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内部進学者を対象とした入学前教育プログラムの開発 : 光華女子学園における高大連携の取組

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Academic year: 2021

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発 : 光華女子学園における高大連携の取組

著者

藤田 大雪, 佐藤 綾花, 吉田 咲子, 小澤 千晶, 知

念 葉子, 高野 拓樹, 長者 美里

雑誌名

京都光華女子大学京都光華女子大学短期大学部研究

紀要

55

ページ

29-36

発行年

2017-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1108/00000844/

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I はじめに 京都光華女子大学(以下「本学」)は、大学生活へ の円滑な移行をサポートするために、早期合格者全員 に対して通信教育講座と入学前オリエンテーションに よる入学前教育を行っている。本学キャリア形成学科 では、この通信教育講座に加えて、内部進学者が合格 決定後もモチベーションを落とさずに大学入学への期 待や夢を持てるよう、自信と夢を育ませるような「学 部からのメッセージ性のある課題」を作成したいとい う思いから、2016 年度、併設の京都光華高校側に追 加の入学前教育の実施を提案した。 本稿では、この学科独自の入学前課題の概要を報告 し、その効果を検証する。そのためにまず、高大接続 をめぐる公的な議論の変遷を概観して(II)、入学前 課題の開発過程と課題の内容を紹介する(III)。そし て課題の効果を検証し(IV)、次年度の改善に向けて 課題を整理して、展望を示す(V)。 II 高大接続の現状 大学審議会(2000)の答申『大学入試の改善につい て』は、学力検査以外にも学生に対して「きめ細やか な配慮や様々な工夫」を行ない、「学生の大学教育へ の円滑な移行を図ることが必要である」と指摘し、そ の一例として以下のような工夫を挙げている。 入学前に学生が学習しておくべき内容に関する積 極的な情報提供に努め、高等学校の生徒の適切な 学習選択等を支援すること。特に、推薦入学やア ドミッション・オフィス入試等により比較的早期 に大学が合格者の決定を行う場合には、高等学校 側との連絡・協力を密にしながら、入学前までに 学習しておくべき具体的な内容を示したり、具体 的な課題を課したりするなど、合格者に対して入 学前から学習指導等を行うことも望まれる1 このように入学前教育は、本来、入試の多様化と、 それにともなう学生間の学力格差への対処として導入 が進められたものである。日本リメディアル教育学会 が 2011 年に全国の大学を対象に行ったアンケートで も、入学前教育の実施目的として最も多く挙げられる のは「AO や推薦で入学してくる生徒の学力維持・向 上」(84%)であり2、実際に入学前教育は、大学審 議会の答申に沿ったかたちで実施されている傾向に あったことが分かる。 一方で、2014 年に公表された中央教育審議会の『高 大接続改革答申』では、これからの時代に必要な学力 の 3 要素(基礎的な知識・技能、思考力・判断力・表 現力等の能力、主体的に学習に取り組む態度)を踏ま えた指導が高校に浸透していないとされ、その要因と して、大学入学者選抜の機能不全が挙げられている。 従 来 の 入 学 者 選 抜 は「 知 識 の 暗 記・ 再 生 に 偏 り が ち」3で、学力の 3 要素をバランスよく問うものになっ ておらず、それが高校教育の足かせとなっている。し たがって、高校教育、大学教育、および大学入学者選 抜の三者を一体的に改革し、それによって高大の教育 内容のギャップそのものを解消しなければならないと いうのである。このような『高大接続改革答申』の枠 組みにおいて、入試の多様化への対処策としての入学

内部進学者を対象とした入学前教育プログラムの開発

−光華女子学園における高大連携の取組−

藤 田 大 雪

佐 藤 綾 花

吉 田 咲 子

小 澤 千 晶

知 念 葉 子

高 野 拓 樹

長 者 美 里

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メディアル教育の必要性は、相対的に小さくなると考 えられている。その証拠に、同答申においても、2016 年に公表された『高大接続システム改革会議「最終報 告」』4においても、「入学前教育」と「リメディアル 教育」への言及は一度もなされていない。 とはいえ、語の不在は、大学が行う入学前教育が不 要になることを必ずしも含意しない。答申に見られる 方針の変化は、むしろ入学前教育をめぐる公的な議論 が、既存の大学入学者選抜制度を前提にした枠組みの 中で学力格差の解消を目指すという段階から脱却し て、高大の関係者が協同で教育内容の接続を模索する 新たな局面へとシフトしたことを表していると考える べきだろう。高校と大学の教育内容には、一般に気づ かれていないギャップが確かに存在する。たとえば渡 辺(2017)は、高校の教科書の調査と大学新入生への 質問紙調査を通じて、高校では「書く」機会がきわめ て少ないこと、高校と大学では「レポート」という概 念の理解が異なることなどを明らかにし、大学で教え られるべきライティング技術は、高校までに教えられ ていない「文章を『組み立てる』技術」「引用の具体 的技術」「推敲の具体的技術」「再帰的な文章作成」の 4 つであると結論づけている5。このように教育内容 のギャップを認知し、解消していくことは、今後の高 大接続のあり方を考える上で一つのモデルになるだろ う。 III 入学前教育プログラムの開発 高大の教員が協同で、併設校(付属校)のメリット を生かした入学前教育プログラムを開発することは、 前章で述べた新しい高大接続の方針に照らしても、円 滑な高大接続に向けた良い着手点となりうる。本章で は、高等学校の教員と大学の教員それぞれの視点から、 内部進学者を対象とするキャリア形成学科のオリジナ ル入学前課題の開発過程について報告し、その成果で ある課題の内容を紹介したい。 1  高等学校からの視点―高等学校における内部進 学者の教育の現状 高等学校では高大の連携を掲げており、総合進学ラ イラックコースのカリキュラムでは、一定の成績基準 学受験を認めている。そのため高等学校では、大学キャ リア形成学科との連携をかねてより進めてきた。2015 年度より総合進学ライラックコースに卒業後の希望進 路に応じて 4 つのプログラムを設けている。 4 つのプログラムのうち「総合進学キャリアプログ ラム」は、文系教科数が多く、多様な進路実現が可能 であるため、様々な進路志望をもった生徒が集まるク ラスである。夢が定まっておらず、今後どのような進 路を選んでも良いように選択した生徒や、内部進学を 見越して少しでも早くからキャリア形成学科について の学びを受けたいという生徒が在籍している。平成 28 年度卒業生は、この総合進学キャリアプログラム を選択する 53 名中 13 名(24.5%)が京都光華女子大 学キャリア形成学科に進学している。内部進学志望生 徒の傾向を見ると、10 月下旬の合格発表の後、安 感で、学業に実の入らない現状が見られた。また、何 かしようとは思っていても大学進学後の未来が思い描 けず、何をしたら良いか分からず踏み出せない状況も 見られた。一方で、これまでキャリア形成学科の教員 による出前授業や大学での進路ガイダンスなど様々な 場面で高大の連携を進めてきたが、「総合進学ライラッ クコース」と「京都光華女子大学」の総体的な連携に とどまっており、「キャリア形成学科」と「総合進学キャ リアプログラム」の間の専門性に根ざした連携が十分 に機能しているとはいえないという問題意識もあっ た。 そこで、生徒が高等学校卒業後を見据えて、学習へ の意欲を持ち続けられるためには何ができるか、高大 の関係者で意見交換を行い、2016 年度に大学側で内 部進学志望生徒に対する入学前課題が作成されること が決まった。合格が決まり大学に入学するまでの期間 にこれをこなすという新たな取り組みである。 2  大学からの視点―2016 年度における教材開発 大学教員側から内部進学者の傾向を見た場合、学科 の特性を十分に理解し、大学卒業後の方向性を踏まえ たうえで本学科に進路を決める生徒や、光華の校風が 気に入り内部進学を決定する生徒がいる一方で、進路 先決定の直前で進路変更した生徒が少なからず存在す るように思われる。後者の生徒は、本学科に対する知 識不足だけでなく、目標意識が希薄になったことで学

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科の学びに対する意欲が低下していることもある。大 学入学時点で、この意識は、一般入試やセンター入試 まで受験勉強を継続し、新生活に期待を抱き入学した 学生のモチベーションに影響を与えているのではない かと推測される。多様な区分で入学してきた学生全員 が 4 月から新たな気持ちで一斉スタートできる環境を 整えるためにも、高校までの学習を総括し、内部進学 者の学習意欲を高める入学前教育の教材開発の必要性 を感じていた。 前述のように高等学校からの問題意識を受け、高大 連携教育の推進担当と基礎ゼミ担当者が中心に教材の 開発を検討した。高校教員から「文章(新聞)を読む 習慣を継続させたい」との要望があり、新聞購読を中 心にした課題を提示することとした。本学科 1 年次の 基礎ゼミでは、カリキュラムの 3 つの柱である「ビジ ネス」「ホスピタリティ」「ソーシャル」に関連して自 分の興味を深め目標がある。そのため、新聞購読の学 習習慣を定着させつつ、学科での学びへの関連付けを 考える課題として構成することとした。 取り組みやすく、また学科の学びにつながる新聞記 事を選んでもらうために、模範となる回答例を提示す ることになった。そこで、教材開発検討会で各教員が いくつかの新聞記事を持ち寄り、設問案の調整を行い、 回答例を作成した。高校生が興味を持って主体的に課 題に取り組むことができるかを確認するために、サン プル記事と設問案を在学生(1 年生)数名に提示し、 意見を聞いた。その結果、進路が明確な学生は迷いな く自分の進路に関するテーマに興味を示し、それほど 明確ではない学生も、今、話題となっているニュース や見出しのインパクトで記事を選ぶことができた。課 題を見開きの 2 ページに収めることで課題ボリューム に対する抵抗感も少なく、切り抜いて貼る行動が工作 的で取り組みやすい印象を与えることがわかった。 完成した課題は以下のようなものである。新聞や雑 誌などから毎週 1 本、自分の興味のある新聞記事を切 り抜き、教材に貼り付ける。記事の中からわからない 語句や関心を持った語句を 3 項目以上選び項目の説明 をしたうえで、200 文字以内で記事の要約を作成する。 ここまでの課題内容は、高校までの学習を総括する部 分である。最後の設問で、「選んだ記事はキャリア形 成学科の学びとどう関係するのか」を問う。関係する 用語のチェック項目として「ビジネス、ホスピタリ ティ、ソーシャル、女性の生き方、自律的学習、留学・ 英語、資格、その他」を提示することで、学科の特性 を十分に理解していない生徒にも、学科の特性を知っ てもらうきっかけとすることを狙った。そして、記事 のどの部分が、学科の学びの特徴と関連があると考え たのか、なぜその記事を選んだのかを自分の言葉で記 述してもらうことで、自分の興味を深めることを目指 した(参考資料 1)。 大学生活への憧れを高め、女子大の華やかさを演出 するために、教材をカラー台紙に挟んで渡すこととし た。台紙のデザインには、在学生がデザインしたイラ ストを採用し、学科の学びを印象付ける工夫を行った。 授業で学生が商品企画したオリジナルデザインのボー ルペンやクリアファイルをプレゼントし、「学生が実 現したいことのできる学科」であることをメッセージ として伝えた(図 1)。 課題の提示期間は、高校 3 年生が春休みに入る 1 月 末からの 4 週間として、計 4 本の新聞記事をまとめる こととした。本学の特徴として「ひとり一人に寄り添 う丁寧なサポート」がある。家庭での新聞記事の切り 抜きに制限がある生徒や新聞記事の要約に苦手意識の ある高校生の相談場所として、提出期限まで 2 回の課 題相談会を設定した。相談場所に指定したのは、在学 生がグループ学習で集まる大学の学科コモンズとし、 日常の大学生と交流する機会になることも期待した。 春休みから大学に通学して、大学生になった自分をイ メージしてもらうきっかけとなることを目指した。 図 1  カラー台紙と学科オリジナルデザインのボール ペン

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以上の入学前課題の実施後、3 ヶ月を経た 2017 年 6 月に、課題に関する聞き取り調査を行った。調査のね らいは、生徒たちが当時どのように課題に取り組んだ か、大学での学びを経験した上で課題をどのように受 け止めているか等を知り、今回開発した入学前課題の 効果を検証することである。 1 内部進学者への聞き取り調査 調査対象者は、学科独自の入学前課題に取り組み、 京都光華高校から本学キャリア形成学科に内部進学し た 14 名(うち回答者は 12 名)である。調査は 15 分 ∼ 20 分程度のインタビュー形式で行った。おもな質 問項目は「課題を受け取ったときの印象」「課題にど う取り組んだか」「今でも新聞やニュースから情報を 得ているか」「他にどんな入学前課題をやりたかった か」であった。さらに、聞き取り調査の直後に、今回 の入学前課題がどのような点で役立ったと思うかを尋 ねる質問紙を手渡し、「社会問題に関心を持つように なった」「大学の学びへの意識が高まった」「合格後も 学習意欲が維持できた」の 3 点に関して、それぞれ 5 件法で回答を求めた。 聞き取り調査の結果、生徒たちが課題にかけた時間 は、新聞記事 1 本あたりで平均 30 分、4 本の合計で 2 時間ほどであることが明らかになった。生徒たちの声 の中で目についたのは「面倒だった」「やっつけ仕事 でやった」という感想であった。むろん長期休暇中の 宿題を面倒に感じることに不思議はないから、この結 果はあまり重く見るべきではないかもしれない。ただ し、ベネッセ教育総合研究所の調査では、入学前教育 を受けている生徒のいる高校関係者は、「入学前教育 を受けた生徒の学習意欲が上がる」という項目に対し て、83%が「とてもそう思う」または「まあそう思う」 と答えている6。この結果に照らすと、今回の課題に 対して積極的な生徒ばかりだったとは言えない。 一方で、課題の効果を示唆する回答として、以下の ような発話も得られた。「記事を探すのに時間がかかっ た。そのために新聞をじっくり読んだ」「この課題を きっかけに、就活など、高校時には気にしなかった記 事を意識するようになった」「面倒だったが、真剣に やった。やってみたら楽しかった。提出できて満足し 連性のある新聞記事を探し出す中で出口となる職業領 域を意識した者や、そうした取組に充実感や達成感を 持った者がいたことがうかがえる。 どのような入学前課題が望ましいか、という質問に 対して、最も多かった回答は「レポート課題」(8 名) であった。ついで「英語」(6 名)の要望が多く、「プ ロジェクト・自由研究」も 2 名いた。本学では、全学 必修の基礎教養科目「京都光華の学び」でレポート課 題を課し、ルーブリックと減点表を用いて厳格に採点 と添削を行って、規定点に満たない者に再提出を求め ている。「レポート課題」を求める声の多さは、この「京 都光華の学び」のレポートで力不足を痛感して、早期 にレポートの書き方を習得する必要性を感じた結果で あることが、さらなる聞き取りにより明らかになった。 「英語」については、海外への留学志望(2 名)と英 検の合格(2 名)という具体的な目標を持つ者からの 要望が多かった。実際、春期休暇中に自主的に英語の 学習を行っていた者も 2 名いた。 なお、聞き取り調査後に行った質問紙調査では、「入 学前課題はどのような点で役立ったと思うか」という 質問に対して、いずれの項目でも「そう思う」と「や やそう思う」の合計が 25%以下であった(表 2)。 2 考察 以上の結果をまとめると、入学前課題に熱心に取り 組んだ者が一定の効果を感じている一方で、課題の効 果を実感できない者や、別種の課題を望む生徒も存在 したと言うことができる。 この結果を理解する手がかりは聞き取り調査の中で 得られた次の発話にある。 「学科の学びとのかかわりを書け、というのが、何 を書いたらいいのか分からず、内容が薄くなってし まった。感想や意見だともう少しうまく書けたと思う」 実際に生徒たちが提出した課題を見てみると「選ん 表 1 どのような入学前課題が望ましいか レポート課題 8 英語 6 プロジェクト・自由研究 2 現行課題 2 *複数回答による

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だ記事はキャリア形成学科の学びとどう関係するの か」という設問では、14 名中 12 名が設問の意図を めずに感想や意見を書いていた。設問の意図を正しく 理解した残りの 2 名の回答も「○○について書かれて いるのでビジネスと関係していると思った」といった もので、学科の学びの理解を喚起するべき件の設問は あまり機能していなかった。もちろん、大学側はこの ような生徒たちの戸惑いを見越して課題相談会を実施 し、学科の学びについて生徒たちと話し合う機会を設 けていたのだが、これも十分に機能するには至らな かった。そのため、課題は一部の生徒に「高校の学び の反復」として受けとられたと推測できる。「どのよ うな入学前課題が望ましいか」という質問に対して「レ ポート課題」や「英語」という回答が多かったことか ら明らかなように、生徒たちの多くは将来に目を向け た学習を望んでいた。こうした生徒たちの志向からも、 大学での学びに希望を持たせる取組は重要である。今 後は課題の内容を充実させるとともに、課題相談会の 参加者を集める工夫を行い、課題の目的と意図につい て、生徒たちにより丁寧に説明する必要があるだろう。 2013 年にベネッセ教育総合研究所が全国の大学関 係者を対象に行った調査7によると、「入学前教育の ね ら い 」 と し て は「 入 学 ま で の 学 習 習 慣 の 維 持 」 (76.3%)、「高校までの基礎学力の補強・向上」(68.0%) の割合が高い(表 3)。同じ 2013 年に実施された(株) さ ん ぽ う に よ る 調 査8 で も、 大 学・ 短 大 関 係 者 の 81.65%が「学習意欲の維持」を、68.35%が「基礎学 力の向上」を入学前教育の効果として期待すると答え ており(表 4)、多くの大学は、高校教育の質保証と しての役割を入学前教育に求めていることが分かる。 しかしながら、こうしたねらいは管理者サイドの発想 にすぎない。生徒たちのニーズを置き去りにして「学 習習慣の維持」を主たる目的にすれば、彼らをアクティ ブにすることはできない。 今回の聞き取り調査では、キャリア形成学科への内 部進学者が高校での学習の反復より、大学の学びの準 備、あるいは先取りとしての役割を入学前教育に強く 求めていることが明らかになった。キャリア形成学科 はこの結果を踏まえて、生徒たちをアクティブにする 入学前課題の作成に向けてさらなる検討を行い、課題 内容や学習環境の改善を図っていきたい。 V 展望―むすびにかえて 最後に、今回の調査から見えてきた入学前教育プロ グラムの課題点を踏まえ、今後の取り組み改善の道筋 を示す。 まず、あらためて確認しておきたいのは、キャリア 形成学科のオリジナル入学前教育は、学科の学びの理 解を促進し、目標意識を高めるものであるべきだとい 表 2 入学前課題はどのような点で役に立ったか そう思う まあそう思う どちらとも 言えない あまりそう 思わない そう思わない 社会への関心を持つようになった 0 1 3 2 6 大学の学びへの意識が高まった 1 2 3 2 4 合格後も学習意欲が維持できた 0 2 5 3 2 表 3 入学前教育のねらい 入学までの学習 習慣の維持 高校までの基礎 学力の補強・向 上 大学での学びへ の動機づけ 大学での専門分 野への導入 アカデミックス キル・スタディ スキルの習得 友だちづくりの 機会の提供 その他 76.3% 68.0% 60.3% 31.7% 18.3% 16.5% 1.7% *複数回答による ベネッセ教育総合研究所高等教育研究室.(2014). 高大接続に関する調査 表 4 入学前教育において期待する効果 学習習慣 の確立 学習意欲 の維持 学習形態 の変化へ の対応 基礎学力 の向上 生活リズム の継続 ス タ デ ィ ス キルの習得 大学理解 コミュニ ケーション 能力の向上 その他 53.16% 81.65% 39.87% 68.35% 29.11% 15.19% 41.14% 16.46% 1.90% *複数回答による (株)さんぽう.(2013). アンケート:「入学前教育」「初年次教育」において期待する効果

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学生活への期待と入学後の現実が大学適応に及ぼす影 響」を調査した上で、アパシー傾向の抑制と大学環境 への適応促進のためには、大学入学という目標に代わ る「次なる目標を、大学生活の中で設定できるような 支援」が必要だと結論づけている9。こうした意識は、 もちろん当初から教材開発者の間でも共有されていた のであるが、前述のように、2016 年度の入学前課題 では十分な効果が得られなかった。そのため今後は、 専門知識への導入課題も盛り込み、より直接的に大学 の学びに導く方向へと入学前教育のあり方を進めてい くことが適当だと考えられる。このことを念頭に置い た上で、2017 年度の入学前課題の方向性を以下に述 べたい。 キャリア形成学科のカリキュラムには、前述のよう に「ビジネス」「ホスピタリティ」「ソーシャル」とい う 3 つの柱がある。入学前の課題でも、この 3 つの領 域に英語を加えた計 4 種類、専門への導入となる教材 を作成して、その中からいくつかの課題を生徒自身に 選択させることが望ましい。これにより、生徒たちの 多様なニーズに応えられるし、同時に学科の専門的な 学びへの理解を促進しつつ、将来の進路を意識させる ことも見込めるからである。課題の複数化には、教材 の開発や採点・添削を行う教員の負担を分散させるメ リットもある。教材の内容を通してキャリア形成学科 の多様な学びの内容を高校の教員に知ってもらえるこ とからも、学科の専門知識に関する導入課題を開発す る意義は決して小さくないはずである。課題を一度に まとめて行えないように提出を複数回に分け、大学と 持続的にコンタクトをとる仕組を作ることが望ましい が、そのために量が多くなりすぎてもいけない。課題 の量については、高大の関係者の間で調整を行ないな がら適切な分量を考えることが大切である。 入学前教育には、生徒からの要望が多かったレポー ト課題を盛り込むことが望ましい。レポートもまた、 4 種類の導入課題のそれぞれについて、各領域の学び の理解を深化させるテーマを設定し、その中から 1 つ を生徒自身に選択させることで、強制感はある程度減 らせるかもしれない。同時に、学習ステーションなど で、入学前のレポート課題の作成を支援する体制を整 えることも忘れてはならない。河合塾全国進学情報セ ンターが 2008 年に行った入学前教育に関する調査で ての問題点として、「なかなか生徒だけでは取り組め ない課題もあり、指導する教員の実情は大変だ」とい う高校教員の声が紹介されている10。大学におけるレ ポートが高校生にとって異質なものであるという事実 からも11、大学側で利用しやすい学習支援を準備し、 適切な仕方で告知を行うことは、レポート作成の必須 化とセットで考えるべきである。 一般に、入学前教育では対象者と顔を合わせる機会 が少ない。だからこそ、教材開発者はアンケートやイ ンタビューを通じて生徒たちのニーズを知り、彼らの 取り組み姿勢や満足感を把握して、教育改善につなげ る責任がある。キャリア形成学科は今後いっそう京都 光華高校との連携を強め、学科の専門性に根ざした導 入課題を開発して円滑な高大接続の実現に尽力した い。 1  大学審議会(2000). 2  穗屋下, 小野, 米満, 竹内(2012). p. 6. 3  中央教育審議会(2014). p.5. 4  高大接続システム改革会議(2016). p. 5. 5  渡辺, 島田(2017). p. 55. 6   ベネッセ教育総合研究所高等教育研究室(2014). p. 33. 7   ベネッセ教育総合研究所高等教育研究室(2014). p. 30. 8  (株)さんぽう(2013). 9  千島, 水野(2015). p. 237. 10 河合塾全国進学情報センター(2008). p. 50. 11 渡辺, 島田(2017). pp. 43-44. 引用文献 河合塾全国進学情報センター(2008). 教育改革 ing(第 17 回 入学前教育). Guidline 2008 年 9 月号, 47-55. http://www.keinet.ne.jp/gl/08/09/kaikaku.pdf 高大接続システム改革会議(2016).「最終報告」. http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/ t o u s h i n / _i c s F i l e s / a f i e l d f i l e /2 0 1 6 / 0 6 / 0 2 / 1369232_01_2.pdf

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(株)さんぽう(2013). アンケート:「入学前教育」「初 年次教育」において期待する効果. 大学 Times, 9. http://times.sanpou-s.net/special/vol9_1/pdf/1-1.pdf 大学審議会(2000). 大学入試の改善について(答申). http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/ old_daigaku_index/toushin/1315961.htm 千島雄太, 水野雅之(2015). 入学前の大学生活への期 待と入学後の現実が大学適応に及ぼす影響. 教育心 理学研究, 63(3), 228-241. 中央教育審議会(2014). 新しい時代にふさわしい高大 接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学 入学者選抜の一体的改革について:すべての若者が 夢や目標を芽吹かせ、未来に花開かせるために(答 申). http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/ c h u k y o0/ t o u s h i n / _i c s Fi l e s / a f i e l d f i l e /2015/ 01/14/1354191.pdf ベネッセ教育総合研究所高等教育研究室(2014). 高大 接続に関する調査. http://berd.benesse.jp/up_images/research/2014_ koudai_all.pdf 穗屋下茂, 小野博, 米満潔, 竹内芳衛(2012). 全国の大 学対象のアンケート実施とその結果(2011 年度). リメディアル教育研究, 7(1), 3-16. 渡辺哲司, 島田康行(2017). ライティングの高大接続 :高校・大学で「書くこと」を教える人たちへ:ひ つじ書房.

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