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IT部門の組織能力向上を支援する運営最適化ソリューション

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Academic year: 2021

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企業,官公庁などにおける情報システム部門(IT部門)はア ウトソーシングなどを活用し,その運営形態を変化させてきた。 しかし,それらの改革を経た現在でも,IT部門の組織能力の 向上には依然として課題が残されている。 昨今,IT部門への期待や求められる役割は変わってきてい る。従来は情報システムの開発・運用が中心であったのに対 し,現在はIT戦略・企画立案,プログラム/プロジェクトマネジ メント,およびサービスマネジメントなどが中心になってきてい る。今後,ITのビジネスへの貢献を高めていくためには,事 業部門と同様にIT部門においても事業への貢献を評価し, 向上させていくための管理・運営手法を取り入れていく必要 がある。これは,組織能力を向上させるための抜本的な革新 (イノベーション)が必要になることを意味している。 日立グループは,IT部門の評価,改善を行うアセスメント サービスなどを通じて得た豊富な経験,ノウハウを基に,ITガ バナンス強化,パフォーマンスやプロセスの可視化,ITコス ト・工数削減など,CIOやIT部門が抱える課題の迅速な解決 を図る「IT部門運営最適化ソリューション」の開発を進めて いる。 1.はじめに 従来,情報システムの開発・運用が中心であった情報シス テム部門(以下,IT部門と言う。)の役割は,現在ではIT戦 略・企画立案,プログラム/プロジェクトマネジメント,およびサー ビスマネジメントなどが中心になってきている。 このような環境の中で,ITのビジネスへの貢献を高めてい くためには,事業部門の管理・運営手法をIT部門運営におい ても取り入れていく必要がある。技術の視点を重視してきた 基本コンセプト I T 要件 コンポーネント ソリューション イメージ ユーザー ITダッシュボード プレゼンテーション層 アプリケーション・データ層 ITRP IT-BSC 財務 顧客 プロセス 人材・成長 ITバランスト スコアカード (IT-BSC) ITダッシュボード ITリソース プランニング (ITRP) ・経営戦略と整合を取り, IT戦略, IT部門業績を 多視点で評価する。 ・継続的な改善(PDCA)を 確立する。 ・顧客とのコミュニケーション を強化する。 ・役割に応じた情報を活用し, リアルタイムに意思決定する。 ・IT部門運営に関する データを蓄積,一元化する。 ・IT運営関連リソースを 最適化する。

注:略語説明 PDCA(Plan,Do,Check,and Action),ITRP(IT Resource Planning),IT-BSC(IT Balanced Score Card)

図1 IT部門運営最適化ソリューションのイメージ IT部門運営を最適化する方向性として,ITRP,ITダッシュボード,IT-BSCの三つを整備することが挙げられる。 32 Vol.89 No.09 698-699 2007.09 企業改革の潮流と日立グループの考え方

IT

部門の組織能力向上を支援する

運営最適化ソリューション

IT Management Solutions to Enhance IT Organization Capabilities

鎌田 春雄

Haruo Kamada

神野 俊昭

Toshiaki Kono

近野 章二

Shoji Konno

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33 IT部門にとって,事業運営を進めるために必須となる知識や

スキルを身に付けていくことは大きな挑戦である。このような現 状を打破するためには,組織能力を向上させるための抜本的 な革新が必要となる。

ここでは,CIO(Chief Information Officer)やIT部門が抱え る課題を解決し,組織変革を支援するために,日立グループ が開発を進めている「IT部門運営最適化ソリューション」につ いて述べる(図1参照)。 2.変革が求められる背景と課題 1990年代からIT部門の運営形態に変革が多く見られるよ うになった。具体的に言えば,情報子会社の設立,国内外 への開発・運用業務のアウトソーシングなどであり,これにより IT部門が自組織内ですべての業務を完結することはほとんど なくなった。また一方で,部門横断的なシステムの導入,ス タッフの高齢化対応などという新たな課題も生じた。これらは, ITの管理・運営のさらなる高度化を促す要因となった。 近年では,金融商品取引法や個人情報保護法などの施 行や,CSR(Corporate Social Responsibility)への関心の高ま りなどにより,企業に対するコンプライアンス,情報公開,説明 責任などの要請はいっそう強くなっている。 一方,事業を取り巻く環境の変化は劇的かつ非連続的で あり,先が予測しにくい状況にある。企業は,それらの変化に 柔軟かつ俊敏に対応するための基盤を整備していくことが必 要とされている。 このような環境下,IT部門に求められる役割の重要性は いっそう増すことが予測される。しかし,IT業務の改革は十 分には進んでおらず,IT部門の組織能力低下が危惧(ぐ)さ れている。したがって今,IT部門の組織能力の向上を図る変 革に早急に取り組む必要があると考えられる。 3.ソリューションのコンセプト IT部門の組織能力を向上させるために必要となる変革に ついて以下に述べる。 IT部門運営最適化ソリューションにおいては,基本コンセプ トとして「Running IT Like a Business」(IT部門を事業部門の ように運営する。)の実現を掲げている。そして,これまで事業 部門の運営において行われてきた変革の中に,IT部門を変 革し,その組織能力を向上させるヒントがあると考えている。

1990年代以降行われた事業部門の変革を要約すれば, 資源の最適化,顧客視点の徹底,継続的なPDCA(Plan, Do, Check, and Action)などを実現するための手法を取り入 れ,それらを有機的に機能させてきたことが挙げられる。言い 換えれば,業務全体の最適化と情報の一元的管理,顧客 リレーションの強化,多角的な管理指標の導入ととらえること ができる。 これらと相似形の取り組みが今後IT部門運営にも必要に なるというのが,このソリューションの前提となる仮説である(図 2参照)。 3.1 業務全体最適化と情報の一元的管理 まず,第一の変革として,ITの運営にかかわるさまざまな資 源を最適化する基盤を整備していく必要があり,それを実現 するためのソリューションコンポーネントはITRP(IT Resource Planning)である。ITRPとは,IT資源(ヒト,モノ,カネ,情報 など)を企業全体で最適化する概念である(図3参照)。

企業においては,ERP(Enterprise Resource Planning), SCM(Supply Chain Management)などの導入により,業務お よび資源の全体最適化,部門横断的な情報共有などの効果 がもたらされた。 現在,IT部門の課題の一つとして,縦割り的な組織をベー スとした業務や情報のサイロ化,属人化を解消し,業務効率 や生産性向上を図ることが挙げられる。 ITRPの実体化により,IT業務間の有機的な連携,IT運営 全体での情報の共有,COBIT(Control Objectives for Information and Related Technology)※)などのベストプラクティ

Feature Article •部分最適化の進行業務のむだ(重複作業)の存在迅速な意思決定を支援する 情報基盤が未整備新たな課題(グローバル化, 連結決算など)の発生 1990年代初めの経営環境 •各組織(外部組織を含む)による 業務のサイロ化属人化管理情報の分散新たな課題(日本版SOX法などの 法規制, SOAをはじめとする新技 術など)の発生 現状のIT運営環境 経営資源の最適化を目的にERP, SCMなどの業務・情報連携基盤を 導入し,業務プロセスの抜本的な 見直しを実施(インターナル) 売上・利益向上のため, CRMコン セプトに基づいた顧客視点の徹底, BIなどを活用した顧客情報分析強化 を実施(対顧客,意思決定者) 中長期的な企業成長を意識し,短期 的になりがちな指標だけでなく, BSC などの新経営指標に基づく目標管理を 実施(対ステークホルダー) ITRP IT運営関連リソースを 最適化する基盤 ITダッシュボード 顧客とのコミュニケーション 強化の基盤 IT-BSC 継続的な改善(PDCA)を 確立する基盤 1990年代以降の経営革新のポイント 日立グループが今後のIT運営に 必要と考えるコンポーネント 業務全体 の最適化, 情報の一 元的管理 顧客リレー ションの 強化 多面的な 経営管理 指標の 導入

注:略語説明 SOA(Service-Oriented Architecture),ERP(Enterprise Resource Planning),SCM(Supply Chain Management),CRM(Customer

Relationship Management),BI(Business Intelligence),BSC(Balanced

Score Card)

図2 ソリューションのコンセプト

1990年代からの経営革新と同様,三つの革新がIT運営にも必要となる。

※)COBITは,ISACA(Information Systems Audit and Control Association)および ITGI(IT Governance Institute)の登録商標 である。

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34 Vol.89 No.09 700-701 2007.09 企業改革の潮流と日立グループの考え方 スをベースとした業務標準化といった組織能力の向上がもた らされることとなる。 3.2 顧客リレーションと情報活用の強化 第二の変革として,顧客とのコミュニケーションを強化する 基盤を整備する必要がある。これを実現するソリューションコ ンポーネントは,ITダッシュボードである。ITダッシュボードとは, 経営,事業,ITの意思決定に用いる業績評価指標を定め, さまざまな情報ソースから各種情報を集約して評価結果を算 出し,指標間の依存関係に基づいて統合されたビューを提供 する仕組みである。

企業においては,BPR(Business Process Reengineering)の 実行に際し,顧客接点および顧客への提供価値に的を絞り, それを起点に業務全体の改革を行ってきた。 現在,IT部門の課題として,サービスプロバイダー的役割 への変換,説明責任の向上,ユーザー部門との交渉力の向 上,および意思決定の迅速化などが挙げられる。 ITダッシュボードの導入により,年次では予実算やリスク, 月次では可用性やパフォーマンス,日次では障害や変更情報 を可視化した形でユーザーと共有することが可能となる。副 次的には,その顧客接点に着目した業務改革が促されること となる。さらに,情報を分析・活用することにより,意思決定の 迅速化が図れる。 3.3 継続的な改善基盤の確立 第三の変革として,継続的な改善(PDCA)を確立する基 盤を整備する必要がある。それを実現するソリューションコン ポーネントはIT-BSC(IT Balanced Score Card:ITバランストスコ アカード)である(図4参照)。IT-BSCとは,通常のBSC同様に

財務の視点だけでなく,多面的に,視点間の因果関係を含 めてITのROI(Return on Investment)を評価する手法である。

企業においてのBSCの導入目的は,財務的な指標に加え, 因果性を持った多角的な経営指標を設定し,それをモニタリ ングし,改善サイクルを回すことにより,企業の継続的成長を 促進することにあった。 現在,IT部門の課題の一つとして,継続的な改善活動を 行えるよう,多視点による「見える化」の仕組みを確立すること が挙げられる。 IT-BSCの導入により,ITの運営にかかわるCSF(Critical Success Factor)およびKPI(Key Performance Indicator)の設定, それらの指標のモニタリング,それに基づく改善プロジェクトと KPI,およびインパクト(効果)との相関の把握が可能となる。 4.ソリューションサービスの全体像と概要 変革の推進方法,それに対応し,現在開発を進めているIT 部門運営最適化ソリューションの概要について以下に述べる。 このソリューションにおいては,変革プログラムにおける計画 段階から評価段階までエンドツーエンドでの各種サービスの提 供を想定している(図5参照)。 計画段階では,全体を俯瞰(ふかん)し,どの領域から変 革に取り組んでいくかの優先順位づけを行う。IT部門が置か れている状況に照らして,レベル向上(効果)および生産性向 上(効率)とのバランスに配慮しながらプロジェクトを選択する。 その前提となるのはIT-BSCの策定および各プロジェクトのROI のシミュレーションである。 全体計画を作成した後は,個別プロジェクトを開始し,導 入から評価までの流れを,成果を踏まえながらスパイラルアッ プしていく。ここでの留意点は,顧客の現状とありたい姿との ITRP ITダッシュボード(統合ビュー,役割に応じたビュー) IT組織, 顧客, IT業務プロセス コレクタ IT財務情報 (IT予算, IT実算) ドキュメント, 情報, 標準手順, ルール, ツール, 指標, … ITサービス,アプリケー ション, ITアーキテクチャ, ITインフラ, … ITリポジトリ(依存関係に基づく情報マップ) 個別最適化, 非連携・複雑性が増した管理データ群 I T I T I T I T I T 図3 ITRPの概略 個別最適化,非連携・複雑性が増したデータ群からコレクタを介してITリポジトリ (情報の保管場所)へ一元化を図る。必要な人が必要な情報を適時に参照する。 プラットフォームと アーキテクチャを共通化する。 適切なタイミングでサービスを提供する。 エンドユーザー を支援する。 ソリューションを 提案する。 先端技術を探し出す。 ユーザー業務 プロセスを 改善する。 システムの可用性を維持, 向上する。 ビジネス 戦略を 理解する。 ビジネス部門 の強みを 理解する。 オペレーションの改善 ユーザーとのコミュニケーション向上 ITポートフォリオを 最適化する。 コスト競争力を つける。 ITコストを 管理する。 業務を適正に 行う。 利用者の生産性を 向上させる。 ユーザーニーズ を把握する。 ビジネス戦略 を達成する。 企業の今後 のニーズに 応える。 イノベーションと チームワークの 文化を醸成する。 先端技術に関 するスキルを 身に付ける。 重要スキルを 持つ人を募 集, 採用する。 財 務 利 用 者 内 部 プ ロ セ ス 人 材 と 成 長 図4 ITバランストスコアカード(IT戦略マップ)の一例 人材と成長,内部プロセス,利用者,財務の各視点における要因を考慮しな がらIT部門運営の最適化を図る。

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35 ギャップを的確にとらえ,迅速に改善を進めることである。また ベストプラクティス,業界標準をそのままコピーし,そのとおりに 実践するのではなく,その組織に適したものだけを選択するこ とで,想定外のコストや問題の発生を防ぐ必要がある。 このソリューションの一点目の特徴は,その道具立てとして, ITマネジメントツールの適用を想定していることである。その結 果,顧客は,迅速な実装,実装後の効率的なIT業務運営を より実現しやすいものにできると考える。 二点目の特徴は,日立グループが独自に開発したITアセ スメント技術(IT活用バランス診断,IT投資評価,ITサービス 管理アセスメントなど),デューデリジェンスの経験・ノウハウな どを採用していることである。 5.おわりに ここでは,IT部門の組織能力の向上を図ることを目的とし た変革を支援する「IT部門運営最適化ソリューション」につい て述べた。 このソリューションは現在開発段階にあり,これから,より顧 客ニーズに踏み込んだ検討を推進していく予定である。 日立グループは,戦略アウトソーシングなど,各種のアウト ソーシングやITアセスメントなどのサービスを継続的に提供す るとともに,IT部門の包括的な課題解決に対しても,今後さら に貢献していく考えである。

1)D. Gaughan:IT Resource Planning(ITRP),The ERP System for IT Arrives,AMR Research Article(2005.3)

2)ITGI Japan:IT投 資の企 業 価 値ガバナンス― ING社ケーススタディ (2007.4)

3)M. Curley:Managing Information Technology for Business Value: INTEL PRESS(2004) 参考文献 執筆者紹介 鎌田 春雄 2004年日立製作所入社,情報・通信グループ アウトソー シング事業部 サービス事業開発本部 ITマネジメントビジ ネス開発部 所属 現在,新ソリューションサービスの開発に従事 システム監査技術者,ITIL Manager ISACA東京支部会員 Feature Article 近野 章二 1996年日立製作所入社,システム開発研究所 uVALUE イノベーションセンタ 第五部 所属 現在,ITアセスメント技術の研究開発に従事 ISACA東京支部会員,日本SPIコンソーシアム会員 神野 俊昭 1975年日立製作所入社,情報・通信グループ アウトソー シング事業部 サービス事業開発本部 ITマネジメントビジ ネス開発部 所属 現在,新ソリューションサービスの開発に従事 情報処理学会会員 組織 業務プロセス ツール ルール 指標 資産 組織 設計 要件定義 業務設計

FIT & GAP

効果検証 ツール導入 カスタマイズ ルール設計 コンテンツ開発 KPI策定 運用 モニタリング 評価分析 ルール見直し コンテンツ改善 改修・ソフトウェア 保守 レポーティング ITマネジメント 導入コンサルティング ITマネジメント 基盤構築 ITマネジメント アセスメント ・ITマネジメント導入 方針を決定するため の現状アセスメント と問題, 課題の整理 ・組織, 業務, 指標, 規定などの導入計画 策定 ・ツールテンプレートに基づく FIT & GAP

・コンサルティングの成果に 基づくコンテンツの開発 ・コンサルティングの成果に 基づく要件定義, 基本設計 ・要件定義, 基本設計に基づく詳細 設計, 基盤構築, パラメータ設定 ・ツール導入の試行と効果検証, 問題点の抽出 ・ツールカスタマイズ, 周辺機能と のインタフェース構築, テスト ・既存システムからこのツールへの データ移行, 初期データ作成支援 ITマネジメント 効果検証 ・収集データに 基づく評価, 分析, レポー ティング ・コンテンツの 活用状況など の評価, 更新 サービス メニュー サービス 概要 ITマネジメント 基盤ソフト保守・ 運用・改修 ・システム運用, 軽微な維持 保守作業 ・ソフトウェア のバージョン アップ, メンテ ナンス作業 ・技術支援など スパイラル アップ フェーズ 要素 計画 設計 実装 運用・改善 I T 部 門 運 営 最 適 化 ソ リ ュ ー シ ョ ン 顧 客 に お け る 変 革 プ ロ グ ラ ム

注:略語説明 KPI(Key Performance Indicator)

図5 ソリューションサービス全体像

顧客の変革プログラムに対応した形で,評価から計画,設計,実装,運用・改善の4フェーズごとに,アセスメントから保守サポートまで幅広いサービスを提供する予定 である。

参照

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