106 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(40) イ ウエ ケイ コ井上敬子(昭和3
博士(医学) 乙第!204号平成3年9月20日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
内耳のmelaninに関する形態学的・生化学的研究
(主査)教授 石井 哲夫 (副査)教授 肥田野 信,重田 帝子論 文 内 容 の 要 旨
目的 内耳の膜迷路にはmelaninが分布しているが,その 意義は不明である.本研究では系統発生学的に,ヒト, モルモット,カエル,フナの内耳を比較し,さらにモ ルモットにおける内耳のmelaninの生化学的分析を 行いmelanin色素の特性をみた.これらより内耳にお けるmelanlnの内耳機能に及ぼす影響を文献的に検 討した. 対象および方法 (1)ヒト側頭骨を脱灰後セロイジン包埋し内耳組織 切片を作製し,hematoxylin-eosin染色後光学顕微鏡 下に観察を行った.哺乳類としてモルモット4匹,両 生類として食用ガエル10匹,硬骨魚類としてフナ10匹 を用いた,これらをホルマリン固定後,surface prepa- rationで内耳膜迷路のmelaninの分布状態と形態を 顕微鏡下に観察した. (2)melaninの分析定量は,有色雑種モルモットと 黒色雑種モルモットを合計8匹,ハートレー系モル モット5匹を用いた.卵形嚢および膨大部の膜迷路を 採取し,eumelaninとpheomelaninを高速液体クロマ トグラフィーにて分析定量した. 結果 melaninは,ヒトでは蝸牛軸と蝸牛前庭階内側壁に 多く,次いで骨ラセン板,血管条,卵形嚢,膨大部, 半規管にみられた.膨大部の上皮内リンパ腔に接して 認めた.モルモットでは膨大部と卵形嚢の耳石器付近 に密に分布し,膨大部の上皮内に認め,ヒトと同様に 内リンパ腔に接していた,カエル・フナでは,総脚お よび膨大部に密に分布し膨大部の上皮内には認められ ず膜迷路周囲に軟骨様組織があり,膜迷路と上皮の間 に距離を隔てて認められた.有色モルモット内耳のmelaninはeumelaninが優
位であり,白色モルモットではeumelaninは,有色モ ルモットの0.3%で少量であった. 考察 神経堤由来のmelanocyteはフナからカエル,モル モット,ヒトまでの広範な系統発生段階の動物の内耳 に存在することが観察された.特にヒトにおいてはそ の存在部位が蝸牛軸,血管条,卵形嚢,内リンパ嚢, 膨大部のdark cellの下部であった.これらは蝸牛,前 庭,半規管のいずれの部位にもmelaninの機能的な意 義を期待しえる部位であり,melaninの生化学的特性 から,以前より内耳機能との関連性が検討されてきた. カエル,フナでは膨大部,半規管ともに軟骨様組織 を隔てて存在し,ヒト,モルモットのように内リンパ 腔に直接接触するという所見は認められなかった.し たがってmelaninが, melanocyte内のmelanosonle の中に含まれるカテコールアミンを周囲に遊離して, 直接内耳の上皮内器官に作用するという理論はカエ ル,フナに関しては成立たないことが予測された. 結論 内耳に存在するmelaninが,内耳機能に対し積極的 な働きがあるかどうかを系統発生的観点から検討し た.系統的にはより原始的であるフナ,カエルでは直 接内耳に影響することは考えにくいが,ヒトでは機能 的に意義があることが推測される. 一710一107