クラウドソーシングの現状と可能性:4.クラウドソーシング研究のディシプリンとは? 〜クラウドソーシング研究のさらなる展開に向けて〜 -情報処理学会第77回全国大会 パネル討論報告-
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(2) 小特集. クラウドソーシングの現状と可能性. であったヒューマンコンピュータインタラクションが研. 高所得国による低所得国ワーカの「買い叩き」は,す. 究分野として確立したように,クラウドソーシングも. でに行われている.世界的規模で仕事の受発注が流. 独立した研究分野になり得る,と付け加えられた.. 通する仕組みがあれば,賃金の適正化を促進できる のではないか,という提案があった.. クラウドソーシング研究固有のテクニカ ルチャレンジ・グランドチャレンジは何か?. áá人間と機械の共生 人間と機械の共生社会の適切なデザインも研究コ. 次に,標題の問いに基づき,クラウドソーシング研. ミュニティに求められている,という意見が挙がった.. 究固有の課題について議論が行われた.特に「イン. 機械の知能が発展していく中で,人間が機械に対する. センティブ設計」 「ワーカ保護」 「人間と機械の共生」. 優位性を維持するために,多数の人間の知能を統合. が主要な課題として挙げられた.. し個人の知能を超えるための技術が求められる. また,クラウドソーシングで機械が仕事を受発注す. ááインセンティブ設計. る世界が訪れる可能性もある.人間への発注を通じて. 多数のパネリストが,ワーカに多くの作業を真面目. 機械による人間の使役が可能となり,逆に機械が仕事. に実施してもらうためのインセンティブ設計が重要だ. を受けることで,人間から資金を獲得できるようになる.. と言及した.参加動機が異なる人間それぞれに対し. 人間が機械に搾取されない世界を作るため, 「クラウド. て,適切なインセンティブを設計する必要がある.ま. ソーシングにかかわる全員が幸せになる」ためのシナ. た,あるワーカは報酬がない方がかえって真面目に作. リオづくりが求められる,という議論がなされた.. 業するが,ほかのワーカが報酬を得ていることを知る と作業効率が落ちるかもしれない.このようなインセ. これからのクラウドソーシング研究. ンティブ間の相互作用も考慮する必要がある,という. . 意見が出された.. クラウドソーシング研究のディシプリンに関する多. 問題解決に必要な情報を少数の人間だけが知ってい. 様な意見を紹介した.重複部分を切り出すと, 「集団. る場合に,情報を引き出すためのインセンティブ設計. を制御し問題解決にあたるための仕組みづくり・計算. の重要性も指摘された.情報の正しさが検証不可能な. 機活用」がクラウドソーシング研究の独自性だとまと. 場合には適切な報酬の付与は困難である.情報を引き. められる.当日の討論では,技術的・制度的課題に. 出すための仕組みづくりが重要という提言があった.. ついて議論が交わされた一方で,クラウドソーシング 活用によりもたらされる社会的利益と,真に達成すべ. ááワーカ保護. き応用課題が明らかではないことが指摘された.こ. ワーカを保護するための技 術・制度も議論され. れからのクラウドソーシング研究に求められている. た.たとえば,ワーカのプライバシー保護である.特. のは,本稿で示した具体的課題の解決だけではない.. に,ワーカ所有の携帯端末から位置情報等を収集す. さまざまな分野の知見を組み合わせ,クラウドソーシ. る形式のクラウドソーシングにおいて重要な課題とな. ングがもたらすより良い社会像を提示することも求め. る.一方で,ワーカ個人,あるいは社会がプライバシ. られている.. ー保護に過剰になるあまり,データ収集への参加に 消極的という現状が紹介された.参加のメリット・デ メリットの啓蒙と,データ活用の良い事例づくりが重 要という意見が出た. 低賃金労働からのワーカ保護も大きな課題である.. 896. 情報処理 Vol.56 No.9 Sep. 2015. (2015 年 6 月 8 日受付) 馬場雪乃 ■ [email protected] 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻特定助教.博士 (情 報理工学).データマイニング・ヒューマンコンピュテーションの 研究に従事..
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