不飽和脂酸の動物榮養に及ぼす
影響に就て
第七報
臭素化Llnolen一酸に就くの飼養試験
東京女子讐學專薄墨校讐化學教室(指導 末吉教授)三 肺 美 和
1緒 言
Burr, Bfirr,(D(1929)は脂肪を除去したる飼料を以て白鼠を飼養したるに,漸次一 定の敏乏症駅を來し長く生命を保ち能はざることを認めたり。而して之に少量の豚脂 を加へたるものを用みて飼養すれば正常の襲育を途げ,何等の欲乏症状を來さす,且 又無脂肪飼料に依り著明なる妖乏症扶を呈せるものも,豚脂を加ふれば速かに症状の 治癒するを見たり。Burr, Burr(2)は更に研究を進め,不飽和脂酸のLino1一山回は Lillolen一酸を與ふればこの歓乏症歌を治癒せしめ得る事を明かにせり。丹下(3)(1932) も,此敏乏症状はLinol酸叉はLinolen一酸に依りて治癒する事を實験せle。 滋に於て予は Linolen一酸の臭素添加物なる六臭化脂酸を:作り,之を無脂肪飼養白 蟹に與へて敏乏症欣を治癒せしめ得るや,或は叉鋤稜現を豫防せしめ得るや否やを観 察し,以て六臭化脂酸の臭素が艦内に激て容易に分解するや否やを槍索せんとせり。E 實駿材料及び方法
(1)實験動物 艦重40乃至509を有する幼少白鼠を使用す。 〈2)飼料 次の塵方よりなる合成飼料を使用せり。帥ち局 方 澱粉 74%
卓乞 酉各 素 18% 混合臨類(Mc。 Collmm No.1・85) 4%Oryzannin末 4%
之にVitamin AとしてCarotenを,Vitamin DとしてViganto1を加へたり。
主瀞=不飽和脂酸の動物榮養に及ぼす影響に就て 第一報一九報 115 Carotenは0.01鬼のAther一溶液として,之の0.1ccmを白鼠1匪1日量とせり。Vi− gantolより不鹸化物質(Vitamin D)を分離し,之の0.001%互ther一溶液1滴を白 鼠1匹1日量とせり。 澱粉は無水酒精を用ゐ12時間浸出し・乾酪素も同様20時間温浸出せり,Oryzanin 末は無水一Atherを以て浸出10時聞後,乾燥す。 六臭化脂酸:亜麻仁油脂酸に常法に依り臭素を結合せしめ,Ather及び石油一Ather 不溶のものを分離せり。 (3)實験:方法 2方面より行へり。邸ち1は治癒試瞼にして他は豫防試験なり。 白鼠を2群に分ち治癒試験を行ふ群には,上記の無脂肪飼料を熱湯を以て撞ね團子 として輿へ,鮫乏症状の起りたる後山に六臭化脂酸を1%乃至3%の割合に加へ與へ, .之に依って謡歌の治癒するや否やを観察せり。 豫防試験群には飼料中に最初より1%の割合1六臭化脂酸を加へ,之を同様團子と して與へ然して敏乏症状を薫起するや否やを一等せるものなり。 何れの群も水は随時揖り得る如くす。 投與量は最初1日89より開始し,前日の油取ナ沃況により次第に増量し途に1E[]8 9に蓮せり。
班 實験 成 績
成績の制定は一般榮養款態,特に皮膚の蔓化,膿毛の状態と,他方には艦重を測定 ・してその回忌歌謡とを概察して行ひたip。 (1)・治癒試験群 Nr・44, Nr・48, Nr・46, Nr・33,の4例,何れも飼養後40日頃より皮膚乾燥し,之噸きて澱瞼掴邊旧び榔の脂ε毛潔め旧嘩むに從敏第曙明となり
も0日頃に至り眼瞼鼻腔の康欄炎症起り回る。荷此頃より後肢の落屑を認む。二重は50 日頃より獲育停止し叉は減少の傾向にあり(第1表及び第2表)。 以上の症歌は定型的なる脂肪敏乏症状なりQこ)こ於て六臭化脂酸をNr.44, Nr. .48には1%,Nr・46, Nr。33には2%の割合に飼料に混じ輿へたり。然してその後 の状態を麹回せるに上記の症状は何れの例に於ても治癒の傾向.なし。師ちNr.44に 於ては63日目に六臭化脂酸を1%與へたるに艦重:増加を示したり,されど二二乏症状 は却って増悪し,叉Nr.48’C Ic於ては106日目に1%の割合に與へたるに一時艦重 ・増加を示したるも田歌は十悪す。Nr,46に於ては60日目に,Nr.33に於ては91日目一第9巷231一
116 三棘=不飽和脂酸め動物榮養に及ぼす影響に就て 第一報一九報
讐
享 160 /2080
40
ア 第 1 表 .治癒試験群獲育曲線 無脂肪二期閤 轡…・…・L化:脂酸供輿期閉
〃∼;48 ,/一一、.〃幽 くノ『’i
( ’ 1、 s l l ロ ロ ロ ゑ} し鵬
一
向33 “s x 十→實瞼日数
第 2 表 症 欺 獲 現 日 撒 症 動 物 番 號 Nr, 44 N−r. 48 Nr. 46 Nr. 33 皮 膚 乾 燥 輕 度 の 落 屑障 毛
[眼瞼康燗淡症
E 鱗 朕 落 暦 盤 重 減 少 臭化脂酸投鰍の劉 化 L i潤 日 目
14i 日 目 35 目 目 (眼瞼背部) 45 日 目 75日以後著明 86日目(後肢耳)1 56肩以』 163日(1%) 1膿重櫓加時期に も症麗雪悪 77 日.(2%) 91 日 (3%)・2H目儲H目1・・日目
49日
謔U日脚日・目
日 目 56 日 目 (眼瞼)50日目 46 70日目著明匡眼瞼・口邊) (眼 瞼)』7瑚(輕騨・日‘目7・・自
蜘,後肢,ト・日目・・母、
・・日瞭 56剛後・β「目瞭..
108目(1%)60日・2 %)’X1日(2%)
130日、(2%) 70 日 (3%) 燈:重減少,症朕.三州あ騨第囎加階
1 に2%の割合に與へたるも三重は減少し丁丁は塘悪す。印ち眼瞼の炎症盆汝著しく, 加之後肢に特有なる鱗歌落屑著明と・な.れりQ更に六臭化脂酸をNr・44には2%一3 %と増加し:叉Nr。46・にも70日目に3%と増加し10日間持績したるも増悪し途に騒痩. 衰弱.を來.し艶死せり。 一第 9 巻 232一三憩=不飽和脂酸の動物榮養に及ぼす影響に就て 第一報一九報 117 (2) 豫置方言弍、平群 飼料中に初めより1%の割合に六臭化脂酸を加へ飼養せるNr.23, Nr,2t, Nr.1 に於ても,50日前後より波膚の乾燥,次V・で輕度の落屑を認め,眼瞼口論の脱毛起る。 70日頃柔り眼瞼の炎症・後肢の落屑釜防磁著となれり。・2%に増加せるも何等治癒 の傾向を誰むること能はす。艦重はNr・1が例外的に70日に於て2009を示したる 第 3 表 豫防試験群獲育曲線 讐 写 20,0 160
120
80
’ 40 F, 1 ’ ti ’ ’ ’ ’ tt 銑23・ tt−e{冨
t ’ t , ’ t一: ,: 翫ノ ,t9匂、 し ぴ へ Nr 2,1 \, ’鴨 t g一 ..o t t ll 十→實瞼E】数
第 4 表回護i菱現目数
症動物 番號
lNr. 23 INr. m INr. 1 皮 膚 乾 燥輕度の落屑
1・ [lz12日目142明
49E目 蒲 毛 63日目 (眼瞼) 予期炎症・凛欄i (一)鱗殊落屑層
i一)盤重減少63日以側
49日目 (後肢) 49日目 (眼瞼) 63日目 75日目 42目以後 を除く外何れも50日頃より獲育停止 し,最:高1579に達せるのみ。Nr・1 も70日以後次第に減少せり。何れも 1巌痩衰弱の下に麗死せり。 40?髄曲綴び症綴論点示せば
纈隠滅表及び第蟻の如し.
50日目 (3)六臭化脂酸の吸牧試験 (眼瞼) 上述の如く六臭化脂酸を1乃至3% 75日目 の割合に白鼠に與ふるも,其脂肪敏乏 80日目 症欣を治癒せしめ叉は之の護現を豫防 70日以後. .するを得ざることを實験せり。然れど 一一謔X魯233一
1丑8 三紳=不飽和脂酸の動物榮養に及ぼす影響に就て 第一一報一九報 も蜘こ考ふべきは六臭化脂酸が白鼠濡化管中より,よく吸牧され得るか否かの問題な り。六臭化脂酸は通常の脂酸の如き水溶性の石鹸を比較的作り難き性歌あるガ故に此、 問題を考慮するの要あi;」。尾崎④は六臭化脂酸を用ゐ白鼠の榮養試験を行ひたる際, 他の脂酸に比し鼠紙効果少なきことを認め,是れ恐らく其吸牧の宜し.からざるためな らんと読明せり。予の實験成績に於て上記の如く六臭化脂酸が上記の如き効果を現し 得ざるは果して立回し難きためなるか,或は吸牧するも他の所因に依るか,之を確か.. めんと欲し其二恩率を測定せip。 (A)實験材料及び方法 濫:重1169乃至1509の白鼠を用ひ,:先づ無脂肪食餌の際に糞便中に排泄せらるx 脂肪量を測定せり。帥ち既述の無脂肪食餌を一定:量(1日159宛)輿へ4日間の糞便 を採取し,之の中に含有する脂酸量を測定せり。 次V・で同一白鼠に於て,2例には,無脂肪食に六臭化Linolen一酸を1%の割合に加 へたるものを1日15g宛與へ,叉他の2例には,同様六臭化Linolen一酸を3%混合し たるものを1日159宛與へ,詠振後5日目より糞を探卜し,4日間のものにつきてそ の含有脂酸量を測定せケ。然して本試験時の排泄脂酸量より無脂肪食餌時のものを差 引きたる残量を素直牧に依る排泄脂酸量となし,更に之を撮取脂酸量よPl tt引きたる 残量を吸牧脂酸量となし,之より吸山鼠を算定せり。 脂酸測定法 集めたる糞の全量をユ50ccmの無水一Alkoho1を以て10時聞浸出し,伺淺渣を再び
鯨Alk・h・12・脛・・ccm VCて・喘灘・,醸出藍合・て凡そ吉晶晶
る迄Alkololを蒸溜し去り,次いで苛性曹達(d=’1・5)を加へて鹸化し,次に酒精の 濃度を50%となし石油一山herに依り不鹸化物質を除去せり。斯くして得たる石鹸夜に 就て隈川須藤の法に依り脂酸を定量せり。 六臭化脂酸を與へたるものに湿ては上述の方法に依り測定したる他に・更にAlkoho1 にて浸出.したる糞残渣を乾燥し,共一定量に就て酒精及び苛性曹達を用ゐ鹸化し,前 述の方法と同様の操作に依り脂素量を測定し,其量と酒精浸出液に就て得たる量とを 合して全排泄脂酸量となせり。 (B)實瞼面恥 1) 無脂肪食に就ての試験 白鼠Nr.18,Nr.19,Nr.20,Nr.2!に於て既述の無脂肪食を輿へたる際その排泄脂 酸量を測定したるに第5表に示せるが如し。 一 第 9 巻 234一三山鴇不飽和脂酸の動物榮養に及ぼす影響.に就て.第州報一九報 119 第 5 表 .無 脂 肪 食 晟 番 號レ畳豊:重(9) 旨 糞採.取日数 翠・・81 N・.19[ Nr.20.’[
呼・{
133 150 116 133 4 .1 4 4 食餌の種類. 無脂肪食 置 .上 同 上 同 朝冷鯛排聯量離難1)1
60 60 60 60’ O.0876 0.o’?s6 0.0780 0.0675 3.2 ’317 2’.S ’ 2.4・ 上表の如く脂肪を添加せざる食餌に於ても.,白鼠は4日聞に0.06759乃至0.0880 9の脂酸を糞便中より排泄する事を知れ.りP 2) 六臭化脂酸に就ての試験 前潮汁と同一白鼠につきて六臭化脂酸を添郷し投萌せろ後,糞便中の脂酸童を測定 せり。 Nr.18,Nr.19に於ては1%を添加し, Nr.20,Nr.21に於ては3%を添加せ・るもの なり。その域績は第6表に示せるが如し。. 第 6 表 六臭化Linolen一酸添JJfi熱海採潮脚驚纏頭㌦鍵.
Nr. 18 Nr. 19 i30 l iso 1 し ・〔.羅酸1・・411跡60
O.6 0.6 O.2176 1 O.27・E8 0.2176 1 O.2609 E 不吸牧1吸牧脂脂酸吸月欝欧、継%亨
Nr. 20 Nr. 一”・11141 4
1 133 1 4 … +舞糞聡藷酸160 3%加 160 1 1.S 1.8 1・.画・.・2・61・・.8 ・…29.堰E・3・・脚 O.60”2S O.652S e.3595 e.4040 O.2815 0.3365 O.3713 i ・56.S o.316s 1 4s.4.. I E 上表の如くNr・]串,Nr・19に於ては撮取六臭化脂酸量0・69にして之の1・inolen一 酸量は0・21769なり。(六臭化脂酸の臭素含有率は63・73%なり) 然して不和牧に依る排泄脂酸は夫kO.19209及び0.17299にして,吸盤率は 11・8%及び15・9%,寸寸13・9%となれり。又Nr・20,Nr・21に於ては撮六六臭化脂酸1・89なればLhlolen酸量q65289騰漬したるものにして・,期の不璽牧徽
る排泄脂酸量は夫kO・28159及び0・33659なり。之より吸牧率を計算するに56.8 %及び48.49/a,不均52.6%を示す。 一第 9.巷=235一120 三神=不飽和脂酸の動物榮養に及ぼす影響に就て 第一報一九報 以上の結果を見るに,無脂肪食餌の際にも一定量の脂肪が糞便中に排泄せられ,之 量は脂酸を播取するに件ひ増加するも其撫取量の塘加に『三行して増加するものにあら S3 s‘從って1%の臭化脂酸投與の場合の吸牧率は割合に少きも3%投與の場合には約 50%の吸牧率を示す。 斯くの如く六臭化脂酸が相當量の吸牧率を示すが故に,脂肪鉄乏症歌に封し六臭化 脂酸を投與しても効果なきは,此脂酸の不吸牧に依るにあらすして,結合せる臭素が 艦内に於て容易く分離し得ざるがためなる事を知るなり。
N.総括並びに結論
六臭化脂酸を1%乃至3%の割合に無脂肪食に混合して與ふるも,、白鼠の脂肪鉄乏 一帯を豫防し得す,亦之を治癒せしめ得ざるものなり。而して六臭化脂酸は50%の吸 牧牽を示すを以て上記の如く六臭化脂酸の脂肪敏乏症状に効果なきば,其不吸牧のた めにあらすして,Linolen一酸の不飽和炭素に結合ぜしめたる臭素が艦内に於て容易く 分離せざるためなり。 稿を絡るに臨み終始御懇篤なる御指導並びに御校閲の勢を賜りたる恩師末吉教授に飽満腔の謝 意を捧ぐ。 文(1) Barr, Barr: J. Biol. ehem. 82. (1929) (2) Barr. B“rr: J. Bi,1. Chem. 86. (1930) (3)丹下:?roc, Imp・acad・∫ap・No・5.(工932) (4)尾崎:農i藝化學會誌,S巻,S,1286. Q1932)
猷
Bd. IX. Ht. 2
VII. Mitteilung.
Die Fütterungsversuche mit der bromierten
Linolensäure
Von
Miwa Mikami
Mai 1939
Aus der medizinischen-chemischen Institute der Tokyo Med. Schüle für Frauen. (Direktor: Prof. Dr. Y. Sueyoshi)
Ich habe an den mit der fettfreien Nahrung gefütterten Ratten einen Versuch vorgenommen, um zu erfahren, ob das Bromid der Linolensäure die Fettmangelerscheiri'mg der Ratten verhindern oder beseitigen kann. Dabei konnte ich allffinden; dass Bromide eine erwartende Wirkung nicht entfalten können.
Daraus schliesse ich, dass das an Linolensäure gebundene Brom sich im Tierkörper nicht leicht trennen kann.