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中国四川省における留守児童の暮らしと支援の課題 -四川省における涼リャン山シャンイ(彝)族自治州の調査を手がかりにして- 利用統計を見る

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中国四川省における留守児童の暮らしと支援の課題

−四川省における涼リャン山シャンイ(彝)族自治

州の調査を手がかりにして−

著者

尹 暁珊

著者別名

XIAOSHAN Yin

雑誌名

東洋大学大学院紀要

55

ページ

97-119

発行年

2019-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00010604/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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要旨

中国では、1980年代から実施した改革開放以降、高度経済成長した。そうした中、1990年 半ば以降、農民工の出稼ぎにより、戸籍制度の制限で地元に残された子どもたちの問題が現 在深刻な社会問題になるため、社会に注目されている。その上、中国中央政府、地方政府、 学校及び民間団体は、このような状況に危機感を抱き、留守児童への取り組みを明らかにし た。これらの取り組みはある程度成果を収めているが、中国四川省における留守児童の問題 の背景には、さまざまな環境と地域上の要因が複雑に絡み合っており、まだ改善すべきとこ ろも多い。 このような背景のもとに本稿では、中国四川省における涼山イ(彝)族の留守児童の暮ら しの実態と支援の課題を明らかにした。 キーワード:中国四川省、農村部、涼リャン山シャンイ(彝)族、留守児童、支援 目次 はじめに 1.中国四川省における留守児童が発生した背景 2.中国四川省における留守児童の人数、分布及び分布の特徴 3.中国四川省における留守児童を取り巻く諸問題 4.中国四川省における留守児童の支援の現状 5.中国四川省涼山イ(彝)族自治州における調査 6. 結論

中国四川省における留守児童の

暮らしと支援の課題

-四川省における涼

リャン

シャン

イ(彝)族自治州の調査を

手がかりにして-

福祉社会デザイン研究科ヒューマンデザイン専攻博士後期課程2年

尹  暁珊

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― 98 ―

はじめに

中国では、1980年代から実施された改革開放政策によって、経済が成長し始めた。そうし た中、1990年半ば以降、急速な経済発展を遂げる都市で、労働力不足が起き、一方、農村部 において農村生産力の向上による余剰労働力が生じた。これによって、「農民工」(都市戸籍 を持っていない出稼ぎ労働者)の都市部への流入が始まった。こうしたことは、農村社会内 部に大きな変動をもたらしたが、同時に農民とその外部環境にも変化を引き起こした。なか でも最も注目される現象は、戸籍制度の制限で、地元に残された出稼ぎ農民工の子どもたち の問題である。2013年の「全国農村留守児童・城郷流動児童状況研究報告」によると、全国 の農村留守児童は6,103万人に達している。 中国の研究者による「留守児童」についての研究は1990年代から始まった。1994年、一張 は「瞭望」の中で、初めて「留守児童」という言葉を使った。その言葉は、当時既にあった 「留守女子」、「留守男子」、と「留守老人」という言葉を模倣して作られたものである。当時 の「留守児童」とは、「両親が留学や仕事で海外へ行き、故郷の祖父母に預けられた子ども」 を指す言葉であった。 2000年の全国人口調査によると、「留守児童」とは「両親のどちらか、または両方が都市 へ出稼ぎに行き、残された子どもが、両親のどちらか、または祖父母や親せき、あるいは友 人に預けられた14歳以下の子ども」を指す、というものである。その定義は現在でも多くの 研究者によって使われている。2000年の調査によると、留守児童は2,443万人であった。 しかし、2008年の「我が国農村留守児童状況研究」によると、留守児童の年齢は「14歳以 下の子ども」から「18歳未満の子ども」に変わったことにより、留守児童の人数は5,861万 人になった。 また、2016年2月には「国務院関与加強農村児童間愛と保護の工作の意見」によると、「留 守児童」とは、「両親の両方または、どちらか一方が出稼ぎに行き、残された子どもを世話 する監護人に監護の能力がない場合の16歳未満の未成年者」を指す。2016年11月の調査の結 果から留守児童の人数は902万人へと変動した。 この研究では、子ども権利条約における児童の定義に従って2008年の定義を使用する。 ところで、中国には56民族いるが、そのうち、55が少数民族である。この留守児童問題は 55少数民族において顕著である。高度経済成長が進むにつれて、少数民族の生業形態の変化 が、山村住民の生業活動は農外就業を中心とした都市部の出稼ぎへと移行した。この変化 が、少数民族地域に残された子どもたちの生活に影響を与えている。中国の知網(CiNiiに 当たる)において、「少数民族の留守児童」をキーワードに検索すると、少数民族留守児童 の教育問題と心理問題に関する理論的な文献が多く、家庭での子どもの暮らしの実態調査は まだ少ない。したがって、理論的研究だけでは少数民族の留守児童の実態をリアルに反映し ているとは言えない。このことをもとに、本稿では、中国少数民族の留守児童の実態を明ら

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― 99 ― かにする一つの手段として、涼山イ(彝)族の留守児童を取り巻く生活の実態に焦点を当て て考察した。

1.中国四川省における留守児童が発生した背景

(1)四川省における出稼ぎの現状 イ族は四川省の南部に居住しており、四川省は中華人民共和国西南部に位置する省であ る。略称は川あるいは蜀であり、省都は成都である。西北部はチベットの伝統的な地方区分 でいうアムド地方の東南部、西部はカムの東部にあたる。四川省の面積は12,390km2であり、 2014年の総人口は8,140万人である。 四川省は余剰労働力の人数が多く、大都市に出稼ぎに行く人数はおよそ1,900万人に達す る。 2014年5月、四川省統計局は省内の出稼ぎ状況を調査した。その結果として、「2014年四川 省における都市部に出稼ぎに行く農民工現状の調査報告書の一、二、三」の三部の調査報告 を公表した。 報告書によれば、都市部に流出した労働者の月収入は、1,001~2,000元と2,001~3,000元の 間が多く、それが四川省における全出稼ぎ農民工の36%と31%を占めており、1,001元~3,000 元を合わせると67%に達する。つまり、都市部に出稼ぎに行く農民工の一人当たりの月収入 は2,694元である。2013年の四川省都市部における従業員一人当たりの月収入3,483元と比べ ると、800元近くの差がある(図1)。 6% 36% 31% 19% 5% 1% 1% 図 四川省における都市で出稼ぎの農民工の月収入(元) (出所: 年四川省における都市部に出稼ぎに行く農民工現状の調査報告書による 筆者作 成)

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― 100 ― (2)四川省における戸籍の制度 四川省における戸籍制度の制限は、留守児童数が多くなる一因となっている。留守児童の 問題が深刻化するにつれて、四川省が社会的に注目された。そのため四川省は、留守児童問 題を緩和するために戸籍制度の改革を試みた。 四川省成都市は2012年を目処に、戸籍は都市と農村を分けずに統一するという方針を打ち 出した。農民にも都市住民と同様に年金や失業保険など社会保障サービスを提供し、貧富の 格差を是正する狙いがあった。これには、中国各地で農村から都市戸籍への転換を促す施策 は実施されているが、戸籍を統一する試みは初めてである。成都市は1,000万人人口のうち、 およそ500万人が農村戸籍者である。 しかし、2014年、四川省における都市部に出稼ぎに行く農民工の現状調査報告書による と、都市の戸籍に変えたい人はわずか10.7%しかおらず、「状況による」と答えた人は32.7% であった。この原因として、戸籍を変えると、養老問題、住宅保障、失業保障などが不利に なるため、農村戸籍のほうが優位であると考えているからである。これは農村の土地を放棄 せずに保有しようとする割合が59.3%であり、農村の住宅を保有しようとする割合が57.4% であることからも読み取れる。 つまり、四川省戸籍改革の障壁とは、農民工自身が農村における利益を放棄せず都市でも 生活構築したいという想いがあるため、戸籍改革が順調に進まなかったと考えられる。また、 都市部における農民工の仕事は、サービス業と建築業に偏っている。社会保障のレベルは決 して高くなく、合法的な権益を維持する意識も強くないといった四川省における出稼ぎ従業 員の社会保障の実情が明らかとなった。 (3)四川省における流動児童の就学の現状 次に、2014年の四川省における都市部に出稼ぎに行く農民工の現状調査報告書をもとに、 流動児童の就学状況を調査した。流動児童の就学が難しい原因としては、「申請入学の制限 条件が多くて、基準が高い」という割合が46.5%であった。次に「入学の手続きは手間がか かる」という割合が31.0%で、「公立学校に入れない」という割合が29.6%であった1(図2)。 流動児童の就学に障壁があるため、子どもを都市部につれていく比率は減少している。そ れによって、留守児童数はおのずと増えることになる。流動児童の就学の障壁も留守児童問 題が発生する一因となっている。

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2.中国四川省における留守児童の人数、分布及び分布の特徴

(1)四川省における留守児童の人数及び分布 2013年の「全国農村留守児童・城郷流動児童状況研究報告」では、2008年の留守児童の定 義に沿って、留守児童は主に四川省、安徽省、河南省、広東省、湖南省および江西省に集中 していた。その6つの省における留守児童数が全国留守児童数の52%を占めている。その中 で、四川省の留守児童数は全国留守児童数の11.34%を占めている。つまり、中国における 留守児童はほぼ国内中西部に分布していることになる。 四川省では、留守児童に関するセンサスデータが毎年は公表されない。公的なデータは、 およそ4年おきに発表されることになっている。2006年~2013年末に行われた二回の公的デ ータによると、四川省における未成年者はおよそ1,200万人であった。そのうち留守児童数 は約368万人に達している(表1)。四川省の留守児童数は2006年から2013年までの7年間で約 68万人増えた。年間およそ2.83ポイントの割合で増加していることになる。四川省各地域に おける留守児童の分布状況は表2で表した。 図 四川省における流動児童の就学の障壁(%) 出所: 年四川省における都市部に出稼ぎに行く農民工現状の調査報告書による 筆者作成) 46.50% 31.00% 29.60% 26.80% 21.10% 5.60% 0.00% 10.00% 20.00% 30.00% 40.00% 50.00% 申請入学の制限条件が多くて、基準が 高い 入学の手続きは手間がかかる 公立学校に入れない 学校の不公平の待遇 転学困難、受け皿が無い 他 3 表  四川省留守児童数の推移   年  年  年 留守児童の人数(万人)    (出所:「中国四川省第三次留守児童調査資料」 年のデータによる 筆者作成)  

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― 102 ― 四川省留守児童に関する第1回データを公表して以降も、留守児童の集中地域はほぼ変わ らなかった(表2)。最も集中している地域は、「南充」、「广元」などであり、留守児童数が 20万人以上に達している。二番目に集中している地域は、「遂宁」、「自貢」、「綿陽」などで あり、留守児童数は10万~20万人程度であった。ほかの地域においては、留守児童数は減っ ていた。 (2)四川省における留守児童分布の特徴 四川省では、留守児童は一般的であり、しかし、その分布地域はアンバランスである。 「四川省間愛留守児童工作交流材料」によると、四川省の留守児童の分布は、以下のような 特徴があることを示している。 1)四川省の気候の特徴から見れば、主な留守児童は四川盆地の潤いのある気候区にいる ことになる。 2)等水線、等温線と等高線から見れば、主な留守児童は800~1200ミリの降水線、16℃~ 20℃の等温線と200~1000メートル等高線の地域にいることになる(図3)。 3)行政地域という点では、一般的には県を主体として留守児童の問題の程度を測る。留 守児童の問題と解決の可否はこの県の全体的な状況によって評価される。 4 表  四川省各地域留守児童の分布の状況                                 単位:万人,% 項目 全省 南 充 广元 广安 泸州 遂 宁 自 貢 綿 陽 徳陽 以下略 留守児童          - 留守児童 比例          - (出所:「中国四川省第三次留守児童調査資料」 年のデータによる 筆者訳)   5         図  四川省年間降水量の状況  

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― 103 ― 4)四川省の地形(図4)から見ると、四川省の地形比率は山地:丘陵:平原:高原= 74.2:10.3:8.2:7.3であり、山地と丘陵がそのほとんどを示している。丘陵地域は昔からの 農法による農業で生活を立てており、経済的にも苦しい状況にあり、四川省の留守児童の多 くはこの丘陵地域に居住している。 以上のことから、四川省における留守児童の分布に影響を与えている要素には、気候、降 水量、地形、行政地域などが関連していることが分かる。

3.中国四川省における留守児童を取り巻く諸問題

(1)四川省における留守児童の一般的な諸問題 四川省における留守児童問題は、「中国国内における留守児童問題の普遍性」と「各地域 における留守児童問題の特殊性」の両面を持っている。国内における留守児童問題について は、大きく「学習面」、「生活面」、「心理と行為面」の3つに分類した。 1)学習面について 四川省の留守児童の成績は低下している。それは、父母或いは監護人が留守児童の成績に 関心を持ってはいても、留守児童の成績が良くなるために直接力を貸すことがないからであ る。留守児童と非留守児童の成績差はそれほど大きくないが、父母が出稼ぎに行くため、多 くの留守児童は成績が下がる傾向にある。 また、留守児童は勉強の目標を明確にできない、自信が不足している、勉強に興味が持ち にくい、勉強方法を間違えているなどの問題も起きている。特に高学年の不登校学生や、大 学生の就職低迷の影響により、多くの留守児童が勉強への意味に疑問を持ち勉強意欲が低下 したり、あるいは勉強意欲をなくしたりしている。こうしたことが、留守児童の不登校に一 定の影響を与えていると考えられる。 6           図  四川省の地形の分布  

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― 104 ― 2)生活面について 留守児童は父母が側にいないため、監護人の能力と監護の方式が児童により異なる。その ため、留守児童の発達は各自家庭の生活環境から影響を受けることになる。 また、留守児童の飲食習慣はアンバランスになっている。例えば、留守児童がバランスよ く栄養を取らず、お菓子を食べるなどして、栄養不良や栄養過剰の問題が起きている。 さらに、監護人が高齢者の場合、あるいは衛生環境が整っていない場合にも、留守児童の 衛生的な習慣に影響を与えることがある。例えば、留守児童の髪の清潔とカットや、服を着 替える、お風呂に入るなど身の回りの衛生問題は無視できない状況にある。 2012年の「四川省農村留守児童健康状況及び相関行為研究」によると、四川省における留 守児童の健康状況は全国児童の健康状況に比べ悪く、病気にかかる率も増加傾向にある、と 記述されている。したがって、留守児童の健康問題には十分に注意する必要がある。 高年齢の留守児童は家を掃除するなどの家事負担が重くなり、勉強時間が少なくなる。 その他、留守児童の消費観にも問題が存在する。両親が側にいないため、小遣いを多くも らって、勉強用品を買うつもりがお菓子を買ったり、ネットバーやゲームセンターで消費す る場合もある。つまり、留守児童の金銭管理の能力が弱いといえる。 3)心理と行為面について ある行為の習慣は、その人の心理を外在的に表現していると言われる。 留守児童は注目されすぎたり、あるいは注目が足りなかったりするなど極端な状況に置か れているため、親に放棄されたという感覚もあり、両親が遠距離にいるという心理的距離感 も重なって次第に、性格も歪んで形成されてしまう傾向にある。 (2)四川省における留守児童の特有の諸問題 1)留守児童の顕著な低年齢化 中国では、大規模出稼ぎ流出が1990年代から始まり、同時に留守児童も増加してきた。西 南地域の農民工は東南沿海地域に出稼ぎ行くだけではなく、一部分は山西、河北などの地域 にも出稼ぎに行っている。楊・張は80年代末と90年代初期に留守児童として育てられた者が 親になり、子どもを産んでからまた出稼ぎに行き、子どもを故郷に残すということを指摘し た。これらの子どもが低年齢の留守児童になっているという特徴がある。 2)高齢化問題が留守児童問題の解決の壁 四川省は、留守児童数が国内一位であるとともに、四川省の高齢者数は国内二位である。 高齢人口比率から見れば、重慶より低く全国二位である。高齢者の増加率から見ると、四川 省が同じく二位であった。

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― 105 ― 中国で南開大学の調査によると、中国では41%の高齢者が家族にケアされていることを示 している。 四川省の高齢化(表3)がますます増加していることから、高齢化問題と留守児童のダブ ルケアという問題は留守児童問題の解決への障壁になる可能性が高い。 3)四川省における多数の少数民族 「四川省涼山イ(彝)族自治州留守児童現状調査」によると、少数民族の生活習慣と言語 的制約が、四川省の留守児童問題の解決の壁になると見られている。 4)四川省における現代農業の発展に及ぼす地形的制約 丘陵地形には交通、土地のコスト、人口密度などの制約要素があるため、コスト予算が高 くつく。また、丘陵地域に要する財政支援は、丘陵地域に使われず、ほぼ平原地域に投入さ れた。 5)農業の現代化改革に立ちはだかる土地の請負制度 土地請負制度は小規模農業を維持せざるをえず、現代農業改革が進めにくい。したがって、 農家が貧しいままで、両親が出稼ぎに行かざるをえないことになる。 これらも留守児童の解決の壁になると見られる。 以上の諸問題をふまえて、四川省に留守児童の問題に対して各方面からの支援が求められ る。

4.中国四川省における留守児童の支援の現状

(1)四川省各地域における留守児童の支援策 留守児童に対する支援策には国内で実施しているもの以外に、四川省の特有問題に対応し 7 表  ~ 年四川省の高齢化の推移  年    四川省における高齢者 の人数と割合        年  年  年 四川省における  歳以上高齢者(万人)    四川省における  歳以上高齢者は全国の  歳以上 高齢者に占める割合(%)    (出所:四川省社会科学院経済研究所に公開されたデータによる 筆者作成)    

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― 106 ― て特有の支援策を実施している。そのうち、4つの支援策を紹介する。 1)各地域では、その地域に住む留守児童の状況によって、柔軟な支援策が実施されてい る。これらの支援策は一定の効果を得ている。例えば、遂宁では、「団委、各部門、社会」 という「三位一体」、内江では「五方連動2」、楽山では「三連合3」、宜濱では「四部曲4」と いうパターンモデルが確立された。 2)ネットを媒介して留守児童の現状が広くに知られてから、留守児童が注目され、社会 全体の協力を借りて、留守児童の差別解消へと繋げている。 3)四川省では、就学段階での留守児童を主体としたパターンモデルが始まった。留守児 童自身が主体となり「自我愛護、自我管理、自我サービス」といった支援策を実践してい る。 4)「一主他補」というパターンモデルが、各地の留守児童への支援に新しい局面を与え、 社会における留守児童への「支援の混乱」が是正された。これにより、留守児童の問題への 緩和効果が見えてきた。 2016年2月、「国務院関与加強農村児童間愛と保護の工作の意見」が公布されてから、各地 の地方政府もまた各地域の具体的な事情に合わせた政策を講じてきている。四川省も、2016 年12月に「四川省人民政府関与・加強農村留守児童の間愛保護工作的実施意見」を発布し た。この意見を未成年者の健康基点として、家庭強化の責任、政府の主導機能、強制報告、 応急対応、評価と救助メカニズムが実践されている。2020年までに、全省90%の郷・鎮、80 %の村及び農村寄宿制学校で留守児童に対する活動場所と必要な施設が開設され、全省にお ける留守児童への援助システムが確立されて社会全体が留守児童を保護する意識が高まっ た。それによって、留守児童の成長環境が改善され、安全が保障され、留守児童数を顕著に 減少させるという目標が達成されようとしている。 この意見の一つの特徴は、四川省が留守児童に監護指導、心理ケア、行為改善などの専門 的な支援サービスを購買方式で進めていくことである。 (2)四川省における「青神パターン」 四川省各地域においても、留守児童問題を緩和する支援策は多様である。なかでも、四川 省青神県で実施した「青神パターン」は留守児童問題を緩和する効果を収めたことで有名で ある。ここでは、具体例を挙げて検討していく。 四川省における青神県は、留守児童を中心とした学校、家庭、社会の「三位一体」模式図 を立案した(図5)。

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― 107 ― 青神県は留守児童ファイルを健全化し、留守児童を分類して教育方法を個別に設定した。 また寄宿制の学校を開設し、村と組に「預ける家」を設立し、カウンセリング室や親子の活 動室を開設して、安全講座を行うなどの活動により留守児童により良い成長環境を提供し た。 青神県は、留守児童に対する実践を重ねた特色ある「青神パターン」となっている。この パターンモデルの基本的な特徴は以下の通りである。 1)実施主体を一つにすることを明確にする。政府は留守児童に対する援助の主体として、 職員、責任、措置、財政等の方策を確保する。 2)リーダの組織を明確にする。政府は婦児工委をリーダ組織にして、日常的な工作を順 調に進めていく。 3)責任を取るべく組織や個人を明確にする。政府―主管部門-郷・鎮-村・組の流れで 工作を進めていく。 4)工作の一つの重点を明確にする。留守児童の健康的な発達を促進し、留守児童の生存 権、発達、参与の権利を保障する。 5)各部門を連携する。社会、家庭、学校の連携を図り、留守児童の最新情報を共有して 留守児童の発達を促進する。 6)留守児童のために、ケアのネットワークを作る。社会全体が留守児童問題を解決する ために、ケアのネットワークを作る。 留守児童の問題を解決には、専門性は不可欠な条件であると考えられるが、「青神パター ン」は、専門性の弱いことが限界である。 「青神パターン」は留守児童の問題解決を緩和する一定の効果を収めたが、このパターン モデルは他地域の留守児童に応用されてきたものの、四川省の少数民族という言語、習慣、 文化が違い、留守児童年齢の制約などもあるため、少数民族地域の留守児童に適合するかど うか、およびその実効性は課題として残る。 8  図  青神パターン「三位一体」  

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5.中国四川省涼山イ(彝)族自治州における調査

(1)調査地域の選定 四川省の涼山イ(彝)族自治州の地理位置、地形と気候の特徴から検討していく。 1)四川省の涼山イ(彝)族自治州の地理的位置 本研究は、中華人民共和国四川省の涼山イ(彝)族自治州を調査対象地とした。涼山イ (彝)族自治州5は、中国四川省の南に位置する民族自治州である(図6)。この地域は、イ族 人口が民族の半数近くを占めている。2003年の統計では、全州人口4,154,827人のうち、漢族 が2,187,984人、イ族が1,815,539、回族18,778人、チベット族64,540人、モンゴル族26,823人、 その他41,163人となっている。 涼山イ族自治州人民政府の所在地は、西昌市である。西昌市(XICHANG・シーチャン) は、四川省、涼山イ族自治州西南部に位置する県級市である。全人口574,224人、農業人口 は38万人で、少数民族の人口は総人口の18.77%で、漢民族のほかイ族・回族・チベット民 族など28の民族で構成されている。2011年に涼山イ(彝)族自治州の共青団委の統計による と、留守児童は36,011名(在籍の学生のみ)である。農村児童20名のうち1名が留守児童に あたる。 2)四川省の涼山イ(彝)族自治州地形の特徴 涼山イ族自治州の地形は複雑多様で、地勢としては北西側が高地で、東南側が低地になっ ている。高山、深穀、平原、盆地を有し、丘陵は交錯し、海抜最高5,958メートルの木里県 は、ちょうど朗ドルジ峰、最低の雷波県大岩穴金沙江穀305メートル、相対高度差が5,653メ ートル、多数の峰は海抜4,000メートルを超える。木里西部と甘孜州稲城境界のちょうど朗 ドルジ峰海抜は5,958メートルで全州最高地点に位置する。雷波県大岩穴金沙江の河穀海抜 は325メートルと全州最低地点に位置している。山穀の相対高度差は5,633メートルである。 3)四川省の涼山イ(彝)族自治州の気候の特徴 涼山イ(彝)族自治州は、亜熱帯気候である。大部分の地域は四季がはっきりしているも 9     図  中国四川省における涼山イ(彝)族自治州  

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― 109 ― のの、冬は暖かく、夏は涼しく、乾季は日照時間が長く、年平均気温14℃~17℃で、年間日 照時間数は2,000~2,400時間、日照放射線量は120~150㎠であり、雨季が年間降水量は1,000 ~1,100ミリであり、無霜期間は230~306日ある。独特の光熱資源や気候条件は農作物を成 長させ、四川省の涼山イ(彝)族自治州の専門家に「天然のビニールハウス」とも言われて いる。 4)四川省涼山イ(彝)族自治州の農作物と経済 涼山イ族自治州の農作物は主にトウモロコシ、ジャガイモなどである。涼山イ族自治州の 気候条件は農作物の成長に良い環境を与えているが、涼山イ族自治州の地形条件による制約 から一人当たりの耕地は少ない。農民が農産物を収穫すると定期市で売ったり、近くの仲買 人に売るなどして生計を立てる。しかしその収入は、家族の1年分の生活費には足りず、そ のため大勢の人が出稼ぎに行っている。 涼山イ族自治州の2015年の統計データによると、農村部一人当たりの年間収入はおよそ 9,422元で、都市部一人当たりの年間収入は24,084元である。 (2)調査対象の選定 調査対象は、四川省涼山イ(彝)族自治州のA学校における留守児童の保護者および留守 児童とした。A学校は自治州人民政府の所在地である西昌市にあり、この学校は中学生と高 校生、また漢民族と混合している学校である。文化の側面から見れば、この学校が漢民族と イ民族の「融合」といえる。学校は、寄宿制を実施している。そして、言語の壁を越えた学 生の相談内容は、信憑性が高いと考えられる。 (3)調査の方法 四川省涼山イ(彝)族自治州のA学校において、筆者はボランティア活動をきっかけにし て104名の学生と出会ったが、その中から18名の留守児童に対してインタビュー調査を行っ た。調査の項目は基金会に義務付けられた調査項目と筆者が作成した質問項目とからなる。 一人15分くらい教師事務室で面談しながら子どもの話を聞いた。 (4)倫理的配慮 本調査は対象者及び関係者に対して本研究の目的を説明し、協力を得た。なお、本研究は 東洋大学研究倫理審査委員会の承認を得た。 (5)分析方法 基金会が設定している質問項目と筆者作成の質問項目による内容を記述し分析した。

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― 110 ― (6)調査の分析 18名の留守児童について 1)年齢(表4) この任意抽選による18名の留守児童の構成は、男子が4名、女子が14人である。 12~14歳の男子は0名で、女子は2名である。 15~17歳の男子は4名で、女子は9名である。 それ以外に、女子では、20歳1名と18歳2名がいって、3名とも中途退学経験者である。 涼山イ(彝)族自治州と中央政府では、義務教育における入学年齢が6歳であると定めら れている。ここから推算すると、通常高校入学の年齢は15歳である。しかし、16名のうち、 12名の年齢は通常の高校入学年齢の15歳をオーバーしている。この地域で中途退学すること によって、学年は同じだが、年齢は高くなっている。 10 表   名留守児童の基本的な家庭状況(一)  性 別 民 族 年 齢 家 族 人数 きょう だい人 数 性 格 特徴 学年 夢 悩みの 学科 出 稼 ぎ の 時間帯 出稼ぎ先 $ 女 イ 族    内 向 的 中学校 一年生 軍人 数学 一年以上 新疆 % 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 数学 一回年 福建省 & 男 イ 族    内 向 的 高校  年生 大学 英語 た ま に 帰 る 決まっていな い ' 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 い い 仕事 化学 た ま に 帰 る 決まっていな い ( 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 大学 物理 両 親 交 替 に出稼ぎ 決まっていな い ) 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 い い 仕事 英語 一回年 山東省 * 男 イ 族    外 向 的 高校  年生 医者 英語 一回年 新疆 + 男 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 英語 た ま に 帰 る 決まっていな い , 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 教師 化学 季節性 新疆 - 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 化学 決 ま っ て いない 決まっていな い . 男 イ 族    外 向 的 高校  年生 大学 英語 決 ま っ て いない シンセン / 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 教師 数学 一 年 ぐ ら い 山東省 0 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 い い 仕事 政治 決 ま っ て いない 決まっていな い 1 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 数学 季節性 新疆 2 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 軍人 英語 不詳 不詳 3 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 教師 不詳 決 ま っ て いない 決まっていな い

(16)

中国四川省における留守児童の暮らしと支援の課題 ― 111 ― 2)性別 中国2010年第6次人口普査資料によると、留守児童の割合は、12歳~14歳で男子が8.71% で、女子は7.61%である。15~17歳では、男子が7.04%、女子が6.30%である。 中国国内の留守児童の割合は、男子が54.08%であり、女子が45.92%である(表5)、留守 児童数は、男子が女子より多いといえる。男子が女子より多い理由として、中国には昔から 「重男軽女」という家庭観念があり、男子を望む家庭が多く、それが農村の男女比率に反映 されている。 しかしながら、今回の調査では、18人中、男子4名、女子14名で、女子が男子より多い (表4)。 中国の一人っ子政策には少数民族政策の優遇措置があり、イ族も「重男軽女」思想の影響 により男児を望むことから、男児を生むまで子どもの数が増え続ける結果、逆に女子の方が 多くなったと見られる。 11 4 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 大学 英語 一回年 北京 5 女 イ 族    外 向 的 中学校 一年生 歌手 英語 一回 月 ( 季 節 性) 内モンゴル (基金会調査票と筆者の質問項目による 筆者作成)   10  性 別 民 族 年 齢 家 族 人数 だい人 数 性 格 特徴 学年 夢 学科 時間帯 $ 女 イ 族    内 向 的 中学校 一年生 軍人 数学 一年以上 新疆 % 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 数学 一回年 福建省 & 男 イ 族    内 向 的 高校  年生 大学 英語 た ま に 帰 る 決まっていな い ' 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 い い 仕事 化学 た ま に 帰 る 決まっていな い ( 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 大学 物理 両 親 交 替 に出稼ぎ 決まっていな い ) 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 い い 仕事 英語 一回年 山東省 * 男 イ 族    外 向 的 高校  年生 医者 英語 一回年 新疆 + 男 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 英語 た ま に 帰 る 決まっていな い , 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 教師 化学 季節性 新疆 - 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 化学 決 ま っ て いない 決まっていな い . 男 イ 族    外 向 的 高校  年生 大学 英語 決 ま っ て いない シンセン / 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 教師 数学 一 年 ぐ ら い 山東省 0 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 い い 仕事 政治 決 ま っ て いない 決まっていな い 1 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 教師 数学 季節性 新疆 2 女 イ 族    内 向 的 高校  年生 軍人 英語 不詳 不詳 3 女 イ 族    外 向 的 高校  年生 教師 不詳 決 ま っ て いない 決まっていな い

(17)

― 112 ― 3)性格(表4) 18名の留守児童のうち、10名の性格は「内向的」で、8名の性格は「外向的」で、内向的 な性格のほうが多かった。 4)夢と悩み(表4) 18名の留守児童の夢については、4名が「いい大学に入りたい」、7名が「教師になりたい」 と記述した。しかし、「なぜ大学に入りたいか、なぜ先生になりたいか」を質問したところ、 「具体的な理由もないが、単に周りの人と両親にいつも言われたから」と回答した。 18名の留守児童に、「一番夢中になっていること」と「一番の悩み」について聞いたとこ ろ、最も頻繁に出てきた回答が両方とも「勉強」であった。 5)出稼ぎ先(表4) 18名の留守児童の両親の出稼ぎ時間帯は、家庭の具体的状況によって様々であった。帰る 回数と時間帯は出稼ぎ先や職種が関係しており、省内で仕事をする場合は家に近いため、帰 る時間帯が固定的ではない。一方、省外に出稼ぎに行く場合は一年一回のみ家に帰る場合も ある。また季節性の出稼ぎは、地域によって帰る時間が決まらない場合もある。 この地域の労働者の大部分は建築現場や新疆へ出稼ぎに行っている。農村部に残った者 も、春の田植えや秋の収穫の農繁期には家にいるが、農閑期になると出稼ぎ先の労働力にな っていく。したがって、母親と一緒に住んでいる留守児童の割合は高い。 6)18名の留守児童の家族世帯のタイプ別構成 12 表 農村留守児童の性別年齢の構成比率()  (出所:「中国  年第六次人口普査資料」 年のデータによる 筆者作成)   年齢(歳) 留守児童 人口 万人) 農村留守児童の性別年齢の構成比率() 男 女 男女合計 生別比率 ~      ~      ~      ~      ~ 合計     

(18)

― 113 ― 18名留守児童の家族世帯のタイプは以下の通りである(表6)。 第1タイプ(児童1人のみ)は、1名で、児童の年齢は17歳で比較的高く、両親は新疆に出 稼ぎに行き、本人は1人で村に残り、単独で生活している。この生活の状態が3年ぐらい続い ていた。 第2タイプ(片親と一緒)は、全部が13名で、そのうち、11名は母親と一緒に暮らしてい た。ただ、この場合には別に住んでいる祖父母の面倒を見なければならない。かつ、このタ イプの家庭構成にとっては300ムー以下の畑があるため、固定的な収入がある。また、2名は 父親と一緒に暮らしていた。この「父親と一緒」のタイプでは、一人は父親が村の村幹部 で、固定的な収入があるため、母親が出稼ぎに行くことになった。もう一人は家庭の事情に より、母親が出稼ぎに行くことになったためである。 第3のタイプ(片親、祖父母と一緒)は、2名で、そのうち、Eさんの状況は、祖父母の面倒 を見るため、両親が交替して出稼ぎに行く形をとっている。一般的には、畑があり、同居し ている祖父母の面倒を見ることになる。 第4のタイプ(祖父母と一緒)は、1名で、祖父母は60歳台で健康状況は良好で、子どもの 面倒を見られる状況である。全国の農村留守児童調査によると、祖父母と一緒の比率が最も 高く、全国留守児童の25.6%を占めている(表7)。したがって、この比率は家庭の固定収入 と祖父母の健康状況に関係があると考えられる。 第5のタイプ(その他の親戚と一緒)は、一人で、親戚と一緒に住んでおり、父親は働い ているが、精神不良のため、父親と経済的な関係だけであった。 農村における留守児童の家庭構成のタイプから、二つのことが指摘できるのではないだろ うか。一つ目は、片親と一緒に暮らしている留守児童の人数が多いこと。二つ目は、この地 域の親が出稼ぎに行く原因は固定の収入と祖父母の健康状況に関係があることである。

(19)

― 114 ― 7)18名の留守児童の家庭収入 涼山イ族自治州の2015年の統計データによると、農村一人当たりの年間収入はおよそ9,422 元である。 この18名の留守児童家庭のうち、一人当たりの年間収入が9,422元を超えている家庭は、2 世帯しかない(表8)。16名の留守児童家庭の一人当たりの年間収入は、9,422元を超えてい ない。出稼ぎによる収入が、家庭収入の主な収入であるが、平均的に、この18名の留守児童 の家庭の一人当たりの年間収入はかなり低いことが分かった。 13 表 中国四川省における涼山イ(彝)族自治州留守児童における家族構成のタイプ           (基金会のデータのもとに筆者作成)   留守児童における家族構成のタイプ 各タイプに属する児童  児童一人のみ *   片親と一緒 ()母親と一緒 5 $ %  ' ) + , - / 0 3 ()父親と一緒 . 1  片親と祖父母 ( &   祖父母と一緒 4  その他親戚と一緒 2 合計  人 14 表  中国農村留守児童の家族構成の分類(%) (出所:段成栄・楊舸()「我国留守児童状況研究」  ,-  筆者訳)   留守児童における家族構成のタイプ 全留守児童に占める割合 %   児童  人のみ   母親と一緒   父親と一緒   父親、祖父母と一緒   母親,祖父母と一緒   祖父母と一緒   その他親戚と一緒  合計  15 表  名留守児童の家庭収入 単位:元、人 (基金会調査票と筆者の質問項目による 筆者作成) 名前 出稼ぎの月収入 年収入 家族人数 一人当たりの年収入 $     %    ~ &    ~ ' +   ~ (    ~ )    ~ * +   ~ + ~   ~ , ~ ~  ~ - ~ ~  ~ . ~ ~  ~ / ~ ~  ~ 0 ~ ~  ~ 1 ~ ~  ~ 2     3    ~ 4 + ~  ~ 5    ~

(20)

中国四川省における留守児童の暮らしと支援の課題 ― 115 ― (7)本研究の調査結果は、以下のとおりである。 1)調査地域においては、中途退学によって、同じ学年においても年齢が高くなる傾向が 見られる。(16名のうち、12名の年齢は通常の高校入学年齢の15歳をオーバーしていた。) 2)イ族の留守児童の性別から見ると、女子の人数が男子より多い。(女子は14人、男子は 4人であった。) 3)留守児童のきょうだいの人数が多い場合は、性格が多様になることが見られた。逆に きょうだい数が少ない場合は、性格が内向きを記述した子どもが多かった。 4)留守児童の悩みは、学校の成績についてである。悩みの具体的な学科は英語である。 留守児童の将来の夢は「教師」と「良い仕事」につくことである。 5)この地域では出稼ぎ先が西部に偏っている。 6)この地域の農村における留守児童の家庭構成のタイプから、二つのことが指摘できる。 一つ目は、片親と一緒に暮らしている留守児童の人数が多いことである。二つ目は、この地 域で出稼ぎに行く理由は、固定の収入と祖父母の健康状況と関係があることである。 7)出稼ぎ収入が家庭収入の主な収入である。そして、この18名の留守児童家庭の一人当 たりの年間収入は、平均的にかなり低いことが分かった。

6.結論

本研究で実施した調査結果をふまえて留守児童の現状と支援の課題をまとめると以下のと 15 (基金会調査票と筆者の質問項目による 筆者作成) 名前 出稼ぎの月収入 年収入 家族人数 一人当たりの年収入 $     %    ~ &    ~ ' +   ~ (    ~ )    ~ * +   ~ + ~   ~ , ~ ~  ~ - ~ ~  ~ . ~ ~  ~ / ~ ~  ~ 0 ~ ~  ~ 1 ~ ~  ~ 2     3    ~ 4 + ~  ~ 5    ~

(21)

― 116 ― おりになる。 (1)経済的問題 この地域の固定収入は低い。この地域には気候と地形の影響があるため、現代的な農業改 革の推進が難しい。よって、伝統的な農業による収入しか生活を支えられないため、出稼ぎ に行かざるを得ない実態が明らかになった。 この地域の多くの人たちは、政府の最低生活保護と社会の寄付金を受給し、受給者らの最 低生活需要を満たせるが、それ以上を保障できていないため、結局この地域によこたわる根 本的な問題が解決されていない。この地域の地形と気候の条件は変えにくいが、民族の特色 と地域の文化を広報し、地域の観光業を発展させ、農民が地元で農業をしながら観光業を兼 業として働けたら、充実した生活を送れるだろう。くわえて、政府は民族の経済発展を政策 的に保障し、「外資引入」の便宜を図ることや国からの補助金支給制度も必要ではないかと 考える。 (2)民族差の問題 2015年の「農民工観測報告」によると、農民工の流出地は主に経済が発達している東部地 域に集中している。しかし、この地域の人々の出稼ぎ先は、西部に偏っていることがわかっ た。東部地域では、賃金と労働条件が良いが、東部地域では、イ族出稼ぎ労働者が排除され る場合があるため、出稼ぎ労働者が賃金と労働環境の一般的な西部地域に行くことがインタ ビュー調査からわかった。この地域の出稼ぎ先が西部に偏る原因は二つに分けて考えられ る。一つは、西部大開発政策によって大量の人力と資金が投入されるため、労働者が必要に なるからである。もう一つは、中国西部地域が少数民族多文化共生地域であり、少数民族が 集中している地域だからである。多元文化の共生を通し、少数民族間が理解されやすいこと が考えられる。このことから考えて、イ族が東部地域にも出稼ぎに行けるようになるために、 東部地域においても少数民族との共生社会の構築を進める必要があるのではないだろうか。 (3)教育的問題 この地域において、不登校を経験した留守児童が学校に戻っても進級に至らずに、同じ学 年の学生年齢と比べると、不登校を経験した留守児童の年齢は高くなる傾向にある。四川省 の「涼山イ(彝)族自治州留守児童現状調査」では、15~17歳の留守児童の中で86%の留守 児童は「不登校状態にある」、あるいは「不登校の経験がある」と指摘されている。しかし、 不登校の学生に対して長期間不登校のままの状態におかれるという問題もあるが、彼らがや がて学校に戻ってくる。このように、事情により不登校になっても、また学校に戻っている ことで、少数民族の義務教育の徹底化という効果を果たせているのではないかと考えられる。

(22)

― 117 ― また、この地域の留守児童の将来の夢は、教師が多い。「四川省の涼山イ(彝)族自治州 留守児童現状調査」では、この地域が中国の「辺縁化」であるため、留守児童にとって得ら れる情報が少ないことが指摘されている。子どもにとって入手した情報の大部分が教師から 教わったことである。その結果、留守児童は情報不足に陥るため、視野が狭くなり、将来の 夢が教師に偏りがちになる。留守児童の視野を広げるためには、ボランティアなどの多様な 人材である意味ある大人との出会いによる多くの体験や知識の増加が大事ではないかと考え る。

参考文献・引用文献

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(23)

― 118 ― 182-184。 李 強・臧 文斌(2010)「父母外出が留守児童に及ぼす健康への影響」『経済学』10(1), 342-362。 林 細華・沈 敏・王 琳・王 友潔(2010)「中国農村留守児童心理健康状況的Meta分析」。

参考・引用URL:

https://ja.wikipedia.org/wiki/(2016.11.2閲覧)。 http://image.baidu.com/search/detail(2016.12.3閲覧)。 http://image.baidu.com/search/detail(2016.12.3閲覧)。 http://www.gazx.org/content/2012-8/30/2012830160008.htm(2016.1.9閲覧)。 http://www.gazx.org/content/2012-8/30/2012830160008.htm(2017.1.9閲覧)。 http://www.vt81.com/view/150693.htm(2016.11.21閲覧)。

1 多選択のために、比率が100%に満たさない。 2 五方連動とは党政、部門、家庭、学校、社会の連動を指している。 3 三連合とは学校、社会と家庭の連合である。 4 四部曲とは①留守への愛護、②健康教育、③豊かな活動、④各界の監督である。 5 自治州は中華人民共和国の行政単位のひとつで、省クラスと県クラスの行政レベルの中 間で、少数民族に自治権が付与された地域クラスの行政体である。中国の少数民族の自 治行政体としては省クラスの自治区や副省級クラスの副省級自治州、県クラスの自治 県、さらに下級の自治郷もある。

(24)

― 119 ―

Abstract

Since the reform and opening took place in the 1980 's, the Chinese economics has grown rapidly. Under such circumstances, from the mid-1990s, because of migrant workers of farmers, the problem of left behind children in the local area has become a serious social problem. At the same time, the limitation of family registering system, also aroused widespread attention in society. Therefore, the Central Government of China, local governments, schools and private organizations have recognized the crisis in these situations and made huge efforts towards left behind children. Although these efforts have been achieved to some extent, the background of the problem of left behind children in Sichuan Province, were complicatedly intertwined with various environmental and regional factors, and there are also many points to be improved. Under this background, this paper aims to clarify the actual situation of living conditions of left behind children in Liangshan Yi (彝) Autonomous State in Sichuan Province, China. Keywords:Sichuan Province, rural areas, Liangshan Yi (彝) Autonomous State, left behind children, support

Living status and support of left behind children in

rural area of Sichuan Province, China - A survey of

Liangshan Yi (彝) Autonomous State in Sichuan

province

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