コンサータ錠 18mg,同 27mg
CTD 第2部 CTD の概要
2.6 非臨床試験の概要文及び概要表
−緒言−
ヤンセン ファーマ株式会社
JNS001 2.6.1 緒言
目次
2.6.1 緒言... 7 2.6.2 薬理試験の概要文... 3 2.6.2.1 まとめ... 3 2.6.2.2 効力を裏付ける試験... 4 2.6.2.3 副次的薬理試験... 9 2.6.2.4 安全性薬理試験... 10 2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験... 17 2.6.2.6 考察及び結論... 18 2.6.2.7 図表... 21 2.6.2.8 参考文献 (2.6.1 及び 2.6.2)... 21 2.6.3 薬理試験概要表... 1JNS001 2.6.1 緒言 略号一覧表 略号又は略称 化学名又は一般名 構造式 由来 MPH Methyl α-phenyl-2-piperidineacetate hydrochloride 主薬 PPA α-Phenyl-2-piperidineacetate 主代謝 物 略号又は略称 名称及び内容
AD/HD 注意欠陥/多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder) APD 活動電位持続時間(action potential duration)
Cmax 最高血漿中濃度(maximum plasma concentration)
DAT ドパミントランスポーター(dopamine transporter) DBP 拡張期圧(diastolic blood pressure)
FOB 機能観察総合評価法(functional observational battery)
GLP 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準(Good Laboratory Practice) hERG ヒトether-a-go-go 関連遺伝子(human ether-a-go-go related gene)
HEK-293 ヒト胎児腎臓(human embryonic kidney)由来細胞株 5-HTT セロトニントランスポーター (serotonin transporter) Ikr 急速活性化遅延整流カリウム電流 (rapidly activating delayed rectifier potassium current)
JNS001 塩酸メチルフェニデート放出制御型徐放製剤 Kd 値 解離定数 (dissociation constant)
Ki 値 結合定数 (binding constant)
MAO モノアミンオキシダーゼ(monoamine oxidase) MDMA 3,4-methylenedioxymethamphetamine MBP 平均血圧(mean blood pressure)
MP メチルフェニデート(methylphenidate)
MPH 塩酸メチルフェニデート(methylphenidate hydrochloride) MPH 普通錠 塩酸メチルフェニデート普通錠
MV 分時換気量(minute volume)
NET ノルエピネフリントランスポーター(norepinephrine transporter) PPA α-フェニル-2-ピペリジン酢酸,(α-Phenyl-2-piperidineacetate) PTZ ペンチレンテトラゾール(pentylenetetrazole)
PET 陽電子放出型断層撮影法(positron emission tomography) RR 呼吸数(respiratory rate)
SBP 収縮期圧(systolic blood pressure)
CH COOH CH HN CH COOCH3 CH HN ・ HCl
JNS001 2.6.1 緒言
略号又は略称 名称及び内容
SE 標準誤差 (standard error of the mean) SD 標準偏差 (standard deviation)
SHR 自然発症高血圧ラット(spontaneously hypertensive rats) SHRSP 脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット
(stroke-prone spontaneously hypertensive rats) TV 1 回換気量(tidal volume)
JNS001 2.6.1 緒言
JNS001 2.6.1 緒言
2.6.1
緒言
注意欠陥/多動性障害(Attention-deficit/hyperactivity disorder; AD/HD)は,主に幼児期から学齢 期の児童に認められる不注意,多動性(過活動)及び衝動性を中核症状とした軽度発達障害とし て分類される精神疾患である。Bradley, C.が 1937 年に様々な行動障害をもつ児童に中枢興奮薬を 投与し,約半数の子供に行動と学校での課業に目覚しい改善がみられたことを報告したこと 1)が, 中枢興奮薬によるAD/HD の薬物療法の発端となった。その後,米国を中心にして,多動性をも つ子供にアンフェタミン,塩酸メチルフェニデート(MPH)などの中枢興奮薬が使用されるように なった。これらの薬物は神経終末(シナプス)において,ドパミン,ノルエピネフリン及びセロ トニンなどの神経伝達物質のシナプス小胞への再取り込み阻害や放出促進,モノアミンオキシダ ーゼ-B(MAO-B)などによる酵素的分解の阻害などにより,シナプス間隙の神経伝達物質の濃度を 増加させる作用を有するとされている2)。これらの薬物が奏効することから,AD/HD の病因とし て神経細胞における神経伝達物質の生成不足,放出不十分,フィードバック機構の亢進及び酵素 的分解の亢進などが考えられる。これらの原因により,神経系における情報伝達が不十分となり, 衝動性のコントロール,作業への集中,短期記憶などが困難になっていると考えられている。 ヤンセン ファーマ株式会社は,米国 ALZA 社が開発した AD/HD 患者専用の治療薬であるコン サータ錠18 mg 及び同 27 mg(JNS001;以下,本剤)の本邦における開発権を取得した(20 年)。本剤は,米国ALZA 社が有する浸透圧を利用した放出制御システム(以下,OROS®)を 応用するとともに,MPH をコーティング層にも含有させる製剤的工夫を施し,経口投与後 1.5 時 間で速やかに薬効が発現し12 時間まで効果が持続するように設計された。すなわち,MPH 普通 錠や従来型のMPH 徐放性製剤と異なり,速効性と持続性を兼ね備えた AD/HD 患者専用の放出 制御型徐放錠である。海外においては,2000 年 8 月に米国で小児期における AD/HD 治療薬とし て承認されたのをはじめ,2005 年 7 月 31 日現在までに英国,フランス,ドイツ,韓国など世界 55 ヵ国で承認されている(販売名:Concerta®,Concerta XL®,Concerta LP®)。本申請は,本剤 を本邦の小児期におけるAD/HD 患者の治療薬として提供しようとするものである。本邦での本 剤の医薬品製造販売承認申請における効能・効果(案)及び用法・用量(案)は,以下のとおりとした。 【効能・効果(案)】 小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD) 【用法・用量(案)】 通常,小児には塩酸メチルフェニデートとして18mg を初回用量,18∼45mg を維持用量と して,1 日 1 回朝経口投与する。増量が必要な場合は,1 週間以上の間隔をあけて 1 日用量と して9mg 又は 18mg の増量を行う。なお,症状により適宜増減する。ただし,1 日用量は 54mg を超えないこと。
コンサータ錠 18mg,同 27mg
CTD 第2部 CTD の概要
2.6. 非臨床試験の概要文及び概要表
−薬理−
ヤンセン ファーマ株式会社
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2
薬理試験の概要文
2.6.2.1
まとめ
本項においては,本剤(JNS001)の有効成分である MPH の作用機序について検証した。In vitro 試験において,ドパミン,ノルエピネフリン及びセロトニンの再取り込みに関与するモノアミン トランスポーターへのメチルフェニデート(MP)の結合を調べた。また,シナプス小胞に取り込ま れたドパミン,ノルエピネフリンのシナプス小胞からの放出に対する作用を,更にドパミン,ノ ルエピネフリンなどの神経伝達物質を分解するMAO-B の阻害作用を調べた。また,副次的薬理 試験として,イヌにおける成長ホルモンレベルに及ぼす影響を検討し,安全性薬理試験として中 枢神経系,心血管系,呼吸系及び痙攣に関する試験を実施した。 国内では1958 年より本薬の普通錠が販売されており多くの報告があるので,in vitro 試験とし て脳内組織及び亜細胞画分への結合,並びに in vivo 試験として AD/HD に類似した症状を自然発 症するラットの自発運動量及び自発的交替行動に対するMPH の作用を公表論文を用いて評価し た。また,臨床試験の開始にあたり一般薬理作用を公表論文を用いて評価した。 In vitro 試験 モノアミントランスポーターには,ドパミントランスポーター(DAT),ノルエピネフリントラ ンスポーター(NET),セロトニントランスポーター(5-HTT)がある。MP の各モノアミントランス ポーターに対する結合能の選択性及び種特異性を調べるために受容体結合試験を実施した。MP は線条体の粗膜画分に存在するラットDAT に Ki 値 61.1±12.2 nmol/L,ヒト DAT に対し Ki 値 34.9 ± 5.20 nmol/L で親和性がみられ,ヒト及びラットの DAT への結合能に大きな差は認められ なかった。ヒトNET に対する Ki 値は 716 ± 51.3 nmol/L であり,ヒト DAT への親和性と比較す ると約20 分の 1 程度であった。ヒト 5-HTT に対する結合は 10 µmol/L の MP においても認めら れなかった。 メタンフェタミンはシナプス小胞からのドパミンの放出を100 nmol/L 以上で,ノルエピネフリ ンの放出を 10 µmol/L で有意に促進させたのに対し,MP には放出促進作用は認められなかった。 ドパミンやノルエピネフリンを酸化的脱アミノ化し分解するMAO-B の活性を,MP は 10 µmol/L においても阻害しなかった。 In vivo 試験 脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット(SHRSP)は幼若期に著しい多動性を示すことから, AD/HD のモデル動物のひとつとされている。このラットに MPH0.01∼0.1 mg/kg を単回腹腔内投 与すると,多動性の指標となる新奇環境における自発運動量を減少させた。更に,注意力(集中 力)の指標として短期記憶をY 字迷路を用いた自発的交替行動法により評価したところ,用量依 存的に自発的交替行動率の増加及び短期記憶の改善が認められた。 これらの結果から,MP は線条体に多く存在する DAT に結合し,シナプス間隙に放出された ドパミンの再取り込みを抑制することにより,シナプス間隙にあるドパミンを増加させて神経回 路の機能を正常化するものと考えられる。 副次的薬理試験 中枢興奮薬を小児に長期投与することにより成長抑制が認められることが知られている。MPH でも雌雄幼若ラットに1 日 2 回 21 日間反復皮下投与したとき,体重増加抑制が 35 mg/kg 以上と いう高用量で認められたが,成長ホルモンレベルの低下は雌においてのみの変化であったことか ら体重増加抑制と成長ホルモンレベルとは関連しないものと考察されている。実際,AD/HD 患 児にMPH を反復経口投与しても,成長ホルモンレベルに影響が認められなかったとの報告があ る。一方,本剤の臨床試験において体重増加抑制が認められているが,体重あたりに換算すると 臨床推奨最大用量以上である18 mg/日の JNS001 を雌雄ビーグル犬に 22 日間反復経口投与しても 成長ホルモンレベルに著明な変化は認められなかった。したがって,本剤において認められた体 重増加抑制にも成長ホルモンレベルの低下は関与していない可能性が考えられる。JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 安全性薬理試験 本邦における臨床試験開始時(20 年)にはMPH の中枢神経系,循環器系及び消化器系に対 する影響を検討した試験結果が公表されていたため,それらを一般薬理試験成績とした。即ち, マウスにおいては2 mg/kg 以上の間欠皮下投与(3-4 日間隔で 5 回)で,ラットにおいては 2.5 mg/kg 以上の単回皮下又は腹腔内投与で用量依存的な自発運動量の増加が認められ,高用量では 常同行動の増加が認められた。幼若動物においても同様の影響が認められた。また,サルに皮下 投与した場合も0.5 mg/kg 以上で運動亢進が認められた。マウスにおいて 100 mg/kg という極め て高用量の腹腔内投与により50%の動物に痙攣が惹起され,リドカインと併用すると両者の痙攣 誘発用量が低下した。覚醒イヌに0.5 mg/kg 静脈内投与したとき,心拍数の減少及び平均血圧の 上昇が認められた。マウスにおいて3 mg/kg 以上の腹腔内投与により,5-hydroxytryptophan 誘発 下痢を用量依存的に抑制した。 また,今回の承認申請にあたり現在の安全性薬理試験ガイドラインに準拠した方法で,上記公 表論文のうちコアバッテリーに相当する試験並びに痙攣に関する試験結果を,臨床投与経路であ る経口投与で再確認する目的で新たに試験を実施した。その結果,MPH10 mg/kg 以上の経口投与 でラットにおいて中枢興奮作用,30 mg/kg でマウスにおいて痙攣増強作用及びイヌにおいて昇圧 作用が認められ,既に公表されているMPH の作用が確認された。また,今回の試験では 10 mg/kg 以上でラットにおいて呼吸興奮作用が認められたが,これは中枢興奮作用によるものと考 えられ,マウス又はウサギを用いた毒性試験でも確認されている。なお,急速活性化遅延整流カ リウム電流(IKr)及び摘出モルモット乳頭筋の活動電位に対しては無影響であった。JNS001 は MPH を制御された速度で放出するように設計された放出制御型徐放製剤であり,MPH 普通錠と 比較してCmaxが低いことから,MPH による上記作用に関して MPH 普通錠と比較して特に注意す べき点はないものと思われる。
2.6.2.2
効力を裏付ける試験
(1) In vitro 試験 1) モノアミントランスポーターに対する MP の親和性 (評価資料 4.2.1.1.1) モノアミントランスポーターは中枢興奮作用を有する薬物の標的として知られるが,薬物によ りDAT,NET 及び 5-HTT に対する阻害活性が異なる。MP のモノアミントランスポーター阻害 作用の特徴を調べるために,ヒトDAT,NET 及び 5-HTT への親和性を受容体結合試験によって 調べた。更に,動物実験で用いているラットDAT への MP の親和性も調べヒト DAT と比較した。 (方法) ヒト DAT,ヒト NET 及びヒト 5-HTT はリコンビナントをレセプター標品とした。ラ ットDAT は線条体を Tris-HCl 緩衝液下でホモジナイズし,遠心により粗膜画分を分画しレセプ ター標品とした。[3H]-WIN35428 を DAT の,[3H]- nisoxetine を NET のトレーサーとして用いて,Scatchard 解析によりトレーサーとレセプターの解離定数(Kd 値)を求め,得られた Kd 値に基づき MP の結合定数(Ki 値)を算出した。また,[3H]-imipramine をトレーサーとして用いて,ヒト 5-HTT への結合に対する阻害率を以下の式より算出した。 阻害率 :100‐[(B−N)/(B0−N)×100](%) B : 検体存在下で結合した放射活性 B0 : 検体非存在下で結合した放射活性 N : 非特異的結合による放射活性
(結果)MP は,ラット DAT, ヒト DAT 及びヒト NET に対しそれぞれ,Ki 値 61.1±12.2 nmol/L,34.9 ± 5.20 nmol/L,及び 716 ± 51.3 nmol/L で親和性が認められた。ヒト DAT に対しては ヒトNET に比較して約 20 倍強い親和性が認められたことから,MP は DAT に比較的選択的な結 合を示すことが明らかとなった。また,ヒト DAT 及びラット DAT に関する Ki 値には大きな差 がなくこの2 種間で差はないものと考えられた(表 2.6.2- 1)。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 表 2.6.2- 1 MP の DAT 及び NET への結合 トランスポーター mean ±SD n=3 Ki (nmol/L) ラットDAT 61.1 ± 12.2 ヒトDAT 34.9 ± 5.20 ヒトNET 716 ± 51.3 一方,MP はヒト 5-HTT に対する結合が認められなかった(表 2.6.2- 2)。 表 2.6.2- 2 MP の 5-HTT への結合 被験物質(濃度) 阻害率(%) MP(10 µmol/L) 16.01 Imipramine:陽性対照(10 µmol/L) 83.37 2) シナプス小胞からのドパミン及びノルエピネフリンの放出に対する MP の作用 (評価資料 4.2.1.1.2) 神経伝達物質のシナプス小胞からの放出に対するMP の影響を,メタンフェタミンを陽性対照 として調べた。 (方法)ラット大脳皮質をショ糖溶液下でホモジナイズし遠心分離によってシナプス画分を分 画した。このシナプス画分に[3H]-ドパミン又は[3H]-ノルエピネフリンを添加し標識し,遠心し洗 浄した。これにMP 又はメタンフェタミンを添加し,37℃で 3 分間インキュベーションした。イ ンキュベーション後,氷冷したKrebs 緩衝液を添加し,遠心後,上清を回収し放射活性を測定し た。 (結果)MP には 10µmol/L においてもドパミン及びノルエピネフリンの放出促進作用は認めら れなかった。一方,陽性対照物質であるメタンフェタミンは,100 nmol/L 以上の濃度で有意でな おかつ用量依存的なドパミンの放出の促進が認められた。また,ノルエピネフリンも用量依存的 な放出の促進が認められ10µmol/L において有意差が認められた(表 2.6.2- 3)。 表 2.6.2- 3 MP のシナプス小胞からのドパミン及びノルエピネフリンの放出に対する作用 Specific released radioactivity (dpm)
Methylphenidate (mol/L)
control 1×10-8 1×10-7 1×10-6 1×10-5 Dopamine release Mean 2925.61 2924.29 2884.01 2766.47 2784.48
SD 25.13 131.75 273.71 100.39 261.85 Norepinephrine release Mean 1654.77 1735.38 1606.48 1565.21 1531.65
SD 247.94 262.79 175.42 317.02 248.00
Methanphetamine (mol/L)
control 1×10-8 1×10-7 1×10-6 1×10-5 Dopamine release Mean 2925.61 3020.88 3476.37* 3946.65* 4902.57*
SD 25.13 186.53 171.48 184.72 168.63 Norepinephrine release Mean 1654.77 1667.80 1873.81 2087.03 2538.10*
SD 247.94 214.74 247.78 262.14 215.20 (n=3, *;p<0.01 vs vehicle control, Dunnett method)
3) モノアミンオキシダーゼ-B(MAO-B)に対する MP の作用 (評価資料 4.2.1.1.1) ドパミンやノルエピネフリンなどの神経伝達物質を分解するMAO-B に対する MP の作用を, Ro 16-6491 を陽性対照として調べた。 (方法)ラット肝臓をホモジナイズし遠心分離によってミトコンドリア画分を分画し,酵素標 品とした。MP 又は Ro 16-6491 を最終濃度 10 µmol /L となるように[14C] -Phenylethylamine を含む
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 標識基質溶液に添加し,更に酵素標品と混合して37℃,20 分間インキュベーションした。塩酸 及びトルエンを添加して,酵素分解産物を抽出し,放射活性を液体シンチレーションカウンター で測定した。 (結果)陽性対照であるRo 16-6491 は 10 µmol/L において 70%以上の抑制を示したのに対し, MP による抑制は 10%以下であった(表 2.6.2- 4)。 表 2.6.2- 4 MP の MAO-B 阻害作用 被験物質(濃度) 阻害率(%) MP(10 µmol/L) 7.81 Ro 16-6491:陽性対照(10 µmol/L) 73.37 4) MP の脳内組織及び亜細胞画分における結合部位の検討 (参考資料 4.2.1.1.3) 脳内組織及び亜細胞成分におけるMP の結合部位を検討した結果を公表論文より記載した。 (方法)SD ラットの脳より Gray と Whittaker の方法3)に従って各脳部位から,P 2画分(シナ プス及びミトコンドリアを含む画分)を調製した。また,線条体からP1画分 (細胞核を含む画分) P2画分及びP3画分 (ミクロソームを含む画分)を調製し,さらに P2画分をショ糖密度勾配遠心法 によりミエリン画分,シナプス画分及びミトコンドリア画分に分画した。各部位のP2画分及び 線条体の各画分への特異的結合は MP100 µmol/L 存在下及び非存在下に[3H]-MP10.9nmol/L を 4℃, 30 分間反応させてその差より算出した。 (結果)脳の各部位より分画した P2画分のうち[3H]-MP が最も高濃度に結合が認められたの は線条体であった。次いで脳幹,視床下部の順に結合が認められた(図 2.6.2- 1)。 hyppocampus cerebellum cortex hypothalamus brain stem striatum hippocampus
[3H]-threo methylphenidate binding
(fmol/mg protein) [3H]-methylphenidate bound 図 2.6.2- 1 脳内 P2分画における[3H]-MP の結合 線条体の細胞成分では,細胞膜を含むP2画分にMP の特異的結合が認められ,特異的結合を認 めた全放射活性のうち85.7%が P2画分に分布した。さらにP2画分をショ糖密度勾配遠心法によ り分画した画分の中では,シナプス画分に [3H]-MP が最も高濃度に存在していた。以上より, MP が特異的に結合する部位は線条体のシナプスを構成する画分であった(図 2.6.2- 2)。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文
homogenate P1 P2 P3 myelin synaptosome mitochondria 3 H -t h re o -m e th y lp he nida te bo un d (fm ol /m g pr o tei n) [ 3 H]-m et h y lp he n ida te bo u n d (f m ol/mg prote in) 図 2.6.2- 2 線条体における細胞内[3 H]-MP の結合部位の分布 (2) In vivo 試験 MPH の AD/HD に対する効果を動物モデルを用いて評価するために,AD/HD に類似した症状 を自然発症するとされる脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット(SHRSP)を用いて,新奇環境に おける自発運動に対する作用及び注意力(集中力)の指標として短期記憶に及ぼす効果を評価し た。いずれも公表論文より記載した。また,MPH の AD/HD ラットの試験に対する作用を調べた 報告では,多くが経口投与以外の投与経路で実施されている。経口投与においてMP の Cmax及 びAUC は投与量に比例しておらず(2.6.4.3,(1),3),②項参照),ラットにおける経口投与試験では用 量反応性をみることが難しいためと考えられる。 1) 注意欠陥/多動性障害モデルラットの自発運動量に対する MPH の作用 (参考資料 4.2.1.1.4) SHRSP は高血圧症モデルとして知られているが,若年齢において自発運動が著しく亢進し, AD/HD 患者に類似した神経生化学的変化が観察されている。この幼若ラットに MPH を投与し, 新奇環境における自発運動量の変化を測定して多動性に及ぼす影響を評価した結果を公表論文よ り記載した。 (方法)自発運動測定20 分前に MPH0.01,0.1,1 mg/kg 及び溶媒対照として生理食塩液を 6 週齢の雄のSHRSP に単回腹腔内投与した。オープンフィールド内での水平運動量としての区画 移動数(No.of crossing)及び垂直運動量としての立ち上がり行動数(No.of rearing)を 15 分間隔 で60 分間計測し,自発運動量とした。 (結果)0.01 及び 0.1mg/kg の MPH 投与群において,オープンフィールド検査開始直後の 0∼ 15 分では自発運動量の減少は認められなかったが,15∼60 分において水平運動量又は垂直運動 量の減少が認められた。即ち0.01 mg/kg 投与群では 30∼60 分において水平運動量の, 15∼60 分 において垂直運動量の有意な減少が認められており,0.1 mg/kg 投与群では 45∼60 分において水 平運動量及び垂直運動量の有意な減少が認められた。1mg/kg では有意な自発運動量の減少は観 察されなかった(図2.6.2- 3)。 synaptosomes P1 P2 P3
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文
図 2.6.2- 3 MPH (0.01∼1mg/kg)の自発運動に及ぼす作用 (A)区画移動数,(B)立ち上がり行動数
(mean+SE, n=6∼12, *p<0.05 vs vehicle-treated groups by Dunnett’s multiple comparison)
一方,同様の試験でMPH の 3 及び 30mg/kg の腹腔内投与によっては,オープンフィールド検 査開始直後から用量に依存的な自発運動の亢進が認められた4)。以上より低用量である0.01 及 び0.1 mg/kg の MPH の腹腔内投与によって SHRSP の自発運動が抑制され多動性の改善が認めら れたが,過剰な用量では自発運動の亢進が認められることから至適用量が存在すると考えられた。 2) 注意欠陥/多動性障害モデルラットの自発的交替行動に対する MPH の作用 (参考資料 4.2.1.1.4) 注意力(集中力)の指標とした短期記憶に対するMPH の作用を自発的交替行動法により評価 した結果を公表論文より記載した。 (方法)自発的交替行動の測定では, Y 字迷路の 1 アームの端に 6 週齢の雄の SHRSP を置き, 8 分間自由探索させた時の行動を記録した。ラットが連続して異なる 3 つのアームを選択した時 をactual alternation 成立とし,maximum alternation(総アーム選択数‐2)に対する actual alternation の割合から自発的交替行動率 alternation behavior(%)を求め短期記憶の指標とした。MPH0.01,0.1, 1mg/kg 及び生理食塩液を自発的交替行動の測定の 20 分前に腹腔内投与した。
(結果)MPH の用量に依存して有意な自発的交替行動率の増加が認められ,短期記憶の改善 が認められた(図 2.6.2- 4)。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文
M PH (m g /kg ) M PH (m g /kg )
図 2.6.2- 4 Y 字迷路を用いた自発的交替行動に及ぼす MPH の作用
(mean+SE,n=10,*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001 vs vehicle-treated groups by Dunnett’s multiple comparison)
2.6.2.3
副次的薬理試験
(1) イヌにおける成長ホルモンレベルに及ぼす影響−JNS001 と MPH 普通錠(GLP) (評価資料 4.2.1.2.1) 中枢興奮薬を小児に長期投与することによる成長(体重増加や身長)抑制が報告されている。 本試験ではJNS001 を 22 日間反復投与した場合の血清中成長ホルモンレベルへの影響を MPH 普 通錠と比較した。 (方法)JNS001 及び MPH 普通錠それぞれ 18 mg/日及び 20 mg/日を 1 群雌雄各 6 例のビーグル 犬(6∼8 ヵ月齢)に 22 日間経口投与し,一般症状,体重,摂餌量及び血清中成長ホルモンレベ ルをラジオイムノアッセイ法で測定した。 (結果)結果を表 2.6.2-5 に示す。両製剤とも一般症状,体重,体重変化量及び摂餌量には無 影響であった。 JNS001 投与群では血清中成長ホルモンレベルに著明な変化は認められなかった。MPH 普通錠 投与群では,雌で投与第8 日目から 22 日目まで投与前値と比較して統計学的に有意な血清成長 ホルモンレベルの減少が認められた。しかしながら,この変化は投与前値の範囲内であり,この 群の投与前値は他の群と比較して高レベルであった。 表 2.6.2-5 血清中成長ホルモンレベルに対する影響 成長ホルモンレベルa) (ng/mL, n=3∼6) b) 日 JNS001,18 mg (雄) MPH 普通錠,20 mg (雄) JNS001,18 mg (雌) MPH 普通錠,20 mg (雌) -14 2.88 2.78 2.78 3.18 -7 2.57 2.71 2.87 3.09 1 2.68 2.89 2.63 3.02 8 2.64 2.85 3.02* 2.55* 15 2.28 2.61 2.37 2.38** 22 2.60 2.44* 2.75 2.43* 平均値,*p < 0.05; **p < 0.01(各群ごとに投与第-14 及び-7 日の平均値と投与 1, 8, 15, 22 日で分散分析にて 検定した。)投与前値の範囲:2.00∼4.95 ng/mL。 a)定量限界値 2.00 ng/mL。2.00 ng/mL 未満及び 5.00 ng/mL より大きな値を除いて算出した。 b)上記基準外となる測定ポイントが生じたため。JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.4
安全性薬理試験
本邦における臨床試験開始前(20 年)にはMPH の中枢神経系,循環器系及び消化器系に対 する影響を検討した試験結果が公表されていたため,それらを一般薬理試験成績とした。以下に それらを要約する。 マウス及びラットにMPH を腹腔内又は皮下投与し,中枢神経系に対する影響が検討された。 その結果,マウスにおいては2 mg/kg 以上の間欠投与(3-4 日間隔で 5 回)で,ラットにおいて は2.5 mg/kg 以上の単回投与で用量依存的な自発運動量の増加が認められ,40 mg/kg 以上では常 同行動の増加が認められた5),6), 7)。幼若動物においても同様の影響が認められた8),9)。また, サルに皮下投与した場合も0.5 mg/kg 以上で運動亢進が認められた10)。マウスにおいてMPH の 100 mg/kg という極めて高用量の腹腔内投与により 50%の動物に痙攣が惹起され,リドカインと 併用すると両者の痙攣誘発用量が低下した11)。 覚醒イヌにMPH を 0.5 mg/kg 静脈内投与したとき,心拍数の減少及び平均血圧の上昇が認めら れた12)。 マウスにおいて3 mg/kg 以上の MPH の腹腔内投与により,5-hydroxytryptophan 誘発下痢を用量 依存的に抑制した13)。 以上の結果から本邦における臨床試験を開始することに関して問題ないものと判断した。加え て,今回の承認申請にあたり現在の安全性薬理試験ガイドラインに準拠した方法で,上記公表論 文のうちコアバッテリーに相当する試験及び痙攣に関する試験結果を,臨床投与経路である経口 投与で再確認する目的で新たに試験を実施したので,その結果を以下にまとめる。 (1) 中枢神経系に関する試験 1) ラットにおける中枢神経系に対する影響(GLP) (評価資料 4.2.1.3.1) MPH の中枢神経系に対する作用を,雄 Sprague-Dawley ラットを用いた機能観察総合評価 (FOB)法により検討した。 (方法)MPH 3,10,30 及び 100 mg/kg を各群 8 例のラットに経口投与し,投与前,投与 0.5, 1,及び 4 時間後に FOB 法に基づきホームケージ及びオープンフィールドでの観察,ハンドリン グでの評価,感覚・運動機能検査を実施し,体温を測定した。溶媒対照群には注射用水をMPH と同様に投与し,薬物群と溶媒対照群を比較した。 (結果)結果を表2.6.2-6 に示す。MPH 3 mg/kg を経口投与したとき,すべての観察項目に変 化は認められなかった。10 mg/kg 投与 0.5 時間後に,ホームケージ内での落ち着きが無くなり, オープンフィールド内での立ち上がり数が増加した。30 mg/kg 投与 0.5 時間後には,これらに加 え移動区画数が増加し,覚醒レベルが亢進し,この内オープンフィールド内での変化は投与1 時 間後まで認められた。更に30 mg/kg 投与 4 時間後に極わずかに体温が上昇した。100 mg/kg 投与 0.5 時間後にもホームケージ内での落ち着きが無くなったのに加え,行動が変化(ケージを噛み 続ける,自傷)し,これらの変化は投与1 時間後まで認められた。一方,オープンフィールド内 ではより低用量で認められた立ち上がり数の増加は認められず,移動区画数の増加と覚醒レベル の亢進は認められたが,それらの程度は30 mg/kg 投与後と比較し前者は減少し後者は同程度で あった。これらの変化に加え100 mg/kg 投与 0.5 時間後から常同行動及び異常行動が 4 時間後ま で認められ,1 時間後に視覚反応が,0.5 及び 4 時間後には接触反応が亢進した。また,体温は 100 mg/kg 投与 4 時間後に極わずかに上昇した。 以上のように,ラットにおいてMPH 10 mg/kg 以上で中枢興奮作用が認められた。30 mg/kg 以 上で体温が上昇したが,この変化は極わずかであった。JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 表 2.6.2-6 FOB 法によるラット症状観察 投与量(mg/kg) 検査項目 時点(時間) 0(注射用水) 3 10 30 100 ホームケージ観察 姿勢 ランク値 正常=3 投与前 0.5 1 4 3 3 3.1 3 3 3.1 3 3 3 3.6* 3.4 3 3 4.1** 3.8 3.1 3 3.9* 3.9* 3.5 行動 ランク値 正常=0 投与前 0.5 1 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.6* 0.8* 0.3 オープンフィールド観察 移動区画数 定量値 3 分間値 投与前 0.5 1 4 75.6 ± 21.5 42.9 ± 33.0 22.0 ± 27.9 18.5 ± 16.3 68.3 ± 14.3 45.9 ± 30.8 39.3 ± 32.2 27.6 ± 22.9 64.3 ± 13.5 98.6 ± 26.3 57.9 ± 29.7 37.4 ± 16.7 64.9 ± 9.9 185.8 ± 45.4** 184.9 ± 67.6** 51.0 ± 26.2 57.1 ± 17.9 143.5 ± 124.9* 164.6 ± 160.8** 132.0 ± 154.7* 立ち上がり数 定量値 3 分間値 投与前 0.5 1 4 15.1 ± 8.1 8.0 ± 5.7 4.6 ± 6.0 3.1 ± 3.5 19.3 ± 4.3 11.1 ± 8.5 11.8 ± 9.5 7.8 ± 7.8 17.1 ± 2.7 23.8 ± 11.5* 13.1 ± 8.8 9.0 ± 5.0 17.1 ± 4.0 28.8 ± 12.6** 30.3 ± 8.1** 13.5 ± 11.3 18.1 ± 4.5 9.6 ± 10.4 5.4 ± 7.4 11.0 ± 10.2 常同行動 ランク値 正常=0 投与前 0.5 1 4 0 0 0.1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.3 0.4 0.4 異常行動 ランク値 正常=0 投与前 0.5 1 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.3 0.3 0.1 覚醒状態 ランク値 正常=4 投与前 0.5 1 4 4.0 3.8 3.5 3.5 4.0 3.9 3.8 3.6 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.9** 4.8** 4.0 4.0 4.9* 4.9** 4.9** 感覚・運動機能 視覚反応 ランク値 投与前 0.5 1 4 3.0 2.1 1.4 1.3 3.0 1.9 1.4 1.0 3.0 2.6 1.9 1.3 3.0 3.0 2.4 1.0 3.0 3.0 3.3* 2.6 接触反応 ランク値 投与前 0.5 1 4 3.0 2.4 2.3 2.0 3.0 2.3 2.1 2.0 3.0 3.1 2.1 2.3 3.1 3.3 3.1 2.0 3.0 3.8* 3.4 3.4* 体温 直腸温(℃) 定量値 投与前 0.5 1 4 37.8 ± 0.5 38.0 ± 0.4 38.5 ± 0.2 37.5 ± 0.4 37.5 ± 0.5 37.8 ± 0.5 38.5 ± 0.4 37.6 ± 0.4 37.8 ± 0.5 38.3 ± 0.4 38.4 ± 0.2 38.0 ± 0.7 37.6 ± 0.4 38.3 ± 0.3 38.5 ± 0.3 38.3 ± 0.5* 37.6 ± 0.3 37.8 ± 0.6 38.0 ± 0.5* 38.2 ± 0.6* ランク値:平均値,定量値:平均 ±標準偏差,n=8,* P<0.05; ** P<0.01(測定時点ごとに対照群と各被験物質投与群間でラ ンク値の場合はSteel’s test,定量値の場合は Dunnett’s test にて検定した。)
姿勢:正常値より高い値は落ち着きがなくなっていることを示す。
常同・異常行動:正常値より高い値はその兆候を示す動物が増えていることを示す。 覚醒状態:正常値より高い値は覚醒レベルが亢進していることを示す。
視覚・接触反応:高い値はより反応していることを示す。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 2) マウスにおける痙攣増強・抗痙攣作用(GLP) (評価資料 4.2.1.3.2) MPH の痙攣増強作用及び抗痙攣作用を,雄 ICR マウスにペンチレンテトラゾール(PTZ)又 は電撃ショックにより誘発した痙攣に対する影響を指標として検討した。 (方法)痙攣増強作用:PTZ 誘発痙攣の場合,MPH 10,30 及び 100 mg/kg を各群 10 例のマウ スに経口投与し,15 分後に PTZ 80 mg/kg を皮下投与した。PTZ 投与後 30 分間の間代性痙攣及び 強直性痙攣発生数並びに死亡を観察した。陽性対照群にはカフェイン200 mg/kg を,溶媒対照群 には注射用水をMPH と同様に投与した。電撃ショック誘発痙攣の場合,各群 10 例のマウスに上 記用量のMPH を経口投与し,15 分後に耳介電極を介し頻度 100Hz,pulse 幅 0.5 msec,25 mA で 0.3 sec 間電撃ショックを与えた時の間代性痙攣及び強直性痙攣発生数並びに死亡を観察した。陽 性対照群にはPTZ 50 mg/kg を電撃ショックの 5 分前に皮下投与,溶媒対照群には注射用水を MPH と同様に投与し,薬物群と溶媒対照群を比較した。 抗痙攣作用:PTZ 誘発痙攣の場合,PTZ の用量が 130 mg/kg であること,電撃ショック誘発痙 攣の場合,電流量が50 mA であること,また,いずれの場合も陽性対照群を設けなかったことを 除き,痙攣増強作用を検討する試験と同様の方法で実施した。 (結果)痙攣増強作用:結果を表 2.6.2-7 に示す。溶媒対照群では PTZ 誘発痙攣の発現率は 50%,死亡率は 0%であり,MPH 10 mg/kg を経口投与したとき PTZ 誘発痙攣に対して無影響であ った。30 及び 100 mg/kg 投与では,PTZ 誘発痙攣の発現率が用量依存的に増加し,100 mg/kg で は間代性痙攣数及び痙攣総数も増加し,死亡率は 20%であった。陽性対照物質のカフェインでは, 痙攣数が増加し,痙攣発現率は100%,死亡率は 80%であった。電撃ショックにより,溶媒対照 群では痙攣発現率は100%,死亡率は 0%であり,MPH 10 mg/kg を経口投与したとき電撃ショッ ク誘発痙攣に対して無影響であった。30 及び 100 mg/kg 投与では,電撃ショックによる死亡率が 用量依存的に増加した。陽性対照物質のPTZ では,痙攣数が増加し,痙攣発現率は 100%,死亡 率は80%であった。 抗痙攣作用:結果を表 2.6.2-8 に示す。MPH 100 mg/kg までを経口投与したとき,PTZ 又は電撃 ショック誘発痙攣の発生数及び死亡状況に無影響であった。 以上のように,マウスにおいてMPH 30 mg/kg 以上で PTZ 誘発痙攣及び電撃ショック誘発痙攣 を増強した。また,100 mg/kg まで抗痙攣作用は認められなかった。 表 2.6.2-7 痙攣増強作用 投与量 平均痙攣発生数 痙攣発現率 死亡率 死亡時間(min) 被験物質 (mg/kg) 強直性 間代性 合計 (%) (%) (平均値±標準偏差) ペンチレンテトラゾール誘発痙攣 注射用水 0 0 0.7 0.7 50 0 死亡無し MPH 10 0 0.5 0.5 40 0 死亡無し 30 0 1.1 1.1 80 0 死亡無し 100 0.2 2.6* 2.8** 100$ 20 9, 22 (n=2) カフェイン 200 0.8## 2.1# 2.9## 100$ 80$ 10.3±8.7(n=8) 電撃ショック誘発痙攣 注射用水 0 0.2 1.0 1.2 100 0 MPH 10 0.4 0.9 1.3 100 0 30 0.3 0.9 1.2 100 10 100 0.7 1.0 1.7 100 20 ペンチレンテトラゾール 50 1.0## 0.8 1.8# 100 80$
n=10,* P<0.05; ** P<0.01 Steel’s test,# P<0.05; ## P<0.01 Wilcoxon’s rank sum test,$ P<0.05 Fisher’s exact probability test,何れの場合も注射用水群に対して検定した。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 表 2.6.2-8 抗痙攣作用 投与量 平均痙攣発生数 痙攣発現率 死亡率 死亡時間(min) 被験物質 (mg/kg) 強直性 間代性 合計 (%) (%) (平均値±標準偏差) ペンチレンテトラゾール誘発痙攣 注射用水 0 1.0 3.1 4.1 100 90 12.6±6.4 (n=9) MPH 10 1.0 3.2 4.2 100 100 11.8±6.6 (n=10) 30 1.0 3.5 4.5 100 90 11.8±2.9 (n=9) 100 1.0 3.0 4.0 100 100 11.8±8.4 (n=10) 電撃ショック誘発痙攣 注射用水 0 1.0 0.4 1.4 100 90 MPH 10 1.0 0.2 1.2 100 80 30 1.0 0.2 1.2 100 80 100 0.9 0.7 1.6 100 90 n=10 (2) 心血管系に関する試験 1) 無麻酔・無拘束イヌにおける心血管系に対する影響(GLP) (評価資料 4.2.1.3.3) MPH の心血管系に対する作用を,テレメーターを装着した無麻酔雄ビーグル犬を用いて検討 した。 (方法)MPH 3,10,30 mg/kg 及び溶媒対照として注射用水を 4 匹のイヌにクロスオーバー (ラテン方格)法により経口投与し,血圧及び心拍数は経時的に取得したデータを以下のように 集計した。即ち,投与1 時間前∼直前,投与直後∼0.5,0.5∼1,1∼2,3∼4,7∼8 及び 23∼24 時間後の各平均値を求め,それぞれ投与0,0.5,1,2,4,8 及び 24 時間後のデータとした。M-X 誘導による心電図は投与 30 分前,0.5,1,2,4,8 及び 24 時間後に測定した。血圧は収縮期 圧(SBP),拡張期圧(DBP)及び平均血圧(MBP)を,心電図は PR,QRS,QT,RR,QTc (Fridericia の補正式による)の各間隔を測定あるいは算出し,薬物群と溶媒対照群を比較した。 また,心電図では不整脈の有無を観察した。 (結果)血圧の結果を図 2.6.2-5 に心電図(RR 以外)の結果を図 2.6.2-6 に示す。MPH 3 及び 10 mg/kg を経口投与したときすべての心血管系測定項目に無影響であった。30 mg/kg 投与 30 分 後から SBP,DBP 及び MBP が上昇し 4 時間後まで持続した。このとき心拍数は増加傾向を示し, 心電図 QT 間隔が短縮し PR 及び RR 間隔も短縮傾向を示したが,QTc 間隔には変化が無かった。 MPH 投与に起因する不整脈は認められなかった。また,10 mg/kg 以上で自発運動が亢進した。 以上のように,無麻酔イヌにおいてMPH 30 mg/kg により血圧が上昇した。このとき心拍数が 増加傾向であったため心電図QT 間隔が短縮したが QTc 間隔には無影響であり,不整脈も認めら れなかった。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 50 75 100 125 150 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
Diastolic blood pressure (mmHg)
24 50 75 100 125 150 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
Mean blood pressure (mmHg)
24 50 100 150 200 250 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
Heart rate (beats/min)
0 mg/kg 3 mg/kg 10 mg/kg 30 mg/kg 24 100 125 150 175 200 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
Systolic blood pressure (mmHg)
24 * * ** * * ** ** ** ** ** ** * 図 2.6.2-5 血圧・心拍数に及ぼす影響(n=4) 平均値±標準偏差 * p<0.05, ** p<0.01; Dunnett's test(0 mg/kg 群との比較)
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 図 2.6.2-6 心電図間隔に及ぼす影響(n=4) 平均値±標準偏差 * p<0.05; Dunnett's test(0 mg/kg 群との比較) 60 70 80 90 100 110 120 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
PR ( m se c) 24 50 60 70 80 90 100 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
QR S ( m se c) 24 150 200 250 300 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
QT ( m se c) 24 200 250 300 350 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Time after administration (h)
Q T c ( m se c) 0 mg/kg 3 mg/kg 10 mg/kg 30 mg/kg 24 *
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 2) HEK-293 細胞における急速活性化遅延整流カリウム電流(IKr)に及ぼす影響(GLP) (評価資料 4.2.1.3.4) MPH の急速活性化遅延整流カリウム電流(IKr)に対する作用を,ヒトether-a-go-go 関連遺伝 子(hERG)を導入し,カリウムイオンチャネルを安定発現させたヒト胎児腎臓由来細胞株 (HEK-293)を用い,ホールセルパッチクランプ法により検討した。 (方法)MPH 0.1,0.3 及び 1 µg/mL となるように各群 5 例の細胞に適用し,適用前及び適用 10 分後に IKr波形を測定し適用前に対する適用後の変化率(抑制率)を算出した。陽性対照群に はE-4031 10 ng/mL を,溶媒対照群には注射用水を MPH と同様に適用し,薬物群と溶媒対照群を 比較した。 (結果)結果を表 2.6.2-9 に示す。MPH はいずれの濃度でも IKr に無影響であった。一方,E-4031 10 ng/mL により IKrは抑制された。 以上のように,hERG を導入した HEK-293 細胞において MPH は 1 µg/mL まで IKrに無影響であ った。 表 2.6.2-9 IKrに及ぼす影響 濃度(µg/mL) 注射用水 MPH E-4031 0 0.1 0.3 1 10 ng/mL 抑制率(%) 3.5 ± 5.1 -1.4 ± 5.1 -1.2 ± 1.9 0.6 ± 7.0 33.8 ± 16.6** 平均値±標準偏差,n=5,** P<0.01 注射用水群に対して Student’s t-test にて検定した。 3) モルモット乳頭筋における活動電位に及ぼす影響(GLP) (評価資料 4.2.1.3.5) MPH の心筋活動電位に対する作用を,雄 Hartley モルモットより摘出した乳頭筋を用いて検討 した。 (方法)MPH 0.1,0.3 及び 1 µg/mL となるように各群 5 例の乳頭筋に適用し,適用前及び適用 30 分後に活動電位波形を測定し,静止膜電位,活動電位振幅,最大立ち上がり速度,30%,60% 及び90%再分極までの活動電位持続時間(それぞれ APD30,APD60及びAPD90)を算出した。陽
性対照群にはソタロール10 µg/mL を,溶媒対照群には注射用水を MPH と同様に適用し,薬物群 と溶媒対照群を比較した。 (結果)APD の結果を表 2.6.2-10 に示す。MPH はいずれの濃度でもすべての測定項目に無影 響であった。一方,ソタロール10 µg/mL により APD60及びAPD90は延長した。 以上のように,摘出モルモット乳頭筋においてMPH は 1 µg/mL まで活動電位に無影響であっ た。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文
表 2.6.2-10 活動電位に及ぼす影響
APD30(msec) APD60(msec) APD90(msec)
被験物質 濃度
(µg/mL) 投与前 30 min 投与前 30 min 投与前 30 min
注射用水 0 119.41 4.92 119.75 4.40 157.39 3.43 157.62 2.88 178.76 4.45 178.66 3.93 MPH 0.1 119.77 4.61 120.10 4.89 156.54 1.73 157.34 2.01 179.19 2.52 179.20 3.18 0.3 117.66 6.53 118.62 5.97 154.17 5.04 154.83 4.79 178.84 3.27 178.81 2.76 1 118.82 8.17 118.82 7.66 156.70 2.93 157.11 3.02 179.18 2.72 179.35 3.07 ソタロール 10 118.12 6.40 125.46 5.85 154.11 4.24 175.21 ## 3.49 178.09 2.65 204.48 ## 2.96 上段:平均値,下段:標準偏差,n=5,## P<0.01 注射用水群に対して Student’s t-test にて検定した。 (3) 呼吸系に関する試験(GLP) (評価資料 4.2.1.3.6) MPH の呼吸系に対する作用を,雄 Sprague-Dawley ラットを用いて無麻酔無拘束で検討した。 (方法)MPH 3,10 及び 30 mg/kg を各群 6 例のラットに経口投与し,投与前,投与 0.5,1 及 び4 時間後に無拘束チャンバーを介して呼吸数(RR),1 回換気量(TV)及び分時換気量 (MV)を測定した。各測定時点で 5 分間連続的に測定し,体動が認められない連続した 2 分間 の平均値を測定値とした。体動が認められる場合はその影響を除いてデータを取得した。溶媒対 照群には注射用水をMPH と同様に投与し,薬物群と溶媒対照群を比較した。 (結果)結果を表 2.6.2-11 に示す。MPH 3 mg/kg を経口投与したとき,すべての測定項目に無 影響であった。10 mg/kg 投与 0.5 及び 1 時間後に RR が増加したが,TV 及び MV には変化が認め られなかった。30 mg/kg 投与 0.5 及び 1 間後に RR が増加し,TV に変化は認められず,1 時間後 にMV が増加した。以上の変化は 4 時間後には回復した。 表 2.6.2-11 呼吸系に及ぼす影響 投与量(mg/kg) 時点(時間) 0(注射用水) 3 10 30 呼吸数(回/分) 投与前 96.3 ± 8.0 99.8 ± 16.1 100.7 ± 11.1 104.3 ± 15.6 0.5 102.9 ± 12.3 117.2 ± 35.5 182.7 ± 68.6* 173.8 ± 53.0* 1 95.1 ± 11.7 99.1 ± 5.4 149.4 ± 53.7* 168.8 ± 24.8** 4 121.5 ± 43.3 122.0 ± 44.0 159.5 ± 92.5 123.3 ± 41.8 1 回換気量(mL) 投与前 1.876 ± 0.204 1.889 ± 0.267 1.785 ± 0.211 1.741 ± 0.326 0.5 1.947 ± 0.437 1.853 ± 0.564 1.380 ± 0.510 1.776 ± 0.674 1 1.966 ± 0.361 1.880 ± 0.184 1.497 ± 0.401 1.685 ± 0.560 4 1.848 ± 0.540 1.759 ± 0.430 1.523 ± 0.463 1.763 ± 0.532 分時換気量(mL/min) 投与前 168.0 ± 7.3 177.3 ± 16.1 169.0 ± 11.1 173.8 ± 18.1 0.5 179.3 ± 20.1 183.1 ± 18.1 188.7 ± 32.6 209.6 ± 37.6 1 173.0 ± 19.4 176.4 ± 10.9 184.0 ± 21.4 215.9 ± 37.4* 4 186.7 ± 11.9 183.8 ± 16.5 183.5 ± 30.1 185.5 ± 23.1 平均値±標準偏差,n=6,* P<0.05; ** P<0.01 注射用水群に対して Dunnett’s test にて検定した。 以上のように,ラットにおいてMPH 10 mg/kg 以上で呼吸興奮作用が認められた。
2.6.2.5
薬力学的薬物相互作用試験
該当資料なし。JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.6
考察及び結論
(1) In vitro 試験 AD/HD の治療においては中枢興奮薬が有効であることが知られているが,中枢興奮作用を有 する物質には MP,ペモリン,メタンフェタミンなどの薬物のほかにアンフェタミン,コカイン, MDMA (3,4-methylenedioxymethamphetamine)などがある。Taylor らの総説2)によると,MP の作用 に関し,①モノアミントランスポーターによる取り込みの阻害,②シナプス小胞からのドパミン の放出の促進,③モノアミンオキシダーゼ(MAO)の阻害などの機序が提示されている。これら MP が有するとされる作用機序を検証するために実施した試験で以下の知見を得た。 1) DAT に対する阻害作用 中枢興奮薬の作用メカニズムのひとつにDAT,NET 及び 5-HTT などのモノアミントランスポ ーターの阻害作用がある。それらに対する結合の選択性と種特異性を調べるために,各モノアミ ントランスポーターに対する受容体結合試験を実施した。MP はラット線条体の粗膜画分に存在 するDAT に Ki 値 61.1±12.2 nmol/L で結合した。また,ヒト DAT に対し Ki 値 34.9 ± 5.20 nmol/L で親和性がみられ,ヒト及びラットでDAT への結合能に大きな差は認められなかった。ヒト NET に対する Ki 値は 716 ± 51.3 nmol/L であり,ヒト DAT と比較すると約 20 分の 1 の親和性で あった。ヒト5-HTT については結合が認められなかった。これらの結果から,MP は DAT に選 択性が高く,細胞外のドパミンのDAT を介したクリアランスを抑制する作用を有していると考 えられる。一方,NET に対しては弱い結合が認められたため,動物実験における高用量では,薬 物の作用に関与している可能性がある。一方,コカインは3 種類のモノアミントランスポーター 全てに対する阻害活性を有し,特にDAT 及び 5-HTT に対し強い阻害活性を示すことが報告され ている14)。MP は DAT に選択性があり,コカインとは異なっていた。 2) モノアミン放出に対する作用 メタンフェタミンやアンフェタミンはモノアミントランスポーターを介しシナプス小胞に取り 込まれ,シナプス小胞中にあるドパミン,ノルエピネフリン及びセロトニンの放出を促す作用が あることが知られている。MP にドパミンやノルエピネフリンの放出促進作用があるかを調べた ところ,MP は 10 µmol/L においても放出促進作用が認められなかったのに対し,陽性対照とし て用いたメタンフェタミンには100 nmol/L から明らかなドパミン放出促進作用が認められた。 MP はシナプス小胞に取り込まれたドパミン及びノルエピネフリンを放出させる作用を示さない ので,メタンフェタミン,アンフェタミン,MDMA などとは異なる作用機序を有している。 3) MAO-B 対する作用 MAO-B は神経細胞内のミトコンドリアに存在し,細胞内に取り込まれたドパミンやノルエピ ネフリンなどのモノアミンを酸化し脱アミノ化し分解する酵素である。MAO 阻害剤は,モノア ミンの分解を阻害し,シナプス間隙のモノアミン量を増加させる。しかしながらMP には MAO-B の阻害作用は認められなかった。 4) 脳内における MP の結合部位 MP のラット脳内組織における結合部位に関する試験結果を公表論文より記載した。MP のラ ット脳内組織における結合活性の強い部位は,線条体であり次いで脳幹であった。線条体の細胞 画分においては細胞膜を含む P2画分の中でもシナプス小胞を含む画分に結合がみられた。また, DAT は脳内の線条体に多く発現していることが報告されていることから15),16),MP は線条体 に存在するDAT に結合し,それに関連する神経回路を活性化するという機序が考えられる。 5) 光学異性体及び代謝物の作用 JNS001 の有効成分である MP は 2 つのエナンチオマーを持つ d,l-threo ラセミ混合物である。 Kula らは,DAT の阻害物質であり MP と競合阻害を示す β-CIT (2-β-carbomethoxy-3-β -[4’-iodophenyl] tropane)を用い, d 体の方が約 12 倍阻害活性が高いことを示していることから17), 本薬の薬効は主に d-threo-MP によるものであると考えられる。また,本薬の主代謝物である α-フ ェニル-2-ピペリジン酢酸 (PPA)は,脳内への移行量が少なく血液脳関門を通過しにくい(2.6.4.4,(1),2),②,(ⅱ)項参照)。更に DAT が多く発現しているラット脳線条体において MP の結合
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て p-hydroxymethylphenidate (p-OH MP)は PPA の次に多く認められる代謝物であるが(表 2.6.4-23 参照),MP と同等の DAT の阻害活性を有しており18),血液脳関門を通過する。しかし,MP の 血漿中濃度は p-OH MP の約 5 倍,脳内濃度を換算して比較すると約 3 倍高いことから,MP の方 が薬効発現への寄与は大きいものと思われる(2.6.4.4,(3)項参照)。 (2) In vivo 試験 1) AD/HD のモデル動物に対する MPH の作用 CTD2.6.2 においては,AD/HD のモデル動物のひとつとされる脳卒中易発症性自然発症高血圧 ラット(SHRSP)の結果を公表論文より記載した。AD/HD の自然発症モデルとしては SHRSP の原 系であるSHR の多動性が最も多く報告されている。SHR には多動性19)及び衝動性不注意20),21) というAD/HD に類似した行動学的変化が認められており,AD/HD 患者に観察されている DAT 密度の増加及びドパミン遊離量の低下などといったドパミン作動性神経機能の障害も報告されて いる22),23),24)。しかし,SHR においては,雌雄ともに多動であり,臨床でみられるような男性 に優勢的な障害は観察されない25)。一方,SHRSP は SHR の亜系であるが,自発運動量が SHR よりも亢進しており,雄性ラットに優勢的な多動が観察されている。神経生化学的変化について は,皮質前頭前野,側坐核,線条体及び扁桃体などで細胞外ドパミン濃度の低値といったドパミ ン作動性神経伝達の機能低下が観察されている26)。 ラットAD/HD モデル動物に対する MP の効果を幼若な SHRSP を用いて示した。SHRSP に対 しMPH の 0.01∼0.1 mg/kg を腹腔内投与することにより,多動性の指標となる新奇環境における 自発運動量が減少した。しかし,3 mg/kg 以上の腹腔内投与によって自発運動量の増加が観察さ れた。更に,注意力(集中力)の指標とした短期記憶をY 字迷路を用いた自発的交替行動法によ り評価したところ,0.01∼1 mg/kg の腹腔内投与において自発的交替行動率の増加が認められた。 本モデルラットにおける MPH の至適用量は 1 mg/kg 未満であると推察される。これらの結果は, MPH の AD/HD の臨床におけるに治療効果を示唆するものである。しかし,本モデルにおいては 3 mg/kg 以上の高用量において,多動性を促進することから,臨床においても AD/HD に対し至適 な用量が存在する可能性を示唆している。 2) PK-PD 的考察 ラットにおける in vivo の効力を裏付ける試験は,MPH の腹腔内投与にて実施されている。 0.01∼0.1 mg/kg の腹腔内投与では自発運動量の減少が,0.01∼1 mg/kg では自発的交替行動率の 増加が認められており,0.2 mg/kg は薬効用量であると考えられる。0.2 mg/kg の MPH を腹腔内投 与するとMP の血漿中濃度は投与後 15 分において 7.5 ng/mL(表 2.6.4-4 参照)であった。静脈内投 与した時のMP の脳内濃度/血漿中濃度比は投与後 2 時間まで 7.6∼9.1 (表 2.6.4-19 参照)である。MP の標的分子とされるDAT に対する Ki 値は 61.1 nmol/L (約 14 ng/mL)であり,0.2 mg/kg 以上の腹腔内 投与では脳内の濃度が約240~290 nmol/L (約 57∼68 ng/mL)に達すると概算され,DAT に対し阻 害作用を示すものと考えられた。0.2 mg/kg 以下の腹腔内投与における MP の血中濃度は技術的に 定量限界以下となると予想されたため,試験を実施しなかった。Volkow らは27)Positron emission tomography (PET)を用いた臨床薬理研究を実施し,MPH 投与量の体重補正値と DAT 占有率との間 には正の相関が認められ,ED50 (DAT 占有率 50%を示す用量)は経口投与において 0.25 mg/kg であり,
また血漿中 d-threo-MP 濃度と DAT 占有率との間には有意な相関性が認められ,EC50(DAT 占有率
50%を示す血漿中濃度)は 6.00 ng/mL であったとしている。このことから,薬剤投与後 2 時間における d-threo-MP の血漿中濃度が 6.00 ng/mL 以上であることが,AD/HD の治療用量の指標になると考察し ている。一方,高用量で作用が認められる可能性のあるNET については,その Ki が 716 nmol/L であることから,NET の阻害作用を発揮させるためには脳内濃度/血漿中濃度比及び分子量から計 算すると約18∼22 ng/mL 程度の MP の血漿中濃度が必要と算出され,治療効果への寄与は DAT に比べ小さいものと考えられる。 3) 反復投与における DAT 発現の変化 ラットにMPH を 2 mg/kg/日の用量で 2 週間反復飲水投与することで,対照群と比較して,線 条体のDAT 発現の低下が観察されることが報告されている28)。特に成熟期投与群よりも幼若期 投与群のほうが対照群と比較して有意なDAT 発現の低下が認められ,幼若期の方が MP の作用 が顕著に現れることが示唆された。一方,成人のAD/HD 患者に 15 mg/日の MP を 4 週間治療投
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与しDAT と特異的に結合する[99mTC]TRODAT-1 を用い,投与前後における DAT の発現量を比 較したところ,DAT 発現の低下が観察され,動物試験と類似した事象がみられている29)。 AD/HD 患者では線条体の DAT 密度が増加していることから,DAT の過剰発現によるシナプス間 隙のドパミン濃度の低下がAD/HD の発症原因の一つと考えられている。MP は過剰に発現して いるDAT によるドパミンの過剰取り込みを阻害するが,長期間の投与により DAT の発現を低下 させることも治療効果に寄与している可能性がある。 4) DAT 遺伝子ノックアウトマウスにおける MP の作用 DAT 遺伝子をノックアウトしたマウス(DAT-KO マウス)は新奇環境において自発運動の亢 進がみられ,MP 又はコカインの大量投与により自発運動の沈静化が認められることが報告され ている 30)。DAT は MP の標的分子とされているが,それを欠損した DAT-KO マウスにおいても, 高用量ではあるが沈静作用が認められることは,MP が DAT 以外にも標的を有している可能性を 示唆している。 上記のDAT-KO マウスにおいて,MP と同様に DAT の阻害作用を有するコカインは,線条体 においては細胞外ドパミン量に影響を与えないものの,前頭前野皮質においては細胞外ドパミン 量を上昇させ,これが沈静作用と関係するものと考えられた。線条体においてはDAT が比較的 多量に存在しており,線条体を含む大脳基底核へ投射するドパミン神経シナプスは細胞外のドパ ミンをDAT により再取り込みする。一方,前頭前野皮質に投射するドパミン神経シナプスにお いてはDAT は少なく,ドパミンの取り込みを NET が補っていると考えられる31),32)。したがっ て,DAT の阻害作用と同等に NET も阻害するコカインにより,前頭前野皮質のドパミンが上昇 したものと考えられる。MP は DAT の約 20 分の 1 程度ではあるが,NET に対しても結合するこ とから,DAT-KO マウスにおける MPH の沈静化作用は,NET の阻害による可能性がある。 5) 薬効に関する考察のまとめ AD/HD 患者においてはドパミン作動性神経細胞における神経伝達物質の生成不足,放出不十 分,フィードバック機構の亢進及び酵素的分解の亢進などにより,神経系における情報伝達が不 十分となり,衝動性のコントロール,作業への集中,短期記憶などが困難になっていると考えら れている。MP は主に線条体に多く存在する DAT に結合し,シナプス間隙に放出されたドパミン の再取り込みを抑制することにより,シナプス間隙にあるドパミンを増加させて神経回路の機能 を正常化するものと考えられる。 (3) 副次的薬理試験 中枢興奮薬を小児に長期投与することにより成長(体重増加や身長)抑制が認められることが 知られており,MPH が成長を抑制する可能性は多くの文献で指摘されている(2.5.1.2.2,(2)項参 照)。動物では,5-7 日齢の雌雄ラットに MPH を 1 日 2 回 21 日間反復皮下投与したとき,体重 増加抑制が35 mg/kg 以上という高用量で認められたことが報告されている33)。このとき,成長 ホルモンレベルの低下は3 mg/kg から認められたものの,雌においてのみの変化であったことか ら体重増加抑制と成長ホルモンレベルとは関連しないものと考察されている。実際,AD/HD 患 児にMPH を反復経口投与しても,成長ホルモンレベルに影響が認められなかったとの報告があ る34)。一方,本剤については,本邦における臨床試験において体重増加抑制が認められている (2.7.4.4,(3),1)項参照)。動物では,体重あたりに換算すると臨床推奨最大用量 54mg/日を上回 る用量である18 mg/日の JNS001 を雌雄ビーグル犬に 22 日間反復経口投与しても成長ホルモンレ ベルに著明な変化は認められなかった。したがって,本剤において認められた体重増加抑制にも 成長ホルモンレベルの低下は関与していない可能性が考えられる。 (4) 安全性薬理試験 今回実施した安全性薬理試験においてMPH 10 mg/kg 以上の経口投与でラットにおいて自発運 動や覚醒レベルの亢進などの中枢興奮作用が認められた。MPH の中枢興奮作用はよく知られて おり,本試験でも確認された。なお,オープンフィールド内における移動区画数及び立ち上がり 数に対する影響が100 mg/kg で減弱しているのは,常同行動及び異常行動が発現したことによる ものと思われる。
JNS001 2.6.2 薬理試験の概要文 MPH 30 mg/kg 以上の経口投与でマウスにおいて PTZ 誘発痙攣及び電撃ショック誘発痙攣を増 強した。MPH がマウスにおいてリドカインと併用することにより両者の痙攣誘発域値を下げる ことが知られているが11),MPH の痙攣増強作用は本試験でも確認された。本試験ではてんかん モデルとして知られるPTZ 誘発痙攣を増強したことから,そのメカニズムは不明であるがてん かん発作の閾値を下げる可能性が考えられる。そのため添付文書の慎重投与の項にて「てんかん 又はその既往歴のある患者[痙攣閾値を低下させ,発作を誘発させるおそれがある。]」として注 意を喚起した。 MPH 30 mg/kg の経口投与でイヌにおいて血圧が上昇した。MPH による血圧上昇は静脈内投与 した場合にも認められている12)。この血圧上昇作用は,ヒトにおいては交感神経系を介した作 用以外にも,中枢神経系におけるドパミン作動性神経活動の亢進とそれを介した末梢におけるエ ピネフリンの増加も関与しているとの報告がある35)。なお,急速活性化遅延整流カリウム電流 (IKr)及び摘出モルモット乳頭筋の活動電位に対しては無影響であった。 MPH 10 mg/kg 以上の経口投与でラットにおいて呼吸興奮作用が認められた。これは中枢興奮 作用によるものと考えられる。 以上のように,今回の承認申請にあたり実施した安全性薬理試験で,MPH10 mg/kg 以上の経口 投与で中枢興奮作用,30 mg/kg で痙攣増強作用及び血圧上昇作用が認められ,既に公表されてい るMPH の作用が確認された。また,今回の試験では 10 mg/kg 以上で呼吸興奮作用が認められた が,これは中枢興奮作用によるものと考えられ,マウス又はウサギを用いた毒性試験でも確認さ れている(2.6.6.2 項参照)。JNS001 は MPH を制御された速度で放出するように設計された放出 制御型徐放製剤であり,MPH 普通錠と比較して Cmaxが低いことから(2.6.4.3,(2),4),③項参照), MPH による上記作用に関して MPH 普通錠と比較して特に注意すべき点はないものと思われる。
2.6.2.7
図表
本文中に記載した。2.6.2.8
参考文献(2.6.1 及び 2.6.2)
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