保育者のジェンダー意識と保育実践に関する研究

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人間教育専攻 幼年発達支援コース 高橋 拳斗 第1章 問題の所在と研究の目的 近年ではジェンダーやセクシュアルマイノリ ティに関する研修や学習講座が多く開催され、 幅広い年代の人たちに「性」の問題意識を形成 する学習の場が増えている。平成11 年に改訂 された保育所保育指針から「子どもの性差や個 人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な 意識を植え付けることがないよう配慮すること」 という内容が記載された。また、保育における ジェンダーや男性保育者の問題について、保育 者が直面する場面も多くある。ジェンダーやセ クシュアルマイノリティに関する配慮や知識を もっていても、遊びや指導の場面において、ジ ェンダー・バイアスと思われるような事例が未 だに多くあるように感じる。 そこで、本研究では第一に、保育者が抱いて いるジェンダー意識やジェンダー観について調 査をする。ジェンダーに関してどのような理解 をしているのか、今までにジェンダーやセクシ ュアルマイノリティについて学ぶ機会はあった かどうか等、保育者自身のジェンダーに対する 意識の実態を明らかにしたい。第二に、ジェン ダー・フリーな保育実践の実清を調査し、現在 の幼稚園や保育所、認定こども園では、どのよ うな取り組みが実践されているのかを明らかに する。そして、保育者の意識と保育実践との間 にある隔たりを分析し、ジェンダー・フリーな 保育が実践として、広く普及するための手立て を検討することを目的とする。 保育者のジェンダー意識と保育実践に関する研究 指導教員 木村 直子 第2章 先行研究の検討 Dawson,J. (2018)によると、ジェンダー の規範の中には個人の名前、衣服、色、髪型、 持っているおもちゃ、制服、体育の時間にする スポーツなどがあり、幼少期の子どもにとって は周囲の環境からこれらの規範を形成するとい う。これらのジェンダーにふさわしいとされる 所有物や態痩(ジェンダー・ステレオタイプ) は、誕生から5--6 年の間で理解し、学習する ということも明らかになっている。そのため、 男児は強さをひけらかしたり、女児はかわいら しさを強調したりすることもあるという。また、 性規範に違反した仲間をからかったり、排除し たりすることもある。保育の中では、幼児期の 固定的な性規範概念をより柔軟にするために、 保育者自らがジェンダーを意識するとともに、 ジェンダー・フリーな保育を実践しなければな らない。 金子・青野ロ00のによると、固定化された 性差観(ジェンダー・バイアス)を変革する保 育環境をつくること、現にある性差別やジェン ダー、さらにつくられた性差に敏感になり、そ れを是正する「ジェンダーに敏感な視点(ジェ ンダー・センシティブ)」をもって保育すること が、ジェンダー・フリ、-i呆育において重要であ ると解説している。一方、佐藤・田中(2003) は、「ジェンダー・バイアス・フエードアウト保 育」という用語を使って解説している。

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第3 章 保育者のジェンダー意識と保育実践 に関するインタビュー調査 ジェンダー意識といったセンシティブな内容 を掘り下げてインタビューしたいと考え、t綴象 法により、四国ェリアの保育所に勤務する保育 士2 名に調査を依頼した。調査の実施にあた っては、インタビューシートを作成し、シート を活用した半構造面接法で行った。 文字に起こしたインタビューの記録を、本研 究の枠組みに沿ってオープンコーディングし、 ジェンダーに関する項目を抽出した。抽出した 項目及び分類は、①ジェンダー観・男女観、生 育歴におけるジェンダーの記隠など日常に関す ること、②ジェンダーに関する研修や学びの機 会、職場環境、保育の環境構成など、実際の保 育現場に関することである。保育者のジェンダ ー意識や職場環境、保育現場の実態を調査する ことができた。 第4 章 保育者のジェンダー意識と保育実践 に関する質問紙調査 四国地区にあるA県、B県内の幼稚園、保育 所、認定こども園に勤務する保育者83 名と鳴 門教育大学大調院に通う現職の保育者2 名、計 85 名に対して自記式質間紙を実施した。調査の 内容は、①回答者の属性、②勤務園の属性、③ 日常生活におけるジェンダー意識、(④)保育現場 におけるジェンダーに関する実践、(5)保育のジ ェンダーに関わる事例検討である。 まず、本研究の分析枠組みを検討するために 各項目から合成尺度を抽出し、変数化する作業 を行った。次に、その変数を用いてt 検定、及 び―元配置分散分析を行った。その結果、臨時 雇用(パート職員・非常勤職員等)の保育者は、 正規雇用の保育者に比べてジェンダーに関する 研修や学びの機会が少ないということが明らか となった。また、保育現場での勤務経験が長く なるほど、ジェンダーに対する意識が高くなり、 ジェンダーに配慮した保育実践をしているとい うことが分かった。 第5 章 総合考察 インタビュー調査と質問紙調査の結果から、 ジェンダー・フリH呆育の実践を阻んでいる要 因として考えられるものを検討したその結果、 ①管理職との考え方の違い、(②)職場全体がジェ ンダーに関して理解しているだろうという認識、 ③研修や学びの機会の少なさ、④保護者の価値 観・保護者からのプレッシャー、⑤雇用形態に よる研修の機会の違い、⑥保育者歴の違いによ る意識の差、(⑦)本研究で使用した尺度以外の要 因があるのではないか、ということを考察した。 さらに今後、ジェンダー・フリH呆育が広く 普及するためには、(I)全教職員に対して石州彦や 学びの機会を増やし、臨時雇用の職員も正規雇 用の職員と同等に、研修の充実化を図ること、 ②ジェンダー・フリー保育と保護者の価値観と のギャップを解消するために、自治体が主体と なって園と家庭との連携体制を整えることが求 められるという結論に至った。 引用・参考文献 ・伊藤裕子『ジェンダーの発達心理学』 ミネル ヴァ書房ロ000) ・Juno Dawson 著岡本早織訳『国際化の時代 に生きるためのQ &A ②ジェンダーってな んのこと?』創元社ロ018) ・金子省子・青野篤子「保育所・幼稚園におけ るジェンダーをめぐる課題」愛媛大学教育学 部紀要VoL50 No.2 131"-139 (2004)

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参照

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