線による放射能探査法が開発されている.

●●  1.4.7 宇宙から降り注ぐ放射線 ●●

新星および超新星の爆発によって放出された高速度の陽子と軽い原子核は,宇宙空間の磁場によって 加速され地球大気の上層にまで飛んでくる.これが一次宇宙線と呼ばれるもので,主成分は陽子である. 地球大気上層に降り注ぐ1次宇宙線中の陽子の数は毎秒約 1018個で,個々の陽子のエネルギーは大き く,1020eV をこえるものもある.しかし,1020eV を越える陽子の入射頻度は 1/(km2・20year) にすぎ ない. 大気圏外から飛び込む一次宇宙線粒子は,大気主成分 N2,O2,Ar などの原子核を破砕する.この過 程において発生する陽子,電子,中性子やπ 粒子の子孫が大気圏深部で卓越する宇宙線である.またこ れが大気中反応によって3H,7Be,14C などの放射性核種を与える.表 1.6 は雨水の中に検出される放 射性核種を示す.長寿命の放射性核種は地上に落ちてきた隕石の中にも見出される. 宇宙線のほとんどは大気での散乱によって生じた荷電粒子(陽子・電子)なので,磁力線に沿う方向 には動きやすく,磁力線を横切る方向には動きにくい.南北磁極付近では磁力線は鉛直に近い配置をし ているため,宇宙線は入射しやすく被曝線量率も高い.しかし,赤道付近では磁力線が水平に近い配置 をしているので,宇宙線の低エネルギー成分は侵入できない.

●●  1.4.8 環境における人工放射能  ●●

放射性同位元素ラジウムの発見に始まり,人の手によって作られた人工の放射性物質の利用が盛んに なると,人工放射線を受ける機会が多くなってきた.人工放射線源として最大の被ばくをもたらすもの としては医療放射線(診断・治療など)があり,その他には絶対値としては非常に小さいが,核爆発実 験によって放出された放射性降下物 (フォールアウト),原子力発電所や再処理施設などの原子力関連

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施設から放出される放射性廃棄物がある.放射性降下物 (フォールアウト)による放射線被曝は,地上 に堆積した放射性物質による外部被曝と,吸入と汚染食物(摂取)による内部被曝とに大別される.ま た,一般の人々が法的規制なしに自由に売買あるいは所持出来る製品で,放射性物質を意図的に利用し たもの,または副次的に放射線の放出源となる消費財(コンシューマプロダクツ)(例えばテレビ)も ある.

図 1.3: シンチレーション検出器 シンチレーション検出器 シンチレーション検出器は現在最も一般的に使用されている放射線検出器のひとつである.シンチ レーション検出器では,シンチレーターと呼ばれる物質内で放射線が失ったエネルギーを蛍光(シンチ レーション)に変換し,それを光電子増倍管と呼ばれる光増幅器により増幅し,電気信号にする.この 検出器の特徴は以下のようになる. • 放射線を検出する物質量が他の放射線検出器(例えばガイガー・ミュラー計数管)などに比較す ると大きいためガンマ線検出効率が高い. • 放
図 1.5: 放射線強度と距離の関係の測定配置図 実験 3 放射線の吸収 線源を用いて放射線の物質での吸収を測定する. 1. 線源とシンチレーションサーベイメータの距離を L = 20 cm に固定する.測定では細くしぼったガ ンマ線を利用するため,厚さ 5 cm の鉛に穴をあけたコリメータを図 1.6 のように置く.低エネル ギーのガンマ線や X 線の影響を防ぐため,サーベイメータのヘッド部に鉛キャップを取り付ける. 2
表 1.1: 放射線と距離 距離 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 平均値 平均値-BG BG 0.13 0.14 0.12 0.14 0.16 0.14 ————– 5.0 cm 9.7 9.8 9.8 9.8 9.8 9.78 9.64 10.0 cm ...
図 1.6: 放射線の吸収測定の配置 ならない.著者と読者が内容を共有しやすくするために,レポートには共通の形式があり原則としてこ の形式に従う必要がある.形式については,テキスト p
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